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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】接合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20240326BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240326BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20240326BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20240326BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L23/12 C
H01L23/36 C
H05K3/38 D
B23K1/19 B
B23K1/00 330E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021560819
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046299
(87)【国際公開番号】W WO2021106097
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】海老ヶ瀬 隆
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-071260(JP,A)
【文献】特開平04-305363(JP,A)
【文献】特開2018-145047(JP,A)
【文献】特開2013-214566(JP,A)
【文献】特開昭61-137688(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
H01L 23/13,23/36
H05K 3/38
B23K 1/00,1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 2つの主面を有する窒化ケイ素セラミックス基板を準備する工程と、
b) 前記2つの主面のそれぞれの上に活性金属ろう材及びバインダを含むろう材層を0.1μm以上10μm以下の厚さに形成する工程と、
c) それぞれの前記ろう材層上に銅板を配置して前記窒化ケイ素セラミックス基板、前記ろう材層及び前記銅板を備える中間品を得る工程と、
d) 前記中間品に対してホットプレスを行って、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層を生成させる工程と、
を備え、
前記活性金属ろう材は、活性金属としてのチタンと前記活性金属以外の金属としての銀とを含み、
前記工程d)は、
d-1) 接合のための加圧を前記中間品に対して行わずに前記中間品の温度を脱バインダ温度まで上げて前記バインダの脱バインダを行う工程と、
d-2) 前記中間品の温度を前記脱バインダ温度から最高温度まで上げ、前記中間品の温度を前記脱バインダ温度から前記最高温度まで上げる途上で前記中間品に加える面圧を、あらかじめ設定されている面圧プロファイルにおける5MPa以上30MPa以下の最高面圧まで上げる工程と、
を備え
前記工程d-2)は、
d-2-1) 接合のための加圧を前記中間品に対して行うことを開始した後に、前記中間品に加える面圧を前記最高面圧よりも低い第1の面圧まで上げ前記第1の面圧で維持する工程と、
d-2-2) 前記中間品に加える面圧を前記第1の面圧から前記最高面圧まで上げる工程と、
を備える
接合基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程b)においては、前記ろう材層を前記活性金属ろう材及び前記バインダを含むペーストのスクリーン印刷により形成する、
請求項1の接合基板の製造方法。
【請求項3】
前記工程d-2-1)は、前記中間品の温度が500℃以上700℃以下である間に前記中間品に加える面圧を前記第1の面圧まで上げる
請求項の接合基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1の面圧は、1MPa以上5MPa以下である
請求項1から3までのいずれかの接合基板の製造方法。
【請求項5】
前記活性金属ろう材は、銀を含み、銅を含まず、
前記工程d)は、前記銅板から前記ろう材層に銅を拡散させ、前記ろう材層中にチタンと銅との化合物を生成させる
請求項からまでのいずれかの接合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素セラミックスは、高い熱伝導性及び高い絶縁性を有する。このため、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板は、パワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として好適に用いられる。
【0003】
当該接合基板は、多くの場合は、ろう材層を銅板と窒化ケイ素セラミックス基板との間に有する中間品を作製し、作製した中間品に対して熱処理を行って銅板と窒化ケイ素セラミックス板との間に接合層を生成させることにより製造される。
【0004】
また、中間品に対して熱処理を行う際に、中間品に対してホットプレスを行うことも提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された技術においては、窒化珪素基板の一方主面上にろう材が塗布され、塗布されたろう材の塗布面に銅板が重ね合わされ、加熱加圧接合によって接合基板が得られる(段落0024及び0025)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6482144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、接合基板が製造される際に中間品に対してホットプレスが行われる場合は、製造される接合基板にうねり等の変形が生じることがある。
【0008】
本発明は、この問題に鑑みてなされた。本発明が解決しようとする課題は、接合基板が製造される際に中間品に対してホットプレスが行われる場合に、製造される接合基板の変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
窒化ケイ素セラミックス基板が準備される。活性金属ろう材及びバインダを含むろう材層が、窒化ケイ素セラミックス基板の2つの主面のそれぞれの上に0.1μm以上10μm以下の厚さにて形成される。活性金属ろう材は、活性金属としてのチタンと活性金属以外の金属としての銀とを含む。それぞれのろう材層上に銅板が配置される。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板、ろう材層及び銅板を含む中間品が得られる。中間品に対してホットプレスが行われる。これより、銅板を窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層が生成する。中間品に対してホットプレスが行われる際には、接合のための加圧が中間品に対して行われずに中間品の温度が脱バインダ温度まで上げられる。これにより、バインダの脱バインダが行われる。また、中間品の温度が脱バインダ温度から最高温度まで上げられる。その途上で、中間品に加えられる面圧があらかじめ設定されている面圧プロファイルにおける5MPa以上30MPa以下の最高面圧まで上げられる。その際には、接合のための加圧を中間品に対して行うことを開始した後に、中間品に加える面圧が最高面圧よりも低い第1の面圧まで上げられて維持された後、中間品に加える面圧が第1の面圧から最高面圧まで上げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銅板の温度が上がって銅板が塑性変形しやすくなった後に銅板に加えられる面圧が最高面圧まで上げられる。このため、接合基板が製造された後に銅板の内部に応力が残留することを抑制することができる。これにより、銅板の内部に残留する応力に起因する接合基板の変形が生じることを抑制することができる。
【0011】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の接合基板の例を模式的に図示する断面図である。
図2】第1実施形態の接合基板の製造の流れを図示するフローチャートである。
図3】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
図4】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
図5】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
図6】参考例の温度プロファイル及び面圧プロファイルを示す図である。
図7】第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの第1の例を示す図である。
図8】第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの第2の例を示す図である。
図9】第1実施形態の接合基板が製造される途上で接合のための加圧を中間品に対して行うことが開始される前後の中間品の断面を模式的に図示する断面図である。
図10図7に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた第1実施形態の接合基板の中間品の超音波探傷装置(SAT)像を図示する図である。
図11図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた第1実施形態の接合基板の中間品のSAT像を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1 接合基板
図1は、第1実施形態の接合基板の例を模式的に図示する断面図である。
【0014】
図1に図示される第1実施形態の接合基板1は、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12及び接合層13を備える。接合基板1がこれらの要素以外の要素を備えてもよい。
【0015】
銅板12及び接合層13は、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上に配置される。接合層13は、銅板12を窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11sに接合する。
【0016】
銅板12は、活性金属を含む接合層13を介して窒化ケイ素セラミックス基板11に接合される。接合層13に含まれる活性金属は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の活性金属である。接合層13が活性金属以外の金属を含んでもよい。接合層13に含まれる活性金属以外の金属は、銀、銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属である。接合層13が、窒化ケイ素セラミックス基板11から供給された窒素及び/又はケイ素を含んでもよい。供給された窒素及び/又はケイ素が活性金属と化合物を形成していてもよい。接合層13が、銅板12から供給された銅を含んでもよい。
【0017】
接合基板1は、どのように用いられてもよいが、例えばパワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として用いられる。
【0018】
2 接合基板の製造方法
図2は、第1実施形態の接合基板の製造の流れを図示するフローチャートである。図3図4及び図5は、第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【0019】
第1実施形態の接合基板1の製造においては、図2に示される工程S101からS105までが順次に実行される。
【0020】
工程S101においては、窒化ケイ素セラミックス基板11が準備される。
【0021】
工程S102においては、図3に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上に、ろう材層13iが形成される。
【0022】
ろう材層13iが形成される際には、活性金属ろう材、バインダ及び溶剤を含むペーストが調製される。ペーストが分散剤、消泡剤等をさらに含んでもよい。続いて、調製されたペーストが窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上にスクリーン印刷され、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上にスクリーン印刷膜が形成される。続いて、形成されたスクリーン印刷膜に含まれる溶剤が揮発させられる。これにより、スクリーン印刷膜が、ろう材層13iに変化する。ろう材層13iは、活性金属ろう材及びバインダを含む。ろう材層13iがこの方法とは異なる方法により形成されてもよい。
【0023】
活性金属ろう材は、水素化活性金属粉末及び金属粉末を含む。水素化活性金属粉末は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の活性金属の水素化物を含む。金属粉末は、銀を含む。金属粉末が、銀以外の金属を含んでもよい。銀以外の金属は、銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属である。銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属が活性金属ろう材に含まれる場合は、活性金属ろう材の融点が低下する。
【0024】
活性金属ろう材は、望ましくは40重量%以上80重量%以下の銀を含む。
【0025】
活性金属ろう材は、望ましくは0.1μm以上10μm以下の平均粒子径を有する粉末からなる。平均粒子径は、市販のレーザー回折式の粒度分布測定装置により粒度分布を測定し、測定した粒度分布からD50(メジアン径)を算出することにより得ることができる。活性金属ろう材がこのように小さい平均粒子径を有する粉末からなることにより、ろう材層13iを薄くすることができる。
【0026】
ろう材層13iは、望ましくは0.1μm以上10μm以下の厚さを有し、さらに望ましくは0.1μm以上5μm以下の厚さを有する。
【0027】
工程S103においては、図4に図示されるように、形成されたろう材層13i上に銅板12iが配置される。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12i及びろう材層13iを備える中間品1iが得られる。
【0028】
工程S104においては、得られた中間品1iに対してホットプレスが行われる。これにより、図5に図示されるように、接合層13jが生成する。これらにより、図5に図示される、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12j及び接合層13jを備える中間品1jが得られる。接合層13jは、銅板12jを窒化ケイ素セラミックス基板11に接合している。
【0029】
中間品1iに対してホットプレスが行われる場合は、望ましくは、中間品1iが、真空中又は不活性ガス中で、800℃以上900℃以下の最高温度TMAXを有する温度プロファイルにしたがって加熱されながら、5MPa以上30MPa以下の最高面圧PMAXを有する面圧プロファイルにしたがって窒化ケイ素セラミックス基板11の厚さ方向に加圧される。これにより、ろう材層13iが0.1μm以上10μm以下の厚さを有する場合のようなろう材層13iが薄い場合においても、ボイドを形成することなく銅板12iを窒化ケイ素セラミックス基板11に接合することができる。
【0030】
中間品1iに対してホットプレスが行われる間に、ろう材層13iに含まれる銀等の金属成分の全部又は一部が窒化ケイ素セラミックス基板11及び/又は銅板12iに拡散させられてもよい。中間品1iに対してホットプレスが行われる間に、窒化ケイ素セラミックス基板11に含まれる窒素及び/又はケイ素がろう材層13iに拡散させられてもよい。銅板11iに含まれる銅がろう材層13iに拡散させられてもよい。
【0031】
工程S105においては、銅板12j及び接合層13jがエッチング法等によってパターニングされる。これにより、銅板12jが、図1に図示されるパターニングされた銅板12に変化する。また、接合層13jが、図1に図示されるパターニングされた接合層13に変化する。銅板12j及び接合層13jのパターニングが省略されてもよい。
【0032】
3 温度プロファイル及び面圧プロファイル
図6は、参考例の温度プロファイル及び面圧プロファイルを示す図である。図7は、第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの第1の例を示す図である。図8は、第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの第2の例を示す図である。
【0033】
図6図7及び図8に図示される温度プロファイルにおいては、まず、中間品1iの温度が、室温から脱バインダ温度TBまで上げられる。また、中間品1iの温度が、設定された時間に渡って脱バインダ温度TBで維持される。これにより、ろう材層13iに含まれるバインダの脱バインダが行われる。続いて、中間品1iの温度が、脱バインダ温度TBから最高温度TMAXまで上げられる。また、中間品1iの温度が、設定された時間に渡って最高温度TMAXで維持される。続いて、中間品1iの温度が、最高温度TMAXから室温まで下げられる。
【0034】
図6に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iの温度が脱バインダ温度TBに到達する前に、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始され、中間品1iに加えられる面圧が最高面圧PMAXまで上げられる。このため、図6に図示される面圧プロファイルにしたがって中間品1iに対してホットプレスが行われた場合は、銅板12iの温度が上がって銅板12iが塑性変形しやすくなる前に、接合のための加圧を銅板12iに対して行うことが開始され、銅板12iに加えられる面圧が最高面圧PMAXまで上げられる。このため、熱膨張しようとする銅板12iが拘束され、接合基板1が製造された後に銅板12の内部に応力が残留する。これにより、銅板12の内部に残留する応力に起因する接合基板1の変形、破損等が生じる。例えば、接合基板1のうねり、クラック等が生じる。また、図6に図示される面圧プロファイルにしたがって中間品1iに対してホットプレスが行われた場合は、ろう材層13iに含まれるバインダの脱バインダが行われる前に接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始される。このため、脱バインダが不十分になり、窒化ケイ素セラミックス基板11と銅板12との間の接合強度が低下する。
【0035】
これに対して、図7及び図8に図示される面圧プロファイルにおいては、接合のための加圧が中間品1iに対して行われずに中間品1iの温度が脱バインダ温度TBまで上げられる。また、中間品1iの温度が脱バインダ温度TBから最高温度TMAXまで上げられる途上で、接合のための加圧を銅板12iに対して行うことが開始され、中間品1iに加えられる面圧が最高面圧PMAXまで上げられる。このため、図7及び図8に図示される面圧プロファイルにしたがって中間品1iに対してホットプレスが行われた場合は、銅板12iの温度が上がって銅板12iが塑性変形しやすくなった後に、接合のための加圧を銅板12iに対して行うことが開始され、銅板12iに加えられる面圧が最高面圧PMAXまで上げられる。このため、熱膨張しようとする銅板12iが拘束されることを抑制することができ、接合基板1が製造された後に銅板12の内部に応力が残留することを抑制することができる。これにより、銅板12の内部に残留する応力に起因する接合基板1の変形、破損等が生じることを抑制することができる。例えば、接合基板1のうねり、クラック等が生じることを抑制することができる。また、図7及び図8に図示される面圧プロファイルにしたがって中間品1iに対してホットプレスが行われた場合は、脱バインダが行われている間は、接合のための加圧が中間品1iに対して行われず動き止めのための加圧が中間品1iに対して行われる。動き止めのための加圧が中間品1iに対して行われている間に中間品1iに加えられる面圧は、接合のための加圧が中間品1iに対して行われている間に中間品1iに加えられる面圧より低いが中間品1iが動くことを抑制することができる低い面圧、例えば0.1~0.3MPa程度の低い面圧に維持される。このため、接合のための加圧が中間品1iに対して行われるにより脱バインダが阻害されることを抑制することができ、製造された接合基板1に備えられる接合層13への残炭を抑制することができる。
【0036】
図7に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iに加えられる面圧が、1段階で最高面圧PMAXまで上げられる。図7に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iの温度が上げられてろう材層13iが溶融を開始した後に、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始され、中間品1iに加えられる面圧が最高面圧PMAXまで上げられる。
【0037】
図8に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iに加えられる面圧が、2段階で最高面圧PMAXまで上げられる。図8に図示される面圧プロファイルにおいては、接合のための加圧が中間品1iに対して行われずに中間品1iの温度が脱バインダ温度TBまで上げられる。また、中間品1iの温度が脱バインダ温度TBまで上げられた後に、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始される。また、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始された後に、まず、中間品1iに加えられる面圧が、第1の面圧P1まで上げられ、設定された時間に渡って第1の面圧P1で維持される。続いて、中間品1iに加えられる面圧が、第1の面圧P1から第2の面圧(最高面圧)PMAXまで上げられ、設定された時間に渡って第2の面圧PMAXで維持される。第2の面圧PMAXは、第1の面圧P1より高い。中間品1iに加えられる面圧は、中間品1iの温度が脱バインダ温度TBから最高温度TMAXに上げられる途上で第2の面圧(最高面圧)PMAXまで上げられる。これにより、銅板12iの温度が上がって銅板12iが塑性変形しやすくなる前は、比較的に弱い第1の面圧P1で銅板12iが窒化ケイ素セラミックス基板11に向かって押し付けられる。このため、窒化ケイ素セラミックス基板11が割れることを抑制することができる。
【0038】
図9(a)は、第1実施形態の接合基板が製造される途上で中間品への接合のための加圧を中間品に対して行うことが開始される前の中間品の断面を模式的に図示する断面図である。図9(b)は、第1実施形態の接合基板が製造される途上で接合のための加圧を中間品に対して行うことが開始された後の中間品の断面を模式的に図示する断面図である。
【0039】
銅板12iの銅板主面12isは、ろう材層13iが配置される側を向く。銅板12iの銅板主面12isは、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始される前に、図9(a)に図示されるように、ろう材層13iに接触する接触領域R1、及びろう材層13iに接触しない非接触領域R2を有する。銅板12iの銅板主面12isの非接触領域R2は、主に、銅板12iが反っている場合に、銅板12iの銅板主面12isの周辺部に生じ、銅板12iの銅板主面12isが矩形状の平面形状を有する場合は矩形状の平面形状の四隅に生じる。
【0040】
第1の面圧P1は、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始された後に、図9(b)に図示されるように、銅板12iが平坦化されて銅板12iの銅板主面12isの非接触領域R2がろう材層13iに接触する面圧であり、望ましくは、1.0MPa以上である。これにより、中間品1iに加えられる面圧が第1の面圧P1まで上げられた際に、銅板12iの銅板主面12isの非接触領域R2がろう材層13iに接触する。これにより、銅板12jの銅板主面12isの全領域を接合層13jにより窒化ケイ素セラミックス基板11に接合することができる。この効果は、活性金属ろう材が銀を含み銅を含まない場合に顕著に現れる。活性金属ろう材が銀を含み銅を含まないが銅板12iの銅板主面12isの非接触領域R2がろう材層13iに接触する場合は、中間品1iに対してホットプレスが行われる際に、銅板12iからろう材層13iに含まれるチタンの粒子に銅が拡散することにより、ろう材層13i中にチタンと銅との化合物が生成し、接合を阻害する銀とチタンとの化合物が生成することが抑制されるためである。
【0041】
接合のための加圧を中間品1iに対して行うことは、望ましくは、中間品1iの温度が500℃以上700℃以下である間に開始される。脱バインダ温度TBは、500℃程度であり、チタンと銅との化合物が形成され始める温度は、700℃程度であるためである。
【0042】
また、第1の面圧P1は、望ましくは、5MPa以下である。第1の面圧P1が5MPaより高い場合は、銅板12iが窒化ケイ素セラミックス基板11に向かって強く押し付けられて窒化ケイ素セラミックス基板11が割れやすくなる傾向が現れる。第2の面圧P2は、望ましくは、5MPa以上30MPa以下である。第2の面圧P2が5MPaより低い場合は、銅板12iの窒化ケイ素セラミックス基板11への接合性が低下する傾向が現れる。第2の面圧P2が30MPaより高い場合は、銅板12iが窒化ケイ素セラミックス基板11に向かって強く押し付けられて窒化ケイ素セラミックス基板11が割れやすくなる傾向が現れる。
【0043】
図8に図示される面圧プロファイルにおいては、望ましくは、中間品1iの温度が500℃以上700℃以下である間に、接合のための加圧を中間品1iに対して行うことが開始され、中間品1iに加えられる面圧が第1の面圧P1まで上げられる。また、中間品1iの温度がさらに上げられてろう材層13iが溶融を開始した後に、中間品1iに加えられる面圧が第1の面圧P1から第2の面圧PMAXまで上げられる。
【0044】
4 実施例
上述した接合基板1の製造方法にしたがって接合基板1を製造した。活性金属ろう材に含まれる活性金属としては、チタンを用いた。活性金属ろう材に含まれる活性金属以外の金属としては、銀を用いた。ホットプレスは、図6図7及び図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがって行った。脱バインダ温度TBは、550℃とした。最高温度TMAXは、820℃とした。第1の面圧P1は、2.5MPaとした。第2の面圧(最高面圧)PMAXは、22MPaとした。
【0045】
図6図7及び図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた接合基板1の温度を室温から300℃まで上げてから再び室温まで戻し、製造された接合基板1の温度を室温まで戻した後に接合基板1に生じたうねりの有無を確認した。その結果、図6に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた接合基板1には、長さ20mm当たり高さ20μm程度の大きなうねりが生じた。しかし、図7及び図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた接合基板1には、長さ20mm当たり高さ1μm程度のわずかなうねりしか生じなかった。
【0046】
また、図7及び図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた中間品1jを超音波探傷装置(SAT)により観察し、SAT像を得た。図7及び図8に図示される温度プロファイル及び面圧プロファイルにしたがってホットプレスが行われた中間品1jのSAT像をそれぞれ図10及び図11に示す。図10に図示されるSAT像からは、銅板12jの四隅において接合が不十分であることを理解することができ、図11に図示されるSAT像からは、銅板12jの全体において接合が十分であることを理解することができる。
【0047】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0048】
1 接合基板
11 窒化ケイ素セラミックス基板
12,12i 銅板
13 接合層
13i ろう材層
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11