(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】磁気共鳴検査装置用シムトレイ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B5/055 332
(21)【出願番号】P 2021557013
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020059301
(87)【国際公開番号】W WO2020201379
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】フォースマン ペーター
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-015840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0135371(US,A1)
【文献】特開2014-061111(JP,A)
【文献】特開2002-320599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシム要素を保持する複数のシムポケットを備えるシムトレイであって、前記シムポケットは長手方向に配置され、前記シムポケットは、長手方向に延在する長手方向側壁及び横方向に延在する
横方向側壁によって形成され、前記個々のシムポケットは、開口チャネルを有し、前記2つの対向する横方向側壁が少なくとも1つの開口チャネル端部に端部シム要素を受け入れるように構成される挿入プロファイルを有し、前記シムポケットは、前記端部シム要素が前記複数のシム要素を前記チャネル内に保持するように前記端部シム要素によって覆われ、前記複数のシム要素及び端部シム要素は強磁性材料である、シムトレイ。
【請求項2】
前記端部シム要素は、前記シムポケットが前記少なくとも1つの端部で閉じられるように前記挿入プロファイルに挿入される、
請求項1に記載のシムトレイ。
【請求項3】
前記挿入プロファイルは、前記それぞれの横方向側壁にインデントとして形成される、請求項1又は2に記載のシムトレイ。
【請求項4】
前記シムポケットの一つ又はそれより多くは、その/それらのチャネルの両端に前記挿入プロファイルを有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のシムトレイ。
【請求項5】
前記対向する側壁は平行である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシムトレイ。
【請求項6】
前記複数のシム要素を横方向に保持する平行な長手方向レールであって、前記横方向側壁を長手方向に接続し、前記(複数の)シムポケットの長手方向の対向する側壁を形成する、長手方向レールを有する、請求項5に記載のシムトレイ。
【請求項7】
前記各シムポケットの前記開口チャネルを区切る前記横方向及び長手方向側壁と前記長手方向レールとの間に横方向に延在する横方向側壁を有する、請求項
6に記載のシムトレイ。
【請求項8】
前記端部シム要素は、前記挿入プロファイルに対応する突出部を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のシムトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴検査装置の主磁石システム用のシムトレイに関する。磁気共鳴検査システムによる空間分解イメージング又は分光法では、空間的に均一な強い主磁場が一時的な勾配磁場パルスが重ね合わされる磁気共鳴検査システムの検査領域に使用される。空間的に不均一な主磁場は検査されるべき対象物(検査されるべき患者)の空間的に均一な磁極化を引き起こし、一時的な勾配磁場パルスは、磁気共鳴信号の空間的符号化を提供する。
【0002】
主磁場は、1.5、3.0、7.0T又はさらに高い磁場強度を有し得る。空間的な不均一性を補正するために、いわゆる強磁性シム要素(鉄又は鋼)がマグネット穴の周囲に取り付けられている。通常、多数のシムトレイが磁石のボアの周りに配置され、各シムトレイは、多数のシム要素を保持するための多数のシムポケットを含む。シムトレイはシム要素が正しく配置されるように、長手方向に(主磁場の方向に沿って)それらの適切な位置にスライドすることができる。
【背景技術】
【0003】
米国特許出願公開第2003/0214300号は、補正される磁場の不均一性に従って磁性材料のシム薄層で充填され得る、軸方向にシムポケットに細分されるシムトレイを開示する。米国特許出願第2007/0030004号は、シムパックを含む成形体を有するMRIスキャナを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知のシムトレイと比較してより高いシム容量を有するシムトレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は複数のシムポケットを素子シムトレイによって達成され、このシムトレイは個々のシムポケットが開口チャネルを形成する側壁を有し、2つの対向する側壁が少なくとも1つの開口チャネルの端部を受け入れるための挿入プロファイルを有する。
【0006】
本発明によれば、開放チャネルは、個々のシムポケットを形成する。
各シムポケットは、そのチャネル端部の1つ以上において、端部シム要素によって覆われている。チャネルは、一方又は両方の端部からチャネルの軸に沿って自由にアクセス可能であり得るという点で開いている。上部及び/又は底部カバーまで、そのような個々のチャネルは、強磁性端部シム要素及び強磁性シム要素で充填されてもよい。
【0007】
シム解決策、すなわちボアの周囲に取り付けられるシム要素の空間構成が完全に充填されるポケットを必要としない場合、例えば、プラスチック製のダミーシムプレートがポケットを充填するために使用され、ポケットがシムプレートの位置を固定する密な積層を常に含んでいるように、磁気的に不活性である。したがって、シムポケットのチャネルの本質的に全体積が、シム要素を保持するために利用可能である。より多くの体積が利用可能であればあるほど、より多くのシム要素を使用することができる。これは、より正確な空間的に均一な磁場をもたらす。利用可能なシム体積が増大するため、本発明のシムトレイは、従来のシムトレイと適切にシム締めすることができなかった磁石を適切にシム締めすることも可能にすることができる。
【0008】
端部シム要素を機械的に所定の位置に保持するために、チャネルの対向する長手方向側壁は、特にチャネルの端部付近に挿入プロフィールを有する。このようにして、端部シム要素は、機械的に位置に保持され、シムトレイが所定の位置にスライドされるときの磁力に耐えることができる。例えば、取付けの際に、シムトレイは主磁場が強い不均一性を有し得る領域(検査領域の外側)に移動され、その結果、長手方向に所定の位置にスライドしながら、変化する強度及び方向の磁力がシムトレイのシム要素に作用することは留意される。端部シム要素はそれらの側面が挿入プロファイル内に正確に入り込み、端部シム要素が挿入プロファイル内に横方向に摺動することができるように成形される。好ましくは挿入プロフィールが両方のチャネル端部に設けられ、端部シム要素はそれらの挿入プロフィールに挿入される両方のチャネル端部に配置される。あるいは挿入プロファイルが一方のチャネル端部に設けられてもよく、対向するチャネル端部には従来のカバーが開放チャネルを閉鎖する。この代替実施形態では、チャネルが端部シム要素によって閉鎖され得る単一開口部を有する開放チャネルである。一般に、シム要素が多角形形状であり、挿入プロファイルの向きが多角形形状と一致して、多角形形状のシム要素が挿入プロファイル内に容易に滑り込むことを可能にする、代替の幾何学的形状が可能である。長方形又は正方形の4面形状は良好に機能し、製造が容易であり、挿入プロファイルは整合が容易であることに留意される。
【0009】
いくつかのシム要素を、チャネルの軸に沿ってそれらの法線を有するチャネル内に積み重ねることができる。これらのシム要素は、チャネルの側壁及び端部シム要素によって適所に保持される。挿入プロファイル内の位置に保持される端部シム要素は、チャネル軸に沿ってチャネル内のシム要素を保持する。言い換えれば、挿入プロファイルは端部シム要素を機械的に保持し、次いで、端部シム要素は、シム要素をチャネル内に保持する。端部シム要素はそれらを挿入プロファイル内に横方向にスライドさせることによって配置されてもよいが、シム要素は横方向に沿ってシムポケット内に入力されてもよい。一旦、シムポケットに、互いに上に静止し、下部の端部シム要素上に静止するシム要素が充填されると、上部の端部シム要素内で横方向にスライドすることによってチャネルを閉じることができる。次に、シム要素は端部(頂部及び底部)シム要素の間に固定され、後者は挿入プロファイルに固定される。好ましくは、端部シム要素が頂部及び底部と同一平面である。この構成は、利用可能なシム体積を最大にする。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に定義される実施形態を参照してさらに詳述される。
【0011】
本発明のシムトレイの一例では、挿入プロファイルがシムポケットのチャネルの側壁の長手方向のインデントである。このようにして、挿入プロファイルは、側壁の一体部分として形成される。インデントは、側壁に沿って横方向に延在する。これは製造が容易である。
【0012】
更なる例では、対向する側壁は平行であり、その結果、長方形の端部シム要素が挿入プロファイル内に容易に横方向にスライドするように適合する。さらなる例では、横方向側壁が長手方向レール間で横方向に延在する。長手方向レールは磁石構造体のシムチャネルと一致し、シムトレイが磁石構造体のシムチャネル内に容易にスライドすることを可能にする。横方向側壁と長手方向レールは、個々のチャネルのそれぞれ横方向側壁と長手方向側壁を形成する。すなわち、本発明のシムトレイは、各シムポケットの長手方向側壁を形成する平行な長手方向レールを有する。各シムポケットの長手方向側壁は、長手方向レールの1つの一部である。この構造は、本発明のシムトレイの製造を容易にする。長手方向レール及び横方向側壁は、単純かつ製造コストが安価な一体型ユニットとして形成されてもよい。長手方向レール及び横方向側壁はそれぞれ長手方向及び横方向に延び、それぞれの端部シム要素の間に多数のシム要素を収容する横方向長さを有するシムポケットの各々の開放チャネルを形成する。この一体ユニットは、プラスチックの射出成形によってシームレスに製造することができる。
【0013】
さらなる例では、端部シム要素がインデントに対応する突出部を備えることができる。位置において、突出部は側壁の圧痕と同様に、長手方向に配向される。インデントは、横方向側壁に長手方向に窪んでおり、横方向に延びている。長手方向の突出部と長手方向の圧痕の組み合わせは端部シム要素の確実なクランプを形成し、一方、端部シム要素は位置において快適に横方向にスライドさせることができる。一旦所定の位置になると、端部シム要素は、そのインデント内の所定の位置にしっかりと保持されてもよい。端部シム要素は、インデントと干渉嵌合するように位置を更に固定することができるので、シム要素を少しの圧力で所定の位置にスライドさせる必要がある。端部シム要素が所定の位置にしっかりと固定されると、端部シム要素(したがって、シムポケット内のシム要素)が脱落することが防止される。これらの固定は、主磁石の磁場の引っ張りに抵抗するのに十分な強さである。突出部は端部シム要素と一体であってもよく、実際にはシム要素に対して端部シム要素の長手方向の大きさを延長してもよい。代替的に、突出部は、インデントに適合するように成形されてもよく、一方、側方側壁はその突出部がインデントに閉じ込められた状態で定位置にあるときに、端部シム要素の身体を支持する。端部シム要素は磁場をシムする素子と、シムポケットを覆う素子の両方に作用する(また、別個の例えばプラスチック製の蓋が必要でない)素子、シムポケット内の空間はシム加工の素子により効率的に使用される。
【0014】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して、及び添付の図面を参照して説明される
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明のシムトレイの一例の概略上面図を示す。
【
図2】本発明のシムトレイの一例の部分概略的な側面図である。
【
図3】本発明のシムトレイの別の例の部分概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1aは、本発明のシムトレイ10の一例の概略上面図を示す。縦レール41は、方向軸(lng)に沿って互いに平行に延びている。横方向側壁21は長手方向レール41の間で横方向(lat)に延び、横方向(tr)に開口チャネル11を形成する。個々の開放チャネルは、側方側壁21の2つと、それぞれの長手方向レール42の2つの対向する部分とによって境界付けされる。開放チャネルは、シム要素12を保持するためのいわゆるシムポケット11を形成する。開放チャネルは、シム要素が一方又は両方の端部から横方向に沿って挿入され得るという点で、開放されている。端部シム要素13を横方向に挿入してシムポケット11を閉じ、シム要素12を所定の位置に保持することができる。
【0017】
図1bは、シムポケットがシム要素で充填されるときの、シムトレイ内へのシム要素の取り付け中の
図1aのシムトレイの部分体積図を示す。いくつかのシムポケットが示されており、それぞれがシム要素で満たされ、その端部シム要素で閉じられている。最も右側のシムポケットは空の状態で示されており、横軸に沿って開放チャネル内を見ることができる。1つのシム要素13は、シムポケット内の所定の位置に収容されるチャネル内に横方向に沿って移動されるにつれて、開放チャネルの外側に依然として示される。
【0018】
図2は、本発明のシムトレイの一例の部分概略側面仰角を示す図であり、
図2は本発明のシムトレイを長手方向に沿って見たときの図であり、図面の平面は横断方向平面内にあることを示す図である。
図2の例は、シムポケット11を形成する開放チャネルの端部にそれぞれ2つの端部シム要素13を示す。シム要素12(例として6つのシム要素が示される)は、シムポケット内に配置され、開放チャネルの両側でそれぞれの端部シム要素13の間にしっかりとクランプされ、従って、シムポケットを形成するチャネルの開口を覆う。
【0019】
縦方向側壁21の横方向端部には、横方向側壁に長手方向にインデントがあり、横方向に伸びる挿入プロファイル22が示される。端部シム要素は挿入プロファイル内の位置に保持される位置を提供するように、挿入内に横方向に沿ってスライドさせることができる。したがって、シム要素12は端部シム要素13の間の位置にしっかりと保持され、これはそれらの長手方向伸長部が挿入プロファイルにぴったりと適合するため、位置に保持される。(端部)シム要素12、13はしっかりと固定され、固定レジストは主磁石の磁場の引っ張りを受ける。したがって、(端部)シム要素はシムポケットから出ることができず、これは磁石が磁界にある間のシムトレイの取り付けをより容易にする。端部シム要素はそれらの間にシム要素をクランプし、端部シム要素は(端部)シム要素が取り付け中に磁力によって脱落したり、引き出されることができないように、それらの突起によってインデント内に固定される。
【0020】
シム要素を腐食から保護するためにシムポケットの開口チャネルを閉じるために、プラスチックカバー31をシムポケットの開口部の上に設け、シムトレイ10の構造体にクランプすることができる。これらの別個のカバーは省略することができ、端部シム要素はシムポケットの開放チャネルを閉鎖する。端部シム要素の突出部23は端部シム要素がインデントにクランプされ、所定の位置にしっかりと留まるように、インデント部22との干渉嵌合を作ることができる。
【0021】
図3は、本発明のシムトレイの一例の部分概略側面図を示す。
図3は、端部シム要素13の挿入プロファイル及びさらなる好ましい形状のさらなる詳細を示す。
図4のシムトレイの例は、開放チャネルの両端に26個のシム要素及び端部シム要素13を有する。両チャネル端部には、側方側壁のそれぞれのチャネル端部の横方向インデントに適合する突起部を備えた端部シム要素がある。底部の一端シム要素はそのインデント内の位置で示されており、上部の他端シム要素13は、まだ所定の位置で示されていない。頂部のこの端部シム要素は、その突出部23がインデント22内に収容される状態で、その空間131内の所定位置に摺動される。
図3に示すように、観察者は、その横方向後端部で境界付けされる端部シム要素のための空間を長手方向壁12によって見る。各端部シム要素13は、左右方向に沿って長手方向に延在する突出部23を備えている。この突出部23の形状は、側方インデント22及び側方側壁の形状に対応している。この実施形態では、側方側壁が磁場による引っ張りに耐えることができるように、その位置で端部シム要素を強く支持する。突出部はインデント内に落下し、端部シム要素の身体は側壁にしっかりと当接する。これにより、取り付け中及び所定位置にあるときに強磁性体(端部)シム要素に引っ張られる磁力に耐える非常に良好な支持が得られる。溝の上端において、突出部の形状がより明確に見えるように、端部シム要素13は、インデントに取り付けられていないときも示される。