(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレートをベースとするポリマーフォーム粒子及びそれらを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20240326BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240326BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C08J9/18 CFD
B29C44/00 G
B29K67:00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074839
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522173228
【氏名又は名称】ランクセス・パフォーマンス・マテリアルズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フライターク
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-039759(JP,A)
【文献】特開2006-291063(JP,A)
【文献】特開2020-124874(JP,A)
【文献】特開平09-100398(JP,A)
【文献】特開2010-270238(JP,A)
【文献】特表2016-521796(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109705542(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、並びに100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含む、ポリマーフォーム粒子。
【請求項2】
50~700kg/m
3の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーフォーム粒子。
【請求項3】
0.1~20質量部のタルクを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマーフォーム粒子。
【請求項4】
タルクに加えて、100質量部のPBT(ポリブチレンテレフタレート)あたり、0.1~20質量部の少なくとも1種の、タルク以外のさらなる添加剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載のポリマーフォーム粒子。
【請求項5】
少なくとも1種の添加剤が、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤及び離型剤、充填剤及び補強剤、タルク以外の成核剤、レーザー吸収剤、二官能又は多官能の分岐又は連鎖延長用の添加剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、可塑剤、加工助剤、流動助剤、エラストマー変性剤、及び着色剤の群から使用されることを特徴とする、請求項4に記載のポリマーフォーム粒子。
【請求項6】
テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイトが添加剤として使用されることを特徴とする、請求項4に記載のポリマーフォーム粒子。
【請求項7】
ポリマーフォーム粒子を製造するための方法であって、
ポリマーマトリックスの粉体又はペレットを、
(a)架橋剤及び/又は連鎖延長剤を加えることなく、エクストルーダーの中に導入して、そして可塑化し、そして均質化し、
(b)エクストルーダー中で、前記の可塑化されたポリマーマトリックスの中に、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される発泡剤を添加し、そして分散させ、
(c)前記の添加された発泡剤を含む可塑化されたポリマーマトリックスを、エクストルーダーから、エクストルーダーのダイを通して排出させ、
(d)前記の添加された発泡剤を含む押出し加工されたポリマーマトリックスのストランドを、エクストルーダーのダイより下流でペレット化して、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡されたポリマーフォーム粒子を形成させ、そして
(e)前記のポリマーフォーム粒子を、加熱発泡させ、
ここで、前記ポリマーマトリックスが、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
プロセスステップ(c)及び(d)が、冷却流体と共に、又はそれらの中で実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プロセスステップ(e)が、連続式赤外線オーブン中で実施されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーフォーム粒子が、50~700kg/m
3の範囲の密度を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーマトリックスが、0.1~20質量部のタルクを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックスが、0.1~20質量部の、タルク以外の添加剤をさらに含み、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤及び離型剤、充填剤及び補強剤、タルク以外の成核剤、レーザー吸収剤、二官能又は多官能の分岐又は連鎖延長用の添加剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、可塑剤、加工助剤、流動助剤、エラストマー変性剤及び着色剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を、タルク以外の添加剤として含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーマトリクスが、タルク以外の添加剤として、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイトを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリブチレンテレフタレートの金型内発泡における、マトリックスポリマー含有の、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の形態にあるポリブチレンテレフタレートの加工可能領域を、225℃±2℃から223~255℃の範囲にまで拡張するため、及び/又はポリブチレンテレフタレートの溶融粘度を増大させるためのポリエチレンテレフタレートの使用であって、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを使用することを特徴とする、ポリエチレンテレフタレートの使用。
【請求項15】
前記加工可能領域が、温度可変的に加熱可能な金型中で粒子フォーム成形物を得るための、スチームフリーの粒子フォーム加工手段による金型内発泡における加工可能領域であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記の使用が、構造用フォーム及び/又は断熱用フォームの製造に役立つことを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記構造用フォームが、サンドイッチ構造物であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
高性能軽量構造物で使用されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記の構造用フォーム及び/又は断熱用フォームが、航空宇宙、防衛技術、風力発電ローターブレード、自動車製造、又は造船において使用されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
以下のステップ:
(i)請求項1に記載のポリマーフォーム粒子を
、エネルギーを注入
して予備発泡させるステップ;さらに
(ii)前記のポリマーフォーム粒子を温度可変的に温度調節可能な金型に供給して
成形するステップ
を含む、製品又は成形物
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートを含むブレンド物をベースとするポリマーマトリックスからの、発泡させた形態及び部分的に発泡させた形態のいずれかにあるポリマーフォーム粒子、それらを製造するためのプロセス、並びに、成形物を得るための加工における、ポリブチレンテレフタレートベースのポリマーフォーム粒子の加工可能領域(processing window)を拡張するための、ポリエチレンテレフタレートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡剤(blowing agent)の手段により発泡可能であるか又は部分的に発泡させた熱可塑性プラスチックベースのポリマーフォーム粒子は、主としてポリマー成形物の製造に用途を見出している。この目的のためには、相当する金型の中で、特に加熱スチームの作用下で、それらが表面的に相互に融着されて、成形物が形成される。その発泡剤の一部が、まだそのポリマーフォーム粒子の中に存在しているような場合には、それらを金型の中で発泡させる(expand)か/起泡させる(foam)と、それにより、ポリマーフォーム粒子を相互に大きな面積で融着結合させることが可能となり、その手段によって、低密度の成形物を得ることができる。
【0003】
別な方法として、発泡可能であるか又は部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を、特にマイクロ波/高周波領域などにある電磁波の作用の下で加熱して、同様に、金型の中でそれらを相互に融着させることもできる。それぞれの場合において、使用されるポリマーが、それ自体では、電磁波のそれぞれの周波数範囲に対して十分な吸収性能を有していないような場合には、電磁波を吸収する媒体、たとえばマイクロ波及び/又は高周波スペクトルの場合においては、特に水を用いて、それらをコーティングしたり濡らしたりすることも可能である。
【0004】
このようにして製造されたポリマー成形物は、発泡させ、そして相互に融着されたポリマーフォーム粒子から形成されたポリマーフォームの圧縮性が理由で、低密度、並びに、熱、音及び衝撃の高い吸収性能を特徴としている。したがって、それらは主として、以下の用途で使用されている:遮断材料、たとえば建築物又はその他の遮断要素、たとえばロールシャッターボックス、窓用形材のための遮断パネル、加熱構造物のため、自動車技術における断熱容器などのため、包装材料のため、サンドイッチタイプの成形物、たとえばスポーツ用品、サーフボード、ボートの本体などのコア材料として、又は家具構造材のため。さらに、ルーズなポリマーフォーム粒子、すなわち相互に融着した成形物を形成していない発泡させたポリマーフォーム粒子のための使用分野としては、たとえば、以下のものが挙げられる:包装目的、結束のためなどのための充填材物質として、ビーンバッグなどのため、吹込断熱のための断熱材料として、又はそれ以外にも、たとえば装飾目的での模倣雪として。
【0005】
実際には、熱可塑性ポリマーから、発泡可能であるか又は部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を製造することは、主として押出し加工操作の中で実施され、それに続けて、エクストルーダー(押出機)のダイ又はダイ装置から押し出されたポリマーのストランドに、ペレット化操作が施される。熱可塑性プラスチックのベースポリマーが、粉体又はペレットの形態でエクストルーダーに導入され、その中で可塑化され、均質化される。次いで、(使用された粉体又はペレットの中に既に存在している場合以外は)、その可塑化された物質の中に、好ましくは圧力下で、発泡剤を導入する。エクストルーダー中の圧力レベル(これは、最高数百barとなりうる)が理由で、その発泡剤が、その可塑化されたポリマーの溶融温度であってさえも液相及び/又は超臨界相状態にあり、その可塑化された物質の中に特に大量に溶解する。エクストルーダーのダイから押し出された直後に、圧力が急激に低下して、特に周囲圧力となった結果として、発泡剤が急激に発泡してガス相となるために、ポリマーストランドの発泡及び起泡(expansion and foaming)が起きる。エクストルーダーの出口としてダイプレートを使用した場合においては、複数のポリマーストランドが得られ、それらの中で、発泡剤が同時に発泡する。ポリマーストランドの微粉砕(comminution)又はペレット化は、典型的には、エクストルーダーより下流にある切断装置の手段により実施される。これは、エクストルーダーノズルの同軸的に回転しているカッターであるのが好ましい。高密度(compact)すなわち未起泡の(unfoamed)のポリマーの場合においては、ポリマーストランドを水浴の中に通し、その後で十分に冷却してからペレット化させることも公知ではあるが、発泡させた(expanded)すなわち起泡させた(foamed)ポリマーは、たとえば水を充填したチャンバーの中で、切断装置の手段により微粉砕して、添加した発泡剤を含むポリマーストランドを急速に冷却して、発泡剤の発泡において形成された微細細孔のフォーム構造を「凍結させる(freeze)」ようにする。
【0006】
発泡可能であるポリマーフォーム粒子、又はペレット化操作において少なくとも部分的に既に発泡させたものが、それから製造されたポリマー成形物中で、極めて均質且つ密接な融着結合を達成するためには、一般的には、そのポリマーフォーム粒子が、極めて実質的に球状であるが、少なくとも円形の輪郭を有しているのが、望ましい。ポリマーフォーム粒子それ自体の製造においては、そのためには、エクストルーダーのダイから出てくる起泡性ポリマーストランドを、極めて迅速に微粉砕又はペレット化して、ポリマーフォーム粒子を得ることが必要となるが、その理由は、粒子の球径の形状は、そのポリマーストランドが、まだ少なくとも半可塑的な状態にあるときに特に達成可能となるからである。しかしながら、それに加えて、実質的に均質で、微細細孔のフォーム構造を形成させるため、並びにポリマーマトリックスの中で発泡させた発泡剤から形成される泡が崩壊しないようにするためには、エクストルーダーのダイから出てくるポリマーを、極めて急速に冷却すなわち急冷(quench)する必要もある。
【0007】
その発泡又は起泡操作は、押出し加工操作とは別途実施することも可能であることは公知であり、その場合、エクストルーダーのダイから、極めて実質的には非起泡の形態で押し出されてくるポリマーストランドを、最初にペレット化し、次いで、たとえば起泡ユニットの中で加熱スチームを用いて、そのポリマーペレットの中に存在している適切な発泡剤により起泡を開始させる。
【0008】
一方では、事実上、発泡可能であるか又は部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を製造するために、化石原料物質に由来する熱可塑性ポリマーが主として使用されているものの、他方では、新規なポリマーフォーム粒子を製造するための選択肢の検討、並びにそれに関連する、加工及び金型成形技術への挑戦がなされている。ますます注目をあびるようになった材料としては、エンジニアリングサーモプラスチックが挙げられるが、これは、高温用途における、繊維-ポリマー複合材料のためのマトリックス材料としても使用することができる。このものにより、エンジニアリングプラスチックの優れた熱的性質及び機械的性質と、フォームの低密度とを組み合わせ、複合材料の特性を自在に調節することが可能となる。
【0009】
サンドイッチ概念(sandwich concepts)とも呼ばれている形態にある、超軽量の粒子フォーム構造も同様に、鉱油ベース燃料の場合におけるコスト上昇に対処するための解決法の開発に関連した研究開発、又は自動車のCO2放出に関連して、より厳しくなる法規制を満たすこと、又は断熱の実施にもますます関心が寄せられるようになっている。たとえば、電気自動車の分野においては、ポリマーフォームが、断熱性のコア材料として、ますます重要となってきている。将来有望な材料は、熱可塑性プラスチックフォーム粒子から作製したフォームのコアを用いた、多成分材料系であろうと考えられる。
【0010】
しかしながら、今日までのところでは、ポリエステルベースのフォームは、加工に関連した挑戦課題及び典型的には密度の高さが理由で、ポリスチレン又はポリウレタンのフォームに比較して、応用範囲が比較的狭い。ポリブチレンテレフタレート(PBT)から作製した粒子フォームの実施を成功させるためには、いくつかのハードルを克服しなければならない。第一には、PBTは、ポリエステルに典型的な、低い溶融安定性を有していて、そのことが、起泡の際の高発泡性に対する障害となっている。第二には、その部分的な結晶化度が、起泡プロセスの際の溶融温度の調節において、比較的狭い加工可能領域をもたらしている。
【0011】
しかしながら、ポリブチレンテレフタレート[CAS No.24968-12-5]は、230~270℃の溶融温度での射出成形で使用するのには優れた適性を有しており、好適な冷却特性及び加工特性を有している(非特許文献1)。PBTの融点は、223℃と報告されており;そのガラス転移温度は、47℃であり;その非晶質相のガラス転移は、60℃である。ポリブチレンテレフタレートは、その高い強度及び剛性、ポリオキシメチレン又はポリアミドに比較して、その極めて高い寸法安定性、並びにその極めて良好な摩擦性能及び摩耗性能のために、特に高く評価されている。
【0012】
PBTの結晶の狭い溶融範囲(これは、特に粒子起泡の際のPBTの加工可能領域をかなり限定する)が、加工技術への要求を、極めて特異な程度にまで高めている。経験的に示されるところでは、PBTの加工可能領域は、225±2℃である。
【0013】
それに加えて、低く、そのために起泡プロセスでは不利である、PBTのようなポリエステルの溶融安定性は、(非特許文献2)にあるように、T.Standauらにより調べられた。その中で考慮された、PBTから粒子フォームを製造する際の主たる問題点は、以下の通りである:
(i)レオロジー的性質(低い溶融安定性も含む)の改良の必要性、
(ii)狭い加工可能領域への適合性、及び
(iii)ポリマーフォーム粒子の融解。
【0014】
そのため、Standauは、連鎖延長剤のJoncryl(登録商標)ADR 4468を使用している。このものは、溶融粘度を改良するためのエポキシ官能基を有するスチレン-アクリレートコポリマーであって、以下の文献を参照されたい;(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】J.Falbe,M.Reglitz,ROEMPP Lexikon Chemie[ROEMPP’s Chemical Lexicon],volume 5:Pl-S,10th edition,Thieme,1998
【文献】T.Standau et.al.,Ind.Eng.Chem.Res.,2018,57,17170-17176
【文献】V.Frenz et.al.,Multifunctional Polymers as Chain Extenders and Compatibilizers for Polycondensates and Biopolymers,ANTEC 2008,1682-1686
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術の解決法の欠点は、PBTの中に、スチレン-アクリレートポリマー、すなわち異なったタイプのポリマーを導入したことである。この進歩にもかかわらず、低密度であるばかりではなく、さらには、加工が容易であり、且つ成形の自由度が高いことで注目される、発泡が可能な、PBTをベースとするポリエステルペレット及びポリエステルフォームが、それらが極めて資源節約的方法で使用可能であるために、そして、フォームの密度、したがって原料物質の必要量及びフォームの性質を予備起泡(prefoaming)操作で確立させることが可能であるために、依然として大いに必要とされている。フォーム粒子を起泡させて、ブロック状又は複雑な形状の粒子フォームの構造物又は成形物を、一段のステップで得ることができる。そのような粒子フォーム構造物は、自動車の構造で使用されるが、しかしながら、それらは、電気化学的塗装法(カチオン電着法)の際の温度に耐えうるべきであり、その場合、塗装される対象物が、3000ボルトのDC電圧及び220~290アンペアの下で水性電着液に浸漬され、そしてそのようにして得られた塗膜が、カチオン電着乾燥オーブン中で、200℃で約30分かけて焼き付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことには、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から作製されるポリマーマトリックスをベースとする、熱可塑性の、発泡可能であるか又は部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子が、ポリエチレンテレフタレートを用いてPBTを変性することにより製造することが可能であり、このことにより、起泡プロセスにおけるPBTの加工可能領域を、PBTの他の性質に顕著な悪影響を与えることなく、かなり拡張されるということが見出された。
【0018】
<本発明の主題>
本発明は、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素、並びに100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含む、ポリマーフォーム粒子を提供する。
【0019】
本発明はさらに、ポリマーフォーム粒子を製造するためのプロセスも提供するが、そこでは、ポリマーマトリックスの粉体又はペレットを、
(a)架橋剤及び/又は連鎖延長剤を加えることなく、エクストルーダーの中に導入して、そして可塑化し、そして均質化し、
(b)エクストルーダー中で、その可塑化されたポリマーマトリックスの中に、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される発泡剤、特に二酸化炭素を分散させ、
(c)添加された発泡剤を含むその可塑化されたポリマーマトリックスを、そのエクストルーダーから、エクストルーダーのダイを通して排出させ、
(d)添加された発泡剤を含むその押出し加工されたポリマーマトリックスのストランドを、エクストルーダーのダイより下流でペレット化させて、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を形成させ、そして
(e)そのポリマーフォーム粒子を、発泡させ、好ましくは、加熱発泡、特に連続式赤外線オーブンの中で加熱発泡させるが、
ここで、そのポリマーマトリックスは、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含む。
【0020】
プロセスステップ(c)及び(d)は、冷却流体の中又はそれを用いて実施するのが好ましい。ステップ(c)及び(d)において使用される冷却流体は、さらなる実施態様においては、高圧下にあってもよい。本発明との関連においては、高圧とは、好ましくは1.5~30barの範囲圧力である。
【0021】
従来技術とは対照的に、本発明においては、PET及びPBTを、同じタイプの熱可塑性プラスチックとして理想的な方法で共に調節しながら加工して、起泡のための最適な加工可能領域を作り上げるので、異なったタイプのポリマーを追加で使用する必要をなくすことが可能である。
【0022】
本発明との関連においては、驚くべきことには、PBTの中でPETを使用することにより、核形成ポイントで発生するフォームのセルの成長速度が抑制されるということが、実験により、さらに示された。その結果として、本発明において使用されるPETを使用することにより、フォームのセルが、より多くの核形成ポイントで生成する。このことにより、驚くべきことには、小さなフォームのセルからなる、より均質なセル構造を有するPBTベースのポリマーフォーム粒子が得られることになる。この理由は、核形成、すなわちセルの核の生成が、発泡ガス(blowing gas)で過飽和となっている、PBTポリマーの溶融物の中で開始されるからである。この過飽和は典型的には、ポリマーと物理的発泡剤との平衡状態にある溶液を除圧するか、又は添加された分解性の化学的発泡剤を用いたポリマーの溶融物を加熱するか、のいずれかにより達成される。混ぜ込んだ固体粒子は通常、ポリマーの溶融物の中での核形成ポイントとして機能する。フォームのセルが、限界的なサイズに達すると、そのフォームのセルの中で発泡ガスが拡散する傾向によって促されて安定化されるか、或いは破裂するまで成長する。熱可塑性プラスチックの溶融物の中の、その薄く、著しく発泡されたセルの壁は、安定化されない限り、本来的に不安定である。フォームのセルは、典型的には、物理的又は化学的、いずれかで安定化させることができる。物理的発泡剤が使用され、除圧の手段によって発泡が達成されるのなら、フォームのセルは、物理的に安定化される。この場合、フォームのセルは、フォームのセルの壁の二軸伸張の結果としての、弾性のモジュラスの突然の上昇が理由で安定化される。この効果は、歪み硬化(strain-hardening)とも呼ばれる。フォームのセルの発泡速度もまた、歪み硬化効果に影響する。フォームのセルの壁の安定化における発泡ガスの相分離がさらに、決定的な役割を果たす。ガス相が形成されることによって、ポリマーの溶融物から熱を除去することを介しての冷却効果がもたらされる。その冷却効果が、その溶融物の引張粘度を増大させる。物理的安定化のためのポリエステルのタイプの適合性は、独立気泡の構造物を達成するための適合性と等価であり、「ポリマーの発泡性能(foamability of the polymer)」とも呼ばれている。
【0023】
発泡流体を担持させた溶融物の起泡を、金型の出口で開始させるためには、起泡させるポリマーの吸収容量を低下させなければならない。ヘンリーの法則によれば、このことは、原理的には、温度を上げるか又は圧力を下げるかの二つの方法で達成することができる。プラスチックは、一般的には、熱の貧伝導体であり、且つ温度の上昇が、溶融粘度を低下させもするので、溶融物の発泡流体を用いた過飽和は、実際には、圧力を下げることにより達成される。しかしながら、本発明との関連においては、驚くべきことには、PBTの中でPETを使用することによって、PBTの溶融粘度が増大することが実験で見出された。したがって、本発明はさらに、109~112Pa・s(パスカル×秒)から、最高200Pa・sを超えるまで、PBT、好ましくは粒子フォームを製造するためのPBTの溶融粘度を増大させるための、PETの使用にも関する。PBTの溶融粘度は、PETにプラスしてタルクを使用すると、特に好適に増大される。
【0024】
本発明はさらに、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを使用して、PBTベースの、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の溶融範囲を、225±2℃から223~255℃の範囲にまで拡げることにより、金型内起泡における、マトリックスポリマーとしてのPBTの加工可能領域を拡張する方法も提供する。
【0025】
本発明はさらに、好ましくは、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、並びに0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルクを使用して、PBTベースの、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の溶融範囲を、225±2℃から223~255℃の範囲にまで拡げることにより、金型内起泡における、マトリックスポリマーとしてのPBTの加工可能領域を拡張する方法も提供する。
【0026】
本発明はさらに、ポリブチレンテレフタレートの金型内起泡における、マトリックスポリマー含有の、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の形態にあるポリブチレンテレフタレートの加工可能領域を、225℃±2℃から223~255℃の範囲にまで拡張するため、及び/又は金型内起泡における、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子のためのマトリックスポリマーとして使用されるポリブチレンテレフタレートの溶融粘度を増大させるための、ポリエチレンテレフタレートの使用にも関するが、ここで100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートが使用される。
【0027】
本発明は、好ましくはさらに、ポリブチレンテレフタレートの金型内起泡における、マトリックスポリマー含有の、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の形態にあるポリブチレンテレフタレートの加工可能領域を225℃±2℃から223~255℃の範囲にまで拡張するため、及び/又は金型内起泡における、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子のためのマトリックスポリマーとして使用されるポリブチレンテレフタレートの溶融粘度を増大させるための、ポリエチレンテレフタレートの使用にも関するが、ここで、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルクが使用される。
【0028】
本発明におけるPBTベースのポリマーフォーム粒子は、粒子フォーム又はそれらをベースとするサンドイッチ構造物を製造するための、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子である。
【0029】
はっきりさせるために付言すれば、本発明の範囲には、各種所望の組合せにおいて、一般的な範囲又は好ましい範囲と記載されたすべての定義及びパラメーターが包含されることに注意されたい。このことは、本発明との関連において記載された、ポリマーフォーム粒子、それらのための製造プロセス、及び使用にもあてはまる。本出願との関連において引用されている規格は、本発明の出願日における最新の版を指している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<本発明のさらなる好ましい態様>
本発明は、好ましくは、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素、並びに100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含む、50~700kg/m3の範囲の密度を有するポリマーフォーム粒子を提供する。
【0031】
本発明は、より好ましくは、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素、並びに100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり25~320質量部のポリエチレンテレフタレートを含む、90~400kg/m3の範囲の密度を有するポリマーフォーム粒子を提供する。
【0032】
本発明は、さらにより好ましくは、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素、並びに、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルクを含む、50~700kg/m3の範囲の密度を有するポリマーフォーム粒子を提供する。
【0033】
本発明は、さらにより特に好ましくは、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素、並びに、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルクを含む、90~400kg/m3の範囲の密度を有するポリマーフォーム粒子を提供する。
【0034】
一つの好ましい実施態様においては、本発明は、好ましくは50~700kg/m3の範囲の密度を有する、より好ましくは90~400kg/m3の範囲の密度を有する、ポリマーフォーム粒子を製造するためのプロセスに関し、そのプロセスでは、ポリマーマトリックスの粉体又はペレットを、
(a)架橋剤及び/又は連鎖延長剤を加えることなく、エクストルーダーの中に導入して、そして可塑化し、そして均質化し、
(b)エクストルーダー中で、その可塑化されたポリマーマトリックスの中に、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される気体の発泡剤を分散させ、
(c)添加された発泡剤を含むその可塑化されたポリマーマトリックスを、そのエクストルーダーから、エクストルーダーのダイを通して排出させ、
(d)添加された発泡剤を含むその押出し加工されたポリマーマトリックスのストランドを、エクストルーダーのダイより下流でペレット化して、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を形成させ、そして
(e)そのポリマーフォーム粒子を、発泡させ、好ましくは、加熱発泡、特に連続式赤外線オーブンの中で加熱発泡させ、
ここで、そのポリマーマトリックスは、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルクを含む。ステップ(c)及び(d)は、冷却流体の中又はそれを用いて実施するのが好ましい。
【0035】
それらに代わるか又は好ましい実施態様においては、プロセスステップ(e)の前に、ペレット化されたポリマーフォーム粒子を、オートクレーブの中で適切な圧力下、適切な時間をかけて、発泡剤と接触させる。それに適した条件は、当業者が適切な実験を行うことによって、確かめることができる。
【0036】
本発明によるプロセスにおいて、プロセスステップ(e)の前に、使用される発泡剤が二酸化炭素であるのが好ましい。したがって、好ましい実施態様においては、本発明におけるPBT/PETベースのポリマーフォーム粒子には、発泡剤としての二酸化炭素だけが含まれる。したがって、本発明においては、使用されるPETは、発泡剤としての二酸化炭素と組み合わせて、好ましくはさらにタルクと組み合わせて使用される。
【0037】
さらなる好ましい実施態様においては、ポリマーフォーム粒子において、さらには本発明におけるプロセスにおいて、そして本発明におけるPETの使用において、タルクに加えて、100質量部のPBTあたり、0.1~20質量部、より好ましくは0.1~5質量部の、タルク以外の少なくとも1種の添加剤が使用される。
【0038】
タルク以外の好ましい添加剤は、以下の群から選択される:UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤及び離型剤、充填剤及び補強剤、タルク以外の成核剤、レーザー吸収剤、二官能又は多官能の分岐又は連鎖延長用の添加剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、可塑剤、加工助剤、流動助剤、エラストマー変性剤、及び着色剤。これらの添加剤は単独で使用してもよいし、混合物中、又はマスターバッチの形態の中で使用してもよい。
【0039】
添加剤として好ましい、タルク以外の潤滑剤及び離型剤は、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のエステル誘導体、及びさらにはモンタンワックスの群から選択される。好ましい長鎖脂肪酸は、ステアリン酸又はベヘン酸である。好ましい長鎖脂肪酸の塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛である。好ましい長鎖脂肪酸のエステル誘導体は、ペンタエリスリトールをベースとするもの、より特にはペンタエリスリトールのC16~C18脂肪酸エステル[CAS No.68604-44-4]又は[CAS No.85116-93-4]である。本発明との関連においては、モンタンワックスは、28~32個の炭素原子の鎖長を有する、直鎖の飽和カルボン酸の混合物である。本発明においては、以下の群からの潤滑剤及び/又は離型剤を使用するのが特に好ましい:8~40個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸と、2~40個の炭素原子を含む脂肪族飽和アルコールとのエステル、並びに8~40個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸の金属塩、特に好ましくは、ペンタエリスリトールテトラステアレート[CAS No.115-83-3]、ステアリン酸カルシウム[CAS No.1592-23-0]、及び/又はエチレングリコールジモンタネート、特には、Licowax(登録商標)E[CAS No.74388-22-0](Clariant(Muttenz,Basel)製)、そして極めて特に好ましくは、ペンタエリスリトールテトラステアレート、たとえばLoxiol(登録商標)P861(Emery Oleochemicals GmbH(Duesseldorf,Germany)製)として得られるもの。
【0040】
添加剤として好ましい、タルク以外の着色剤は、以下のものである:有機顔料、好ましくは、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、及び染料、好ましくは、ニグロシン又はアントラキノン、並びにさらには無機顔料、特には、二酸化チタン及び/又は硫酸バリウム、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、硫化亜鉛、又はカーボンブラック。
【0041】
添加剤として好ましい、タルク以外の可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、又はN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0042】
添加剤として好適に使用される、タルク以外の成核剤は、酢酸、サリチル酸、ステアリン酸、サッカリン酸のナトリウム又はカリウム塩、並びに部分加水分解されたモンタンワックス及びアイオノマーである。
【0043】
添加剤として好ましい、タルク以外の熱安定剤は、以下の群から選択される:立体障害フェノール、及び脂肪族又は芳香族置換されたホスファイト、及びこれらの群の各種置換された代表的化合物。立体障害フェノールの中でも、好ましいのは、少なくとも1個の3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル単位及び/又は少なくとも1個の3,5-ジ(tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)単位を有するものであって、特に好ましいのは以下のものである:ヘキサン-1,6-ジオール ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.35074-77-2](Irganox(登録商標)259(BASF SE(Ludwigshafen,Germany)製))、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.6683-19-8](Irganox(登録商標)1010、BASF SE製)、及び3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン[CAS No.90498-90-1](ADK Stab(登録商標)AO 80)。ADK Stab(登録商標)AO 80は、Adeka-Palmerole SAS(Mulhouse,France)から市販されている。
【0044】
脂肪族又は芳香族置換されたホスフォナイトの群の中でも使用するのに好ましいのは以下のものである:テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニルジホスフォナイト[CAS No.119345-01-6](たとえば、Clariant International Ltd(Muttenz,Switzerland)からHostanox(登録商標)P-EPQの名称で入手可能である)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[CAS No.154862-43-8](たとえば、Dover Chemical Corp.(Dover,USA)からDoverphos(登録商標)S9228の商品名で入手可能である)、及び/又はテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト[CAS No.38613-77-3]。
【0045】
添加剤として好ましい、タルク以外のエラストマー変性剤は、少なくとも1種のビニルモノマーD.1と、1種又は複数のグラフト基材D.2とを、好ましくは5重量%~95重量%、より好ましくは30重量%~90重量%の量のD.1、及び95重量%~5重量%、より好ましくは70重量%~10重量%のD.2を使用した、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する1種又は複数のグラフトポリマーであって、ここで、それらの重量パーセントは、エラストマー変性剤の100重量パーセントを基準にしたものである。本発明において使用するのに好ましい、エラストマー変性剤の実施態様は、欧州特許出願公開第3 239 228A1号明細書に詳細が記載されている(この特許の内容はすべて、本発明に組み込まれる)。
【0046】
添加剤として好適に使用される、タルク以外の充填剤又は補強剤は、以下の群からの少なくとも1種である:マイカ、シリケート、石英、摩砕石英、二酸化チタン、非晶質シリカ、硫酸バリウム、ガラスビーズ、摩砕ガラス、及び/又はガラス繊維又は炭素繊維をベースとする繊維質の充填剤及び補強剤。
【0047】
充填剤又は補強剤として、特に好ましいのは、ガラスビーズ又は摩砕ガラスの使用、極めて特に好ましいのは、ガラスビーズの使用である。ガラスビーズを使用する場合、いわゆる表面積ベースの粒径に関連した粒径分布又は粒径で使用される数字は、それぞれ、熱可塑性プラスチック成形コンパウンド物の中に組みこまれる前のものである。それぞれのガラス粒子の面積の直径(the diameter of the areas)は、本明細書においては、仮想的な球状の粒子(球体)の表面積に関連づけて表される。これは、Ankersmid(EyeTech(登録商標)ソフトウェア及びACM-104測定セルを備えたEye Tech(登録商標)、Ankersmid Lab(Oosterhout,the Netherlands))からの、レーザー調光の原理で動作する粒径分析計によって求められる。
【0048】
添加剤として使用される、タルク以外の充填剤及び/又は補強剤は、本発明における成形コンパウンド物を得るため又は粒子フォーム構造物を得るために加工した結果として、その中では、元々使用した充填剤又は補強剤よりも小さいd97又はd50値を有している可能性がある。本出願におけるd50及びd97の値に関して、その測定法及びその意味合いについては、Chemie Ingenieur Technik(72),p.273~276,3/2000,Wiley-VCH Verlags GmbH,Weinheim,2000を参照されたいが、それによれば、d50値とは、粒子の量の50%がそれより下にある粒径(中央値)であり、d97値とは、粒子の量の97%がそれより下にある粒径である。
【0049】
添加剤として使用される、タルク以外の充填剤及び補強剤は、個別に使用してもよいし、或いは、2種以上の異なった充填剤及び/又は補強剤の混合物として使用してもよい。好ましい実施態様においては、添加剤として使用するための充填剤及び/又は補強剤が、接着促進剤/接着促進剤系、より好ましくはエポキシドベース又はシランベースの接着促進剤/接着促進剤系を用いて表面変性されているのが特に好ましい。しかしながら、前処理が必須であるという訳ではない。本発明において使用される接着促進剤の好ましい実施態様は、同様に、欧州特許出願公開第3 239 228A1号明細書に記載されている。
【0050】
添加剤として、タルクに加えて、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイト(Hostanox(登録商標)P-EPQ)を使用するのが特に好ましい。
【0051】
本発明は、好ましくは、好ましくは50~700kg/m3の範囲の密度を有する、ポリマーフォーム粒子を製造するためのプロセスを提供し、そのプロセスでは、ポリマーマトリックスの粉体又はペレットを、
(a)架橋剤及び/又は連鎖延長剤を加えることなく、エクストルーダーの中に導入して、そして可塑化し、そして均質化し、
(b)エクストルーダー中で、その可塑化されたポリマーマトリックスの中に、空気、窒素、及び二酸化炭素の群から選択される発泡剤を分散させ、
(c)添加された発泡剤を含むその可塑化されたポリマーマトリックスを、そのエクストルーダーから、エクストルーダーのダイを通して排出させ、
(d)添加された発泡剤を含むその押出し加工されたポリマーマトリックスのストランドを、エクストルーダーのダイより下流でペレット化して、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子を形成させ、そして
(e)そのポリマーフォーム粒子を、発泡させ、好ましくは、加熱発泡、特に連続式赤外線オーブンの中で加熱発泡させ、
ここで、そのポリマーマトリックスは、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルク、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイトを含む。ステップ(c)及び(d)は、冷却流体の中又はそれを用いて実施するのが好ましい。
【0052】
本発明はさらに、好ましくは、純PBTの溶融範囲を、225±2℃から223~255℃の範囲にまで拡げることによる、熱可塑性プラスチックの、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の製造において、マトリックスポリマーとしてのPBTの加工可能領域を拡張する方法も提供し、その方法では、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルク、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイトが使用される。
【0053】
最後に、本発明は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレートの金型内起泡における、マトリックスポリマー含有の、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子の形態にあるポリブチレンテレフタレートの加工可能領域を、225℃±2℃から223~255℃の範囲にまで拡張するため、及び/又は金型内起泡における、発泡が可能であるか又は少なくとも部分的に発泡させたポリマーフォーム粒子のためのマトリックスポリマーとして使用されるポリブチレンテレフタレートの溶融粘度を増大させるためのポリエチレンテレフタレートの使用にも関し、その使用方法では、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のタルク、及び0.1~20質量部、好ましくは0.1~5質量部のテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイトが使用される。
【0054】
<ポリブチレンテレフタレート(PBT)>
本発明において使用されるポリブチレンテレフタレート(PBT)は、テレフタル酸又はその反応性誘導体とブタンジオールとから、公知の方法により調製される(Kunststoff-Handbuch[Plastics Handbook],vol.VIII,p.695ff.,Karl Hanser Verlag,Munich,1973)。使用されるPBTは、ジカルボン酸を基準にして、少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のテレフタル酸基を含んでいることが好ましい。
【0055】
一つの実施態様において、本発明においてベースポリマーとして使用されるPBTは、テレフタル酸基だけではなく、最大20mol%までの、8~14個の炭素原子を有する他の芳香族ジカルボン酸の基又は4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、特に、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸、又はフラン-2,5-ジカルボン酸の基を含んでいてもよい。
【0056】
一つの実施態様において、本発明においてベースポリマーとして使用されるPBTは、ブタンジオールだけではなく、さらには最大20mol%までの3~12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオール又は最大20mol%までの6~21個の炭素原子を有する脂環族ジオール、好ましくは、プロパン-1,3-ジオール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,5-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンの基を含んでいてもよい。
【0057】
ベースポリマーとして好適に使用されるPBTは、EN-ISO 1628/5に準拠して測定して、30~150cm3/gの範囲、より好ましくは40~130cm3/gの範囲、最も好ましくは50~100cm3/gの範囲の固有粘度を有している(それぞれの場合において、Ubbelohde粘度計の中で、フェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1、重量部)の中、25℃で測定)。固有粘度iVは、Staudinger Index又は極限粘度とも呼ばれ、Mark-Houwink式にしたがって、平均分子質量に比例し、粘度数VNをポリマー濃度ゼロにまで外挿した値である。
それは、一連の測定から、或いは適切な近似法(たとえば、Billmeyer)を使用して予測することができる。VN[mL/g]は、キャピラリー粘度計、たとえばUbbelohde粘度計の中で溶液粘度を測定することにより得られる。溶液粘度は、プラスチックの平均分子量の目安である。その測定は、各種の溶媒、好ましくはギ酸、m-クレゾール、テトラクロロエタン、フェノール、1,2-ジクロロベンゼンなどを用いて溶解させたポリマーについて、各種の濃度を用いて実施される。粘度数VNによって、プラスチックの加工特性及び性能特性をモニターすることが可能となる。ポリマーに対する熱負荷、老化性又は化学薬品に対する曝露、耐候性及び耐光性は、相応の測定法の手段によって調べることができる。この点に関しては、以下も参照されたい:http://de.wikipedia.org/wiki/Viskosimetrie及びhttp://de.wikipedia.org/wiki/Mark-Houwink-Gleichung。
【0058】
本発明においてベースポリマーとして使用するのに好ましいPBTは、Lanxess Deutschland GmbH(Cologne)から、Pocan(登録商標)B1300の名称で入手可能である。
【0059】
<ポリエチレンテレフタレート(PET)>
ポリエチレンテレフタレート[CAS No.25038-59-9]は、重縮合によって調製される、ポリエステルのファミリーからの熱可塑性プラスチックである。PETは各種の使用分野を有しており、その使用としては、プラスチックのボトル、フィルム、及び織物用繊維の製造が挙げられる。その密度は、1.38g/cm3であり、その融点は、260℃である。PETは事実上、水溶性であり、70℃のガラス転移温度を有している。さらなる技術データについては、以下を参照されたい:https://de.wikipedia.org/wiki/Polyethylenterephthalat。
【0060】
本発明において好適に使用されるPETは、EN-ISO 1628/5に準拠して、それぞれの場合においてUbbelohde粘度計でフェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1、重量部)中、25℃で測定して、30~150cm3/gの範囲、より好ましくは40~130cm3/gの範囲、最も好ましくは50~100cm3/gの範囲の固有粘度を有している。固有粘度iVは、Staudinger Index又は極限粘度とも呼ばれ、Mark-Houwink式にしたがって、平均分子質量に比例し、粘度数VNをポリマー濃度ゼロにまで外挿した値である。それは、一連の測定から、或いは適切な近似法(たとえば、Billmeyer)を使用して予測することができる。VN[mL/g]は、キャピラリー粘度計、たとえばUbbelohde粘度計の中で溶液粘度を測定することにより得られる。溶液粘度は、プラスチックの平均分子量の目安である。その測定は、各種の溶媒(ギ酸、m-クレゾール、テトラクロロエタン、フェノール、1,2-ジクロロベンゼンなど)を用いて溶解させたポリマーについて、各種の濃度を用いて実施される。粘度数VNによって、プラスチックの加工特性及び性能特性をモニターすることが可能となる。ポリマーに対する熱負荷、老化性又は化学薬品に対する曝露、耐候性及び耐光性は、相応の測定法の手段によって調べることができる。この点に関しては、以下も参照されたい:http://de.wikipedia.org/wiki/Viskosimetrie、及びhttp://de.wikipedia.org/wiki/Mark-Houwink-Gleichung。
【0061】
本発明において使用するためのPETは、Equipolymers s.r.l.(Amsterdam,the Netherlands)から、Lighter C88として入手可能である。
【0062】
<ポリマーフォーム粒子を製造するためのプロセス>
本発明におけるプロセスを、エポキシドをベースとするものを含めて、Joncryl(登録商標)ADR 4468などの架橋剤及び/又は連鎖延長剤をまったく含めずに実施して、環境及び健康に有害なそのような物質を使用せずに済ませるだけではなく、そのようにして製造されたPBTベースのポリマーフォーム粒子が、特に、同一のタイプのポリアルキレンテレフタレートから形成されたポリマーマトリックスをさらに含むようにすると、有利であることが見出された。
【0063】
オートクレーブプロセスによるか、又はガスを含む溶融物を押出し加工する手段によって、予備起泡を実施するのが好ましい。
【0064】
それらに代わるか又は別の好ましい実施態様においては、プロセスステップ(e)の前に、発泡させたポリマーフォーム粒子のペレットを、オートクレーブの中で、5~60barの圧力下で、2~60時間かけて、発泡剤と接触させる。
【0065】
ステップ(a)において、エクストルーダー中で、PETをブレンドしたマスターバッチの形態でPBTを使用し、そして架橋剤及び/又は連鎖延長剤を加えることなく一括して、可塑化及び均質化を行い、プロセスステップ(b)において少なくとも1種の発泡剤を添加し、エクストルーダーの中で、PBTとブレンド相手として使用されたPETとの可塑化されたポリマーマトリックスの中に分散させるのが好ましい。次いで、プロセスステップ(c)において、発泡剤を添加したブレンド物からなるポリマーマトリックスを、少なくとも一つのエクストルーダーのダイを通して、エクストルーダーから排出させ、次いで、エクストルーダーのダイよりも下流にあるプロセスステップ(d)において、その添加された少なくとも1種の発泡剤を含む、押出し加工されたポリマーストランドをペレット化して、ポリマーフォーム粒子を形成させる。プロセスステップ(c)及び(d)は、冷却流体の中又はそれを用いて実施するのが好ましい。一つの好ましい実施態様においては、使用される冷却流体が、周囲圧力よりも高い圧力下にある。
【0066】
プロセスステップ(e)において、ペレットを、任意選択により場合によっては添加された発泡剤と共に発泡させるが、好ましくは加熱発泡させ、特には連続式赤外線オーブン中で発泡させる。
【0067】
少なくとも1種の発泡剤、特に二酸化炭素は、ポリマーマトリックスの質量を基準にして、約1質量%~約20質量%、特には約2質量%~約15質量%、好ましくは約3質量%~約10質量%の比率で、適切に添加することができる。
【0068】
本発明においては、PBTベースで且つPETをブレンドしたポリマーマトリックスに、タルクを添加するのが好ましい。微粒子状成核剤としてのタルク(ケイ酸マグネシウム水和物)は、発泡又は起泡における良好な泡を形成させ、さらにはPETをブレンドしたPBTポリマーマトリックスに高い結晶化度を与え、そして、後々の使用時に高い耐熱変形性を与える。微結晶性タルクの形態のタルク[CAS No.14807-96-6]を使用するのが特に好ましい。タルクは、化学組成Mg3[Si4O10(OH)2]を有する層状のケイ酸塩であって、それは、その変性にしたがって、タルク-1Aとして三斜晶形で結晶するか,又はタルク-2Mとして単斜晶系で結晶する(http://de.wikipedia.org/wiki/Talkum)。使用されるタルクは、たとえば、Imerys Talc Group(Toulouse,France)(Rio Tinto Group)から、Mistron(登録商標)R10の名称で市販されている。
【0069】
本発明におけるプロセスのプロセスステップ(c)及び(d)において好適に使用される冷却流体が、原理的には、ガス又はガス混合物であってもよいとはいうものの、使用される冷却流体が、液体、特に水性媒体たとえば、熱容量が比較的に大きいことが理由で、プロセスステップ(d)において製造される発泡が可能であるポリマーフォーム粒子に高い冷却速度を与えることが可能である水であるということが、一つの有利な構成のケースでありえる。
【0070】
プロセスステップ(d)で製造される、発泡が可能であるポリマーフォーム粒子の望ましい嵩密度に応じて、その冷却流体が、以下のような圧力下に維持される場合もあり得る:
- 低くとも約1.5bar、特に低くとも約2bar、好ましくは低くとも約5bar;
及び/又は
- 高くとも約30bar、特に高くとも約25bar、好ましくは高くとも約20bar。
【0071】
冷却流体の、低くとも約5barの比較的に高い圧力によって、プロセスステップ(d)におけるそれらのペレット化の際の、ポリマーフォーム粒子の発泡又は起泡を抑制することが可能である。その冷却流体が、PBT/PETのブレンド物をベースとする発泡剤含有ポリマーフォーム粒子を、それらのガラス転移温度より低い温度に比較的急速に冷却するので、脱ガスが防止され、発泡剤を高度に含む、発泡が可能であるポリマーフォーム粒子が製造される。それらは、比較的高い嵩密度を有しており、単なる熱処理だけによって起泡させて、極めて低い嵩密度、したがって極めて高い細孔容積を有する発泡させたポリマーフォーム粒子を得ることが可能である。それとは対照的に、冷却流体の圧力を、最大約5barまでの値になるよう調節した場合には、プロセスステップ(d)におけるペレット化で早くも、ポリマーフォーム粒子の、少なくとも部分的な発泡又は起泡がもたらされ、冷却流体のより高い圧力で得られた、部分的に起泡されてはいるが、それでもなおさらに発泡が可能であるポリマーフォーム粒子よりは低い嵩密度が得られる。後者は、その少なくとも部分的に起泡させたポリマーフォーム粒子が、中間的に貯蔵されたり、或いは長時間かけて輸送されたりすることがなく、直接又は迅速に加工される場合の一つの選択肢であることが好ましい。
【0072】
上述の目的のためには、その冷却流体は、以下の温度に保たれることが好ましい:
- 低くとも約0℃、特に低くとも約5℃、好ましくは低くとも約10℃;及び/又は
- 高くとも約90℃、特に高くとも約70℃、好ましくは高くとも約50℃。
【0073】
本発明のそれらに代わるか又は好ましい実施態様で採用される、発泡させたPBTベースのポリマーフォーム粒子を製造するために、プロセスステップ(e)の前に、ペレットを少なくとも1種の発泡剤と接触させることは、オートクレーブの中で加圧下で実施される。この場合、5~60barの範囲の圧力を採用するのが好ましい。2~60時間かけて接触させるのが好ましいが、その接触時間は、ペレットの中の発泡剤の濃度と、それぞれの場合において、そのバッチに応じて望まれるオートクレーブ中での温度とに応じて変わる。空気、窒素、及び二酸化炭素の群からの少なくとも1種の発泡剤、より好ましくは二酸化炭素を採用することが好ましい。
【0074】
ペレットが、発泡剤、特に二酸化炭素を十分に吸収したら、それらをオートクレーブから取り出し、プロセスステップ(e)において、発泡、好ましくは加熱発泡させる。連続式赤外線オーブンの中で発泡させるのが、特に好ましい。発泡の際には、予め発泡剤と接触させておいたペレットが、短時間で輻射を吸収することによって、発泡剤、特に二酸化炭素がPBTを軟化させ、PET-変性ポリマーマトリックスがイースト入りのパン生地のように立ち上がるような温度となる。従来技術においては、特にスチームを使用した場合、数分間を必要とし、多くの場合それに続けてのコンディショニングを必要としたことが、本発明においては、数秒以内に完全にドライな状態で進行する。発泡プロセス、特に連続式赤外線オーブン中での発砲プロセスを通しての発泡の進行速度と、導入されるエネルギー、特に連続式赤外線オーブン中での赤外線源の電力は、PETをブレンドしたPBTペレット及びその使用量に応じて、調節しなければならない。発泡操作の際、特に連続式赤外線オーブンを通す際に、本発明による、PETをブレンドしたPBTペレットは、それらの軟化温度の近くまで加熱され、それによって、組みこまれている発泡剤が、核形成温度において局所的に膨張して、局所的にセルを形成し、それが一緒になってフォーム構造を作り出すことを可能にする。セルの成長は、セルの内部とそのセルを囲んでいる媒体との間の圧力差、生成したセルの中への発泡ガスの拡散、発泡剤の相転移によってもたらされる冷却効果、及びPETがブレンドされているか又はPETで変性されたPBTの、溶融温度に応じて変わる粘弾性的性質、によって決まる。
【0075】
セル成長プロセスは、次の工学士学位論文に、原理が記載されている:A.Braun,「Verfahrensentwicklung von physikalisch geschaeumten Polypropylenplatten fuer den Einsatz als Kernmaterial von Sandwichverbunden」[Process Evolution of Physically Foamed Polypropylene Sheets for Use as Core Material of Sandwich Composites],Montanuniversitaet Leoben,January 2011,chapter 2.5.6。したがって、ポリマーフォームにおけるセルの成長は、もっぱら、溶融物とセルとの間でのガスの交換、及びそのポリマーの粘弾性的性質によって、決まる。ガス交換は、上述の収着と拡散プロセスに起因すると考えられ、粘弾性的性質は、主として、ポリマーの選択及びプロセスにおける温度調節の影響を受ける。ポリマーの溶融物は、セルの壁面において、二軸伸張応力を受ける。そのポリマーの溶融物の溶融強度が低すぎると、セルの壁が破れて開き、その結果隣接するセルが合体する可能性がある。
【0076】
本発明において、セルの成長、したがって均質な起泡に有利なことは、使用したPETによって、低い剪断粘度範囲で、PBTの比較的高い溶融粘度が達成されることである。PETによって達成されるPBTの高い溶融粘度は、個々のセルが合着して、より大きなセルとなることを抑制する。その結果、それら個々のセルが、比較的小さいままで留まり、フォームビーズ(foam bead)の構造が均質となる。
【0077】
起泡の程度は、フォームビーズの中に取り込まれている発泡剤/ガスの量及びプロセスステップ(e)における発泡プロセスを通過するのにかかった時間、特は、連続式赤外線オーブンを通過するのにかかった時間及びオーブンの出力に応じて変わる。発泡操作を通過した後、特に連続式赤外線オーブンを通過した後に、この場合、金型内起泡プロセスにおいて、それらのペレットを、ポリマーフォーム粒子としてさらに加工してもよい。
【0078】
したがって、加熱処理時間及び/又は本発明にしたがって使用される発泡剤の比率を変化させることによって、簡単な方法で、好ましくは400g/Lより大から100g/L未満までの比較的広い範囲内の所望の値に、ポリマーフォーム粒子の所望の嵩密度を設定することが可能になる。PBTをベースとするポリマーフォーム粒子を予備起泡させるための加熱処理は、事実上、任意の所望する方法で実施することができる。予備起泡させるための加熱処理は、相応に温度調節された、水蒸気、空気、水、又はその他の伝熱流体の手段によるか、ポリマーフォーム粒子を電磁波に、好ましくは加熱源の手段により赤外線領域にある電磁波に曝露させるか、又は、マイクロ波又は高周波の照射などにより実施するのが好ましい。
【0079】
言うまでもないことではあるが、この場合、原理的には、プロセスステップ(d)で得られる、PBTをベースとする発泡可能なポリマーフォーム粒子(それらが、まだ実質的に高密度であるか、又はそれらが、冷却流体の圧力設定にしたがって、すでに、少なくとも部分的に発泡又は起泡させられているかに関わらず)を予備起泡させる上述のステージにおいて、周囲圧力又はそうでなければ減圧に比較して、高圧にすることが可能である。しかしながら、プロセスステップ(d)において得られるポリマーフォーム粒子は、先に挙げた理由から、簡単且つ安価な方法、特にほとんど周囲圧力で予備起泡させて、上述の極めて低い嵩密度、すなわち極めて高い細孔容積を達成することができる。
【0080】
本発明との関連においては、PET、及びタルク、及び任意選択により場合によっては、タルク以外の少なくとも1種の添加剤、特に、0.1~5mmの範囲の直径及び0.1~10mmの範囲の長さを有するHostanox(登録商標)P-EPQ、を含むPBTベースのペレットを、発泡剤、特にCO2と、オートクレーブ中、5~100barの範囲の圧力で、1~250時間の範囲の時間をかけて接触させることが好ましい。使用されるペレットが、0.5~2mmの範囲の直径を有していることが好ましい。使用されるペレットが、0.5~3mmの範囲の長さを有していることが好ましい。オートクレーブを、10~70barの範囲の圧力で運転することが好ましい。CO2との接触は、5~50時間の範囲の時間で実施することが好ましい。
【0081】
次に、本発明にしたがって、発泡剤、特にCO2と接触させたそのペレットを、連続式赤外線オーブン(シングルレーンSL連続式赤外線オーブン、Fox Velution GmbH製)に、電源出力が90%の範囲(この場合:約20kW)、連続式赤外線オーブン出口で測定した温度が220~255℃の範囲(本発明との関連においては、基準帯域(reference band)温度を光学的に測定したが、その理由は、オーブンそのものの中で、異なる場所で50℃~950℃の温度が存在しているからである)、移動速度(progression speed)が300~1400mm/sの範囲、好ましくは移動速度、500~800mm/sの範囲で通すようにするのが有用であることが見出された。最後に、それらの粒子を、室温に24時間置いて、安定化させる。
【0082】
先に述べたようにして本発明のプロセスの手段により製造した、発泡が可能であるか及び/又は少なくとも部分的に発泡させた、PETをブレンドしたPBTをベースとするポリマーフォーム粒子は、広い限度の中で様々な嵩密度であることができるが、それらが、次のようであれば、有利な構成にある場合であることができる:
- 少なくとも49質量%、特に少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも75質量%の、ポリマーマトリックスの中のPBTの比率を有し、
- プロセスステップ(d)からの高密度化された(すなわち、いかなる予備起泡も施す前の)状態において、低くとも800g/Lの嵩密度を有し、220℃~260℃の範囲の温度、100秒の時間のあいだ、周囲圧力で起泡させた後に、高くとも約700g/L、好ましくは高くとも400g/L、より好ましくは高くとも200g/L、特に高くとも50g/Lの嵩密度を有する。
【0083】
<粒子フォーム成形物を製造するためのプロセス>
成形機中でポリマーフォーム粒子から粒子フォームの成形物を製造することは、当業者には公知であり、Kunststoffe,12/2010,Carl Hanser Verlag,Munich、p.134~137によれば、基本的には、次の5段のステージが含まれる:
- 金型を閉じるステージ;
- 圧縮空気を使用して、ポリマーフォーム粒子を同時に圧縮して、その金型キャビティを充填するステージ;
- スチームを使用して、そのポリマーフォーム粒子を、軟化させ、発泡させ、及び焼結(sinter)させるステージ;
- 冷却水により、任意選択により場合によっては真空の助けをかりて、冷却及び安定化させるステージ;
- 脱型し、任意選択により場合によっては、寸法を合わせるために(for reasons of trueness to scale)、温度調節されたオーブンで乾燥させるステージ。
【0084】
Kunststoffe,12/2010,p.135で、
図2には、粒子フォーム成形物を製造するための成形機が記載され、そして
図3には、その粒子フォームプロセスの概念図が示されている。ポリマーフォーム粒子を、リザーバーサイロから加圧充填システムの中に吸い上げ、圧縮する。その予備圧縮したポリマーフォーム粒子を、圧縮空気の手段により、インジェクターを通して金型キャビティの中に充填する。ポリマーフォーム粒子の圧縮が、後の成形密度に影響する。典型的には、金型キャビティの中には、10分の数ミリメートルの範囲の直径を有するノズルが存在していて、その機能は、充填及びプロセススチームの導入の際に、確実に揮発分を除去する(devolatilization)ことである。ここで使用されるプロセススチームが、成形物が得られるための焼結を起こし得る程度に、ポリマーフォーム粒子を軟化させる。金型の中の冷却システムが、粒子フォームの成形物の安定化を促進し、それによって、その製品の形状寸法に応じて、約60~180秒の合計サイクルタイム後の、比較的急速な脱型性能が確保される。
【0085】
Kunststoffe,12/2010,p.134~137に記載されているように、数年前までは、粒子フォーム原料物質、たとえば、EPP(発泡ポリプロピレン)及びEPS(発泡ポリスチレン)の、最大5barまでのプロセススチーム圧力、したがって最大で160℃までの最高温度を用いた成形機でのスチームを用いた加工が、従来技術であった。この場合、必要とされる加工温度は、蒸気の圧力によって調節される。比較的高い溶融温度又はガラス転移温度を有するエンジニアリングサーモプラスチック、たとえばE-PBT及びE-PETの加工は、一般に、より高い加工温度を必要とし、それは、標準的な加工装置では達成できない。
【0086】
今日、シャシーの製造において慣用されている、熱可塑性プラスチックを含む自動車部品のための、200~230℃の範囲の高い焼付け温度を用いるカチオン電着塗装は、使用される熱可塑性プラスチックの非常に高い熱安定性を必要とする。D.Schulz,VDWF im Dialog,4/2016,p.3~7によれば、そのような用途には、発泡させたポリブチレンテレフタレート(E-PBT)をベースとする、対応する粒子フォームが適している。E-PBTから作られた部品は、同一の密度のEPPに比較して、約100℃高い熱的な使用限界を有している。耐熱変形性の研究は、この材料から製造した試験片は、200℃においてさえ、30分より長く曝露させても、依然として寸法的に完全に安定であり、かつ形状が安定であること示している。熱安定性がより高いことが理由で、E-PBTを加工するには、10barより高いスチーム圧力が必要である。それにより、これには、工具、機械、及び安全技術の面で、より高いレベルが要求される。
【0087】
PBTをベースとする粒子フォームは、EPP及びEPSをベースとするものよりも、高い密度を有する。このことは、今日までのところ、軽量構造物へのそれらの適用可能性をかなり制限している。この検討課題は、第一には、PETを使用して加工可能領域を拡張することにより、そしてガス、好ましくは窒素、二酸化炭素、又は空気、特に二酸化炭素を用いた高圧下で、一般的に前もって予備起泡させたPBTベースのポリマーフォーム粒子を充填し、さらに次のステップでそれらを起泡させて、それらの密度を下げることによって、今や回避することが可能になった。
【0088】
粒子フォームを製造するために新規に開発されたプロセスプラント(加圧加熱プラント(pressure and temperature plant)、PATプラントとも呼ばれる)により、その圧力タンクにかける圧力及び温度の両方を制御することが可能となった。ポリマー中での拡散速度は、それらのガラス転移温度を超えると顕著に高くなるので、PBTなどのエンジニアリングプラスチックにおいてさえも、圧力を急速に負荷することが可能である。最新式のPATプラントを使用して、0~14barの範囲の圧力及び最高200℃までの温度で、粒子フォームにガスを入れることが可能である。それに加えて、出発物質のペレットに、たとえば導電性のため又は色彩効果のために、液状、粘稠状、又は粉体状の機能性物質を、同時にコーティングしてもよい。圧力負荷パラメーターを最適化することにより、例えば、発泡させた熱可塑性プラスチックの嵩密度をあるレベルに下げて、常法にしたがって起泡させた部品よりも44%も軽量である成形物を製造することが可能だった。本発明にしたがって使用するためのPATプラントは、Teubert Maschinenbau GmbH(Blumberg,Germany)から、Teubert EPP Unimat又はTeubert TVZとして入手可能である。
【0089】
しかしながら、ポリマーフォーム粒子を空気、窒素、又は二酸化炭素で「充満(fill)」することができる速度は、そこに存在している温度条件にかなり左右される。現在まで、工業的に確立された圧力負荷システムは、室温でだけ機能するものだった。より最近のプラントは、圧力タンクの中の負荷圧力及び温度の両方を制御することを可能にしている。熱可塑性プラスチック中での拡散速度は、そのガラス転移温度を超えると顕著に高くなるので、PBTなどのエンジニアリングプラスチックにおいてさえ、急速に圧力をかけることが可能である。
【0090】
追加の金型製造技術と完全にスチームフリーの加工とを組み合わせることによって、PETで変性した、そして好ましくはさらにタルクで変性したPBTと組み合わせた最新の方法は、機能化及び軽量の構造物に関して、完全に新しい展望を開いている。たとえば、局所補強され、そしてグラジエント(傾斜)のある混合原料を用いて、その場(インサイチュー)で、すなわち、プロセス組み込み型の(process-integrated)、金型から出すだけ(straight-from-the-mould)、そして再加工不要(reprocessing-free)な方法で成形物を製造することが可能である。表面は、金型の中に導入した織物、フィルム、及び紙までも含めた構造要素によって、事実上、所望するとおりに構成することができる。金属又はプラスチック要素(包まれていない形態(unencased form)も含む)及び電子部品若しくは光学部品の金型内コーティングが、同様に容易に可能である。
【0091】
プロセスに関連した理由によって、密閉した構造中での、さらなる使用可能性が生まれる。PET変性した、好ましくはさらにタルク変性したPBTを用いて、スチームフリーの方法で「プロセス内で(in-process)」、複数の側面上に不浸透性の外側層を備えたサンドイッチ構造物を製造することが今や可能である。粒子フォーム加工に対するこの革新的なアプローチは、数多くの選択肢及び新規な用途、特に、部分的に機能化された材料の使用による軽量構造物における数多くの選択肢及び新規な用途をもたらす。
【0092】
本発明によって、発泡プロセスにより、特に連続式赤外線オーブンにより、発泡プロセスにより得ることが可能な、その後に安定化されたポリマーフォーム粒子は、次いで、直接、又はただ貯蔵した後で、さらなるステップにおいて加工され、生成物すなわち成形体を与えることができる。金型内で起泡させるためには、本発明にしたがい、温度可変的に(variothermally)温度調節可能な金型が使用される。
【0093】
本発明はさらに、上述したポリマーフォーム粒子に基づく生成物すなわち成形体、又は上述したプロセスにより、それらを温度可変的に温度調節可能な金型に供給することによる得ることが可能なものにも関する。したがって、本発明はまた、エネルギーを注入して上述のプロセスによってポリマーフォーム粒子を予備起泡させ、そして成形の目的で、温度可変的に温度調節可能な金型にそれらを供給することにより得ることが可能な生成物、すなわち成形体にも関する。
【0094】
パイロットスケールでのスチームフリーのフォーム成形により得られる試験片は、熱的に高度にダイナミックな金型(最高30K/秒までの加熱及び冷却速度)を使用して成形される。室温(23±2℃)から最高約190℃まで(技術的には250℃より高い温度も可能)の範囲では、目標とする壁厚にもよるが、1分未満のサイクル時間が達成される。原理的には、サンドイッチ構造物は、本発明による粒子フォーム成形物の特定の実施態様として、常に、接着境界層によって最小重量の硬質のコア物質に結合された2層の高強度かつ剛直な外側層で構成されている。その外側層は、応力下で生じる引張力をその上面で且つ圧縮力をその底面で吸収する一方、そのコアは、剪断力の伝達を受け持つ。それら2枚の外側層の互いからの分離の増大の結果として、剛性及び強度が増大するが、その一方で、本発明によるサンドイッチ構造の重量は、そのコア材料が低密度であることにより、ほんのわずかしか上昇しない。
【0095】
高度にダイナミックな温度可変金型技術の手段による本発明にしたがうスチームフリーの粒子フォームの加工において、高度にダイナミックな温度可変金型キャビティが使用される。その金型キャビティの高精度の加熱及び冷却のおかげで、ポリマーフォーム粒子を、金型キャビティの壁面からの輻射熱及び熱伝導によって、それらが表面で融解してそれによって融着するが、コアの中までは融解しないように加熱することが可能である。使用される温度調節ユニット及び温度調節媒体に応じて、160℃よりも十分に高い加工温度でさえ可能であり、本発明によれば、実際のところ、本発明において使用されるPETがブレンドされたPBTの加工のための温度を、200℃よりもさらに高くすることもできる。
【0096】
高度にダイナミックな温度可変金型技術を用いるスチームフリーの粒子フォーム加工は、電子部品/センサーに対して必要とされる加水分解を受けやすい材料/成分の加工、或いは、フィルム又は繊維複合材料の外側層によって完全に包まれた粒子フォームコアの製造をさらに可能にする。
【0097】
PETと組み合わせて、そしてさらに、好ましくはタルクの存在下における、PBTの本発明による使用によって、これまで、従来の粒子フォームには閉ざされていた使用分野を開くことが、今や可能である。かってないほどのコンパクトなデザインのエンジンと、それに伴う熱の発生のために、本発明によれば、PET変性したE-PBT(Eは、発泡させたことを表す)は、エンジン空間の断熱のための好適な候補である。同様にして、本発明によってPET変性されたE-PBTを、製造の極めて初期のステージで、シャシー要素の中に導入し、次いでそれを、複合工程の形の(in a composite)塗装プロセス、特にはカチオン電着浴及び比較的高温の(最高約200℃で、30分間)乾燥トンネルを通すことが、今や可能である。
【0098】
大容量又は厚い壁の粒子フォーム部品を製造するための、高度にダイナミックな温度可変金型技術の手段による、スチームフリーの粒子フォーム加工のために使用されるプロセス及び成形物は、独国特許出願公開第10 2018 007 301A1号明細書、欧州特許出願公開第3 560 674A1号明細書、及び欧州特許出願公開第3 560 673A1号明細書に記載されている。粒子フォーム物質又は粒子フォーム粒子を結合させるためにここで使用されている手段は、粒子フォーム物質又は粒子フォーム物質の粒子を、熱エネルギー(加熱)に、スチームフリーで曝露させる方法である。熱エネルギーは、それらの粒子フォーム物質又は粒子フォーム物質の粒子の少なくとも一部に、接合/融解/焼結(sintering)をもたらすことができる。原理的には、エネルギーの導入及びエネルギーの伝達では、伝導モード及び対流モードのいずれもが有用である。熱エネルギーは、たとえば金型の、少なくとも一つの温度調節可能又は温度調節された金型の壁部分から、エネルギー伝達によって、粒子フォーム物質又は粒子フォーム物質の粒子の中に導入することができる。金型内起泡プロセスにおいて、粒子フォーム物質の均質な溶融を達成するためには、温度可変的に温度調節可能な金型からの熱を、ポリマーフォーム成形物の中心にまで浸透させなければならない。
【0099】
本発明はさらに、好ましくは、ポリブチレンテレフタレートの溶融範囲を、225℃±2℃から223~255℃の範囲にまで拡大させることによって、ポリマーフォーム粒子を製造する際の、マトリックスポリマーとしてのポリブチレンテレフタレートの加工可能領域を拡張するための、ポリエチレンテレフタレートの使用にも関するが、ここで、100質量部のポリブチレンテレフタレートあたり、25~320質量部のポリエチレンテレフタレート、0.1~20質量部のタルク、及び0.01~20質量部のテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4-ビフェニルジホスフォナイト(Hostanox(登録商標)P-EPQ)が使用される。
【0100】
本発明による使用は、好ましくは、高度にダイナミックな温度可変金型技術の手段によって、スチームフリーの粒子フォーム加工における加工可能領域を拡張して、粒子フォーム製品又は成形物を得ることに関する。より好ましくは、本発明によるこの使用は、加圧のためのフラッシュフェース(flash face)を有する温度可変金型の中で実施される。
【0101】
「温度可変(variothermal)」という言葉は、「vario」(ラテン語:異なる、変化する、変動する)と、「thermal」(加熱の(warm))とから構成されている。「温度可変」という用語は、射出成形分野においては、「サイクルの過程を通して、協調的に(concerted manner)金型の温度を制御する方法」という意味合いで、比較的に頻繁に使用されている。高度にダイナミックな温度可変金型技術の原理は、温度可変な金型温度調節方法であって、そこでは、金型キャビティを、注入した後でもポリマーを溶融状態に保持するような温度に予め調整し、これが、金型の中での表面の微細さの正確なイメージ及び縞模様の無い表面を達成する。ほぼ輪郭の(near-contour)キャビティ表面を温度調節する、最適化された温度調節のために、その温度可変プロセスでは、慣用されているスチーム操作のプロセスよりも、ほんの取るに足らないくらいの、より長い冷却時間しか必要としない。さらなる利点は、最終製品において目に見えるようなウェルドラインが無いことと、部品の反りがかなり低減されることである。この技術は射出成形プロセスにおいて既に使用されている。利点は、部品の表面のより高い品質、極めて良好な輪郭精度(contour trueness)、及び極めて小さなミクロ構造物及びナノ構造物の成形が可能なことである。この点に関しては、次の文献を参照されたい:German Federal Environmental Foundationの支援による開発プロジェクト第32539/01、M.Feurer,A.Ungerer,「Die Entwicklung einer Variotherm-Technologie zur Halbierung des Energieverbrauchs in der EPP-Formteilherstellung」[The Development of a Variothermal Technology for Halving the Energy Consumption in EPP Moulding Production]、from April 2017。EPPが発泡ポリプロピレンを意味しているものの、この参考文献の内容を完全に、本明細書に援用する。
【0102】
本発明の使用は、構造用フォーム及び/又は断熱用フォームの製造に役立つが、一つの実施態様においては、構造的発泡は、サンドイッチ構造物に関連する。本発明による構造用フォーム又は断熱用フォームは、好ましくは、高性能の軽量構造物において使用される。本発明において得ることが可能な、200~800kg/m3の範囲の典型的な密度を有する発泡させたPBT粒子フォームからなるPBTベースの製品は、極端に軽量である。特にその理由から、それらは、良好な特別の機械的性質、断熱性、及び並外れた軽量構造の可能性を特徴としている。
【0103】
構造用フォーム及び/又は断熱用フォームのための好ましい使用分野としては、以下のものが挙げられる:航空宇宙、防衛技術、風力発電ローターブレード、自動車製造、又は造船。
【実施例】
【0104】
<ポリマーフォーム粒子の製造>
追加でタルク及びHostanox(登録商標)P-EPQを含み、そして0.5~2mmの範囲の粒子直径及び0.5~3mmの範囲の長さを有する、本発明によるPET変性したPBTペレット物質にCO2を含ませることを、オートクレーブ中、10~70barの圧力で5~50時間かけて実施した。次に、そのCO2を含ませたPBTペレットを、90%の電源出力(この場合:約20kW)を用い、オーブン出口で測定した温度が220~255℃の範囲(単純に基準ゾーン温度を光学的に測定した-そのオーブン中では、異なる位置で、50℃~950℃の広範囲の温度が存在した)である連続式赤外線オーブン(シングルレーンのSL連続式赤外線オーブン、Fox Velution GmbH製)に、500~800mm/sの速度で導入した。最後に、それらの粒子を、室温において24時間かけて安定化させた。
【0105】
本発明との関連においては、その試験は、驚くべきことに、PBT中でPETを使用することによって、核形成ポイントで発生するポリマーフォームのセルの成長速度が抑制されるということをさらに示した。このことは、より多くの核形成ポイントにおいて、ポリマーフォームのセルをもたらす。このことは、次に、小さなセルのより均質なセル構造を有するポリマーフォーム粒子をもたらす。
【0106】
本発明の、PBT中でのPETの使用は、加えて、溶融粘度を増大させる。特に、50~200Pa・sの範囲の低い剪断速度において、セルの成長が起きる。連続式赤外線オーブン中での発砲で、25%を超えるPET含量を用いると、そのPET変性されたPBTの溶融粘度は、標準のPBTと比較して、109~112Pa・sから200Pa・sより高い粘度にまで上昇する。
【0107】
表1の中のレオロジー的データは、PBT中でのPETの使用が、低い剪断速度範囲において、かなり高い溶融粘度をもたらすことを示しており、このことは、特に、セルの発泡、ひいてはセルの成長において必須である。
【0108】
本発明の、PBT中でのPETの使用は、他方では、発泡前のペレットの密度を、1.319g/cm3から1.346g/cm3までの、ほんのわずかな増大しかもたらさず、約2%の違いは無視できる。
【0109】
<金型内発泡>
ポリマーフォーム粒子を、温度可変的に加熱可能な金型中での金型内起泡プロセスで225~255℃の範囲の温度で成形して、例示成形物として、25×25×10mmの寸法を有する立方体を得た。その金型の加熱速度は、最高8K/秒までであり、その温度での保持時間は、5~15分だった。成形後、その金型を、最高8K/秒までの冷却速度で室温まで冷却し、成形物を金型から分離して、取り出した。室温において24時間後の、その立方体の密度は、392kg/m3だった。
【0110】
驚くべきことに、PBTベースのポリマーフォーム粒子中でのPETの本発明による使用、特にタルク及び極めて特に好ましくはさらにHostanox(登録商標)P-EPQと組み合わせた使用は、温度可変的に加熱可能な金型中で、225~255℃の範囲の温度において、スチームフリーの方式で実施した場合、金型内発泡における加工可能領域の4K未満(<4K)から30K未満(<30K)への拡張をもたらした。
【0111】
<フィード原料>
ポリブチレンテレフタレート(PBT):Pocan(登録商標)B1300、Lanxess Deutschland GmbH製;
ポリエチレンテレフタレート(PET):Lighter C88、Equipolymers s.r.l.(Amsterdam,the Netherlands)製;
タルク:Mistron(登録商標)R10、Imerys Talc Group(Toulouse,France)製;
Hostanox(登録商標)P-EPQ、BASF SE(Ludwigshafen)製。
【0112】
【0113】