(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】膝および/または股関節痛の安全で効果的な処置用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240326BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240326BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240326BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240326BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20240326BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P19/02
A61K39/395 D
A61K31/167
A61K38/22
A61K45/00
A61P43/00 121
C07K16/22 ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021505954
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 US2019045970
(87)【国際公開番号】W WO2020033872
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ゲバ
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ・デーキン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ディマルティノ
(72)【発明者】
【氏名】ハイタオ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・マロニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ステーマン-ブリーン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507385(JP,A)
【文献】特表2008-535929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0014208(US,A1)
【文献】国際公開第2018/102294(WO,A1)
【文献】Maloney, J. et al.,Efficacy and Safety of Fasinumab for Osteoarthritic Pain in Patients with Moderate to Severe Osteoarthritis of the Knees or Hips.,ACR Meeting Abstract [online],2016 ACR/ARFP Annual Meeting,2016年09月28日,Abstract Number 295,https://acrabstracts.org/abstract/efficacy-and-safety-of-fasinumab-for-osteoarthritic-pain-in-patients-with-moderate-to-severe-osteoarthritis-of-the-knees-or-hips/
【文献】Osteoarthritis and Cartilage,2017年04月,Vol.25 No.3(Suppl. 1) ,S56-S57 (Article No.73)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝および/または股関節の変形性関節炎を有する対象において、膝関節および/または股関節痛の処置の方法で使用するための医薬組成物であって、該対象は、鎮痛処置に無応答であるか、または鎮痛処置の副作用を被っており、
該医薬組成物は、治療有効量の、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗NGF抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号4、6、および8を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに、それぞれ配列番号12、14、および16を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み;
該方法は、該対象に、該抗体またはその抗原結合断片を1m
gの用量で
4週間ごとに1回またはそれ以下の頻度で投与することを含み;
該対象は鎮痛剤の中断後に疼痛増悪を経験した履歴を有し;および
該医薬組成物の投与により該対象の膝関節または股関節の疼痛を軽減する、
前記医薬組成物。
【請求項2】
鎮痛処置は、アセトアミノフェン、オピオイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、およびその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
膝および/または股関節の変形性関節炎を有する対象において、抗神経成長因子(NGF)抗体での処置に関連する関節症のリスクを軽減するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗NGF抗体またはその抗原結合断片を含み、該抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号4、6、および8を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、ならびに、それぞれ配列番号12、14、および16を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み;
該対象は鎮痛剤の中断後に疼痛増悪を経験した履歴を有し;および
該抗体またはその抗原結合断片は、該対象に、1m
gの用量で
、4週間ごとに1回またはそれ以下の頻度で投与される、
前記医薬組成物。
【請求項4】
関節症は、急速進行性変形性関節炎を含む、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
皮下投与用に製剤化される、請求項1から
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
4週間ごとに1回の投与用である、請求項1から
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物は、8週間ごと
に投与される
ためのものである、請求項1から
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象は、4以上の西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコアとして定義される、膝および/または股関節での指標関節における中程度から重度の疼痛を有すると診断されている、請求項1から
7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象は、処置を開始する前に、0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けを有する、請求項1から
8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗NGF抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1から
9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗体は、ファシヌマブである、請求項1から
10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不十分な疼痛軽減の履歴または標準的な鎮痛療法に対する不耐性を有する患者における、膝関節または股関節のような関節の疼痛の処置または予防に関する。さらに具体的には、本発明は、それを必要とする患者の膝および/または股関節痛を軽減するために、神経成長因子(NGF)アンタゴニスト、特にNGF抗体の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
急性および慢性疼痛の多くの患者は、現在利用可能である広範な鎮痛薬があるにもかかわらず、十分な疼痛軽減を受けられないが、その理由として、医薬が全ての患者に効果的ではないか、またはその使用が毒性もしくは耐え難さにより限定されているかのいずれかが挙げられる。現在利用可能な鎮痛療法を限定するものは、有害な中枢神経系効果、悪心および嘔吐、便秘、胃腸の出血および潰瘍形成、心血管事象、腎毒性、ならびに乱用の可能性である。不十分な疼痛軽減は、医療費や生産性の低下を含む社会に関連する大きなコストを伴って、世界中の数百万人の人々の生活の質に深刻な影響を与える。
【0003】
ニューロトロフィンは、神経細胞および非神経細胞の発生、分化、生存、および死滅において役割を担う、ペプチド成長因子のファミリーである(非特許文献1)。成人において、NGFは、生存因子として必要ではないが、ニューロンを敏感にする疼痛メディエーターとして作用する(非特許文献2)。神経成長因子活性は、2つの異なる膜結合受容体、高親和性チロシンキナーゼ1型(TrkA)および低親和性p75ニューロトロフィン受容体を通して媒介される。
【0004】
NGFの投与は、齧歯類(非特許文献3)およびヒト(非特許文献4)の両方において疼痛を誘発することが示されている一方、NGFアンタゴニストは、神経障害性慢性の炎症性疼痛の動物モデルにおいて痛覚過敏症および異痛症を予防することが示されている(非特許文献5)。TrkA(遺伝性の感覚性および自律神経ニューロパチーIV)またはNGF(遺伝性の感覚性および自律神経ニューロパチーV)における突然変異を有するヒトは、深部の疼痛知覚の喪失で同定されている(非特許文献6、非特許文献7)。加えて、NGFは、関節リウマチおよび他の種類の関節炎の患者の滑液において増加し(非特許文献8、非特許文献9)、膀胱炎、前立腺炎、および慢性頭痛のような状態の傷害され炎症を起こした組織において上方制御されることが知られている(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。
【0005】
不十分な疼痛軽減の履歴を有する、または標準的な鎮痛療法に対する不耐性である個体における疼痛を緩和する薬剤に対する必要性を満たしていない。ファシヌマブは、NGFに対する完全ヒト高親和性モノクローナル抗体である(特許文献1および特許文献2、ならびに非特許文献13を参照のこと、これら全ては、その全体を本明細書において参照によって組み入れる)。NGFを選択的に遮断することにより、ファシヌマブは、オピオイドおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のような他の鎮痛薬の有害な副作用のいくつかを伴わずに、NGF関連の疼痛を調節するのに効果的である可能性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,988,967号
【文献】PCT公開第WO2009/023540号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chao,M.ら、(2006)、ClinSci(Lond);110:167頁
【文献】Pezet,S.ら、(2006)、Ann Rev Neurosci 29:507~518頁
【文献】Lewin,G.R.ら、(1994)、Eur. J. Neurosci 6:1903~1912頁
【文献】McArthur,J.C.ら、(2000)、Neurology 54:1080~1088頁
【文献】Ramer,M.S.ら、(1999)、Eur J Neurosci 11:837~846頁
【文献】Indo,Y.ら、(1996)、Nature Genetics,13:485~488頁
【文献】Einarsdottir,E.ら、(2004)、Human Molecular Genetics 13:799~805頁
【文献】Aloe,L.ら、(1992)、Arthritis Rheum 35:351~355頁
【文献】Halliday,D.A.、(1998)、Neurochem Res.23:919~922頁
【文献】Lowe,E.M.ら、(1997)、Br.J.Urol.79:572~577頁
【文献】Miller,L.J.ら、(2002)、Urology 59:603~608頁
【文献】Sarchielli,P.ら、(2001)、Neurology 57:132~134頁
【文献】WHO Drug Information 26巻、2号(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
標準的な鎮痛療法に無応答または不耐性である患者において、膝および/または股関節痛を処置するための医薬組成物および方法を開示する。膝および/または股関節痛の処置用の抗NGF抗体を投与する対象において、関節症が発生するリスクを軽減するための医薬組成物および方法を開示する。また本明細書で提供されるのは、抗NGF抗体の投与に関与する、膝および/または股関節痛の処置の安全性をモニタリングするための方法である。特定の態様において、対象は、膝および/または股関節の変形性関節炎を有し、抗NGF抗体は、ファシヌマブである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の態様において、膝関節または股関節に疼痛を有し、鎮痛処置に無応答であるか、または鎮痛処置の副作用を被っている対象の処置での使用のための医薬組成物を開示する。組成物は、治療有効量の、神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。組成物は、疼痛を軽減する鎮痛処置をせずに使用される。
【0010】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、NGFに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、約1mg~約9mgの用量で患者に投与される。投与の頻度は、約4週間ごとに1回である。
【0011】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、鎮痛処置は、アセトアミノフェン、オピオイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはその組合せを含む。
【0012】
神経成長因子(NGF)に特異的に結合する抗NGF抗体またはその抗原結合断片と関連する関節症を回避するための医薬組成物を開示する。特定の態様において、組成物は、9mg未満の用量の抗NGF抗体またはその抗原結合断片として製剤化される。特定の態様において、組成物は、6mg未満の用量の抗NGF抗体またはその抗原結合断片として製剤化される。特定の態様において、関節症の発生のリスクを軽減する医薬組成物の初期用量、および1つまたはそれ以上の第2の用量は、各々、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、または約5mgを含む。特定の態様において、関節症の発生のリスクを軽減する医薬組成物の初期用量、および1つまたはそれ以上の第2の用量は、各々、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約1mgまたは約3mgを含む。特定の態様において、関節症は、所定の閾値を超えて狭い関節腔を含む。特定の態様において、関節症は、単純撮影写真で明らかな骨構造の変化を含む。特定の態様において、関節症は、膝関節において、単純撮影写真で明らかな骨構造の変化、所定の閾値を超えて狭い関節腔、またはその両方を含む。特定の態様において、関節症は、股関節において、単純撮影写真で明らかな骨構造の変化、所定の閾値を超えて狭い関節腔、またはその両方を含む。特定の態様において、少なくとも1つの関節症の発生のリスクを軽減する用量の抗NGF抗体の投与の頻度は、約4週間ごとに1回である。
【0013】
本発明の特定の態様において、本明細書で開示される組成物および方法で処置される対象は、膝および/または股関節の変形性関節炎と診断されている。
【0014】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、患者は、標準的な鎮痛療法での不十分な疼痛軽減の履歴を呈するか、または、標準的な鎮痛療法に対して抵抗性がある、十分な応答をしない、もしくは不耐性である。
【0015】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、患者は、標準的な鎮痛療法を受けたくないか、または、標準的な鎮痛療法を利用できない。
【0016】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、標準的な鎮痛療法が、患者に対する安全性および健康リスクにより患者への投与に不適切である、ならびに/または、最適以下の効能とあわされた状況である。本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、標準的な鎮痛療法が、医学的な禁忌、標準的な鎮痛療法または添加剤に対する過敏症、標準的な鎮痛療法で禁止された併用医薬の使用、腎臓の損傷の高いリスク、肝臓の損傷の高いリスク、胃腸出血の高いリスク、アレルギー反応の高いリスク、および薬物依存の発生する高いリスクからなる群から選択される状態により患者への投与に不適切である状況である。
【0017】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、標準的な鎮痛療法は、パラセタモール/アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、およびオピオイドからなる群から選択される。
【0018】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、オピオイドは、ヒドロコドン、オキシコドン、パーコセット、モルヒネ、メペリジン、ヒドロモルホン、フェンタニル、およびメタドンからなる群から選択される。
【0019】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、NGFに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、約4週間ごとに1回の頻度で患者に投与される。
【0020】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗体またはその抗原結合断片は、皮下(SC)または静脈内(IV)に投与される。
【0021】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗NGF抗体は、それぞれ配列番号4、6、および8を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、ならびに、それぞれ配列番号12、14、および16を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む。
【0022】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0023】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0024】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗体は、ファシヌマブである。
【0025】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、初期用量、および1つまたはそれ以上の第2の用量は、皮下または静脈内のいずれかに投与される。
【0026】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、抗NGF抗体の1つまたはそれ以上の第2の用量は、初期用量の後、4週間ごとに1回、8週間ごとに1回、または12週間ごとに1回に投与される。
【0027】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、使用により、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターは改善される。特定の態様において、疼痛関連パラメーターは、以下からなる群から選択される:(a)西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(Western Ontario and McMaster Osteoarthritis Index)(WOMAC)疼痛スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;(b)身体機能下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;および、(c)患者包括的評価(PGA)における第16週でのベースラインからの変化量。
【0028】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、使用により、数値評価尺度(NRS;尺度0~10;0=疼痛なし;MCID:約1ポイント)での毎日および週間(前週にわたる1日当たりのスコアの平均値)の歩行指標関節痛スコアは改善される。
【0029】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、使用により、リウマチ学委員会の転帰測定基準と国際変形性関節症学会常任委員会の臨床試験反応基準イニシアティブ(Outcome Measures for Rheumatology Committee and Osteoarthritis Research Society International Standing Committee for Clinical Trials Response Criteria Initiative)(OMERACT-OARSI)レスポンダー指標(膝または股関節の変形性関節炎痛を測定する11項目のツール)を使用して、応答速度は改善される。
【0030】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、使用により、略式36(SF-36)健康調査、およびEuroQol 5次元5レベル(EuroQoL-5 Dimension-5 Level)(EQ-5D-5L)尺度利用指標スコアを使用して評価される、生活の質は改善される。
【0031】
本発明の別の態様において、使用は、上記の使用のいずれかを含み、使用により、使用開始から最大で36週間、膝または股関節に関連する疼痛は軽減される。
【0032】
本発明の上記の態様の各々はまた、処置の対応する方法として、本明細書に開示され、記載される。
【0033】
特定の態様において、膝関節または股関節に疼痛を有する対象の処置をモニタリングするための方法を提供する。方法は、NGFに特異的に結合する約9mgの用量の抗NGF抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を投与すること;対象が関節症を発症しているかどうかを決定するために対象の膝関節または股関節をモニタリングすること;ここで、対象が関節症を発症している場合、約9mg未満の用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与すること;または、対象が関節症を発症していない場合、約9mgの用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0034】
モニタリングする方法の特定の態様において、対象が関節症を発症している場合、後処置は、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約1.0mg~約6mg未満を含む医薬組成物を投与することを含み、処置は、膝関節または股関節の疼痛を軽減し、関節症を軽減する。
【0035】
モニタリングする方法の特定の態様において、抗体は、それぞれ配列番号4、6、および8を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、ならびに、それぞれ配列番号12、14、および16を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む。
【0036】
モニタリングする方法の特定の態様において、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0037】
モニタリングする方法の特定の態様において、抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0038】
モニタリングする方法の特定の態様において、抗体は、ファシヌマブである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2-1】スクリーニングについての事象のスケジュールおよび処置期間の表を示す。WOCBP=妊娠可能な女性1.任意のゲノミクスのサブ試験に対する書面によるインフォームドコンセントを提供した患者のみ。サンプルは、ベースラインの来診時に採取しているが、試験中、任意の来診時に採取してもよい。2.最初に患者の適格性がスクリーニング期間に確認された後、患者は、IVRSを使用する訓練をした。患者は、IVRSを使用して、第20週の来診時に、毎日のNRS歩行指標関節痛スコア、およびアセトアミノフェンの毎日の使用を報告した。3.試験薬の投与は、各投与来診での最終的な措置であり、全ての実験室サンプルを採取し、全ての試験評価および措置を行った後に行われた。患者を、試験薬を投与した後の1時間、診療所で観察した。4.アセトアミノフェンの使用は、錠剤を計数することにより確認した。5.歩行指標関節痛NRSスコアは、第20週を通して、無作為化前の来診時の場所で、および、無作為化前期間から開始して、IVRSを使用して各日(およそ午後6時に)患者により電子症例報告書(eCRF)に記録された。6.スクリーニング来診時、WOMAC疼痛下位尺度を両膝および両股関節に対して評価した。7.患者は、無作為化前の来診時点で活動量計(アクチグラフ)を供給され、その使用を訓練された。患者は、第20週を通して、無作為化前の来診の日から開始して各診療所来診の前の7日間、計測器を装着した。患者は、計測器を各診療所来診に持参して、診療所スタッフが情報をダウンロードした。8.脈拍が45bpm未満の場合、リズムストリップを伴うECGを行い、心拍数および心律動を確認した。9.予定された撮像に加えて、X線写真は、鎮痛剤での処置にもかかわらず、担当医師の判断でOAの正常な進行と一致せず、少なくとも2週間(または、担当医師の判断で、それ未満)続いた、関節痛の悪化に対して考慮すべきである。10.予定されたMRIに加えて、MRIは、鎮痛剤での処置にもかかわらず、担当医師の判断でOAの正常な進行と一致せず、少なくとも2週間(または、担当医師の判断で、それ未満)続き、X線では確定しない、関節痛の悪化に対して考慮すべきである。11.患者が、スクリーニング期間に評価された試験適格性基準を満たした後、指標関節、反対側の関節、および、ベースラインK-Lスコアが3以上である任意の他の膝または股関節のMRIを、無作為化前の来診の前に行った。反対側の関節が以前にTJRの手術で処置されている場合は、MRIは必要なかった。画像が中央の読取装置により承諾され、問合せ不要と確認されたという確認は、無作為化前の来診の前の場所で受け取らなければならない。MRIに排他的な所見がないという確認は、患者が無作為化される前に、中央の読取装置から受け取らなければならない。12.患者が試験中にTJRの手術を受けなければならない場合には、患者は、早期終了の来診、およびTJR追跡に対する事象のスケジュールに概説した措置を完了した。早期終了の来診は、可能な限りTJRの前に完了しなければならない。13.尿妊娠検査が陽性結果の場合には、血清妊娠検査を受けなければならない。血清妊娠検査が陰性であった場合、患者は、試験への参加を継続した。血清妊娠検査が陽性であった場合、患者は、試験薬を中断し、来診スケジュールごとの残りの試験来診の全てに、診療所を再受診するように依頼された。14.閉経状態を59歳以下の女性患者で評価する必要がある場合にのみ行う試験。15.2回目の午前中の排泄尿は、一晩絶食後に採取しなければならない。来診前の自宅、または来診の日に試験場所のいずれかで行われた。16.早期終了:画像評価(膝、股関節、および肩のX線、ならびにMRI)を、関節が最後に撮影されてから30日超経過した場合のみ繰り返した。画像評価が完了してから30日以下の場合、画像評価は、担当医師の判断で完了した。
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図3】追跡期間についての事象のスケジュールの表を示す。1.アセトアミノフェンの使用は、錠剤を計数することにより確認した。2.歩行指標関節痛NRSスコアは、第20週を通して、IVRSを使用して各日(およそ午後6時に)患者により記録された。3.患者は、第20週を通して、各診療所来診の前の7日間、計測器を装着した。患者は、第20週に計測器を各診療所来診に持参して、診療所スタッフが情報をダウンロードした。4.脈拍が45bpm未満の場合、リズムストリップを伴うECGを行い、心拍数および心律動を確認した。5.関節検査のみ。6.アンケートは、診療所来診の場所で、電話来診に対しては電話中の情報を文書化した場所で、患者により完了した。7.予定された撮像に加えて、X線写真は、鎮痛剤での処置にもかかわらず、担当医師の判断でOAの正常な進行と一致せず、少なくとも2週間(または、担当医師の判断で、それ未満)続いた、関節痛の悪化に対して考慮すべきである。8.指標関節、反対側の関節、およびベースラインK-Lスコアが3以上である任意の他の膝または股関節のMRIを実施した。反対側の関節が以前にTJRの手術で処置されている場合は、MRIは必要なかった。9.患者が試験中にTJRの手術を受けた場合には、患者は、早期終了の来診、およびTJR追跡に対する事象のスケジュールに概説した措置を完了した。早期終了の来診は、可能な限りTJRの手術の前に完了しなければならない。10.早期終了:画像評価(膝、股関節、および肩のX線、ならびにMRI)を、関節が最後に撮影されてから30日超経過した場合のみ繰り返した。画像評価が完了してから30日以下の場合、画像評価は、担当医師の判断で完了した。
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図4】関節全置換術および追跡の事象に続く事象のスケジュールの表を示す。1.試験中にTJRの手術を受けた任意の患者は、安全性評価のために、手術日の4週間後および20週間後に、その場所を再受診するように依頼された。プロテーゼの置換および手術創の治癒を含む、手術に関する関連情報を、第4週の来診時に収集した。手術の20週間後の来診では、OA進行の評価(膝、股関節、および肩の繰返しのX線写真を含む)、ならびに最終の診療所来診から起こる可能性のある関節関連の疼痛およびAEについての任意の情報(TJRを含む)の収集を行った。2.関節置換術の正式な術後評価は、膝関節置換に対して膝関節学会スコアアンケート、または股関節置換に対してHarris股関節スコアアンケートを完了することにより行われた。これら評価の全詳細は、試験手順書において作成される。3.指標関節、反対側の関節、およびベースラインK-Lスコアが3以上である任意の他の膝または股関節に対して、MRIを行った。反対側の関節が以前にTJRの手術で処置されている場合は、MRIは必要なかった。
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図5-1】患者の素質の概説を示す(最大の解析対象集団)。SAF=第1日に任意の試験薬を投与した、全ての無作為化した対象を含む、安全性解析対象集団。FAS=全ての無作為化した対象を含む、最大の解析対象集団。
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図6】プロトコル逸脱の概説を示す(最大の解析対象集団)。IVR=対話型音声応答。
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図7】プロトコルに適合した対象集団からの除外をもたらす、プロトコル逸脱の概説を示す(最大の解析対象集団)。IVR=対話型音声応答;PPS=プロトコルに適合した対象集団。
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図8】試験集団の概説を示す。FAS=最大の解析対象集団;SAF=安全性解析対象集団;PPS=プロトコルに適合した対象集団。
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図9-1】ベースラインの人口統計学的特徴の概説を示す(最大の解析対象集団)。BMI=ボディーマスインデックス。
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図10-1】任意の処置群の患者の10%以上で報告された、病歴および基本語の表を提供する(最大の解析対象集団)。注:この表のデータは、元の表から一部省略している。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。同じ基本語を有する2つ以上の病歴の所見が報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上の病歴の所見が報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
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図11】処置の遵守の概説を示す(安全性解析対象集団)。
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図12】WOMAC疼痛スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量の概説を示す(最大の解析対象集団)。N=最大の解析対象集団での対象の数、およびn=特定された分類内の対象の数。SD=標準偏差、Min=最小値、およびMax=最大値。LS平均値=最小二乗平均値、SE=LS平均値の標準誤差、およびCI=信頼区間。解析は、ベースライン無作為化層、ベースライン、処置、来診、および処置-来診の相互作用のMMRMモデルに基づく。
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図13】来診:最小二乗平均値(+/-SE)により、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す(最大の解析対象集団)。
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図14】来診:未処理の平均値(+/-SE)により、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第36週までの変化量の概説を示す(最大の解析対象集団)。
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図15】来診:最小二乗平均値(+/-SE)により、WOMAC身体機能下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す(最大の解析対象集団)。
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図16】来診:平均値(+/-SE)により、WOMAC身体機能下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す(最大の解析対象集団)。
【
図17】患者包括的評価スコア(スコア範囲:1~5)におけるベースラインから第16週までの変化量の概説を示す(最大の解析対象集団)。N=最大の解析対象集団での対象の数、およびn=特定された分類内の対象の数。SD=標準偏差、Min=最小値、およびMax=最大値。LS平均値=最小二乗平均値、SE=LS平均値の標準誤差、およびCI=信頼区間。分析は、ベースライン無作為化層、ベースライン、処置、来診、および処置-来診の相互作用のMMRMモデルに基づく。
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図18】来診:最小二乗平均値(+/-SE)により、患者包括的評価におけるベースラインから第16週までの変化量を示す(最大の解析対象集団)。
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図19】来診:平均値(+/-SE)により、患者包括的評価におけるベースラインからの変化量を示す(最大の解析対象集団)。
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図20】救済医薬(rescue medication)を使用する患者の百分率を示す(最大の解析対象集団)。[1]オッズ比は、ファシヌマブ対プラセボである。CI=正規近似を使用して計算された、信頼区間。[2]P値は、ベースライン層のKellgren-Lawrence分類(2~3対4)および指標関節(膝対股関節)で層別化したCochran-Mantel-Haenszel(CMH)試験に由来した。
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図21】試験薬への曝露の期間を示す(安全性解析対象集団)。[1]最終投与の日付 - 最初の投与の日付+28。
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図22】観察の期間を示す(安全性解析対象集団)。[1]最終来診の日付(TJRに対する追跡来診を含む) - 最初の投与の日付+1。
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図23】処置期間中の治療下に発現した有害事象の概要を示す(安全性解析対象集団)。TEAE:治療下に発現した有害事象。[1](AEパネルから)永続的に試験薬を中止した対象を参照。
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図24】追跡期間中の有害事象の概要を示す(安全性解析対象集団)。AE:有害事象。
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図25】器官別大分類および基本語について、処置期間中の任意の処置群において3%超の患者で報告された、治療下に発現した有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。TEAE:治療下に発現した有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図26】基本語について、追跡期間中の任意の処置群において3%超の患者で報告された、有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。AE=有害事象。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。同じ基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図27】器官別大分類および基本語について、処置期間中の2%超の患者で報告された、処置関連の治療下に発現した有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。TEAE:治療下に発現した有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図28】器官別大分類および基本語について、追跡期間中の2%超の患者で報告された、処置関連の有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。AE:有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図29】器官別大分類および基本語について、処置期間中に報告された、治療下に発現した重篤な有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。TEAE:治療下に発現した有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図30-1】器官別大分類および基本語について、追跡期間中に報告された、有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図31-1】器官別大分類および基本語について、試験薬の中止をもたらす、治療下に発現した有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。TEAE:治療下に発現した有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図32】基本語について、処置期間中に検出された、特に注目すべき治療下に発現した有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。AESI=特に注目すべき有害事象。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。TEAE:治療下に発現した有害事象。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。
【
図33】基本語について、追跡期間中に検出された、特に注目すべき有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。AESI=特に注目すべき有害事象。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。同じ基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。†2対象において、両側の急速進行性変形性関節炎は、1事象として報告した。
【
図34】基本語について、処置および追跡期間中に、特に注目すべき全ての有害事象の概説を示す(安全性解析対象集団)。AESI=特に注目すべき有害事象。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を適用した。同じ基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その用語に対して1回のみ計数している。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のAEが報告された対象は、その器官別大分類に対して1回のみ計数している。†2対象において、両側の急速進行性変形性関節炎は、1事象として報告した。
【
図35】関節症の裁定データの概説を示す(安全性解析対象集団)。RPOA-1:急速進行性OA1型;RPOA-2:急速進行性OA2型;SIF:軟骨下脆弱性骨折、疲労骨折のPTを伴う。aは、第36週の画像で解決した。
【
図36】処置期間および追跡中の関節全置換術の概説を示す(安全性解析対象集団)。TJR=関節全置換術。
【
図37】経時的なアルカリ性ホスファターゼの概説を示す(安全性解析対象集団)。
【
図38】来診:平均値(+/-SE)により、アルカリ性ホスファターゼ(U/L)におけるベースラインからの変化量を示す(安全性解析対象集団)。
【
図39】診療所の試験日、およびファシヌマブの多数回のSC注射に続く処置群について、機能的なファシヌマブ濃度の概説を示す。N=患者数;SD=標準偏差;Q=四分位数;PRE=投与前;Q4W=4週間に1回;SC=皮下。
【
図40】ファシヌマブの多数回のSC注射に続く、週に対する平均(+/-SD)の機能的なファシヌマブ濃度を示す。LLOQ(水平の点線=0.0780mg/L)未満の濃度は、0に帰属させた。プラセボ患者は除外する。
【
図41】ファシヌマブの多数回のSC注射に続く、週に対する平均(+/-SD)の対数スケールの機能的なファシヌマブ濃度を示す。LLOQ(水平の点線=0.0780mg/L)未満の濃度は、LLOQ/2=0.0390mg/Lに帰属させた。プラセボ患者は除外する。
【
図42】患者の人口統計およびベースラインの特徴を示す。BMI、ボディーマスインデックス;SD、標準偏差。
【
図43】WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。
a解析は、反復測定による混合効果モデルのアプローチに基づく。CI、信頼区間;LS、最小二乗法;SD、標準偏差;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図44-1】器官別大分類について、2%超の患者で報告された、処置および追跡期間中の処置関連の有害事象を示す。MedDRA(バージョン18.0)でコーディングした辞書を、器官別大分類基本語に対して適用した。同じ基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された患者は、その用語に対して1回のみ計数した。同じ器官別大分類内の異なる基本語を有する2つ以上のTEAEが報告された患者は、その器官別大分類に対して1回のみ計数した。AE、有害事象;TEAE、治療下に発現した有害事象。
【
図45】関節症および関節全置換術を示す。処置および追跡期間に、組み合わせた。2対象において、両側の急速進行性OAは、1事象として報告した。
【
図46】患者の素質を示す。82名の患者は、1用量以上のプラセボを投与された。
b337名の患者は、1用量以上のファシヌマブを投与された。
【
図47A】来診でのWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(A)、および身体下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(B)、ならびに先の鎮痛剤の中断時に、疼痛増悪を呈する患者(C)および疼痛増悪を呈しない患者(D)のWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す。SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図47B】来診でのWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(A)、および身体下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(B)、ならびに先の鎮痛剤の中断時に、疼痛増悪を呈する患者(C)および疼痛増悪を呈しない患者(D)のWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す。SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図47C】来診でのWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(A)、および身体下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(B)、ならびに先の鎮痛剤の中断時に、疼痛増悪を呈する患者(C)および疼痛増悪を呈しない患者(D)のWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す。SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図47D】来診でのWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(A)、および身体下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量(B)、ならびに先の鎮痛剤の中断時に、疼痛増悪を呈する患者(C)および疼痛増悪を呈しない患者(D)のWOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインからの変化量を示す。SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図48】WOMAC身体機能下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。解析は、反復測定による混合効果モデルのアプローチに基づく。CI、信頼区間;LS、最小二乗法;SD、標準偏差;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図49】EQ-5D-5L利用指標スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。
a解析は、反復測定による混合効果モデルのアプローチに基づく。EQ-5D-5L利用指標スコアは、英国タイムトレードオフ値集合を使用して計算した。CI、信頼区間;EQ-5D-5L、ヨーロッパの生活の質5次元5レベル尺度;LS、最小二乗法;SD、標準偏差;SE、標準誤差。
【
図50A】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50B】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50C】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50D】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50E】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50F】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図50G】年齢(A)、性別(B)、人種(C)、K-Lスコア(D)、指標関節(E)、体重(F)、およびBMI(G)について、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量を示す。BMI、ボディーマスインデックス;LS、最小二乗法;SE、標準誤差;WOMAC、西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数。
【
図51】処置期間の、数値評価尺度での歩行痛におけるベースラインからの変化量を示す。LS平均値は、ベースライン、処置、来診、および処置-来診の相互作用を含む、ベースライン無作為化層での、反復測定による混合効果モデルのアプローチに基づく。LS、最小二乗法;SE、標準誤差。
【
図52】WOMAC身体機能下位尺度スコアにおけるベースラインから第16週までの変化量の概説を提供する(最大の解析対象集団)。N=最大の解析対象集団での対象の数、およびn=特定された分類内の対象の数。SD=標準偏差、Min=最小値、およびMax=最大値。LS平均値=最小二乗平均値、SE=LS平均値の標準誤差、およびCI=信頼区間。解析は、ベースライン無作為化層、ベースライン、処置、来診、および処置-来診の相互作用のMMRMモデルに基づく。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を記載する前に、方法および条件は変化し得るので、本発明が、記載された特定の方法および実験条件に限定されないことは理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するのが目的であり、本発明の範囲が、添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定を意図しないことも理解すべきである。
【0041】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約」とは、特定の記載した数値に関して使用される場合、値が記載した値から1%以下で変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、表現「約100」は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」などは、症状を緩和し、一時的もしくは永続的に症状の原因を除去し、または言及した障害もしくは状態の症状の出現の防止もしくは緩徐化することを意味する。
【0042】
本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施に使用することができるが、好ましい方法および材料は、下記に記載する。本明細書に記載される全ての特許、出願、および非特許文献は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0043】
選択された患者集団における膝および/または股関節痛を処置する方法
本発明は、パラセタモール/アセトアミノフェン、経口NSAIDS、およびオピオイド療法を含む、標準的な療法に対する不耐性、または標準的な療法での不十分な疼痛軽減の履歴を有する、中程度から重度の膝および/または股関節痛の患者を処置するための方法および組成物を含む。このサブセットの患者は、ファシヌマブのようなNGFアンタゴニストでの処置が有益と思われる、医学的な必要性を満たしていない患者集団を表し、これは、効能のあることを証明でき、他の標準的な療法より良好な安全性プロファイルをもたらし得る。
【0044】
本明細書に記載する通り、成句「中程度から重度の膝および/または股関節痛」とは、4以上の西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコアとして定義される、指標関節における中程度から重度の疼痛を指す。特定の例において、中程度から重度の膝および/または股関節痛は、変形性関節炎により引き起こされることがある。ゆえに、中程度から重度の膝および/または股関節痛を有する対象は、放射線学的な確認を伴う、OAに対する米国リウマチ学会基準(American College of Rheumatology criteria)に基づいて、膝および/または股関節の変形性関節炎で診断されている可能性がある(0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分け)。
【0045】
Kellgren-Lawrence[K-L]等級分けシステムは、単純X線写真を使用し、以下の等級分けを実現する:等級0、変形性関節炎のX線写真での特徴がない;等級1、狭い関節腔(正常な関節腔は、上部の寛骨臼で少なくとも2mmである)、および骨増殖体形成の可能性;等級2、狭い関節腔の可能性のある、明確な骨増殖体形成;等級3、多数の骨増殖体、明確な狭い関節腔、硬化症、および骨変形の可能性;等級4、大きい骨増殖体、著しく狭い関節腔、重症の硬化症、および明確な骨変形。
【0046】
本発明の特定の実施形態によると、患者は、膝および/または股関節の変形性関節炎(OA)の臨床診断を呈することに基づいて、本明細書で開示される処置に対して選択することができる。
【0047】
特定の実施形態によると、対象は、NSAIDS、COX-2阻害剤、オピオイド、アセトアミノフェン、またはその組合せのような正規の鎮痛薬の履歴を有する。
【0048】
特定の実施形態によると、患者は、以下で定義される、不十分な疼痛軽減の履歴、または、疼痛の処置用に使用される鎮痛剤に対する不耐性を有する:アセトアミノフェンでの不耐性もしくは不十分な疼痛軽減、および、少なくとも1つの経口NSAIDでの不耐性もしくは不十分な疼痛軽減、および、少なくとも1つのオピオイドに対する不耐性もしくは少なくとも1つのオピオイドでの不十分な疼痛軽減、オピオイド療法を受けることに対する不同意、または、オピオイド療法を受けられないこと。
【0049】
本発明は、それを必要とする対象に、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を含む。本明細書で使用される場合、表現「それを必要とする対象」とは、膝および/または股関節痛を呈するヒトを意味する。特定の実施形態において、「それを必要とする対象」とは、股関節のOA、膝関節のOA、またはその両方と診断された患者を指す。特定の実施形態において、「それを必要とする対象」とは、標準的な鎮痛療法での不十分な疼痛軽減(例えば、4週間、平均して4日/週での標準的な鎮痛療法の投与後に著しい疼痛軽減がない)の履歴、または標準的な鎮痛療法に対する不耐性を有する、膝および/または股関節痛を患う患者を指す。特定の実施形態において、本発明の方法は、0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けである膝および/もしくは股関節のOA、ならびに/または、4以上のWOMAC疼痛下位尺度スコアとして定義される、指標関節における中程度から重度の疼痛を有する、患者を処置するのに使用することができる。
【0050】
本発明の文脈において、「それを必要とする対象」はまた、例えば、処置の前に、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターを呈する(または呈している)対象を含み得、これは、本発明の抗NGF抗体での処置に続いて改善される。
【0051】
特定の態様において、処置は、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約1mg~約9mgを含む用量で、本明細書で開示される医薬組成物を投与することを含む。本出願の実施例の項で示す通り、1mg、3mg、6mg、および9mgの用量は、中程度から重度の膝関節痛を有する患者の膝関節痛の改善、および、中程度から重度の股関節痛を有する患者の股関節痛の改善をもたらし、対象は、標準的な鎮痛療法に無応答性または不耐性である。
【0052】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、WOMAC疼痛下位尺度スコア(歩行中、階段の使用時、ベッドで安静時、座位または横臥、および立位での関節痛に関連する5つの質問の複合指数)におけるベースラインから第16週までの改善が含まれる(Bellamy N.WOMAC Osteoarthritis Index:A User’s Guide.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年)。
【0053】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、WOMAC身体機能下位尺度スコア(尺度、0~68;0~10の尺度に演算的に変換される)におけるベースラインから第16週までの改善が含まれる。
【0054】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、患者包括的評価(PGA)スコア(最高スコアが最悪の評価である、1~5の尺度での1つの質問)におけるベースラインから第16週までの改善が含まれる(Strand V、Kellman A.Curr Rheumatol Rep 2004年:6:20~30頁)。
【0055】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、数値評価尺度(NRS;尺度0~10;0=疼痛なし;MCID:約1ポイント)での毎日および週間(前週にわたる1日当たりのスコアの平均値)の歩行指標関節痛スコアの改善が含まれる(Salaffi Fら、Eur J Pain 2004年;8:283~91頁)。
【0056】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、リウマチ学委員会の転帰測定基準と国際変形性関節症学会常任委員会の臨床試験反応基準イニシアティブ(OMERACT-OARSI)レスポンダー指標(膝または股関節OA痛を測定する11項目のツール)を使用する、応答速度の改善が含まれる(Pham Tら、J Rheumatol 2003年;30:1648~54頁)。
【0057】
特定の態様において、本明細書で開示される処置により示される改善には、略式36(SF-36)健康調査(Ware JE Jr、Sherbourne CD.Med Care 1992年;30:473~83頁)、およびEuroQol 5次元5レベル(EQ-5D-5L)尺度利用指標スコア(van Reenen M、Janssen B.EQ-5D-5L User Guide.バージョン2.1.Rotterdam、The Netherlands:European Quality of Life Research Foundation、2015年4月)を使用して評価される、生活の質の改善が含まれる。
【0058】
一態様において、本明細書で開示される医薬組成物の投与に続いて、患者は、以下の1つまたはそれ以上において、改善を呈する:(a)西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛スコア;(b)WOMAC身体機能下位尺度スコア;および(c)患者包括的評価(PGA)スコア。
【0059】
一実施形態において、患者は、ファシヌマブを含む医薬組成物の投与に続いて、以下からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターにおいて、改善を呈する:(a)数値評価尺度(NRS)スコアにより評価される1日当たりの平均疼痛強度における第16週でのベースラインからの変化量;(b)Roland Morris身体障害アンケート(Roland Morris Disability Questionnaire)(RMDQ)総合スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;(c)疼痛スコアの患者包括的評価(PGA)における第16週でのベースラインからの変化量;(d)NRSスコアにより評価される1日当たりの平均疼痛強度における第2週、第4週、第8週、および第12週でのベースラインからの変化量;e)(i)1日当たりの平均疼痛強度NRSスコア;(ii)RMDQ総合スコア;および、(iii)疼痛スコアのPGAに対する30%の低減および50%の低減で定義される、レスポンダーである患者の百分率における第16週でのベースラインからの変化量;f)医学的転帰検査(Medical Outcomes Study)(MOP)睡眠下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;g)略式健康調査(SF-36)下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;h)EQ-5D-5Lにおける第16週でのベースラインからの変化量;ならびに、i)疼痛用の救済医薬を使用する患者の百分率における第16週でのベースラインからの変化量。
【0060】
疼痛の重症度は、当業者に知られている標準的な方法を使用して評価される。例えば、本明細書に記載されるもの、例として、疼痛強度の数値評価尺度(NRS)スコア;Roland Morris身体障害アンケート(RMDQ)総合スコア;または疼痛スコアの患者包括的評価(PGA)を含む、方法を使用する(Mannion,AFら、Nature Clinical Practice Rheumatology(2007)3:610~618頁を参照のこと)。
【0061】
様々な器具は、疼痛強度(人がどの程度痛むか)、および疼痛の影響(人がどの程度苦しんでいるか)を評価するために開発されている。以下の3つの方法は、伝統的に、疼痛強度を測定するのに使用されている:視覚的評価尺度(VAS)、言語評価尺度(VRS)、および数値評価尺度(NRS)。Von Korff Mら(2000)、Spine 25:3140~3151頁;Zanoli Gら(2000)、Spine 25:3178~3185頁;Haefeli MおよびElfering A(2006)、Eur Spine J 15(Suppl 1):S17~S24;McGuire DB(1999)、Instruments for Health-Care Research 528~561頁(Frank-Stromborg MおよびOlsen S編)Boston:Jones and Bartlett;Ogon Mら(1996)、Pain 64:425~428頁;Hagg Oら(2003)、Eur Spine J 12:12~20頁;Jensen MPら(1986)、Pain 27:117~126頁を参照のこと。
【0062】
視覚的評価尺度(VAS)は、通常100mm長の線からなり、その末端は、極値(「疼痛なし」および「最悪の疼痛」)として標識化し、線の残りの部分は、空白である。患者は、(現在の時点、過去1週間にわたって、または、過去2週間にわたって、などの)自身の疼痛強度を示すように線上にマークを付けることが求められる。マークと起点の間の距離を測定して、患者のスコアを得る。時に、説明的な用語、例えば「軽度」、「中程度」、および「重度」、または数値は、「中程度」が尺度の中央範囲内にあるように、誘導用の尺度に沿って提供され、次いで、その尺度は、図式評価尺度と呼ばれる。
【0063】
言語評価尺度(VRS)は、異なるレベルの疼痛強度を記載する形容詞の一覧からなる。疼痛に対するVRSは、極値(例えば「疼痛なし」から「最悪の疼痛」まで)を反映する形容詞、およびその間の段階を捕捉するための十分な形容詞を含む。VRSは、最も頻繁には、5ポイントまたは6ポイントの尺度である。患者は、アンケート中で選択するか、または、患者自身の疼痛強度のレベルを最も記載している形容詞を言語的に記載することが求められる。行動評価尺度において、異なる疼痛レベルは、行動パラメーターを含む文章により記載される。
【0064】
数値評価尺度(NRS)は、患者に、アンケートを埋めるか、または数値レベルを言語的に記載することで、0~10(11ポイントの尺度)、0~20(21ポイントの尺度)または0~100(101ポイントの尺度)の尺度の数値を選択することにより、患者自身の疼痛強度を評価することを求めることを含む。例えば、ゼロ(0)は、「疼痛なし」を意味し、百(100)は、「最悪の疼痛」を意味する。患者は、ただ1つの数値を書くことが求められる。例えば、0~10のNRSを使用して、「中程度のLBP」を呈する患者は、「中程度」の4~6と「重度の疼痛」の7~10との間の数値を入力するであろう。以下の例示的な表を参照のこと。
【0065】
【0066】
患者はまた、患者が、アセトアミノフェンもしくはNSAIDのような標準的な鎮痛剤、または、膝および/もしくは股関節痛を処置するための当業者に知られている任意の他の一般に使用される治療剤による処置に対する抵抗性もしくは治療抵抗性がある場合、中程度から重度の膝および/または股関節痛を有すると言える。
【0067】
上述の通り、本発明は、不十分な疼痛軽減の履歴、もしくは標準的な鎮痛療法に対する不耐性を呈するか、または、標準的な鎮痛剤での処置に対して抵抗性があるか、無応答であるか、もしくは十分な応答をしない、患者において、膝および/または股関節痛を処置する方法を含む。用語「不十分な疼痛軽減」とは、疼痛レベル指標により正常な日常動作を行うことができないことが確認できる、標準的な鎮痛剤での処置の後に対象が経験した、許容不可能なレベルの疼痛軽減を指す。
【0068】
用語「標準的な鎮痛療法に対する不耐性」とは、例えば、標準的な鎮痛剤に対してアレルギー性であるか、または、標準的な鎮痛剤での処置の後に有害事象を呈する、対象または患者を指す。用語「標準的な鎮痛剤に対して抵抗性があるか、無応答であるか、もしくは十分な応答をしない」とは、本明細書で使用される場合、例えばNSAIDで処置されている、膝および/または股関節痛の対象または患者を指し、NSAIDは、治療効果を有していない。いくつかの実施形態において、この用語は、患者遵守ならびに/もしくは毒性および副作用、ならびに/または、膝および/もしくは股関節痛の症状を軽減する、改善する、もしくは低減するために投与される鎮痛剤の無効性を軽減することを指す。いくつかの実施形態において、この用語は、標準的な治療剤による処置に対する治療抵抗性がある、中程度から重度の膝および/または股関節痛を患う患者を指す。いくつかの実施形態において、「標準的な鎮痛剤に対して抵抗性があるか、無応答であるか、もしくは十分な応答をしない」患者は、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターの改善が見られない。疼痛関連パラメーターの例は、本明細書に他の箇所で記載されている。例えば、標準的な鎮痛剤での処置により、膝および/もしくは股関節痛NRSスコア、またはRoland Morris身体障害アンケート(RMDQ)総合スコアにおける変化は見られない。いくつかの実施形態において、本発明は、例えば1か月以上、より早く鎮痛剤で処置しており、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターでの変化が見られない(例えば低減しない)患者において、中程度から重度の膝および/または股関節痛を処置する方法を含む。
【0069】
本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施に使用することができるが、好ましい方法および材料は、下記に記載する。本明細書で記載される全ての刊行物は、その全体を記載する参照によって本明細書に組み入れる。
【0070】
抗NGF抗体の使用に関連する関節症を発症するリスクを低減するための方法
特定の態様において、本開示の方法および組成物は、股関節および/または膝関節痛の処置用に、高用量の抗NGF抗体またはその断片を投与される患者のサブセットにおいて発症する関節症を防ぐために使用される。
【0071】
本出願の実施例の項で提供されるデータから明らかなように、6mgまたは9mgの用量で抗NGF抗体を投与される患者の約7%が、関節症を発症した。ゆえに、特定の態様において、膝および/または股関節痛を処置するための方法および組成物は、9mg未満の用量または6mg未満の用量での抗NGF抗体の使用を含み得る。
【0072】
特定の態様において、膝および/または股関節痛を処置するための方法および組成物は、5mg未満、例えば1mg~4mg、例として1mgまたは3mgの用量で抗NGF抗体を使用することにより、関節症を回避することができる。
【0073】
特定の態様において、開示される組成物および処置方法により回避する関節症は、裁定済みの関節症である。特定の態様において、関節症は、急速進行性OAを含む。OAは、所定の閾値を超えて狭い関節腔が起こる1型であり得る。特定の態様において、OAは、単純撮影写真での骨構造の変化が観察可能である2型であり得る。単純撮影写真は、単純X線撮影写真を指し、コンピューター断層撮影(CT)、超音波画像診断、または磁気共鳴映像法(MRI)を必要としない。特定の態様において、開示される組成物および処置方法により回避する関節症は、所定の閾値を超えて狭い関節腔、単純撮影写真での骨構造の変化、またはその両方である。
【0074】
関節症の回避に好適な抗NGF抗体の用量は、最大で16週間、4週間ごとに1回の頻度で静脈内または皮下で投与することができる。
【0075】
特定の態様において、本明細書で開示される方法および組成物は、高用量の抗NGF抗体を投与される対象、例えば、少なくとも6mgまたは少なくとも9mgの用量で抗NGF抗体を投与される対象における関節症の発症率と比較して、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%)、処置を受ける対象における関節症の発症率を低減することができる。
【0076】
特定の態様において、本明細書で開示される方法および組成物は、高用量の抗NGF抗体を投与される対象、例えば、少なくとも6mgまたは少なくとも9mgの用量で抗NGF抗体を投与される対象と比較して、少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%)、処置を受ける対象における急速進行性変形性関節炎の発生率を低減することができる。
【0077】
関節症を発症するリスクを低減するための開示される方法および組成物が有益と思われる対象は、前項において開示されるものと同じであり得る。例えば、対象は、鎮痛処置に無応答であるか、または鎮痛処置の副作用を被っており、対象は、膝および/または股関節のOAを有すると診断されており、対象は、4以上の西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコアとして定義される、膝および/もしくは股関節での指標関節における中程度から重度の疼痛を有すると診断されており、対象は、処置を開始する前に、0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けを有し、対象は、0~4の尺度で、3もしくは4のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けを有し、ならびに/または、対象は、抗NGF抗体での処置を開始する前に、4週間、平均して4日/週での鎮痛療法を受ける。
【0078】
NGFアンタゴニストでの処置の安全性をモニタリングするための方法
本出願の実施例の項で示す通り、約9mgおよび約6mgの用量は、膝および/または股関節痛を処置する3mgおよび1mgの用量の抗NGF抗体と比較して、特定の利点があり得る。例えば、高用量により、疼痛を軽減させ、および/または、低用量より高速で膝もしくは股関節での機能を高めることができる。しかし、高用量(例えばファシヌマブ約9mgまたは約6mg)を投与される患者の小さなサブセットにおいて、関節症のような治療下に発現した有害事象(TEAE)は起こり得る。
【0079】
本明細書で開示される股関節および/または股関節痛の処置の方法は、低用量(例えば、6mg未満の抗NGF抗体)で見られる関節症のような、治療下に発現した有害事象(TEAE)のリスクを低減して、高用量の抗NGF抗体に関連する優れた結果と組み合わせる。
【0080】
特定の態様において、方法は、高用量の抗NGF抗体を投与すること;対象が関節症を発症しているかどうかを決定するために対象の関節(例えば、膝関節または股関節)をモニタリングすること;ここで、対象が関節症を発症している場合、約9mg未満の用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与すること;または、対象が関節症を発症していない場合、約9mgの用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与することを含み得る。
【0081】
対象が関節症を発症している場合、後処置は、抗NGF抗体またはその抗原結合断片1.0mg~約6mg未満を含む医薬組成物を投与することを含み、処置は、膝関節または股関節の疼痛を軽減し、関節症を軽減する。
【0082】
抗NGF抗体での処置の安全性をモニタリングするための開示される方法が有益と思われる対象は、前項において開示されるものと同じであり得る。例えば、対象は、鎮痛処置に無応答であるか、または鎮痛処置の副作用を被っており、対象は、膝および/または股関節のOAを有すると診断されており、対象は、4以上の西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコアとして定義される、膝および/もしくは股関節での指標関節における中程度から重度の疼痛を有すると診断されており、対象は、処置を開始する前に、0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けを有し、対象は、0~4の尺度で、3もしくは4のKellgren-Lawrence[K-L]等級分けを有し、ならびに/または、対象は、抗NGF抗体での処置を開始する前に、4週間、平均して4日/週での鎮痛療法を受ける。
【0083】
関節症は、前項において開示されるものと同じであり得る。関節症の存在のモニタリングには、股関節および/もしくは膝関節の放射線学を実施することを含み得る。特定の態様において、肩、手指、足指のような他の位置での関節症の発症は、評価することができる。関節症の評価はまた、股関節、膝、肩、手指、および/または足指のような関節のCTスキャン、MRI、または超音波を実施することも含み得る。
【0084】
特定の態様において、関節症は、1用量の抗NGFの投与後であるが、第2の用量の投与前にモニタリングすることができる。例えば、関節症の存在は、抗NGFの投与の2週間後、3週間後、または4週間後にモニタリングすることができる。関節症が検出された場合、第2の用量は、先の用量に対して低減することができる。
【0085】
特定の態様において、一旦、低用量を投与してから、対象を再び、関節症の解消をモニタリングすることができる。関節症が低用量の投与の約4週間後に軽減している場合、次の用量は、増やすことなどができる。
【0086】
特定の態様において、方法は、9mgの用量の抗NGF抗体を投与すること;対象が関節症を発症しているかどうかを決定するために対象の関節(例えば、膝関節または股関節)をモニタリングすること;ここで、対象が関節症を発症している場合、約9mg未満の用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与すること;または、対象が関節症を発症していない場合、約9mgの用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与することを含み得る。
【0087】
特定の態様において、方法は、6mgの用量の抗NGF抗体を投与すること;対象が関節症を発症しているかどうかを決定するために対象の関節(膝関節または股関節)をモニタリングすること;ここで、対象が関節症を発症している場合、約6mg未満の用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与すること;または、対象が関節症を発症していない場合、約6mgの用量の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与することを含み得る。
【0088】
特定の態様において、対象が関節症を発症している場合、1つまたはそれ以上の第2の用量は、関節症が軽減されるか、または検出不可能となるまで、1mgであり得る。一旦、関節症が検出不可能となると、次の用量は、初期用量と同じであり得る。一旦、関節症が軽減されると、次の用量は、関節症が検出不可能となるまで、3mgであり得る。一旦、関節症が検出不可能となると、次の用量は、初期用量と同じであり得る。
【0089】
疼痛関連パラメーターを改善するための方法:治療の効能測定
本発明は、それを必要とする対象における、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターを改善するための方法であって、NGFアンタゴニスト、例えば、本発明の抗NGF抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。
【0090】
「疼痛関連パラメーター」の例として、以下が挙げられる:(a)西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛スコア;(b)身体機能下位尺度スコア;および、(c)患者包括的評価(PGA)スコア膝および/または股関節痛の数値評価尺度(NRS)スコア;(d)Roland Morris身体障害アンケート(RMDQ)総合スコア;(e)医学的転帰検査(MOP)睡眠下位尺度スコア;(f)略式健康調査(SF-36)下位尺度スコア;(g)EQ-5D-5L;ならびに、(h)膝および/または股関節痛用の救済医薬を使用する患者の百分率。
【0091】
「疼痛関連パラメーターの改善」とは、以下の1つまたはそれ以上における、ベースラインからの著しい変化を意味する:(a)1日当たりの平均の膝および/もしくは股関節痛強度の数値評価尺度(NRS)スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;(b)Roland Morris身体障害アンケート(RMDQ)総合スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;(c)膝および/もしくは股関節痛スコアの患者包括的評価(PGA)における第16週でのベースラインからの変化量;または、(d)1日当たりの平均の膝および/もしくは股関節痛NRSスコアにおける第2週、第4週、第8週、および第12週でのベースラインからの変化量。加えて、「疼痛関連パラメーターの改善」とは、以下の1つまたはそれ以上における、ベースラインからの著しい変化を意味する:(e)(i)1日当たりの平均の膝および/もしくは股関節痛NRSスコア;(ii)RMDQ総合スコア;ならびに、(iii)膝および/もしくは股関節痛スコアのPGAに対する30%の低減および50%の低減で定義される、レスポンダーである患者の百分率における第16週でのベースラインからの変化量;または、(f)医学的転帰検査(MOP)睡眠下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;または、(g)略式健康調査(SF-36)下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの変化量;または、(h)EQ-5D-5Lにおける第16週でのベースラインからの変化量;または、i)膝および/もしくは股関節痛用の救済医薬を使用する患者の百分率における第16週でのベースラインからの変化量。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「ベースライン」とは、疼痛関連パラメーターに関して、本発明の医薬組成物の投与前または投与時に、対象の疼痛関連パラメーターの数値を意味する。
【0093】
疼痛関連パラメーターが「改善される」かどうかを決定するために、パラメーターは、ベースライン、および、本発明の医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時点で定量化する。例えば、疼痛関連パラメーターは、本発明の医薬組成物での最初の処置の後、ファシヌマブの投与後の様々な時点で、例えば、第1日、第2日、第3日、第4日、第5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第12日、第18日、第22日、第36日、第50日、第57日、第64日、第78日、第85日、第92日、第106日、第113日、第120日、または、第1週、第2週、第3週、第4週、第5週、第6週、第7週、第8週、第9週、第10週、第11週、第12週、第13週、第14週、第15週、第16週もしくはそれより長い週の終わりに、測定することができる。処置の開始後の特定時点でのパラメーターの値とベースラインでのパラメーターの値との間の差は、疼痛関連パラメーターにおける「改善」(例えば低下)があるかどうかを確認するために使用される。
【0094】
西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコア:WOMAC疼痛下位尺度スコアは、歩行中、階段の使用時、ベッドで安静時、座位または横臥、および立位での関節痛に関連する5つの質問の複合指数であり、Bellamy N.WOMAC Osteoarthritis Index:A User’s Guide.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年に記載される。個別のWOMACの質問は、0~10の尺度でスコア付けされる。5つの質問の各々のスコアを平均化する。
【0095】
WOMAC身体機能下位尺度スコア:WOMAC身体機能下位尺度スコアは、機能制限に対する17項目を測定する(尺度、0~68;0~10の尺度に演算的に変換される)。身体機能の質問は、階段の使用、座位または横臥の位置からの起立、立位、屈曲、歩行、車の乗降、停止、靴下の着脱、ベッドでの横臥、浴槽の出入り、座位、ならびに重度および軽度の家事のような、日常動作を網羅する。
【0096】
膝および/もしくは股関節痛強度-数値評価尺度:膝および/もしくは股関節痛強度の数値評価尺度(NRS)は、患者に、アンケートを埋めるか、または数値レベルを言語的に記載することで、0~10(11ポイントの尺度)、0~20(21ポイントの尺度)または0~100(101ポイントの尺度)の尺度の数値を選択することにより、患者自身の疼痛強度を評価することを求めることを含む。例えば:「あなたの疼痛を最も表す0と100の間の数字を下の線上に示してください。ゼロ(0)は、「疼痛なし」を意味し、百(100)は、「最悪の疼痛」を意味する。1つの数字のみを書いてください」。空のボックスまたは線は、入力される相当する数字用に用意されている。変化の少ないNRSは、ボックス尺度であり、各数字(例えば0~10)は、ボックスに記載されており、患者に以下が求められる:「ゼロ(0)が、「疼痛なし」を意味し、十(10)が、「最悪の疼痛」を意味する場合、0~10のこの尺度で、あなたの疼痛レベルはどれですか?数字に「×」を入れてください」。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、NRSスコアは低減する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約1mg、約2mg、約6mg、または9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上のNRSスコアにおけるベースラインからの低減をもたらす、治療方法を含む。
【0097】
Roland Morris身体障害アンケート:RMDQは、膝および/または股関節痛に対して、自己管理型の広く使用される健康状態の測定法である(Roland MO、Morris RW、Spine 1983年;8:141~144頁)。これは、膝および/または股関節痛により起こり得る日常生活の制限を記載する24項目を使用して、疼痛および機能を測定する。RMDQのスコアは、チェックした項目の総数、すなわち、最小値0から最大値24までである。Roland Morris身体障害アンケートは、身体機能および精神機能について、日常生活の様々な側面を網羅する、136項目の健康状態の測定である、疾病影響プロファイル(SIP)から記載を選択することにより組み立てる。尺度は、膝および/または股関節痛に由来する障害を特別に評価するための、身体機能に特別に関連する24個のはい/いいえの項目からなる。考慮される身体機能は、歩行、屈曲、座位、横臥、着替え、睡眠、自己管理、および日常動作を含む。患者は、記載がその日(すなわち最後の24時間)の患者自身に当てはまるかどうかを尋ねられる。この尺度において、1ポイントが、各項目に対して与えられる。RDQスコアは、チェックした項目の数を積算して得ることができる。最終スコアは、0(障害なし)から24(重度の障害)の範囲である。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、RMDQスコアは低減する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約6mgまたは9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、中程度の改善に対して少なくとも約2~5ポイント、および、大きいとみなされる改善または実質的な改善に対して5ポイント超のRMDQスコアにおけるベースラインからの低減をもたらす、治療方法を含む。
【0098】
膝および/または股関節痛の患者包括的評価:膝および/または股関節痛のPGAは、5ポイントのリッカート尺度(1=非常に良好;2=良好;3=普通;4=不良;5=非常に不良)での現在の疾患状態の患者が評価付けした評価である。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、膝および/または股関節痛のPGAスコアは低減する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約6mgまたは9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、少なくとも約1ポイント、または2ポイント、または3ポイントまたはそれ以上の膝および/または股関節痛のPGAスコアにおけるベースラインからの低減をもたらす、治療方法を含む。
【0099】
略式(36)健康調査:SF-36は、全身健康の自己管理型の調査である。これは、健康の8個の分野:身体機能、身体的健康による役割制限、身体の疼痛、全身健康の認識、活力、社会的機能、精神的問題による役割制限、および精神健康を測定する。これら8個の健康分野、ならびに、身体および精神健康の2個の概略の測定:身体的な成分の概略および精神的な成分の概略の各々に対して尺度スコアを得る。各尺度は、各質問が同等の比重を持つという前提で、0~100の尺度に直接変換される。スコアがより低いと、障害がより多い。スコアがより高いと、障害がより少ない、すなわち、ゼロのスコアは、最大の障害と同等であり、100のスコアは、障害がないことと同等である。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、SF-36スコアは増加する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約6mgまたは9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上のSF-36スコアにおけるベースラインからの増加をもたらす、治療方法を含む。
【0100】
医学的転帰検査睡眠調査:MOS睡眠調査は、睡眠習慣の自己管理型の12個の質問の調査である(Hays RD、Stewart A L(1992).Sleep measures.In A.L.Stewart&J.E.Ware(編)、Measuring functioning and well-being:The Medical Outcomes Study approach(235~259頁)、Durham、NC:Duke University Press)。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、MOS睡眠調査はベースラインから改善する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約6mgまたは9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、MOS睡眠調査におけるベースラインからの変化をもたらす、治療方法を含む。
【0101】
EQ-5D-5L:EQ-5D-5Lは、臨床的および経済的評価のための健康の簡単で包括的な測定を提供する、EuroQolグループにより開発された健康状態の標準的な測定である。EQ-5D-5Lは、健康関連の生活の質の測定として、5次元:移動性、自己管理、通常の動作、疼痛/不快感、不安感/憂鬱感の項目において健康を定義する。各次元は、重症度の3つの順序付けられたレベル:「問題なし」(1)、「いくらかの問題あり」(2)、「重度の問題あり」(3)を有する。全般的な健康状態は、5桁の数字として定義される。5次元の分類で定義づける健康状態は、健康状態を定量化する対応する指標スコアに変換することができ、-0.594は、「重度の問題あり」を表し、1は、「問題なし」を表す。本発明の特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストの患者への投与により、EQ-5D-5Lはベースラインから改善する。例えば、本発明は、NGFアンタゴニストの投与(例えば、抗NGF抗体またはその抗原結合断片約6mgまたは9mgの投与)の2週間後、4週間後、8週間後、12週間後、および16週間後またはそれ以降に、EQ-5D-5Lにおけるベースラインからの変化をもたらす、治療方法を含む。
【0102】
疼痛、鎮痛剤に対する無応答性、または不耐性などを評価するための様々な方法のさらなる詳細は、US20180147280に開示されており、本明細書でその全体を参照によって組み入れる。
【0103】
NGFアンタゴニスト
上記に詳細に開示される通り、本発明は、それを必要とする対象に、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を含む。本明細書で使用される場合、「NGFアンタゴニスト」は、NGFと結合するか、または相互作用し、NGFがインビトロまたはインビボでの細胞で発現している場合、NGFの正常な生物学的機能を阻害する、任意の薬剤である。NGFアンタゴニストの分類の非限定的な例として、小分子NGFアンタゴニスト、抗NGFアプタマー、ペプチド系NGFアンタゴニスト(例えば「ペプチボディ」分子)、およびヒトNGFに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0104】
本明細書で使用される用語「NGF」、「hNGF」などは、神経成長因子、特にヒト神経成長因子を指すことを意図し、そのアミノ酸配列は、配列番号18で示され、これは、配列番号17で示される核酸配列によりコードされる。非ヒト種由来であると特別に指定されない限り、用語「NGF」は、本明細書で使用される場合、ヒトNGFを意味すると理解されるべきである。
【0105】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互に接続された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む免疫グロブリン分子、ならびに、その多量体(例えばIgM)を指すことを意図する。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVHと本明細書で略される)、および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVRまたはVLと本明細書で略される)、および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分化され、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存される領域が点在することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番で並ぶ、3つのCDRおよび4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施形態において、抗NGF抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系配列と同一であり得るか、または、天然であるか、もしくは人工的に改変することができる。アミノ酸共通配列は、2つ以上のCDRの並列解析に基づいて定義することができる。
【0106】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合断片を含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合して錯体を形成する、任意の天然の、酵素的に得ることが可能な、合成または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変ドメインおよび任意で定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む、タンパク質分解性消化または遺伝子操作技術のような、任意の好適な標準技術を使用して、完全な抗体分子に由来することができる。このようなDNAは、公知であり、および/または、例えば市販品、DNAライブラリー(例としてファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、もしくは合成することができる。DNAは、化学的に、または、例えば、1つもしくはそれ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な構成に配置するか、もしくは、コドンを導入し、システイン残基を創出し、アミノ酸を修飾するか、添加するか、もしくは欠失するなどの分子生物学的技術を使用することにより、配列決定し、操作することができる。
【0107】
抗原結合断片の非限定例として、以下が挙げられる:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変性領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離した相補性決定領域(CDR))、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、低分子化抗体、ナノボディ(例えば一価のナノボディ、二価のナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような、他の操作された分子はまた、本明細書で使用される表現「抗原結合断片」に包含される。
【0108】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であり得、一般に少なくとも1つのCDRを含み、これは、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、または1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列とインフレームである。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合断片において、VHおよびVLドメインは、任意の好適な配列において互いに相対して置くことができる。例えば、可変領域は、二量体であり得、VH-VH、VH-VL、またはVL-VLの二量体を含有する。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVHまたはVLドメインを含有し得る。
【0109】
特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインと共有結合する少なくとも1つの可変ドメインを含有することができる。本発明の抗体の抗原結合断片で見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な構成は、以下を含む:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および、(xiv)VL-CL。可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構造において、上で列挙した例示的な構造のいずれかも含めて、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結し得るか、または完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域により連結し得るかのいずれかである。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60、またはそれ以上)のアミノ酸からなり得、これにより、単一のポリペプチド分子での隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間に可撓性または半可撓性の連結がもたらされる。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いに非共有結合である、および/または、(例えばジスルフィド結合による)1つまたはそれ以上の単量体のVHまたはVLドメインを有する、上に列挙した可変ドメインおよび定常ドメインの構造のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0110】
完全な抗体分子として、抗原結合断片は、単一特異性、または多特異性(例えば二重特異性)であり得る。抗体の多特異性抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別々の抗原、または同じ抗原の異なるエピトープと特異的に結合することが可能である。任意の多特異性抗体形式は、当該技術分野で利用可能な常用技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片の文脈において使用するために適合することができる。
【0111】
抗体の定常領域は、抗体の補体を固定し、細胞依存性細胞傷害性を媒介する能力において重要である。ゆえに、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいかどうかに基づいて、選択することができる。
【0112】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。それにもかかわらず、本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的突然変異生成、またはインビボでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図していない。
【0113】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、非天然ヒト抗体を含むことを意図する。この用語は、非ヒト哺乳動物または非ヒト哺乳動物の細胞で組換えにより産生された抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離されるか、またはヒト対象で生成された抗体を含むことは意図していない。
【0114】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現させる抗体(以下にさらに記載する)、組換え組合せヒト抗体ライブラリー(以下にさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子にトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離した抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁を参照のこと)、または、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段により調製されるか、発現されるか、創出されるか、または単離される抗体のような、組換え手段により調製されるか、発現されるか、創出されるか、または単離される全てのヒト抗体を含むことを意図する。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する。しかし、特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異形成(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合、インビボ体細胞突然変異形成)を行うので、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系VHおよびVL配列に由来し、これらに関連しながら、インビボでのヒト抗体生殖系レパートリー内には天然に存在し得ない配列である。
【0115】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。第1の形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が、鎖間重鎖ジスルフィド結合により合わせて保持される、およそ150~160kDaの安定な4つの鎖の構築物を含む。第2の形態において、二量体は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結されず、共有結合する軽鎖および重鎖(半抗体)からなる、約75~80kDaの分子を形成する。これらの形態は、親和精製後でさえ、分離することが極めて困難である。
【0116】
様々な無処理のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、限定されないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の差異による。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換基により、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルに、第2の形態の出現を著しく低下させる(Angalら(1993)Molecular Immunology 30:105頁)。本発明は、ヒンジ、CH2、またはCH3領域において、例えば、産生時に、所望の抗体形態の収率を改善するのに望ましい可能性がある、1つまたはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0117】
「単離した抗体」とは、本明細書で使用される場合、同定され、その天然環境の少なくとも1つの成分から、分離および/または回復させる抗体を意味する。例えば、有機体の少なくとも1つの成分、または、抗体が天然に存在するか、もしくは天然で産生される組織もしくは細胞から、分離または除去される抗体は、本発明の目的で「単離した抗体」である。単離した抗体はまた、組換え細胞内その場での抗体を含む。単離した抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程を行っている抗体である。特定の実施形態によると、単離した抗体は、実質的に、他の細胞性物質および/または化学物質を含まない。
【0118】
用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合断片が生理学的状態下で比較的安定である抗原と錯体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で周知されており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、NGFに「特異的に結合する」抗体は、本発明の文脈で使用される場合、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、0.1nM未満、1.0pM未満、または0.5pM未満のKDを有するNGFまたはその部分に結合する、抗体を含む。しかし、ヒトNGFに特異的に結合する単離した抗体は、他の(非ヒト)種由来のNGF分子のような、他の抗原と交差反応し得る。
【0119】
本発明の方法に有用な抗NGF抗体は、抗体が由来する対応する生態系配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。このような突然変異は、本明細書で開示されるアミノ酸配列を、例えば公開抗体配列データベースから利用可能な生態系配列と比較することにより、容易に確認することができる。本発明は、抗体およびその抗原結合断片の使用を含む方法を含み、これは、本明細書で開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来し、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系配列の対応する残基、または別のヒト生殖系配列の対応する残基、または対応する生殖系残基の保存性アミノ酸置換基に突然変異させる(このような配列変化は、本明細書で集合的に「生殖系突然変異」と呼ばれる)。当業者は、本明細書で開示される重鎖および軽鎖可変領域配列で開始し、1つまたはそれ以上の個別の生殖系突然変異、またはその組合せを含む、多くの抗体および抗原結合断片を容易に産生することができる。特定の実施形態において、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全ては、抗体が由来する元の生殖系配列で見られる残基に復帰変異する。他の実施形態において、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内で見られる突然変異した残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内で見られる突然変異した残基のみは、元の生殖系配列に復帰変異する。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基の1つまたはそれ以上は、異なる生殖系配列(例えば、抗体が本来由来する生殖系配列と異なる生殖系配列)の対応する残基に突然変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系突然変異の任意の組合せを含有することができ、例えば、特定の個々の残基は、元の生殖系配列と異なる特定の他の残基が、維持されているか、または異なる生殖系配列の対応する残基に突然変異しながら、特定の生殖系配列の対応する残基に突然変異する。一旦得られると、1つまたはそれ以上の生殖系突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増加、拮抗性または作動性生物学的特性の改善または向上(場合に応じて)、免疫原性の低下などのような、1つまたはそれ以上の所望の特性に対して、容易に試験することができる。この一般的な様式で得られる抗体および抗原結合断片の使用は、本発明に包含される。
【0120】
本発明はまた、1つまたはそれ以上の保存性置換基を有する、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む、抗NGF抗体の使用を含む、方法も含む。例えば、本発明は、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに関して、例えば、10以下、8以下、6以下、または4以下などの保存性アミノ酸置換基を伴うHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する、抗NGF抗体の使用を含む、方法を含む。
【0121】
用語「表面プラズモン共鳴」とは、本明細書で使用される場合、例えば、BIAcore(商標)システム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare、Piscataway、NJ)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイム相互作用の解析を可能にする、光学現象を指す。
【0122】
用語「KD」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
【0123】
用語「エピトープ」とは、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における、特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、2つ以上のエピトープを有することができる。ゆえに、異なる抗体は、抗原の異なる領域に結合でき、異なる生物学的効果を有することができる。エピトープは、立体配座または直鎖状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから、空間的に並置されるアミノ酸により産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接したアミノ酸残基により産生されるものである。特定の条件において、エピトープは、抗原での糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0124】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックなマウスにおいてヒト抗体を産生するための方法は、当該技術分野で知られている。任意のこのような公知の方法は、ヒトNGFに特異的に結合するヒト抗体を作製する本発明の文脈において使用することができる。
【0125】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticalsを参照のこと)、またはモノクローナル抗体を産生するための任意の他の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、NGFに高親和性のキメラ抗体は、最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが、抗原刺激に応答して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域部位と動作可能に結合するヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有する、トランスジェニックなマウスの産生を含む。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAは、単離され、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に結合させる。次いで、DNAは、完全なヒト抗体を発現することが可能な細胞で発現させる。
【0126】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、目的の抗原に攻撃され、リンパ細胞(例えばB細胞)は、抗体を発現するマウスから回復させる。リンパ細胞を、骨髄腫細胞株で融合して、不死化ハイブリドーマ細胞株を生成することができ、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために選択する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の所望のアイソタイプの定常領域に結合することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において産生することができる。あるいは、抗原に特異的なキメラ抗体をコードするDNA、または軽鎖および重鎖の可変ドメインは、抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
【0127】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、高親和性のキメラ抗体を単離する。抗体は、当業者に公知の標準的な措置を使用して、親和性、選択性、エピトープなどを含む、所望の特徴のために、特徴付けされ、選択される。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置き換えて、本発明の完全なヒト抗体、例えば野生型または改変したIgG1またはIgG4を産生する。選択した定常領域が、特別な使用にしたがって異なり得るが、高親和性の抗原結合性および標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0128】
一般に、本発明の方法で使用することができる抗体は、固相に固定化されるか、または溶液相内のいずれかの抗原に結合することにより測定される場合、上述の通り、高親和性を有する。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置き換えて、本発明の完全なヒト抗体を産生する。選択した定常領域が、特別な使用にしたがって異なり得るが、高親和性の抗原結合性および標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0129】
本発明の方法の文脈において使用することができるNGFに特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合断片の具体的な実施例として、配列番号2からなるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含有される3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む、任意の抗体または抗原結合断片が挙げられる。抗体または抗原結合断片は、配列番号10からなるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含むことができる。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当該技術分野で周知されており、本明細書で開示される、特異的なHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するのに使用することができる。CDRの境界を同定するのに使用することができる例示的な規約として、例えば、Kabatの定義、Chothiaの定義、およびAbMの定義が挙げられる。一般に、Kabatの定義は、配列変動性に基づき、Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づき、AbMの定義は、KabatおよびChothiaのアプローチ間の妥協である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997);および、Martinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268~9272頁(1989)を参照のこと。公開データベースもまた、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0130】
本発明の特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)由来の6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0131】
本発明の特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4/6/8/12/14/16からなるアミノ酸配列を有する6つのCDR(HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3)を含む。
【0132】
本発明の特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10からなるHCVR/LCVRアミノ酸配列を含む。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「ファシヌマブ」は、抗NGF抗体を指すために互換的に使用する。重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDR部分のアミノ酸配列、ならびにファシヌマブのヌクレオチド配列は、それぞれ、表1Aおよび1Bに記載する。ファシヌマブの特徴付けは、PCT公開第WO2009/023540号、およびWHO Drug Information 26巻、2号(2012)に記載され、これら全ては、その全体を本明細書において参照によって組み入れる。表1Aおよび1Bは、本明細書で開示される抗NGF抗体に対する、アミノ酸配列番号および核酸配列番号を列挙する。
【0134】
【0135】
【0136】
医薬組成物
本発明は、NGFアンタゴニストを患者に投与することを含む方法であって、NGFアンタゴニストは、医薬組成物に含有される、方法を含む。本発明の医薬組成物は、好適な担体、添加剤、および、好適な移動、送達、耐性などをもたらす他の薬剤で製剤化される。多数の適切な処方は、全ての薬剤師に知られている処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAで見出すことができる。これらの処方として、例えば、粉剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス、油剤、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)(例えばLIPOFECTIN(商標))、DNA複合体、吸収ペースト剤の無水物、水中油型および油中水型の乳剤、乳剤カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル剤、ならびに、カーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。また、Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311頁を参照のこと。
【0137】
本発明の方法による患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢および体格、症状、状態、投与経路などに依存して変化し得る。用量は、典型的には、体重または体表面積にしたがって計算される。状態の重症度によって、処置の頻度および期間は、調節することができる。抗NGF抗体を含む医薬組成物を投与するための効果的な投与量およびスケジュールは、経験的に決定することができ;例えば、患者の進行を、定期評価によりモニタリングするので、用量を調節することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当該技術分野で周知の方法を使用して行うことができる(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut.Res.8:1351頁)。本発明の文脈において使用することができる、抗IL4R抗体の特別な例示的な用量、およびこれに関与する投与レジメンは、本明細書の他の場所で開示される。
【0138】
様々な送達システムは、公知であり、本発明の医薬組成物を投与するのに使用することができるが、例えば、これは、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、ウイルス変異株を発現することが可能な組換え細胞中の封入、受容体依存性エンドサイトーシスである(例えば、Wuら、1987年、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照のこと)。投与方法として、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の従来の経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収により投与することができ、他の生物活性剤と共に投与することができる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、標準的な針および注射器で皮下または静脈内で送達することができる。加えて、皮下送達に対して、ペン送達デバイスは、本発明の医薬組成物を送達するのに容易に適用される。このようなペン送達デバイスは、再利用可能か、または使い捨てであり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。一旦、カートリッジ内の医薬組成物の全てを投与し、カートリッジが空になると、空のカートリッジは、容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新規のカートリッジと交換することができる。次いで、ペン送達デバイスは、再使用することができる。使い捨てのペン送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てのペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバー内に保持される医薬組成物でプレフィルドする。一旦、リザーバーの医薬組成物が空になると、全てのデバイスは廃棄される。
【0140】
多くの再利用可能なペンおよび自動注射器の送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達での用途を有する。例として、限定されないが、数例挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達での用途を有する使い捨てのペン送達デバイスの例として、限定されないが、数例挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、ならびにHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられる。
【0141】
特定の状況において、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施形態において、ポンプは、使用することができる(Langer、上述;Sefton、1987年、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201頁を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー材料は、使用することができ、Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態において、制御放出システムは、組成物の標的の近傍に位置するので、全身用量の一部のみを必要とすることができる(例えば、Goodson、1984年、Medical Applications of Controlled Release、上述、2巻、115~138頁を参照のこと)。他の制御放出システムは、Langer、1990年、Science 249:1527~1533頁の総説において考察されている。
【0142】
注射可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内の注射、点滴など剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公知の方法により製造することができる。例えば、注射可能な調製物は、例えば、上述の抗体またはその塩を、注射用に従来使用される滅菌水性媒体または油性媒体に溶解させる、懸濁させる、または乳化させることにより製造することができる。注射用の水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これは、アルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えばポリソルベート80、硬化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50mol)付加物]などのような適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などを利用し、これは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような、可溶化剤と組み合わせて使用することができる。ゆえに、製造される注射剤は、適切なアンプルに充填することができる。
【0143】
有利に、上述の経口または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適した単位用量での剤形に製造される。単位用量でのこのような剤形として、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0144】
本発明の文脈において使用することができる抗NGF抗体を含む例示的な医薬組成物は、開示される。有用な抗体の例は、国際公開第WO2018/102294号、米国特許第7,988,967号、および米国特許出願公開第2012/0097565号に開示されている。さらに、抗体を含む有用な製剤は、米国特許出願公開第2012/0014968号に開示されている。これら全ては、参照によって本明細書に組み入れる。
【0145】
投与量
本発明の方法にしたがって対象に投与されるNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)の量は、一般に、治療有効量である。本明細書で使用される場合、成句「治療有効量」とは、以下の1つまたはそれ以上をもたらすNGFアンタゴニストの量を意味する:(a)1つもしくはそれ以上の疼痛関連パラメーターの改善(本明細書の他の場所で定義);および/または、(b)疼痛の1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候の検出可能な改善。「治療有効量」はまた、対象における疼痛の進行を阻害する、防止する、低減する、または遅延させるNGFアンタゴニストの量を含む。
【0146】
抗NGF抗体の場合、治療有効量は、約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約3.0mg、約6.0mg、約9.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗NGF抗体であり得る。特定の実施形態において、約1mg~10mgの抗NGF抗体を、対象に投与する。特定の実施形態において、約1mg、3mg、6mg、または9mgの抗NGF抗体を、対象に投与する。特定の場合、抗NGF抗体は、本明細書で開示されるCDRを含む。特定の態様において、抗NGF抗体は、ファシヌマブである。
【0147】
個々の用量に含有するNGFアンタゴニストの量は、患者の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわちmg/kg)で表される。例えば、NGFアンタゴニストは、患者の体重1kg当たり約0.0001~約10mg/kgの用量で、患者に投与することができる。例えば、NGFアンタゴニストは、患者の体重1kg当たり約0.03~約3mg/kgの用量で、患者に投与することができる。例えば、NGFアンタゴニストは、患者の体重1kg当たり約0.03~約3mg/kgの用量で、患者に投与することができる。
【0148】
併用療法
本発明の方法は、特定の実施形態によると、NGFアンタゴニストと組み合わせて、対象に、1つまたはそれ以上の追加の治療剤を投与することを含む。本明細書で使用される場合、表現「と組み合わせて」とは、追加の治療剤を、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の前に、後に、または同時に投与することを意味する。用語「と組み合わせて」はまた、NGFアンタゴニストおよび第2の治療剤の逐次投与または併用投与を含む。
【0149】
例えば、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の「前に」投与する場合、追加の治療剤は、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約72時間前、約60時間前、約48時間前、約36時間前、約24時間前、約12時間前、約10時間前、約8時間前、約6時間前、約4時間前、約2時間前、約1時間前、約30分前、約15分前、または約10分前に投与することができる。NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の「後に」投与する場合、追加の治療剤は、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約10分後、約15分後、約30分後、約1時間後、約2時間後、約4時間後、約6時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間後、約60時間後、または約72時間後に投与することができる。NGFアンタゴニストを含む医薬組成物との「同時」投与とは、追加の治療剤を、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の5分未満以内に(前に、後に、もしくは同時に)、別々の剤形で対象に投与するか、または、追加の治療剤およびNGFアンタゴニストの両方を含む単一の混合製剤として対象に投与することを意味する。
【0150】
追加の治療剤は、例えば、別のNGFアンタゴニスト(例として、US7449616(タネズマブ);US7569364;US7655232;US8088384;WO2011049758(フルラヌマブ)に記載されるNGF抗体を参照のこと)、IL-1アンタゴニスト(例として、US6,927,044に示されるIL-1アンタゴニストを含む)、IL-6アンタゴニスト、IL-6Rアンタゴニスト(例として、US7,582,298に示される抗IL-6R抗体を含む)、オピオイド、アセトアミノフェン、局所麻酔、NMDAモジュレーター、カンナビノイド受容体アゴニスト、P2Xファミリーモジュレーター、VR1アンタゴニスト、物質Pアンタゴニスト、Nav1.7アンタゴニスト、サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト、抗てんかん薬、ステロイド、他の炎症性阻害剤(例として、カスパーゼ1、p38、IKK1/2、CTLA-4Igの阻害剤)、および、コルチコステロイドであり得る。
【0151】
投与レジメン
本発明は、治療効果を達成する限り、週に約4回、週に2回、週に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、12週間ごとに1回の投与頻度、または、それより少ない頻度で、NGFアンタゴニストを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。ファシヌマブのような抗NGF抗体を含む医薬組成物の投与に関与する、特定の実施形態において、約1、3、6、または9mgの量での4週間ごとに1回の投与を利用することができる。ファシヌマブのような抗NGF抗体を含む医薬組成物の投与に関与する、特定の実施形態において、約1、3、6、または9mgの量での8週間ごとに1回の投与を利用することができる。ファシヌマブのような抗NGF抗体を含む医薬組成物の投与に関与する、特定の実施形態において、約1、3、6、または9mgの量での12週間ごとに1回の投与を利用することができる。
【0152】
本発明の特定の実施形態によると、多回用量のNGFアンタゴニストを、定義した時間経過にわたって対象に投与することができる。本発明の本態様による方法は、多回用量のNGFアンタゴニストを対象に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与すること」とは、各用量のNGFアンタゴニストを、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例として、数時間、数日、数週間、または数か月)を隔てた異なる日に、対象に投与することを意味する。本発明は、患者に、単一の初期用量のNGFアンタゴニストと、続く1つまたはそれ以上の第2の用量のNGFアンタゴニストを、任意で、続いて1つまたはそれ以上の第3の用量のNGFアンタゴニストを、逐次的に投与することを含む、方法を含む。
【0153】
用語「初期用量」、「第2の用量」、および「第3の用量」とは、NGFアンタゴニストの投与の時系列を指す。ゆえに、「初期用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」ともいう)であり;「第2の用量」は、初期用量の後に投与される用量であり;「第3の用量」は、第2の用量の後に投与される用量である。初期、第2、および第3の用量は全て、同じ量のNGFアンタゴニストを含有し得るが、一般に、投与の頻度に対して互いに異なることができる。しかし、特定の実施形態において、初期、第2、および/または第3の用量に含有するNGFアンタゴニストの量は、処置の過程で、(例えば、必要に応じて上下に調節して)互いに変化する。特定の実施形態において、1またはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5)の用量を、「負荷用量」として処置レジメンの開始時に、続いてより少ない頻度で投与されるその後の用量(例えば、「維持用量」)で投与する。例えば、NGFアンタゴニストを、維持用量の2倍と等しい負荷用量で、腰痛患者に投与することができる。したがって、維持用量が3mgである場合、負荷用量は、6mgである。維持用量が6mgである場合、負荷用量は、12mgである。維持用量が9mgである場合、負荷用量は、18mgである。したがって、約6mg、12mg、または18mgの負荷用量と、続くそれぞれ約3mg、6mg、または9mgの1、2、またはそれ以上の維持用量は、本明細書で示される通り、少なくとも1つの疼痛パラメーターにおいてベースラインからの変化を達成するのに十分であり得ることが想定されている。
【0154】
本発明の例示的な一実施形態において、第2および/または第3の各用量を、直前の投与の後の1~16週間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16週間、またはそれ以降)投与する。本発明の例示的な一実施形態において、第2および/または第3の各用量を、直前の投与の後、4、8、または12週間ごとに1回に投与する。成句「直前の投与」とは、本明細書で使用される場合、一連の多回投与において、介在する用量がない順番で、まさに次の用量の投与の前に患者に投与される、NGFアンタゴニストの用量を意味する。
【0155】
本発明の本態様による方法は、任意数の第2および/または第3の用量のNGFアンタゴニストを、患者に投与すること含むことができる。例えば、特定の実施形態において、単一の第2の用量のみ、患者に投与する。他の実施形態において、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の第2の用量を、患者に投与する。同様に、特定の実施形態において、単一の第3の用量のみ、患者に投与する。他の実施形態において、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の第3の用量を、患者に投与する。
【0156】
第2の多回用量に関与する実施形態において、第2の各用量は、他の第2の用量と同じ頻度で投与し得る。例えば、第2の各用量は、直前の投与の1~2週間後、または直前の投与の4~8週間後に患者に投与することができる。同様に、第3の多回用量に関与する実施形態において、第3の各用量は、他の第3の用量と同じ頻度で投与し得る。例えば、第3の各用量は、直前の投与の2~4週間後に患者に投与することができる。あるいは、第2および/または第3の用量を患者に投与する頻度は、処置レジメンの過程にわたって変化し得る。投与の頻度はまた、臨床試験に続く個々の患者の必要性によって医師により、処置の過程で調節することができる。
【0157】
本発明は、NGFアンタゴニスト、および第2の治療剤の、変形性関節炎痛を処置するために患者への逐次投与を含む、方法を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、1つまたはそれ以上の用量のNGFアンタゴニストと、続く1つまたはそれ以上の用量の第2の治療剤を投与することを含む。例えば、1つまたはそれ以上の用量の約1mg~約20mgのNGFアンタゴニストを投与した後、1つまたはそれ以上の用量の第2の治療剤(例えば、アセトアミノフェン、もしくはオピオイド、または任意の他の治療剤、本明細書に他の箇所で記載されている)を投与して、変形性関節炎痛の1つまたはそれ以上の症状を処置する、緩和する、軽減する、または改善することができる。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストを、1つまたはそれ以上の疼痛関連パラメーターを改善する1つまたはそれ以上の用量と、続く第2の治療剤を投与して、変形性関節炎痛の少なくとも1つの症状の再発を防止する。本発明の代替的な実施形態は、NGFアンタゴニストおよび第2の治療剤の併用投与に関係する。例えば、1つまたはそれ以上の用量のNGFアンタゴニストを投与し、第2の治療剤をNGFアンタゴニストに対して類似のまたは異なる頻度で別々の投与量で投与する。いくつかの実施形態において、第2の治療剤を、NGFアンタゴニストの前に、後に、または同時に投与する。
【実施例】
【0158】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製し、使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが本発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実する取組みがなされているが、いくらかの実験誤差および偏差は、説明する必要がある。別段示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧であるか、大気圧近くである。
【実施例1】
【0159】
患者および方法
患者。的確な患者は40~80才であり;放射線学的な確認を伴う、OAに対する米国リウマチ学会基準に基づいて、膝および/または股関節(スクリーニング来診の時点で最も症状が出ている指標関節を指定)のOAの診断を受けており(0~4の尺度で、2以上のKellgren-Lawrence[K-L]等級分け);通常の鎮痛医薬を投与しながらのスクリーニング、および無作為化来診の両方で、4以上の西オンタリオ大学およびマクマスター大学変形性関節炎指数(WOMAC)疼痛下位尺度スコアとして定義される、指標関節における中程度から重度の疼痛を示したが、これは、鎮痛療法の中断の7日後に起こった。患者は、アセトアミノフェンおよび1つ以上の経口NSAIDでの不十分な疼痛軽減またはそれらに対する不耐性の履歴を有し、オピオイドでの不十分な疼痛軽減、オピオイドに対する不耐性、またはオピオイド使用に対する不同意の履歴を有する必要があった。患者はまた、OA痛に対する通常の鎮痛剤の使用の履歴を有する必要があった(スクリーニングの前の4週間、平均で4日/週)。患者は、他の関節疾患、スクリーニング前の30日以内の指標関節の外傷、活発な線維筋痛もしくは別の中程度から重度の疼痛状態、または39超のボディーマスインデックスの履歴がある場合は除外した。
【0160】
試験設計。このIIb/III相二重盲検プラセボ対照試験を、米国の61か所で実施した。患者を無作為化して(1:1:1:1:1)、16週の処置期間にわたって、合計で4用量を4週間ごとに1回、ファシヌマブ1mg、3mg、6mg、もしくは9mg、またはプラセボを皮下投与した(
図1)。関節およびOA重症度にわたって処置のバランスが取れた割付けを確実にするために、無作為化は、指標関節(膝または股関節)、およびK-Lスコア(2~3対4)で層別化した。処置期間の後、患者を、さらに20週間追跡し、結果的に36週の試験期間となった。効能および安全性評価を、第36週を通して、各試験来診で行った。追加の安全性データを、第24週、および第32週に、電話調査を介して捕捉した。
【0161】
患者は、無作為化前の来診時、無作為化の前の7日間に、鎮痛医薬の使用を中止する必要があった。疼痛および包括的評価スコアを、先の鎮痛医薬の中止の前後で得た。これらスコアは、疼痛の閾値(10のスコアで4以上)を満たさなければならないが、疼痛増悪である必要はない。
【0162】
無作為化前期間(先の鎮痛療法の中断の間)に開始し、第20週を通して継続することで、患者は、試験で提供される救済鎮痛医薬(4~6時間ごとに1~2錠のアセトアミノフェン325mg、耐えられない疼痛の場合は必要に応じて、1日に最大で8錠または2600mg)を摂取することが可能になったが、第16週を通して各試験来診の開始の48時間以上前に中止した。患者は、担当医師により必要と認められた場合、第16週の来診の完了後のみ、オピオイドを摂取することができた。患者は、試験薬の最終用量(第28週)の16週間以上後まで、いかなるNSAID(経口または局所、ただし心臓病予防に対するアスピリン100mg/日以下を除く)も使用することができなかった。
【0163】
独立データモニタリング委員会は、全ての非盲検化データを定期的に再検討し、必要に応じて提言を行うが、依頼者に対しては、試験の実施に関して盲検のままにした。本試験は、ヘルシンキ宣言に由来し、適正臨床基準に対する医薬品規制調和国際会議ガイドラインおよび適用される規制要件と一致する、倫理原則にしたがって実施した。インフォームドコンセントを、登録前に各患者から得た。
【0164】
効能エンドポイント。主要な効能エンドポイントは、WOMAC疼痛下位尺度スコア(歩行中、階段の使用時、ベッドで安静時、座位または横臥、および立位での関節痛に関連する5つの質問の複合指数)におけるベースラインから第16週までの変化量であった(Bellamy N.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年)。個別のWOMACの質問は、0~10の尺度でスコア付けされる。5つの質問の各々のスコアを平均化する。WOMAC疼痛下位尺度(Bellamy N.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年)におけるファシヌマブでの改善のプラセボ調整した平均値を、処置群にわたって評価した。
【0165】
第2の効能エンドポイントは、WOMAC身体機能下位尺度スコア(尺度、0~68;0~10の尺度に演算的に変換される;Bellamy N.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年)、および患者包括的評価(PGA)スコア(最高スコアである最悪の評価を伴う1~5の尺度での1つの質問(Strand V、Kellman A.Curr Rheumatol Rep 2004年:6:20~30頁))におけるベースラインから第16週までの変化量であった。
【0166】
試験的な効能エンドポイントは、数値評価尺度(NRS;尺度0~10;0=疼痛なし;MCID:約1ポイント)での毎日および週間(前週にわたる1日当たりのスコアの平均値)の歩行指標関節痛スコア(Salaffi Fら、Eur J Pain 2004年;8:283~91頁);WOMAC疼痛およびWOMAC身体機能下位尺度スコアにおける第16週で応答した患者の百分率(30%以上および50%以上の軽減として定義された);リウマチ学委員会の転帰測定基準と国際変形性関節症学会常任委員会の臨床試験反応基準イニシアティブ(OMERACT-OARSI)レスポンダー指標(膝または股関節OA痛を測定する11項目のツール)を使用する応答速度(Pham Tら、J Rheumatol 2003年;30:1648~54頁);ならびに、略式36(SF-36)健康調査(Ware JE Jrら、Med Care 1992年;30:473~83頁)、およびEuroQol 5次元5レベル(EQ-5D-5L)尺度利用指標スコア(van Reenen Mら、Rotterdam、The Netherlands:European Quality of Life Research Foundation、2015年4月)を使用して評価される、生活の質を含んだ。追加の試験的な解析を行って、先の鎮痛療法の中止後、10ポイントのWOMAC疼痛下位尺度での-1、-1.5、および-2ポイントの無作為化前から無作為化までの疼痛スコアにおける変化量の閾値により定義して、疼痛増悪の有無にしたがってファシヌマブへの応答を評価した。
【0167】
安全性エンドポイント。治療下に発現した有害事象(TEAE)、特に注目すべき有害事象(裁定済みの関節症および交感神経系不全)、ならびに血液学的および血清化学実験室試験を評価することにより、安全性を評価した。
【0168】
関節の有害事象の高いリスクが、抗NGF抗体での臨床試験で報告されていることを考えると(Miller REら、Clin Exp Rheumatol 2017年;35 Suppl 107:85~7頁;Kumar V、Mahal BA.J Pain Res 2012年;5:279~87頁;およびHochberg MC.Osteoarthritis Cartilage 2015年:23 Suppl 1;S18~21)、裁定済みの関節症、急速進行性OAに対する包括的な用語(1型:所定の閾値を超えて狭い関節腔、および、2型:単純撮影写真での骨構造の変化)、軟骨下脆弱性骨折および原発性骨壊死を、3名の放射線科医からなる独立した盲検的な委員会が評価した。関節の安全性を、スクリーニング時、処置期間の終了時(第16週)、および試験の終了時(第36週)に、肩、股関節、および膝の単純X線写真を介して、全ての対象においてモニタリングした。撮像はまた、担当医師がOAによる患者の通常の疼痛と一致しないと評価した関節痛の悪化のために、試験中の任意の時間に実施した。磁気共鳴映像法(MRI)を、指標関節および反対側の関節、ならびにベースラインでのK-Lスコアが3以上である任意の関節のベースラインで行った。追跡のX線写真で重要な隙間の変化を呈すると認められた場合に、追加的なMRIを行った。
【0169】
また、予め特定した基準を使用して、交感神経系不全に対して、対象をモニタリングしたが、これには、自律神経系不全アンケート、および姿勢による誘発時の血圧または心拍数の変化量に対する閾値が含まれた(Strand V、Kellman A.Curr Rheumatol Rep 2004年:6:20~30頁)。
【0170】
統計解析。375名の患者は、0.05へと1型エラーを最小化とする処置効果、85%以上の統計的検出力、および1.1超(プラセボに対する活性)の主要なエンドポイントに対する検出可能な差の前提に基づいて、5つの処置アームに、バランスが取れた割当てで無作為化する必要があることが推定された。Hochberg法(Hochberg MCら、Arthritis Rheumatol 2016年;68(2):382~391頁)とゲートキーピング法との組合せを使用して、Hochberg法を適用して、アルファが0.05での6mgおよび9mgの用量を最初に試験することにより、処置群にわたって多重度を検討した。両試験でこの閾値に合格した場合のみ、プラセボに対する、3mgおよび1mgの用量の試験を、各々0.05の有意水準で、配列において行った。2つの最高用量のうちの1つが0.05の有意水準を達成しなかった場合、より小さいp値は、0.025の有意水準で比較した。6mgおよび9mgの両方の用量が、プラセボより統計的に著しく良好でなかった場合(0.05の閾値)、所定の階層にしたがって、さらに試験することはしなかった。
【0171】
効能変数は、反復測定による混合効果モデル(MMRM)のアプローチを使用して解析した。このモデルは、無作為化層(K-Lスコアは2または3対4)、ならびに指標関節、ペースラインスコア、処置、および処置-来診の相互作用を含んだ。最小二乗法(LS)とは、ベースラインから第16週までの変化量を意味し、ならびに、ファシヌマブ用量とプラセボとの間のLS平均値の差は、その対応する標準誤差(SE)、P値、および95%信頼区間(CI)と共に、MMRMから得られた。
【0172】
結果
患者の素質。合計で1,214名の患者をスクリーニングし、421名を無作為化して、ファシヌマブ(n=338)またはプラセボ(n=83、
図1)を投与した。421名の無作為化した患者のうち、419名の患者に、1以上の用量の試験医薬を投与した(プラセボおよびファシヌマブ9mgに無作為化された各々1名の患者は、試験薬投与の前に中止した)。合計で342名の患者が、36週の試験期間全てを完了した(ファシヌマブ:n=294;87%;プラセボ:n=67;81%)。
【0173】
患者の人口統計およびベースラインの特徴。患者の人口統計およびベースラインの特徴は、一般に、処置群にわたってバランスが取れていた(
図42)。多くの患者(66%)は、股関節または膝に対して、K-Lスコアが3または4であった。指標関節の多く(88%)は、膝関節であった。
【0174】
効能。ファシヌマブの4つ全ての用量は、プラセボより、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおいて、第16週でベースラインからの著しく大きな低減を示した。処置群に対して、プラセボに対するLS平均値の差は、公表されたMCID(個々の患者に対して:0.67~0.75ポイント)を超えた、-0.78から-1.40までの範囲であり、9mgの用量で観察された差が最も大きかった(
図43)。疼痛下位尺度スコアの減少は、ファシヌマブの用量に対して第2週で明らかであり、16週の処置期間を通して維持された(
図47(A))。追跡期間(第16週の後)の間、疼痛スコアは、各ファシヌマブ用量に対して、完全ではないが、ベースラインのレベルまで回復した。この治療意図アプローチの頑健性を評価するために、パープロトコル解析を実施し、類似の結果が得られた(データは示さない)。K-Lスコア(
図50(A))、年齢(
図50(B))、性別(
図50(C))、人種、指標関節、体重、およびボディーマスインデックス(BMI)による、WOMAC疼痛下位尺度スコアに対する部分群解析は、概して、全体の集団からの結果と一致した。
【0175】
加えて、ファシヌマブの4つ全ての用量は、WOMAC疼痛下位尺度で示される変化と並行して、ベースラインの値に完全に回復せずに、プラセボと比較して、WOMAC身体機能下位尺度スコアにおける第16週でのベースラインからの統計的に有意で、臨床的に意味のある低減を示す(
図47(B);
図48)。全ての用量に対して、ファシヌマブはまた、1mgおよび9mgの用量に対する統計的有意性(30%超の改善、P値:それぞれ0.0132および0.008)に達する、プラセボより多い、PGAスコアにおける第16週でのベースラインからの低減にも関係した。PGAスコアは、追跡期間において、ベースラインレベルに回復した。
【0176】
これらの解析が、比較に対して特別に強化されたわけではないが、ファシヌマブは、最も試験的なエンドポイントにわたって臨床上、有益となった。NRS歩行痛における統計的に有意で、臨床的に意味のある軽減は、第2週で示され、ファシヌマブの用量に対して、第16週の処置期間、維持した(
図51)。
【0177】
レスポンダー解析において、実質的な処置効果は、ベースラインからの30%以上の改善と定義されるが、WOMAC疼痛下位尺度スコア(プラセボに対して、63.5%~73.8%対47%)およびWOMAC身体機能下位尺度スコア(プラセボに対して、61.2%~71.4%対44.6%)において、プラセボを投与したものより、4つのファシヌマブの用量のいずれかを投与する患者の割合が高いことを示した。類似の結果は、第16週で全ての4つの用量に対する統計的有意性を達成して、ベースラインからの50%以上の改善を示した。OMERACT-OARSIレスポンダー指標に基づくレスポンダー解析において、4つのファシヌマブの用量のいずれかを投与する、より高い割合の患者は、プラセボを投与したもの(1mg、3mg、6mg、および9mgの用量に対してそれぞれ72.9%、72.6%、63.5%、および78.6%、対、プラセボに対して51.8%;6mgの用量を除く全てに対してP<0.01)と比較して、臨床的に意味のある処置応答を呈した。
【0178】
WOMAC疼痛下位尺度スコアもまた、無作為化前の鎮痛薬の中断時に、疼痛増悪の有無について患者を評価した。ファシヌマブの用量に対して、疼痛増悪の患者は、疼痛増悪を有さないものと比較して、ベースラインの平均疼痛スコアが悪化した。先に疼痛増悪を経験した(0~10の尺度に1以上のスコア)、ファシヌマブ処置に無作為化された患者の割合は、用量に対しておよそ25%であった。ファシヌマブでの第16週での平均疼痛スコアにおけるプラセボ調整した改善は、疼痛増悪の患者において-1.12から-1.81の範囲であり(
図47(C))、増悪を有さない患者において-0.87から-1.14の範囲であった(
図47(D))。疼痛増悪の患者は、プラセボを投与するように無作為化された疼痛増悪を有さないものと比較して、より高い度合いの改善を示した(-3.68対-2.19)。類似の傾向は、より高い疼痛閾値を使用して示されたが、より少ない観察に基づいていた。より高い処置効果は、より高いベースライン疼痛スコアを有する患者、または先の鎮痛療法の中断時により悪化することを呈した患者で観察された。
【0179】
SF-36健康調査の器具の結果は、身体の疼痛および身体機能を含む疼痛および機能尺度に対して、プラセボと比較して、4つ全てのファシヌマブの用量での生活の質の改善を示した(データは示さない)。しかし、一貫した改善は、他の尺度(すなわち、全身健康、社会的機能、役割制限、精神健康、活力、および精神的な成分のスコア)では観察されなかった。生活の質の改善もまた、EQ-5D-5L利用指標スコアを使用して示された(
図49)。
【0180】
安全性。処置の平均(SD)期間は、プラセボ(101(26))、およびプールしたファシヌマブ群(105(20))と同様であった。観察の平均(SD)期間は、同様であった(プラセボ群、219(75)日、およびファシヌマブ、236(54)日)。安全性解析セットは、419名の患者を含み、82名はプラセボを投与し、337名はファシヌマブを投与した。
【0181】
16週の処置期間、処置関連の治療下に発現した有害事象(TEAE)の発生率は、ファシヌマブ群で17%、プラセボ群で10%であった(
図44)。神経系および筋骨格の症状は、ファシヌマブで処置された患者が、プラセボで処置された患者より高い頻度であった(それぞれ7%対4%、および3%対2%)。合わせたファシヌマブ群は、プラセボ群と比較して、知覚異常の発生率がわずかに高く(2%対0%)、感覚鈍麻の発生率(各1%)および関節痛の発生率(各1%)が同じであった。全ての処置群にわたって、有害事象の大部分は、重症度において軽度から中程度であった。処置期間の重篤なTEAEの発生率は低かったが、プラセボ群が合わせたファシヌマブ群よりわずかに高かった(2%対1%)。重篤なTEAEの患者の割合において、ファシヌマブとの明白な用量関係性はなかった。少ない割合の患者は、ファシヌマブおよびプラセボの両方の群で、処置期間、TEAEにより療法を中止した(4%[n=14]および1%[n=1])。同定可能な中止の原因または主な中止の原因を呈する群はなかったが、これは、合わせたファシヌマブ群およびプラセボ群で、それぞれ、筋骨格/結合組織(2%および1%)、神経系(知覚異常:1%および0%;感覚鈍麻:1%および0%)、ならびに皮膚および皮下組織障害(1%および0%)にわたった。
【0182】
20週の追跡期間、TEAEの発生率は、合わせたファシヌマブ群でプラセボ群より高く(8%対4%、
図44)、重篤なTEAEの発生率も同様であった(6%対5%)。追跡期間の重篤なTEAEの発生率は、9mgの用量に無作為化されたもの(8%)が、1mgの用量(6%)、3mgの用量(4%)、または6mgの用量(6%)より高かった。
【0183】
関節症は、全体で23名(5%)の患者で検出し、25か所の関節に関与し、合わせたファシヌマブ群およびプラセボ群それぞれで7%および1%の患者で発生した(
図45)。関節症は、ファシヌマブ群の患者の5%(これらの大部分は、骨構造の変化の所見が見られない狭い関節腔であった)で、プラセボ群の患者ではいない、急速進行性OA、ならびに、それぞれの群の2%および1%の患者で発生した軟骨下脆弱性骨折からなった。原発性骨壊死は観察されなかった。関節症の増加は、試験中のファシヌマブ投与および時間で観察された。
【0184】
裁定済みの関節症のうち、事後解析において、従来のOAで予想されるX線写真の所見に一致しない全ての特徴である、試験期間にわたる新規の骨の断片化、破壊、または骨折、関節面のほぼ全体または全体の崩壊、および、亜脱臼/マルアライメントとして分類された、破壊型関節症を評価した。破壊型関節症は、2名の患者(ファシヌマブ処置した対象338名の1%未満)で観察された:6mg処置群の1名、および9mg処置群の1名。
【0185】
全体で、16名(4%)の患者が、18の関節全置換術を受けたが、これは、ファシヌマブ群の4%の患者で起こり、プラセボ群の2%の患者で起こった(
図45)。関節全置換術に対する明白なファシヌマブの用量関係性はなかった。
【0186】
交感神経系不全の徴候はなかった。実験室試験の日常的なモニタリングにより、試験の期間にわたって、時間依存的および用量依存的に増したが、正常な範囲内のままであった、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)を除いて、著しい変化は見られなかった。追跡において、平均ALP値は、第36週まで減少したが、ベースラインまで回復しなかった。試験中、死亡はなかった。
【0187】
考察
中程度から重度のOAの患者を含む、このIIb/III相試験において、ファシヌマブは、疼痛および身体機能を改善する点でプラセボより優れていた。ファシヌマブを投与した患者は、プラセボを投与したものと比較して、WOMAC疼痛下位尺度スコアにおいて、統計的に有意で、臨床的に重要な軽減を示した。WOMAC疼痛下位尺度スコアでのプラセボ調整した群の平均的な改善は、MCIDを超えた、0.78から1.40ポイントの範囲であった(Bellamy N.London、Ontario、Canada:Victoria Hospital;1995年)。WOMAC疼痛下位尺度スコアでの30%以上および50%以上の軽減の閾値に対するレスポンダー解析により、実質的に大きな割合のファシヌマブを投与した患者が、プラセボを投与したものより、疼痛で閾値の改善を達成したことを確認した。WOMAC身体機能下位尺度スコアでの改善もまた、プラセボと比較して、ファシヌマブで統計的に有意で、臨床的に重要であった。さらに、歩行時の疼痛の顕著な軽減は、NRSスコアで明らかなように、4用量全てでファシヌマブ療法の開始の7日以内に達成した(Salaffi Fら、Eur J Pain 2004年;8:283~91頁)。
【0188】
ファシヌマブは、WOMAC疼痛下位尺度スコアおよびNRS疼痛スコアで示す通り、疼痛を軽減した。WOMAC身体機能もまた、疾患の影響が減ったことを示す、改善が見られ、PGAも同様であった。効能は、1mg、3mg、および6mgの用量にわたって明らかな用量関係性がないと評価された全ての用量で観察した。9mg用量が、最大の処置効果を示した。機能的なファシヌマブ濃度は、3mgから9mgの用量で、およそ用量に比例して、用量の増加につれて増加した。類似の効能が、最小用量で達成されたが、1mg用量でもたらされた効能の解析により、最小の血清濃度と関連する活性がより緩徐に起こることが明らかになった。本試験での有害事象は、ファシヌマブおよび抗NGF化合物のクラスで以前に報告されたものと一致した。最も一般的なAEは、関節痛、知覚異常、および感覚鈍麻を含む、頻繁な事象を伴う、筋骨格および神経系に影響を及ぼした。これらの事象により、患者が試験医薬を中止することは稀であり、一般に、重症度において軽度または中程度と評価された。関節関連の関節症事象は、用量依存的にファシヌマブ群においてより一般的に起こった。9mg用量群に無作為化された患者は、他の活性物質群と比較して、より多くの関節関連の関節症を有した。23名の患者での25件の裁定済みの関節症事象のうち、1事象は、プラセボを投与した患者において起こった。関節置換術の頻度は、一般に、プラセボ処置群とファシヌマブ処置群との間で類似し;関節症事象とは対照的に、件数は少ない(処置群当たり2~4)が、用量と、関節置換術の頻度との明白な関連性はなかった。
【0189】
本試験の患者は、16週間の処置を受けた。処置が中断された場合、患者は、より多く関節痛AEを経験し、患者自身のWOMAC疼痛および身体機能下位尺度スコアの増加を経験し、ファシヌマブによる効果的な処置を中止した後のOAの徴候および症状の再発と一致した。処置後の関節痛AEの報告において、用量依存性のパターンは存在せず、WOMAC疼痛下位尺度スコアは、処置後、第36週にベースラインレベルまで回復せず、これは、患者が、リバウンド効果または潜在的なOAの悪化を有していなかったことを示唆した。処置後の効果に関して、ベースライン近くに回復した、9mg群のみに対しての起こり得る差異で検査した様々な効能の測定に対して、プラセボと大部分の処置群との間で、第36週でのみ小さな差異が存在した。
【0190】
9mg用量が、試験登録時の元のベースライン未満にスコアが回復するが、様々な処置群内での逆転投与の応答で、いくつかのエンドポイントに対してはプラセボアームより高くなる傾向は、高用量のファシヌマブのより強力な鎮痛効果により、一旦中断すると、疼痛の抑制の長く続く状態からの疼痛の再発をより強く知覚するという解釈と一致する。9mg用量の患者は、3~4か月の期間にわたる著しく継続する疼痛軽減を経験したので、これらの患者の疼痛の再発は、疼痛軽減がそれほど顕著ではなかった患者より目立った。
【0191】
この構成を支持することは、プラセボアームが、効果のない処置(プラセボ)の中断で変化しない、新たなレベルの慢性疼痛に適応していると思われることである。その代わりに、この群は、新たなレベルの慢性疼痛に「リセット」していると思われる。
【0192】
ファシヌマブでの疼痛および機能の改善は、鎮痛剤の公開されたデータの文脈に置かれなければならない。OAにおける17試験にわたる最近のメタ解析により、アセトアミノフェンは、OA疼痛に対する第一選択の鎮痛剤であるが、10ポイントのWOMAC疼痛下位尺度において、6ポイントのベースラインからおよそ0.4ポイントの平均的な改善で、非常に軽度な疼痛軽減をもたらしたことが示された(Machado GCら、BMJ 2015年;350:h1225)。別の解析(Stam Wら、Open Rheumatol J 2012年;6:6~20頁)において、プラセボに対するアセトアミノフェンの効果量(-0.09)は、実質的に、試験したNSAIDのいずれかに対するものより低い(ナプロキセン、イブプロフェン、およびジクロフェナクに対して-0.39~-0.49の範囲である)。セレコキシブに対する効果量は、米国で唯一利用可能な選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害剤だが、一般に、非特異性NSAIDに対するものより低い(投与量に対して-0.11~-0.34の範囲である)。OAにおいて6試験にわたるNSAIDを伴うオピオイドと比較する総合メタ解析により、これらの鎮痛剤間で疼痛軽減にほとんど差がなかったことが示された(Smith SRら、Osteoarthritis Cartilage 2016年;24:962~72頁)。より最近の総説も、同様の結果に達した(Berthelot JMら、Joint Bone Spine 2015年;82:397~401頁)。我々の試験において、ファシヌマブを投与した患者は、10ポイントのWOMAC疼痛下位尺度において、平均して3.4超の改善(1mg、3mg、6mg、および9mgの用量に対してそれぞれ-3.49、-3.39、-3.07、および-3.81ポイントで、ベースラインから改善は50%~58%を表す)であった一方;プラセボでは、ベースラインからの変化は-2.43(38%)という結果であった。アセトアミノフェン、NSAID、およびオピオイドの効果量より実質的に大きな、最大で0.47のファシヌマブ用量での効果量を得られた。
【0193】
OAにおいて多くの鎮痛剤試験では、WOMAC0~100の疼痛尺度でおよそ10ポイント(または、0~10尺度で1ポイント)の、先の鎮痛療法の中断における疼痛増悪を示した患者を登録した。対照的に、試験の設計では、鎮痛剤の中断後の疼痛増悪を必要とせずに、スクリーニング時およびベースライン時の両方で、実質的な疼痛の患者の登録が可能であった。疼痛を鎮痛剤で十分に処置することができない患者の登録が可能であった。本試験で大部分の患者は、鎮痛剤の中断後に疼痛増悪を呈しなかった。しかし、1以上、1.5以上、または2以上のポイントの悪化の度合いで疼痛増悪を呈していた患者の部分群において、処置応答は、疼痛増悪を呈しなかったものより大きくなる傾向があり、これは、疼痛増悪の設計を利用しているOA試験で観察される効果の大きさと一致した(Trijau Sら、Osteoarthritis Cartilage 2010年;18:1012~8頁)。非疼痛増悪の設計における疼痛および機能スコアに対する処置効果は、37%~50%で処置効果を過小評価する可能性があることが報告されている(Trijau Sら、Osteoarthritis Cartilage 2010年;18:1012~8頁)。ゆえに、この過小評価を考慮する場合、ファシヌマブは、OA疼痛の患者において、アセトアミノフェン、NSAID、またはオピオイドより大きな疼痛軽減をもたらすことを証明できる。
【0194】
他の抗NGF抗体に関して、概念証明試験は、増悪の設計を利用する、第1日および第56日に、10~200μg/kg(すなわち、70kgの体重の患者に対して0.7~14mg)の用量で静脈投与した、タネズマブ、ヒト化IgG2抗NGFモノクローナル抗体をプラセボと比較した(Lane NEら、N Engl J Med 2010年;363:1521~31頁)。登録は、無作為化の時点で評価された、先の鎮痛薬の中断の後、第1週のスクリーニング値と比較して、100ポイントのWOMAC疼痛下位尺度で10ポイント以上に疼痛が悪化した患者に限定した。無作為化時の平均WOMACスコアは、62.1~69ポイントの範囲であった。タネズマブでのベースラインからのスコアにおける改善は、29ポイント(50μg/kg用量)から44ポイント(200μg/kg用量)までの範囲であり、プラセボに対する純効果は、12.8~27.3であった。増悪の設計も利用する、8週間ごとに1回投与する2.5から10mgの範囲の用量での、タネズマブでの続く第III相試験の結果により、幾分低い処置効果が示された(Brown MTら、J Pain 2012年;13:790~8頁)。
【0195】
ファシヌマブは、一般に、十分に耐性であった。TEAEの頻度が、プラセボよりファシヌマブで高いが、TEAEによる療法の中止はほとんどない。骨由来の可能性のあるアルカリ性ホスファターゼでのほどほどの増加が観察され、これは、関節症に無関係であり、ファシヌマブの中止で広く解決した。アルカリ性ホスファターゼレベルの上昇は、骨合成でのファシヌマブの一般的な刺激効果を反映することができるか、またはおそらく身体動作の増大をもたらす疼痛の軽減により説明することができる(本試験では定量化されない)が、これは、骨形成および骨質量を刺激することができる(Kerr Dら、J Bone Miner Res.1996年;11:218~225頁、Heinonen Aら、Lancet.1996年;348:1343~7頁)。神経系および筋骨格の障害は、タネズマブで先に報告された頻度(Hochberg MC.Osteoarthritis Cartilage 2015年:23 Suppl 1;S18~21)と同様に、ファシヌマブで処置された患者が、プラセボより高い頻度であり、末梢感覚の変化により処置を中止した患者はほとんどいないので、NGF阻害に関連することができ、交感神経不全に対する基準を満たすケースはなかった。
【0196】
試験は、NGF阻害剤の臨床試験の設定において、用量にわたって関節変化を評価する、以前利用できなかった機会を提供した。ファシヌマブは、プラセボより高い裁定済みの関節症の用量依存の頻度に関係し、6mgおよび9mgの用量で最も顕著であった。狭い関節腔(RPOA-1)により示される、裁定済みの関節症の頻度の小さい増加は、プラセボで見られる頻度と比較して、低用量のファシヌマブで見られた。RPOA-2およびDAを含む、全ての裁定済みの関節症の高い頻度は、最も高い2用量の試験で観察された。我々の知る限り、今日まで、単純撮影写真およびMRIの両方を使用して、日常的で前向きである高度な関節の放射線学的評価を組み入れる試験のみであるので、ファシヌマブでのこれらの有害事象の頻度は、以前の鎮痛試験と比較することができない。症候性ならびに無症候性の両方の患者の高度な関節のモニタリングだが、ファシヌマブでの我々の試験で報告された破壊型関節症の頻度は、あまり多くない(6および9mgの最も高い2用量での活性物質処置に無作為化された338名の対象のうち2名)。これらの頻度は、タネズマブでの試験で報告されたものより低く、ここで、この種類の関節事象は、関節置換術のための患者紹介後のみ、後向き評価で観察された(Schnitzer TJ、Marks JA.Osteoarthritis Cartilage 2015年;23 Suppl 1:S8~17)。
【0197】
結論として、400名超の患者を含む、このIIb/III相試験において、NGF阻害剤ファシヌマブは、OA由来の中程度から重度の疼痛の患者や、先の鎮痛薬での利点を経験しなかった患者、重要な医学的な必要性を満たしておらず、変形性関節炎の多くの他の鎮痛試験で以前は除外された患者集団でさえも、前例のない程度の鎮痛を示した。試験中の患者の高度な実験室モニタリングおよびX線写真モニタリングでは、ファシヌマブが、2つの高用量試験で顕著な関節関連の異常において用量依存的な上昇で、多くの患者に十分な耐性があったことが示された。結果は、OAおよび他の疼痛状態でのファシヌマブの進行中および将来の臨床試験におけるリスクに対して最大の利点を生み出す可能性のある、ファシヌマブ用量の本試験のガイド選択により得られた。
【0198】
結果はまた、試験に登録された患者が、ファシヌマブを中止した後に回復する、慢性疼痛を確実に有するということを検証するのに重要である。結果はまた、一旦処置が中断すると、逆転-投与の応答の順番において疼痛が再出現することから、試験の最初の16週間にわたる、ファシヌマブ用量と疼痛軽減の度合いとの関係性に対するさらなる支持をもたらす(用量範囲の極値、1および9mgの処置群で最も明らか)。本試験において、4週間ごとに1mg、および4週間ごとに3mgの用量は、最良の利点/リスクをもたらすと思われた。これらの用量は、高用量と比較して、より良好な安全性プロファイルを有する効能を示した。
【0199】
本明細書に記載されるNGF抗体の使用での第III相プラセボ対照試験から得られた陽性の重大な結果を提供する。使用される特定の有効成分は、配列番号2/10の重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列対を含む、抗NGF抗原またはその抗原結合断片である。しかし、基本的な方法は、薬物の抗NGFクラスに適用することができる。
【0200】
結果は、股関節または膝関節の変形性関節炎由来の慢性疼痛の患者における長期試験のものである。処置した患者の抗体に対する第16週での主要な効能の解析では、患者らが、試験の共一次エンドポイントであったプラセボ処置の患者と比較して、疼痛を経験することがより少なく、ベースラインからの機能的能力が著しく改善したことが示された。
【0201】
試験では、抗NGFクラスの薬物で、公知の安全性リスクを著しく低減しながら、効能を最大限にする用量が同定される。結果では、ステロイド性抗炎症剤またはオピオイド薬に対して、疼痛の処置における追加の選択として、NGF抗体を使用する能力が示される。
【0202】
試験は、NGF抗体1mgで処置した両群で、一群は4週間ごとに1回処置し、別の群は8週間ごとに1回処置し、両群ともプラセボと比較した、異なる投与間隔で、同じ抗体で処置した646名の患者を含んだ。結果は、公知の安全性リスクを低減しながら、疼痛を軽減する一貫した効率を示す。
【0203】
【0204】
重篤なAEおよび関節置換術を含む、有害事象(AE)の全体の発生率は、1mgのファシヌマブ群(4週間または8週間ごと)、およびプラセボで同様であった。ファシヌマブのプログラムには、潜在的な裁定済みの関節症に対する頑健なX線写真モニタリングを組み込むが、その最初は、第24週に行う。これを実行して、早めにいかなる潜在的な裁定済みの関節症を同定したが、臨床的な後遺症は、可能性が低かった。主要な効能に対するデータカットオフの時点で、およそ80%の患者は、第24週の来診を完了した。任意の種類の裁定済みの関節症のプラセボ補正された累積推定値は、第16週および第24週の両方で、1.5%未満であった。加えて、裁定済みの関節症の大部分は、RPOA-1(急速進行性OA1型)と呼ばれる、狭い関節腔単独であった。骨壊死は、本試験においてこれまでに同定されるケースはなかった。
【0205】
これまでは、単に本発明の原理を説明するものである。当業者は、本明細書に明示的に説明または図示されないが、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる、様々な配置を工夫することができることは理解されよう。さらに、本明細書に記載される全ての実施例および条件付き言語は、主として、本発明の原理、および当該技術分野の推進のために本発明者らが提供するコンセプトを、読者が理解するのを助ける目的を意図するものであり、このような具体的に記載される実施例および条件に限定しないものとして解釈するべきである。
【0206】
さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体的な実施例についての本明細書の全ての記述は、その構造的および機能的均等物を包含することを意図する。加えて、このような均等物には、現在知られている均等物、および将来開発される同等物の両方、すなわち、構造にかかわらず、同じ機能を行う、開発された任意の要素も含まれることを意図する。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示し、説明した例示的な実施形態に限定することを意図しない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲で具現化される。
【配列表】