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特許7460729純水製造方法、純水製造装置及び超純水製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】純水製造方法、純水製造装置及び超純水製造システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240326BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240326BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20240326BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240326BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20240326BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/02 500
B01D61/44 520
B01D61/58
B01D69/02
B01D71/56
C02F1/44 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022171509
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢吾
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-061464(JP,A)
【文献】特開2018-030065(JP,A)
【文献】特開平09-234349(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003831(WO,A1)
【文献】米国特許第05997745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/42-1/48、1/58-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を、少なくとも3段の、運転圧力が0.4MPa~1.1MPaの超低圧型の逆浸透膜装置で処理して原水中のホウ素を除去する純水製造方法であって、
前記3段の逆浸透膜装置に備えられる逆浸透膜は、いずれも、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜であり、
前記原水が、炭酸を1mg/L以上100mg/L以下、ホウ素を150μg/L以下含有し、
前記原水を第1段目の逆浸透膜装置で処理して第1の透過水を得る工程と、
前記第1の透過水をアルカリ性に調整してアルカリ性の被処理水を得る工程と、
前記アルカリ性の被処理水を第2段目の逆浸透膜装置で処理して第2の透過水を得る工程と、
前記第2の透過水を第3段目の逆浸透膜装置で処理して、ホウ素濃度が3μg/L以上20μg/L以下、導電率が、0.3μS/cm以上40μS/cm以下の純水を得る工程と、
を有することを特徴とする、純水製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ性の被処理水のpHは、9.0以上10.0以下である、請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
さらに、前記第2の透過水に酸を添加して第2の被処理水を得る工程を有し、前記第2の被処理水を第3段目の逆浸透膜装置で処理する請求項1又は2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記原水が塩素を含有し、
前記第2の被処理水を得る工程において、第2の透過水に、スルファミン酸が添加され、
前記第3段目の逆浸透膜装置の濃縮水が、原水に混合されて前記第1段目の逆浸透膜装置で処理される、請求項3に記載の純水製造方法。
【請求項5】
前記第2の被処理水のpHは、5.5以上7.5以下である、請求項3に記載の純水製造方法。
【請求項6】
前記第3段目の逆浸透膜装置の透過水として得られた前記純水をさらに、電気式脱イオン装置で処理する、請求項1又は2に記載の純水製造方法。
【請求項7】
直列に接続された第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置を有し、ホウ素を除去するための純水製造装置であって、
前記第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置は、運転圧力が0.4MPa~1.1MPaの超低圧型の逆浸透膜装置であり、
前記第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置に備えられる逆浸透膜は、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜であり、
炭酸を1mg/L以上100mg/L以下、ホウ素を150μg/L以下含有する原水を第1の逆浸透膜装置に供給する原水供給機構と、
前記第1の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の逆浸透膜装置に送る第1の供給管と、
前記第1の供給管の経路に設けられ、前記第1の供給管内を通流する被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構と、
前記第2の逆浸透膜装置の透過水を前記第3の逆浸透膜装置に送る第2の供給管と、を有し、前記第3の逆浸透膜装置の透過水として、ホウ素濃度が3μg/L以上20μg/L以下、導電率が0.3μS/cm以上40μS/cm以下の純水を得ることを特徴とする、純水製造装置。
【請求項8】
前記第3の逆浸透膜装置の後段に電気式脱イオン装置を有する、請求項7に記載の純水製造装置。
【請求項9】
一次純水装置と二次純水装置をこの順に備える超純水製造システムであって、
前記一次純水装置は、請求項7又は8に記載の純水製造装置と、前記純水製造装置の後段に配置される電気式脱イオン装置とを備え、
前記二次純水装置は、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置をこの順に備え、
ホウ素濃度が0.1μg/L以下の超純水を製造する、
超純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水中に含まれるホウ素を除去して、ホウ素濃度を著しく低減することのできる、純水製造方法及び純水製造装置、並びにこれらを用いて高水質の超純水を得ることのできる超純水製造システムに関する。
【0002】
ホウ素を含有する原水を処理して純水を製造する方法として、原水にアルカリを添加してpHを9.2以上に調整したのち、逆浸透膜処理を行う純水製造方法が知られている。この方法では、後段に薬品再生を行わない非再生型イオン交換装置が配置されており、この非再生型イオン交換装置の負荷を低減するために、ホウ素の除去された透過水に酸を添加し、さらに、正電荷逆浸透膜装置という特殊な逆浸透膜を用いて逆浸透膜処理することで、処理水の比抵抗を例えば、5.0MΩ・cmまで高めることも行われている。また、アルカリ性の被処理水を処理する逆浸透膜装置では、硬度によるスケール閉塞が進行しやいため、逆浸透膜装置の前段に、硬度除去機構や、脱炭酸機能の高い脱気装置を設けることで、スケール閉塞の抑制が図られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【0003】
また、酸を用いた脱炭酸を行わずに、膜脱気装置と3段の逆浸透膜装置を組み合わせて、原水にスケール防止剤とアルカリを添加して第1段目の逆浸透膜分離装置に通水し、第3段目の逆浸透膜分離装置の逆浸透膜として、低塩類濃度域における塩類阻止率の高い逆浸透膜を使用することで、15MΩ・cmという高純度の純水を製造する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-128921号
【文献】特開平11-128922号
【文献】特開2000-061465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の純水製造方法では、逆浸透膜の後段側でのイオン除去の負荷は軽減されるものの、前段側の複数の逆浸透膜へのイオン除去負荷が著しく高い。例えば、酸性の被処理水を処理する正電荷逆浸透膜では、シリカによるスケールや微粒子の付着が生じやすいため、イオン除去負荷の高いほど、逆洗や洗浄、洗浄設備の設置、膜交換が頻回に行われることとなり、その都度装置を停止せざるを得ず、純水製造効率が低下するという問題があった。また、前段側に硬度除去機構や脱気装置、膜脱気装置を配置するため、装置の規模が大きくなり、設置のための広大な敷地が必要であるという問題もある。さらに、脱気やイオン成分除去ために添加される酸や、頻回に行われる逆浸透膜装置の洗浄・逆洗のための洗浄剤などの薬品使用量が多いので、環境負荷が高いという問題があった。
【0006】
また、3段の逆浸透膜を用いた上記従来の方法で製造された純水は、そのまま半導体や液晶等の製造に用いるには不十分な水質である。そのため、半導体や液晶等の製造に使用可能な水質を得るために、後段で、例えば、混床式イオン交換樹脂塔や電気式脱イオン装置等により、さらなる脱イオン処理を行う必要がある。これら脱イオン処理を行う装置においては、装置の仕様上の要求水質を満たしていれば、処理を行うことができるところ、当該装置の前段の処理においては、従来の方法で得られるような高い水質は必須ではないため、前段の処理にかかる設備が過剰で無駄であるという問題もある。例えば、3段逆浸透膜の前段に炭酸除去のために脱気装置(脱気塔)を設けると、脱気塔の処理水を後段に供給するためのポンプが必須となるので、さらに装置が大きくなってしまう。また、高圧型の逆浸透膜を用いることで水質を向上させることも可能であるが、この場合、高圧での運転が必要であり、消費電力が高いことが問題である。
【0007】
本発明においては、混床式イオン交換樹脂装置や電気式脱イオン装置等の再生式の脱イオン装置に供給可能な純水を、超低圧型の逆浸透膜装置を用いて製造することのできる、純水製造方法及び純水製造装置を提供することを目的とし、これにより、ホウ素の除去された純水の製造効率の向上を図るものである。
【0008】
以上を要するに、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、前段側の逆浸透膜装置の処理負荷を軽減することで、薬剤使用量を低減することができ、効率よくホウ素の除去された純水を製造することのできる、純水製造方法、純水製造装置及びこれを用いた超純水製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の純水製造方法は、原水を、少なくとも3段の超低圧型の逆浸透膜装置で処理して原水中のホウ素を除去する純水製造方法であって、前記3段の逆浸透膜装置に備えられる逆浸透膜は、いずれも、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜であり、前記原水が、炭酸を1mg/L以上100mg/L以下、ホウ素を150μg/L以下含有し、前記原水を第1段目の逆浸透膜装置で処理して第1の透過水を得る工程と、前記第1の透過水をアルカリ性に調整してアルカリ性の被処理水を得る工程と、前記アルカリ性の被処理水を第2段目の逆浸透膜装置で処理して第2の透過水を得る工程と、前記第2の透過水を第3段目の逆浸透膜装置で処理して、ホウ素濃度が3μg/L以上20μg/L以下、導電率が、0.3μS/cm以上40μS/cm以下の純水を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の純水製造方法において、アルカリ性の被処理水のpHは、9.0以上10.0以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の純水製造方法は、さらに、前記第2の透過水に酸を添加して第2の被処理水を得る工程を有し、前記第2の被処理水を第3段目の逆浸透膜装置で処理することが好ましい。
【0012】
本発明の純水製造方法において、前記原水が塩素を含有し、前記第2の被処理水を得る工程において、第2の透過水に、スルファミン酸が添加され、前記第3段目の逆浸透膜装置の濃縮水が、原水に混合されて前記第1の逆浸透膜装置で処理されることが好ましい。
【0013】
本発明の純水製造方法において、前記第2の被処理水のpHは、5.5以上7.5以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の純水製造方法において、前記第3段目の逆浸透膜装置の透過水として得られた前記純水をさらに、電気式脱イオン装置で処理することが好ましい。
【0015】
本発明の純水製造装置は、直列に接続された第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置を有し、ホウ素を除去するための純水製造装置であって、前記第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置は超低圧型の逆浸透膜装置であり、前記第1の逆浸透膜装置、第2の逆浸透膜装置及び第3の逆浸透膜装置に備えられる逆浸透膜は、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜であり、炭酸を1mg/L以上100mg/L以下、ホウ素を150μg/L以下含有する原水を第1の逆浸透膜装置に供給する原水供給機構と、前記第1の逆浸透膜装置の透過水を前記第2の逆浸透膜装置に送る第1の供給管と、前記第1の供給管の経路に設けられ、前記第1の供給管内を通流する被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構と、前記第2の逆浸透膜装置の透過水を前記第3の逆浸透膜装置に送る第2の供給管と、を有し、前記第3の逆浸透膜装置の透過水として、ホウ素濃度が3μg/L以上20μg/L以下、導電率が0.3μS/cm以上40μS/cm以下の純水を得ることを特徴とする。
【0016】
本発明の純水製造装置は、前記第3の逆浸透膜装置の後段に電気式脱イオン装置を有することが好ましい。
【0017】
本発明の超純水製造システムは、一次純水装置と二次純水装置をこの順に備える超純水製造システムであって、前記一次純水装置は、請求項7又は8に記載の純水製造装置と、前記純水製造装置の後段に配置される電気式脱イオン装置とを備え、前記二次純水装置は、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置をこの順に備え、ホウ素濃度が0.1μg/L以下の超純水を製造する。
なお、本明細書において「~」の符号は、符号の左の値以上右の値以下の数値範囲を表す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の純水製造方法及び純水製造装置によれば、前段側で3段の逆浸透膜装置を用いながら、これら前段側の逆浸透膜装置における処理負荷を軽減することで、薬剤使用量を低減することができ、効率よくホウ素濃度の除去された純水を製造することができる。
本発明の超純水製造システムによれば、前段側で3段の逆浸透膜装置を用いる純水製造装置における薬剤使用量を低減することができるので、効率よく高水質の超純水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の純水製造方法を概略的に示すフロー図である。
図2図1に示される純水製造方法で得られた純水をさらに処理する純水製造方法を概略的に示すフロー図である。
図3】変形例の純水製造方法を概略的に示すフロー図である。
図4】実施形態の純水製造システムを模式的に示すブロック図である。
図5】他の実施形態の純水製造システムを模式的に示すブロック図である。
図6】実施形態の超純水製造システムを模式的に示すブロック図である。
図7】実施例で用いた純水製造システムを模式的に示すブロック図である。
図8】実施例と比較例の方法における、各段の逆浸透膜装置の供給水及び処理水中の炭酸濃度を示すグラフである。
図9】実施例と比較例の方法における、各段の逆浸透膜装置の供給水及び処理水中のホウ素濃度を示すグラフである。
図10】実施例と比較例の方法における、各段の逆浸透膜装置の供給水及び処理水中の導電率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の純水製造方法100を概略的に示すフロー図である。図1に示す純水製造方法100においては、原水が、少なくとも3段の超低圧型の逆浸透膜装置で処理される。純水製造方法100は、例えば、電気式脱イオン装置や、再生式イオン交換樹脂装置に供給される純水の製造に適している。
【0021】
純水製造方法100は、原水を第1段目の逆浸透膜装置で処理して透過水W10(第1の透過水)を得る逆浸透膜処理工程101と、透過水W10をアルカリ性に調整してアルカリ性の被処理水W11を得るアルカリ調整工程102と、アルカリ性の被処理水W11を第2段目の逆浸透膜装置で処理して透過水W20(第2の透過水)を得る逆浸透膜処理工程103と、透過水W20を被処理水として第3段目の逆浸透膜処理を施し、透過水W30を得る逆浸透膜処理工程104を有している。透過水W30が、純水製造方法100で製造される純水である。
【0022】
本実施形態の純水製造方法100で用いられる原水は、例えば、市水、井水、工業用水等である。また、原水は、超純水の使用場所で使用され、回収され、その後必要に応じて薬品除去処理等の施された使用済み回収水であってもよい。逆浸透膜処理工程101に供される原水(又は後述する前処理水)は、炭酸を1mg/L~100mg/L、ホウ素を150μg/L以下含有する。原水中のホウ素濃度は、好ましくは5μg/L以上であり、この範囲であると本発明の効果が顕著に得やすい。また、原水は、例えば、カルシウム、マグネシウム等の硬度成分を、炭酸カルシウム換算の合計で10mg/L~300mg/L含んでいてもよい。また、原水は、例えば、シリカ(Si)を1mg/L~50mg/L程度、塩素をCl換算で、0.1mg/L~0.6mg/L程度、含んでいてもよい。原水のpHは、例えば、5.0~7.5程度である。なお、炭酸は、二酸化炭素、炭酸水素イオン及び炭酸イオンを含み、炭酸濃度は、全炭酸(CO+HCO +CO 2-)濃度をCO濃度に換算した値である。
【0023】
逆浸透膜処理工程101に供される原水に代えて、または、原水に加えて、純水製造方法100で使用される前に予め、原水が前処理された前処理水を用いてもよい。前処理としては、例えば、凝集沈殿処理、加圧浮上処理、砂ろ過処理、精密ろ過処理であり、これらによって原水中の、懸濁物質やコロイダル物質等の濁質分が除去される。前処理において、活性炭処理を施してもよく、これにより水中の塩素が除去される。また、前処理において、熱交換器によって水温が、15℃~30℃の範囲に調節されていてもよい。
【0024】
純水製造方法100で用いられる3段の逆浸透膜装置のすべてが超低圧型の逆浸透膜装置である。超低圧型の逆浸透膜は、例えば、運転圧力がそれぞれ、0.4MPa~1.1MPaであり、好ましくは0.6MPa~0.7MPaである。なお、逆浸透膜装置の運転圧力は、各逆浸透膜の製造時の設計圧力であり、実際には、上記範囲以外の圧力で運転されることもある。
【0025】
純水製造方法100においては、第1~第3の逆浸透膜装置にそれぞれ、好ましくは、0.4MPa~1.1MPa、より好ましくは0.6MPa~0.7MPaの給水圧で被処理水が供給されるように、第1段目の逆浸透膜装置への供給圧が調整される。給水圧は、逆浸透膜装置の供給側の圧力(供給水圧と濃縮水圧の平均)から透過水圧力を減じた差圧で表される。逆浸透膜処理工程101においては、原水は、逆浸透膜処理されて、原水中のカルシウム、マグネシウム等の硬度成分が除去される。第1段目の逆浸透膜装置の濃縮水は系外に排出され、透過水W10は後段に送られる。逆浸透膜処理工程101における硬度成分の除去率は99%~99.9%を得ることができる。透過水W10の水質は、例えば、カルシウム、マグネシウム等の硬度成分が、炭酸カルシウム換算の合計で0.1mg/L~3mg/Lを得ることができる。また、透過水W10の水質は、例えば、炭酸濃度が、0.5mg/L~50mg/L、ホウ素濃度が3μg/L~120μg/L、導電率が、2μS/cm~10μS/cmである。
【0026】
アルカリ調整工程102では、逆浸透膜処理工程101で得られた透過水W10をアルカリ性に調整して、アルカリ性の被処理水W11を得る。例えば、アルカリ調整工程102において、透過水10に、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液が添加されて、被処理水W11が生成される。被処理水W11のpHは、好ましくは9.0~10.0であり、導電率は、好ましくは10μS/cm~50μS/cmである。また、被処理水W11の炭酸濃度及びホウ素濃度は、上記透過水10と同様である。被処理水W11のpHを9.0以上にすることで、続く逆浸透膜処理工程103におけるホウ素の除去率を向上させることができる。また、被処理水W11のpHを10.0以下にすることで、薬品使用量を抑えつつ、純水製造方法100においてイオン成分を十分に除去することができる。また、被処理水W11のpHを10.0以下にすることで、薬品(アルカリ)使用量を低減できるので、後段へのナトリウムリーク(透過水W20中へのナトリウムの漏れ出し)を低減することができる。
【0027】
逆浸透膜処理工程103においては、被処理水W11が、第2段目の逆浸透膜装置に供給され、逆浸透膜処理される。第2段目の逆浸透膜装置の濃縮水は系外に排出されるか、第1段目の逆浸透膜装置の前段側に戻される。第2段目の逆浸透膜装置の透過水W20は後段に送られる。
【0028】
逆浸透膜処理工程103においては、上述した通り、アルカリ性に調整された被処理水が処理されるため、ホウ素の除去率を向上させることができ、逆浸透膜処理工程103におけるホウ素の除去率は50%~90%を達成することができる。また、逆浸透膜処理工程103においては、炭酸の除去率も向上することができ、炭酸の除去率は、95%~98%を達成することができる。透過水W20の水質は、例えば、炭酸濃度が、0.025mg/L~2.5mg/L、ホウ素濃度が3μg/L~40μg/L、導電率が、1μS/cm~40μS/cm、pHは8.5~10程度である。なお、ホウ素の除去率は、[1-(透過水W20中のホウ素濃度/被処理水W11中のホウ素濃度)]×100(%)で算出される値である。炭酸除去率は、[1-(透過水W20中の炭酸濃度/被処理水W11中の炭酸濃度)]×100(%)で算出される値である。
【0029】
逆浸透膜処理工程104においては、上記の通り、ホウ素及び炭酸の除去された透過水W20が被処理水として、第3段目の逆浸透膜装置に供給され、逆浸透膜処理される。第3段目の逆浸透膜装置の濃縮水は系外に排出されるか、第1段目の逆浸透膜装置の前段側に戻される。第3段目の逆浸透膜装置の透過水W30は純水として後段に送られて処理された後、または、そのまま、使用場所(POU)に供給される。
【0030】
逆浸透膜処理工程104においては、被処理水(透過水W20)中のイオン成分、例えば、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、重炭酸イオン等のアニオン成分や、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のカチオン成分、ホウ素、シリカ等の弱電解質が除去される。逆浸透膜処理工程104で得られる透過水(純水)W30の水質は、ホウ素濃度が3μg/L~20μg/L、好ましくは5μg/L~10μg/Lであり、炭酸濃度が例えば、0.005mg/L~0.5mg/L、導電率が、0.3μS/cm~40μS/cm、好ましくは1μS/cm~20μS/cm、より好ましくは1μS/cm~10μS/cmである。
【0031】
上記水質の純水を得る点で、3段の逆浸透膜装置における水回収率は、逆浸透膜処理工程101が50%~80%、逆浸透膜工程102が70%~90%、逆浸透膜工程104が80%~95%であることが好ましい。
【0032】
また、3段の逆浸透膜装置(工程101、102、104)を通じた総ホウ素除去率は、40%~95%を得ることができる。
【0033】
以上では、逆浸透膜処理を3段のみ行う方法について説明したが、逆浸透膜処理は4段以上であってもよい。この場合、第1段目の逆浸透膜装置の上流側でさらに逆浸透膜処理を行う方法、第1段目と第2段目の逆浸透膜装置の間でさらに逆浸透膜処理を行う方法、第2段目と第3段目の逆浸透膜装置の間でさらに逆浸透膜処理を行う方法、第3段目の逆浸透膜装置の下流側でさらに逆浸透膜処理を行う方法、あるいはこれらの任意の組み合わせの方法を採用することができる。追加で行う逆浸透膜処理では、超低圧型、低圧型、高圧型の逆浸透膜装置のいずれを使用してもよい。中でも、第2段目と第3段目の逆浸透膜装置の間でさらに、超低圧型で逆浸透膜処理を行う方法が好ましく、この方法によってさらなるホウ素濃度の低減を図ることができる。
【0034】
なお、低圧型の逆浸透膜は、例えば、運転圧力が0.8MPaを超え2.5MPa未満であり、好ましくは1MPa~1.6MPaである。低圧型の逆浸透膜は、例えば、運転圧力が0.8MPaを超え2.5MPa未満である。高圧型の逆浸透膜は、例えば、運転圧力が2.5MPaを超え8MPa以下である。なお、上記超低圧型、低圧型、高圧型の逆浸透膜装置の運転圧力は、各逆浸透膜の製造時の設計圧力であり、実際には、上記範囲以外の圧力で運転されることもある。
【0035】
以上で説明した実施形態の純水製造方法100によれば、第2段目の逆浸透膜装置で行われる逆浸透膜処理工程103において、優れた炭酸除去率が達成されるため、前段側での硬度除去機構や炭酸除去のための脱気装置を省略することができる。そのため、薬剤の使用量が削減されるとともに、装置を簡素化できるので、低コストで効率的に純水を製造することができる。さらに、3段の逆浸透膜処理工程における給水圧を、上記した通り超低圧に設定すれば、給水ポンプの台数や出力を低減することができるので、さらなる装置の簡素化、純水製造コストの低減、製造効率の向上につながる。
【0036】
次に、透過水W30の好ましい処理方法について説明する。図2は、実施形態の純水製造方法110を概略的に示すフロー図である。純水製造方法110は、透過水W30を処理してさらに高純度の純水を製造する方法の一例である。純水製造方法110は、透過水W30を電気式脱イオン装置で処理する電気式脱イオン処理工程111と、電気式脱イオン処理工程111で得られる脱塩水W40を被処理水として紫外線酸化処理する紫外線酸化処理工程112と、紫外線酸化処理工程112の処理水中のイオン成分を除去する非再生型イオン交換(Primary/Polisher)処理工程113を備えている。
【0037】
電気式脱イオン処理工程111では、透過水W30が電気式脱イオン装置(EDI)に供給されて、透過水W30中のイオン成分が除去される。電気式脱イオン装置は、例えば、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜によって仕切られた脱塩室と、除去されたイオン成分を含む濃縮水が流入する濃縮室とを交互に有している。電気式脱イオン装置はさらに、脱塩室内に充填された陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合体と、直流電圧を印加するための電極を有している。
【0038】
電気式脱イオン装置内では、電極に直流電流が印加された状態で、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂に被処理水が通水されることで、被処理水中のイオン成分がイオン交換樹脂に吸着される。吸着されたイオン成分は電気泳動によってイオン交換膜面まで泳動し、イオン交換膜において電気透析されて濃縮室に移行され、濃縮水中に排出される。脱塩室内では、水の解離反応が進行し、HとOHが生成することで、脱塩室内のイオン交換樹脂が連続再生される。脱塩室に収集された脱塩水W40は後段に送られ、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0039】
電気式脱イオン処理工程111における処理条件としては、脱塩室における電流密度が0.2A/dm~1.0A/dmであることが好ましく、これにより、脱塩室内のイオン交換樹脂の再生効率を向上させて、イオン除去効率を向上させることができる。脱塩室の電流密度は、電気式脱イオン装置の陽極と陰極の間の電圧によって調整することができる。また、電気式脱イオン処理工程で得られる脱塩水の水質は、例えば、抵抗率が、15MΩ・cm~18MΩ・cmである。
【0040】
電気式脱イオン処理工程111において用いられる電気式脱イオン装置(EDI)としては、型式IP―VNX―MAX等のVNXシリーズ(EVOQUA社製)、型式SUEZMK3-27EU等のE-Cellシリーズ(SUEZ社製)、型式UX5015等のMDIシリーズ(ECORBIT社製)が挙げられる。
【0041】
本実施形態の純水製造方法110では、純水製造方法100で得られる純水の水質が、電気式脱イオン処理工程111の受け入れ可能な水質を得られるため、電気式脱イオン処理工程111における脱イオン処理を適切に行うことができる。電気式脱イオン処理工程111の受け入れ可能な水質として具体的には、例えば、ホウ素濃度が3μg/L~20μg/L、導電率が0.3μS/cm~40μS/cm、炭酸濃度が0.001mg/L~3mg/Lである。
【0042】
続いて、電気式脱イオン処理工程111で得られた脱塩水W40は、紫外線酸化処理工程112において紫外線酸化装置に供給される。紫外線酸化装置は、例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射可能な紫外線ランプを有し、この紫外線ランプから紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中の全有機炭素成分(TOC)を酸化分解する。紫外線酸化装置に用いられる紫外線ランプは、185nm付近の波長の紫外線を発生するランプを使用することができ、185nm付近の波長の紫外線とともに254nm付近の波長の紫外線を放射する低圧水銀ランプを使用してもよい。紫外線酸化装置の放射する紫外線により、水が分解されてOHラジカルが生成し、このOHラジカルによって被処理水(前述の脱塩水W40)中の有機物が有機酸に酸化分解される。紫外線酸化処理工程112における紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更することができる。
【0043】
紫外線酸化処理工程112で生成された処理水W41は続いて、非再生型イオン交換樹脂処理工程113において、非再生型イオン交換樹脂装置(Primary/Polisher)に供給される。非再生型イオン交換樹脂装置は、樹脂塔内に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が混合され、充填されて成り、処理水W41中のイオン成分を除去する。ここで除去されるイオン成分は、主に、紫外線酸化工程112で有機物が分解されて生成する微量の有機酸などである。
【0044】
非再生型イオン交換樹脂処理工程113を経て生成される処理水W42は、その抵抗率は、18MΩ・cm以上を得ることができ、TOC濃度が、例えば、10μgC/L以下にまで低減される。なお、非再生型イオン交換樹脂処理工程113は行われなくてもよく、この場合は、紫外線酸化処理工程112を電気式脱イオン工程111の前に行い、透過水W30を、紫外線酸化処理工程112と、電気式脱イオン工程111でこの順に処理することも可能である。
【0045】
以上説明した純水製造方法110によれば、電気式脱イオン処理工程111を採用するため、通常イオン交換樹脂の再生に用いられる酸やアルカリのような薬剤を一切使用せずに連続的にイオン成分の除去を行うことができる。そのため、純水製造コスト削減や装置の小型化、環境負荷の低減などを実現することができ、製造効率の向上につながる。また、電気式脱イオン処理工程111において、イオン成分のほとんどが除去できるので、前段の3段逆浸透膜装置の処理負荷を軽減することができ、これによって純水製造コスト削減や装置の小型化、環境負荷の低減などを実現することができる。
【0046】
次に、実施形態の純水製造方法100の変形例の純水製造方法120について図3を参照して説明する。この変形例の純水製造方法は、純水製造方法100において、透過水W20に酸を添加してアルカリ性の被処理水よりpHの低い第2の被処理水を生成する酸調整工程を有する点で、図1に示される純水製造方法100とは異なっている。すなわち、変形例の純水製造方法120は、原水を第1段目の逆浸透膜装置で処理して透過水W10(第1の透過水)を得る逆浸透膜処理工程101と、透過水W10をアルカリ性に調整してアルカリ性の被処理水W11を得るアルカリ調整工程102と、アルカリ性の被処理水W11を第2段目の逆浸透膜装置で処理して透過水W20(第2の透過水)を得る逆浸透膜処理工程103と、透過水W20に酸を添加して第2の被処理水W21を得る酸調整工程121と、第2の被処理水W21を第3段目の逆浸透膜装置で処理して、透過水W31を得る逆浸透膜処理工程122を有している。透過水W31が、純水製造方法120で製造される純水である。
【0047】
酸調整工程121では、逆浸透膜処理工程103で得られた透過水W20に酸性を添加して、第2の被処理水W21を得る。例えば、酸調整工程121において、透過水W20に、塩酸、硫酸、スルファミン酸水溶液などが添加されて、被処理水W21が生成される。被処理水W21の液性は、環境負荷の低減の観点から、弱酸性から弱アルカリ性であることが好ましく、具体的に、被処理水W21のpHは好ましくは5.5~7.5であり、より好ましくは、6.5~7.5である。第2の被処理水W21のpHを、5.5以上にすることで、続く逆浸透膜処理工程122におけるカチオン成分の除去率を向上させることができ、また、過剰に酸を添加しないため、処理水質を向上させることができる。逆浸透膜処理工程102で微量に透過してくる塩類(イオン成分)は、水酸化ナトリウム等の水酸化物塩の形態として逆浸透膜処理工程102の透過水W20中に存在しているところ、被処理水W21のpHを、7.5以下にすることで、この水酸化物塩が、スルファミン酸ナトリウム等のスルファミン酸塩の形態に変換されるため、逆浸透膜処理工程122で除去されやすくなる。また、被処理水W21のpHを、5.5以上にすることで、逆浸透膜処理工程122における処理負荷を軽減することができる。また、酸調整工程121で添加される酸は、薬剤使用量を削減し、環境負荷を小さくする点で、上記した中でもスルファミン酸水溶液を用いることが好ましい。
【0048】
酸調整工程121でスルファミン酸を用いる場合、原水は活性炭処理されずに、原水中の塩素濃度が、0.1μg/L~0.4μg/Lであることが好ましい。逆浸透膜処理工程122で生成する濃縮水を第1段目の逆浸透膜装置の供給側に循環させることで、原水中の塩素と濃縮水中のスルファミン酸が反応して殺菌力を生じ、3段の逆浸透膜装置におけるバイオファウリングを抑制する効果が得られる。特に、バイオファウリングがもっとも激しく起こりやすい1段目の逆浸透膜におけるバイオファウリングを防ぐことができる。これにより、通常殺菌のために被処理水に添加される殺菌剤の量を低減することができるので、環境負荷の低減につながる。また、逆浸透膜を劣化させる被処理水中の遊離塩素を、スルファミン酸を添加することで結合塩素に変化させることができ、これにより、逆浸透膜の負荷を軽減する効果もある。このように、本変形例の純水製造方法120では、酸調整工程121でスルファミン酸を添加することで、逆浸透膜処理工程122における弱電解質の除去率向上と、3段の逆浸透膜におけるバイオファウリングの抑制の2つの効果を得ることができる。したがって、従来の純水製造方法では、1段目の逆浸透膜の供給水と、3段目の逆浸透膜の供給水の2か所で2種類の酸を添加する必要があったが、本変形例の純水製造方法120では、酸調整工程121の1か所の1種類の酸の添加に削減することができる。
【0049】
酸調整工程121でスルファミン酸を用いる場合、添加されるスルファミン酸の量は、上記殺菌剤の削減量と、スルファミン酸の添加量とのバランスで、純水製造方法120で使用される薬剤総量が低減できる範囲であることが好ましく、例えば、被処理水に対して、1mg/L~10mg/Lである。
【0050】
次に、本発明の実施形態の純水製造装置200について説明する。図4は、実施形態の純水製造装置200を備える純水製造システム4を模式的に示すブロック図である。純水製造装置200は、3段の超低圧型の逆浸透膜装置201、202、203を有している。
【0051】
純水製造装置200の前段には、原水供給機構として、前処理装置210が備えられている。前処理装置210は、活性炭装置(AC)211、貯留タンクTK、ポンプP1、熱交換器(HEX)212、精密ろ過装置(PF)213をこの順に備えて成る。前処理装置210は、原水の水質によって適宜構成を変更することができ、例えば、前処理装置210には、活性炭装置(AC)211、熱交換器(HEX)212、精密ろ過装置(PF)213は備えられてなくてもよいし、上記した活性炭装置(AC)211、貯留タンクTK、熱交換器(HEX)212及び精密ろ過装置(PF)213以外に、凝集沈殿装置、加圧浮上装置、砂ろ過装置などを任意に組み合わせて構成されていてもよい。
【0052】
純水製造装置200の後段には、電気式脱イオン装置(EDI)221と紫外線酸化装置(TOC-UV)222、非再生型イオン交換装置(Primary/Polisher)223がこの順に配置されている。電気式脱イオン装置(EDI)221と紫外線酸化装置(TOC-UV)222、非再生型イオン交換装置(Polisher)223についても、所望の水質に応じて適宜配置すればよい。
【0053】
純水製造装置200は、逆浸透膜装置201の透過水を逆浸透膜装置202に送る供給管L1(第1の供給管)と、逆浸透膜装置202の透過水を逆浸透膜装置203に送る供給管L2(第2の供給管)とを有している。また、逆浸透膜装置201、202、203の濃縮側にはそれぞれ排出管L3、L4、L5が接続されている。純水製造装置200は、循環配管L6を有している。循環配管L6の一端はタンクTKに接続され、他端側には、排出管L4、L5が接続されることで、循環配管L6が逆浸透膜装置202、203の濃縮水をタンクTKに循環させる。
【0054】
逆浸透膜装置201、202、203は、例えば、ケーシング内に、逆浸透膜と、逆浸透膜に被処理水を通水するための流路材とを収容して構成された逆浸透膜モジュールを1又は複数備えて成る。逆浸透膜装置201、202、203に備えられる逆浸透膜は、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜である。これらの逆浸透膜は、非対称膜又は複合膜であり、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン等からなり、微細多孔を有する支持層を有し、支持層上に上記スキン膜が備えられる複合膜であることが好ましい。なお、負電荷膜とは、pHが7のとき、スキン層からなる膜が負の荷電を示すことをいう。逆浸透膜の形状は、中空糸状、スパイラル状、平板状、チューブ状等である。これらの逆浸透膜は、耐圧性を高くして処理効率を向上させる点から、スパイラル状であることが好ましい。
【0055】
逆浸透膜装置201、202、203に用いられる逆浸透膜は、塩阻止率(塩除去率)が99.0%以上であることが好ましく、99.2%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましく、99.6%以上であることがよりさらに好ましい。なお、塩阻止率は、pHが7で濃度が500ppm又は1500ppmの塩化ナトリウム水溶液を、水温25℃、水回収率15%、供給圧力1.03MPa又は0.69~0.7MPaで供給したときの塩化ナトリウムの除去率で示される。
【0056】
逆浸透膜装置201、202、203として超低圧型が使用される超低圧型の逆浸透膜装置としては、例えば、日東電工社製ESPAシリーズ、東レ社製TBWシリーズ・TMHAシリーズなどが挙げられる。
【0057】
供給管L1には、供給管L1内を通流する被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構204が設けられている。アルカリ調整機構204は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウムなどのアルカリ調整剤を貯留するタンクと、当該タンク内のアルカリ調整剤を所定量で計量して、供給管L1内に添加する薬注ポンプからなる。
【0058】
図4に示される純水製造装置200を用いた純水の製造は上記した実施形態の純水製造方法100(図1)と同様である。まず、市水、井水、工業用水、使用済み回収水などからなる原水が、前処理装置210に供給される。原水は、前処理装置を経ることで、水中の濁質分及び塩素が除去されて、さらに、水温が15~30℃に調整され、前処理水が生成する。
【0059】
このようにして得られる前処理水は、炭酸を1mg/L~100mg/L、ホウ素を150μg/L以下含有し、ホウ素濃度は好ましくは、5μg/L以上である。前処理水のpHは例えば、5.0~7.5程度である。
【0060】
前処理水は、ポンプP1により加圧され、逆浸透膜装置201に供給される。前処理水が逆浸透膜装置201において逆浸透膜処理されて水中の硬度成分が除去され、透過水W10が生成する(図1の逆浸透膜処理工程101)。逆浸透膜装置201の濃縮水は排出管L3を介して系外に排出される。透過水W10は供給管L1を介して後段に送られる。
【0061】
透過水W10は供給管L1を通流する過程で、アルカリ調整機構204によりアルカリ性に調整される(図1のアルカリ調整工程102)。具体的には、アルカリ調整機構204が、供給管L1内に、アルカリ調整剤を定量的に注入することで、透過水W10にアルカリ調整剤が混合されて、アルカリ性に調整された被処理水W11が生成する。被処理水W11のpHは好ましくは9.0~10.0である。
【0062】
アルカリ性の被処理水W11は続いて、逆浸透膜装置202に供給される。被処理水W11は逆浸透膜装置202において逆浸透膜処理されて水中のホウ素及び炭酸が除去され、透過水W20が生成する(図1の逆浸透膜処理工程103)。被処理水W11が上記の通りアルカリ性であるため、逆浸透膜装置202におけるホウ素の除去率は50%~90%、炭酸の除去率は95%~98%を達成することができる。逆浸透膜装置202の濃縮水は排出管L4及び循環配管L6を介してタンクTKに循環される。透過水W20は供給管L2を介して後段に送られる。
【0063】
透過水W20は続いて、逆浸透膜装置203に供給される。被処理水W11は逆浸透膜装置203において逆浸透膜処理されて水中のイオン成分が除去され、透過水W30が生成する(図1の逆浸透膜処理工程104)。逆浸透膜装置203の濃縮水は排出管L5及び循環配管L6を介してタンクTKに循環される。透過水(純水)W30は後段に送られる。
【0064】
逆浸透膜処理工程104で得られる透過水(純水)W30の水質は、例えば、ホウ素濃度が3μg/L~20μg/L、好ましくは5μg/L~10μg/Lであり、炭酸濃度が0.005mg/L~0.5mg/L、導電率が、0.3μS/cm~40μS/cm、好ましくは1μS/cm~20μS/cm、より好ましくは1μS/cm~10μS/cmである。
【0065】
また、上記水質の純水(透過水W30)を得る点から、3段の逆浸透膜装置における水回収率は、逆浸透膜装置201が50%~80%、逆浸透膜装置202が70%~90%、逆浸透膜装置203が80%~95%であることが好ましい。
【0066】
透過水W30は、その後、電気式脱イオン装置(EDI)221、紫外線酸化装置222及び非再生型イオン交換装置223に順に供給される。これにより、図2に示される純水製造方法110が実行される。まず、透過水W30が電気式脱イオン装置221に供給されて、透過水W30中のイオン成分が除去される(図2の電気式脱イオン処理工程111)。電気式脱イオン装置内221では、電極に直流電流が印加された状態で、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂に被処理水が通水されることで、被処理水中のイオン成分がイオン交換樹脂に吸着される。吸着されたイオン成分は電気泳動によってイオン交換膜面まで泳動し、イオン交換膜において電気透析されて濃縮室に移行され、濃縮水中に排出される。イオン成分の除去された脱塩水W40は、後段に送られ、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0067】
脱塩水W40は、紫外線酸化装置222に供給されて、脱塩水W40に紫外線が照射される(図2の紫外線酸化処理工程112)。これにより、脱塩水W40中の全有機炭素分(TOC)が酸化分解される。照射される紫外線は、185nm付近の波長を有する紫外線であることが好ましく、185nm付近の波長を有する紫外線及び254nm付近の波長の紫外線であることがより好ましい。
【0068】
紫外線酸化装置222で生成された処理水W41は続いて、非再生型イオン交換装置223に供給され、処理水W41中のイオン成分が除去される。再生型イオン交換樹脂装置223を経て生成される処理水W42は、その抵抗率は、18MΩ・cm以上を得ることができ、TOC濃度が、例えば、10μgC/L以下にまで低減される。
【0069】
なお、非再生型イオン交換装置(Primary/Polisher)223は備えられなくてもよく、この場合、紫外線酸化装置222を電気式脱イオン装置(EDI)221の前に配置し、透過水W30を、紫外線酸化装置222と、電気式脱イオン装置(EDI)221とでこの順に処理することも可能である。
【0070】
以上で説明した純水製造装置200によれば、逆浸透膜装置202において、優れた炭酸除去率が達成されるため、前段側の硬度除去機構や炭酸除去のための脱気装置を省略することができる。また、硬度除去機構及び脱気装置が省略できるうえに、純水製造装置200の処理負荷が軽減されるので、薬剤の使用量が削減されるとともに、装置を簡素化できる。その結果、低コストで効率的に純水を製造することができる。さらに、3段の逆浸透膜処理工程における給水圧を、上記した通り超低圧に設定すれば、給水ポンプの台数や出力を低減することができるので、さらなる装置の簡素化、純水製造コストの低減、製造効率の向上につながる。
【0071】
次に、実施形態の純水製造装置200の変形例である純水製造装置300について説明する。図5は、純水製造装置300を備える純水製造システム5を模式的に示すブロック図である。純水製造装置300は、上述した実施形態の純水製造方法120を実現するための装置であり、供給管L2の経路に酸調整機構205を備える点で、図4に示される純水製造システム4とは異なっており、その結果、3段目の逆浸透膜装置における処理態様が異なり、その他の構成及び効果は純水製造装置200と同様である。そのため、純水製造装置200と同様の機能を奏する構成には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0072】
純水製造システム5は、純水製造装置300の前段に配置された前処理装置310を備えている。前処理装置310は、貯留タンクTK、ポンプP1、熱交換器(HEX)212、精密ろ過装置(PF)213をこの順に備えて成る。純水製造装置300の後段には、電気式脱イオン装置(EDI)221と紫外線酸化装置(TOC-UV)222と、非再生型イオン交換樹脂装置223がこの順に配置されている。
【0073】
純水製造装置300は、3段の逆浸透膜装置201、202、303を備えている。また、純水製造装置300は、逆浸透膜装置201の透過水を逆浸透膜装置202に送る供給管L1(第1の供給管)と、逆浸透膜装置202の透過水を逆浸透膜装置203に送る供給管L2(第2の供給管)とを有している。また、逆浸透膜装置201、202、303の濃縮側にはそれぞれ排出管L3、L4、L35が接続されている。純水製造装置300は、循環配管L6を有しており、循環配管の一端はタンクTKに接続され、他端側には、排出管L4及びL35が接続されることで、循環配管L6が逆浸透膜装置202、303の濃縮水をタンクTKに循環させる。
【0074】
逆浸透膜装置303の構成は、上述した逆浸透膜装置201、202と同様であり、超低圧型の逆浸透膜装置である。
【0075】
供給管L1には、供給管L1内を通流する被処理水をアルカリ性に調整するアルカリ調整機構204が設けられている。アルカリ調整機構204は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウムなどのアルカリ調整剤を貯留するタンクと、当該タンク内のアルカリ調整剤を所定量で計量して、供給管L1内に添加する薬注ポンプからなる。
【0076】
供給管L2には、供給管L2内を通流する被処理水に酸を添加する酸調整機構205が設けられている。酸調整機構205は、例えば、塩酸、硫酸、スルファミン酸などの酸調整剤を貯留するタンクと、当該タンク内の酸調整剤を所定量で計量して、供給管L2内に添加する薬注ポンプからなる。酸調整機構205で添加される酸は、上記した中でも、スルファミン酸であることが好ましい。
【0077】
図5に示される純水製造装置300を用いた純水の製造は上記した実施形態の純水製造方法120(図3)と同様である。まず、市水、井水、工業用水、使用済み回収水などからなる原水が、前処理装置310に供給される。原水は、前処理装置310を経ることで、水中の濁質分が除去されて、さらに、水温が15℃~30℃に調整され、前処理水が生成する。
【0078】
このようにして得られる前処理水は、炭酸を1mg/L~100mg/L、ホウ素を150μg/L以下含有する。また、前処理水は、塩素をCl換算で、例えば、0.1mg/L~0.4mg/L程度、含んでいる。前処理水のpHは例えば、5.0~7.5程度である。
【0079】
前処理水は、ポンプP1により加圧され、好ましくは、0.4MPa~1.1MPa、より好ましくは0.6MPa~0.7MPaの給水圧で、逆浸透膜装置201に供給され、水中の硬度成分が除去され、透過水W10が生成する(図3の逆浸透膜処理工程101)。逆浸透膜装置201の濃縮水は排出管L3を介して系外に排出される。透過水W10は供給管L1を介して後段に送られる。
【0080】
透過水W10は供給管L1を通流する過程で、アルカリ調整機構204によりアルカリ性に調整される(図3のアルカリ調整工程102)。具体的には、アルカリ調整機構204が、供給管L1内に、アルカリ調整剤を定量的に注入することで、透過水W10にアルカリ調整剤が混合されて、アルカリ性に調整された被処理水W11が生成する。被処理水W11のpHは、酸調整機構205でスルファミン酸が用いられる場合に、好ましくは9.0~10.0である。
【0081】
アルカリ性の被処理水W11は続いて、逆浸透膜装置202に供給される。被処理水W11は逆浸透膜装置202において逆浸透膜処理されて水中のホウ素及び炭酸が除去され、透過水W20が生成する(図3の逆浸透膜処理工程103)。逆浸透膜装置202の濃縮水は排出管L4及び循環配管L6を介してタンクTKに循環される。透過水W20は供給管L2を介して後段に送られる。
【0082】
透過水W20は供給管L2を通流する過程で、酸調整機構205により酸が添加される(図3の酸調整工程121)。具体的には、酸調整機構205が、供給管L2内に、酸調整剤を定量的に注入することで、透過水W20に酸調整剤、好ましくはスルファミン酸が混合されて、被処理水W11よりもpHの低い被処理水W21が生成する。被処理水W21のpHは、酸調整機構205でスルファミン酸が用いられる場合に、好ましくは5.5~7.5であり、より好ましくは、6.5~7.5である。
【0083】
被処理水21は続いて、逆浸透膜装置303に供給され、水中のイオン成分が除去され、透過水W30が生成する(図3の逆浸透膜処理工程122)。逆浸透膜装置303の濃縮水は排出管L35及び循環配管L6を介してタンクTKに循環される。透過水(純水)W31は後段に送られる。被処理水21に酸が添加されていることで、逆浸透膜装置303におけるイオン成分の除去率を向上させることができる。
【0084】
逆浸透膜装置303で得られる透過水(純水)W31の水質は、ホウ素濃度が3μg/L~20μg/L、好ましくは5μg/L~10μg/Lであり、炭酸濃度が例えば、0.1mg/L~1mg/L、好ましくは、0.2mg/L~0.5mg/L、導電率が、0.3μS/cm~40μS/cm、好ましくは1μS/cm~20μS/cm、より好ましくは1μS/cm~10μS/cmである。
【0085】
透過水W31は、その後、電気式脱イオン装置(EDI)221、紫外線酸化装置222及び非再生型イオン交換装置223に順に供給される。電気式脱イオン装置221において、透過水W31中のイオン成分が除去される。イオン成分の除去された脱塩水は、後段に送られ、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。紫外線酸化装置222において、脱塩水に上述の通りに紫外線が照射され、脱塩水中の全有機炭素分(TOC)が酸化分解される。紫外線が照射されて生成された処理水は、続いて、非再生型イオン交換装置223に供給され、処理水中のイオン成分が除去される。再生型イオン交換樹脂装置223を経て生成される処理水は、その抵抗率は、18MΩ・cm以上を得ることができ、TOC濃度が、例えば、10μgC/L以下にまで低減される。
【0086】
なお、本変形例においても、非再生型イオン交換装置(Primary/Polisher)223は備えられなくてもよく、この場合、紫外線酸化装置222を電気式脱イオン装置(EDI)221の前に配置し、透過水W30を、紫外線酸化装置222と、電気式脱イオン装置(EDI)221とでこの順に処理することも可能である。
【0087】
酸調整機構205でスルファミン酸が用いられる場合、逆浸透膜装置303で生成する濃縮水を逆浸透膜装置201の前段のタンクTK循環させることで、原水中の塩素と濃縮水中のスルファミン酸が反応して殺菌力を生じ、3段の逆浸透膜装置におけるバイオファウリングを抑制する効果が得られる。特に、バイオファウリングがもっとも激しく起こりやすい1段目の逆浸透膜におけるバイオファウリングを防ぐことができる。これにより、通常殺菌のために被処理水に添加される殺菌剤の量を低減することができるので、環境負荷の低減につながる。また、逆浸透膜を劣化させる被処理水中の遊離塩素を、スルファミン酸を添加することで結合塩素に変化させることができ、これにより、逆浸透膜の負荷を軽減する効果もある。酸調整機構205によってスルファミン酸を添加することで、逆浸透膜装置202における弱電解質の除去率向上と、3段の逆浸透膜装置303におけるバイオファウリングの抑制の2つの効果を得ることができる。従来の純水製造方法では、1段目の逆浸透膜の供給水と、3段目の逆浸透膜の供給水の2か所で2種類の酸を添加する必要があったが、純水製造装置200では、酸調整機構205の1か所の1種類の酸の添加に削減することができる。
【0088】
酸調整機構205でスルファミン酸が用いる場合、添加されるスルファミン酸の量は、上記殺菌剤の削減量と、スルファミン酸の添加量とのバランスで、使用される薬剤総量が低減できる範囲であることが好ましい。
【0089】
次に、上記した純水製造装置200を用いた、実施形態の超純水製造システム6について、図6を参照して説明する。図6は、超純水製造システム6の構成を概略的に示すブロック図である。
【0090】
図6に示すように、超純水製造システム6は、前処理装置60と、一次純水装置61と二次純水装置(サブシステム)62とをこの順に備えている。二次純水装置62はユースポイント(POU)63に配管によって接続されており、これにより超純水製造システム6により製造された超純水がPOU63に供給される。
【0091】
前処理装置60は、凝集、ろ過、膜分離等の処理を行い、必要に応じて熱交換器等により温度調節を行い、被処理水(原水)に含まれる懸濁物質やコロイダル物質等の濁質分を取り除く。具体的には、前処理装置60は、活性炭装置、凝集沈殿装置、加圧浮上装置、砂ろ過装置、精密ろ過装置、限外濾過装置、熱交換器などを適宜組み合わせて備えている。また、前処理装置60は、上述した前処理装置210(図4)又は前処理装置310(図5)と同様の構成であってもよい。なお、原水の水質が一次純水装置61に供給するために十分な水質である場合には、前処理装置60は省略されてもよい。
【0092】
超純水製造システム6は、前処理装置60の後段に、タンクTK1を備えており、前処理装置60によって前処理された被処理水はタンクTK1に導入されて、一旦貯留される。タンクTK1内の被処理水はポンプP2によって一次純水装置61に供給される。
【0093】
一次純水装置61は、前処理水から有機物、イオン成分及び溶存気体を除去して一次純水を製造する。一次純水装置61は、ポンプP2、上記実施形態の純水製造装置200、電気式脱イオン装置(EDI)611、紫外線酸化装置(TOC-UV)612、非再生型イオン交換樹脂装置(Primary/Polisher)613をこの順に備えている。なお、一次純水装置61は、純水製造装置200に代えて、上記実施形態の純水製造装置300又はこれらの変形例の純水製造装置を備えていてもよい。
【0094】
一次純水装置61では、まず、純水製造装置200において、前処理水中の硬度成分、炭酸及びホウ素が除去される。
【0095】
次いで、被処理水は電気式脱イオン装置(EDI)611に供給される。電気式脱イオン装置611は、例えば、陽極と陰極の間に交互に配置された陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを有し、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜によって仕切られた脱塩室と、除去されたイオン成分を含む濃縮水が流入する濃縮室とを交互に有している。そして、電気式脱イオン装置は、脱塩室内に充填された陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合体と、直流電圧を印加するための電極を有している。
【0096】
電気式脱イオン装置611において、例えば、被処理水は脱塩室及び濃縮室に並行して供給され、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理水中のイオン成分を吸着する。吸着されたイオン成分は直流電流の作用により濃縮室に移行されて、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0097】
電気式脱イオン装置611は、イオン交換樹脂を再生するための、酸やアルカリのような薬品を一切使用せずに連続的にイオン成分の除去を行うことができる。そのため、超純水製造における安全性の向上や製造コスト削減、装置の小型化などを実現することができ、製造効率の向上につながる。
【0098】
次いで、電気式脱イオン装置611で生成される脱塩水が、紫外線酸化装置612に供給される。紫外線酸化装置612は、例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射可能な紫外線ランプを有し、この紫外線ランプから紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中の全有機炭素成分(TOC)を酸化分解する。紫外線酸化装置612に用いられる紫外線ランプは、185nm付近の波長の紫外線を発生するランプを使用することができ、185nm付近の波長の紫外線とともに254nm付近の波長の紫外線を放射する低圧水銀ランプを使用してもよい。紫外線酸化装置612の放射する紫外線により、水が分解されてOHラジカルが生成し、このOHラジカルによって被処理水中の有機物が有機酸に酸化分解される。一次純水装置61の紫外線酸化装置612における紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更することができる。
【0099】
紫外線酸化装置612の処理水は、非再生型イオン交換樹脂装置(Primary/Polisher)613で処理される。非再生型イオン交換樹脂装置613により、主に、紫外線酸化装置612によって有機物が分解されて生成した微量の有機酸などのイオン成分が除去される。
【0100】
このようにして得られる一次純水は、例えば抵抗率が18MΩ・cm以上、TOC濃度が10μgC/L以下である。
【0101】
本実施形態の超純水製造システムは、一次純水装置61の後段に、一次純水を貯留する一次純水タンクTK2、ポンプP3、二次純水装置62をこの順に備えている。一次純水装置で製造された一次純水は、一次純水タンクTK2に一旦貯留された後、ポンプP3によって二次純水装置62に送られる。二次純水装置62は、紫外線酸化装置(TOC-UV)621、非再生式ポリッシャー(Polisher)622、膜脱気装置(MDG)623及び限外ろ過装置(UF)624を備えている。
【0102】
二次純水装置62における紫外線酸化装置621の構成は、一次純水装置61の紫外線酸化装置612と同様である。非再生式ポリッシャー622は、ボンベ等の容器に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が混合充填されて成る混床式のイオン交換樹脂装置である。また、非再生式ポリッシャー622は、容器内のイオン交換樹脂の再生を行わずに、イオン交換能が低下したときに別のものに取り換えられる。非再生式ポリッシャー622は、紫外線酸化装置621が有機物を分解することで生成したイオン成分を吸着除去する。
【0103】
膜脱気装置623は、脱気膜を介して溶存気体を除去する。膜脱気装置623は、一次純水中の微量溶存酸素を除去して溶存酸素濃度を例えば1μg/L程度以下まで低減する。限外ろ過膜装置624は、限外ろ過膜によってろ過処理を行い、上流側のイオン交換樹脂からの微量溶出物や微粒子成分を除去して、例えば、0.05μm以上の微粒子数を250Pcs./L以下程度まで低減する。
【0104】
本実施形態の超純水製造システム6では、純水製造装置200において、優れた炭酸除去率が達成されるため、前段側の硬度除去機構や炭酸除去のための脱気装置を省略することができる。また、硬度除去機構及び脱気装置が省略できるうえに、純水製造装置200の処理負荷が軽減されるので、薬剤の使用量が削減されるとともに、装置を簡素化できる。その結果、低コストで効率的に純水を製造することができる。さらに、純水製造装置200における3段の逆浸透膜処理工程における給水圧を、超低圧に設定すれば、給水ポンプの台数や出力を低減することができるので、さらなる装置の簡素化、純水製造コストの低減、製造効率の向上につながる。
【0105】
なお、上述した各実施形態において、原水、前処理水、純水又は超純水の水質はそれぞれ、次の方法又は装置によって測定することができる。
pH:電極法
ホウ素濃度:ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光法又はICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)法
硬度成分:ICP-MS法
溶存炭酸ガス(炭酸カルシウム換算):SUEZ社製 Sievers M9e
シリカ(Si):原子吸光光度法・吸光光度法
塩素(Cl換算):DPD(ジエチルパラフェニレンジアミン)法
導電率:導電率計(堀場製作所製 HE-960CW)
抵抗率(比抵抗):抵抗率計(堀場製作所製 HE-960RW)
全有機炭素(TOC)濃度:TOC計(超純水以外:SUEZ社製 Sievers M9e、超純水:BECKMAN COULTER社製 Anatel A―1000XP)
0.05μm以上の微粒子数:パーティクルカウンター(Particle Measuring Systems社製 UDI―50)
【実施例
【0106】
次に、実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
図7に示される純水製造システム7を用いて、純水を製造した。図7に示される純水製造システム7は、図5に示される前処理装置310と純水製造装置300を組み合わせて成る。厚木市水を活性炭処理し、その後、前処理装置310に供給した。前処理装置310で処理されて生成する前処理水W1(pH=7.2、ホウ素濃度150ppb、炭酸濃度30ppmの原水)を、逆浸透膜装置201、202、303で順に逆浸透膜処理した。逆浸透膜装置202の供給水には、そのpHが9.5になるように、アルカリ調整機構204によって水酸化ナトリウム水溶液を添加した。逆浸透膜装置202、303の濃縮水は、タンクTKに還流させた。
【0108】
(実施例2)
図7に示される純水製造システム7を用いて、純水を製造した。前処理装置310で前処理水(pH=7.2、ホウ素濃度50ppb、炭酸濃度15ppmの原水)を製造し、得られた前処理水を、逆浸透膜装置201、202、303で順に逆浸透膜処理した。逆浸透膜装置202の供給水には、そのpHが9.5になるように、アルカリ調整機構204によって水酸化ナトリウム水溶液を添加した。逆浸透膜装置202、303の濃縮水は、タンクTKに還流させた。
【0109】
(実施例3)
実施例1と同様に前処理水W1を得て、前処理水W1を、逆浸透膜装置201、202、303で順に逆浸透膜処理した。逆浸透膜装置202の供給水には、そのpHが9.0になるように、アルカリ調整機構204によって水酸化ナトリウム水溶液を添加した。逆浸透膜装置303の供給水には、そのpHが6.5になるように、スルファミン酸水溶液を添加した。逆浸透膜装置202、303の濃縮水は、タンクTKに還流させた。
【0110】
(比較例1)
実施例1と同様に前処理水W1を得て、前処理水W1を、2段の逆浸透膜装置(図7の逆浸透膜装置201、202に相当)で順に逆浸透膜処理した。2段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが9.5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した。2段目の逆浸透膜装置の濃縮水は、実施例1と同様に、タンクTKに還流させた。
【0111】
(比較例2)
実施例1と同様に前処理水W1を得て、前処理水W1を、3段の逆浸透膜装置(図7の逆浸透膜装置201、202、303に相当)で順に逆浸透膜処理した。1段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが6.0になるように、硫酸を添加した。また、2段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが9.0になるように、水酸化ナトリウム水溶液を添加した。3段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが4.7になるように、スルファミン酸水溶液を添加した。2段目と3段目の逆浸透膜装置の濃縮水は、実施例1と同様に、タンクTKに還流させた。
【0112】
(比較例3)
実施例1の同様に前処理水W1を得て、前処理水W1に酸を添加した後、図示しない脱気塔で処理して脱気水を得た。脱気水を原水として、3段の逆浸透膜装置(図7の逆浸透膜装置201、202、303に相当)で順に逆浸透膜処理した。2段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが9.0になるように、水酸化ナトリウム水溶液を添加した。また、3段目の逆浸透膜装置の供給水には、そのpHが4.7になるように硫酸を添加した。2段目と3段目の逆浸透膜装置の濃縮水は、実施例1と同様に、タンクTKに還流させた。
【0113】
上記した実施例及び比較例において、ポンプP1の吐出圧は1.6MPaとし、逆浸透膜装置としては、超低圧型の逆浸透膜であるTBW-HR(東レ社製)を使用した。
【0114】
(比較例4)
実施例1と同様に前処理水W1を得て、前処理水W1を、高圧型の逆浸透膜装置を用いて逆浸透膜処理した。比較例において、ポンプP1の吐出圧は1.6MPaとし、逆浸透膜装置としては、高圧型の逆浸透膜であるTM820K-400(東レ株式会社製)を使用した。
【0115】
上記した実施例及び比較例における前処理水水質、逆浸透膜装置202(2段目の逆浸透膜装置)の供給水質、逆浸透膜装置303(3段目の逆浸透膜装置)の供給水質、各例における処理水水質(最終段の逆浸透膜装置の透過水質)を測定した。結果を表1に示す。また、実施例及び比較例における各成分の除去率と薬剤(水酸化ナトリウム、スルファミン酸、硫酸)使用量の合計を測定した。薬剤使用量については実施例1において、使用される量(g)を1とした値で算出した。なお、薬剤使用量は運転条件による変動が大きいので、100日間の運転の結果をもとにして概算として示した。結果を表2に示す。表1、2において、「DG」は脱気塔を、「RO2」は2段目の逆浸透膜装置(図7の逆浸透膜装置202に相当。)を、「RO3」は3段目の逆浸透膜装置(図7の逆浸透膜装置303に相当。)を意味する。
【0116】
実施例及び比較例において、各水質は以下の装置又は方法にて測定した。
pH:堀場製作所社製HP―200
ホウ素濃度:ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光法
炭酸濃度:SUEZ社製 Sievers M9e
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
表1、2に示されるように、実施例1~3の純水製造方法では、十分なホウ素濃度の低減と適切な水質の純水が得られている。比較例1の方法では、逆浸透膜が2段のみであるので、十分なホウ素濃度の低減が実現できていない。比較例2の方法では、高水質の純水を得られるが、導電率が低すぎて水質が過剰であり、薬品使用量が多くなっている。また、比較例2の方法では、前段で脱気処理を行わないため、処理水の炭酸濃度もやや高めとなっている。比較例3の方法も、高水質の純水を得られるが、導電率が低すぎて水質が過剰である。また、比較例3の方法は、前段で脱気塔による処理を行うため、薬品使用量の増大と、装置の大型化が問題である。比較例4の方法では、高圧型の逆浸透膜を使用しており、消費電力は実施例1と同等であるが、十分なホウ素濃度の低減が実現できていない。
【0120】
また、実施例1と比較例3の前処理水、各段の逆浸透膜装置の供給水及び処理水の炭酸濃度、ホウ素濃度及び導電率を図8~10に示す。図8は炭酸濃度を対数で表し、図9はホウ素濃度を表し、図10は導電率を表す。また、図8~10において「RO1」は1段目の逆浸透膜装置を意味する。
【0121】
図8で示されるように、実施例1の方法では、1段目と2段目の逆浸透膜装置において炭酸が除去されている。これに対し、比較例3の方法では、脱気塔で炭酸が除去されており、炭酸の除去された被処理水(脱気水)が1段目の逆浸透膜装置に供給されることで、高導電率(導電率0.125μS/cm)の処理水を得ていることがわかる。
また、図9に示されるように、実施例1の方法では、2段目の逆浸透膜装置において、大部分のホウ素が除去され、ホウ素の一部が3段目の逆浸透膜装置において除去されている。これに対し、比較例3の方法では、ホウ素のほとんどが、2段目の逆浸透膜において除去されている。
さらに、図10に示されるように、実施例1の方法では、1段目から3段目の逆浸透膜装置を通じて、導電性の成分(イオン成分など)が除去されている。これに対し、比較例3の方法では、脱気塔と1段目の逆浸透膜装置において、導電性の成分(イオン成分など)のほとんどが除去されている。
【0122】
以上のことから、実施例1の方法と比較例3の方法では、3段の逆浸透膜装置を用いる点と、用いる薬剤の一部が共通しているが、各逆浸透膜装置の奏する作用効果が異なっていることがわかる。
【符号の説明】
【0123】
100,110,120…純水製造方法、101,103,104,122…逆浸透膜処理工程、102…アルカリ調整工程、111…電気式脱イオン処理工程、112…紫外線酸化処理工程、113…非再生型イオン交換(Primary/Polisher)処理工程、121…酸調整工程、W10,20…透過水、W30,31…透過水(純水)、W11,12,21…被処理水、W40…脱塩水、W41,W42…処理水、200,300…純水製造装置、210,310…前処理装置、211…活性炭装置(AC)、TK…貯留タンク、212…熱交換器(HEX)、213…精密ろ過装置(PF)、221,611…電気式脱イオン装置(EDI)、222,612…紫外線酸化装置(TOC-UV)、223,613…非再生型イオン交換装置(Primary/Polisher)、201,202,203,303…逆浸透膜装置、204…アルカリ調整機構、205…酸調整機構、4,5,6…純水製造システム、L1,L2…供給管、L3~L5…排出管、L6…循環配管

【要約】
【課題】前段側で3段の逆浸透膜装置の処理負荷を軽減することで、薬剤使用量を低減することができ、効率よくホウ素濃度の除去された純水を製造することのできる純水製造方法及び純水製造装置の提供。
【解決手段】原水を、少なくとも3段の超低圧型の逆浸透膜装置で処理して原水中のホウ素を除去する純水製造方法であって、逆浸透膜は、いずれも、架橋芳香族ポリアミドからなるスキン層を有する負電荷膜であり、原水が、炭酸を1~100mg/L、ホウ素を150μg/L以下含有し、原水を第1段目の逆浸透膜装置で処理する工程と、アルカリ性の被処理水を得る工程と、アルカリ性の被処理水を第2段目の逆浸透膜装置で処理する工程と、その透過水を第3段目の逆浸透膜装置で処理して、ホウ素濃度が3~20μg/L、導電率が、0.3~40μS/cmの純水を得る工程と、を有する。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10