(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】腸疾患を有する患者を治療するシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20240326BHJP
【FI】
A61F2/04
(21)【出願番号】P 2022211213
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2021034151の分割
【原出願日】2008-10-10
【審査請求日】2022-12-28
(32)【優先日】2007-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2007-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2007-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517409413
【氏名又は名称】インプランティカ・パテント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】フォーセル,ピーター
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0070933(US,A1)
【文献】実公昭52-1678(JP,Y2)
【文献】特表2005-519709(JP,A)
【文献】米国特許第4728328(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0033226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0215283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0122527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内に移植されるよう構成した人工腸セクションを含むシステムであって、
前記人工腸セクションは、第1の開放端部およびこれに連通した第2の開放端部を有し、少なくとも第1の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に連結できるよう構成され、
少なくとも第1の開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、前記導管の前記外面の少なくとも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可撓性スリーブを備え、
前記腸の蠕動運動に起因し、前記腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上するために、
前記人工腸セクションの開放端部を、前記腸の前記断面開口部に挿入し、前記腸および前記人工腸セクションの前記第1の開放端部の両方に延びるように、前記可撓性スリーブを配置することにより、前記腸の前記断面開口部に前記第1の開放端部を取り付けることができるように構成され、
前記可撓性スリーブは、前記腸が折り畳まれた前記可撓性スリーブの中間に位置するために、それ自体の上に折り畳み可能になるように、前記外面に取り付けられるように構成され
、
少なくとも前記第1の開放端部は、生体組織を内部成長させる多孔内部成長層を備える
人工腸セクションを含むシステム。
【請求項2】
少なくとも前記第1の開放端部は、多層材料から成る
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
患者の体内に移植されるよう構成した人工腸セクションを含むシステムであって、
前記人工腸セクションは、第1の開放端部およびこれに連通した第2の開放端部を有し、少なくとも第1の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に連結できるよう構成され、
少なくとも第1の開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、前記導管の前記外面の少なくとも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可撓性スリーブを備え、
前記腸の蠕動運動に起因し、前記腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上するために、
前記人工腸セクションの開放端部を、前記腸の前記断面開口部に挿入し、前記腸および前記人工腸セクションの前記第1の開放端部の両方に延びるように、前記可撓性スリーブを配置することにより、前記腸の前記断面開口部に前記第1の開放端部を取り付けることができるように構成され、
前記可撓性スリーブは、前記腸が折り畳まれた前記可撓性スリーブの中間に位置するために、それ自体の上に折り畳み可能になるように、前記外面に取り付けられるように構成され、
(a)前記第2の開放端部は、前記患者の直腸または肛門に、または、前記患者の肛門に隣接する組織に接続して、腸端部セクションを形成するように構成されるか、または、
(b)前記第1の開放端部および前記第2の開放端部は、前記患者の腸に外科的に形成された切断面の開口部に連結して、中間腸セクションを形成するように構成される
人工腸セクションを含むシステム。
【請求項4】
前記第1の開放端部および前記第2の開放端部は、前記患者の腸に外科的に形成された切断面の開口部に連結して、中間腸セクションを形成するように構成され、
前記第2の開放端部は、前記患者の小腸の一部に接続している
請求項1から
3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の開放端部および前記第2の開放端部は、前記患者の腸に外科的に形成された切断面の開口部に連結して、中間腸セクションを形成するように構成され、
前記第2の開放端部は、前記患者の大腸の一部に接続している
請求項1から
3のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の開放端部は、人工ストーマに接続して、腸端部セクションを形成するように構成される、
請求項1から
3のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
患者の体内に移植されるよう構成した人工腸セクションを含むシステムであって、
前記人工腸セクションは、第1の開放端部およびこれに連通した第2の開放端部を有し、少なくとも第1の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に連結できるよう構成され、
少なくとも第1の開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、前記導管の前記外面の少なくとも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可撓性スリーブを備え、
前記腸の蠕動運動に起因し、前記腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上するために、
前記人工腸セクションの開放端部を、前記腸の前記断面開口部に挿入し、前記腸および前記人工腸セクションの前記第1の開放端部の両方に延びるように、前記可撓性スリーブを配置することにより、前記腸の前記断面開口部に前記第1の開放端部を取り付けることができるように構成され、
前記可撓性スリーブは、前記腸が折り畳まれた前記可撓性スリーブの中間に位置するために、それ自体の上に折り畳み可能になるように、前記外面に取り付けられるように構成され、
(a)前記人工腸セクションの上流側および/または下流側への、前記患者の腸の本来のセクション内の腸内容物の流れを制御するように構成された1つまたは複数の特別弁をさらに備え、
前記特別弁は、
前記患者の体内の、前記患者の本来の腸のあるセクションの外側に移植されるように構成され、前記本来の腸セクションにその外側から作用して、前記本来の腸セクションを通る腸内容物の流れを防止するように構成された少なくとも1つの部材を備えるか、または、
(b)前記人工腸セクションは、前記人工腸セクションの前記第1の開放端部と前記第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接または間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つのエネルギー消費部を備え、
前記エネルギー消費部は、
前記人工腸セクションから前記第2の開放端部を通る腸内容物の流れを制御するように構成された流れ制御デバイスを備える
人工腸セクションを含むシステム。
【請求項8】
前記流れ制御デバイスは、
閉位置において、前記第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止する、常閉弁である出口弁と、
開位置において、前記第1の開放端部を通り前記人工腸セクションへの腸内容物の流れを許容する、常開弁である入口弁を備える
請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記出口弁および前記入口弁は、2つの弁のうちの一方が閉じられたときに、他方の弁が開かれ、一方の弁が開かれたときに、他方の弁が閉じられるように協働するように構成される
請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記出口弁と前記入口弁のうち、少なくとも1つの弁は、体積を変化させることによって弁を開閉するように構成された可変体積を有するコンパートメントを備える
請求項
8または
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記特別弁は、
前記本来の腸セクションの筋肉または神経組織を電気的に刺激し、
前記本来の腸セクションを少なくとも部分的に収縮させるように構成された少なくとも1つの電気刺激デバイスを備える
請求項
7に記載のシステム。
【請求項12】
前記電気刺激デバイスは、本来の腸内容物の流れの方向において、時間とともに、
前記本来の腸セクションの異なる部分を波動状に刺激することによって、
前記本来の腸セクションに沿って腸内容物をポンプ輸送する
請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記人工腸セクションは、
前記第2の開放端部から前記人工腸セクションの外側に腸内容物を前進させるため
に前記1つのエネルギー消費部としてポンプを備える
請求項
7から
12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記人工腸セクションは、
前記第1の開放端部を通って供給された腸内容物を受け取って一時的に収集するリザーバを
前記第1の開放端部と
前記第2の開放端部との間に備え、前記ポンプは、前記第2の開放端部を通じて前記リザーバを空にするように構成される
請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
患者の体内に移植されるよう構成した人工腸セクションを含むシステムであって、
前記人工腸セクションは、第1の開放端部およびこれに連通した第2の開放端部を有し、少なくとも第1の開放端部は、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に連結できるよう構成され、
少なくとも第1の開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、前記導管の前記外面の少なくとも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可撓性スリーブを備え、
前記腸の蠕動運動に起因し、前記腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度を向上するために、
前記人工腸セクションの開放端部を、前記腸の前記断面開口部に挿入し、前記腸および前記人工腸セクションの前記第1の開放端部の両方に延びるように、前記可撓性スリーブを配置することにより、前記腸の前記断面開口部に前記第1の開放端部を取り付けることができるように構成され、
前記可撓性スリーブは、前記腸が折り畳まれた前記可撓性スリーブの中間に位置するために、それ自体の上に折り畳み可能になるように、前記外面に取り付けられるように構成され、
少なくとも以下の1つを備える:
- 前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部を自動的に駆動するように構成された少なくとも1つのモータ
;
- 患者の体外から無線によって伝送されたエネルギーを、アキュムレータに蓄積されるエネルギーに変換する移植可能なエネルギー変換デバイスと、エネルギーを患者の体外から前記移植可能なエネルギー変換デバイスに無線によって伝送するように構成された無線エネルギー送信器;
- 蓄電池;
- コンデンサ;
- 前記システムの1つまたはそれ以上の素子を、直接または間接的に制御する制御ユニットであって、前記制御ユニットは、患者の体内に移植されるように構成された第1の部分と、患者の体外から前記第1の部分と協働するように構成された第2の部分とを備える前記制御ユニット;
- 患者の物理的パラメータを直接または間接的に検知するように構成された物理的パラメータ・センサであって、患者の物理的パラメータである、前記人工腸セクション内の圧力、患者の本来の腸内の圧力、前記人工腸セクションの膨張、患者の本来の腸の腸壁の膨張、患者の腸壁の移動のうちの少なくとも1つを検知するように構成される前記物理的パラメータ・センサ;
- システムの機能パラメータを直接または間接的に検知するように構成された機能パラメータ・センサを備え、システムの機能パラメータである患者の前記人工腸セクションなどのシステムの一部に対する圧力、前記人工腸セクションの壁などのシステムの一部の膨張、電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータ、システムの可動部の位置または移動のうちの少なくとも1つを検知するように構成される前記機能パラメータ・センサ;
人工腸セクションを含むシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのモータを作動させる手動操作可能なスイッチを備え、前記スイッチは、患者の体外から操作可能であるように皮下移植されている
請求項
15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の腸に関する疾患を有する患者を治療するシステムおよび方法に関する
。このような疾患は、怪我、先天異常、癌、または便秘や失禁のような他の疾病によって
生じることがある。
【背景技術】
【0002】
このような疾患を解消するために、多数の異なる解決手段が提案されている。これらの
解決手段は、特に、腸の一部を除去する必要のある手術を含む。このような手術を行う理
由としては、結腸直腸癌、穿孔性憩室炎、または潰瘍性大腸炎やクローン病のような他の
種類の疾病が挙げられる。たとえば回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、
および直腸ろう造設術の場合、小腸(空腸または回腸)あるいは大腸(結腸または直腸)
を切開し、患者の腹壁に外科的に形成されたろう孔、あるいは可能なら患者の直腸または
肛門、または肛門に隣接する組織に腸の正常な部分の開放端部を取り付け直す。
【0003】
その場合、腸内容物の流れの制御、特に糞便が制御されずに患者の体から排出されるこ
との防止に関する問題が生じる。患者は通常、結腸バッグに排泄する必要がある。これは
明らかに不便であり、さらに、このようなバッグ構成では、バッグを液密にするために患
者の皮膚に接着される粘着プレートが必要であるため、皮膚の炎症が生じる可能性がある
。
【0004】
米国特許第4222377号は、肛門または尿管の周りにカフを備える膨張可能な人工
括約筋の使用を提案している。人工括約筋を膨張させたり収縮させたりする手動操作ポン
プが患者の陰のうに移植される。
【0005】
同様に、米国特許第5593443号は、随意的に制御される人工油圧肛門括約筋を開
示している。具体的には、患者は、機械または電気的ポンプを作動させてカフを膨張させ
たり収縮させたりする。カフは、腸の両側に位置し、膨張時に腸壁同士を押し付ける2つ
の部分から成る。
【0006】
米国特許第6752754B1号は、患者の直腸の一部に置き換わる人工直腸を開示し
ている。この人工直腸の入口は、患者の大腸の遠位端に動作可能に連結されており、患者
の肛門に連結された人工直腸の出口を通って糞便を排出する腸間膜ポンプに糞便を送る。
このポンプは、回転時に、糞便にせん断効果をもたらし、糞便をスクリュー・インペラの
ねじに沿って下に移動させ患者の肛門を通って排出させるヘリカル・スクリュー型インペ
ラを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4222377号
【文献】米国特許第5593443号
【文献】米国特許第6752754B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、患者の腸に関する疾患を有する患者を治療する改良されたシステムお
よび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
無線充填アキュムレータを含む人工腸セクション
患者の腸に関する疾患を有する患者を治療する本発明によるシステムは、エネルギーを
蓄積するアキュムレータと一緒に患者の体内に移植されるように構成された人工腸セクシ
ョンを備える。本発明の腸セクションは、互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開
放端部とを有し、少なくとも第1の開放端部と、場合によってはさらに第2の開放端部は
、患者の腸に外科的に形成された開口部に連結されるように構成される。さらに、アキュ
ムレータは、無線によってエネルギーを充填され、前記人工腸セクションの少なくとも1
つのエネルギー消費部にエネルギーを直接または間接的に供給するように構成される。
【0010】
腸の側方連結
好ましくは、人工腸セクションの少なくとも第1の開放端部と、場合によってはさらに
第2の開放端部は、患者の腸の壁に外科的に形成された側方開口部に連結されるように構
成される。したがって、人工腸セクションは、患者の腸の断面端部に連結されるのではな
く、患者の腸壁の側方開口部に連結され、このために、人工腸セクションのそれぞれの開
放端部は特定の構成を有する。
【0011】
人工腸セクションを側方において腸に連結することによって、腸の蠕動運動によって生
じ、かつ腸の人工腸セクションに作用する力がほとんど回避される。具体的には、人工腸
セクションが腸の断面開口部に連結される場合、腸の蠕動波動が腸と人工腸セクションと
の間の連結部から腸を引き離す傾向がある。これに対して、人工腸セクションが腸の側壁
の開口部に取り付けられる場合、蠕動波動は、腸壁と人工腸セクションとの間の連結部に
ほとんど影響を与えずに人工腸セクションを通過する。
【0012】
側方取り付け構造
人工腸セクションを側方開口部にしっかりと取り付けるために、少なくとも第1の開放
端部は、側方において患者の腸壁に連結できるように端部の周りに形成されたショルダ部
を備えてよい。ショルダ部の少なくとも一部は、人工腸セクションから側方に3mm~2
0mmだけ延びることが好ましい。さらに、ショルダ部は、側方において腸壁に取り付け
られたときに腸壁に概ね一致するように湾曲した断面を有することが好ましい。有利なこ
とに、このように構成された開放端部を腸壁の外側から腸壁に取り付けることができる。
【0013】
改良された実施形態によれば、ショルダ部は、腸壁組織を収容するための隙間を間に有
する上部ショルダ部と下部ショルダ部とに分割することができる。その場合、下部ショル
ダ部は、適切に構成された場合、外科的に形成された側壁開口部を通って患者の腸内に配
置することができ、一方、上部ショルダ部は腸壁の外側に配置される。
【0014】
下部ショルダ部が側壁開口部内を前進するときに側壁開口部が下部ショルダ部上で容易
に伸びることができ、しかも腸壁とショルダ部との間に大きな接触面積が得られるように
、上部ショルダ部を下部ショルダ部よりも大きくすることができる。したがって、腸壁に
接触する上部ショルダ部の表面積も、腸壁に接触する下部ショルダ部の表面積よりも大き
い。
【0015】
患者の腸壁に側方連結するための開放端部は、接着によって患者の腸壁に連結されるよ
うに構成することができる。たとえば、開放端部は、接着剤がよりうまく付着するように
特定の粗な表面構造を有してよい。さらに、縫合によって患者の腸壁に連結されるように
開放端部を構成することができる。たとえば、ショルダ部のある領域を穿孔し、形成され
た孔を通って縫合するか、あるいは針を貫通させるのが容易な材料から形成することがで
きる。同様に、開放端部を特に、ステープリングによって患者の腸壁に連結されるように
構成することができる。
【0016】
腸への前方連結
一般に、人工腸セクションの第1の開放端部と、場合によってはさらに第2の開放端部
を側方において患者の腸壁の開口部に連結することが好ましいが、患者の腸に外科的に形
成された断面開口部に連結されるように開放端部を構成することもできる。
【0017】
前方取り付け構成(バルジ/スリーブ)
この場合、人工腸セクションの開放端部は好ましくは、
導管の外面から外側に、導管の円周の少なくとも一部の周りの導管の周方向に延びる少
なくとも1つのバルジを含む外面を有する導管と、
導管の外面上に、腸組織を埋め込むための隙間が外面と閉塞リングとの間にできるよう
に緩く取り付けられ、腸組織が隙間内に埋め込まれるときに閉塞リングが少なくとも1つ
のバルジ上で滑るのを防止するように少なくとも1つのバルジの断面外径よりも小さいか
あるいは断面外径とほぼ同一である断面内径を有する閉塞リングとを備える。
【0018】
その場合、外側に形成されたバルジを有する人工腸セクションを、腸部がバルジの一方
の側からバルジ上を延びるように腸部の断面開口部に挿入し、腸部が人工腸セクションの
外面と閉塞リングとの中間に配置されるように閉塞リングを腸部上でバルジのそれぞれの
他方の側からバルジの方へ前進させることによって、腸部の断面開口部に固定することが
できる。
【0019】
あるいは、開放端部は、外面を有する導管と、軸方向に延び、導管の前記外面の少なく
とも一部の周りにぴったりと嵌るように構成された可とう性のスリーブとを有する導管を
備えてよい。可とう性のスリーブは、折り畳まれるかあるいは丸められるか、あるいは折
り畳み可能であるように前記外面上に取り付けることができる。いずれの場合も、次に、
人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に挿入し、腸部がスリーブと人工腸セク
ションの外面との中間に配置されるように、腸部と人工腸セクションの開放端部の両方の
上方を延びるように可とう性のスリーブを配置することによって、人工腸セクションの開
口部端部を腸部の断面開口部に固定することができる。
【0020】
可とう性のスリーブが、折り畳み可能になるように人工腸部材の開放端部の外面上に取
り付けられる場合、腸部と人工腸セクションの開放端部の両方の上方を延びるように可と
う性のスリーブを配置するステップは、腸部が折り畳まれたスリーブの中間に配置される
ように可とう性のスリーブを折り畳むことを含む。
【0021】
バルジとスリーブは、組み合わされて使用されるように1本の導管上に設けることもで
きる。
【0022】
スリーブまたはバルジを含む人工腸セクションの上述の導管は、たとえば、腸の蠕動運
動によって生じる可能性があり、腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の強度
を向上させる。
【0023】
さらに、開放端部の導管は多層材料を含むことが好ましい。たとえば、開放端部が、生
体組織を内部成長させる多孔内部成長層を備えることが有利である。内部成長層は、網状
構造を有し、最も好ましくはDacron(登録商標)で作られる。
【0024】
流通構成
直線状連結部/バイパス連結部 人工腸セクションの第1および第2の開放端部の上述
の構造によれば、患者の腸に外科的に形成された断面開口部に第1の開放端部と第2の開
放端部の両方を連結して中間腸セクションを形成するか、あるいは患者の腸の壁に外科的
に形成された側方開口部に第1の開放端部と第2の開放端部の両方を連結してバイパス腸
セクションを形成することが可能である。
【0025】
ろう孔/肛門連結部
あるいは、外科的に形成されたろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の肛門
に隣接する組織に連結して腸端部セクションを形成するように第2の開放端部を構成する
ことができる。
【0026】
残りの腸への下流側連結部
あるいは、第2の開口端部を、場合に応じて患者の小腸の一部または患者の大腸の一部
に連結するように構成することができ、次に、患者の腸のこの部分を外科的に形成された
ろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の肛門に隣接する組織まで延ばすことが
できる。
【0027】
材料
第1の開放端部は生体適合性材料で作られることが好ましい。開放端部の生体適合性材
料は、以下の材料群、すなわち、チタン、ステンレススチール、セラミクス、生体適合性
ポリマー材料のうちの少なくとも1つの材料を含んでよい。具体的には、生体適合性ポリ
マー材料は、以下のポリマー群、すなわち、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、
ポリウレタン、発砲ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のうちの少なくとも1つ
のポリマーを含んでよい。
【0028】
エネルギー消費部としての腸内容物相互作用デバイス
好ましい実施形態では、人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部は、人
工腸セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接また
は間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つの部材を備える。
【0029】
エネルギー消費部としての流れ制御デバイス
より高度な実施形態では、少なくとも1つの部材は、人工腸セクションから第2の開放
端部を通る腸内容物の流れを制御するように構成された流れ制御デバイスを備えてよい。
流れ制御デバイスは、人工腸セクションから第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止
するように構成されることが好ましい。
【0030】
流れ制御デバイスとしての出口弁
流れ制御デバイスは、閉位置において第2の開放端部を通る腸内容物の流れを防止する
出口弁を含む少なくとも1つの弁を備えることが好ましい。好ましくは、出口弁は、シス
テムの非作動周期中に弁を閉じたままにしておくのにエネルギーが必要とされないように
通常は閉じられている弁である。
【0031】
流れ制御デバイスの追加部としての入口弁
さらに、流れ制御デバイスは、開位置において腸内容物がリザーバの方へ流れるのを可
能にする入口弁を備えてよい。このことは、特にリザーバが空であり、入口弁を閉じるべ
きであるときに有利である場合がある。したがって、入口弁は、通常は開いている弁であ
ることが好ましい。したがって、出口弁と入口弁は、2つの弁のうちの一方が閉じられた
ときに、それぞれの他方の弁が開かれ、一方の弁が開かれたときに、それぞれの他方の弁
が閉じられるように協働するように構成されることが好ましい。
【0032】
弁の種類
使用することのできる様々な弁の種類に関して、少なくとも1つの弁はたとえば、体積
を変化させることによって弁を開閉するように構成された可変体積を有するコンパートメ
ントを備えてよい。あるいは、少なくとも1つの弁は、コンパートメントに油圧流体を充
填したりコンパートメントを空にしたりする少なくとも1つの通路を備える。コンパート
メントは、導管を通過させる開口部を形成する少なくとも1つの可とう性の壁を有し、開
口部がコンパートメントの体積の増大時に閉鎖されるように構成されることが好ましい。
【0033】
異なる実施形態によれば、少なくとも1つの弁はフラップ弁であってよい。フラップ弁
は、たとえば回転可能な円板を備えてよい。
【0034】
人工腸部材から分離された特別弁
弁は好ましくは人工腸セクションの一体部分を形成するが、人工腸セクションは、人工
腸セクションの上流側および/または下流側への、患者の腸の本来のセクション内の腸内
容物の流れを制御するように構成された1つまたは複数の特別弁をさらに備えてよい。特
別弁は、人工セクションにしっかりと連結することができるが、完全に分離された部分を
形成してもよい。外部弁は、患者の体内の、患者の本来の腸のあるセクションの外側に移
植されるように構成され、本来の腸セクションにその外側から作用して本来の腸セクショ
ンを通る腸内容物の流れを防止するように構成された少なくとも1つの部材を備える。こ
の弁構成は、弁が移植されるときに本来の腸のそれぞれの部分に対する手術を必要としな
い。
【0035】
特別弁は、腸セクションの筋肉または神経組織を電気的に刺激し、本来の腸セクション
を少なくとも部分的に収縮させるように構成された少なくとも1つの電気刺激デバイスを
備えてよい。これは、腸を狭さくさせる非常に性別的な方法である。刺激デバイスは、本
来の腸セクションに電気パルスを印加するように構成された少なくとも1つの電極を備え
ることが好ましい。
【0036】
腸セクションのそれぞれの異なる部分を経時的に刺激するように構成された刺激デバイ
スを利用すると特に有利である。したがって、腸セクションの様々な部分をそれぞれの異
なる時間に所定の刺激パターンで刺激することによって狭さくさせることができ、それに
よって、現在刺激されていない腸部に回復のための時間が与えられ、それぞれの腸セクシ
ョンにおける血液循環が向上する。
【0037】
さらに、特に、腸セクションのそれぞれの異なる部分を波動状に本来の腸内容物の流れ
と逆方向に経時的に刺激するように刺激デバイスを構成することができる。その結果、弁
は、本来の腸内容物の流れを妨げ、それによって弁の閉機能を向上させる。
【0038】
少なくとも1つの弁は、刺激デバイスの代わりに、あるいは好ましくは刺激デバイスに
加えて、患者の体内に移植され、本来の腸セクションの外側から本来の腸セクションを機
械的に少なくとも部分的に狭さくさせる狭さくデバイスを備えてよい。刺激デバイスが狭
さくデバイスと組み合わされる場合、刺激デバイスと狭さくデバイスは、同じ腸セクショ
ンに作用することが好ましい。その場合、狭さくデバイスがその通常の状態で本来の腸セ
クションを部分的にのみ狭さくさせ、時間の経過とともに腸を損傷することのないように
すると有利である。腸の完全な狭さく、したがって、完全な閉鎖は、上述のように本来の
腸セクションを追加的に刺激することによって実現される。
【0039】
さらに、狭さくデバイスによる腸セクションの狭さくが解放されると、刺激デバイスは
、本来の腸セクションのそれぞれの異なる部分を経時的に本来の腸内容物の流れの方向に
波動状に刺激することによって、本来の腸セクションに沿って腸内容物を汲み出すのに使
用されるように構成されている場合はそうすることができる。この状況では、弁は、人体
からの糞便の排出を能動的に支援する追加的なポンプ機能を備えてよい。
【0040】
エネルギー消費部としてのポンプ
人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部は、腸内容物を第2の開放端部
を通って人工腸セクションの外側に送るポンプを備えてよい。
【0041】
リザーバを含むポンプ
人工腸セクションは、ポンプだけでなく、第1の開放端部を通って供給された腸内容物
を受け取って一時的に収集するリザーバを第1の開放端部と第2の開放端部との間に備え
てよい。この場合、ポンプは、第2の開放端部を通ってリザーバを空にするように構成さ
れることが好ましい。様々な異なる構造を実現することができる。
【0042】
たとえば、リザーバは蛇腹部材によって形成することができ、前記蛇腹部材は、その一
方の端部を閉鎖する端壁を有する。その場合、端壁は、前記端壁が前進したときに蛇腹部
材の体積が低減するようにポンプの一部を構成することができる。蛇腹部材は、通常拡張
位置に強制的に配置されるように弾性の材料で作られることが好ましい。
【0043】
他の実施形態では、ポンプは、リザーバ内に延び、したがって、ピストンが前進したと
きにリザーバの体積を低減させる前端を有する可動ピストンを備えてよい。ピストンには
、通常引き込み位置に強制的に配置されるようにばね負荷をかけることが好ましい。
【0044】
あるいは、常にリザーバの内側に配置されるようにポンプを構成することができる。
【0045】
他の代替実施形態では、リザーバは、可とう性の壁を有してよく、ポンプは、リザーバ
を圧搾することによってリザーバを空にするように構成される。この場合、ポンプはたと
えば、リザーバのそれぞれの異なる部分を経時的に波動状に狭さくさせることによって、
リザーバの各部を交互に狭さくさせたり解放したりして腸内容物をリザーバに沿って汲み
出すように構成された狭さくデバイスを含んでよい。具体的には、リザーバはチューブ状
形態を有してよく、チューブ状リザーバにその外側から作用するポンプとしてローラ・ポ
ンプを使用することができる。
【0046】
エネルギー消費部としてのモータ
人工腸セクションの弁またはポンプ、または他のエネルギー消費部が手動駆動可能では
ないかあるいは手動以外でも駆動可能である場合、人工腸セクションは、人工腸セクショ
ンの少なくとも1つのエネルギー消費部を自動的に駆動するように構成された少なくとも
1つのモータを備えてよい。モータは、電気エネルギーまたは電磁エネルギーによって駆
動されるように構成されることが好ましい。
【0047】
本発明に関するモータは、機械エネルギー以外のエネルギーを機械エネルギーに変換す
るデバイスである。本発明に関するポンプは、液体またはペースト状の物質を前進させる
デバイスであるが、エネルギーを機械エネルギーに変換するとピストン、蛇腹部材などの
機械手段の介在無しに液体またはペースト状の物質が前進するようなある種の状況では、
同時にモータであってもよい。
【0048】
たとえば、少なくとも1つの弁または複数の弁をそれぞれ、その閉位置と開位置との間
で移動させるように少なくとも1つのモータを構成することができる。さらに、ポンプを
駆動するように少なくとも1つのモータを構成することができる。
【0049】
少なくとも1つのモータを作動させる手動操作可能なスイッチであって、好ましくは、
患者の体外から操作可能であるように皮下移植されるように構成されたスイッチを設ける
ことができる。
【0050】
エネルギーの伝送
エネルギーが無線によって伝送されない場合、少なくともアキュムレータとエネルギー
消費部、特にモータとの間にガルバニック結合部材を設けて、エネルギーをモータに接触
的に伝送することができる。
【0051】
あるいは、エネルギーを無線によってアキュムレータからモータまで伝送することがで
きる。したがって、エネルギー源は、エネルギーをアキュムレータからエネルギー消費部
まで無線によって伝送するように構成された無線エネルギー送信器を備えてよい。
【0052】
好ましくは、部品の数を減らし、場合によってはシステムの効率を高めるために、アキ
ュムレータから無線によって伝送されたエネルギーを運動エネルギーに直接変換するよう
にエネルギー消費部、特にモータを構成することができる。代替実施形態では、エネルギ
ー消費部は、アキュムレータから無線によって伝送されたエネルギーを電気エネルギーに
変換する変換デバイスを備える必要がある。
【0053】
同様に、システムは好ましくは、患者の体外から無線によって伝送されたエネルギーを
、移植されたシステムのアキュムレータに蓄積されるエネルギーに変換する移植可能なエ
ネルギー変換デバイスを備え、エネルギーを患者の体外から前記移植可能なエネルギー変
換デバイスに無線によって伝送するように構成された無線エネルギー送信器をさらに備え
る。
【0054】
エネルギー消費部が電気エネルギーによって駆動され、前記エネルギー変換デバイスが
無線エネルギーを電気エネルギーに変換するようにシステムを構成するとさらに好ましい
。
【0055】
エネルギー送信器は、電磁界、磁界、または電界を生成するように構成することができ
る。無線エネルギーは、エネルギー変換デバイスにより少なくとも1つの無線信号によっ
て伝送することができる。具体的には、赤外光信号、可視光信号、紫外光信号、レーザ信
号、マイクロ波信号、X線放射信号、およびガンマ放射信号のうちの少なくとも1つを含
む電磁波信号を含んでよい少なくとも1つの無線エネルギー信号によってエネルギーを伝
送するようにエネルギー送信器を構成することができる。また、無線エネルギー信号は、
音声信号または超音波信号を含んでよい。さらに、無線エネルギー信号は、デジタル信号
またはアナログ信号、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0056】
エネルギーの伝送フィードバック
有利なことに、後述の制御デバイスの一部を構成することができるフィードバック・シ
ステムを設け、アキュムレータに蓄積されるエネルギーに関するフィードバック情報を無
線によって人体の内部から外部に送信することができる。フィードバック情報は次に、エ
ネルギー送信器によって伝送される無線エネルギーの量を調整するのに使用される。この
ようなフィードバック情報は、人体の内部で受け取られた無線エネルギーの量と少なくと
も1つのエネルギー消費部によって消費されたエネルギーの量とのバランスとして定義さ
れるエネルギー・バランスに関してよい。あるいは、フィードバック情報は、人体の内部
で受け取られた無線エネルギーの率と少なくとも1つのエネルギー消費部によって消費さ
れたエネルギーの率とのバランスとして定義されるエネルギー・バランスに関してよい。
【0057】
アキュムレータ
アキュムレータは、再充電可能な電池を備えることが好ましい。その代わりにあるいは
それに加えて、アキュムレータはコンデンサを備えてよい。アキュムレータを患者の体内
に移植し、人工腸セクションに固定的に連結するかあるいは人工腸セクションから距離を
置いて配置するように構成ことができる。
【0058】
一次エネルギー源
患者の体外からのエネルギーをアキュムレータに充填する一次エネルギー源を設けるこ
とができる。一次エネルギー源は、患者の体に取り付けられるように構成されることが好
ましい。
【0059】
制御ユニット
特に、2つの弁の一方が閉じられたときに他方の弁が開き、一方の弁が開かれたときに
他方の弁が閉じられるように、出口弁の開動作および/または入口弁の閉動作を制御する
ことなどのように、システムの1つまたは複数の部材を直接または間接的に制御するよう
に構成された制御ユニットを設けると有利である。
【0060】
制御ユニットは、たとえば特にリザーバを空にするように患者によって操作可能である
ことが好ましい。
【0061】
制御ユニットの少なくとも一部を患者の体内に移植可能であるように構成することがで
きる。たとえば、制御ユニットを作動させる手動操作可能なスイッチであって、好ましく
は患者の体外から操作できるように皮下移植されるように構成されたスイッチを設けるこ
とができる。また、制御ユニットは、患者の体内に移植されるように構成された第1の部
分と、患者の体外から第1の部分と協働するように構成された第2の部分とを備えてよい
。この場合、エネルギーが前記無線エネルギー送信器によって患者の体外から前記移植可
能なエネルギー変換デバイスに伝送されるのと同様に、制御ユニットの外側の第2の部分
から制御ユニットの移植された第1の部分にデータを送信するように、制御ユニットを構
成することができる。
【0062】
すなわち、制御信号を無線によって制御ユニットの移植可能な第1の部分に送信し、患
者の体外から少なくとも1つのエネルギー消費部を制御するように制御ユニットの第2の
部分を構成することができる。また、制御ユニットの移植可能な第1の部分は、制御ユニ
ットの第2の部分を介してプログラム可能であってよい。さらに、制御ユニットの第2の
部分にフィードバック信号を送信するように制御ユニットの移植可能な第1の部分を構成
することができる。
【0063】
センサ
さらに、患者の物理的パラメータを直接または間接的に検知するように構成された物理
的パラメータ・センサを設けることができる。物理的パラメータ・センサは、患者の以下
の物理的パラメータ、すなわち、人工腸セクション内の圧力、患者の本来の腸内の圧力、
人工腸セクションの膨張、患者の本来の腸の腸壁の膨張、患者の腸壁の移動のうちの少な
くとも1つを検知するように構成することができる。
【0064】
同様に、システムの機能パラメータを直接または間接的に検知するように構成された機
能パラメータ・センサを設けることができ、その場合、システムの以下の機能パラメータ
、すなわち、人工腸セクションなどのシステムの一部に対する圧力、人工腸セクションの
壁などのシステムの一部の膨張、電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメ
ータ、システムの可動部の位置または移動のうちの少なくとも1つを検知するように機能
パラメータ・センサを構成することができる。
【0065】
好ましくは、パラメータの値が所定のしきい値を超えたことをセンサが検知したときに
信号を生成するように構成されたインジケータがセンサに結合される。センサ信号は、以
下の種類の信号、すなわち、音声信号、視覚信号の少なくとも一方を含んでよい。
【0066】
治療(移植)方法
本発明は、上述のシステムに関するだけでなく、患者の腸に関する疾患を有する患者を
治療する方法、特に、システムを移植する方法およびシステムを患者に設置された後に使
用する方法にも関する。
【0067】
したがって、本発明によって患者を治療する手術方法は、
患者の皮膚および腹壁を切開するステップと、
患者の腸のある領域を切開するステップと、
切開された腸領域に少なくとも1つの開口部を外科的に形成して人工腸開口部を形成す
るステップと、
互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有する人工腸セクションを設
け、第1の開放端部を人工腸開口部と流体連通するように人工腸開口部に固定するステッ
プと、
無線によって患者の体外からのエネルギーを充填されるように構成されたアキュムレー
タを設け、アキュムレータから前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費
部に直接または間接的にエネルギーを供給できるように患者の体内にアキュムレータを配
置するステップと、
腹壁および皮膚を縫合するステップとを含む。
【0068】
患者を治療する対応する腸腔鏡手術方法は、
患者の皮膚および腹壁に小さな開口部を設けるステップと、
腹腔に針を導入するステップと、
腹腔をガスで膨張させるステップと、
少なくとも1つのトロカールを腹腔に挿入するステップと、
トロカールを通ってカメラを挿入するステップと、
好ましくは第2のトロカールを通って少なくとも1つの切開器具を挿入するステップと
、
腸のある領域を切開するステップと、
切開された腸領域の少なくとも1つの開口部を外科的に形成して人工腸開口部を形成す
るステップと、
互いに流体連通する第1の開放端部と第2の開放端部とを有する人工腸セクションを設
け、第1の開放端部を人工腸開口部と流体連通するように人工腸開口部に固定するステッ
プと、
無線によって患者の体外からのエネルギーを充填されるように構成されたアキュムレー
タを設け、アキュムレータから前記人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費
部に直接または間接的にエネルギーを供給できるように患者の体内にアキュムレータを配
置するステップと、
各器具、カメラ、およびトロカールを引き抜くステップと、
上記ステップに関連して、必要に応じて腹壁を縫合し、皮膚を永久的に閉じるステップ
とを含む。
【0069】
アキュムレータが人工腸セクションに固定的に連結されるように設けられる場合、アキ
ュムレータを人工腸セクションと一緒に患者の体内に配置することができる。あるいは、
アキュムレータが人工腸セクションから分離して設けられる場合、アキュムレータを患者
の体内に人工腸セクションから距離を置いて移植することができる。
【0070】
エネルギーがアキュムレータから人工腸セクションのエネルギー消費部に無線によって
伝送されない場合、アキュムレータを人工腸セクションにガルバニック結合し、エネルギ
ーを人工腸セクションの少なくとも1つのエネルギー消費部に接触的に伝送することがで
きる。
【0071】
腸の分割
この移植方法は、腸を分割して腸の1つまたは2つの断面開口部を得ることを含んでよ
い。この移植方法は、
切開された腸領域の、形成すべき腸開口部の下流側の部分を切開し、したがって、切開
された部分の両側で、腸間膜を通した切開された腸領域への血液の供給ができるだけ維持
されるように、切開された部分に連結された腸間膜を開放するステップと、
患者の腸を切開された部分において分割して、人工腸開口部が下流側の断面開口部とし
て形成された腸の上流側部分と、人工腸開口部が上流側の断面開口部として形成された腸
の下流側部分とを形成し、腸間膜が上流側腸部と下流側腸部との間の組織連結を維持する
ステップとをさらに含んでよい。
【0072】
上流側端部における前方連結
人工腸セクションの少なくとも第1の開放端部を上流側腸部の断面下流側開口部と流体
連通するように断面下流側開口部に固定することができる。
【0073】
下流側端部における前方連結
また、人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通
するように断面上流側開口部に固定することができる。
【0074】
両方の端部における前方連結
人工腸部材を分割された腸の両方の断面開口部に連結する場合、この方法は、上述の2
つのステップの組合せ、すなわち、人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の断
面下流側開口部と流体連通するように断面下流側開口部に固定し、人工腸セクションの第
2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通するように断面上流側開口部に
固定することを含んでよい。
【0075】
上流側での前方連結、下流側での側方連結
あるいは、人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の壁の側方開口部に連結す
ることができ、その場合、この移植方法は、
上流側腸部の下流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
上流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を外科的に形成するステップ
と、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように
側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の断面上流側開口部と流体連通するよ
うに断面上流側開口部に固定するステップとを含む。
【0076】
前方連結用のスリーブ/バルジ・コネクタ
人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に固定するステップは好ましくは、
人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口部に挿入するステップと、
腸部がスリーブと人工腸セクションの外側表面との中間に配置されるように腸部と人工
腸セクションの開放端部との両方の上方を延びるように可とう性のスリーブを配置するこ
ととを含む。
【0077】
可とう性のスリーブは、折り畳み可能になるように人工腸セクションの開放端部の外面
上に取り付けられ、腸部と人工腸セクションの開放端部との両方の上方を延びるように可
とう性のスリーブを配置することは、腸部が折り畳まれたスリーブの中間に配置されるよ
うに可とう性のスリーブを折り畳むことを含む。
【0078】
上記の代わりにあるいは上記に加えて、人工腸セクションの開放端部を腸部の断面開口
部に固定するステップは、
腸部がバルジの一方の側からバルジ上を延びるように、バルジが外側に形成された人工
腸セクションを腸部の断面開口部に挿入することと、
腸部が人工腸セクションの外面と閉塞リングとの中間に配置されるように閉塞リングを
腸部上でバルジのそれぞれの他方の側からバルジの方へ前進させることとを含む。
【0079】
スリーブまたはバルジを含む人工腸セクションの上述の開放端部は、たとえば、腸の蠕
動運動によって生じる可能性があり、腸を引っ張る傾向がある軸方向の力に対する連結の
強度を向上させる。人工腸セクションの開放端部はスリーブとバルジを組み合わせること
もできる。
【0080】
上流側の側方連結、下流側の前方連結
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の壁の側方開口部に連結し、一方、第
1の開放端部を上流側腸部の断面開口部に連結することができることを上記で説明した。
この連結を逆にすることもでき、その場合、この移植方法は、
下流側腸部の上流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
下流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように
側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の断面下流側開口部と流体連通するよ
うに断面下流側開口部に固定するステップとを含む。
【0081】
両方の端部における側方連結
もちろん、人工腸部材の両方の開放端部を腸壁の側方開口部に連結することも可能であ
り、場合によっては好ましく、その場合、この移植方法は、
上流側腸部の下流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
上流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を上流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように
側方腸開口部に固定するステップと、
下流側腸部の上流側で断面開口部を閉鎖するステップと、
下流側腸部の壁に外科的に開口部を形成して側方腸開口部を形成するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を下流側腸部の側方腸開口部と流体連通するように
側方腸開口部に固定するステップとを含む。
【0082】
腸を分割しない両方の端部における側方連結
腸を分割せずに人工腸部材の両方の開放端部を腸壁の側方開口部に連結することも可能
であり、その場合、切開された腸領域に第1の開口部を外科的に形成するステップは、腸
の壁に第1の開口部を外科的に形成して第1の側方腸開口部を形成するステップと、第1
の開口部の下流の位置で腸の壁に第2の開口部を外科的に形成して第2の側方腸開口部を
形成するステップとを含み、この移植方法は、
第1の側方腸開口部と第2の側方腸開口部との間の位置で患者の腸を永久的に閉鎖して
、前記永久閉鎖部の上流側に上流側腸部を形成し、前記永久閉鎖部の下流側に下流側腸部
を形成するステップと、
人工腸セクションの第1の開放端部を第1の側方腸開口部に固定するステップと、
人工腸セクションの第2の開放端部を第2の側方腸開口部に固定するステップとを含む
。
【0083】
側方取り付け構造
人工腸セクションの開放端部が側方腸開口部と流体連通するように側方腸開口部に固定
される場合、開放端部の周りに形成された上述のショルダ部を、側方腸開口部を囲むよう
に患者の腸壁に連結するステップを含んでよい。特に、開放端部を腸に固定するステップ
は、ショルダ部を患者の外側腸壁に取り付けることを含んでよい。
【0084】
あるいは、ショルダ部が、間に隙間ができるように上部ショルダ部と下部ショルダ部と
に分割される場合、人工腸セクションの開放端部を側方腸開口部に固定するステップは、
腸壁組織が隙間に収容されるように、下部ショルダ部を患者の腸の内側に配置し、上部シ
ョルダ部を患者の腸の外側に配置することを含む。
【0085】
人工腸セクションの開放端部を側方腸開口部に固定するステップは、患者の腸壁への開
放端部の接着、縫合、および/またはステープリングを含んでよい。
【0086】
ろう孔からの出口
上述のように、外科的に形成されたろう孔または患者の直腸もしくは肛門または患者の
肛門に隣接する領域に下流側腸部を連結することができる。ろう孔に連結する場合、この
方法は、
患者の皮膚および腹壁を切開して腸ろう孔の開口部を形成するステップと、
ろう孔開口部の領域を切開するステップと、
腸を人工腸セクションの下流側の位置で分割して、下流側端部に断面開口部を有する上
流側の本来の腸セクションと、下流側の本来の腸セクションとを形成するステップと、
上流側の本来の腸セクションの腸間膜をその断面開口部の領域で切開して、腸ろう孔を
形成する準備を整えるステップと、
上流側の本来の腸セクションの下流側端部を腹壁および皮膚を通って前進させるステッ
プと、
腸粘膜を裏返した状態で上流側の本来の腸セクションの断面開口部を皮膚に縫合し、そ
れによって腸ろう孔を形成するステップとを含む。
【0087】
肛門からの出口
患者の肛門または患者の肛門に隣接する組織に連結する場合、この方法は、
腸を人工腸セクションの下流側の位置で分割して、下流側端部に断面開口部を有する上
流側の本来の腸セクションと、患者の肛門に至る下流側の本来の腸セクションとを形成す
るステップと、
患者の肛門の領域を切開し、下流側の本来の腸セクションを患者の肛門から外科的に分
離し、一方、腸を分割するステップと患者の肛門に至る腸セクションを分離するステップ
とを逆の順序で交互にすることができるステップと、
上流側の本来の腸セクションの腸間膜をその下流側端部の所の断面開口部の領域で切開
して、上流側の本来の腸セクションを患者の肛門または患者の肛門に隣接する組織に連結
する準備を整えるステップと、
上流側の本来の腸セクションの下流側端部を患者の肛門を通って前進させるステップと
、
上流側の本来の腸セクションの断面開口部を患者の肛門または患者の肛門に隣接する領
域に縫合するステップとを含む。
【0088】
状況に応じて、腸を分割して上流側の本来の腸セクションを形成するステップを患者の
小腸または患者の大腸に対して実行することができる。
【0089】
エネルギー消費部としての腸内容物相互作用デバイス(流れ制御デバイス/出口弁/入
口弁/ポンプ/リザーバ) 上述のように、人工腸セクションまたはシステムは、人工腸
セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれる腸内容物と直接または間
接的に相互作用するように構成された少なくとも1つのエネルギー消費部を備えてよい。
この部材は、人工腸セクションと一緒に移植される。上記と同様に、エネルギー消費部は
、第2の開放端部を通した人工腸セクションからの腸内容物の流れを制御するように構成
された流れ制御デバイスを備えてよい。
【0090】
この場合も、流れ制御デバイスは、閉位置において第2の開放端部を通る腸内容物の流
れを防止する出口弁を備えてよく、さらに、開位置において腸内容物が第1の開放端部を
通って人工腸セクションに流入するのを可能にする入口弁を備えてよい。
【0091】
上記の代わりにあるいは上記に加えて、上記と同様に、流れ制御デバイスは、腸内容物
を第2の開放端部を通って人工腸セクションの外側まで前進させるポンプを備えてよい。
【0092】
第1の開放端部を通って供給される腸内容物を受け取って一時的に収集するリザーバが
、第1の開放端部と第2の開放端部との間に設けられる場合、第2の開放端部を通ってリ
ザーバを空にするようにポンプを構成することができる。
【0093】
さらに、ポンプが、ポンプを作動させる手動操作可能なスイッチを備える場合、移植方
法は、スイッチを患者の体外から操作可能であるように皮下に移植するステップをさらに
含んでよい。
【0094】
モータ
この場合も、少なくとも1つのモータを、人工腸セクションと一緒に移植することがで
き、かつ流れ制御デバイスの1つまたは複数のエネルギー消費部を自動的に駆動するよう
に構成することができる。モータが、モータを作動させる手動操作可能なスイッチを備え
る場合、移植方法は、スイッチを患者の体外から操作できるように皮下に移植するステッ
プをさらに備えてよい。
【0095】
エネルギーの伝送
エネルギーが、たとえば患者の体外から患者の体内のエネルギー消費部に無線によって
伝送され、かつ/あるいは特にアキュムレータに蓄積されるか、あるいはアキュムレータ
からエネルギー消費部に伝送される場合、さらに、無線エネルギーを電気エネルギーに変
換するエネルギー変換デバイスを移植することが必要になる場合がある。その代わりにあ
るいはそれに加えて、たとえば、移植されたエネルギー源からエネルギー消費部に接触的
にエネルギーを伝送するガルバニック結合部材を移植することができる。
【0096】
アキュムレータ
少なくとも1つの再充電可能な電池がアキュムレータとして設けられることが好ましい
。その代わりにあるいはそれに加えて、少なくとも1つのコンデンサをアキュムレータと
して設けることができる。
【0097】
制御ユニット
さらに、上述のように、やはり患者の体内に移植された部材のうちの1つまたは複数を
直接または間接的に制御するように構成された制御ユニットの少なくとも一部を、患者の
体内に移植することができる。制御ユニットが、制御ユニットを作動させる手動操作可能
なスイッチを備える場合、移植方法は、前記スイッチを患者の体外から操作可能であるよ
うに皮下に移植するステップをさらに含んでよい。
【0098】
センサ
上述のように、患者の内部および患者の内部に移植されたシステムにおける物理的パラ
メータおよび/または機能パラメータを直接または間接的に検知するように1つまたは複
数の物理的パラメータ・センサおよび/または機能パラメータ・センサを移植することが
できる。センサが圧力センサである場合、センサを人工腸セクションまたは患者の本来の
腸に配置してそれぞれ、人工腸セクションまたは患者の本来の腸内の圧力を検知すること
ができる。センサが張力センサである場合、センサを人工腸セクションまたは患者の本来
の腸に接触するように配置して、それぞれ人工腸セクションまたは患者の本来の腸の膨張
を検知することができる。センサが移動量センサである場合、センサを人工腸セクション
または患者の本来の腸に接触するように配置して、それぞれ人工腸セクションまたは患者
の本来の腸の移動量を検知することができる。機能センサは、以下の機能パラメータ、す
なわち、システムに関する電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータま
たは刺激パラメータのうちの少なくとも1つを測定するように構成することができる。
【0099】
使用
本発明によるシステムが適切に設置された後、人工腸セクションの少なくとも1つのエ
ネルギー消費部が、人工腸セクションの第1の開放端部と第2の開放端部との間に含まれ
る腸内容物と直接または間接的に相互作用するように構成された少なくとも1つの部材を
備える場合、少なくとも1つの部材を腸内容物と相互作用するように作動させることがで
きる。
【0100】
出口弁および入口弁
少なくとも1つの部材が、閉位置において人工腸セクションから第2の開放端部を通る
腸内容物の流れを防止する出口弁を備える場合、この使用方法は、出口弁を開くステップ
と、次に人工腸セクションから腸内容物を除去するステップとをさらに含んでよい。さら
に、開位置において腸内容物が第1の開放端部を通って人工腸セクションに流入するのを
可能にする入口弁を少なくとも1つの部材がさらに備える場合、この方法は、人工腸セク
ションから腸内容物を除去する前に入口弁を閉じるステップをさらに含んでよい。
【0101】
ポンプ
人工腸部材内部の腸内容物と相互作用する少なくとも1つの部材がポンプを備える場合
、この使用方法は、腸内容物をポンプによって人工腸セクションからその第2の開放端部
を通って人工腸セクションの外側まで前進させるステップをさらに含んでよい。ポンプは
、皮下に配置されたアクチュエータを患者の体外から手動で操作することによって作動さ
せることができる。
【0102】
リザーバを含むポンプ
具体的には、人工腸セクションが、第1の開放端部を通って供給された腸内容物を受け
取って一時的に収集するリザーバを第1の開放端部と第2の開放端部との間に備える場合
、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステップは、リザーバを空にするように
ポンプを動作させることを含んでよい。
【0103】
リザーバが、一方の端部の所で蛇腹部材を閉鎖し、かつポンプの一部を構成する端壁を
有する蛇腹部材で形成される場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させるステッ
プは、蛇腹部材の体積を低減させるように端壁を前進させることを含んでよい。
【0104】
ポンプが、前端がリザーバ内まで延びる可動ピストンを備える場合、腸内容物を腸セク
ションの外側まで前進させるステップは、リザーバの体積を低減させるようにピストンを
前進させることを含んでよい。
【0105】
リザーバが可とう性の壁を有する場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させる
ステップは、リザーバをポンプによって圧搾することを含んでよい。たとえば、ポンプは
狭さくデバイスを含んでよく、その場合、腸内容物を腸セクションの外側まで前進させる
ステップは、リザーバのそれぞれの異なる部分を経時的に波動状に狭さくさせることによ
って、リザーバの各部を交互に狭さくさせたり解放したりして腸内容物をリザーバに沿っ
て汲み出すことを含んでよい。具体的には、リザーバはチューブ状形態を有してよく、ポ
ンプは、チューブ状リザーバにその外側から作用するローラ・ポンプであってよい。
【0106】
モータ
さらに、人工腸部材の内部の腸内容物と相互作用する少なくとも1つの部材がモータを
備える場合、この使用方法は、少なくとも出口弁をモータによってその開位置と閉位置と
の間で移動させる、かつ/あるいは少なくともポンプをモータによって駆動するステップ
をさらに含んでよい。いずれの場合も、モータは、皮下に配置されたアクチュエータを患
者の体外から手動で操作することによって作動させることが好ましい。
【0107】
エネルギー
この場合も、エネルギーは、患者の体外からアキュムレータに無線によって伝送される
必要がある。したがって、アキュムレータにエネルギーを充填する際、この使用方法は、
患者の体外から無線によってエネルギーを伝送するステップと、
患者の体内に移植されたエネルギー変換デバイスによって、無線によって伝送されたエ
ネルギーをアキュムレータに蓄積されるエネルギーに変換するステップと、
変換されたエネルギーの少なくとも一部をアキュムレータに充填するステップとを含む
。
【0108】
この使用方法は、アキュムレータからシステムの移植された少なくとも1つのエネルギ
ー消費部にエネルギーを供給するステップをさらに含んでよい。
【0109】
より好ましくは、無線によって伝送されたエネルギーの少なくとも一部は、電気エネル
ギーに変換され、無線によって伝送されたエネルギーの前記一部が電気エネルギーに変換
されたときにシステムのエネルギー消費部に使用される。
【0110】
上述のように、有利なことに、電磁界、磁界、または電界によって無線エネルギーを伝
送することができる。具体的には、赤外光信号、可視光信号、紫外光信号、レーザ信号、
マイクロ波信号、X線放射信号、およびガンマ放射信号のうちの少なくとも1つを含む電
磁波信号を含んでよい少なくとも1つの無線エネルギー信号によってエネルギーを伝送す
ることができる。また、無線エネルギー信号は、音声信号または超音波信号を含んでよい
。さらに、無線エネルギー信号は、デジタル信号またはアナログ信号、またはそれらの組
合せを含んでよい。
【0111】
制御
システムの少なくとも1つのエネルギー消費部を制御する制御ユニットの第1の部分が
患者の体内に移植される場合、この使用方法は、制御ユニットの外部の第2の部分を使用
して、制御ユニットの移植された第1の部分にデータを送信するステップをさらに含んで
よい。データは、エネルギーが移植されたエネルギー消費部に伝送されるのと同様に制御
ユニットの移植された第1の部分に送信されることが好ましい。特に、データは、制御ユ
ニットの移植された第1の部分に無線によって送信されることが好ましい。この場合、無
線制御信号を使用することができる。
【0112】
たとえば、制御ユニットの移植された第1の部分を制御ユニットの外部の第2の部分を
介してプログラムすることができる。さらに、制御ユニットの移植された第1の部分から
制御ユニットの外部の第2の部分にフィードバック信号を送信することができる。
【0113】
センサ
上述のセンサのうちの1つまたは複数が設けられる場合、この使用方法は、患者の以下
の物理的パラメータ、すなわち、人工腸セクション内の圧力、患者の本来の腸内の圧力、
人工腸セクションの膨張、患者の本来の腸の腸壁の膨張、患者の腸壁の移動、人工腸セク
ションなどのシステムの一部に対する圧力、人工腸セクションの壁などのシステムの一部
の膨張、電圧、電流、エネルギー・バランスなどの電気的パラメータ、システムの可動部
の位置または移動のうちの1つまたは複数のような、患者の体における物理的パラメータ
および/または患者の体内の人工腸部材またはシステムの機能パラメータを検知するステ
ップを含んでよい。
【0114】
検知された物理的パラメータの値が所定のしきい値を超えたときに、音声信号や視覚信
号などの信号を生成すことができる。
【0115】
次に、本発明について、添付の図面に示される本発明のいくつかの好ましい実施形態に
関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図2】
図1に図示のシステムに対応するあるシステムを示す。
【
図3】
図1に図示のシステムに対応するあるシステムを示す。
【
図4】人工腸セクションの第1および第2の両方の開放端部が、患者の小腸および/または大腸の壁に外科的にそれぞれ形成の側方開口部に取り付けられるシステムを示す図である。
【
図5】第2の開放端部が、患者の腸の断面開口部に連結され、さらに外科的に形成のろう孔に至ることを除いて同様なシステムを示す図である。
【
図6】人工腸セクションの実施形態を示す図である。
【
図7A】
図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。
【
図7B】
図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。
【
図9】人工腸セクションが患者の腸の一部を迂回する実施形態を概略的に示す図である。
【
図10A】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
【
図10B】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
【
図10C】人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形態を示す図である。
【
図11A】ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、
図10A~
図10Cの構造と同様の構造を示す図である。
【
図11B】ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、
図10A~
図10Cの構造と同様の構造を示す図である。
【
図12A】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
【
図12B】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
【
図12C】患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示す図である。
【
図14A】患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、
図12または
図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。
【
図14B】患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、
図12または
図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。
【
図15】人工腸セクションの開放端部の構造を示す図である。
【
図16】腸に対して側方に取り付けられる改良された構造を示す図である。
【
図17】
図5に図示のように、人工腸セクションと患者の下流側腸部を連結するためのリング・アンド・バルジ連結部の拡大図である。
【
図18A】スリーブと組み合わされた
図17のリング・アンド・バルジ連結部を示す図である。
【
図18B】スリーブと組み合わされた
図17のリング・アンド・バルジ連結部を示す図である。
【
図19A】バルジおよびリングが無いことを除いて、
図18Aおよび
図18Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部を示す図である。
【
図19B】バルジおよびリングが無いことを除いて、
図18Aおよび
図18Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明によるシステムを示す
図1において、患者の体内に移植され、患者の腸に外科的
に形成された開口部、具体的には患者の腸の壁の側方開口部に連結された第1の開放端部
を有する人工腸セクションを含む。第2の開放端部が、ろう孔を形成する患者の腹壁から
出ている。ここでは、人工腸セクションは、黒いボックスで示されており、1つまたは複
数の弁、ポンプ、および/または任意の他の流れ制御デバイス、場合によってはリザーバ
と一緒に弁、ポンプ、流れ制御デバイスを駆動するモータなどの少なくとも1つのエネル
ギー消費部を含んでいる。アキュムレータは人工腸セクションとともに移植され、患者の
身体の外側から無線で充電されている。エネルギーはここでは、アキュムレータから人工
腸セクションにガルバニック電流によって伝送される。
【0118】
図2においては、
図1に図示のシステムに対応するシステムであるが、エネルギーが無
線によってアキュムレータから人工腸セクションに伝送される。
【0119】
図2においては、
図1に図示のシステムに対応するシステムであるが、人工腸セクショ
ンの第2の開放端部が患者の肛門から出るものである。
【0120】
図4に示されるのは、人工腸セクションの第1および第2の両方の開放端部が、患者の
小腸および/または大腸の壁に外科的にそれぞれ形成の側方開口部に取り付けられるシス
テムである。腸の下流側部分は、外科的に形成されたろう孔を形成する患者の腹壁から出
ている。腸の下流側部分は、患者の肛門を通って出ることもできる。
【0121】
図5に示されるのは、第2の開放端部が、患者の腸の断面開口部に連結され、さらに外
科的に形成のろう孔に至ることを除いて同様なシステムである。腸の下流側部分は、患者
の肛門を通って出ることもできる。
【0122】
図6に示されるのは、人工腸セクションの実施形態である。当該人工腸セクションは、
人工リザーバと、リザーバの上流側および下流側に配置された入口弁および出口弁とを含
む。リザーバは、共通のハウジング内のポンプに取り付けられており、ポンプと入口弁お
よび出口弁は、一部が患者の体内に移植される制御デバイスによって制御される。制御ユ
ニットの外部と移植された部分との間でデータが無線によって伝送される。さらに、人工
腸セクション、またはやはり患者の体内に移植され、かつここでは弁およびポンプにガル
バニック接続されたアキュムレータに、エネルギーが無線によって伝送される。
【0123】
図7A~7Bは、
図6の構造の第1の実施形態を詳しく示す図である。ポンプは、前端
がリザーバ内まで延びており、したがって、ピストンの前進時にリザーバの体積を低減さ
せる可動ピストンを備えている。ピストンには、通常引き込み位置に設定しやすいように
ばね負荷がかけられている。さらに、入口弁および出口弁は、ここではフラップ弁として
実現されている。フラップ弁は、一方の弁が開かれ、同時に他方の弁が閉じられるように
制御される。
【0124】
図8A~8Bは、
図7Aおよび
図7Bのシステムと同様のシステムを示す図である。た
だし、この場合、入口弁および出口弁は、外側から腸に作用し、圧縮によって腸を閉鎖す
る蛇腹部材を備えている。
図8Aでは、出口弁の蛇腹部材が拡張されてリザーバの下流側
で人工腸セクションを圧縮しており、一方、
図8Bでは、入口弁の蛇腹部材によってリザ
ーバの上流側で人工腸セクションが閉鎖されており、したがって、ポンプのピストンを前
進させることによってリザーバを空にすることができる。
【0125】
図9は、人工腸セクションが患者の腸の一部を迂回する実施形態を概略的に示す図であ
る。当該実施形態では、腸内容物を人工腸セクションの方へ送るように腸が縫合によって
閉鎖されている。人工腸セクションの拡大領域は、リザーバ、1つまたは複数の弁、場合
によってはモータを含むポンプまたは任意の他の流れ制御デバイスなどの、人工腸セクシ
ョン内の腸内容物に作用する任意の種類の部材を表している。さらに、患者の体内に移植
可能であり、かつ好ましくは再充電可能である電池が、人工腸セクションにエネルギーを
供給する。人工腸セクションは無線によって制御され、電池は、再充電可能である場合に
は無線によって充電される。腸上または腸内に移植されたセンサは、腸内の物理的条件に
関するデータを供給し、人工腸セクションを制御する。
【0126】
図10A~10Cは、人工腸セクションが可とう性の壁を含むリザーバを備える実施形
態を示す図である。ポンプが、患者の体内に、リザーバから分離されるがリザーバに近接
して移植され、リザーバを空にするのに使用される。ポンプは、皮下移植された手動操作
可能なスイッチによって作動される。
【0127】
図11A~11Bは、ポンプとリザーバが互いに固定的に連結されることを除いて、図
10A~
図10Cの構造と同様の構造を示す図である。リザーバは、一方の端部の所で蛇
腹部材を閉鎖する端壁を有する蛇腹部材によって形成されている。端壁は、端壁の前進時
に蛇腹部材の体積を低減させることができるようにポンプの一部を構成している。蛇腹部
材は、通常拡張位置に設定しやすいように弾性材料で作られている。
【0128】
図12A~12Bは、患者の体内および体外に移植される互いに協働する複数の弁を示
す図である。これらの弁は、患者の本来の腸に沿って人工腸部材の後方および/または前
方に位置することができる。各弁は、腸セクションの筋肉または神経組織を電気刺激して
腸セクションを少なくとも部分的に収縮させるように構成された電気刺激デバイスを備え
ている。このために、刺激デバイスは、腸セクションに電気パルスを印加するように構成
された少なくとも1つの電極を備えている。腸を開放したり閉鎖したりするには、図示さ
れている3つの刺激デバイスではなく単一の刺激デバイスで十分であるが、複数の刺激デ
バイスが、経時的に腸セクションのそれぞれの異なる部分を刺激するように構成されてい
る。3つの刺激デバイスの機能を1つの一体ユニットとして組み合わせることもできる。
本来の腸内容物の流れの方向が矢印で示されている。
図12A~
図12Cに示されている
ように、本来の腸内容物の流れとは逆方向に腸セクションのそれぞれの異なる部分を波動
状に刺激して腸セクションを閉鎖することができる。本来の腸内容物の流れの方向に波動
状の刺激を生じさせて、腸またはリザーバを空にするのを助けることもできる。
【0129】
図13A~13Bは、狭さくデバイスと組み合わされた
図12A~
図12Cの刺激デバ
イスを示す図である。狭さくデバイスは、
図8Aおよび
図8Bに関して説明した蛇腹弁の
ような、腸セクションを少なくとも部分的に機械的に狭さくさせるためのものである。完
全な狭さくは、それぞれの腸セクションに追加的な電気刺激を施すことによって実現され
る。狭さくデバイスを解放して腸内容物を流通させることができる。
【0130】
図14A~14Bは、患者の腸の断面開口部に連結された人工腸セクションであって、
図12または
図13に示され、人工腸セクションの上流側で患者の腸の周りに配置された
弁を有する人工腸セクションを備えるシステムを示す図である。エネルギーおよび/また
はデータが無線によって送られる。
【0131】
図15は、人工腸セクションの開放端部の構造を示す図である。開放端部の周りに形成
されたショルダ部によって患者の腸の側方開口部に人工腸セクションが取り付けられる。
この端部は、腸に縫合され、それに加えてあるいはその代わりに腸にステープリングされ
かつ/あるいは接着される。
【0132】
図16は、腸に対して側方に取り付けられる改良された構造を示す図である。この構造
においてショルダ部は、腸壁組織を収容する隙間を形成する上部ショルダ部および下部シ
ョルダ部に分割される。上部ショルダ部の表面積は、下部ショルダ部の表面積よりも大き
い。
【0133】
図17は、
図5に図示のように、人工腸セクションと患者の下流側腸部を連結するため
のリング・アンド・バルジ連結部の拡大図である。
【0134】
図18A~18Bは、スリーブと組み合わされた
図17のリング・アンド・バルジ連結
部を示す図である。スリーブは、丸められ、腸の一部がスリーブと導管との中間に配置さ
れるように元に戻すことができる。その後、リングはバルジに対してスリーブ上で押され
る。
【0135】
図19A~19Bは、バルジおよびリングが無いことを除いて、
図18Aおよび
図18
Bに示されている連結部と同様な、人工腸セクションと患者の腸の断面開口部との連結部
を示す図である。
【0136】
図20A~20Bは、
図19Aおよび
図19Bの連結部の代替構成を示す図である。ス
リーブは、巻かれて元に戻されるのではなく、単に腸に被せられる。
【0137】
図21A~21Bは、他のスリーブ連結部を示す図である。この場合、スリーブは、折
り畳み可能になるように開放端部の外面上に取り付けられている。可とう性のスリーブを
折り畳むことによって、腸の一部が折り畳まれたスリーブ同士の中間に配置される。