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特許7460751ポリオールポリマー、そのようなポリマーの調製方法、およびそれを含有するコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリオールポリマー、そのようなポリマーの調製方法、およびそれを含有するコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240326BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G59/24
B32B27/38
B05D7/24 302U
C08G59/40
C08G59/42
C09D163/00
C09D167/00
C09D7/63
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022507620
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 US2020045505
(87)【国際公開番号】W WO2021026505
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】16/535,859
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブレオン, ジョナサン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, ホンイン
(72)【発明者】
【氏名】水原 司
(72)【発明者】
【氏名】ラーマース, ポール エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】サハ, ゴビンダ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-147734(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057458(WO,A1)
【文献】特開昭61-053366(JP,A)
【文献】MANNARI V.M.,Novel Self-Crosslinking Epoxy Oligomers for Cationic-Cure Coatings Applications,International Journal of Plymeric Materials,Vol.55 (2006),pp.293-305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
B32B
B05D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物質から得られるポリオールポリマーであって、前記反応物質が、
a)前記反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物であって、ここで、前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドである、非芳香族エポキシ官能性化合物と、
b)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物と、を含み、
ここで、前記芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、前記反応物質の総固形分重量の少なくとも15重量%を構成し、ここで、前記芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、安息香酸、または4-tert-ブチル安息香酸であり、
ここで、前記反応物質は、非芳香族モノカルボン酸または非芳香族ポリカルボン酸をさらに含み、
ここで、前記ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み
ここで、前記反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、前記芳香族ポリカルボン酸が、前記反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成そして
ここで、前記反応物質が、ε-カプロラクトンを含まない。
ポリマー。
【請求項2】
前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、脂環式ジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、脂環式エポキシド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、前記反応物質の総固形分重量の少なくとも40重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記反応物質が、前記非芳香族モノカルボン酸をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記非芳香族モノカルボン酸が、ヒドロキシル基をさらに含む、請求項4に記載のポリ
マー。
【請求項6】
前記反応物質が、前記非芳香族ポリカルボン酸をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
前記反応物質が、分子内環状エステルをさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリオールポリマーが、3.50または3.50未満の多分散指数を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリオールポリマーが、少なくとも50mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリオールポリマーが、カルボン酸官能基およびエポキシ官能基を含み、0.95超のエポキシ対酸比を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
i)請求項1に記載のポリオールポリマーと、
ii)前記ポリオールポリマーと反応性の架橋剤と、を含む、コーティング組成物。
【請求項12】
前記架橋剤が、ポリイソシアネート、アミノプラスト、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
非水性溶媒をさらに含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
着色剤をさらに含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、非芳香族モノカルボン酸をさらに含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、非芳香族ポリカルボン酸をさらに含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、分子内環状エステルをさらに含む、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
請求項11に記載の組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
【請求項19】
前記コーティングが、前記基材の表面を直接覆って形成されている、請求項18に記載の基材。
【請求項20】
ポリオールポリマーを形成する方法であって、
a)反応物質を反応させるステップであって、前記反応物質が、
i)前記反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物であって、ここで、前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドである、非芳香族エポキシ官能性化合物と、
ii)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物と、を含む、反応させるステップを含み、
ここで、前記芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、前記反応物質の総固形分重量の少な
くとも15重量%を構成し、ここで、前記芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、安息香酸、または4-tert-ブチル安息香酸であり、
ここで、前記反応物質は、非芳香族モノカルボン酸または非芳香族ポリカルボン酸をさらに含み、
ここで、前記ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み
ここで、前記反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、前記芳香族ポリカルボン酸が、前記反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成そして
ここで、前記反応物質が、ε-カプロラクトンを含まない。
方法。
【請求項21】
ステップa)の前記反応物質が、非芳香族モノカルボン酸、非芳香族ポリカルボン酸、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
b)ステップa)からの反応生成物を分子内環状エステルと反応させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオールポリマー、このポリマーの調製方法、それを含有するコーティング組成物、このコーティング組成物から形成されたコーティング、およびそのようなコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
金属性基材および金属性部分を有する他の基材は、特にある特定の環境条件に曝露されると、腐食を受けやすい。そのような基材の腐食を防止または低減するために、通常、これらの基材の腐食を抑制するコーティングが表面を覆って塗布される。これらのコーティングは、単一コーティング層として基材を覆って直接塗布され得るか、または追加のコーティング層が、腐食抑制コーティング層を覆って塗布されて、色、耐摩耗性、および耐薬品性を含む他の特性を提供することができる。金属含有基材の腐食を低減するためのコーティングが開発されているが、より効果的に腐食を低減または防止し、良好な外観などの他の所望の特性も提供する、改善されたコーティングを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、反応物質から得られるポリオールポリマーに関し、反応物質が、a)反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、b)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物とを含む。ポリオールポリマーは、エステル結合およびヒドロキシル官能基を含む。さらに、反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、芳香族ポリカルボン酸は、反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する。
【0004】
本発明は、前述のポリマーおよびポリマーと反応性の架橋剤を含むコーティング組成物をさらに含む。
【0005】
本発明はまた、ポリオールポリマーを形成する方法を含む。本方法は、反応物質を反応させるステップであって、反応物質が、a)反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、b)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物とを含む、反応させるステップを含む。ポリオールポリマーは、エステル結合およびヒドロキシル官能基を含む。さらに、反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、芳香族ポリカルボン酸は、反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、様々な代替的な変形およびステップシーケンスが想定され得ることが理解されるべきである。さらに、任意の操作実施例、または他に示されている場合以外は、示されるすべての数値、例えば、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量は、すべての場合において用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0007】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる一定の誤差を本質的に含む。
【0008】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての副範囲を含むことが意図されていることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載される最小値である1(を含む)と記載される最大値である10(を含む)との間、すなわち、1に等しいまたは1を超える最小値、および10に等しいまたは10未満の最大値を有するすべての副範囲を含むことを意図している。
【0009】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、本出願では、「a」または「an」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つ」を意味する。例えば、「a」ポリマー、「a」コーティング組成物、「a」架橋剤などは、これらの項目のいずれかのうちの1つまたは1つより多くを指す。
【0010】
示されるように、本発明のポリマーは、少なくとも非芳香族エポキシ官能性化合物と、非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物とを含む、反応物質から得られるポリオールポリマーを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ポリオールポリマー」は、2つまたは2つより多くの、例えば3つまたは3つより多くのヒドロキシル官能基を有するポリマーを指す。「ポリマー」という用語は、オリゴマーおよびホモポリマー(例えば、単一モノマー種から調製される)、コポリマー(例えば、少なくとも2つの異なるモノマー種から調製される)、ターポリマー(例えば、少なくとも3つの異なるモノマー種から調製される)、ならびにグラフトポリマーを指す。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と互換的に使用される。
【0012】
「非芳香族エポキシ官能性化合物」とは、エポキシ官能基を有し、芳香族基を含まない直鎖、分岐、または環状化合物を指す。本明細書で使用される場合、「芳香族」という用語は、(非局在化に起因して)仮説上の局在化構造のものよりも顕著に高い安定性を有する共役環状炭化水素構造を指す。さらに、「直鎖」という用語は、線状鎖を有する化合物を指し、「分岐」という用語は、線状鎖から分岐または延びるアルキル基などの置換基によって水素が置換された鎖を有する化合物を指し、「環状」という用語は、閉環構造を指す。したがって、エポキシ官能性化合物は、脂肪族化合物、すなわち、飽和炭素結合を含有する非芳香族直鎖、分岐、または環状構造である。
【0013】
好適な非芳香族エポキシ官能性化合物の非限定的な例としては、脂環式ジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、脂環式エポキシド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。「脂環式ジグリシジルエーテル」とは、例えば、水素化ビスフェノールAエポキシドなどの、1つまたは1つより多くのエーテル基と少なくとも2つのエポキシ官能基とを含む非芳香族環状化合物を指す。「脂環式ジグリシジルエステル」とは、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-ビス(2-オキシラニルメチル)エステルなどの1つまたは1つより多くのエステル基および少なくとも2つのエポキシ官能基を含む非芳香族環状化合物を指す。「脂環式エポキシド」とは、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート、またはそれらの組み合わせなどの、1つまたは1つより多くのエポキシ官能基を含み、グリシジルエステルまたはグリシジルエーテル基を含まない非芳香族環状化合物を指す。
【0014】
示されるように、非芳香族エポキシ官能性化合物は、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドから調製される化合物から選択され得る。例えば、非芳香族エポキシ官能性化合物は、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドから形成される脂環式ジグリシジルエーテルを含み得る。
【0015】
非芳香族エポキシ官能性化合物はまた、追加の官能基を含み得る。例えば、非芳香族エポキシ官能性化合物はまた、エステル基、エーテル基、ニトロ基、ニトリル基、ケト官能基(ケトン官能基とも称される)、アルド官能基(アルデヒド官能基とも称される)、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、イソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含む)、エチレン系不飽和基、およびそれらの組み合わせを含むことができる。あるいは、非芳香族エポキシ官能性化合物は、前述の追加の官能基のうちのいずれの1つも含まない(すなわち、含有しない)ことも可能である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「エチレン系不飽和」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する基を指す。エチレン系不飽和基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート基、ビニル基、他のアルケニル基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を指す。
【0017】
非芳香族エポキシ官能性化合物は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%を構成することができる。非芳香族エポキシ官能性化合物は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、または最大65重量%を構成することができる。非芳香族エポキシ官能性化合物はまた、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、例えば、30重量%~90重量%、または40重量%~80重量%、または50重量%~70重量%、または60重量%~70重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0018】
前述のように、ポリオールポリマーはまた、非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物を用いて調製される。本明細書で使用される場合、「芳香族モノカルボン酸官能性化合物」は、仮説上の局在化構造のものよりも顕著に高い安定性を有する環状共役炭化水素を含み、単一のカルボン酸基または酸のエステルもしくは無水物も含む化合物を指す。
【0019】
示されるように、芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない。芳香族モノカルボン酸官能性化合物はまた、非芳香族エチレン系不飽和を本質的に含まないか、または完全に含まないことができる。「非芳香族エチレン系不飽和」という用語は、環状共役炭化水素芳香族基の一部を形成しない炭素-炭素二重結合を指す。さらに、「非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない」という用語は、反応物質の混合物が、非芳香族エチレン系不飽和を含有する化合物を1000百万分率(ppm)未満含有することを意味し、「非芳香族エチレン系不飽和を本質的に含まない」とは、反応物質の混合物が、非芳香族エチレン系不飽和を含有する化合物を100ppm未満含有することを意味し、「非芳香族エチレン系不飽和を完全に含まない」とは、反応物質の混合物が、非芳香族エチレン系不飽和を含有する化合物を20十億分率(ppb)未満含有することを意味する。
【0020】
芳香族モノカルボン酸官能性化合物はまた、追加の官能基を含み得る。例えば、芳香族モノカルボン酸官能性化合物はまた、芳香族モノカルボン酸官能性化合物が非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まないか、本質的に含まないか、または完全に含まないならば、前述の追加の官能基のいずれかを含むことができる。あるいは、芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、前述の追加の官能基のいずれも含まない(すなわち、含有しない)。
【0021】
ポリマーを調製するために使用することができる芳香族一塩基酸の非限定的な例としては、安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ナフトエ酸、4-アミノ安息香酸などのアミノ安息香酸、4-ニトロ安息香酸などのニトロ安息香酸、3,5-ジニトロ安息香酸、フェニルプロパン酸、マンデル酸、3-ベンゾイルプロパン酸、アントラニル酸、ニコチン酸、ピコリン酸、そのような酸の無水物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、または少なくとも30重量%を構成することができる。芳香族モノカルボン酸官能性化合物は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、最大45重量%、最大40重量%、または最大35重量%を構成することができる。芳香族モノカルボン酸官能性化合物はまた、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、例えば、10重量%~45重量%、または15重量%~40重量%、または15重量%~35重量%、または20重量%~35重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0023】
ポリオールポリマーを形成する反応物質は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、芳香族ポリカルボン酸が15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、または1重量%未満であるならば、芳香族ポリカルボン酸をさらに含み得る。ポリオールポリマーを形成する反応物質はまた、芳香族ポリカルボン酸を実質的に含まないか、本質的に含まないか、または完全に含まないことができる。すなわち、ポリオールポリマーを形成する反応物質は、芳香族ポリカルボン酸を実質的に含まなくてもよく、この場合は反応物質の混合物が1000ppm未満の芳香族ポリカルボン酸を含有し、芳香族ポリカルボン酸を本質的に含まなくてもよく、この場合は反応物質の混合物が100ppm未満の芳香族ポリカルボン酸を含有し、芳香族ポリカルボン酸を完全に含まなくてもよく、この場合は反応物質の混合物が20ppb未満の芳香族ポリカルボン酸を含有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「芳香族ポリカルボン酸」は、仮説上の局在化構造のものよりも顕著に高い安定性を有する環状共役炭化水素を含み、2つまたは2つより多くのカルボン酸基または酸の無水物も含む化合物を指す。芳香族ポリカルボン酸の非限定的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、トリメリット酸、そのような酸の無水物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
芳香族ポリカルボン酸はまた、追加の官能基を含み得る。例えば、芳香族ポリカルボン酸はまた、前述の追加の官能基のいずれかを含むことができる。あるいは、芳香族ポリカルボン酸は、前述の追加の官能基のいずれも含まない(すなわち、含有しない)。
【0026】
ポリオールポリマーはまた、追加の反応物質を用いて調製することができる。例えば、ポリオールポリマーを形成する反応物質は、非芳香族モノカルボン酸、非芳香族ポリカルボン酸、そのような酸の無水物、およびそれらの組み合わせなどの非芳香族カルボン酸をさらに含んでもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「非芳香族モノカルボン酸」は、飽和炭素結合、単一のカルボン酸、またはその無水物を含有し、芳香族基を含まない線状、分岐、または環状構造を指す。さらに、「非芳香族ポリカルボン酸」とは、飽和炭素結合、2つまたは2つより多くのカルボン酸、またはそれらの無水物を含有し、芳香族基を含まない、線状、分岐、または環状構造を指す。
【0028】
非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸はまた、追加の官能基を含み得る。例えば、非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸はまた、前述の追加の官能基のいずれかを含むことができる。例えば、非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸はまた、ヒドロキシル官能基を含むことができる。あるいは、非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸は、前述の追加の官能基のいずれも含まない(すなわち、含有しない)。
【0029】
非芳香族モノカルボン酸の非限定的な例としては、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式カルボン酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、およびオクタン酸などのC~C18の直鎖または分岐カルボン酸、そのような酸の無水物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
非芳香族ポリカルボン酸の非限定的な例としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アシピン酸(acipic acid)、アゼライン酸、クエン酸、そのような酸の無水物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
ポリオールポリマーを形成するために使用される場合、非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、それぞれ独立して、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%を構成することができる。非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸は、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、それぞれ独立して、最大25重量%、最大15重量%、または最大10重量%を構成することができる。非芳香族モノカルボン酸および/または非芳香族ポリカルボン酸はまた、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、それぞれ独立して、例えば、1重量%~25重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~15重量%、または5重量%~10重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0032】
ポリオールポリマーを形成するために使用することができる他の追加の反応物質としては、分子内環状エステルが挙げられる。「分子内環状エステル」とは、エステル結合が環構造の一部である環状環を指す。分子内環状エステルは、例えば、環状モノエステルまたはジエステルを含み得る。分子内環状エステルの非限定的な例としては、ラクトン、ラクチド、グリコリド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。「ラクトン」とは、2つまたは2つより多くの炭素原子および単一の酸素原子を有する環構造を有し、これらの炭素のうちの、他の酸素に隣接する1つにケトン基を有する環状エステルを指す。「ラクチド」とは、2つまたは2つより多くの乳酸分子から得られる環状ジエステルを指し、「グリコリド」とは、2つのグリコール酸分子からの2つの水分子の脱水によって得られる環状エステルを指す。好適なラクトンの非限定的な例としては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適なラクチドの非限定的な例としては、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
ポリオールポリマーを形成するために使用される場合、分子内環状エステルは、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%を構成することができる。分子内環状エステルは、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、最大50重量%、または最大40重量%、または最大30重量%、または20重量%、または最大15重量%、または最大10重量%を構成することができる。分子内環状エステルは、ポリオールポリマーを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて、例えば、1重量%~50重量%、または3重量%~40重量%、または5重量%~30重量%、または5重量%~20重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0034】
本発明はまた、前述のポリオールポリマーの調製方法を対象とする。本方法は、すべての所望の反応物質を同時に混合して反応させて、ポリオールポリマーを形成することを含み得る。あるいは、最初に反応物質の一部のみを混合して反応させて予備反応生成物を形成し、次いで残りの反応物質を予備反応生成物と混合して反応させてポリオールポリマーを形成することによって、反応物質を段階的に反応させることができる。例えば、ポリオールポリマーは、最初に、非芳香族エポキシ官能性化合物および非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物を含む反応物質を反応させて予備反応生成物を形成し、次いで、予備反応生成物を分子内環状エステルなどの追加の反応物質と反応させることによって調製することができる。
【0035】
これに限定されないが、触媒を含む様々なタイプの反応助剤を反応混合物に添加することもできる。触媒の非限定的な例としては、トリフェニルホスフィン、ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム、ブチルスズ酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
また、反応物質および他の必要に応じた成分を、非水性液体媒体などの液体媒体中で組み合わせて反応させることもできる。本明細書で使用される場合、「非水性」という用語は、液体媒体の総重量に基づいて、50重量%未満の水を含む液体媒体を指す。本発明によれば、そのような非水性液体媒体は、液体媒体の総重量に基づいて、40重量%未満の水、または30重量%未満の水、または20重量%未満の水、または10重量%未満の水、または5%未満の水を含み得る。液体媒体の50重量%超を占める溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。好適な有機溶媒の非限定的な例としては、極性有機溶媒、例えば、グリコール、グリコールエーテルアルコール、アルコールなどのプロトン性有機溶媒;およびケトン、グリコールジエーテル、エステル、およびジエステルが挙げられる。有機溶媒の他の非限定的な例としては、芳香族および脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0037】
得られた本発明のポリオールポリマーは、エステル結合およびヒドロキシル官能基を含む。ポリオールポリマーはまた、他の結合および官能基を含み得る。例えば、ポリオールポリマーは、エーテル結合ならびに/または、エポキシ官能基および/もしくはカルボン酸官能基など、前述の追加の官能基のいずれかを含むこともできる。
【0038】
上記の反応物質から調製したポリオールポリマーは、少なくとも50mgKOH/g、少なくとも75mgKOH/g、または少なくとも100mgKOH/gのヒドロキシル価を有することができる。上記の反応物質から調製したポリオールポリマーは、最大300mgKOH/g、少なくとも250mgKOH/g、または少なくとも200mgKOH/gのヒドロキシル価を有することもできる。上記の反応物質から調製したポリオールポリマー生成物は、50~300mgKOH/g、または75~250mgKOH/g、または100~200mgKOH/gの範囲内のヒドロキシル価をさらに有することができる。
【0039】
ヒドロキシル価は、サンプルを過剰の無水酢酸によりエステル化することによって決定される。過剰の無水酢酸は、加水分解によって酢酸に変換され、標準水酸化カリウムを用いて電位差滴定により滴定される。ブランク(反応なし)とサンプルとの間の滴定水酸化カリウムの体積差は、サンプルの酸含有量に相当し、それから、ヒドロキシル価を、サンプル1グラム中の酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数として算出する。この決定に使用される加水分解溶液は、ジメチルホルムアミド、ピリジン、および蒸留水の混合物であり、アセチル化試薬は、p-トルエンスルホン酸を触媒とする無水酢酸およびジクロロエタンの混合物である。
【0040】
反応物質から調製したポリオールポリマーは、10,000g/mol未満、8,000g/mol未満、6,000g/mol未満、または5,000g/mol未満の重量平均分子量を含むことができる。重量平均分子量は、1ml分-1の流量で溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用する、Waters 410示差屈折計(RI検出器)およびポリスチレン標準を用いるWaters 2695分離モジュール、ならびに分離に使用される2つのPL Gel Mixed Cカラムを使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定する。
【0041】
反応物質から調製したポリオールポリマーは、少なくとも1.05、少なくとも1.2、または少なくとも1.3の多分散指数(PDI)を有することができる。反応物質から調製したポリオールポリマーは、最大3.50、最大2.5、または最大1.8のPDIを有することができる。反応物質から調製したポリオールポリマーはまた、例えば、1.05~3.50、または1.2~2.5、または1.3~1.8などの範囲内のPDIを有することができる。PDI値は、ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率(すなわち、Mw/Mn)を表す。重量平均分子量および多分散指数および数平均分子量は、重量平均分子量に関して前述したように、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定する。
【0042】
反応物質から調製したポリオールポリマーはまた、官能基の特定の当量比を含み得る。例えば、ポリオールポリマーがエポキシおよびカルボン酸官能基を含む場合、エポキシ官能基対酸官能基の当量比は、0.95:5.0から、または1.10~2.0、または1.15~1.5である。
【0043】
本発明はまた、ポリオールポリマーと、ポリオールポリマーの1つまたは1つより多くの官能基と反応性の架橋剤とを含むコーティング組成物を対象とする。コーティング組成物中のポリオールポリマーは、フィルム形成樹脂として機能することが理解される。本明細書で使用される場合、「フィルム形成樹脂」は、組成物中に存在する任意の希釈剤またはキャリアを除去するとき、または硬化するときの、基材の少なくとも水平表面上の自己支持型連続フィルムを指す。「硬化可能な」、「硬化する」などの用語は、コーティング組成物と関連して使用される場合、コーティング組成物を構成する成分の少なくとも一部が重合可能であり、かつ/または架橋可能であることを意味する。本発明のコーティング組成物は、周囲条件で、熱によって、または化学線などの他の手段によって硬化させることができる。「化学線」という用語は、化学反応を開始することができる電磁放射線を指す。化学線は、可視光、紫外線(UV)光、X線、およびガンマ線を含むが、それらに限定されない。さらに、「周囲条件」とは、周囲環境の条件(例えば、基材が位置される室内または屋外環境の、例えば、23℃の温度および35%~75%の空気中の相対湿度などの温度、湿度および圧力)を指す。
【0044】
コーティング組成物は、前述のポリオールポリマーのうちの1つまたは1つより多くを含み得る。例えば、コーティング組成物は、分子内環状エステルを用いて調製されていない少なくとも1つのポリオールポリマー、および分子内環状エステルを用いて調製されている少なくとも1つのポリオールポリマーを含み得る。
【0045】
ポリオールポリマーは、コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、または少なくとも30重量%を構成することができる。ポリオールポリマーは、コーティング組成物の総重量に基づいて、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、または最大50重量%を構成することができる。ポリオールポリマーは、コーティング組成物の総重量に基づいて、例えば、15~80重量%、または20~70重量%、または25~60重量%、または30~50重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0046】
前述のように、コーティング組成物は、ポリオールポリマーの1つまたは1つより多くの官能基と反応性の架橋剤を含む。本明細書で使用される場合、「架橋剤」という用語は、他の官能基と反応性であり、例えば硬化プロセス中に、化学結合を介して2つまたは2つより多くのモノマーまたはポリマー分子を結合することができる2つまたは2つより多くの官能基を含む分子を指す。したがって、コーティング組成物は、ポリオールポリマー上の官能基のうちの少なくともいくつかと反応性である、官能基を有する架橋剤を含む。
【0047】
架橋剤の非限定的な例としては、カルボジイミド、ポリヒドラジド、アジリジン、エポキシ樹脂、アルキル化カルバメート樹脂、(メタ)アクリレート、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ポリ酸、ポリアミン、ポリアミド、アミノプラスト、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシアルキル尿素、ヒドロキシアルキルアミド、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、架橋剤は、ポリオールポリマー上の少なくともヒドロキシル官能基と反応性であるポリイソシアネート、アミノプラスト、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0048】
コーティング組成物は、単一のタイプまたは複数のタイプの架橋剤を含むことができることが理解される。例えば、コーティング組成物は、ポリオールポリマー上の同じ官能基または異なる官能基と反応性である少なくとも2つの異なるタイプの架橋剤を含み得る。コーティング組成物はまた、前述のように使用される場合、異なるタイプのポリオールポリマーと反応性である少なくとも2つの異なるタイプの架橋剤を含むことができる。
【0049】
コーティング組成物はまた、追加の成分を含み得る。例えば、コーティング組成物は、追加のフィルム形成樹脂を含むこともできる。追加の樹脂は、当該技術分野で既知の様々な熱可塑性および/または熱硬化性樹脂のいずれかを含むことができる。本明細書で使用される場合、「熱硬化性」という用語は、共有結合によってポリマー鎖が一緒に接合される、硬化または架橋によって不可逆的に「固化する」樹脂を指す。この特性は、通常、例えば、熱または放射線によって多くの場合誘発される架橋反応に関連する。硬化または架橋反応はまた、周囲条件下で実施され得る。一旦硬化すると、熱硬化性樹脂は、熱を加えても溶融せず、溶媒に不溶性である。上述したように、追加の樹脂はまた、熱可塑性樹脂を含むこともできる。本明細書で使用される場合、「熱可塑性」という用語は、共有結合によって接合されず、それにより、加熱されると液体流を生じ得るポリマー成分を含む樹脂を指す。
【0050】
追加の樹脂は、例えば、(メタ)アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステルポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリシロキサンポリマー、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、それらのコポリマー、およびそれらの混合物から選択され得る。熱硬化性樹脂は、典型的には、反応性官能基を含む。反応性官能基としては、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、イソシアネート基(ブロックイソシアネート基を含む)、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
熱硬化性樹脂を含有するコーティング組成物は、典型的には、架橋剤と反応させる。そのようなものであるから、追加のフィルム形成樹脂がコーティング組成物中で使用されるとき、コーティング組成物は、追加のフィルム形成樹脂と反応性である追加の架橋剤を含み得、および/またはポリオールポリマーと反応性である架橋剤は、追加のフィルム形成樹脂とも反応性であり得る。そのような架橋剤の非限定的な例としては、前述の架橋剤のいずれかが挙げられる。熱硬化性樹脂はまた、それら自身と反応性である官能基を有することができ、この様式において、そのような樹脂は自己架橋性である。
【0052】
コーティング組成物はまた、着色剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「着色剤」は、組成物に色および/または他の不透明度および/または他の視覚的効果を付与する任意の物質を指す。着色剤は、離散粒子、分散体、溶液、および/またはフレークなどの任意の好適な形態でコーティングに添加され得る。本発明のコーティングには、単一の着色剤または2つもしくは2つより多くの着色剤の混合物が使用され得る。
【0053】
例示的な着色剤としては、顔料(有機または無機)、染料およびティント、例えば塗料業界で使用されるもの、および/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)に列挙されるもの、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤は、例えば、使用条件下で不溶性であるが湿潤可能な、微粉化した固体粉末を含んでいてもよい。着色剤は有機であっても無機であってもよく、凝集または未凝集であってもよい。着色剤は、アクリル粉砕ビヒクルなどの粉砕ビヒクル(grind vehicle)の使用によって、コーティングに組み込むことができ、その使用は、当業者によく知られている。
【0054】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、ベンゾイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。「顔料」および「着色充填材」という用語は、互換的に使用することができる。
【0055】
例示的な染料としては、溶媒および/または水性ベースであるもの、例えばフタログリーンまたはブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ならびにペリレンおよびキナクリドンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
例示的なティントとしては、水ベースのまたは水混和性のキャリアに分散した顔料、例えばDegussa,Inc.から市販されているAQUA-CHEM 896、ならびにAccurate Dispersions Division of Eastman Chemical,Incから市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSが挙げられるが、それらに限定されない。
【0057】
本発明のコーティング組成物とともに使用することができる成分の他の非限定的な例としては、可塑剤、耐摩耗粒子、それらに限定されないが、雲母、タルク、粘土、および無機鉱物を含む充填材、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、UV光吸収剤および安定剤、界面活性剤、流動および表面制御剤、チキソトロープ剤、有機共溶媒、反応性希釈剤、触媒、反応阻害剤、追加の腐食防止剤、ならびに他の慣習的な助剤が挙げられる。
【0058】
コーティング組成物を形成する成分はまた、液体媒体中で組み合わせて、および/または混合してよい。例えば、ポリオールポリマー、ポリオールポリマーと反応性の架橋剤、および前述の必要に応じた他の成分を、非水性液体媒体中で組み合わせて混合してよい。
【0059】
本発明のコーティング組成物を形成した後、組成物は、コーティング業界で既知の広範囲の基材に塗布することができる。例えば、本発明のコーティング組成物は、自動車基材および構成部品(例えば、それらに限定されないが、車、バス、トラック、トレーラーなどを含む自動車車両)、工業基材、航空機および航空機の構成部品、船舶、船などの海洋基材および構成部品、ならびに陸上および海上の設備、貯蔵タンク、風車、原子力プラント、包装基材、木製の床材および家具、衣類、筐体および回路基板を含む電子機器、ガラスおよび透明体、ゴルフボールを含むスポーツ用品、スタジアム、建物、橋などに塗布することができる。これらの基材は、例えば、金属性または非金属性であり得る。
【0060】
金属性基材としては、スズ、鋼(とりわけ、電気亜鉛メッキ鋼、冷間圧延鋼、熱浸漬亜鉛メッキ鋼、鋼合金、またはブラストした/異形の鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金を用いてコーティングされた鋼、およびアルミニウムメッキ鋼が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で使用される場合、ブラストした鋼または異形の鋼は、圧縮空気を使用して研磨粒子を用いて高速で鋼基材に連続的に衝撃を与えることによって、または遠心式羽根車によって機械的洗浄を伴う研磨ブラストを受けた鋼を指す。研磨剤は、典型的には、リサイクル/再利用された材料であり、プロセスは、ミルスケールおよび錆を効率的に除去することができる。研磨ブラスト洗浄の標準的な清浄度のグレードは、BS EN ISO 8501-1に従って実施される。
【0061】
さらに、非金属性基材としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「環境に優しい」ポリマー基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリアミドを含むポリマーおよびプラスチック基材、木材、ベニア、木材複合材料、パーティクルボード、中密度繊維板、セメント、石、ガラス、紙、段ボール、布、皮革、合成および天然物の両方などが挙げられる。コーティング組成物は、前述の基材のいずれかの様々な領域に塗布されて、例えば基材の本体および縁を覆って連続的な固体コーティングを形成し、本明細書に記載される優れた特性を提供することができることが理解される。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、エレクトロコーティング、噴霧、静電噴霧、浸漬、ローリング、ブラッシングなどの、当技術分野における任意の標準的な手段によって塗布することができる。本発明のコーティング組成物から形成されたコーティングは、5~300ミクロン、20~150ミクロン、または35~70ミクロンの乾燥フィルム厚さに塗布することができる。
【0063】
コーティング組成物は、モノコーティングを形成するために、基材に塗布することができる。本明細書で使用される場合、「モノコーティング」は、追加のコーティング層を含まない単一層コーティングシステムを指す。したがって、コーティング組成物は、いずれの中間コーティング層もなく基材に直接塗布され、単一層コーティング、すなわちモノコーティングを形成するように硬化され得る。コーティング組成物はまた、モノコーティングとして前処理された基材を覆って直接塗布することができる。例えば、基材は、リン酸鉄処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、チタン処理、またはシラン処理を用いて前処理することができる。
【0064】
あるいは、コーティング組成物は、第2のコーティング層などの追加のコーティング層とともに第1のコーティング層として基材に塗布され、多層コーティングシステムを形成することができる。多層コーティングは、複数のコーティング層、例えば3つまたは3つより多く、あるいは4つまたは4つより多く、あるいは5つまたは5つより多くのコーティング層を含むことができることが理解される。例えば、本発明の前述のコーティング組成物はプライマー層として基材に塗布され得、第2および第3のコーティング層、ならびに必要に応じて、追加のコーティング層が、ベースコーティングおよび/またはトップコーティングとしてプライマー層を覆って塗布されてもよい。本明細書で使用される場合、「プライマー」は、保護用または装飾用コーティングシステムを塗布するために表面を準備するために、アンダーコーティングが基材上に堆積され得るコーティング組成物を指す。「ベースコーティング」とは、コーティングがプライマー上に、および/または直接基材上に堆積されるコーティング組成物を指し、必要に応じて、色に影響を及ぼすか、および/または他の視覚的な影響を提供する成分(顔料など)を含み、保護用または装飾用トップコーティングでオーバーコーティングされ得る。
【0065】
第2および第3のコーティング層などの追加のコーティング層は、第1のコーティング層と同一または異なるフィルム形成樹脂を含むコーティング組成物から形成され得る。追加のコーティング層は、前述のフィルム形成樹脂、架橋剤、着色剤、および/または他の成分のいずれかを用いて調製することができる。さらに、各コーティング組成物は、別の組成物のコーティングを塗布する前に、各コーティング組成物を乾燥または硬化させてコーティング層を形成する、ドライ・オン・ドライのプロセスとして塗布することができる。あるいは、本明細書に記載される各コーティング組成物のすべてまたはある特定の組み合わせは、ウェット・オン・ウェットのプロセスとして塗布され、一緒に乾燥または硬化され得る。
【0066】
ポリオールポリマーを含む本発明のコーティング組成物から形成されたコーティングは、低レベルのVOCで改善された耐食性および良好な粘度を提供することが見出された。ポリオールポリマーを含む本発明のコーティング組成物から形成されたコーティングはまた、良好な外観を維持しながら、迅速な特性発現性(例えば、Konig硬度)を提供し、20度光沢を改善した。
【0067】
以下の実施例は、本発明の一般原則を示すために提示される。本発明は、提示される特定の実施例に限定されるとみなされるべきではない。実施例におけるすべての部およびパーセンテージは、別途示されない限り重量による。
【0068】
実施例1
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表1に列挙される成分から調製した。
【表1】
【0069】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大150℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は994g/molであり、固形分含有量は80%であった。
【0070】
重量平均分子量は、Waters 410示差屈折計(RI検出器)およびポリスチレン標準を用いたWaters 2695分離モジュールを使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。1ml分-1の流量で溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、2つのPL Gel Mixed Cカラムを分離に使用した。
【0071】
実施例2
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表2に列挙される成分から調製した。
【表2】
【0072】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた1000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を70℃に加熱し、70℃で30分間保持した。次いで、反応混合物を130℃に加熱した。Thermo Scientific Nicolet iS5 FT-IRを使用して、特徴的なラクチド帯(936cm-1)の不在をIR分光法が示すまで反応混合物を150℃で保持した。反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は1328g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0073】
実施例3
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表3に列挙される成分から調製した。
【表3】
【0074】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大180℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は1053g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0075】
実施例4
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表4に列挙される成分から調製した。
【表4】
【0076】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた2000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大183℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。充填2を反応混合物に添加し、反応混合物を100℃に冷却した。100℃で、充填3を反応混合物に添加した。次いで、反応混合物を130℃に加熱し、Thermo Scientific Nicolet iS5 FT-IRを使用して、特徴的なラクチド帯(936cm-1)の不在をIR分光法が示すまで130℃で保持した。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填4を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は1380g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0077】
実施例5
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表5に列挙される成分から調製した。
【表5】
【0078】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大157℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は2357g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0079】
実施例6
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表6に列挙される成分から調製した。
【表6】
【0080】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大177℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は2187g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0081】
比較実施例7
ポリエステルポリオールの調製
ポリエステルポリオールを、表7に列挙される成分から調製した。
【表7】
【0082】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大164℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用してMetrohm 888 Titrandoを用いて決定したときに、酸価がおよそ173.34mgKOH/gになるまで、反応混合物を150℃で保持した(1~2時間)。次いで、反応混合物を100℃に冷却し、充填2を反応混合物中に添加した。次に、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて10mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(約16時間)。反応混合物を60℃に冷却し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は2772g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0083】
実施例8
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表8に列挙される成分から調製した。
【表8】
【0084】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大187℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物中に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は4033g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0085】
実施例9
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表9に列挙される成分から調製した。
【表9】
【0086】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大192℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物中に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は3245g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0087】
比較実施例10
ポリエステルポリオールの調製
本発明によるポリエステルポリオールを、表10に列挙される成分から調製した。
【表10】
【0088】
モータ駆動のステンレス鋼撹拌ブレード、水冷コンデンサ、窒素ブランケット、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた3000mLの4つ口フラスコに、充填1を添加した。反応混合物を120℃に加熱した。120℃で、反応混合物は最大168℃まで発熱した。発熱後、メタノール中の0.1N KOH溶液を試薬として使用して、Metrohm 888 Titrandoを用いて0.2mgKOH/g未満の酸価が得られるまで、反応混合物を150℃で保持した(3~4時間)。次いで、反応混合物を85℃に冷却し、充填2を反応混合物中に添加した。最終の樹脂を、60℃で30分間撹拌し、注ぎ出した。ポリエステルポリオールの重量平均分子量は5010g/molであり、固形分含有量は80%であった。実施例1に従って、重量平均分子量を決定した。
【0089】
周囲温度で3日間保存した後、樹脂は結晶性(ヘイズ)を発現し始めた。したがって、このポリエステルポリオール樹脂は、貧弱な安定性を示した。
【0090】
実施例11
ポリエステルポリオールの特性
実施例1~10に記載のポリエステルポリオールを、表11に列記される様々な特性について試験した。
【表11】
【0091】
表11に示すように、15重量%の芳香族二塩基酸(ポリエステルポリオールを形成するために使用される反応物質の総固形分重量に基づいて)を有した比較実施例10のポリエステルポリオールは、脂肪族および脂環式二塩基酸によって形成された本発明のポリエステルポリオールよりも高い粘度およびかなり高いPDIを示した。
【0092】
実施例12~18
コーティング組成物の調製
以下に記載されるように、様々なコーティング組成物を3段階で調製した。
【0093】
パートA:最初に、ミリングした顔料混合物を、表12に列挙される成分から調製した。
【表12】
【0094】
第1の段階では、表12に列挙された顔料を、対応するポリエステルポリオール、分散剤、および溶媒を含む混合物中に分散させて、ミリング前の混合物を形成した。次に、ミリング前の混合物をLau 200ディスパーザーを用いて120分間ミリングし、ASTM D1210-05によって決定された7を超えるヘグマン値を示した。
【0095】
パートB:次に、ミリングした顔料混合物をかき混ぜて、表13に列挙される追加の成分を用いて溶解させた。
【表13】
【0096】
パートC:次に、表14に列挙されるように、ポリイソシアネートを添加した。
【表14】
【0097】
実施例19
コーティングの調製および評価
実施例12~18のコーティング組成物の各々を、脱イオン水リンス処理および無クロムリン酸塩フリー(non-chrome phosphate free)リンス処理を用いて、リン酸鉄で前処理された冷間圧延鋼上に65~80ミクロンの乾燥フィルム厚さに噴霧した。コーティングを周囲温度および湿度条件で10分間フラッシュし、次いで60℃で20分間焼成した。形成された各コーティングのコーティング特性を表15に列挙する。
【表15】
【0098】
表15に示されるように、本発明のポリエステルポリオールを含有する液体コーティングは、比較実施例18と比較して、低レベルのVOCで良好な粘度を示した。本発明のポリエステルポリオールを含有する液体コーティングはまた、比較実施例18と比較して、良好な外観を維持しながら、より迅速な早期特性発現性(2時間および24時間のKonig硬度)を示し、4000時間の促進風化後の20度光沢の保持を改善した。本発明のポリエステルポリオールを含有する液体コーティングは、比較実施例18と比較して、改善された耐食性をさらに示した。
【0099】
本発明はまた、以下の項を対象とする。
【0100】
項1:反応物質から得られるポリオールポリマーであって、反応物質が、a)反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、b)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物とを含み、ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み、反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、芳香族ポリカルボン酸が、反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する、ポリマー。
【0101】
項2:非芳香族エポキシ官能性化合物が、脂環式ジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、脂環式エポキシド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項1に記載のポリマー。
【0102】
項3:非芳香族エポキシ官能性化合物が、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドを含む、項1に記載のポリマー。
【0103】
項4:非芳香族エポキシ官能性化合物が、反応物質の総固形分重量の少なくとも40重量%を構成する、項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【0104】
項5:反応物質が、非芳香族モノカルボン酸をさらに含む、項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【0105】
項6:非芳香族モノカルボン酸が、ヒドロキシル基をさらに含む、項5に記載のポリマー。
【0106】
項7:反応物質が、非芳香族ポリカルボン酸をさらに含む、項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【0107】
項8:反応物質が、分子内環状エステルをさらに含む、項1~7のいずれか一項に記載のポリマー。
【0108】
項9:ポリオールポリマーが、3.50または3.50未満の多分散指数を有する、項1~8のいずれか一項に記載のポリマー。
【0109】
項10:ポリオールポリマーが、少なくとも50mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、項1~9のいずれか一項に記載のポリマー。
【0110】
項11:ポリオールポリマーが、カルボン酸官能基およびエポキシ官能基を含み、0.95超のエポキシ対酸比を有する、項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【0111】
項12:i)項1~11のいずれか一項に記載のポリオールポリマーと、ii)ポリオールポリマーと反応性の架橋剤とを含む、コーティング組成物。
【0112】
項13:架橋剤が、ポリイソシアネート、アミノプラスト、またはそれらの組み合わせを含む、項12に記載のコーティング組成物。
【0113】
項14:非水性溶媒をさらに含む、項12または13に記載のコーティング組成物。
【0114】
項15:着色剤をさらに含む、項12~14のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【0115】
項16:項12~15のいずれか一項に記載の組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
【0116】
項17:コーティングが、基材の表面を直接覆って形成されている、項16に記載の基材。
【0117】
項18:ポリオールポリマーを形成する方法であって、a)反応物質を反応させるステップであって、反応物質が、i)反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、ii)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物とを含む、反応させるステップを含み、ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み、反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、芳香族ポリカルボン酸が、反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する、方法。
【0118】
項19:ポリオールポリマーが、項1~11のいずれか一項に記載されているようなポリオールポリマーである、項18に記載の方法。
【0119】
項20:ステップa)の反応物質が、非芳香族モノカルボン酸、非芳香族ポリカルボン酸、またはそれらの組み合わせをさらに含む、項18または19に記載の方法。
【0120】
項21:b)ステップa)からの反応生成物を分子内環状エステルと反応させることをさらに含む、項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
本発明の特定の実施形態は、例示の目的で上述されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細について多数の変形が行われ得ることは当業者に明らかであろう。
本発明の好ましい実施形態においては、例えば、以下が提供される。
(項1)
反応物質から得られるポリオールポリマーであって、前記反応物質が、
a)前記反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、
b)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物と、を含み、
前記ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み、
前記反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、前記芳香族ポリカルボン酸が、前記反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する、ポリマー。
(項2)
前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、脂環式ジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、脂環式エポキシド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、上記項1に記載のポリマー。
(項3)
前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、水素化ビスフェノールポリエポキシドまたは水素化ビスフェノール化合物に由来するポリエポキシドを含む、上記項1に記載のポリマー。
(項4)
前記非芳香族エポキシ官能性化合物が、前記反応物質の総固形分重量の少なくとも40重量%を構成する、上記項1に記載のポリマー。
(項5)
前記反応物質が、非芳香族モノカルボン酸をさらに含む、上記項1に記載のポリマー。
(項6)
前記非芳香族モノカルボン酸が、ヒドロキシル基をさらに含む、上記項5に記載のポリマー。
(項7)
前記反応物質が、非芳香族ポリカルボン酸をさらに含む、上記項1に記載のポリマー。
(項8)
前記反応物質が、分子内環状エステルをさらに含む、上記項1に記載のポリマー。
(項9)
前記ポリオールポリマーが、3.50または3.50未満の多分散指数を有する、上記項1に記載のポリマー。
(項10)
前記ポリオールポリマーが、少なくとも50mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、上記項1に記載のポリマー。
(項11)
前記ポリオールポリマーが、カルボン酸官能基およびエポキシ官能基を含み、0.95超のエポキシ対酸比を有する、上記項1に記載のポリマー。
(項12)
i)上記項1に記載のポリオールポリマーと、
ii)前記ポリオールポリマーと反応性の架橋剤と、を含む、コーティング組成物。
(項13)
前記架橋剤が、ポリイソシアネート、アミノプラスト、またはそれらの組み合わせを含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項14)
非水性溶媒をさらに含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項15)
着色剤をさらに含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項16)
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、非芳香族モノカルボン酸をさらに含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項17)
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、非芳香族ポリカルボン酸をさらに含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項18)
前記ポリオールポリマーを形成する前記反応物質が、分子内環状エステルをさらに含む、上記項12に記載のコーティング組成物。
(項19)
上記項12に記載の組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
(項20)
前記コーティングが、前記基材の表面を直接覆って形成されている、上記項19に記載の基材。
(項21)
ポリオールポリマーを形成する方法であって、
a)反応物質を反応させるステップであって、前記反応物質が、
i)前記反応物質の総固形分重量の少なくとも30重量%を構成する非芳香族エポキシ官能性化合物と、
ii)非芳香族エチレン系不飽和を実質的に含まない芳香族モノカルボン酸官能性化合物、またはその無水物と、を含む、反応させるステップを含み、
前記ポリオールポリマーはエステル結合およびヒドロキシル官能基を含み、
前記反応物質が芳香族ポリカルボン酸をさらに含む場合、前記芳香族ポリカルボン酸が、前記反応物質の総固形分重量の15重量%未満を構成する、方法。
(項22)
ステップa)の前記反応物質が、非芳香族モノカルボン酸、非芳香族ポリカルボン酸、またはそれらの組み合わせをさらに含む、上記項21に記載の方法。
(項23)
b)ステップa)からの反応生成物を分子内環状エステルと反応させることをさらに含む、上記項21に記載の方法。