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特許7460614ポリ(アリールエーテルスルホン)とポリジメチルシロキサンとのコポリマー
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  • 特許-ポリ(アリールエーテルスルホン)とポリジメチルシロキサンとのコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリ(アリールエーテルスルホン)とポリジメチルシロキサンとのコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/46 20060101AFI20240326BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 77/52 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G77/46
C08G81/00
C08G77/52
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520603
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019078565
(87)【国際公開番号】W WO2020079277
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】62/747,972
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19151945.3
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ナイル, カムレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デービッド ビー.
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-534768(JP,A)
【文献】米国特許第04871816(US,A)
【文献】特開2007-246901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
C08G 81/00-81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(L):
【化1】
[式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各iは、0~4から独立して選択され;
- Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12アルキル、C1~C12アルコキシ、又はC6~C18アリール基である);mが1~6の整数の-(CH-及び-(CF-;6個までの炭素原子の直鎖若しくは分岐の脂肪族二価基;並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され;
- n及びnはそれぞれ、各繰り返し単位p及びrのモル%であり;
繰り返し単位p及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
- 5≦n<100;
- 5≦n<100;
- q及びqは、独立して、2~14の間(両端を含む)で変化する]のコポリマー(P1)を調製するための方法であって、
反応混合物中で、
- 式(N)の繰り返し単位p:
【化2】
と、
- 式(M)の少なくとも1つの末端基:
【化3】
(式中、R、i及びTは上記の通りであり、sは0~12の間(両端を含む)で変化する)
とを含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー(P0)を、式(I):
【化4】
(式中、mは1~200の間で変化する)の化合物と、
0.5:1~1:0.5の化合物(I)/ポリマー(P0)のモル比で、
任意選択的に金属系触媒の存在下で、
150~450℃の範囲の温度で、
アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン及びN-エチル-2-ピロリドンからなる群から選択される溶媒の非存在下で、又は前記反応混合物の全重量に基づいて5重量%未満の前記溶媒の存在下で、溶融ヒドロシリル化によって反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
Tが、結合、-SO-、及び-C(CH-からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
50≦n<100である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
及びqが2に等しい、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
iが式(L)、(M)及び(N)の各Rについてゼロである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
撹拌反応器、押出機内で又は混練機内で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
白金系触媒、ロジウム系触媒及びルテニウム系触媒からなる群から選択される少なくとも1つの金属系触媒の存在下で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン又はクロロ白金酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのフリーラジカル発生剤の存在下で実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フリーラジカル発生剤がベンゾイルペルオキシドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一切の溶媒の非存在下での、溶融ヒドロシリル化によって実施される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られるコポリマー(P1)。
【請求項13】
請求項12に記載のコポリマー(P1)を含む部品材料から3次元物体の層を印刷することでなる工程を含む、3次元物体を付加製造システムで製造するための方法。
【請求項14】
ホットメルト接着剤(HMA)としての、請求項12に記載のコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月19日出願の米国仮特許出願第62/747,972号に対する及び2019年1月15日出願の欧州特許出願第19151945.3号に対する優先権を主張するものであり、これら出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、溶融ヒドロシリル化(炭素炭素二重結合への-Si-H基の付加)によってポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)とポリジメチルシロキサン(PDMS)とのコポリマー(P1)を調製する無溶媒方法に関する。また、本発明は、このような方法によって得ることができるコポリマー(P1)及び3D印刷のための部品材料として、モールディング/オーバーモールディング用途のための並びに自動車、スマートデバイス及び半導体産業のためのホットメルト接着剤としてのこのコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、高性能熱可塑性プラスチックの分類に属しており、高い熱変形耐性、優れた機械的特性、優れた耐加水分解性、及び本質的な難燃性を特徴とする。多目的且つ有用なPAESポリマーは、エレクトロニクス、電気産業、医薬、一般エンジニアリング、食品加工、及び3D印刷において多くの用途を有している。
【0004】
PAESポリマーは多くの利点及び優れた物理的特性を有しているものの、特定の用途における性能を改善するためにこれらの特性を調整することが望まれる場合がある。特性の改良は、2つのポリマー分子を組み合わせて、それぞれの個別分子の固有性質の組み合わせを有するコポリマーを製造することによって達成することができる。
【0005】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は熱安定性材料であり、多種多様な用途のポリマー及び材料科学において使用することができる。PDMSは最も低いガラス転移温度(0℃よりはるかに低いTg)の1つを有し、これにより、それをPAESポリマーなどの高温材料に混合する魅力的な材料にする。
【0006】
PDMSとポリエーテルスルホン(PSU)とのマルチブロックコポリマーを製造するためにヒドロシリル化カップリング反応が研究されている。しかしながら、1つの主な問題点は、これらのポリマーの高い不相溶性及び一般的な反応溶媒の同定である。スルホンポリマーは、PDMS分子を溶解する溶媒への低い溶解度を示し、それはその場合、高い溶融粘度を特徴とする、高分子量のコポリマーの形成を抑える。例えば、PDMSはクロロホルムへの良い溶解度を示すが、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)は、クロロホルムへの限られた溶解度を有する。
【0007】
AumanB.C.らの論文(Polymer 1987,28,1407-1417)には、クロロベンゼンの希釈溶液中でのPDMSによるポリエーテルスルホン(PSU)のPt触媒ヒドロシリル化が記載されており、そこで、それは反応が進行するときに濃縮される(稀釈-濃縮法と呼ばれる)。しかしながら、Aumanらに記載された方法は。高分子量のコポリマーを得ることを可能にしない。
【0008】
本発明は、高溶融粘度の、PAESとPDMSとのコポリマーを調製するための無溶媒方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のコポリマー(P1-A)の透過型電子顕微鏡法(TEM)の顕微鏡写真を示す。
【発明の概要】
【0010】
本開示の態様は、式(L):
[式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各iは、0~4から独立して選択され;
- Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12アルキル、C1~C12アルコキシ、又はC6~C18アリール基である);mが1~6の整数の-(CH-及び-(CF-;6個までの炭素原子の直鎖若しくは分岐の脂肪族二価基;並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され;
- n及びnはそれぞれ、各繰り返し単位p及びrのモル%であり;
繰り返し単位p及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
- 5≦n<100;
- 5≦n<100;
- q及びqは、独立して、2~14の間(両端を含む)で変化する]
のコポリマー(P1)を調製するための無溶媒方法であって、
- 式(N)の繰り返し単位p:
と、
- 式(M)の少なくとも1つの末端基:
(式中、R、i及びTは上記の通りであり、sは0~12の間(両端を含む)で変化する)
とを含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー(P0)を、式(I)
(式中、mは1~200の間で変化する)の化合物と、
0.5:1~1:0.5の化合物(I)/ポリマー(P0)のモル比で、
任意選択的に金属系触媒の存在下で、
150~450℃の範囲の温度で反応させる工程を含む方法に関する。
【0011】
また、本発明は、この方法によって得ることができるコポリマー(P1)に関する。
【0012】
また、本発明は、本発明のコポリマーを含む部品材料から3次元物体の層を印刷することでなる工程を含む、付加製造システムによって3次元物体を製造するための方法に関する。
【0013】
また、本発明は、ホットメルト接着剤(HMA)としての本発明のコポリマーの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一切の溶媒の非存在下でのヒドロシリル化(これにより溶融ヒドロシリル化とも呼ばれる)によって、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)とポリジメチルシロキサン(PDMS)とのコポリマーであるコポリマー(P1)を調製するための方法に関する。このコポリマーは、例えば、付加製造プロセスにおいて、並びに自動車、スマートデバイス及び半導体産業のための部品材料として使用することができる。また、それはモールディング又はオーバーモールディング用途のためのホットメルト接着剤として使用することができる。コポリマー(P1)の用途に関して更なる詳細は以下に与えられる。
【0015】
また、本発明は、この方法によって得ることができるコポリマー及びとりわけ3D印刷用のコポリマーの使用に関する。
【0016】
先行技術の方法は、溶媒中で行われる。しかしながら、強い非相溶性のPAESポリマーとPDMSポリマーの、溶媒中への低い溶解度は、コポリマーから形成される分子量を制限する。これは、主に、PDMS(例えばクロロホルム)を溶解する溶媒中のPAESの限られた溶解度のためである。本発明の方法は無溶媒であり、それは、ポリマーの溶解度がより高分子量のコポリマーの調製に対する制限要因ではないことを意味する。さらに、本発明の無溶媒方法は、反応後精製工程の必要性をなくす。
【0017】
その上、反応は、迅速な反応速度で及び短い反応時間で起こる。それは低コストの方法であり、高収率をもたらす。さらに異なった樹脂を有するマスターバッチを単一工程で作ることができる。
【0018】
本発明者は、本発明の無溶媒方法が高粘度のコポリマーの製造を可能にすることを示した。
【0019】
本発明のヒドロシリル化方法は無溶媒であり、それは、方法が溶媒の非存在下で又は限られた量の溶媒の存在下で、溶融体中で実施されることを意味する。例えば、本発明の方法は、反応混合物の全重量に基づいて、5重量%未満の溶媒の存在下で、例えば4重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満の溶媒の存在下で実施され得る。一実施形態によれば、本発明のヒドロシリル化方法は無溶媒であり、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン及びN-エチル-2-ピロリドンからなる群から選択される溶媒の非存在下で又は、代わりに(上に詳述した)これらの溶媒の1つの限られた量の存在下で実施される。
【0020】
反応は、ポリマーに対して不活性な材料から製造される装置内で実施され得る。この場合、ポリマーを十分に接触させ、揮発性反応生成物の除去が実行可能であるように装置が選択される。適切な装置としては、撹拌反応器、押出機、及び例えばList AG又はBUSSからの混合混錬機などの混錬機が挙げられる。混合混錬機を使用すると、押出機よりも滞留時間を長くすることができるため、無溶媒PPSUの調製に特に有用な場合がある。
【0021】
コポリマー(P1)
本発明のコポリマー(P1)は、下記の式(L):
[式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各iは、0~4から独立して選択され;
- Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12アルキル、C1~C12アルコキシ、又はC6~C18アリール基である);mが1~6の整数の-(CH-及び-(CF-;6個までの炭素原子の直鎖若しくは分岐の脂肪族二価基;並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され;
- n及びnはそれぞれ、各繰り返し単位p及びrのモル%であり;
繰り返し単位p及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
- 5≦n<100;
- 5≦n<100;
- q及びqは、独立して、2~14の間(両端を含む)で変化する]
に従う。
【0022】
より正確には、本発明は、PAESとPDMSとのコポリマー、例えばジ-ブロック、トリ-ブロック、又はマルチブロックコポリマーに関する。本発明のコポリマー(P1)は、溶融ブレンディング、モールディング、押出のような溶融加工又は3D印刷法のような溶液加工のために、直接に又は物質の組成物で使用され得、また、それらの高分子量同族体のブレンドのための相溶化剤として又は高温接着剤として使用することができる。
【0023】
本発明のコポリマー(P1)は、以下のような構造を有し得る:
PAES-b-(PDMS-b-PAES-b)-PAES
ここで、
- gは0~20、例えば0~10で変化し、
- bは、
-O-(CHq1-Si(CH-O-又は
-O-(CHq2-Si(CH-O-
(式中、q及びqは上に定義される通りである)であり、
例えばbは-O-(CH-Si(CH-O-である。
【0024】
以下に詳述されるコポリマー(P1)のPAESブロックは、Tの性質に応じて、例えばポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、ポリスルホン(PSU)又はポリエーテルスルホン(PES)であり得る。コポリマー(P1)は、とりわけ、異なったPAESブロック、例えば、PPSUブロックとPESブロックとを含むことができる。この実施形態によれば、ブロックコポリマー(P1)は、以下のような構造を有し得る:
PPSU-b-(PDMS-b-PES)g’-(PDMS-b-PPSU)g’’-PES
ここで、
- g’及びg’’は0~20、例えば0~10で変化し、
- b、q及びqは上に定義される通りである。
【0025】
一実施形態によれば、Rは、式(L)中の各位置において、任意選択的に1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むC1~C12部分;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び四級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0026】
一実施形態によれば、iは、式(L)の各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位pは非置換である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、Tが結合、-SO-、及び-C(CH-からなる群から選択されるようなものである。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、式(N-A)、(N-B)又は(N-C)からなる群から選択される繰り返し単位を含む:
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、(PAESポリマー中の総モル数を基準として)少なくとも50モル%の式(N-A)、(N-B)及び/又は(N-C)の繰り返し単位を含む。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、(ポリマー中の総モル数を基準として)少なくとも50モル%の、式(N-A)、(N-B)及び(N-C)からなる群から選択される繰り返し単位(式中のiは各Rについてゼロである)を含む。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、PAESブロックポリマー中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L)の繰り返し単位p又は式(N-A)、(N-B)及び(N-C)の繰り返し単位である。
【0032】
一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、ASTM D3418に従い示差走査熱量計(DSC)により測定した際に、90~250℃、好ましくは170~240℃、より好ましくは180~230℃の範囲のTgを有する。
【0033】
一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、(ポリマー中の総モル数を基準として)少なくとも50モル%の、式(N-C)の繰り返し単位を有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)。例えば、この実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モルの式(N-C)の繰り返し単位を有するPPSUである。別の実施形態によれば、例えばPAESブロックポリマー中の繰り返し単位の全てが式(N-C)の繰り返し単位であり、そこでiは各Rについてゼロである。
【0034】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー(PPSU)は、ビフェニル部位を含むポリアリーレンエーテルスルホンである。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)としても知られており、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって生じる。
【0035】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。それは、例えば、塩基の存在下で4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合の結果として得ることができる。モノマー単位の反応は、脱離基としてのハロゲン化水素の1単位の脱離を伴う求核芳香族置換によって起こる。しかしながら、結果として生じるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の構造は、脱離基の性質に依存しないことに留意されるべきである。
【0036】
PPSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRadel(登録商標)PPSUとして市販されている。
【0037】
一実施形態によれば、コポリマー(P1)は式(L-C):
(式中、R、i、q、q、n、及びnは上記の通りである)に従う。
【0038】
好ましい実施形態によれば、コポリマー(P1)は式(L-C’):
(式中、q、q、n、及びnは上記の通り説明され、好ましくは、q1及びq2は両方とも2に等しく、好ましくは50≦np<100である)に従う。
【0039】
一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、(PAESポリマー中の総モル数を基準として)少なくとも50モル%の式(N-A)の繰り返し単位を有するポリスルホン(PSU)ポリマーである。例えばこの実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、少なくとも60モル %、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル %の式(N-A)の繰り返し単位を有するPSUである。別の実施形態によれば、例えばPAESブロックポリマー中の繰り返し単位の全てが式(N-A)の繰り返し単位であり、そこでiは各Rについてゼロである。
【0040】
一実施形態によれば、コポリマー(P1)は式(L-A):
(式中、R、i、q、q、n、及びnは上記の通りである)に従う。
【0041】
PSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUdel(登録商標)PSUとして市販されている。
【0042】
一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、(PAESポリマー中の総モル数を基準として)少なくとも50モル%の式(N-B)の繰り返し単位を有するポリエーテルスルホン(PES)ポリマーである。例えばこの実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、少なくとも60モル %、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モルの式(N-B)の繰り返し単位を有するPESである。別の実施形態によれば、PAESブロックポリマー中の全ての繰り返し単位の全てが、例えば式(N-B)(式中、iは、各Rについてゼロである)の繰り返し単位(RPES)である。
【0043】
一実施形態によれば、コポリマー(P1)は、式(L-B):
(式中、R、i、q、q、n、及びnは上記の通りである)に従う。
【0044】
PESは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.CからVeradel(登録商標)PESとして入手可能である。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、移動相として塩化メチレンを用いたポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した際に、約25,000g/mol未満、約18,000g/mol未満、又は約17,000g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有する。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、PAESブロックポリマーは、移動相として塩化メチレンを用いたポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した際に、約1,000g/mol以上又は約2,000g/mol以上の数平均分子量(Mn)を有する。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、PDMSブロックは、25℃で1×10~2.5×10センチストーク(1~2.5m/秒)の範囲の粘度μを有する。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、PDMSブロックは、AJ Barryの式:
Logμ(cSt)=1.00+0.0123(Mn)0.5
に基づいて計算されるとき、35,000g/モル未満、30,000g/モル未満、又は25,000g/モル未満の数平均分子量(Mn)を有する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、PDMSブロックポリマーは、上記の式に基づいて計算されるとき、少なくとも1,000g/モル、少なくとも2,000g/モル又は少なくとも3,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0050】
式(L)において、n及びnはそれぞれ、各繰り返し単位p及びrのモル%である。繰り返し単位p及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置される。コポリマー(P1)は少なくとも繰り返し単位p及びrを含むが、付加的な繰り返し単位もまた含むことができる。コポリマー(P1)は、少なくとも5モル%の繰り返し単位p及び及び少なくとも5モル%の繰り返し単位pを含む。言い換えれば、5≦n<100及び5≦n<100である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、コポリマー(P1)は、コポリマー(P1)中の総モル数を基準として少なくとも10モル%の繰り返し単位pを含み、例えば少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%又は少なくとも70モル%を含む。
【0052】
本発明の別の実施形態によれば、コポリマー(P1)は、コポリマー(P1)中の総モル数を基準として少なくとも10モル%の繰り返し単位rを含み、例えば少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%又は少なくとも40モル%を含む。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、コポリマー(P1)は、コポリマーの全重量に基づいて、5~85重量%のPDMSブロック、例えば10~60重量%又は20~40重量%を含む。本発明のコポリマー(P1)は、とりわけ、コポリマーの全重量に基づいて、4,000~10,000g/モルの範囲のMnを有するブロックコポリマー30~50重量%を含むことができる。或いは、本発明のコポリマー(P1)は、コポリマーの全重量に基づいて、15,000~25,000g/モルの範囲のMnを有するブロックコポリマー5~40重量%を含むことができる。
【0054】
本発明のボックコポリマーのPDMS含有量は、溶融ヒドロシリル化において使用されるPDMSブロックの分子量を変化させることによって変えられ得る。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、n+n=100である。この実施形態によれば、コポリマー(P1)は、繰り返し単位p及びrに本質が存する。
【0056】
式(L)において、q及びqは、独立して、2~14の間で変化する。一実施形態によれば、q及びqは、独立して、2~12の間で、例えば2~11の間で変化する。好ましくは、q及びqは等しい。好ましくは、q及びqは2又は11に等しい。
【0057】
コポリマー(P1)を調製するための方法
本発明はとりわけ、これにより官能化PAESポリマー(P0)と呼ばれる、官能化ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)から出発してコポリマー(P1)を調製するための無溶媒方法を提供する。PAESポリマーは、PAESポリマーの少なくとも一方の末端、好ましくはPAESポリマーの両方の末端の反応性官能基で官能化される。官能価をPAESポリマーの少なくとも1つの鎖末端に導入し、次いで、得られた中間体をさらに用いて、溶液化学によって又は溶融相において実施される化学(例えば反応押出)によってブロックコポリマーを合成することができる。ポリマー(P0)の鎖末端官能基は反応性であり、したがってコポリマー(P1)を効率的に調製するために使用することができる。
【0058】
より正確には、本発明によれば、PAESポリマーは、PAESポリマー(P0)を得るために、式CH=CH-(CH-(sは、0~12の間で変化する)のアルファ-オレフィンである、官能基によって官能化される。
【0059】
PAESポリマー鎖(例えば、上に定義されたPPSU、PES又はPSU)の少なくとも一方の末端、例えばPAESポリマー鎖の両方の末端に重合後修飾として官能基が導入される。
【0060】
本発明によれば、官能化PAESポリマー(P0)は、
- 式(N)の繰り返し単位p:
と、
- 式(M)の少なくとも1つの末端基:
[式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各iは、独立して、0~4(両端を含む)から選択され;
- Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12アルキル、C1~C12アルコキシ、又はC6~C18アリール基である);mが1~6の整数の-(CH-及び-(CF-;6個までの炭素原子の直鎖若しくは分岐の脂肪族二価基;並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され;
- sは、0~12の間(両端を含む)で変化する]
とを含む。
【0061】
ポリマー(P0)を調製するための方法
上述したポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー(P0)の調製方法は、
- 式(N)の繰り返し単位p:
と、
- 式(P)の少なくとも1つの末端基
(式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各iは、0~4から独立して選択され;
- WはO-R又はS-Rであり;
- Rは、H、K、Na、Li、Cs、又はNHQであり、Qは1~10個の炭素原子を含む基である)
とを含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを、式(I)
X-(CH-CH=CH-X(I)
(式中、
- XはCl、Br、又はIであり、
- sは、0~12の間(両端を含む)で変化する)
の化合物と、1より大きい、好ましくは5より大きい、より好ましくは10より大きい化合物(I)/ポリマー(PAES)のモル比で、
任意選択的には塩基及び極性非プロトン性溶媒の存在下で、室温から250℃、好ましくは70~120℃の範囲の温度で反応させる工程を含む。
【0062】
好ましくは、式(P)中のWはO-Rである。言い換えると、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、好ましくは、
- 式(P’)の少なくとも1つの末端基、例えば式(P’)の2つの末端基:
(R、i、T、及びRは上述した通りである)を含む。
【0063】
一実施形態によれば、非プロトン性極性溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、N,Nジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びスルホランから選択される少なくとも1つである。
【0064】
別の実施形態によれば、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(KCO)、カリウムtert-ブトキシド、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸セシウム(CsCO)、及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される。
【0065】
ポリマー(P0)を調製するための方法は、とりわけ、特許出願国際公開第2017/174546号パンフレット(Solvay Specialty Polymers USA)に記載されている。
【0066】
コポリマー(P1)を調製するための方法
コポリマー(P1)を調製するための方法は、官能化PAESポリマー(P0)を、式(I):
(式中、mは1~200の間、好ましくは10~100の間、さらにより好ましくは15~50の間で変化する)の化合物と、
0.5:1~1:0.5の間、例えば0.7:1~1:0.7の間又は0.8:1~1:0.8の間で変化する化合物(I)/ポリマー(P0)のモル比で、
任意選択的に金属系触媒の存在下で、
室温~400℃の範囲の温度で反応させる工程を含む。
【0067】
この方法は無溶媒である。言い換えれば、本発明の方法は、例えばアニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン及びN-エチル-2-ピロリドンからなる群から選択される溶媒の非存在下で、又は代わりに限られた量の溶媒中で実施される。本発明によれば、プロセスの間に溶融粘度を低下させるために特定の化学成分、例えば可塑剤を反応器に添加することができる。可塑剤の例はジフェニルスルホン(DPS)又はフタレートである。本発明の方法は、20重量%未満の可塑剤、例えば15重量%未満又は例えば10重量%未満の可塑剤の存在下で実施され得る。
【0068】
この方法は好ましくは、ポリマーに対して不活性な材料から製造される装置内で実施される。この場合、ポリマーを十分に接触させ、揮発性反応生成物の除去が実行可能であるように装置が選択される。適切な装置としては、撹拌反応器、押出機、及び例えばList AG又はBUSSからの混合混錬機などの混錬機が挙げられる。混合混錬機を使用すると、押出機よりも滞留時間を長くすることができるため、無溶媒コポリマー(P1)の調製に特に有用な場合がある。装置は、例えば、
- 5~500s-1の範囲、好ましくは10~250s-1、特には20~100s-1の範囲の剪断速度(すなわち、回転する混練機要素と壁との間の隙間における混練材料の速度勾配)、及び
- 0.2~0.8、好ましくは0.22~0.7、特には0.3~0.7、具体的には0.35~0.64の範囲の充填レベル(すなわち、モノマーを充填することができ、混合を可能にする、混錬機内の体積容量が開始モノマーによって充填される割合)
で運転することができる。
【0069】
一実施形態によれば、方法は、撹拌反応器、押出機内で又は混練機内で実施される。
【0070】
本発明の方法は好ましくは、金属系触媒、好ましくは白金系触媒、例えば白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Karstedst触媒)又はクロロ白金酸の存在下で実施される。他の有機金属触媒、例えばロジウム系触媒又はルテニウム系触媒(Grubbs第二世代触媒)、例えばベンジリデン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-4イミダゾリジニリデン]-ジクロロ-(トリシクロヘキシル-ホスフィン)ルテニウムも同様に使用することができる。
【0071】
また、本発明の方法は、ベンゾイルペルオキシドなどのフリーラジカル発生剤の存在下で実施され得る。
【0072】
この系の反応温度は150~450℃の間であるが、200~400℃の間、好ましくは250~350℃の間又は260~320℃の間に維持され得る。
【0073】
反応の滞留時間は典型的に、混合装置内で数分~1時間のオーダーである。例えば、滞留時間は1分~30分の間、例えば2~15分の間で変化する。
【0074】
組成物(C)
また、本発明は、上述のコポリマー(P1)を含む組成物(C)に関する。また、組成物)は、補強剤、光開始剤、可塑剤、着色剤、顔料(例えばカーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム、又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、造核剤、及び抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含んでもよい。
【0075】
また、組成物(C)は、1つ又は複数のその他のポリマーをさらに含んでもよい。特に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)又はその他のポリアミド(例えばポリフタルアミド)を挙げることができる。
【0076】
組成物(C)は、例えばペレット、粉末、溶液又はフィラメントの形態であり得る。
【0077】
補強剤
組成物(C)は、組成物(C)の全重量に基づいて例えば1~30重量%の補強剤を含むことができる。
【0078】
補強繊維若しくは充填剤とも呼ばれる補強剤は、繊維状及び粒子状の補強剤から選択され得る。繊維補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。
【0079】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0080】
繊維充填剤の中ではガラス繊維が好ましい;ガラス繊維には、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドであるA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維充填剤から選択される。充填剤は、より好ましくは、高温の用途に耐えられる補強繊維である。
【0081】
補強剤は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、1~30重量%、例えば2~25重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在していてよい。
【0082】
組成物(C)の調製
本発明は、さらに、成分、例えばコポリマー(P1)と、補強剤と、任意選択的な任意の他の成分又は添加剤とを溶融混合することを含む、上で詳述した組成物(C)の製造方法にも関する。
【0083】
任意の溶融混合する方法は、本発明との関連ではポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために使用することができる。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー又はバンバリーミキサー等の溶融ミキサーへ供給することができ、添加するステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部がまず添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を用いて補強された組成物を調製することができる。
【0084】
用途
本発明のコポリマー(P1)又は本発明のポリマー組成物(C)を様々な用途において使用することができる。
【0085】
3次元印刷-付加製造
また、本発明は、3次元(3D)物体/物品の製造のための本発明のコポリマー(P1)の使用又は本発明のポリマー組成物(C)の使用に関する。
【0086】
コポリマー(P1)及びポリマー組成物(C)に対して上に記載した実施形態の全てが、3次元(3D)物体/物品の製造のための使用に同様に当てはまる。
【0087】
本発明はまた、3次元(3D)物体を付加製造システムで製造する方法であって、
- 上述のコポリマー(P1)又はポリマー組成物(C)に本質が存する部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元(3D)物体の層を印刷する工程と
を含む方法に関する。
【0088】
一実施形態によれば、部品材料は、印刷前に少なくとも200℃、少なくとも250℃又は少なくとも280℃の温度に加熱される。
【0089】
一実施形態によれば、印刷工程は、部品材料、例えば印刷表面上に堆積される部品材料の層を、紫外線で照射する工程を含む。層は好ましくは、10μm~300μm、例えば50μm~150μmの範囲のサイズを示す。
【0090】
紫外線は例えばレーザー光であり得る。照射は好ましくは、ポリマー組成物(C)、例えばこのような組成物(C)の層の相当の硬化を引き起こすために十分な強度である。また、照射は好ましくは、ポリマー組成物(C)の層の接着を引き起こすために十分な強度である。
【0091】
また、本発明は、本明細書で記載されるコポリマー(P1)及びポリマー組成物(C)を使用して、少なくとも部分的に本発明の製造方法から得ることができる3D物体又は3D物品に関する。
【0092】
このような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品並びに自動車産業におけるアンダーフード部品を挙げることができる。
【0093】
ホットメルト接着剤(HMA)
また、本発明は、例えばモールディング/オーバーモールディング用途、例えば電子回路板又は細い集合線などの脆い構成要素の封入用のホットメルト接着剤(HMA)としての本発明のコポリマー(P1)又は本発明のポリマー組成物(C)の使用に関する。
【0094】
本発明のコポリマー(P1)又は本発明のポリマー組成物(C)は、一般的にはスマートデバイスのために並びに自動車及び半導体産業において使用することができる。
【0095】
参照により本明細書中に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【0096】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0097】
原材料
コポリマー(P1)を溶融ヒドロシリル化によって調製し、次にNMR、DSC、TEM及び溶融粘度によって特性決定した。
【0098】
H-NMR
溶媒としてCDClを使用し、400MHz Bruker分光計を使用してH NMRスペクトルを測定した。全てのスペクトルは、溶媒中の残留プロトンを基準とした。
【0099】
DSC
ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)(存在する場合)を決定するためにDSCを使用した。DSC実験は、TA Instrument Q100を使用して行った。DSC曲線は、20℃/分の加熱冷却速度での25℃~320℃の、サンプルの加熱、冷却、再加熱、及びその後の再冷却によって記録した。全てのDSC測定は窒素パージ下で行った。報告されているTg及びTmの値は、特に明記されていない限り2回目の加熱曲線を使用して規定した。
【0100】
TEM
トンネル電子顕微鏡法を用いて、これらのブロックコポリマーのミクロ相構造を決定した。TEM計装の詳細は以下の通りである。Philips CM12透過電子顕微鏡、20~120kV加速電圧範囲(当該画像は100kVで取り込まれる)、LaB6フィラメント(電子源)、画像はOptronics QuantFire CCDで取り込まれる。
【0101】
溶融粘度
ASTM-D3835に従って測定される。
【0102】
I.PPSU-PDMSコポリマー(P1-A)の合成
官能化PPSUポリマー(P0-A)は、公開特許出願国際公開第2017/174546号パンフレット(Solvay Specialty Polymers USA)に記載された方法に従って調製された:
【0103】
コポリマー(P1-A)は、以下の方法に従って調製された:
10gのオレフィン末端PPSU(P0-A)を6.7gの水素化物末端PDMS(約100cstの粘度)と混合し、次に0.02モル%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(キシレン中、Pt約2%)及び2.95mLのtert-ブチルヒドロペルオキシド溶液、H2O中70重量%を添加した。混合物を溶融配合機(300℃に維持されるDSM Xplore 5 & 15 Micro Compounder、Model 2005)内に10分間入れた。次に、溶融生成物が排出され、それは均質な弾性固形物を生じた。
【0104】
【0105】
II.PPSU-PDMSコポリマー(P1-A)の特性決定
前述の方法によって得られた材料をDSC、H NMR、TEM及び溶融粘度によって特性決定した。末端基変換を決定し、予想される結合接続を確認するためにH NMRを使用した。ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)(存在する場合)を決定するためにDSCを使用した。TEMを用いて相形態を決定した。
【0106】
結果:
最初に、プロトンNMRを用いてコポリマーを分析した。最初に材料をNMP中に溶解し、次にメタノール中に再沈殿させ、乾燥させて、次いでプロトンNMRによって分析した。最終生成物にオレフィンの信号が存在しないことは、2つのブロック間の共有結合の形成を示す。さらに、2つの明確に異なる信号がコポリマーのスペクトル中に存在しており、それは形成された所望の構造を確認するのに診断上有意であるのが判明した。0.8ppmの-Si-(CH-基の存在は、PDMSブロックの存在を示した。第二に、7.0、7.6及び7.8ppmの芳香族信号の存在は、芳香族ポリスルホンブロックの存在を示した。
【0107】
実施例1のコポリマーの透過型電子顕微鏡法(TEM)の顕微鏡写真(図1A)は、ポリスルホン及びPDMSの2つの非相溶性ブロックの間のミクロ相分離を示す。PDMS相の非常に小さなドメインサイズ(0.5ミクロン)は、ポリスルホンとPDMSとの間の共有結合した系の形成を示す。
【0108】
コポリマーP1-Aは、2つの明確に異なる熱事象、すなわち、一方はポリスルホンブロックのガラス転移温度に相当する約210℃、他方はPDMSブロックの融点に相当する-44℃の融解ピークを示した。
【0109】
ポリマーのTGA分析は、494℃で熱崩壊の開始がある単一工程分解プロファイルをもたらす。
【0110】
出発原料P0-A及びコポリマーP1-Aの溶融粘度は、ASTM-D3835を用いて350℃で測定された。
【0111】
【0112】
反応性ブレンディング後の著しい粘度上昇は、出発原料(P0-A)と比較した場合の高分子量コポリマー(P1-A)の存在を示す。
図1