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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】位置決めユニット及び接触方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/26 20060101AFI20240326BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20240326BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
B60L5/26 A
B60L53/16
H02P29/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022038239
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2018547411の分割
【原出願日】2017-02-24
(65)【公開番号】P2022088445
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】102016205012.5
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514217808
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パハラー アレクサンダー
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/173036(WO,A1)
【文献】特開2001-097204(JP,A)
【文献】特開平09-130912(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125322(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202014007218(DE,U1)
【文献】特開平03-164002(JP,A)
【文献】特開2007-274792(JP,A)
【文献】特表2015-513888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止した充電ステーションと車両、特に電気バス等、との間の電気的導電接続の形成のための位置決めユニット(10,44)であって、
前記位置決めユニットの充電接触子(47,48)は、前記位置決めユニットによって、充電接触面(11)に対して移動可能、かつ、前記充電接触面に接触可能であり、
前記位置決めユニットは、関節アーム装置(12,45)と、前記関節アーム装置を駆動するための駆動装置とを有し、
前記充電接触子は、前記関節アーム装置によって、電力伝送用の接触位置(37,55)と電力停止用の格納位置(36,56)との間に配置可能であり、
前記駆動装置は、前記関節アーム装置に作用する調整力を形成する調整駆動部(13,49)と、前記調整駆動部と機械的に協働するばね装置(29,50)とを有し、
前記充電接触面に作用する接触力は、前記調整駆動部によって形成可能であり、
前記調整駆動部は、制御装置と、電気モータ(43,58)とを有し、前記電気モータは前記制御装置によって駆動可能であり、
前記調整駆動部は、前記電気モータのトルクが前記制御装置によって検出可能であるように設計され、前記接触力は、前記制御装置によって前記電気モータのトルクに応じて制御可能であり、
前記充電接触子が前記接触位置において前記充電接触面に接触しているときであって、道路に対する前記車両の相対距離の変化によって前記格納位置からの前記接触位置の相対距離の変化が生じている間、前記接触力は一定である
ことを特徴とする位置決めユニット。
【請求項2】
前記電気モータ(43,58)は、ブラシレス電気モータである
ことを特徴とする請求項1の位置決めユニット。
【請求項3】
前記調整駆動部(13,49)は、直線駆動部(28,57)、好ましくはスピンドル駆動部、特に好ましくはセルフロッキングしないスピンドル駆動部である
ことを特徴とする請求項1又は2の位置決めユニット。
【請求項4】
前記調整駆動部(13,49)及び/又は前記関節アーム装置(12,45)は、変位センサ及び/又は位置センサを有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項5】
前記ばね装置(29,50)は、前記関節アーム装置に作用するばね力を生成する少なくとも1つの引張ばね(31,53)又は圧縮ばねを有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項6】
前記ばね装置(29,50)のばね(31,53)は、前記ばね装置の伝動部(35)のレバー(34)によって前記関節アーム装置(12,45)と機械的に連結され、前記関節アーム装置の位置に応じて前記レバーの実効長が変更可能に設計されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項7】
前記位置決めユニット(44)は、車両上方で前記位置決めユニットを柱又はアンダーパスに固定する保持装置(26)を含み、
前記ばね装置(29)は、前記関節アーム装置(12)に作用する復元力を形成する少なくとも1つの戻しばね(30)を有し、
前記復元力は、前記戻しばねに反対の方向に作用する前記関節アーム装置の重力より大きい
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項8】
前記位置決めユニット(44)は、前記位置決めユニットを車両の屋根の上に固定する保持装置(51)を含み、
前記ばね装置(50)は、前記関節アーム装置(45)に作用する引上げ力を形成する少なくとも1つの引上げばね(54)を含み、
前記引上げ力は、前記引上げばねに反対の方向に作用する前記関節アーム装置の重力より小さい
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項9】
前記関節アーム装置(12,45)は、シングルアームシステム(14,52)又ははさみ機構として、好ましくは平行四辺形リンケージを有しパンタグラフとして、設計される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項の位置決めユニット。
【請求項10】
静止した充電ステーションと車両、特に電気バス等、との間の電気的導電接続を形成する方法であって、
前記電気的導電接続の形成のための位置決めユニットの充電接触子(47,48)は、前記位置決めユニット(10,44)によって、充電接触面(11)に対して移動可能、かつ、前記充電接触面に接触可能であり、
前記位置決めユニットの関節アーム装置(12,45)は、前記位置決めユニットの駆動装置によって駆動され、
前記充電接触子は、前記関節アーム装置によって、電力伝送用の接触位置(37,55)と電力停止用の格納位置(36,56)との間に配置可能であり、
前記関節アーム装置に作用する調整力は、前記駆動装置の調整駆動部(13,49)によって形成され、前記駆動装置のばね装置(29,50)は、前記調整駆動部と機械的に協働し、
前記充電接触面に作用する接触力は、前記調整駆動部によって形成され、
前記調整駆動部の電気モータ(43,58)は、前記調整駆動部の制御装置によって駆動され、
前記電気モータのトルクが前記制御装置によって検出され、前記接触力は、前記制御装置によって前記電気モータのトルクに応じて制御され、
前記充電接触子が前記接触位置において前記充電接触面に接触しているときであって、道路に対する前記車両の相対距離の変化によって前記格納位置からの前記接触位置の相対距離の変化が生じている間、前記接触力は一定である
ことを特徴とする電気的導電接続を形成する方法。
【請求項11】
前記接触力は、前記位置決めユニット(10,44)の前記格納位置(36,56)からの、前記充電接触面(11)又は前記接触位置(37,55)の相対距離とは独立して形成される
ことを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
前記電気モータ(43,58)のトルクは、前記関節アーム装置(12,45)又は前記調整駆動部(13,49)の位置に応じて、前記制御装置によって設定される
ことを特徴とする請求項10~11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記トルクの設定された限度が超過されたときに、前記接触位置(37,55)に達したことが前記制御装置によって検出される
ことを特徴とする請求項10~12のいずれか1項の方法。
【請求項14】
前記電気モータ(43,58)のトルクは、前記トルクの目標値が一旦達成されると、前記制御装置によって制限され、絶えず維持される
ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項の方法。
【請求項15】
前記トルクの目標値は、前記制御装置によって+/-10%の許容範囲内に制御される
ことを特徴とする請求項14の方法。
【請求項16】
前記電気モータ(43,58)の最大速度は、前記制御装置によって、前記電気モータの運転の0~7秒の期間内、好ましくは1~3秒の間に到達される
ことを特徴とする請求項10~15のいずれか1項の方法。
【請求項17】
前記電気モータ(43,58)の速度は、前記充電接触子(47,48)が少なくとも複数の区間において一定の速度で動かされるように、前記制御装置によって制御される
ことを特徴とする請求項10~16のいずれか1項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めユニット、及び、静止した充電ステーションと車両、特に電気バス等、との間の電気的導電接続の形成方法に関する。前記位置決めユニットの充電接触子は、前記位置決めユニットによって、充電接触面に対して移動可能、かつ、前記充電接触面に接触可能であり、前記位置決めユニットは、関節アーム装置と、前記関節アーム装置を駆動するための駆動装置とを有し、前記充電接触子は、前記関節アーム装置によって、電力伝送用の接触位置と電力停止用の格納位置との間に配置可能であり、前記駆動装置は、前記関節アーム装置に作用する調整力を形成する調整駆動部と、前記調整駆動部と機械的に協働するばね装置とを有し、接触力は、前記調整駆動部によって前記充電接触面に形成可能であり、前記調整駆動部は、制御装置と、電気モータとを有し、前記電気モータは前記制御装置によって駆動可能である。
【背景技術】
【0002】
そのような位置決めユニット及び方法は、最新技術からよく知られており、ステーション間を運行する電気駆動車両用にたびたび使用されている。これは電気バスのことを指し得るが、基本的には他の車両、例えば、トロリー線等に電気的に恒久的には接続されない列車又はトラムをも指し得る。これらの車両については、電気エネルギー貯蔵装置の充電は、車両がステーションに停止中に充電ステーションを通して行われる。ステーションにおいて、車両は充電ステーションに電気的に接続され、エネルギー貯蔵装置には、少なくとも車両が充電ステーションを有する次のステーションに到達するのに十分な充電がされる。車両と充電ステーションとの間の電気的接続を確立するために、車両の屋根上又は代替として車両の上方、例えばポールの上、に取り付けられ得る位置決めユニットが使用される。位置決めユニットは、充電接触子を充電接触面と接続することが可能であり、ステーションにおいて、車両、というよりむしろエネルギー貯蔵装置が充電されるのを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
充電接触子を充電接触面と接続するときには、安全な電気的接続を確立することができるように、充電接触子が充電接触面に規定された接触力で押し付けられることが不可欠である。DE 202014007218 U1から、車両の上方の位置決めユニットが知られており、位置決めユニットは、関節アーム装置と駆動装置とを含む。駆動装置は、車両の充電接触面に対して関節アーム装置を動かす目的を果たす、調整駆動部及びばね装置を有する。特に、関節アーム装置の上向きの動きには、調整駆動部の調整力を必要とする。
【0004】
既知の位置決めユニットについては、車両への電力伝送のための接触位置に対する、充電接触子の収納のための格納位置における位置決めユニットの距離を意味する、規定された接触高のために設計及び配置されなければならないという不利な点が常にある。これは、接触位置と格納位置との間の相対距離は、可変して使用可能ではなく、構造の変更を通じて頻繁に設定又は調整される必要がある。なぜならば、そうしなければ必要な又は所望の接触力が充電接触面に与えられ得ないからである。特に、車両のタイプ、よって車両の高さが変わるときには、格納位置と接触位置との間の相対距離は、車両の接触面の道路からの高さの違いの結果、大きく変化し得る。同じことが、車両のさまざまな積荷、又は例えば身体障害者の乗車を容易にするためにステーションの区域において車両又はバスを降下させることに当てはまる。車両が降下すると、もし接触力がもはや保持され得ないなら、充電接触子は充電接触面に対して垂直方向に動く。しかし、制御と組み合わせて充電接触子上又は関節アーム装置上にセンサを実装することによって接触力を調整することは、費用が掛かり、高度なメンテナンスが必要であり、位置決めユニットの製造及び運用コストを著しく増大させるであろう。
【0005】
DE 4334716 A1から、規定された接触力を形成するためのそのようなセンサが装備され
た位置決めユニットが知られている。この位置決めユニットは、トロリー線の集電器としての役割を果たし、接触力は位置決めユニットによって測定され制御される。
【0006】
したがって、車両の安全な接触を可能にし、同時に製造及び運用コストが低い、車両と充電ステーションとの間の電気的導電接続を形成する、唯一の位置決めユニット及び方法を提案することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する位置決めユニット及び請求項10の特徴を有する方法によって、達成される。
【0008】
静止した充電ステーションと車両、特に電気バス等、との間の電気的導電接続の形成のための本発明による位置決めユニットは、前記位置決めユニットの充電接触子が、前記位置決めユニットによって、充電接触面に対して移動可能、かつ、前記充電接触面に接触可能であり、前記位置決めユニットが、関節アーム装置と、前記関節アーム装置を駆動するための駆動装置とを有し、前記充電接触子が、前記関節アーム装置によって、電力伝送用の接触位置と電力停止用の格納位置との間に配置可能であり、前記駆動装置が、前記関節アーム装置に作用する調整力を形成する調整駆動部と、前記調整駆動部と機械的に協働するばね装置とを有し、前記充電接触面に作用する接触力が、前記調整駆動部によって形成可能であり、前記調整駆動部が、制御装置と、電気モータとを有し、前記電気モータは前記制御装置によって駆動可能であり、前記調整駆動部が、前記電気モータのトルクが前記制御装置によって検出可能であるように設計され、前記接触力が、前記制御装置によって前記電気モータのトルクに応じて制御可能であるように、設計される。
【0009】
したがって、位置決めユニットは、電気的に駆動される車両用の静止した充電ステーションの一部、又は電気的に駆動される車両の一部であり得る。位置決めユニットは、充電ステーション又は車両の充電接触子を、車両又は充電ステーションの充電接触面に動かすという目的を果たし、充電接触子を充電接触面に電気的に接続する。その後、充電ステーションに停止中に車両に電気工ネルギーを供給すること、及び車両内にこのエネルギーを貯蔵することが可能である。充電接触子の充電接触面への移動及び戻すことは、位置決めユニットの関節アーム装置及び駆動装置によって行われる。この目的のために、充電接触子は関節アーム装置の一端に位置する。駆動装置は、充電接触子、及びしたがって関節アーム装置を、充電接触子の収納のための格納位置から電力伝送のための接触位置へ動かすという目的、すなわち充電接触面の充電接触子との接触という目的を果たす。位置決めユニットは、接触位置において充電接触面に作用する規定された接触力を形成する。しかし、格納位置においては、関節アーム装置には調整力は全く又はごくわずかしか作用し得ない。その結果、関節アーム装置及び充電接触子が動くことは不可能である。関節アーム装置に作用する調整力は、駆動装置の調整駆動部によって生成され、調整駆動部は、ばね装置と機械的に協働する。調整力は、関節アーム装置の機構又は調整駆動部の伝動に依存し、充電接触子の移動中にはほとんど変化しない。充電接触子が充電接触面と接触中に調整力が調整駆動部によって増加させられ、充電接触面に作用する接触力の形成又は増加につながる。
【0010】
調整駆動部は、例えば、電気モータ用の電気制御システムでもあり得る制御装置も有する。この場合、電気制御システムは、電気モータに直接、統合され得る。制御装置は、電気モータのトルクを、例えば消費エネルギーによって検出し得るし、電気モータの規定さ
れた接触力が、充電接触面に関節アーム装置及び充電接触子を介して与えられるように、電気モータを制御し得る。次に、関節アーム装置、及び当てはまる場合には充電接触子への直接力の作用を、オプションとしてさまざまな影響の要因にも応じて、積極的に調整することが可能である。それによって、充電接触面と位置決めユニットとの間の相対距離又は車両の高さに関係なく、充電接触面に作用する常に一定の接触力を形成することが可能である。
【0011】
前記電気モータは、ブラシレス電気モータであり得る。もし調整駆動部がブラシレス電気モータを有すれば、特に大きな回数の移動サイクルが行われ得る。ブラシレス電気モータは、同じ機械的性能特性を有するブラシ付き電気モータより、遥かに少なく長いメンテナンス間隔しか必要としない。これにより、メンテナンス間隔が長い又は耐用年数がより長い位置決めユニットを設計することが、概して可能である。かご形ロータを有する三相非同期誘導機、回転電界を電気的に生成する同期機すなわちブラシレスDCモータも、ブラシレスモータすなわちロータとステータとの間の摺動接触のない電気モータとして、例えば使用され得る。
【0012】
前記調整駆動部は、直線駆動部、好ましくはスピンドル駆動部、特に好ましくはセルフロッキングしないスピンドル駆動部であり得る。スピンドルドライブは、スピンドルドライブのセルフロッキングを防ぐことができるピッチを有する対応するスピンドルを有し得る。直線駆動部は、格納位置から接触位置への、及びその逆の、関節アーム装置の動きを生じさせ得る。スピンドルは、電気モータに連結され得る、特にボールスクリュースピンドル又は台形スレッドスピンドルであり得る。
【0013】
前記調整駆動部及び/又は前記関節アーム装置は、変位センサ及び/又は位置センサを有し得る。変位センサを使用することにより、関節アーム装置が調整駆動部によって動かされ得る範囲を設定することができる。インクリメンタルエンコーダ又はアブソリュートエンコーダが、例えば、変位センサとして使用され得る。調整駆動部又は充電接触子の正確な動作位置を常に明確にすることも可能である。調整駆動部は、力に応じて動作し得る位置及び/又は圧力スイッチに応じて動作し得るリミットスイッチをも有し得る。更に、接触力の高さも、調整駆動部をある限定された位置にのみ伸長可能にすることによって制限され得る。加えて、調整駆動部の制限としての役割を果たし得る接触力の制限のための圧力スイッチが、それ自身又は制限スイッチとともに追加的に使用され得る。圧力スイッチは、充電接触子上に直接、又は関節アーム装置すなわち調整駆動部上にも配置され得る。
【0014】
前記ばね装置は、前記関節アーム装置に作用するばね力を生成し得る少なくとも1つの引張ばね又は圧縮ばねを有し得る。引張ばねは関節アーム装置に特に簡単に接続され得るので、引張ばねの使用が好ましい。ばね装置が複数のばねを有し、ばね力が関節アーム装置に絶えず作用することも、意図され得る。したがって、ばねは関節アーム装置の各位置において予め張力が与えられ得る。圧縮ばねがばね力を形成するために代替として使用され得る。そのようなばね装置は、特に頑強であり、容易にかつ安価に製造され得る。
【0015】
前記ばね装置のばねは、前記ばね装置の伝動部(Getriebe)のレバーによって前記関節アーム装置と機械的に連結され、前記関節アーム装置の位置に応じて前記レバーの実効長が変更可能に設計されている。レバーは、したがって、関節アーム装置に直接取り付けられ得る。その結果、ばねのばね力は関節アーム装置に直接、伝達され得る。ばねのばね力の位置又は方向、及び関節アーム装置上におけるレバーの配置に応じて、ばね力の方向とレバーの伸長方向との間の角度が90°より小さい又は大きいならばレバーの実効長は短縮され得る。レバーの実効長は、ばねを関節アーム装置に、例えばカム又はドローバーによって形成されエンドストップを有する復帰装置を介して取り付けることによって、調整
され得る。カムは復元装置のレバーを形成する。ばねに対するカムの位置に応じて、レバーの実効長は影響を受け得る。このようにして、関節アーム装置の位置に関係なく常に同じ大きさの復元力を関節アーム装置に実現すること、又は関節アーム装置の位置に応じて復元力を増加又は減少させることが、それぞれの要求に従って可能である。復元力は、調整力及び接触力に適合させられ得る。例えば停電のため、調整駆動部が働かなくなるなら、関節アーム装置の全ての位置における復元力の結果として充電接触子の収納が自動的に行われるように、復元力が決定されると有利である。このように、位置決めユニットは、特に安全に動作し得る。
【0016】
有利な実施形態において、前記位置決めユニットは、車両上方で前記位置決めユニットを柱又はアンダーパスに固定する保持装置を含み、前記ばね装置は、前記関節アーム装置に作用する復元力を形成する少なくとも1つの戻しばねを有し、前記復元力は、前記戻しばねに反対の方向に作用する前記関節アーム装置の重力より大きい。保持フレームは、例えば、関節アーム装置及び調整駆動部用の固定支持部を形成又は有し得る。特に、戻しばね又は調整駆動部は、保持フレーム上の固定支持部に直接取り付けられ得る。保持フレームは、ステーションの屋根、トンネル、又は車両がその下を通ることができる類似の施設だけではなく、柱又はアンダーパスにも特に単純に取り付けられ得る。位置決めユニットが車両の上に配置され得るという事実のため、調整駆動部は、接触要素を低くするための降下駆動部として形成され得、ばね装置又は戻しばねと機械的に協働し得る。ばね装置が、少なくとも1つの戻しばねによって関節アーム装置に復元力を生成するのであれば、充電接触子は、充電接触面が充電接触子と接触した後、車両の上方の位置決めユニット上の格納位置に容易に復帰し得る。ことによると復元力が、戻しばねに反対方向に作用する関節アーム装置の重力より大きいので、調整駆動部がアクティブである又は電力供給されることなく、関節アーム装置は、接触位置から格納位置へ動かされ得る。接触子が格納位置にあっても、復元力は重力を打ち消し、関節アーム装置に作用する更なる力がないときに充電接触子が降下又は伸長するのを防ぐために、復元力は好ましくは重力よりわずかに大きい。
【0017】
有利な実施形態において、前記位置決めユニットは、前記位置決めユニットを車両の屋根の上に固定する保持装置を含み、前記ばね装置は、前記関節アーム装置に作用する引上げ力を形成する少なくとも1つの引上げばねを含み、前記引上げ力は、前記引上げばねに反対の方向に作用する前記関節アーム装置の重力より小さい。保持フレームは、車両の屋根に取り付けられるのであるが、関節アーム装置及び駆動装置のための固定支持部も形成又は含み得る。保持フレームは、ダンパー、足及び/又は絶縁体を介して屋根の上に容易に取り付けられ得る。このように、位置決めユニットは、とりわけ容易に交換可能である。位置決めユニットが車両の屋根の上に取り付けられているのであれば、調整駆動部は、充電接触子を伸長しばね装置と機械的に協働し得る引上げ駆動部であり得る。ばね装置が、調整駆動部の調整力と協働して関節アーム装置に作用する引上げ力を形成する引上げばねを少なくとも含むのであれば、充電接触面の充電接触子との接触は、この場合、単に充電接触子を接触位置に伸長することによっても行われ得る。引上げ力は、引上げばねに反対の方向に作用する関節アーム装置の重力より小さくあり得る。よって、関節アーム装置及び関節アーム装置の上に位置する充電接触子の重力は、関節アーム装置を接触位置から格納位置へ、これが調整駆動部によって開始されることなく、動かす。引上げ力の反対の方向に作用する重力は、例えば停電の場合に充電接触子の降下を確実にするために、好ましくは重力よりわずかに小さい。更に、関節アーム装置の伸長中に関節アーム装置に作用する調整力を調整駆動部が引き起こすときに、引上げ力はそれでもなお調整駆動部を補助し、その結果、小さな調整力が与えられる必要があるのみである。
【0018】
前記関節アーム装置は、シングルアームシステム又ははさみ機構として、好ましくは平行四辺形リンケージを有しパンタグラフとして、設計される。これによって、関節アーム
装置は、充電接触子の格納位置から始まり充電接触面上の接触位置に向かう充電接触子の平行移動を可能にする。滑らかな一連の動きを確実にする更なるダンパー要素が、関節アーム装置上に配置され得る。静止した充電ステーションと車両、特に電気バス等、との間の電気的導電接続を形成する、本発明による方法において、前記位置決めユニットの充電接触子は、前記位置決めユニットによって、充電接触面に対して移動可能、かつ、前記充電接触面に接触可能であり、前記位置決めユニットの関節アーム装置は、前記位置決めユニットの駆動装置によって駆動され、前記充電接触子は、前記関節アーム装置によって、電力伝送用の接触位置と電力停止用の格納位置との間に配置可能であり、前記関節アーム装置に作用する調整力は、前記駆動装置の調整駆動部によって形成され、前記駆動装置のばね装置は、前記調整駆動部と機械的に協働し、前記充電接触面に作用する接触力は、前記調整駆動部によって形成され、前記調整駆動部の電気モータは、前記調整駆動部の制御装置によって駆動され、前記電気モータのトルクが前記制御装置によって検出され、前記接触力は、前記制御装置によって前記電気モータのトルクに応じて制御される。本発明による方法の有利な効果については、本発明による位置決めユニットの有利な点の説明に参照がなされる。
【0019】
前記接触力は、前記位置決めユニットの前記格納位置への、前記充電接触面又は前記接触位置の相対距離とは独立して形成され得る。したがって、道路に対してさまざまな高さを有する車両を位置決めユニットで接触させることも可能である。
【0020】
前記接触位置において、前記位置決めユニットの前記格納位置からの、前記充電接触面又は前記接触位置の相対距離の調整中に、前記接触力は一定であり得る。車両の道路への相対距離の変化は、接触位置と格納位置との間の相対距離の変化をももたらす。相対距離の変化は、車両が走行装置によって降下させられることによって、又は車両に荷物が載せられることによって、引き起こされ得る。接触力は調整力に対して比較的大きいので、たとえ相対距離が変化しても、接触力は実質的に一定であり得る。接触力が制御装置によって電気モータのトルクに応じて制御されるのであれば、接触力は相対距離から独立してより容易に形成され得る。車両を降下させることによって相対距離が増加するのであれば、接触力、よって電気モータのトルクが直接減少し、次にトルクが制御装置によって再び増加させられるので、結果として一定の接触力が得られる。逆に、相対距離の減少は接触力の、よってトルクの増加につながり、制御装置は、トルクを減少させることによってそれを打ち消し得る。
【0021】
前記電気モータのトルクは、前記関節アーム装置又は前記調整駆動部の位置に応じて、前記制御装置によって設定され得る。これによって、関節アーム装置に、及び当てはまる場合には接触要素に、作用する直接力が、関節アーム装置のそれぞれの位置に理想的に適合すること、及び、充電接触面に作用する直接力が関節アーム装置の位置に関係なく実質的に一定になるということも、可能である。関節アーム装置の位置は、例えば変位センサによって検出可能であり、トルクは位置に応じて事前に制御装置によって調整され得る。その結果、接触力の調整のためのトルク制御には大きなトルクステップは必要とならない。
【0022】
前記トルクの限度値が超過されたときに、前記制御装置は前記接触位置に達したことも検出し得る。充電接触子は、接触位置において充電接触面に衝突し、それは電気モータのトルクを著しく増加させる。トルクのこの増加は、制御装置の接触位置への到着として検出され得る。例えば、電気モータの現存するかもしれない速度制御は、接触位置において電気モータのトルクを再調整するのに必要なだけであるので、オフにされ得る。また例えば、充電ステーションからのエネルギーの伝送のためのイネーブル信号が、接触位置において制御装置によって出され得る。更に、したがって、接触位置の検出のためのセンサは必要ない。
【0023】
前記電気モータのトルクは、前記トルクの目標値が一旦達成されると、前記制御装置によって制限され、絶えず維持され得る。トルクを制限することによって、電気モータの過負荷がまず防止される。更に、接触力を一定にすることも可能である。同様のことが充電接触子の伸長及び収納速度にも当てはまり、これらは限度内で増加され得る。
【0024】
前記トルクの目標値は、前記制御装置によって+/-10%の許容範囲内に制御され得る。この許容範囲は、実質的に一定の接触力を形成するのに完全に十分であり、その結果、制御装置による電気モータのトルクの特に正確な検出が不必要である。したがって、制御装置は、より安価になるように設計され得る。
【0025】
前記電気モータの最大速度は、前記制御装置によって、前記電気モータの運転の0~7秒の期間内、好ましくは1~3秒の間に到達され得る。このようにして、調整駆動部及び関節アーム装置の振動とともに、直接力の作用が、防止又は減少され得る。電気モータのこのように制御された始動は、位置決めユニットの耐用年数の延長にもつながる。
【0026】
前記電気モータの速度は、前記充電接触子が少なくとも複数の区間において一定の速度で動かされるように、前記制御装置によって制御され得る。例えば、格納位置から開始して、充電接触子は、最初は正の加速度で延伸され、又は負の加速度で収納されるが、接触位置までの充電接触子の動きの距離の大部分は一定の速度で行われる、ということが、予見され得る。
【0027】
本方法の更なる有利な実施形態が、請求項1を参照する従属請求項から明らかである。
【0028】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を利用してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、格納位置にある位置決めユニットの第1実施形態を側面図において示す。
図2図2は、接触位置にある位置決めユニットを側面図において示す。
図3図3は、接触位置にある位置決めユニットの第2実施形態を透視図において示す。
図4図4は、図3の詳細図を示す。
図5図5は、格納位置にある図3の位置決めユニットを透視図において示す。
図6図6は、接触位置にある図3の位置決めユニットを透視図において示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び2の概要は、それぞれ異なる位置にある位置決めユニット10の第1実施形態を示す。充電接触面11の接触は、象徴的に示されるのみである。位置決めユニット10は、関節アーム装置12と、関節アーム装置12を駆動するための調整駆動部13とを含む。関節アーム装置12は、シングルアームシステム14として設計されており、アッパーシザーアーム16及びアッパーカップリングロッド17を有するアッパーシザー15を、ロアーシザーアーム19及びロアーカップリングロッド20を有するロアーシザー18とともに含む。アッパーカップリングリンク21は、アッパーシザーアーム16に回転可能に取り付けられており、そのため、位置決めユニット10の電気的充電接触子(図示せず)のための位置決めユニット10のマウント22が、水平面23に対して常に平行に動かされ得る。この目的のために、アッパーカップリングリンク21は、軸38を介してアッパーカップリングロッド17に接続される。ロアーシザーアーム19及びロアーカップリングロッド20は、位置決めユニット10の保持フレーム26の固定軸受24及び25に、それぞれ回転可能に取り付けられる。ロアーシザーアーム19は、軸27を介してアッパーシザーアーム16に回転可能に取り付けられる。よって、アッパーシザーアーム16の回転する動きは、マウント22の、水平面23に対する平行な動きを引き起こす。
【0031】
調整駆動部13は、直線駆動部28である。位置決めユニット10のばね装置29は、引張ばね31として形成された戻しばね30で形成されている。引張ばね31は、保持フレーム26上の固定軸受32及びレバー34の軸33に取り付けられる。軸33及び引張ばね31とともに、レバー34は、復帰装置35を形成する。レバー34は、ロアーシザーアーム19と共回転するために取り付けられるのであるが、関節アーム装置12の位置に応じて、引張ばね31に対してスイングし、レバー34の実効長が短縮又は伸長される。位置決めユニット10の格納位置36及び接触位置37において、引張ばね31は、軸33に直接的な作用を有する。もし関節アーム装置12が更に下方に伸びるなら、レバー34の実効長は、その回転によって著しく短縮される。したがって、引張ばね31、すなわち、その実効的な復元力を位置決めユニット10の位置に適応させることが可能である。調整駆動部13とともに、関節アーム装置12は、充電接触子(図示せず)を含み、充電接触子又はマウント22に働く設計に関係する重力を有する。引張ばね31は、重力を超えるばね力又は復元力をもたらし、その結果、位置決めユニット10の位置にかかわらず、位置決めユニットが格納位置36に戻ることが、停電のときでさえも、いつでも確実になる。
【0032】
関節アーム装置11用の制御器40を有するレバー39は、関節アーム装置12又はロアーシザーアーム19に堅固に固定される。直線駆動部28は、レバー39の軸41上に回転可能に取り付けられる。更に、直線駆動部28は、軸42を介して保持フレーム26に堅固に接続される。直線駆動部28は、電気モータ43によって駆動され、セルフロッキングしない。このようにして、例えば停電のとき、引張ばね31は、関節アーム装置12を接触位置37から格納位置36へ自動的に動かすことができ、それによって直線駆動部28が格納される。したがって、直線駆動部は、関節アーム装置12の動きの制動の役割も果たす。更に、調整駆動部は、電気モータ43が接続される制御装置(図示せず)を含む。電気モータ43のトルクは制御装置によって検出され、制御装置は、電気モータ43のトルクを、充電接触子(図示せず)によって充電接触面11に作用する接触力に応じて制御する。電気モータ43のトルクは制御されるので、接触力は、電気的接触を形成するのに十分な強さを有し、実質的に一定に、又は他の任意の接触位置におけるのと同様に接触位置37におけるのと同じレベルにおいて、形成され得る。
【0033】
図3~6の概要は、電気駆動車両(図示せず)の屋根の上に取り付けられる位置決めユニット44の第2実施形態を示す。位置決めユニット44は、関節アーム装置45を実質的に含み、その端部46には、充電接触子47及び48が車両の上方の充電接触面(図示せず)の接触のために配置されている。更に、位置決めユニット44は、調整駆動部49と、ばね装置50とを、保持フレーム51とともに含む。関節アーム装置45は、前に説明したシングルアームシステムに類似するシングルアームシステム52として形成される。ばね装置50は、引上げばね54として形成され関節アーム装置45に引上げ力を与える2つの引張ばね53を含む。ここで、引上げ力は、関節アーム装置45と充電接触子47及び48との重力が引上げ力より大きいように決定され、その結果、停電の際には例えば、関節アーム装置45が全ての場合において接触位置55から格納位置56へ降下する。よって、調整駆動部49は、制御装置(図示せず)に接続され制御される電気モータ58を有する、セルフロッキングしない、直線駆動部57を含む。制御装置は、電気モータ58のトルクを検出し、制御装置は、規定された接触力が充電接触子47及び48上に生じるように、電気モータ58のトルクを制御する。直線駆動部57は、その一部分に、この場合は、直線駆動部57のハウジング59に収容されナットによって駆動ロッド60に作用する、台形状のスレッドスピンドル(図示せず)を含む。したがって、関節アーム装置は、駆動ロッド60の動きによって、接触位置55又は格納位置56へ動かされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6