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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】管状ストランドを測定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/00 20060101AFI20240326BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240326BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20240326BHJP
【FI】
G01B15/00 C
B29C48/92
B29C48/09
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021577655
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2020065308
(87)【国際公開番号】W WO2021008770
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】102019119491.1
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】ホレ アルミン
(72)【発明者】
【氏名】フランク クリスチャン
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202018006144(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第102016109087(DE,A1)
【文献】特開平05-305647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194055(US,A1)
【文献】特開平06-190893(JP,A)
【文献】特開昭51-084851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00 - 15/08
B29C 48/92
B29C 48/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機(10、110、210)から出て、長手方向に搬送される管状ストランド(16、116、216)を測定する方法であって、
・第1測定領域(35)で、少なくとも1つの第1放射線源からのテラヘルツ放射線を内側から前記管状ストランド(16、116、216)の内面(36)上に案内して、前記管状ストランド(16、116、216)によって反射された前記テラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第1放射線受信器によって受信し、前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータを、前記第1測定領域(35)で前記受信したテラヘルツ放射線から決定する、ステップと、
・前記ストランド(16、116、216)の前記搬送方向で前記第1測定領域(35)の下流に配置される第2測定領域(39)で、少なくとも1つの第2放射線源からのテラヘルツ放射線を、外側から前記管状ストランド(16、116、216)の外面(38)上に案内して、前記管状ストランド(16、116、216)によって反射された前記テラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第2放射線受信器によって受信し、前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータを、前記第2測定領域(39)で前記受信したテラヘルツ放射線から決定する、ステップと、
・前記第1測定領域(35)と前記第2測定領域(39)との間の前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける変化を決定する、ステップと、
・前記少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、前記押出機(10、110、210)のための少なくとも1つの調整命令を決定する、ステップと、を含み、
前記管状ストランド(16、116、216)の屈折率を、前記第2測定領域(39)で前記少なくとも1つの第2放射線受信器によって受信されるテラヘルツ放射線から確立し、
前記第2測定領域(39)で確立された前記屈折率を使用して、前記第1測定領域(35)で前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記押出機(10、110、210)を、前記少なくとも1つの決定された調整命令に基づいて制御する及び/又は調整することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記管状ストランド(16、116、216)を、前記押出機(10、110、210)後の較正装置(22、122、222)、特に較正スリーブ(24、124、224)にある前記第1測定領域(35)に配置することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2測定領域(39)を、前記管状ストランド(16、116、216)が通過する冷却セクション(25、125、225)の下流に配置することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長と前記少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長は、最大5倍、好適には最大3倍、より好適には最大1.5倍異なる、更に好適には異ならないことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記テラヘルツ放射線を、前記少なくとも1つの第1放射線源から、前記管状ストランド(16、116、216)の前記内面(36)上で前記管状ストランド(16、116、216)の内周に亘り分布する幾つかの測定箇所に案内すること、及び/又は前記テラヘルツ放射線を、前記少なくとも1つの第2放射線源から、前記管状ストランド(16、116、216)の前記外面(38)上で前記管状ストランド(16、116、216)の外周に亘り分布する幾つかの測定箇所に案内することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記管状ストランド(16、116、216)壁厚を、前記第1測定領域(35)における前記管状ストランド(16、116、216)の周囲に亘り分布する幾つかの測定箇所で、及び前記第2測定領域(39)における前記管状ストランド(16、116、216)の周囲に亘り分布する幾つかの測定箇所で、少なくとも1つの幾何学的パラメータとして、測定することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1制御及び/又は調整運転時に、前記押出機(10、110、210)の制御及び/又は調整を、前記第2測定領域(39)での測定に基づいて、前記第2測定領域(39)での測定値が、所定の基準測定値に対応するように実行すること、前記第2測定領域(39)で前記基準測定値に達すると、前記第1測定領域(35)割当てられた測定値を決定すること、ならびにその後の制御及び/又は調整運転時に、前記押出機(10、110、210)の制御及び/又調整を、前記第1測定領域(35)での測定に基づいて、前記第1測定領域(35)での前記測定値が、前記決定され、割当てられた測定値に対応するように、実行することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2放射線源と対向する、及び/又は前記少なくとも1つの第2放射線受信器と対向する前記管状ストランド(16、116、216)の側に、前記少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を、前記少なくとも1つの第2放射線受信器へと反射する少なくとも1つの放射線反射体を設けてあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記テラヘルツ放射線を、前記管状ストランド(16、116、216)長手方向軸に直交する前記少なくとも1つの第1放射線源から、前記管状ストランド(16、116、216)の前記内面(36)上に案内すること、及び/又は前記テラヘルツ放射線を、前記管状ストランド(16、116、216)の前記長手方向軸に直交する前記少なくとも1つの第2放射線源から、前記管状ストランド(16、116、216)の前記外面(38)上に案内することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
押出機(10、110、210)から出て、長手方向に搬送される管状ストランド(16、116、216)を測定する装置であって、
・第1測定領域(35)で、テラヘルツ放射線を内側から前記管状ストランド(16、116、216)の内面(36)上へと出射する少なくとも1つの第1放射線源、前記第2測定領域(39)で、前記管状ストランド(16、116、216)によって反射された前記テラヘルツ放射線を受信する少なくとも1つの第1放射線受信器、及び前記受信されたテラヘルツ放射線から前記第1測定領域(35)での前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する第1評価装と、
・前記ストランド(16、116、216)の前記搬送方向で前記第1測定領域(35)の下流に配置される第2測定領域(39)で、テラヘルツ放射線を、外側から前記管状ストランド(16、116、216)の外面(38)上へと出射する少なくとも1つの第2放射線源、前記第2測定領域(39)で前記管状ストランド(16、116、216)によって反射された前記テラヘルツ放射線を受信する少なくとも1つの第2放射線受信器、及び前記受信されたテラヘルツ放射線から前記第2測定領域(39)での前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する第2評価装と、
・前記第1測定領域(35)と前記第2測定領域(39)との間の前記管状ストランド(16、116、216)の少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける変化を決定するための、及び前記少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、前記押出機(10、110、210)のための少なくとも1つの調整命令を決定するための第3評価装と、を含み、
前記第1、第2及び/又は第3評価装、及び/又制御及び調整装置(45)を、前記管状ストランド(16、116、216)の屈折率を、前記第2測定領域(39)で前記少なくとも1つの第2放射線受信器によって受信されたテラヘルツ放射線から確立するよう構成し、
前記第1評価装を、前記第2測定領域(39)で確立された前記屈折率を使用して、前記第1測定領域(35)で前記少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定するよう構成することを特徴とする装置。
【請求項12】
制御及び/又は調整装置(45)を、前記少なくとも1つの決定された調整命令に基づいて、前記押出機(10、110、210)を制御する及び/又は調整するために設けることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記押出機(10、110、210)後の較正装置(22、122、222)、特に較正スリーブ(24、124、224)を、前記第1測定領域(35)に更に設けることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記管状ストランド(16、116、216)が通過する冷却セクション(25、125、225)を更に設け、前記第2測定領域(39)第1冷却セクション(25、125、225)の下流に配置することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長と前記少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長は、最大5倍、好適には最大3倍、より好適には最大1.5倍異なる、更に好適には異ならないことを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記制御及び/又は調整装置(45)を、前記押出機(10、110、210)の制御及び/又は調整を、第1制御及び/又は調整運転時に、前記第2測定領域(39)での測定に基づいて、前記第2測定領域(39)での測定値が、所定の基準測定値に対応するように、実行するよう構成すること、前記第2測定領域(39)で前記基準測定値に達すると、前記第1測定領域(35)割当てられた測定値を決定するよう更に構成すること、前記押出機(10、110、210)の制御及び/又調整を、前記第1測定領域(35)での測定に基づいて、その後の制御及び/又は調整運転時に、前記第1測定領域(35)での前記測定値が、前記決定され、割当てられた測定値に対応するように、実行するよう更に構成することを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2放射線源と対向する、及び/又は前記少なくとも1つの第2放射線受信器と対向する前記管状ストランド(16、116、216)の側に、前記少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を、前記少なくとも1つの第2放射線受信器へと反射する少なくとも1つの放射線反射体を設けてあることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第1放射線源及び/又は前記少なくとも1つの第1放射線受信器を、前記管状ストランド(16、116、216)の内部に配設することを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1放射線源、及び/又は前記少なくとも1つの第1放射線受信器を、前記管状ストランド(16、116、216)の外側に配設すること、ならびに前記少なくとも1つの第1放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの放射線導体を通して前記管状ストランド(16、116、216)の内部に案内し、前記管状ストランド(16、116、216)によって反射された前記テラヘルツ放射線を、少なくとも1つの放射線導体を通して、前記管状ストランド(16、116、216)の内部から前記少なくとも1つの第1放射線受信器に案内することを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記装置を、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成することを特徴とする請求項11から請求項19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記方法を、請求項11から請求項19のいずれか一項に記載の装置で実行することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から出て、長手方向に搬送される管状ストランドを測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機において、例えば粒状化した状態で供給されるプラスチックは、溶融され、流動可能なプラスチックが、管状ストランドとして環状間隙部を通り放出される。次に、管状ストランドは、較正スリーブを有する較正装置に入り、較正スリーブの内面に、管状ストランドを、例えば、真空を印加すること(真空タンク)によって押付ける。その後、管状ストランドは、1つ又は複数の冷却セクションを通過し、冷却セクションで、ストランドの外面に、例えば冷却水等の冷却液が噴霧される。
【0003】
これに基づき押出工程に矯正的に介入するために、直径、壁厚又は所定の形状からのズレ等、管状ストランドの特定の幾何学的パラメータを早期に決定することが望まれる。
【0004】
テラヘルツ放射線を用いてストランドの直径及び/又は壁厚を測定する方法及び装置が、国際公開第2016/139155号(特許文献1)から知られている。放射線送信器を用いて、テラヘルツ放射線を、測定されるストランドに指向させ、ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を、放射線受信器によって受信する。評価装置は、例えば、ランタイム測定に基づいて、ストランドの直径又は壁厚等の幾何学的パラメータを決定できる。
【0005】
管状押出システムを調整及び制御する方法が、独国特許出願公開第102016109087号(特許文献2)から知られており、該方法では、溶融管の直径、壁厚、形状のズレ、及びダレを、押出ダイとその後の較正装置間の数箇所で決定し、これらの測定値、又は測定値から算出した各データを使用して、押出システムを調整及び制御する。測定用に、数個の測定センサを、押出システムと較正装置との中間領域に、溶融管の外周上に分布させて配設している。
【0006】
また、前述の測定方法に加えて、超音波センサを使用して管状ストランドの幾何学的パラメータを測定することも知られている。
【0007】
独国特許出願公開第102016109087号(特許文献2)に記載された方法では、測定センサが、押出システムから出た後で、較正装置に入る前に、外側から管状ストランドを測定するため、不所望な幾何学的ズレを検出すると、押出システムの制御により迅速に介入することが、可能だと思われる。しかしながら、既知の方法の欠点は、較正装置に入る前では、管状ストランドは、較正装置における特定の最終形からまだ大幅にズレている場合がある点である。そのため、既知の方法を使用して決定した測定値は、それに対応する不正確さを伴う場合がある。既知の測定方法を使用して、管状ストランドが較正装置から出た後に、即ち、管状ストランドを外側から測定するために再び接近可能なときに、測定することで、実際、確実に、その時には、測定した幾何学的値は、ストランドの最終形に近くなる。しかしながら、そうした遅く測定した値に基づいて行う押出システムへのかかる調整介入の結果、その間にかなりのスクラップが発生する。既知の測定方法の別の問題は、ストランドの外面に関する焦点ずれ効果である。これが原因で、ストランドの外面へと案内された放射線が、ストランドから反射した後に、かなり低下した信号強度を伴うだけで、放射線センサに戻ることがある。特に壁厚が厚い又は強力に吸収する材料のストランドの場合では、これは、それに応じて大量の放射線の吸収が、大きな壁厚、又は各強力吸収材料と関連してくるため、大きな問題になる。その上、環状間隙部と較正スリーブ間の押出物は、通常、特にダレが頻繁に発生する始動段階では、センサと完全に直交する向きにはならない。それが原因で、特に垂直な放射線入射を必要とする測定信号が、損失したり、不十分になったりする可能性がある。ストランド製造の初期段階中でも、壁厚とその分布は、まだ変化し、それにより更なる測定の不明確さを齎す。その上、独国特許出願公開第102016109087号(特許文献2)で提案された、測定からストランドの後の形状を計算することは、温度や正確な測定データの知識に加えて、流動挙動に関する精密な知識が前提となる。流動挙動は、回収材料を添加又は混合することによって、容易に変わる可能性がある。
【0008】
独国実用新案第202019102002号(特許文献3)では、特に較正スリーブ内で、内側から管状ストランドを測定することが、提案されている。較正スリーブにおいて、管状ストランドは、比較的丸く、測定装置に対して、較正スリーブを通して一貫して心合せしている。にもかかわらず、較正スリーブの内側から測定することで、押出機を制御するための、又はそれぞれ調整するための測定結果を極めて迅速に入手可能にして、それによりスクラップを最小限にできるようにしている。また、ストランド材料の屈折率を、そうした状況下で決定できることも教示されている。
【0009】
しかしながら、用途によっては屈折率を確立するのが難しい場合がある。まず、周囲に亘る測定装置と例えば較正スリーブとの間の距離を、ストランドが無い空運転状態で、下流で正確に決定しなければならない。これは、測定装置自体の助けを借りることで起きる。この相対的位置は、測定誤差を避けるために、後のストランド製造中の測定中、変化してはならない。しかしながら、実際には、それが結果的に、較正スリーブを著しく加熱し、そのために、例えば、測定装置が測定中に回転する中心を変位させる可能性がある。また、調節可能な較正スリーブも、押出機を再始動する必要なく、異なる直径のストランドを製造するのに存在する。また、較正スリーブの内径の調節も、製造中に部分的に行われる。寸法におけるこうした変化は、当然、屈折率を確立することを難しくする。
【0010】
別の問題は、所謂ダレ、即ち、重力によって下向きに依然として流動可能な押出物の流れである。ダレの結果、押出機から放出された壁厚が、周囲に亘り均一である場合でも、完成したストランドの壁厚の分布は、均一でなくなる。そのために、完成したストランドで出来るだけ均一である壁厚分布を達成するために、ダレを予測して、押出機から放出された壁厚の分布を均一にしないように故意に設計するという試みが行われている。しかしながら、ダレを予測するのが難しいため、記載された手順では、誤差が生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016/139155号
【文献】独国特許出願公開第第102016109087号
【文献】独国実用新案第202019102002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
説明した先行技術に基づいて、本発明の目的は、確実であり、かつ常にスクラップを最小限にするストランド製造を可能にする冒頭で述べたタイプの方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、独立請求項1及び14によって目的を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、明細書、及び図面に開示されている。
【0014】
冒頭で述べたタイプの方法を用いて、本発明は、
・第1測定領域で、少なくとも1つの第1放射線源からのテラヘルツ放射線を内側から管状ストランドの内面上に案内して、管状ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第1放射線受信器によって受信し、管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータを、第1測定領域で受信したテラヘルツ放射線から決定する、ステップと、
・ストランドの搬送方向で第1測定領域の下流に配置される第2測定領域で、少なくとも1つの第2放射線源からのテラヘルツ放射線を、外側から管状ストランドの外面上に案内して、管状ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第2放射線受信器によって受信し、管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータを、第2測定領域で受信したテラヘルツ放射線から決定する、ステップと、
・第1測定領域と第2測定領域との間の管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける変化を決定する、ステップと、
・少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、押出機のための少なくとも1つの調整命令を決定する、ステップと
によって、目的を達成する。
【0015】
本発明はまた、上記に記載のタイプの装置であって、
・第1測定領域で、テラヘルツ放射線を内側から管状ストランドの内面上へと出射する少なくとも1つの第1放射線源、第2測定領域で、管状ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を受信する少なくとも1つの第1放射線受信器、及び受信されたテラヘルツ放射線から第1測定領域での管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する第1評価装置と、
・ストランドの搬送方向で第1測定領域の下流に配置される第2測定領域で、テラヘルツ放射線を、外側から管状ストランドの外面上へと出射する少なくとも1つの第2放射線源、第2測定領域で管状ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を受信する少なくとも1つの第2放射線受信器、及び受信されたテラヘルツ放射線から第2測定領域での管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定する第2評価装置と、
・第1測定領域と第2測定領域との間の管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける変化を決定するため、及び少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、押出機のための少なくとも1つの調整命令を決定するための第3評価装置と
を含む、装置によって目的を達成する。
【0016】
本発明により測定される管状ストランドは、押出機から出て来る特に中空筒状の、特にプラスチックの、ストランドである。管状ストランドは1メートル超の外径を有することがある。これは、それに対応して、大きな壁厚を伴う。本発明は、基本的に、電磁放射線を、放射線源から管状ストランドに指向させ、該ストランドから反射した放射線を、放射線受信器によって受信するという従来技術で既に記載された測定原理に基づいている。テラヘルツ放射線を使用する。この周波数範囲内の放射線の利点は、例えば、可視周波数範囲内のレーザ光線とは対照的に、押出工程中に発生する影響等の外的影響に対して殆ど反応しない点である。例えば、ランタイム測定に基づいて、直径、壁厚及び/又は所定の、例えば、円筒形からのズレ等の幾何学的パラメータを、そのため、それ自体が公知の方法で決定できる。壁厚を測定するために、例えば、電磁放射線を、押出されたストランドが少なくとも部分的に透過的な波長範囲内で使用できる。
【0017】
特に実用的には、少なくとも1つの第1放射線源及び少なくとも1つの第1放射線受信器を、少なくとも1つの第1トランシーバによって形成できる。それに対応して、少なくとも1つの第2放射線源及び少なくとも1つの第2放射線受信器を、少なくとも1つの第2トランシーバによって形成できる。
【0018】
本発明によると、管状ストランドを、互いに離間した2つの測定領域で測定する。第1測定領域を、押出機の出口近くに配置する。第2測定領域を、ストランドの搬送方向で第1測定領域の下流で、押出されたストランドの成形が少なくとも大部分終了される領域に、配置する。第1測定領域では、測定を、内側から実行し、第2測定領域では、外側から実行する。両測定領域では、管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータを、それぞれの測定領域におけるストランドへと案内されるテラヘルツ放射線を用いて決定する。
【0019】
内側から第1測定領域で行う測定により、独国実用新案第202019102002号に記載されているように、管状ストランドの外面を、例えば、較正装置によって被覆する領域で、従って、一方で、押出機のすぐ近くで、他方で、ストランドの既に比較的確実な成形状態で、測定可能になる。また、内側から測定することで、ストランド内壁の湾曲には、出射された放射線に対する集束効果がある点や、必要な設置スペースを減少させる点を含む、幾つかの更なる利点も齎す。測定を、第2測定領域において外側から行うことは、測定装置を管状ストランドに導入するために、この領域に測定器を設ける必要がないことを意味する。それと同時に、第2測定領域を、第1測定領域の下流に配設し、それにより管状ストランドの外面に接近可能にし、従って測定に利用可能にする。その配設により、第2測定領域は、ストランドが既に成形を終了していることも保証する。例えば、ランタイム測定に基づいて、例えば、内径、外径、壁厚、及び、該当する場合、所定の形状からのズレ等の幾何学的パラメータを、それ自体が公知の方法で、出射され、両測定領域において、管状ストランドの境界面によって反射されたテラヘルツ放射線に基づいて決定できる。
【0020】
この場合、0.001テラヘルツから6テラヘルツの周波数域内、好適には0.02~3テラヘルツの周波数域内の電磁放射線を、テラヘルツ放射線と呼ぶ。同じ幾何学的パラメータを、好適には、第1測定領域と第2測定領域で決定する。例えば、直径(内径及び/又は外径)、壁厚及び/又は所定の形状、例えば、円筒形からの形状におけるズレを、幾何学的パラメータとして決定できる。本発明による装置では、第1、第2、第3評価装置を設ける。これらを、別々の評価装置とすることができる、又は共通の評価装置で形成することもできる。また、これらを、制御及び/又は調整装置と一体化することもできる。また、本発明による装置は、押出機、及び/又は較正装置、特に較正スリーブ、及び/又は少なくとも1つの冷却セクションを含むこともできる。
【0021】
本発明の場合では、測定信号は、第1測定領域と第2測定領域で互いに関連付けられる。管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける変化を、第1測定領域と第2測定領域との間で決定する。好適には、これを、測定された幾何学的パラメータ自体とする。しかしながら、測定された幾何学的パラメータから導出された幾何学的パラメータとすることもできる。少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、押出機のための少なくとも1つの調整命令を、更に決定する。調整命令は、例えば、押出機の出力又は押出間隙部の形状に関係することができる。つまり、少なくとも1つの調整命令を、第1測定領域で決定された管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータに基づいて、及び第2測定領域で決定された管状ストランドの少なくとも1つの幾何学的パラメータに基づいて、決定する。
【0022】
既述のように、第2測定領域を、特に管状ストランドの成形が略終了しているように、第1測定領域の下流に配置する。そのため、第2測定領域で決定された値は、確実に管状ストランドの最終形状を略再現している。例えば、所謂ダレを、特に管状ストランドの周囲に亘り分布させた幾つかの測定箇所で、壁厚を測定することによって、安全に識別できる。ダレは、重力によって下向きに依然として流動可能な押出物の流れを指すことが知られている。このため、常に、例えば、周囲に亘り完全に均一な押出機から放出された壁厚に関して、完成した管状ストランドは、上領域より下領域で壁厚が大きいという結果になる。これは、押出機の放出する壁厚を、下領域より上領域で若干厚くすることで、抑えられる。しかしながら、上述したように、実際にはダレを確実に予測するのは難しい。両測定領域からの測定信号について、本発明により、相関させるため、押出機の直後で実質的に獲得する第1測定領域での測定データを、更に下流に配置する第2測定領域での測定データに割当て可能である。例えば、周囲に亘り均一な管状ストランドの壁厚が、第2測定領域で確認されるならば、これは、第1測定領域におけるその時の非均一な壁厚分布に対応する測定値に関係している可能性がある。その後、有利であると識別された第1測定領域の測定値に基づく押出機の迅速な調整を実行できる。測定結果を相関させることによって、このように、対応する調整命令を、第2測定領域における測定結果、特に第1測定領域と第2測定領域との間の測定結果における変化を考慮に入れて、更にまた、第1測定領域における測定結果に基づいて、決定でき、そのためスクラップを最小限にしながら、極めて迅速に決定できる。
【0023】
また、例えば、次の製造工程の製造パラメータを他の点に関して変更しない場合、現製造工程後の製造工程に対して、該工程で調節命令をその時に決定することとして、少なくとも1つの幾何学的パラメータにおける決定された変化を利用することも可能である。
【0024】
一実施形態によると、押出機を、少なくとも1つの決定された調節命令に基づいて制御及び/又は調整できる。このために、本発明による装置は、制御及び/又は調整装置を有する。特に、自動制御、又はそれぞれ調整する、そのため誤差を最小限にしつつ高度に自動化した運転が可能である。
【0025】
別の実施形態によると、管状ストランドを、押出機後の較正装置、特に較正スリーブにある第1測定領域に配置できる。かかる較正装置は、中空筒状の較正スリーブを有することが多く、該較正スリーブに対して、押出されたストランドを、まだ軟質状態で、例えば、真空を印加すること(真空タンク)によって、押付ける。一方で、これにより、依然として流動可能なストランドが崩壊するのを防ぐ。他方で、ストランドの所望する外径とその外形を、較正スリーブによって明確に決定づけられる。較正装置、特に較正スリーブは、直接押出機の押出機ヘッドに隣接できる。そのため、特に、押出機ヘッドと較正装置との間に実質的に空間を無くすことが可能である。測定が、較正装置で、特に該装置の中心から開始して、押出されたストランドが較正装置を通過するときに、発生するため、幾何形状が、押出し直後に、従って、一方で、制御するのに、又はそれぞれを調整するのに好ましい早い時点で、実質的に確立される。他方で、較正装置内の管状ストランドは、既に、該ストランドの最終的な幾何形状に近い外側の幾何形状を有する。
【0026】
更なる実施形態によると、第2測定領域を、管状ストランドが通過する冷却セクションの下流に配置できる。かかる冷却セクションでは、管状ストランドの伝導冷却を、最終形状を得るために実行する。冷却セクションでは、水等の冷却液を、例えば、外側からストランドに適用できる。冷却セクションを通過した後には、成形、又はそれぞれのダレは、大部分終了している。そのため、第2測定領域で供給された測定値は、管状ストランドの幾何形状に関する特に信頼できる論拠を提供する。かかる管状ストランドのための製造システムは、幾つかの冷却セクション、例えば3つの冷却セクションを含むことができる。第2測定領域を、例えば、第1冷却セクションと第2冷却セクションの間に配置できる。
【0027】
測定に対する波長に依存する影響を抑制、又はそれぞれ排除するために、更なる実施形態によると、少なくとも1つの第1放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長と少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線の波長は、最大5倍、好適には最大3倍、より好適には最大1.5倍異なる、更に好適には異ならないものとすることができる。
【0028】
更なる実施形態によると、テラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第1放射線源から、管状ストランドの内面上で管状ストランドの内周に亘り分布する幾つかの測定箇所に案内する、及び/又はテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの第2放射線源から、管状ストランドの外面上で管状ストランドの外周に亘り分布する幾つかの測定箇所に案内するものとすることができる。
【0029】
第1及び/又は第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を、360度の測定領域に亘り、管状ストランドの内面上に、又はそれぞれ外面上に案内することが、特に可能である。そのため、ストランドの周囲に亘り、例えば、壁厚分布を完全に捕捉することが、可能である。管状ストランドの長手方向軸周りに回転し、管状ストランドの内部に配設される少なくとも1つの第1放射線送信器を有する少なくとも1つの第1放射線源からのテラヘルツ放射線を、管状ストランドの内面上に案内すること、及び/又は管状ストランドの長手方向軸周りに回転し、管状ストランドの外側に配設される少なくとも1つの第2放射線送信器を有する少なくとも1つの第2放射線源からのテラヘルツ放射線を、管状ストランドの外面上に案内することも可能である。少なくとも1つの第1放射線送信器を、少なくとも1つの第1放射線源とする、及び/又は少なくとも1つの第2放射線送信器を、少なくとも1つの第2放射線源とすることも更に可能である。しかしながら、放射線送信器を放射線源とせず、むしろ、いずれの場合にも、例えば、テラヘルツ放射線を反射する鏡とすることも考えられる。例えば、少なくとも1つの第1及び/又は第2放射線送信器を、管状ストランドの長手方向軸周りに回転し、少なくとも1つの第1、又はそれぞれ第2放射線源によって照射される少なくとも1つの鏡とすることが、可能である。勿論、幾つかの第1放射線源、及び該当する場合、幾つかの第1放射線受信器を設け、それらを用いて、テラヘルツ放射線を、管状ストランドの内周に亘り、管状ストランドの内面上に分布する幾つかの測定箇所に案内すること、及び/又は幾つかの第2放射線源、及び該当する場合、幾つかの第2放射線受信器も設け、それらを用いて、テラヘルツ放射線を、管状ストランドの外周に亘り、管状ストランドの外面上に分布する幾つかの測定箇所に案内することも考えられる。
【0030】
更なる実施形態によると、管状ストランドの壁厚を、第1測定領域における管状ストランドの周囲に亘り分布する幾つかの測定箇所で、及び第2測定領域における管状ストランドの周囲に亘り分布する幾つかの測定箇所で、少なくとも1つの幾何学的パラメータとして、測定することができる。第1測定領域の測定箇所と第2測定領域の測定箇所は、特に管状ストランドの同じ壁領域に、同じ周囲領域に特に対応できる。また、時間的に測定を相関させることも、同じ壁領域を長手方向でも測定するような方法で可能である。このようにして、測定値の最適な比較可能性を提供する。幾つかの周囲箇所で壁厚を捕捉することで、壁厚分布について、従ってダレの可能性についての論拠を提供できる。このようにして、例えば、第2測定領域での、つまり、成形が大部分終了した後の壁厚が、ストランドの周囲に亘り均一か否かを検査できる。
【0031】
更なる実施形態によると、第1制御及び/又は調整運転時に、第2測定領域での測定に基づく押出機の制御及び/又は調整を、第2測定領域での測定値が、所定の基準測定値に対応するように実行すること、第2測定領域で基準測定値に達すると、第1測定領域で割当てられた測定値を決定すること、ならびにその後の制御及び/又は調整運転時に、押出機の制御及び/又調整を、第1測定領域での測定に基づいて、第1測定領域での測定値が、決定され、割当てられた測定値に対応するように実行することを提供することができる。
【0032】
この実施形態では、第2測定領域での測定に基づく押出機の制御及び/又は調整を、まず第1制御及び/又は調整運転で実行し、それにより第2測定領域の管状ストランドが、成形を少なくとも大部分終了した後で、所定の形状、例えば、壁厚分布を有するようにする。これを達成すると直ぐに、第1測定領域の例えば壁厚分布の関連する測定値を、決定する。特に、ダレが発生したとき、及び第2測定領域での壁厚分布が所望する均一性を有するときに、上述したように、第1測定領域での壁厚分布は、それに応じて不均一になる。次に、この不均一な壁厚分布を、その時の(単に)第1測定領域における測定に基づいて、即ち、第2制御及び/又は調整運転中に、制御できる、又はそれぞれ調整できる。この手順の利点は、第1制御及び/又は調整運転が終了した後に、制御、又はそれぞれ調整を、第1測定領域、従って、特にストランドが押出機から出た略直後の測定値に基づいて、実行する点である。このようにして、特に迅速な制御、又はそれぞれ調整を実行し、スクラップを最小限にできる。
【0033】
別の特に実用的な実施形態によると、管状ストランドの屈折率を、第2測定領域で少なくとも1つの第2放射線受信器によって受信されたテラヘルツ放射線から確立できる。屈折率を、例えば、国際公開第2016/139155号に記載されているように、確立できる。特に、更なる実施形態に従い、少なくとも1つの第2放射線源と対向する、及び/又は少なくとも1つの第2放射線受信器と対向する管状ストランドの側に、少なくとも1つの第2放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を少なくとも1つの第2放射線受信器に反射する少なくとも1つの放射線反射体を設けたならば、屈折率の確立に有利である。このように、放射線送信器、又はそれぞれ放射線受信器、好適にはトランシーバと、反射体との間のテラヘルツ放射線のランタイム測定に基づいて、特に、ストランドが測定領域にない状態でのテラヘルツ放射線のランタイムと、ストランドが測定領域にある状態でのテラヘルツ放射線のランタイムとの比較によって、既知の壁厚を所与として、国際公開第2016/139155号で説明されたように、屈折率を確立できる。これを達成するために、原則として、ストランドの壁を照射するだけが必要である。固定した反射体と放射線送信器の位置だけは、知らねばならない。また、互いからの距離が既知の2つの固定した対向する反射体を設けてもよい。また、周囲に亘り様々な箇所で材料の屈折率を確立することも可能である。対応する較正で、ストランド材料の平均温度を、測定箇所でそこから推論できる。例えば、PIRセンサにより、ストランドの表面温度を測定するが、ストランド壁の温度を、この方法で決定してもよい。勿論、屈折率は、該当する場合、第1領域での測定に基づいて、更に確立できる。このために、例えば、金属較正スリーブは、特に簡単な方法で、反射体としての役割を果たすことができる。
【0034】
別の特に有利な実施形態によると、第2測定領域で確立した屈折率を、第1測定領域で少なくとも1つの幾何学的パラメータを決定するのに使用できる。上述したように、管状ストランドの成形が大部分終了したときに第2測定領域で屈折率を確立する方が、ストランド材料が依然として比較的流動可能である第1測定領域で確立するより、確実で、安全である。前述の実施形態では、特に確実に確立されるこの屈折率を、その後、第1測定領域で幾何学的パラメータを決定するのに、例えば、幾何学的壁厚を決定するのに、利用する。屈折率は、第1測定領域と第2測定領域との間で変化しないことを前提とする。屈折率は、温度に若干依存するだけであることが知られている。その結果、第1測定領域と第2測定領域との間でストランドに関する既知の温度変化が発生した場合には、第2測定領域で確立された屈折率を利用するときに、第1測定領域のこの温度依存性を考慮に入れることが更に可能である。ストランドの温度を、例えば、このために設けた温度センサによって測定できる。しかしながら、原則として、変化の決定、及び調節命令の決定を、例えば、第1測定領域及び第2測定領域での光学的壁厚だけを、従って壁厚の相対的変化を考慮に入れるため、屈折率を考慮に入れずに実行してもよい。
【0035】
原理で既述したように、更なる実施形態によると、テラヘルツ放射線を、管状ストランドの長手方向軸に直交する少なくとも1つの第1放射線源から、管状ストランドの内面上に案内すること、及び/又はテラヘルツ放射線を、管状ストランドの長手方向軸に直交する少なくとも1つの第2放射線源から、管状ストランドの外面上に案内することを提供する場合、これは、特に確実な測定および簡単な評価をもたらす。
【0036】
少なくとも1つの第1放射線源及び/又は少なくとも1つの第1放射線受信器を、管状ストランドの内部に配設することができる。次に、少なくとも1つの第1放射線源及び/又は少なくとも1つの第1放射線受信器への電気エネルギー、データ、及び/又は冷却剤の供給は、例えば押出機の押出機ヘッドから少なくとも1つの第1放射線源及び/又は少なくとも1つの第1放射線受信器に導かれる少なくとも1つの供給ラインによって行われることができる。ただし、少なくとも1つの第1放射線源、及び/又は少なくとも1つの第1放射線受信器を、管状ストランドの外側に配設すること、ならびに少なくとも1つの第1放射線源によって出射されたテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの放射線導体を通して管状ストランドの内部に案内し、管状ストランドによって反射されたテラヘルツ放射線を、少なくとも1つの放射線導体を通して、管状ストランドの内部から少なくとも1つの第1放射線受信器に案内することも可能である。次に、少なくとも1つの放射線導体を、例えば押出機の押出機ヘッドから管状ストランドに導くことが可能である。
【0037】
本発明による方法は、本発明による装置で実行可能である。したがって、本発明による装置は、本発明による方法を実行するように構成され得る。
【0038】
本発明の例示的な実施形態は、図面によって以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】断面図において、該装置にかかる装置を示す。
図2】第1の例示的な実施形態による図1にて示した装置の詳細図を示す。
図3】第2の例示的な実施形態による図1にて示した装置の詳細図を示す。
図4図3においてA-A線に沿う横断面図を示す。
図5】第3の例示的な実施形態による図1にて示した装置の詳細図を示す。
【0040】
特に明記しない限り、同一の参照番号は、図中の同一の対象を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、管状ストランド16を押出すための押出機10を示している。それ自体が公知の方法で、押出機10には、例えば図2で示した、加工するプラスチック材料を供給するための供給部11を有する。可塑化したプラスチック材料を、押出機スクリュ12によって、環状間隙部14から管状ストランド16に押出す。回転駆動される中央シャフト18は、押出機スクリュ12内を走る。図示した実施例では、較正装置22は、直接押出機ヘッド20に隣接し、押出されたストランド16を真空によって押付ける金属較正スリーブ24を有する。また、参照番号25は、第1冷却管27を有する第1冷却セクション25を示しており、第1冷却管27中で、管状ストランド16の伝導冷却を、第1冷却セクション25から出た後で、管状ストランド16がその成形を略終了するように、実行する。第1冷却セクション25の後には、第2冷却管31を有する第2冷却セクション29があり、第2冷却セクション29により、管状ストランド16の更なる冷却を図る。較正スリーブ24内で、且つ管状ストランド16の内部に、図示した実施例では、第1測定装置33を配置し、第1測定装置33は、図1において点線で画定した第1測定領域35を形成する。例えば、ランタイム測定に基づいて、第1測定領域35内の管状ストランド16の幾何学的パラメータ、例えば、外径、内径、及び/又は壁厚、又は所定の形状からの形状に関するそれぞれのズレ等を、第1測定装置33によって決定できる。第1測定装置33の様々な例示的実施形態について、図2図5を参照して、以下で説明する。また、図1において点線で画定した第2測定領域39を形成する第2測定装置37を、第1冷却セクション25と第2冷却セクション29との間に配置する。第2測定装置37は、図示した実施例では、管状ストランド16の外面上に案内されたテラヘルツ放射線を送受信するために管状ストランド16の周囲に亘り分布させて配設した数個のトランシーバ41、43を含む。例えば、ランタイム測定に基づいて、第2測定領域39内の管状ストランド16の幾何学的パラメータ、例えば、外径、内径、及び/又は壁厚、又は所定の形状からの形状に関するそれぞれのズレ等を、第2測定装置37によって決定できる。トランシーバ41、43は、管状ストランド16の周囲に亘り分布する異なる場所の幾何学的パラメータを測定できる。例えば、トランシーバ41、43は、ストランド16周りに回転でき、その結果、最大360°の周囲領域で幾何学的パラメータを決定できる。第2測定領域39での測定に基づいて、ストランド材料の屈折率も、確立できる。このために、テラヘルツ放射線に対する適当な反射体を、例えば、第2測定装置37の外側の領域に設けることができる。
【0042】
その上、本発明による装置は、一体化した評価及び調整装置45を含み、該装置45は、一方で、測定装置33、37の測定値から対応する幾何学的パラメータと、該当する場合、屈折率を決定し、他方で、第1測定領域35と第2測定領域39間での測定された幾何学的パラメータにおける変化を決定する。その上、一体化した評価及び調整装置45は、幾何学的パラメータにおける決定された変化に基づいて、押出機10に対する少なくとも1つの調節命令を決定し、それに基づいて押出機10を調整する。つまり、評価及び調整装置45は、本発明による第1、第2及び第3の評価装置の他、制御及び/又は調整装置を含む。例えば、押出機10の調整を、第1調整運転時に第2測定領域39における測定に基づいて、第2測定領域39での測定値が、所定の基準測定値に対応するように、実行できる。第2測定領域39で基準測定値に達すると、割当てられた測定値を、第1測定領域35で決定する。その後の調整運転で、押出機10の調整を、第1測定領域35における測定に基づいて、第1測定領域35での測定値が、決定され、割当てられた測定値に(更に)対応するように、実行する。また、第2測定領域39で第2測定装置37によって決定された屈折率を使用して、第1測定領域35で第1測定装置33によって幾何学的パラメータを確立することもできる。前述した調整により、依然として流動可能なストランド材料のダレを、例えば、管状ストランド16が、特に第2測定領域39の領域で、管状ストランド16の成形を終了した後に出来るだけ均一となる所定の壁厚分布となるように、補償できる。
【0043】
第1測定領域35における内側からの測定に関する異なる例示的実施形態について、以下で説明する。
【0044】
図2で示した実施例では、鏡26を、押出されたストランド16の内部で、押出機ヘッド20の略直後で、従って較正装置22内に、配設する。鏡26を、シャフト18に接続し、該シャフト18を、次にモータ28によって回転駆動する。その結果、鏡26は、管状ストランド16の長手方向軸周りにも回転する。また、中空導体30も、シャフト18内を走り、図示した実施例では、放射線源と放射線受信器を含むトランシーバ32によって出射されたテラヘルツ放射線を鏡26へと案内し、鏡26は、この放射線を、図2における参照番号34で示すように、ストランド16の内面上へと90度偏向させる。その一方で、テラヘルツ放射線は、押出されたストランド16の内面36によって反射されて、鏡26に戻り、そこから中空導体30を介して案内されてトランシーバ32に戻る。更なる放射成分は、押出されたストランド16に入り、ストランド16の外側38と較正スリーブ24の内面40との間の境界面によって反射され、鏡26と中空導体30によって案内されてトランシーバ32に戻る。
【0045】
トランシーバ32によって受信された測定値は、ライン42を通して評価及び調整装置45に送信される。評価及び調整装置45は、押出されたストランド16の内径及び/又は外径、及び/又は壁厚、及び/又は形状に関するズレを、例えば、ランタイム測定に基づいて、測定値から決定する。また、ストランド材料の屈折率も、境界面で反射して金属較正スリーブ24に戻る放射線を使用して、上述した方法で確立できる。鏡26の回転を考えると、説明した測定を、管状ストランド16の周囲に亘り、例えば、また同様に360度の領域に亘り、複数の測定領域に対して、分布できる。決定された測定値に基づいて、評価及び調整装置45は、押出機を調整できる。
【0046】
図2による例示的実施形態に大部分が対応する別の例示的実施形態を、図3に示している。図2の例示的実施形態とは対照的に、図3では、環状間隙部114の長手方向軸に直交して走る2本の押出機スクリュ112を有する押出機110を示している。押出機スクリュ112は、モータ128によってそれぞれ回転駆動される。供給材料を、次々に環状間隙部114を通して放出して、管状ストランド116を形成する。押出機110の直後で、較正装置122は、その時、金属較正スリーブ124を備える。更にまた、第1冷却セクション125の第1冷却管127が、示されている。図3の押出された管状ストランド116は、図2に示した管状ストランド16より直径を大きくできる。それに応じて、図3の例示的実施形態では、管状ストランド116の内部に、より大きな空間が存在する。そのため、トランシーバ132は、この例示的実施形態では、ストランドの内部に配設される。図3における矢印146で示したように別のモータ128を用いて、トランシーバ132を、押出機ヘッド120を通り導かれるシャフト118によって回転駆動する。例えば、トランシーバ132は、スリップリング接点によって、詳細には図示していない外部給電装置と接続できる。これらのスリップリング接点を通して、トランシーバ132の測定値も、該当する場合、点線142で示すように、評価装置45に送信できる。
【0047】
回転するトランシーバ132は、原則として、図2に関して記載したのと同じ方法で、測定値を記録し、それにより評価及び調整装置45が、これに基づいて、特に管状ストランド116の内径及び/又は外径、壁厚、及び形状におけるズレを確立できるようにする。次に、押出機110をこれに基づいて調整できる。また、原則として、管状ストランド116の内部に同様に回転駆動装置を配設することも考えられるだろう。図4では、トランシーバ132によって出射され、参照番号134で反射された放射線を示している。また、トランシーバの回転中心148と円形路150も、図4に示されている。トランシーバ132を有する測定ヘッドのハウジングを、参照番号152で示している。
【0048】
図5は、今度も上述した例示的実施形態に大部分が対応する別の例示的実施形態を示している。図5に示した押出機210は、次々に可塑化されたプラスチック材料を、押出機スクリュ(詳細には図示せず)によって、環状間隙部214を通して管状ストランド216に放出する。次に、金属較正スリーブ224を有する較正装置222は、実質的に直接押出機ヘッド220に隣接しており、管状ストランド216を、例えば、真空で較正スリーブ224に押付ける。参照番号227は、冷却セクション225の冷却管を示す。図示した実施例では、ストランドの内部に、鏡226を、次に較正装置222内に配置し、該鏡226は、押出機ヘッド220に配設されたトランシーバ232によって出射されたテラヘルツ放射線を、234で示すように、ストランド216の内面上へと90度偏向させる。図5において参照番号228で示したモータによって、トランシーバ232を、矢印246で示すように、管状ストランド216の長手方向軸周りに鏡226と共に回転させる。供給ライン248は、トランシーバに電気を供給すると共に、冷却液等の冷却剤を供給する役割を果たす。
【0049】
トランシーバ232によって記録された測定値を、供給ライン248を介して、ライン242を介して、評価及び調整装置45に供給できる。測定値の記録、評価及び調整装置45による評価、及びそれに基づく押出機210の調整は、図5に示した例示的実施形態では、前述した例示的実施形態に対応する。図5による例示的実施形態では、鏡226とトランシーバ232を、押出機ヘッド220におけるプラグインとして測定に使用できるハウジング250内に配置する。ハウジング250を取外すことによって、測定装置を、所望により取外すことができる。
【符号の説明】
【0050】
10、110、210 押出機
11 供給部
12、112 押出機スクリュ
14、114、214 環状間隙部
16、116、216 管状ストランド
18、118 シャフト
20、120、220 押出機ヘッド
22、122、222 較正装置
24、124、224 較正スリーブ
25、125、225 第1冷却セクション
26、226 鏡
27、127、227 第1冷却管
28、128、228 モータ
29 第2冷却セクション
30 中空導体
31 第2冷却管
32、132、232 トランシーバ
33 第1測定装置
34、134、234 放射線
35 第1測定領域
36 ストランドの内面
37 第2測定装置
38 ストランドの外面
39 第2測定領域
40 較正スリーブの内面
41、43 トランシーバ
42、142、242 ライン
45 評価及び調整装置
146、246 矢印
148 回転中心
150 トランシーバの円形路
152 測定ヘッドのハウジング
248 供給ライン
250 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5