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特許7460770液体フィードストリーム中へのガスの再飽和
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】液体フィードストリーム中へのガスの再飽和
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/30 20060101AFI20240326BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01J19/30
C10G45/02
B01J19/24
B01J8/02 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022538163
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020066445
(87)【国際公開番号】W WO2021127644
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/951,681
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518232630
【氏名又は名称】クリスタフェーズ・プロダクツ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラバー,ジョン・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】グラバー,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ハム,ピーター・グレゴリー
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-109855(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137485(WO,A1)
【文献】特開2016-137485(JP,A)
【文献】特表平06-510566(JP,A)
【文献】特開平11-347574(JP,A)
【文献】特開平11-188254(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2060321(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
B01J 8/00 - 8/46
C10G 1/00 - 99/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法であって、
反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;
気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含み、
前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、
前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、
前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され、
前記反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項2】
前記加工容器は、固体要素の固定床と反応器を通して並流的に流れる流体相とを含む多相反応器であるトリクルベッド反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応体に富んだ液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させることをさらに含み、多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
望ましくない種を液相から除去するために加工容器内で処理加工を行うことをさらに含み、処理加工は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含み、前記望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応体に富んだ液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
生成物に富んだ液相を加工容器内で処理する方法であって、
反応生成物を含み生成物に富んだ液相、及び気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;
生成物に富んだ液相からの反応生成物の少なくとも一部を、交換層内のガス中に拡散させて、生成物に乏しい液相を形成することと、を含み、
前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、
前記リリーサー媒体は、生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能な固体材料を含み、
前記リリーサー媒体は、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり、
前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し、
前記反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含み、
前記反応生成物は、処理された炭化水素、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、及び他のガスを含む、
方法。
【請求項10】
前記加工容器は、固体要素の固定床と反応器を通して並流的に流れる流体相とを含む多相反応器であるトリクルベッド反応器である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記生成物に乏しい液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させることをさらに含み、多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
望ましくない種を液相から除去するために加工容器内で処理加工を行うことさらに含み、処理加工は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含み、前記望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項15】
反応体に乏しく生成物に富んだ液相を、トリクルベッド加工容器内で処理する方法であって、
反応体に乏しく生成物に富んだ液相、及び反応体を含む気相を、トリクルベッド加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;
反応体に乏しく生成物に富んだ液相からの反応生成物の少なくとも一部を、気相に拡散させ、気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しく生成物に富んだ液相中に拡散させて、反応体に富んで生成物に乏しい液相を形成することと、を含み、
前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、
前記コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、
前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含むことができ、該薄膜は、反応体に乏しく生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、
前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され
前記反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含み、
前記反応生成物は、処理された炭化水素、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、及び他のガスを含む、
方法。
【請求項16】
前記反応体に富んで生成物に乏しい液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させることをさらに含み、多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
望ましくない種を液相から除去するために加工容器内で処置加工を行うことをさらに含み、処理加工は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含み、前記望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記反応体に富んで生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ガスストリームから、反応体に乏しく生成物に富んだ液体ストリーム中に拡散する、反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
交換層内のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
反応体に乏しく生成物に富んだ液体ストリームの処理のためのトリクルベッド加工容器であって、
複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含む交換層であって、気相からの1つ以上の反応体の、交換層内の反応体に乏しく生成物に富んだ液相中への拡散を促進して、反応体に富んで生成物に乏しい液相を形成することが可能である、交換層と;
多孔質固体要素の床を含む、交換層の下流の処理層であって、多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含み、望ましくない種を液相から除去するための処理加工を行うことが可能であり、処理加工は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含む、処理層と、を含み、
前記コレクター媒体及びリリーサー媒体は、コレクター媒体の各々がリリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有するように、交換層内に詰め込まれ、前記気相、及び反応体に乏しく生成物に富んだ液相は、交換層内で並流を経、前記コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しく生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され、
前記反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含み、
前記望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含む
加工容器。
【請求項24】
前記リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、請求項23に記載の加工容器。
【請求項25】
前記リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下である、請求項23に記載の加工容器。
【請求項26】
反応体に富んだ、生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含む、請求項23に記載の加工容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月20日出願の米国仮特許出願第62/951,681号の利益及び優先権利益を主張するものであり、その開示及び内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本明細書に開示する主題は、一般に反応加工容器(以下、「反応プロセス容器ともいう」)に関し、より詳細には、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリーム又は相とのガス交換及び化学反応を可能にすることに関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の記載
現場内の加工容器(以下、「プロセス容器」ともいう)は、多くの場合、そのような容器に進入し、該容器を通過し、及び該容器を退出する流体ストリーム又は相を有する垂直円筒構造である。工業用容器は、直径が6インチ~20フィート超、高さが2~100フィート超である。反応系を含む容器は、化学反応を促進するために使用され得る。
【0004】
多くの従来の容器内には、材料の異なる相が含まれている。固相は、固体要素の1つ以上の床を含む。容器に含まれる他の相は、1つ以上の液相及び1つ以上の気相を含む流体相を含む。多数の流体相が流体ストリームに含まれ得る。相の状態は、それらの操作条件に依存し得る。容器への典型的な液体スループットは、1日当たりのバレルで測定される。典型的なガス体積は、標準立法フィート(SCF)で測定される。容器へのガスのスループットは、典型的には、液体フィードの1バレル当たりの標準立方フィートで測定される。
【0005】
この分野における改良が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される主題によれば、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリームとのガス交換及び化学反応を可能にするための方法の様々な例示的な態様が、本明細書に提供される。
【0007】
特定の例示的な態様では、反応体に乏しい(reactant-lean)液相を加工容器内で処理する方法が提供される。反応体に乏しい液相及び気相を、プロセス容器内の交換層に並流的に通過させ得る。気相は反応体(以下、「反応関与体」ということもある)を含む。気相からの反応関与体の少なくとも一部を、交換層内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成し得る。交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含むことができ、コレクター媒体は、反応関与体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含むことができる。リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含むことができ、該薄膜は、反応関与体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能である。薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され得る。プロセス容器は、トリクルベッド反応器であり得る。特定の局面では、反応関与体に富んだ液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させ得る。多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。処理プロセスは、望ましくない種を液相から除去するためにプロセス容器内で行われ得る。処理プロセスは、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含むことができる。望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含むことができる。反応関与体に富んだ液相は、ナフサ、ガソリン、灯油灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含むことができる。ガスストリームから反応関与体に乏しい液体ストリーム中に拡散する反応関与体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含むことができる。リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。特定の局面では、リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり得る。特定の局面では、交換層内のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し得る。
【0008】
特定の例示的な態様では、生成物に富んだ液相をプロセス容器内で処理する方法も提供される。生成物に富んだ液相及び気相を、プロセス容器内の交換層に並流的に通過させ得、ここで生成物に富んだ液相は、反応生成物を含むことができる。生成物に富んだ液相からの反応生成物の少なくとも一部を、交換層内のガス中に拡散させて、生成物に乏しい液相を形成し得る。交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含むことができ、コレクター媒体は、生成物に富んだ液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含むことができる。リリーサー媒体は、生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能な固体材料を含むことができる。特定の局面では、リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり得る。特定の局面では、交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し得る。プロセス容器は、トリクルベッド反応器であり得る。特定の局面では、生成物に乏しい液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させ得る。多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。処理プロセスは、望ましくない種を液相から除去するためにプロセス容器内で行われ得る。処理プロセスは、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含むことができる。望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含むことができる。生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含むことができる。リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。
【0009】
特定の例示的な態様では、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相をトリクルベッドプロセス容器内で処理する方法も提供される。反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相及び気相を、トリクルベッドプロセス容器内の交換層に並流的に通過させ得る。気相は反応関与体を含む。反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相からの反応生成物の少なくとも一部を、交換層内の気相に拡散させ得、気相からの反応関与体の少なくとも一部を、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相を形成し得る。交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含むことができる。コレクター媒体は、反応関与体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含むことができる。リリーサー媒体は、その外表面上に薄膜が形成されている固体材料を含むことができ、該薄膜は、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能である。薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され得る。特定の局面では、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させ得る。多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも
1つを含むことができる。処理プロセスは、望ましくない種を液相から除去するためにプロセス容器内で行われ得、ここで処理プロセスは、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含むことができる。望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含むことができる。反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含むことができる。ガスストリームから反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液体ストリーム中に拡散する反応関与体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含むことができる。リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。特定の局面では、リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり得る。特定の局面では、交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し得る。
【0010】
特定の例示的な態様では、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液体ストリームの処理のためのトリクルベッドプロセス容器が提供される。プロセス容器は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を有する交換層を含むことができ、交換層は、気相からの1つ以上の反応関与体の、交換層内の反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相中への拡散を促進して、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相を形成することが可能である。プロセス容器は、交換層の下流に、多孔質固体要素の床を有する処理層も含むことができ、多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを有し、望ましくない種を液相から除去するための処理プロセスを行うことが可能であり、ここで処理プロセスは、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含むことができる。特定の局面では、コレクター媒体及びリリーサー媒体は、コレクター媒体の各々がリリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有するように、交換層内に詰め込まれ得る。気相及び反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相は、交換層内で並流を経ることができる。コレクター媒体は、反応関与体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含むことができる。リリーサー媒体は、その外表面上に薄膜が形成されている固体材料を含むことができ、該薄膜は、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能である。薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され得る。特定の局面では、リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。特定の局面では、リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり得る。望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つであり得、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つであり得、ガスストリームから反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液体ストリーム中に拡散する反応関与体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つであり得る。
【0011】
本発明の特徴及び利益のいくつかを述べてきたが、添付の図面と併せて説明を進めるにつれてその他も明らかとなるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、複数の層又はゾーンを有するプロセス容器の側面図である。
図2】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、複数の層又はゾーンを有するプロセス容器の側面図である。
図3A】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、交換層を通した液体及びガスの並流と、プロセス容器内の床にまたがる交換層の比較図である。
図3B】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、交換層を通した液体及びガスの並流と、プロセス容器内の床にまたがる交換層の比較図である。
図4】本明細書に開示される主題の例示的な態様による交換層の側面図である。
図5A】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、コレクター媒体及びリリーサー媒体の側面図である。
図5B】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、コレクター媒体と、上に薄膜が形成されているリリーサー媒体の側面図である。
図6】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、上に薄膜が形成されているリリーサー媒体の側面図である。
図6A】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、上に薄膜が形成されているリリーサー媒体と活性部位の側面図である。
図6B】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、上に薄膜が形成されているリリーサー媒体の側面図である。
図6C】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、コレクター媒体と、上に薄膜が形成されているリリーサー媒体の側面図である。
図7】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、リリーサー媒体で包囲された、満たされたコレクター媒体の側面図である。
図8】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、リリーサー媒体で包囲された、部分的に満たされたコレクター媒体の側面図である。
図9】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、複数の穿孔を有するコレクター区画(pane)の三次元斜視図である。
図10】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、複数の穿孔を有するコレクター区画の三次元斜視図である。
図11】先行技術によるプロセス容器と、本明細書に開示される主題の例示的な態様によるプロセス容器との比較図である。
図12】本明細書に開示される主題の例示的な態様によるプロセス容器の側面図である。
図13】本明細書に開示される主題の例示的な態様による層状交換層の側面図である。
図14A】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、コレクター媒体を包囲するリリーサー媒体の三次元図である。
図14B】本明細書に開示される主題の例示的な態様による、コレクター媒体を包囲するリリーサー媒体の三次元断面図である。
【0013】
本明細書に開示される主題は、好ましい態様に関連して記載されるが、本明細書に開示される主題をその態様に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。それどころか、添付の特許請求の範囲に定義される本明細書に開示される主題の趣旨及び範囲内に含まれる場合がある如く、全ての代替物、修正物、及び等価物を包含することを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示される主題によれば、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリームとのガス交換及び化学反応を可能にするための方法の様々な例示的な態様が本明細書に提供される。
【0015】
特定の例示的な態様では、図1~14に示すように、プロセス容器100内で多相反応が起こり得る。1つ以上の反応関与体含有フィードガス成分は、望ましくない種を含む1
つ以上のフィード液体中に拡散し得る。これらの拡散相は、容器100内に配置された1つ以上の要素床120を通過し得る。1つ以上の拡散流体相は、容器100内の1つ以上の要素床120内の活性部位40と接触し得る。活性部位40は、典型的には、触媒部位、吸着剤部位及び反応関与体部位の1つ以上を含む。
【0016】
要素床120は、1つ以上の要素125を含み得る。要素125は、典型的には多孔質固体材料である。要素125は、非多孔質固体材料であってもよい。要素125は、触媒、吸着剤、及び反応関与体の1つ以上であり得る。要素125は、典型的にはサイズが1/32”~1.5”であり、床中に詰め込まれ得る。要素125は、本明細書で以後、活性部位40と称される活性フィーチャを含み又は保持し得る。活性部位40は、触媒部位、吸着剤部位、及び反応関与体部位の1つ以上である。要素125の外部表面積は、典型的には、要素床120の1立方フィート当たり100~800平方フィートの範囲である。
【0017】
図1に示すように、様々な例示的な態様によれば、要素床120内の要素125は、全て同じであってもよく、又は要素床120A、120B、120Cなどは、容器100全体において異なるタイプ又はサイズの要素125、又はその様々な組み合わせを有し得る。
【0018】
多孔質要素125は、マイクロ細孔、メソ細孔 及び/又はマクロ細孔からなっていてもよい。マイクロ細孔は、2ナノメートル未満の直径を有する。メソ細孔は、2ナノメートル~50ナノメートルの直径を有する。マクロ細孔は、50ナノメートルを超える直径を有する。要素125は、300ナノメートルまでの直径の他の多孔質フィーチャを有してもよい。適切な操作条件下で、要素床120は、拡散流体から望ましくない種を除去し、種を含まない液体生成物を作り、ガス希釈相と望ましくない液体種との反応から他の生成物を作る反応を可能にする。
【0019】
特定の例示的な態様では、本明細書に開示される主題の構成要素は、容器100内に配置された活性部位40を含む要素床120;容器100に供給される反応関与体含有気相;容器100に供給される望ましくない種含有液相;要素床120と接触するガス及び液体フィードの溶液;活性部位40上に形成される、種を含まない液体生成物;望ましくない液体種とのガス成分の反応から活性部位40上に形成される他の生成物;リサイクル又は続く処理のために回収される残りのフィード気相;続く処理のために回収される他の生成物;及び望ましくない種を含まない液体生成物:のうちの1つ以上を含み得る。
【0020】
容器100の効率的な操作は、効果的な混合に依存する。液体及び気相フローの場合、混合は、相を混ぜ合わせるのに用いられるいずれかの操作を指す。撹拌は、混合の一般的な方法であり、これは機械的手段によって流体を強制的に混ぜ合わせる。流体の混合は、流体の間での成分の拡散又は交換を増加させる。流体成分の拡散は、周知の現象である。高濃度の領域からの低濃度の領域への拡散は、フィックの法則、(Adolph Ficks、1855参照)によって定義されている。フィックの法則は、流体中に存在する高濃度成分は、同じ成分の量を殆ど~全く含まない流体中に拡散し得ることを述べている。フィックの法則はまた、流体-流体境界を横切る成分濃度の変化速度は、その境界の表面積に比例することを述べている。2つの相の間の界面表面積の低下は、1つの相が別の相中に拡散し得る速度を低下させ得る。
【0021】
本明細書に開示される主題によれば、相間の十分な交換を作り出すために、容器100内の要素125の界面において液体と気相との間の大きい界面表面積を有することが望ましい。ガス交換は、所望の反応に適した条件を作り出すために重要である。
【0022】
液相中に部分的に溶解する気相は、気液溶液を形成する。液相中の溶解ガスの最大量は、飽和限界に依存する。より高い圧力及びより低い温度は、飽和限界の増大を促進する。飽和は、液体中へのガスの拡散速度によって決定される。拡散速度は、生成物を形成するための活性部位40、液体反応関与体、及びガス反応関与体の同時の存在が必要である反応速度論に対する影響を有し得る。反応速度論は、特定の反応が起こる速度を定義する。液相中のより高い濃度の溶解ガスは、所望の反応を促進するために望ましい。
【0023】
本明細書に開示される主題によれば、高い拡散速度は、1つ以上の高濃度気相成分が同じ成分を殆ど又は全く含まない1つ以上の液相材料と混合される場合に、容器100内で起こり得る。溶解限度に対して低い濃度の、溶解した反応性ガスを有する液相は、「反応関与体に乏しい液相」と呼ばれ得る。溶解限度に対して高い濃度の、溶解した反応性ガスを有する液相は「反応関与体に富んだ液相」と呼ばれ得る。反応関与体に乏しい液相は、容器100に供給される元の液体ストリームに存在し得、又は、活性部位40との相互作用中の1つ以上の液相中の1つ以上の溶解ガスの枯渇に起因し得る。所与のプロセス容器100内で、反応関与体に富んだ液相は、反応関与体に乏しい液相と比較した場合、より多くのガスベースの反応関与体が液相中に溶解している。反応関与体に乏しい液相は、反応関与体に富んだ液相と比較して、所望の反応を生じる可能性が低い。1つ以上の生成物は、活性部位40との反応の結果作り出され得る。所望の反応は、反応関与体に富んだ液相中の反応関与体を生成物に変換することによって、望ましくない種を低下させ得る。これらの生成物の一部は、液相中に溶解したガスである。これらの溶解したガス生成物は、本明細書では「反応生成物」と呼ばれる。反応生成物は、活性部位40から液相中へ放出される。反応生成物は、液相中で溶質として存在し得、気相反応関与体と望ましくない種との反応を妨げる可能性があり、所望の反応の速度の低下をもたらす。より高い濃度の1つ以上の反応生成物を有する液相は、「生成物に富んだ液相」と呼ばれ得る。生成物に富んだ液相が形成される場合、液体と気相との間に反応生成物の濃度勾配が発生し得、周囲の気相中への反応生成物の拡散が促進され得る。生成物に富んだ液相が形成される場合、所望の反応速度は低下し得る。これらの反応生成物を、反応生成物のガス交換を介して液相から除去することが望ましい。比較的低い濃度の反応生成物を有する液相は、「生成物に乏しい液相」と呼ばれ得る。生成物に乏しい液相は、望ましくない種と溶解したガス反応関与体との反応を妨げる反応生成物がより少ないため、生成物に富んだ液相と比較して、所望の反応を生じることがより可能であり得る。液相は、反応関与体に富んだ又は反応関与体に乏しい及び生成物に富んだ又は生成物に乏しい液相として記載することができる。
【0024】
本明細書に開示される主題によれば、容器100に供給される1つ以上の液相は、プロセス中に軽減又は変換されるべき望ましくない種を含む。1つ以上のガス成分は、拡散及びガス交換によってフィード液相と混合され得る。交換されたガスフィードは、液相中の望ましくない種を軽減することが可能な1つ以上の反応関与体成分を含み得る。この軽減は、要素床120内に含まれる活性部位40において、活性部位40によって行われ得る。この活性部位40は、望ましくない種を液相から除去するための反応の促進を助ける。促進された反応の結果、容器100の液体及びガスの流れの一部となる反応生成物が生成され得る。活性部位40及び流体成分を含む反応関与体が、互いに相互作用するのに自由に利用可能な変換プロセスでは、変換は、典型的には反応速度と定義される、反応関与体間の分子相互作用の速度で行われ得る。
【0025】
伝統的な多相反応器では、所望の反応が起こるためには多数のステップを続行する必要がある:1つ以上のガス及び液相をフィードとして容器に供給する必要がある;1つ以上の気相成分反応関与体を、1つ以上の液相反応関与体中に拡散させる必要がある;反応を行うために活性部位40が利用可能である必要がある;1つ以上の拡散したガス反応関与体及び1つ以上の液相反応関与体が、活性部位40において一緒に反応する必要がある。
【0026】
反応器の全体的な反応速度は、上述したステップにおける最も遅い速度に制限されるであろう。多くの(全てではない)典型的なプロセス容器の場合、1つ以上の液相反応関与体への1つ以上の気相反応関与体の拡散速度が、一般に律速段階である。前述したように、フィックの法則は、この拡散速度が液相と気相との間の界面表面積に依存することを規定している。低下した拡散速度は、プロセス容器操作に対する障害であり得る。
【0027】
本明細書に開示される主題によれば、容器100内の要素床120の流体相間表面積は、拡散速度を促進するために、可能な限り大きいことが望ましい。これは、反応に富んだ(reaction-rich)、生成物に乏しい液体を作り出すことができ、より高い反応速度をもたらすであろう。
【0028】
一緒に導入される間、1つ以上の液体及び気相は、容器内及び要素120の床内で様々な速度、温度、圧力、及び成分を有し得る。要素床120を通した液相の流れは、主に重力によって駆動される一方、気相の流れは、主に容器の入口と出口の間の圧力差によって駆動される。気相はまた、液体-ガス界面における境界条件による抗力を受ける可能性がある。気相に対する減速力は、容器及びその要素床120を通して気相を押すのに必要な圧力差の量を増加させ得る。液相は、気相から等しい且つ反対の力を感知することができる。液相に対する輸送力は、重力と抗力の合計である。流体相が床又は容器中により深く移動するにつれて、液体及び気相は、床又は容器を横切る圧力差を最小限にするように、それら自体を配置するよう試み得る。この配置は、液体と気相の体積の分離を増加させる傾向があり、これは二相間の界面表面積を低下させ得る。表面積の低下と液体-気相体積分離の増加は継続する可能性があり、流体が床又は容器中により深く移動するにつれて拡大し得る。
【0029】
フィックの法則によれば、液体と気相との間のより大きい表面積は、よく混合された液体及び気相と、相間の分子のより高い拡散又は交換を特徴付ける。液体と気相との間のより小さい表面積は、液体と気相との不十分な混合と、二相間の分子のより低い拡散又は交換を特徴付け得る。液体-ガス表面界面の減少は、液相中に移動するガス反応関与体の量の低下をもたらし、要素床120又は容器100の有効性を制限する。流体相間の拡散の減少は、液体とガスとの間の交換を遅らせる可能性がある。このことは、相が容器を通して流れる際に、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液体が、反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液体に遷移することにつながる。これは望ましい遷移ではない。
【0030】
多くの異なる容器タイプが存在する。これらは、反応器、分離器、保護容器、又は吸着剤床と見なすことができる。特定の例示的な態様では、反応器は、トリクルベッドプロセス容器のタイプである。多種多様な処理プロセスが異なるタイプの容器において存在する。これらの多くは水素化処理装置である。プロセスの例は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、異性化、及び他の工業プロセスである。精製及び石油化学用途におけるユニットタイプは、ナフサ水素化処理装置、パイガス水素化処理装置、改質装置、ディーゼル水素化処理装置、軽油水素化処理装置、キャットフィード水素化処理装置、FCCガソリン水素化処理装置、FCC水素化ユニット、再生可能なディーゼル水素化処理装置、固定床エステル交換容器、水素化分解前処理装置、水素化分解装置、異性化ユニット、灯油水素化処理装置、ジェット水素化処理装置、潤滑油水素化処理装置、脱蝋ユニット、残留水素化処理装置、乾燥機、塩化物処理装置、粘土処理装置、塩乾燥機、及び他の固定床ユニットであり得る。
【0031】
液体ストリームは、有機又は無機であり得る。一般的な液相は、植物油、動物獣脂、水、炭化水素、原油及び原油の誘導体、例えばナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、又は他の原油誘導体を含む。一般的な気相は、メタン、ブタン、プロパン、
水素、アンモニア、硫化水素、水素塩化物、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水、酸素、窒素、又は他のガスを含む。ガスはまた、混合物であってもよい。一般的な反応生成物は、処理された炭化水素、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、及び他のガスを含む。
【0032】
広く使用されている多相容器の例は、液体炭化水素、又は油、様々な望ましくない硫黄種を含む相と、水素を含む気相との両方を供給する水素化処理容器である。これらの相は、要素床120内に含まれる活性部位40を通過する。水素化処理装置の所望の反応は、活性部位40において水素気相を油相中の望ましくない硫黄種と反応させることであり得る。所望の反応は、硫黄を含まない炭化水素及び硫化水素を生成する。硫化水素は、液相中に溶解した反応生成物である。この例では、所望の反応を繰り返すにつれて、液相から水素が枯渇し得、硫化水素が液相中に蓄積し得る。図6Bに示すように、液体油相中の溶解水素ガスの濃度を増加させ、同時に液体油相の溶解硫化水素ガスを低下させるために、ガス交換が所望される。ガス交換は、液体油相と気相との間の界面表面積に依存する。相をより徹底的に混合するにつれて、それらの間の表面積が大きくなり、より高いガス交換速度がもたらされる。高度の混合が望ましい。水素化処理装置の例は、典型的には、200~800°Fの範囲の温度と、200~2,000psiの範囲の圧力を有するトリクルベッド反応器として操作される。トリクルベッド反応器は、固体要素の固定床と、反応器を通して並流的に流れる流体相とを含む多相反応器である。
【0033】
ヘンリーの法則(William Henry、1803参照)は、平衡状態にある所与の体積の溶媒中の溶解ガスの質量は、ガスの分圧に比例すると述べている。従来の水素化処理の例では、液体-ガス表面界面の損失に対抗し、また油中への水素の拡散を促すために、水素は、容器100に進入する油の流量の3~5倍の流量で存在する必要がある。油1バレル当たり200標準立方フィートの水素が変換に必要な場合、油1バレル当たり600~1000標準立方フィートの水素を容器100に供給し、容器100内を循環させる必要がある。流体フィード相は、油中にガス状水素を拡散させるために、容器100又は床120への導入点で、ミキサー、クエンチ、及び/又は分配器トレー(distributor tray)として知られるハードウェアによって混合される。容器100の圧力、温度、及び水素純度に応じて、油中の水素の最大溶解度は、油1バレル当たり50~100標準立方フィートである。拡散した油相中の水素及び硫黄種は、活性部位40と相互作用して所望の脱硫反応を行うことができる。これらの反応は、回収可能な副生成物としての硫化水素を形成する。ミキサー、クエンチ、及び/又は分配器トレーとして知られるハードウェアの下方、且つ要素床120の上方で、頂部床材料170を濾過、分配、及び/又は押し下げを含む機能のために使用することができる。
【0034】
トリクルベッド反応器は、多相容器100構成である。反応器を通した液体及びガスの並流により、ガス成分と液相との相互作用が可能となる。容器100内に設置された要素床120は、気相拡散、反応有効性、水素利用、並びに反応生成物の生成及び回収における改善を含む、新たな、驚くべき有利な反応器性能を提供することができる。要素床120がトリクルベッド容器内に詰め込まれる際、要素床120は詰め効率及び配位数を有する。詰め効率は、要素床120によって占められる空間の体積パーセントと定義される。配位数は、いずれかの要素125がそれを包囲する要素125と有する接触点の数である。一般に、詰め効率が増加すると配位数も増加する。Kepler Conjecture(Johannes Kepler、1611参照)は、空間を満たす等サイズの球体の配置はいずれも、「立方最密充填」の平均密度よりも大きい平均密度を有さないと述べている。立方最密充填は、高度に秩序化された状態であり、球体を手で配置しない限り達成される可能性は低い。球体の立方最密充填の配位数は12である。これらの容器100の装填プロセスは、ほぼ無作為であるが、詰め効率及び要素125間の接触点の程度を変えるように制御することができる。高度に秩序化された最密充填は、これらの装填では可
能性がなく、配位数は最大未満であり得る。容器100内で可能な限り多くの要素125を有するように、詰め効率を増加させることが望ましい。しかしながら、流体力学的制約、例えば相間の差圧が、可能な詰め効率を制限し得る。装填の深さは、およそ数インチ~100フィートのいずれかであり得る。これらは従来、1つの要素床120として装填され、要素125は様々な形状及びサイズであるが、典型的には同様に装填される。より深い要素床120は、一般に、サイクル時間を追加し、操作中に達成され得る変換を改善するように使用される。流れる液相材料中への気相材料の拡散は、要素の組成並びに容器100の温度、圧力、及びガスと液体種との接触を支配する境界層の問題により決定される拡散の速度に依存し得る。
【0035】
液体及び気相の流れは、プロセス容器100の断面積で割ったこれらの相の体積流量により規定される空塔速度を有するであろう。実際の液体及び気相の流速は、ほぼ0から、計算された空塔液体流速の4倍超までの範囲の局所速度変動を有し得る。さらに、液体と気相との間の密度差が存在する。部分的に、これは液体と気相の分離及び相間の界面表面積の低下をもたらし得るものである。
【0036】
「液体ホールドアップ」は、要素125間の隙間空間内の体積の部分である。液体ホールドアップは、隙間液体流速が0又はほぼ0の場合は常に起こり得る。液体流の体積は要素床120のこれらの部分内で停滞していると見なされ得る。要素床120内の典型的な液体ホールドアップは、要素125間の隙間空間の20%~40%の範囲であり、要素125が互いに接触する位置に起こる。
【0037】
要素床120が詰め込まれ又は装填された際、要素床120は無作為に詰め込まれ得、高度に秩序化された状態ではない。この無作為に詰め込まれた状態では、約12個以下の要素125がいずれか1つの要素125と接触する。接触点の数は、液体が要素125間に占め得る経路を制限し得る。
【0038】
トリクルベッド反応器内での液体及び気相流の挙動に関連した重要な特性は、要素床120自体の特性によって決定される。これらの特性は、詰め効率、空隙径、及び液体ホールドアップ体積である。詰め効率は、所与の空間を満たす要素床120のパーセントとして定義される。要素床120の典型的な詰め効率は、55%~65%の範囲である。要素床120によって満たされない典型的な空間は、従って35%~45%である。この空間は、本明細書では「空隙」と呼ばれる。より高い詰め効率により、容器内への要素125のより高い質量負荷が可能となる:
【0039】
空隙%=100%-詰め効率%
【0040】
要素床120内の空隙はまた、要素床120が達成できる液体ホールドアップの範囲にも影響する。記載された詰め効率では、液体ホールドアップは要素床120体積の7%~18%の範囲であり得る。
【0041】
空隙径は、要素床120の詰め込みにより生じる空隙の平均サイズと解釈することができる。詰め込まれた要素床120の予想される空隙径を特徴付ける一方法は、水力直径を使用することである。水力直径は:
【0042】
【数1】
により定義される。
【0043】
式中、Dは水力直径であり、Dは要素125の呼び径であり、pは詰め効率である。詰め効率60%の公称1/8インチ(3.17mm)のサイズの要素125の要素床120の場合、水力直径は、2.34mm又は要素125の直径の約73%である。詰め効率60%の公称サイズ1/20インチ(1.27mm)のサイズの要素125の要素床120の場合、水力直径は0.94mmであり、これは再度、要素125の直径の約73%である。水力直径は、空隙径と呼ばれる、要素125間の空隙の平均直径のおよその見積もりとして解釈され得る。
【0044】
液体ホールドアップの体積は、空隙径及び詰め効率に関連し得る。空隙径は、液体ホールドアップの有効性を制御し、より小さい空隙径は、より高い液体ホールドアップを可能にする。詰め効率も、液体ホールドアップの量に影響し得る。詰め効率が高くなるほど、総液体ホールドアップは低くなる。空隙径が小さくなるにつれて、空隙内の液体ホールドアップは毛細管現象によって推進されるようになり得る(Leonardo da Vinci, c. 1500参照、Robert Boyle, 1660参照)。毛細管現象は、材料の表面に対する付着力が、液体分子間の凝集力、又はさらに、液体分子に対する輸送力よりも強い場合に起きる。液体と固体との間の表面張力は、表面を無傷に保つように作用する。多孔質床及び多孔質体の場合、材料の表面に対する液体の付着は、液体と固体との接触を保持するように作用する、液体に対する力を生じさせ得る。これらに起因して、毛細管現象は材料の液体ホールドアップを増加させ得る。高い毛細管現象を有する材料は、一般に高い表面積対体積比を有する。
【0045】
より高い液体ホールドアップは、表面積及び流体相と固体要素との接触を改善するが、これは、典型的には、液体と気相成分との密な接触が重要であるトリクルベッド処理において望ましくない特性である。より小さい空隙径は、液体ホールドアップを押し上げ得る一方で、ガスの流れに利用可能な空隙を排除する。液体とガスとの相互作用を最大にするために、要素125を横切る薄膜35を可能にするトリクルベッド特性を有することがより有利である。典型的な「薄膜」35は、液相が気相に曝露され、且つ液相が固相の表面上を移動する自由表面を有する固相によって部分的に制約される液相の領域から構成されている。小さい空隙径は、液体ホールドアップを促し、要素125の場合、薄膜35の崩壊に寄与し得る。トリクルベッド反応器が薄膜35を維持することが望ましい。その結果、ガスは液体の薄膜35上を流れ、且つ薄膜35と相互作用することができる。薄膜35は、有利には、ガス交換を可能にするより大きい液体-ガス界面を有する、より大きい液体表面積、ひいては要素125との反応の利用可能性をもたらす。しかし、上記に論じたように、従来のトリクルベッド反応器の薄膜35は、典型的には流体力学的に安定ではなく、最終的に崩壊し得る。この不安定さに起因して、高い液体-ガス界面 表面積は、その達成及び維持が困難である。
【0046】
高い液体-ガス相互作用の必要性を克服する有利な一方法は、予備混合の能力を提供し、次いで液体及びガスを要素床120上に分配することである。従来の容器は、流体相の混合及び分配を促進するために設置された「製作された、工学的に作り出されたミキサー装置(fabricated engineered mixer equipment)」又は「分配器トレー」を使用することによって、流体相の初期混合を提供することが
できる。これはまた、蒸気注入の下流に設置された1つ以上の製作された、工学的に作り出された分配トレー又は蒸気相ミキサーによって達成することができる。そのような工学的に作り出されたミキサー装置は、典型的には、油中への水素の拡散を促進し、反応関与体に富んだ液体を形成するために使用される。工学的に作り出されたミキサー装置は、設計、製作、設置、操作及び維持が、複雑、困難且つ高価であり得る。設置、操作及び維持は、装置が容器100内でストリームの流れに直交するように固定及び整合されていることを必要とする。さらに、そのようなデバイスの設置は、典型的には、要素125が全く設置されていない空間である、容器100の深さの3~10フィートを占め得る。適切に設置及び操作される分配器トレーは、高度の初期床湿潤と、要素床120の頂部での良好な液体-ガス-固体相互作用を提供することができる。不適切に設置及び操作される分配器トレーは、不十分な床湿潤と頂部床170の相互作用を確実にし得る。トレー及びクエンチノズルを含むそのようなデバイスは、容器100の中央に設置することができる。
【0047】
要素床120の頂部に提供された、この大きい液体-ガス表面積は、流体相が要素床120中へ深く移動するにつれて減少する。液相と気相との相互作用が制限されている~存在しない領域が形成される。この低い相互作用は、液体-ガス表面界面が減少した望ましくない領域を形成し、2つの流体相間の拡散速度を低下させる。低下した拡散速度は、反応関与体の窮乏をもたらし得る。反応関与体の窮乏は、1つ以上のガス反応関与体成分が、周囲の気相から補充され得るよりも速く、拡散した流体状態で消費される場合に発生する。低下した拡散は、反応関与体に乏しい液体の発生につながる。液体-ガス分離及び反応関与体窮乏の存在が増加すると、ガス交換の維持に必要な水素流量が増加し;要素床120の有効性が低下し;所望の反応の減少によって容器100全体の性能が低下し;及びコーキング反応の存在が増加し得る。
【0048】
トリクルベッド容器100内では、1つ以上の所望のガス成分は、望ましくない液体種反応関与体と、拡散した気相反応関与体と、活性部位40との間の反応に起因して、液相から枯渇し得る。
【0049】
同じ反応の結果として反応生成物が拡散液相中に蓄積され、生成物に富んだ液体をもたらす。効率的な反応のために、1つ以上の所望の気相反応関与体成分は、1つ以上の拡散液相中に補充され、1つ以上の反応生成物は、拡散液相から除去される必要がある。反応関与体に乏しい、生成物に富んだ液体が、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液体に遷移することが望ましい。トリクルベッド反応器性能の悪化を原因とした液体と気相の分離は、相間の表面積を減少させ、これらの機能を無効にする。このことは、所望の気相反応関与体が反応のために利用可能でなく、反応生成物が流体中に溶解したまま残留し、反応関与体間の所望の反応を妨げるため、反応速度の低下をもたらし得る。
【0050】
水素化処理の例において、水素反応関与体が制限されると、水素の非存在下で他の反応が起こり得る。一般に、それらの他の反応はコーキングと称され、要素床120の有用性に害を及ぼし得る。コーキングはいくつかの形態をとり、各形態は、要素床120上の活性部位40をブロックし得る困難な種の蓄積をもたらす。
【0051】
コーキングは、分子クラッキング、オレフィン重合、及び芳香族重合に起因して生じる。芳香族重合は、多環式芳香族化合物の成長を指す。一旦これらの分子が十分大きく成長すると、それらは活性部位40の表面上に堆積することができる。これらは望ましくない生成物である。オレフィン重合は、不飽和パラフィン化合物の成長を指す。これらは大きく成長し、活性部位40をブロックする。分子クラッキングは、炭化水素鎖の継続的な破壊を指す。これらの鎖が破壊されるにつれて、水素が十分な量で存在しない場合、不飽和分子が形成され、活性部位40がブロックされる。コーキングは、要素床120の不活性化の主な原因であり、活性部位40の「死」につながり、容器100をシャットダウンし
て、要素125を除去及び/又は交換する必要があり得る。コーキングによる不活性化速度を低下させることが望ましい。
【0052】
1つ以上の従来の要素床120内の反応の性能は、床の深さと共に変化し得る。適切に設置、操作及び維持された工学的に作り出されたミキサー装置190の付近の、最上部の要素床120の頂部において、トリクルベッド反応器の性能は高く、コーキング反応速度は最小であり得る。流体相が床中をより深く移動するにつれて、要素床120の性能は悪化し、即ち、液相と気相との間の表面積が低下し、液体中の溶解ガスが消費され、反応関与体窮乏が続き、コーキング反応速度が増加し得、活性部位40の性能が低下する。液相中の望ましくない種の濃度が高くなるほど、より速い反応物窮乏が生じ得る。硫黄種の除去を意図する水素化処理装置の場合、所望の反応の速度の全体的な低下は、生成物のより高い硫黄含有量、より高い操作温度、及びより短いサイクル長をもたらす。
【0053】
要素床120不活性化に応答して処理条件を調整して、プロセス容器100の所望の反応物の生成を保持することができる。要素床120不活性化への応答は、要素床120の温度の上昇、及び/又は要素床120のフィード速度の低下を必要とし得る。温度の上昇は、容器100内の反応速度を増加させて、損失した活性を補う役割を果たす。フィード速度の低下は、必要な反応速度を低下させる。継続的な調整又は応答は、温度が上昇して最終的に容器100の操作上の制約を超え、フィード速度の低下が経済的に好ましくない操作をもたらすため失敗するであろう。この時点で行われるステップは、容器100のシャットダウン及び要素床120の交換を行うステップを含む。
【0054】
流体相に含まれる反応関与体間の変換を促進する1つ以上の要素床120を含む1つ以上の容器100内の2つ以上の流体相成分中への及び該流体相成分からのガス交換速度を増大させる、交換層140により行われる新規な効果が開示される。これらを形成するステップは、1つ以上の:改良されたガス交換設備を備えた容器100;改善された相互作用を有する拡散流体相;薄膜35拡散を介して反応関与体の補充を改善する交換層140;要素床120に含まれる、コークスを含む、汚染されていない活性部位の減少;及び反応ゾーンから迅速且つ効率的に逃れる反応生成物を含む。
【0055】
反応関与体に富んだ液相の増加は、ガス交換の制限を取り除き、要素床120の反応速度を増加させることができる。これらの改良の両方は、より低い操作温度、スループットの増加、及びガス循環の低下などの利益をもたらし得る。液相中の気相成分の改良された利用可能性はまた、要素床120上又は要素床120中のコークス形成のような有害な副反応の速度を低下する役割を果たし得る。このことは、容器100のシャットダウンの最も一般的な原因の1つを軽減し、要素床120がその所望の反応を行う能力を増大させることを助ける。
【0056】
開示される改良されたガス交換のさらなる利益は、操作条件(例えば、温度、圧力、及びフィード速度)の一定のセットについて、より高い変換速度を達成する能力であろう。一定の操作条件における望ましくない液体種の同様の入口濃度について、改良されたガス交換は、このような容器100の生成物相中で望ましくない種のより低い濃度を提供するであろう。
【0057】
交換層140の使用は、驚くべき予想外の結果を有し得る。このような結果は、プロセス容器の操作に正の影響を有し得る。低いコーク形成率を可能にする交換層140は、より一定又はほぼ一定の経時的な入口温度をもたらし得る。入口温度が上昇していないため、プロセス容器100は、シャットダウンを必要とする前に、より長期間操作することができ、又はより多くのフィードを処理することができる。さらに、より低温での操作はまた、改善された芳香族飽和率を可能にし、交換層140は、水素利用可能性及び操作温度
低下の両方に基づいて、芳香族飽和の改善を助けるのに有用であり得る。またさらに、交換層140は、望ましくない種を除去するために多数のステップを必要とし得る化合物の変換を可能にし得る。一例として、いくつかの硫黄種は「ヒンダード(hindered)」として知られ、芳香族環は炭化水素からのヒンダード硫黄の除去をブロックする。芳香族環は、最初に飽和反応を受けてナフタレンとなり、硫黄除去ステップが続く必要がある。芳香族飽和ステップは、硫黄分子のブロックを解除し、両方の反応は順番に進行する必要があり、そうでない場合、ナフタレンは再び芳香族に変換し、硫黄除去を再び妨害し得る。
【0058】
交換層140の使用の別の驚くべき予想外の結果は、交換層140のレベルにおける又はその下方の要素125上の炭素蓄積の量の低下であろう。水素消費が高い要素床120では、液相が「反応関与体に乏しい」液相となったら、コーキング形成が起こり、炭素を要素125上に堆積させる。炭素の蓄積は、プロセス容器操作に害を与え、要素125をプロセス容器100から取り外すことを困難にし得る。炭素蓄積は要素125を一緒に融合させ、取り外しを困難にする。これらの位置での交換層140の使用は、炭素堆積を低下させ得る。コーキングに代わって、所望の反応が起こり得る。この結果は、そのようなプロセス容器100の取り外し中に観察され得る。交換の上方の要素は炭素で満たされ、一緒に融合し、交換層140及びその下方の要素床120は炭素の量が低下し、要素125は自由流動性であろう。
【0059】
特定の例示的な態様では、図1及び図2に示すように、容器100は、容器100内の流体相のガス交換を促進し得る媒体を含む1つ以上の交換層140を含むことができる。容器100は、1つの容器又は一緒に機能する多数の容器であってもよい。交換層140は、流体反応関与体の窮乏を回避することができる。交換層140は、有利には、反応関与体に富んだ、生成物に乏しい液相の生成を促進することができる。特定の例示的な態様では、交換層140の性能は、媒体の位置及び深さ、媒体のサイズ及び構造、媒体の表面積、容器100内の媒体の位置、並びに/又は流体相の位置及び組成に依存し得る。交換層140は、要素床120に対して位置付けられ得る。交換層140は、要素床120に進入する流体相の拡散を促進するように、要素床120の上流に位置付けられ得る。交換層140はまた、下流要素床120での処理のために、流体相の拡散を促進するように要素床120の下流に位置付けられ得る。交換層140は、分配器トレー及び/又は注入ポートと共に設置され得、これらもまた容器内に存在する場合がある。交換層140は、要素床120中への進入に先立って、頂部床170材料の下方に設置されてもよく、又は容器100内の床の頂部に設置されてもよい。交換層140は、容器100の直径にまたがってもよいが、必ずしもそうする必要はない。交換層140は、容器100全体で取り囲まれてもよく、それにより交換層140は容器100の直径にまたがらないが、尚、それらが存在する領域内で機能性を提供する。
【0060】
特定の例示的な態様では、開示された交換層140中の媒体は、コレクター媒体20を含む1つ以上のゾーンと、リリーサー媒体30を含む1つ以上のゾーンとを含み得る。これらの媒体の液体及び気相との相互作用は、有利には、容器100内の液体及び気相成分の交換を促進することを助ける。図3Aに示すように、コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、交換層140内の相の並流のガス交換を可能にし得る。図3Bに示すように、コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、ガス交換を可能にし、交換層140内の並流のための処理床として機能し得る。特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は、液体ホールドアップ及び毛細管現象を利用して、容器100内で起こる1つ以上のプロセスを促進する。これは交換層140内で起こり、それにより液体ホールドアップは、コレクター媒体20の1つ以上の収集ゾーン22内の体積の所与の領域で増加する。収集ゾーン22は、流れる液相が収集又は保持され得る、コレクター媒体40内の局所領域(以後、「液体収集」)を提供する。液体収集がゾーン22内で最大となったら、液体体
積の追加により液体がその領域から流出し得る。コレクター媒体20は、収集ゾーン22内の液体収集領域のサイズを最小又は最大にするように成形され、液体収集部22から液体の流出を可能にし得る。満ちた液体収集22はまた、気相がコレクター媒体20を迂回するように流れ、下流リリーサー媒体30と相互作用することを可能にする。
【0061】
本明細書に開示される主題は、以前に使用されていた技術と比較して驚くべき予想外の結果を提供する。記載された液体ホールドアップは、液体と気相の分離を促進する固有の力に起因して、プロセス容器操作に有害であり得る。
【0062】
特定の例示的な態様では、交換層140は、図4及び図5Aの例示的な態様に示すように、コレクター媒体20と、コレクター媒体20に隣接し且つこれを包囲する高表面積リリーサー媒体30とを提供することにより高表面積の領域を形成することによって、この問題を回避する。この領域は、コレクター媒体20からの液体の流出を可能にする。毛細管現象が液体をコレクター媒体20内に引き寄せ及び保持することができる。液体ホールドアップ及び毛細管力により促進されるコレクター媒体20は、高表面積の領域を横切る均一な液体の流れを供給する。
【0063】
示される特定の態様では、高表面積固体であるリリーサー媒体30への液体の体積流量は、図6に示すように、リリーサー媒体30の外表面上の薄膜35の形成を可能にし、これは薄膜35内の液体と薄膜35を通過するガスとの混合を増強する。この増強された混合及びこの表面積は、気相成分の液相中への交換を可能にし、反応関与体に富んだ液相を形成することができる。この増強された混合及びこの表面積は、望ましくない気相成分の液相からの溶解を可能にし、生成物に乏しい液相を形成する。特定の例示的な態様では、コレクター媒体20を包囲するこの高表面積の生成と、薄膜35形成を伴う液体の流出を可能にすることは、リリーサー媒体30の機能である。
【0064】
特定の例示的な態様では、コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、多孔質媒体を含む、高い幾何学的表面積の媒体であり得る。多孔質媒体は、媒体に進入し、及び/又は媒体を通過する細孔を有する固体として定義される。多孔質媒体は、網状体、ハニカムモノリス(honeycomb monolith)、マクロ多孔質材料、亀裂(fissured)材料、粒子パッキングの凝集体(agglomerates of particle packing)、及び繊維メッシュを含むことができる。これらの多孔質媒体は、球体、円柱、環、ブリケット(briquette)、楕円体、角柱、立方体、平行6面体、超直方体、鞍(saddle)、荷馬車の車輪、大メダル(medallion)、ローブ押出物(lobed extrudate)などとして成形され得る。多孔質媒体は、ポリープ、小繊維、繊維、毛、隆起、丸い突出部、細長い窪み、フィンなどの凹凸を含む表面フィーチャを有してもよい。多孔質媒体は、金属、セラミック、ポリマー又はこれらの組み合わせであってもよい。多孔質媒体は、酸化物、窒化物、炭化物などであってもよい。
【0065】
特定の例示的な態様では、活性部位40は、リリーサー媒体30に追加され得る。特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、要素125であってもよい。特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30は不活性であってもよい。特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は、活性部位40をコレクター媒体20に追加することにより要素125に変換されてもよい。特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は不活性であってもよい。
【0066】
特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は、液相を含み又は保持することができる。コレクター媒体20は、12~200ミリメートルの範囲の個々のサイズを有してもよい。コレクター媒体20は、1ミクロン~20ミリメートルの範囲の直径を有する細孔
経路を有してもよい。細孔経路から構成されるコレクター媒体20の内部空隙は、コレクター媒体20の体積の20%~95%を占めることができる。コレクター媒体20は、コレクター媒体20の1立方フィート当たり100~6,000平方フィートの範囲の内部空隙を有することができる。交換層140内で、コレクター媒体20は、30%~70%の詰め効率を達成するように詰め込まれ得る。細孔径を制御することにより、コレクター媒体20はそれらの内部空隙内で100%までの液体収集を達成することができる。液体収集は、詰め効率と内部空隙を掛けることにより決定され得る。記載される詰め効率及び内部空隙の場合、コレクター媒体20の液体収集は、交換層140の体積の6%~66.5%の範囲であり得る。この範囲は、液体収集を遥かにより高い程度まで制御する能力を提供する。液体収集の好ましい量は、前述した要素125の液体ホールドアップを超える、交換層140の体積の20%~66.5%の範囲であろう。これは、記載した詰め効率及び内部空隙のいずれかの組み合わせによって達成され得る。
【0067】
特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は、容器100内の液相をリリーサー媒体30に分散させることができる。例えば、コレクター媒体20が液体で完全に満たされたとき、気相相はコレクター媒体20を迂回し得る。他の例示的な態様では、コレクター媒体20は液体で部分的に満たされ、気相は、液相と並流して、コレクター媒体20を通して移動し得る。
【0068】
特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、コレクター媒体20から放出された液体を受容し得る。リリーサー媒体30は、細孔経路により消費される体積によって画定される隙間空隙を有することができ、これは気相流体に対して透過性である。リリーサー媒体30上の液体としての薄膜35の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が薄膜35上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得る。リリーサー媒体30は、コレクター媒体20によって形成される空間に適合するように、リリーサー媒体30が包囲するコレクター媒体20のサイズ以下であってもよい。特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30のサイズは、1/32”~1/2”であろう。リリーサー媒体30は、コレクター媒体20と同じ形状又は異なる形状であり得る。特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、コレクター媒体20から隣接リリーサー媒体30への液体放出のために、可能な限り多くの接触点を有し得る。これは、接触点及び表面積を増加させるように十分小さいが、液体及び気相の両方がリリーサー媒体30を包囲する空間を通して、及びリリーサー媒体30の薄膜35表面を横切って並流的に流れることができるように十分大きくリリーサー媒体30のサイズを選択することによって行うことができる。さらに、リリーサー媒体30の形状は、表面積及び空隙形状に影響を与えるであろう。
【0069】
特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、800ミクロン~12.7ミリメートルの範囲のサイズを有することができる。リリーサー媒体30は、リリーサー媒体30の1立方フィート当たり60~1000平方フィートの範囲の幾何学的表面積を有することができる。リリーサー媒体30はまた、コレクター媒体20を包囲するように、より大きいコレクター媒体20の間の空間内に詰め込まれ得る。リリーサー媒体30は、コレクター媒体20を包囲する空間内で>50%の詰め効率を達成することができる。リリーサー媒体30とコレクター媒体20との接触範囲は、隣接コレクター媒体20からの液体を受容する放出点として機能し得る。リリーサー媒体30接触放出点の最大数を達成する詰め込みを、コレクター媒体20の外表面上に達成することが望ましい。好ましい一態様では、リリーサー媒体30は、コレクター媒体20のサイズの1/14~1/4のサイズを有し得る。特定の他の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、コレクター媒体20のサイズの1/14のサイズを有し得る。さらに別の例示的な態様では、リリーサー媒体30は、コレクター媒体20のサイズの1/4を超えるサイズを有し得る。また、特定の例示的な態様では、各コレクター媒体20とリリーサー媒体30の間に少なくとも20個の接触点が所望される。例えば、図14Aは、それらの間に少なくとも20個の接触点を提
供する方法での、コレクター媒体20を包囲するリリーサー媒体30の三次元図であり、図14Bは三次元断面図である。低体積の流出の性質と、コレクター媒体20を退出する液相相に利用可能な記載された高表面積に起因して、液体は薄膜35としてリリーサー媒体30に沿って移動することができる。リリーサー媒体30は、気相に曝露されて、これらの薄膜35によってガス成分の液体中への拡散を促す。リリーサー媒体30との接触中、薄膜35液相中へのガス交換の量は、薄膜35の高表面積による高い拡散率によって増加され得る。
【0070】
コレクター媒体20とリリーサー媒体30は、液体-ガス界面表面積を改善するために一緒に働く。コレクター媒体20内の特定の細孔径では、液体ホールドアップ及び毛細管力が発生し、媒体内での液体収集を提供することができる。最大液体収集において、過剰の液体がコレクター媒体20からリリーサー媒体30へ放出され、リリーサー媒体30を通してガス交換が提供される。
【0071】
交換層140を有さない従来の要素床120は、高表面積構造を提供し得るが、持続的な薄膜35状態を生成する安定性に欠けることがある。従って、トリクルベッドフロー体制では、液体-ガス表面界面範囲が小さくなり、液体と気相との間の高い相互作用が無効となる。開示されたコレクター媒体20は、高体積の液体収集のための空隙と、液体の流れを遅くする毛細管力のための小さい細孔径とを提供し、液体蓄積を可能にすることができ、リリーサー媒体30への液体の組織化された放出を提供するのに十分透過性であり得る。
【0072】
特定の例示的な態様では、コレクター媒体20の細孔径は、リリーサー媒体30をコレクター媒体20の内部構造の外に保持するために、個々のリリーサー媒体30のサイズよりも小さい。好ましい例示的な態様では、コレクター媒体の細孔径は、コレクター媒体20中への液体収集を促し、リリーサー媒体30上への液体流出を可能にするように、リリーサー媒体30の空隙径よりも小さい。
【0073】
特定の例示的な態様では、コレクター媒体20は、それらの本体内に細孔体積を有する。細孔体積は、液相に対して透過性である細孔径のものであるが、周囲のリリーサー媒体30の空隙径よりも小さい。その結果、コレクター媒体20は、周囲のリリーサー媒体30よりも高い液体収集能力を有し得る。コレクター媒体20が、コレクター媒体20の内部空隙により決定されるそれらの最大液体収集に到達した際、満たされたコレクター媒体20は液体を重力方向に放出するであろう。収集された液体は、上流媒体(即ち、コレクター媒体20)の下流表面と可能な限り多くの界面点で接触しているいずれかの下流媒体(即ち、リリーサー媒体30)に優先的に放出され得る。このことは、液体が、詰め込まれた隣接リリーサー媒体30の床に放出される機会を作り得る。
【0074】
特定の例示的な態様では、これは高表面積を有する薄膜35を放出して、リリーサー媒体30の表面上に発達させる。フィックの法則により提供されるように、薄膜35のより大きい表面積は、液体と気相との間の改善された移動速度を可能にするであろう。その結果、拡散液相中で継続的に枯渇する所望のフィードストリームガス成分は、拡散液相中への改善された移動速度を有し得る一方、拡散液相中に蓄積する反応生成物ガス成分は、拡散液相の外への改善された移動速度を有し得る。
【0075】
特定の例示的な態様では、拡散を最大にするために、相間の十分な交換を作るために容器100内の交換層140と要素床120との界面における液体と気相との間の大きい界面表面積を有することが望ましい。交換層140に含まれるコレクター媒体20及びリリーサー媒体30の複合作用は、液体とガスとの間の大きい界面表面積を提供する役割を果たす。その高表面積は、交換層140内での拡散液相とのガス交換の即時の改善を提供す
るが、交換層140の下流の局所範囲内にも透過し、要素床120と接触した拡散液相とのガス交換能が継続する。交換層140の使用は、界面表面積が劣化しており、又は溶解ガス消費が液相中への気相の拡散速度に勝る場合に、いずれかの深さのさらに下流で繰り返され、高表面積界面及び交換能を再生することができる。これは、必要性及び条件に応じて、交換層140の様々な層深さ、又は交換層140間の要素床120の様々な深さをもたらし得る。
【0076】
特定の例示的な態様では、1つ以上の交換層140は、コレクター媒体20及びリリーサー媒体30の両方から構成され得る。コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、図13に示すように、交互層、層状構造として、又はそれらの組み合わせであり得る。特定の例示的な態様では、コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、プロセス容器100の断面を満たし、3”~12”の深さを有する。
【0077】
特定の例示的な態様では、薄膜35の発達は、コレクター媒体20自体内であり得る。これは、ガス交換がコレクター媒体20及びいずれかの周囲のリリーサー媒体30の両方で起こることを可能にし、所望のフィードスチームガスが液体中に拡散する必要がある、及び望ましくない生成物ガスが反応ゾーン外に拡散する必要がある時間量を増加させる。そのようなコレクター媒体20の細孔径は、100ミクロン~30ミリメートルであろう。この態様では、コレクター媒体20の細孔径は、周囲のリリーサー媒体30の細孔径よりも大きい可能性がある。
【0078】
特定の例示的な態様では、図12に示すように、交換層140は、容器100の頂部床170及びフィード進入点に対して位置付けられ得る。容器100はまた、工学的に作り出されたミキサー装置190、例えばミキサー又は分配トレーを含んでもよく、これらは設計通りに働くことができ、又は誤作動の場合に低い働きをすることができる。交換層140は、このような工学的に作り出されたミキサー装置190の直ぐ下流に位置付けられてもよく、最上流要素床120の直ぐ上流に位置付けられてもよい。交換層140はまた、容器100上の中間フィード点180に対して位置付けられてもよく、中間フィード点180はクエンチポート又は分配トレーであり得、典型的には気相のフィードを補足するために使用される。交換層140の位置付けは、それらの装置又は床層の間に空隙が提供されるように行われ得る。
【0079】
先行技術による容器では、図11の先行技術による容器に示すように、ガス交換能は、従来のトリクルベッドフロー体制では劣化し得、初期フローも劣化し得る。特定の例示的な態様では、この劣化は、図11の右側の容器100に示すように、収集及び放出のプロセスが容器100内の単一交換層140内で繰り返されることにより、又は床若しくは容器100全体で複数の交換層140を周期的に繰り返し若しくは戦略的に配置することにより、又は床若しくは容器100全体を交換層140で構成することにより軽減することができ、それによってガス交換能が改善される。
【0080】
特定の例示的な態様では、交換層140は、容器100内の要素125の位置に対して位置付けられ得る。要素125は、交換層140の下流に位置付けられ得る。要素125の深さは、交換層140の特徴及び特性、流体相の性質、トリクルベッド流の生成における薄膜35の性能、並びに要素床120内のコーキングの非存在に応じて6インチ~90フィートであり得る。
【0081】
特定の例示的な態様では、開示された交換層140は、ガス成分の混合及び拡散を促進することによって、要素125が容器100操作の性能の増大を促進することを可能にする。ガス成分の交換速度の改善は、コーキングの減少、及び反応に利用可能なガス成分の増加を意味する。さらに、リリーサー媒体30により分配される反応関与体に富んだ液相
に起因して、拡散ガスと活性部位40に含まれる望ましくない種との間の予想される反応速度が増加し、かくして容器100内で要素床120がより有効に使用される。
【0082】
交換層140はまた、容器が低いガスストリーム利用可能性若しくは低いガスストリーム操作圧力により制約され、又は水素経済学が保存された操作を高く好む用途に有利に使用され得る。より低い操作圧力は、より低いガス成分の交換をもたらす。フィックの法則が示すように、低い濃度は液相中へのガス拡散速度を低下させるであろう。交換層140は、液相中への拡散率を改善することができ、水素循環要求を保存するのを助け得る。拡散液相への気相成分のより高い利用可能性は、より低い容器100操作温度又は容器100の温度の上昇の遅延を可能にし、活性部位40及び容器100が処理できるフィードの量を増加させ、要素125が油上にあり得る時間量を延長する。さらに、プロセス容器100は、より高いフィード柔軟性を有することができ、より様々な望ましくない種の取扱いを可能にし得る。そのようなシステムの利点は、要素床120上で生じるガス成分消費に応じて交換層140の位置を配置する能力である。例えば、総深さ60フィート内で2000SCF/BBL(33SCF/BBL/FT)を消費する水素化分解ユニットでは、総深さ30フィート内で100SCF/BBL(3.3SCF/BBL/FT)を消費するナフサ水素化処理装置と比較して、より高頻度又は深い深さの交換層140を必要とする場合がある。水素化分解装置の例では、交換層140は、ガスクエンチと共に使用されて、液体ストリームの冷却及びガスと液体の混合を同時に行うことを可能にし得る。
【0083】
特定の例示的な態様では、図9及び図10に示すように、コレクター媒体20は、容器100の断面を満たす単一のコレクター区画(pane)であり得る。さらに、このコレクター区画は、コレクター区画の上流側のガス圧力の蓄積を回避するために、その断面において複数の穿孔25が形成され得る。穿孔25は、特定の例示的な態様では、リリーサー媒体30で満たされ得る。特定の例示的な態様では、コレクター区画は、容器100の装填及び取り外し中の設置及び分解を可能にするために、複数の連結部分又は滑りばめ(snug-fitting)部分で構成され得る。コレクター区画は、特定の例示的な態様では、深さが3”~12”であり得る。コレクター区画の穿孔25は、特定の例示的な態様では直径1/8”~3フィートであり得る。穿孔25の密度は、容器100の断面を横切って単一孔25から1平方インチ当たり1つの孔までであり得る。特定の例示的な態様では、コレクター区画は、互いの上部に積み重ねられ、又は本明細書で前述したように、層状コレクター媒体20/リリーサー媒体30配向で使用され得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、A、B及びC「の少なくとも1つ」という表現は、Aのみ、又はBのみ、又はCのみ、又はA、B及びCのいずれかの組み合わせを意味するものとする。
【0085】
開示された主題は、多数の態様と共に詳細に説明されてきたが、そのような開示された態様に限定されるものではない。逆に、開示された主題は、本明細書で前述されていないが、開示された主題の範囲と同等の、いずれかの数の変形物、変更物、置換物又は等価な配置を組み込むように修正され得る。
【0086】
さらに、開示された主題の様々な態様が記載されてきたが、開示された主題の局面は、記載された態様の一部のみを含む場合があることを理解するべきである。従って、開示された主題は、前述の記載により限定されると解釈されるべきでなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B