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特許7460768緊急救難車両のための上部構造およびその種の上部構造を製造するための方法
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  • 特許-緊急救難車両のための上部構造およびその種の上部構造を製造するための方法 図1
  • 特許-緊急救難車両のための上部構造およびその種の上部構造を製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】緊急救難車両のための上部構造およびその種の上部構造を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 63/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B62D63/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022534765
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020061824
(87)【国際公開番号】W WO2021116998
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】102019000023676
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518434717
【氏名又は名称】イヴェコ・マギルス・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッツ,ハラルド
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05785372(US,A)
【文献】特表2019-531219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急救難車両のための上部構造(1)であって、
長さ方向の軸(X)に沿って延び、かつ横行平面内において少なくともU字形の断面を有する長さ方向の部分(5)と、前記横行平面内において前記長さ方向の部分(5)によって画定される前記断面を超えて延び、かつ前記長さ方向の部分(5)の末端と結合される終端板(6)とが備えられた中心部分(2)と、
前記中心部分(2)に接続されるべく構成され、かつ前記中心部分(2)の前記長さ方向の延びと等しい長さおよび前記終端板(6)の前記横行方向の延びと等しい幅を有するルーフ(3)と、
前記中心部分(2)および/または前記ルーフ(3)と接続するべく構成された複数の横コンパートメント(4)と、
を包含
前記長さ方向の部分(5)は、協働して空間(8)を囲い込むペアの横壁(5a)および底壁(5b)を包含し、前記長さ方向の部分(5)は、前記横壁(5a)に実現され、かつ前記空間(8)へのアクセスを可能にするべく構成される複数の開口部(7)を備える、緊急救難車両のための上部構造(1)。
【請求項2】
前記中心部分(2)は、前記空間(8)内に収容され、かつ前記横壁(5a)および底壁(5b)に接続されて前記空間(8)を種々のサブコンパートメントに分割する仕切り壁(9)を包含する、請求項に記載の上部構造。
【請求項3】
前記終端部分(6)は、前記長さ方向の部分(5)の前記断面と同じ形状を有する中心部分(11a)と、横軸(Z)に沿って前記中心部分(11a)から横方向に、かつ垂直軸(Y)に沿って前記長さ方向の部分(5)の前記底壁(5b)の垂直方向下方に延びるペアの横部分(11b)とが備えられた板壁(11)を包含する、請求項1または2に記載の上部構造。
【請求項4】
前記ルーフ(3)は、前記中心部分(2)と結合されるべく構成された平板(12)と、前記平板(12)の周縁の少なくとも一部を取り囲むべく構成された欄干(13)とを包含する、請求項1に記載の上部構造。
【請求項5】
前記横コンパートメント(4)は、長さ方向の平面内においてU字形の断面を有する、請求項1に記載の上部構造。
【請求項6】
前記横コンパートメント(4)は、単一の曲げられた金属シートを介して実現される、請求項1に記載の上部構造。
【請求項7】
前記終端板(6)および前記横コンパートメント(4)は、前記中心部分(2)および前記横コンパートメント(4)によって区切られる異なる空間内においてケーブル/ワイヤの通過を可能にするべく構成された溝(15)を備える、請求項1に記載の上部構造。
【請求項8】
さらに、前記中心部分(2)および/または前記横コンパートメント(4)と結合し、後者に実現されている前記種々の開口部を閉じるべく構成されたカバー(16)を包含する、請求項1に記載の上部構造。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに定義されているとおりの緊急救難車両のための上部構造(1)を製造するための方法であって、
前記中心部分(2)と、前記ルーフ(3)と、前記横コンパートメント(4)とを別々に組み立てる段階と、
前記中心部分(2)と、前記ルーフ(3)と、前記横コンパートメント(4)のうちのそれぞれに、それぞれの動作要素を別々に備える段階と、
前記中心部分(2)に前記ルーフ(3)を固定する段階と、
前記横コンパートメント(4)を前記中心部分(2)および/または前記ルーフ(3)に固定する段階と、
を包含する、緊急救難車両のための上部構造(1)を製造するための方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の上部構造を包含する緊急救難車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件特許出願は、2019年12月11日に出願されたイタリア特許出願第102019000023676号の優先権を主張するものであり、当該出願の開示のすべては、参照によりこれに援用される。
【0002】
本発明は、車両物の上部構造、特に緊急救難車両のための上部構造およびそれを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
周知のとおり、すべての車両は、上部構造を包含し、それが、車両のそのほかすべての要素の支持および固定を可能にするための共通の骨組みを定義する。
【0004】
緊急救難車両が、緊急救難車両の特定の用途に応じて設計される必要があり、かつ概して、高い負荷および多くの異なる類型の機器モジュールの支持に必要とされる特有の上部構造を必要とすることは明らかである。
【0005】
したがって、現在は、非常に特殊な用途のために設計された上部構造が製造されていることが知られている。その種の上部構造は、通常、種々の金属シートもしくはプロファイルを溶接することによって、またはそれらをねじ留めすることによって搭載され、その後、完成時には、その上部構造上に種々の機器モジュールが搭載される。
【0006】
しかしながら、その種の自蔵型の上部構造は、有意な寸法を有し、したがって、明らかに製造作業場内において容易に移動することが可能でない。したがって、機器モジュールは、一般に共通のワークピースに個別に搭載される。その種の製造方法は、明らかに製造時間を、したがって車両を顧客へ提供するための全体コストを増加させる。
【0007】
したがって、緊急救難車両の上部構造を製造するための製造時間およびコストを低減し、同時に、高い個別化レベルの要求を維持することが必要であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の必要性をコスト効果的な方法で満足することをねらいとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のねらいは、付随する特許請求範囲の中で請求されているとおりの上部構造およびそれの製造方法によって達成される。
【0010】
本発明のより良好な理解のために、以下、次に挙げる添付図面を参照し、非限定的な例を用いた好ましい実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従った緊急救難車両のための上部構造を示した斜視図である。
図2】明瞭性のために部品を取り除いた図1の上部構造を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、明瞭性のために、上部構造1に包含されている種々の要素、部品、および部分の位置の定義に3つの軸の参照を使用するが、それにおいて軸Xは、上部構造1の長さ方向の軸に対応し、軸Yは、上部構造1の垂直軸に対応し、軸Zは、横軸に対応する;明らかに、これらの3つの軸は、それぞれ残りの2つの軸と直交する。
【0013】
参照番号1は、本発明に従った緊急救難車両のための上部構造1を全体的に示しており、ねじれ剛性のある中心本体2と、ルーフ3と、ねじれ剛性のある中心本体2および/またはルーフ3に取り付けられる複数の横コンパートメント4とを基本的に包含する。
【0014】
より詳細に述べれば、中心本体2は、長さ方向の部分5と、長さ方向の軸Xに沿って長さ方向の部分5の末端に接続される終端部分6を包含する。
【0015】
長さ方向の部分5は、横行(YZ)平面内において少なくともU字形の断面を好都合に有し、説明している実施態様によれば、U字形の横行部分を底とし、言い換えると、U字形が上向きに開いている。長さ方向の部分は、一体の矩形の断面を提供することによって、または上に定義されているU字形の断面を閉じることによって矩形とすることも可能である。
【0016】
したがって、長さ方向の部分は、基本的に、底板5bに接続されたペアの横壁5aを包含する。好ましくは、壁5a、5bが、すべて単一の部品として、または異なる板を一つに溶接することによって実現される。この種の板は、金属、プラスチック、または挟み込み複合材料とすることが可能である。
【0017】
好ましくは、横壁5aに、長さ方向の部分5によって画定される内側空間8への、すなわち横壁5aと底壁5bの間に構成される空間8へのアクセスを可能にするべく構成される開口部7を備えることが可能である。一般に、その種の内側空間8内には、車両の種々のモジュールを動作させるためのタンクまたはポンピング/圧縮手段が収容される。
【0018】
さらにまた、長さ方向の部分5には、内側空間8内にサブコンパートメントを画定し、同時に、軸X周りのトルクに対して長さ方向の部分8の強度を上げるべく構成され、内側空間8内に収容される仕切り壁9が備えられ得る。説明している実施態様においては、仕切り壁9が、横壁5aおよび底壁5bと接続され、空間8を3つのサブコンパートメントに分ける、横行(YZ)平面と平行な板壁として実現される。
【0019】
詳細に述べると、図示されている実施態様によれば、空間8が3つのサブコンパートメントに分割され、それにおいて、終端部分6にもっとも近い1つは、横壁5b内に実現された開口部7からアクセス可能であり、残りのサブコンパートメントは、その種の開口部からのアクセスが可能でない(たとえば、タンクの格納のために使用できるか、またはそれら自体で液体タンクを作り出すことが可能である)。
【0020】
終端部分6は、基本的に、長さ方向の部分の末端のU字形と整合するべく構成され、たとえば、ねじ留め、溶接、または接着によってそれに固定される中心部分11aを包含する板壁11を包含する。板壁11は、さらに、垂直軸と平行に長さ方向の部分の底壁5bに関して下方まで延び、かつ横行(YZ)平面と平行に中心部分11bから延びるペアの横部分11bを包含する。
【0021】
ルーフ3は、基本的に、横軸Zに沿って中心本体2の終端部分6の延びに等しい延びと、長さ方向の軸Xに沿って中心本体2の長さ方向の部分5の延びに等しい延びを有する平板12を包含する。平板12は、実質的に平坦な材料の壁であり、長さ方向の部分5および終端部分6の上端縁に沿って中心本体2に溶接またはねじ留めすることが可能である。好ましくは、板12を金属製とする。
【0022】
ルーフ6は、さらに、平板12の周縁の少なくとも一部を取り囲むべく構成され、かつ垂直方向にそれの上方および下方へ延びる欄干13を包含する。
【0023】
この開示の実施態様によれば、欄干13が、平板12の長さ方向の縁に沿ってだけ備えられ、二重傾斜壁を包含する。その種の二重傾斜壁は、主板の縁から、それの中心部分の上方に延びる第1の傾斜部と、その第1の傾斜部と対称な反対側の第2の傾斜部を定義する。
【0024】
横コンパートメント4は、緊急救難車両の種々の動作機器を配置するための空間を画定するべくいくつかの方法で画定され得る。好都合なことに、適切な形状を画定するべく曲げられる単板14からそれらを作ること、好ましくは金属材料でそれを実現することが可能である。その種の画定されたコンパートメントは、ルーフ13および/または中心部分2に、ねじ留めを介して、溶接または接着によって固定され得る。
【0025】
開示されている実施態様においては、その種の金属単板14が、長さ方向(XY)の平面内において実質的にU字形を画定するように曲げられ、たとえば、ペアの横壁14aと終端壁14bとを包含するか、またはペアの横壁14aと、終端壁14bと、横壁14aのうちの1つと終端壁14bを接続する少なくとも1つの接合壁14cとを包含する。コンパートメント14の組み合わせは、最終的に望ましい強度を構造に与える。
【0026】
その種のモジュールは、緊急救難車両の具体的な用途に従って形状および寸法を設計することができ、かつ長さ方向の軸Xに関して対称に中心部分2の両側に備えるか、または設計上の要求に従った異なる態様で備え得る。
【0027】
好都合なことに、中心部分2および横コンパートメント4の両方には、中心部分2および横コンパートメント4によって区切られる異なる空間の間におけるケーブル/ワイヤの通過を可能にし、かつ棚を連続させて取り付けることを可能にし、かつコンパートメントの内側における材料の固定を可能にするべく構成される溝15、たとえば垂直開口部を備え得る。
【0028】
定義済みの実施態様においては、特に、溝15が、中心部分2の終端部分6の横壁11bに備えられ、それの全長から垂直軸Yに沿って延び、各コンパートメント4の横壁14aの少なくともいくつかにおいて、それらの全長から垂直のY軸に沿って延びる。より詳細に、かつ好ましくは、垂直軸Yに平行な2つの溝15が、上記の要素のそれぞれに備えられる。
【0029】
上部構造1には、さらに、たとえばねじ留めまたはボルト留め等の機械的な結合によって横コンパートメントまたは中心部分2に取り付けられ、開口部または溝15等のいくつかの開いた部分を閉じるべく構成されたカバー16が、好ましくは備えられる。
【0030】
本発明はまた、上に定義されているとおりの緊急救難車両のための上部構造1を製造するための、次に示す段階を包含する方法にも関する:
・ 中心部分2、ルーフ3、および横コンパートメント4を別々に組み立てる段階と、
・ 中心部分2、ルーフ3、および横コンパートメント4のうちのそれぞれに、それぞれの動作要素を別々に備える段階と、
・ 中心部分2にルーフ3を固定する段階と、
・ 横コンパートメント4を中心部分2および/またはルーフ3に固定する段階。
【0031】
以上の点から見て、本発明に従った上部構造1および関連する製造方法の利点は明らかである。
【0032】
提案の構造は、種々の標準化された形式であらかじめ作成することが可能であり、それにより、異なる類型の緊急救難車両の製造に規模の経済性を提供する。
【0033】
さらにまた、提案されている上部構造は、周知のものに関して、より軽量であり、かつより大きな可用空間の達成を可能にする、充分に剛直な構造を提供する。
【0034】
それに加えて、上部構造の異なる部分を別々に、いくつかの動作要素をすでに中に搭載して実現することが可能なことから、製造プロセスを最適化することが可能である。したがって、種々の部分を並行させて製造することが可能であり、それにより、製造プロセス時間を短縮することが可能である。
【0035】
さらにまた、種々の部分の搭載が類似した作業台において可能になることから、車両の製造に必要な空間が低減される。
【0036】
時間および使用空間両方の低減は、緊急救難車両の製造コストの低減を可能にする。
【0037】
説明した上部構造1および関連する製造方法に対し、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲を超えて拡張されることのない修正が可能であることは明らかである。
【0038】
特に、特許請求の範囲によって定義されるとおりの本質的な要素を維持してさえ、例示的な実施態様の中で定義されている形状が、緊急救難車両の要求に従って変化し得ることは明らかである。
【0039】
例のために述べると、横コンパートメント4が異なる断面を有してもよく、または中心部分2が、より多くのコンパートメントを空間8に備えてもよく、または欄干13の存在または形状を変更してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 上部構造
2 中心本体、中心部分
3 ルーフ
4 横コンパートメント
5 長さ方向の部分
5a 横壁
5b 底壁、底板
6 終端部分
7 開口部
8 内側空間
9 仕切り壁
11 板壁
11a 中心部分
11b 横部分
12 平板
13 欄干
14 単板
14a 横壁
14b 終端壁
15 溝
16 カバー
X 長さ方向の軸
Y 垂直軸
Z 横軸
図1
図2