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特許7460782癌及び/又は脳疾患バイオマーカーであるEDB-FN及びこれを標的とするナノ薬物伝達体
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  • 特許-癌及び/又は脳疾患バイオマーカーであるEDB-FN及びこれを標的とするナノ薬物伝達体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】癌及び/又は脳疾患バイオマーカーであるEDB-FN及びこれを標的とするナノ薬物伝達体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/44 20170101AFI20240326BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240326BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
A61K47/44
A61K9/107
A61P35/00
A61P25/00
A61K45/00
A61K31/337
C07K14/00 ZNA
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547050
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2021002008
(87)【国際公開番号】W WO2021167339
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020537
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0018153
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】チョン キュハ
(72)【発明者】
【氏名】フェイ エル サウ
(72)【発明者】
【氏名】イ チョンソル
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0148428(US,A1)
【文献】BAOJ Pharm Sci,2015年,1(1),001
【文献】J. Mater. Chem. B,2013年,1,pp.4723-4726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)システイン残基を含むAPTEDB及びMal-PEG2000-DSPEを有機溶媒に1:2モル比で混合して重合反応を誘導する工程、
(2)前記(1)工程の混合溶液からAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを得る工程、
(3)前記APT EDB ‐PEG 2000 -DSPEポリマーとPEG 2000 -DSPE重合脂質を超純水(ultrapure water)で再水化した後、溶媒をPBSに変更してミセル構造体形成を誘導する工程、及び
(4)前記(3)工程の混合溶液を濾過し、ミセル構造体を精製する工程、
を含む脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法であって、
前記(1)工程のAPTEDBは、フィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)遺伝子(Entrez Gene ID:2335)に特異的な結合力を示すアプチドであり、
前記(3)工程で、PEG 2000 -DSPE重合脂質100重量部基準でAPT EDB -PEG 2000 -DSPEポリマーを1~2.5重量部を混合することを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記(1)工程の有機溶媒は、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン及びヘキサンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法。
【請求項3】
前記(1)工程は、常温で12時間、不活性条件保持下で実行されることを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法。
【請求項4】
前記(2)工程は、液体クロマトグラフィーを使用して混合溶液からAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを得ることを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法。
【請求項5】
前記(3)工程は、APTEDB-PEG2000-DSPEポリマーとPEG2000-DSPE重合脂質とを溶媒に再水化し、音波破砕を行って水和させてミセル構造体形成を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法。
【請求項6】
前記(4)工程は、0.025~0.1μmの膜で混合溶液を濾過し、サイズ排除クロマトグラフィーを介してミセル構造体を精製することを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法。
【請求項7】
請求項1の(1)~(4)工程を含み、
前記(3)工程は、APTEDB-PEG2000-DSPEポリマー及びPEG2000-DSPE重合脂質が溶解した溶液に抗癌剤をさらに混合することによりミセル構造体形成を誘導するものである、脳腫瘍治療用の薬剤の製造方法。
【請求項8】
前記抗癌剤を最終濃度が50g/mLになるように混合することを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍治療用の薬剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳腫瘍で過剰発現するフィブロネクチンエキストラドメインB(extradomain B of fibronectin、EDB-FN)を標的とするナノ薬物伝達体などに関する。
【背景技術】
【0002】
悪性神経膠腫(malignant glioma、MG)は、積極的な治療によっても良くなりにくい恐ろしい腫瘍のうちの1つである。多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme、GBM)は、最も悪性でありふれた神経膠腫であり、外科的及び内科的治療においても生存期間の平均値が2年以下である。悪性神経膠腫は、急速に増殖し、侵襲性が高いだけでなく、血液脳関門(blood-brain barrier)との細胞異質性(cellular heterogeneity)及び脳血管腫瘍障壁(blood-brain tumor barrier、BBTB)により、治療が困難である。上記の限界を克服するために、脳腫瘍分類に対する分子的、遺伝的な研究がより重要とされる実状である。これは、病理学的分類に分子生物学を融合し、診断的、治療的戦略を改善することに影響を与えた。
【0003】
現在利用されている代表的な表現型・遺伝子型の診断マーカーは、以下の通りである。O6-methylguanine-deoxyribonucleic acid(DNA)methyltransferase promoter(MGMT)methylation、isocitrate dehydrogenase-1(IDH-1)mutation、及びchromosomal 1p/19q deletion。上記のマーカーを評価することは、患者一人一人に合った治療を提案し、予後を予測するのに大きな影響を与える。また、alpha-thalassemia/mental retardation syndrome X-linked、及びtelomerase reverse transcriptase promoter mutationsなどの他の多くのバイオマーカーはまだ検証中であり、上記のマーカーの有効性は、盛んに立証されている。しかし、これまでのところ、ほとんどのバイオマーカーは、悪性神経膠腫で評価及び立証され、治療剤として発展することができない実状である。従って、効果的な診断及び治療を提供することのできるバイオマーカーの発掘が依然として必要とされている。
【0004】
フィブロネクチン(fibronectin)は、細胞外基質(extracellular matrix)及び原形質膜(plasma membrane)で主に発見される糖タンパク質(glycoprotein)である。これは、インテグリン、コラーゲン、及びフィブリンなどの様々な細胞外基質タンパク質に結合しながら細胞移動及び接着を調節する。フィブロネクチン単量体は、反復するユニットに応じて3つのタイプの類型(タイプI、II、及びIII)に分類される。フィブロネクチン遺伝子の3つの領域で製造された選択的スプライシングドメインは、一定のスプライシングパターンを有する。生成された同型タンパク質(isoform)は、タイプIIIの反復ユニットに位置するスプライシング部位に従って命名される。フィブロネクチンのエキストラドメインA(extra-domain A、EDA-FN)、エキストラドメインB(extra-domain B、EDB-FN)、及びタイプIIIの接続の部分(type III connecting segment、IIICS-FN)。EDB-FNは、腫瘍胎児性抗原(oncofetal antigen)である。EDB-FNは、非小細胞肺癌(non small cell lung carcinoma)、ホジキンリンパ種(Hodgkin lymphoma)、及び前立腺癌(prostate cancer)などの様々なヒト癌で過剰発現する。また、EDB-FNは、頭頸部癌(head and neck cancer)の新血管新生マーカーとして活用される。脳におけるフィブロネクチンの役割にもかかわらず、EDB-FNは、患者の主要な多形性膠芽腫を診断するための追跡ツールとして活用できることはもちろん、げっ歯類モデルにおける多形性膠芽腫治療及び神経膠腫放射免疫治療(radioimmunotherapy)の新規標的として提案された。EDB-FNに対する研究が盛んに行われているにもかかわらず、EDB-FNの役割はまだ明らかにされていない。
【0005】
従来、全ての主要臓器の癌におけるEDB-FN発現レベルを比較する研究は行われておらず、生物情報学データセットを用いたEDB-FN発現による予後予測を含む研究はまだ行われていない。
【0006】
従来、EDB-FNを標的とする特異的なサイズが34nmサイズの無機物超常磁性酸化鉄ナノ粒子(superparamagnetic iron oxide nanoparticles、SPIONs)ナノ薬物伝達体、又は115±13nmサイズのリポソーム構造の薬物伝達体に関する研究が行われたが、12nm以上のサイズのナノ薬物伝達体の場合、血液脳関門及び脳血管腫瘍障壁の限界に至り、前臨床から薬物伝達に限界を示した結果が報告された。従って、本発明者らは、悪性神経膠腫に対する潜在的な診断バイオマーカーとしてEDB-FNを研究し、これを標的とする12nm以下のサイズを有するマイセル構造のナノ薬物伝達体を開発することによって本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が達成しようとする技術的課題は、PEG2000-DSPE重合脂質及びAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを含むマイセル構造の薬物伝達体を提供することにあり、前記APTEDBは、フィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)遺伝子(FN1、Entrez Gene ID:2335)に特異的な結合力を示すアプチドである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、薬物がロードされた前記薬物伝達体を有効成分として含む脳腫瘍診断又は治療用の医薬組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、以下の工程を含む脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法を提供することにある。
(1)システイン残基を含むAPTEDB及びMal-PEG2000-DSPEを有機溶媒に1:2モル比で混合して重合反応を誘導する工程、
(2)前記(1)工程の混合溶液からAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを得る工程、
(3)水、PBS、HBS、及びHBGからなる群から1種以上選択される溶媒に、前記APTEDB-PEG2000-DSPEポリマーとPEG2000-DSPE重合脂質とを混合してマイセル構造体形成を誘導する工程、及び
(4)前記(3)工程の混合溶液を濾過し、マイセル構造体を精製する工程。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記(1)~(4)工程を含み、前記(3)工程は、APTEDB-PEG2000-DSPEポリマー及びPEG2000-DSPE重合脂質が溶解した溶液に抗癌剤をさらに混合することによりマイセル構造体形成を誘導するものである、脳腫瘍治療用の薬剤の製造方法を提供することにある。
【0011】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及されていない他の課題は、下記記載によって当技術分野の当業者に明確に理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、PEG2000-DSPE重合脂質及びAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを含むマイセル構造の薬物伝達体を提供する。
【0013】
本発明の一実施例として、前記APTEDBは、フィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)遺伝子(FN1、Entrez Gene ID:2335)に特異的な結合力を示すアプチドである。
【0014】
本発明の他の実現例として、前記薬物伝達体は、PEG2000-DSPE重合脂質100重量部基準でAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを1から2.5重量部含むことができる。
【0015】
本発明のまた他の実現例として、前記薬物伝達体の直径は、5.0から12.0nmであり、ゼータ電位(zeta potential)は、-8.0から-11.0であり得る。
【0016】
本発明のまた他の実現例として、前記薬物伝達体は、血液脳関門(BBB)又は脳血管腫瘍障壁(BBTB)を通過して脳腫瘍細胞に特異的に薬物を送達してもよい。
【0017】
また、本発明は、薬物がロードされた前記薬物伝達体を有効成分として含む、脳腫瘍診断又は治療用の医薬組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、薬物がロードされた前記薬物伝達体を個体に投与することを含む、脳腫瘍予防又は治療方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、脳腫瘍予防又は治療用の薬剤の製造のための前記薬物がロードされた薬物伝達体の用途を提供する。
【0020】
また、本発明は、薬物がロードされた前記薬物伝達体を個体に投与することを含む、脳腫瘍の診断方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、脳腫瘍の診断用薬剤の製造のための前記薬物がロードされた薬物伝達体の用途を提供する。
【0022】
本発明の一実施例として、前記薬物は、造影剤又は抗癌剤であり、前記抗癌剤は、ドセタキセル(Docetaxel)、ハラベン(Halaven)、ビンクリスチン(Vincristine)、シスプラチン(cisplatin)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビノレルビン(Vinorelvine)、パクリタキセル(Paclitaxel)、エトポシド(Etoposide)、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、ダクチノマイシン(Dactinomycin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、マイトマイシン(Mitomycin)、グリベック(gleevec)、カルボプラチン(carboplatin)、バルルビシン(valrubicin)、フルタミド(flutamide)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ブレオマイシン(Bleomycin)、テモゾロミド(Temozolomide)、プロカルバジン(Procarbazine)、ロムスチン(Lomustine、CCNU;1-(2-chloroethyl)-3-cyclohexyl-1-nitrosourea)、ビンクリスチン及びカルムスチン(Carmustine、BCNU)などからなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0023】
本発明の他の実現例として、前記脳腫瘍は、星状細胞腫(astrocytoma)、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、乏突起細胞腫(oligodendroglioma)、乏突起星細胞腫(oligoastrocytoma)、上衣細胞腫(ependymoma)、血管芽細胞腫(medulloblastoma)、血管芽細胞腫(hemangioblastoma)、髄膜腫(meningioma)、下垂体腺腫(pituitary adenoma)、頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)、及び脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma)からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0024】
また、本発明は、以下の工程を含む脳腫瘍特異的薬物伝達体の製造方法を提供する。
(1)システイン残基を含むAPTEDB及びMal-PEG2000-DSPEを有機溶媒に1:2モル比で混合して重合反応を誘導する工程、
(2)前記(1)工程の混合溶液からAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを得る工程、
(3)水、PBS、HBS、及びHBGからなる群から1種以上選択される溶媒に、前記APTEDB-PEG2000-DSPEポリマーとPEG2000-DSPE重合脂質とを混合してマイセル構造体形成を誘導する工程、及び
(4)前記(3)工程の混合溶液を濾過し、マイセル構造体を精製する工程。
【0025】
本発明の一実施例として、前記(1)工程の有機溶媒は、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、及びヘキサンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0026】
本発明の他の実現例として、前記(1)工程は、常温で12時間、不活性条件保持下で実行されてもよい。
【0027】
本発明のまた他の実現例として、前記(2)工程は、液体クロマトグラフィーを使用して混合溶液からAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを得ることもできる。
【0028】
本発明のまた他の実現例として、前記(3)工程は、APTEDB-PEG2000-DSPEポリマーとPEG2000-DSPE重合脂質とを溶媒に混合し、音波破砕を行って水和させてマイセル構造体形成を誘導することもできる。
【0029】
本発明のまた他の実現例として、前記(4)工程は、0.0025~0.1μmの膜(membrane)で混合溶液を濾過し、サイズ排除クロマトグラフィーを介してマイセル構造体を精製することもできる。前記膜は、好ましくは0.1μmの膜であり得る。
【0030】
また、本発明は、前記製造方法で製造された脳腫瘍特異的薬物伝達体として、5.0から12.0nmの直径を有し、-8.0から-11.0のゼータ電位であるマイセル構造体であることを特徴とする、薬物伝達体を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記製造方法の(1)~(4)工程を含み、前記(3)工程は、APTEDB-PEG2000-DSPEポリマー及びPEG2000-DSPE重合脂質が溶解した溶液に抗癌剤をさらに混合することによりマイセル構造体形成を誘導するものである、脳腫瘍治療用の薬剤の製造方法を提供する。
【0032】
本発明の一実施例として、前記抗癌剤を最終濃度が50g/mLになるように混合することもできる。
【0033】
本発明の他の実現例として、前記薬剤は、血液脳関門(BBB)又は脳血管腫瘍障壁(BBTB)を通過して脳腫瘍内部に蓄積され、腫瘍細胞内部に陥入されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、PEG2000-DSPE重合脂質及びAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを含むマイセル構造の薬物伝達体及びその製造方法に関する。前記薬物伝達体は、脳腫瘍で過剰発現するフィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)を標的とし、血液脳関門(BBB)又は脳血管腫瘍障壁(BBTB)を通過して脳腫瘍細胞に特異的に薬物を送達することができる。また、本発明は、薬物がロードされた前記薬物伝達体を有効成分として含む脳腫瘍診断又は治療用の医薬組成物を提供することができ、前記組成物は、脳腫瘍内部に蓄積され、腫瘍細胞内部に陥入されて特異的に腫瘍成長を抑制することができ、脳腫瘍診断又は治療に有用に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】EDB-FNの発現を立証するために、悪性神経膠腫細胞におけるEDB-FNの過剰発現を示したものである。(A)は、様々な癌細胞株の2D培養におけるEDB-FN発現パターンを示している(スケールバー=100μm)。緑は、EDB-FNを示し、青は、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を示す。(B)は、様々な癌の2D培養された細胞から総RNAを抽出した後、定量的なリアルタイムPCR(qRT-PCR)を使用してEDB-FN mRNA発現分析を行った結果を示したものである。2-ΔΔCtが使用され、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)を内部対照群として設定した。3D培養で免疫蛍光染色によってEDB-FN発現パターンを確認した(スケールバー=200μm)。(C)は、皮下移植された癌組織を示している(スケールバー=100μm)。(D)は、悪性神経膠腫細胞株を示したものである。(E)は、U373MG細胞(2D単層培養)又はU87MG細胞(2D単層培養、3D回転楕円体培養、及び皮下腫瘍組織)から抽出した総RNAを使用してqRT-PCR分析を行った結果である。統計学的分析:ウェルチのt検定(Welch’s t test)。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns:統計学的に有意ではない。上記の結果は、四重極型分析(quadruplet determinations)の平均±標準偏差で示した。EDB-FN:フィブロネクチンエキストラドメインB;MG:悪性神経膠腫。
【0036】
図2】合成APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの特性分析を示したものである。(A)は、Mal-PEG2000-DSPEとcysteinylated APTEDBを用いた合成方法及びドセタキセルでカプセル化したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS(APTEDB-DSPE-DTX)の代表的な製剤を示したものである。(B)は、PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS(APTEDB-unconjugated)とAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSs(APTEDB-conjugated)の動的光散乱(DLS)サイズ測定を示したものであり、両ナノ粒子は、12nmより小さかった(グループごとに3つの複製(3 replicates per group))。(C)は、全てのナノ粒子製剤が負のゼータ電位(zeta potential)を有することを示したものである。APTEDB-DSPE濃度が増加するにつれて、ナノ-DDSのゼータ電位は、さらに負の方向になる。統計学的分析:ウェルチのt検定。*p<0.05、ns:統計学的に有意ではない。上記の結果は、四重極型分析(quadruplet determinations)の平均±標準偏差で示した。DMSO:ジメチルスルホキシド;PEG2000-DSPE:ポリエチレングリコール(2000)-1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(アンモニウム塩(ammonium salt));Rh-DSPE:DSPE-N-(リサミンローダミンBスルホニル)(アンモニウム塩)。
【0037】
図3】EDB-FN発現によるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビトロ(In vitro)細胞の取り込みを示したものである。PEG2000-DSPE及びAPTEDB-DSPEの取り込み実験及び競合分析は、(A)EDB-FN高発現細胞(U87MG及びU251)、及び(B)低発現細胞(MCF7及びB16F1)で行った。リン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline)を対照群と比較した。PEG2000-DSPE、及びAPTEDB-DSPEは、APTEDB処理又は処理なしで細胞株に添加し、ローダミンB(rhodamine B)-標識されたマイセルDDSの取り込み(赤)を共焦点顕微鏡で確認した(スケールバー=100μm)。APTEDB:EDB-FN-特異的アプタマー類似ペプチド;APTEDB-DSPE:APTEDB-conjugated PEG2000-DSPE;PEG2000-DSPE:ポリエチレングリコール(2000)-1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン。
【0038】
図4】APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビトロEDB-FN-及び時間依存的細胞の取り込みを示したものである。(A)は、qRT-PCRを介してsiRNA-媒介EDB-FNのノックダウンを確認したものである。内部対照群としてGAPDH発現を使用した。統計学的分析:ウェルチのt検定。**p<0.01.上記の結果は、三重性決定(triplicate determinations)の平均±標準偏差で示した。(B)は、EDB-FN発現によるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの細胞の取り込みを示したものである。染色画像上にsiRNA形質導入されたU87細胞におけるEDB-FN(緑)、ローダミンB-標識されたAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS(赤)、及び細胞核(nuclei)(青)を示す。スケールバー=100μm。(C)は、U87MG細胞におけるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの時間依存的細胞の取り込みを示したものである。赤:ローダミンB-標識されたAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS、青:DAPI、スケールバー=100μm。NP:ナノ粒子。
【0039】
図5】APTEDB-DSPE及びAPTEDB-DSPE-DTXマイセルナノ-DDSのインビトロ細胞の取り込み及び細胞毒性を示したものである。(A)は、悪性神経膠腫におけるAPTEDB-DSPEの濃度によるローダミンBフルオロフォア-標識されたナノ-DDSsの細胞の取り込みを示している(左)。赤:ナノ-DDSs、青:DAPI、スケールバー=100μm。ImageJによるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS細胞の取り込みの数量化分析(Quantification analysis)を示している(右)。蛍光強度は、各細胞株のDAPI信号で正規化した(四重極型分析(quadruplet determinations))。(B)は、U251MG及びU87MG細胞でDSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXのインビトロ細胞毒性を示したものである。ナノ-DDS下のO.D.値をPBS処理下のO.D.値で割ることによって(DSPE-DTXの場合、7つの複製(replicates)、APTEDB-DSPE-DTXの場合、6つの複製)、Y軸の%細胞生存率を算出した。(C)は、治療するのに用いたナノ粒子の種類によって算出した(DSPE-DTXの場合、7つの複製、APTEDB-DSPE-DTXの場合、6つの複製)、U87MG及びU251MG細胞におけるIC50値を示したものである。統計学的分析:ウェルチのt検定。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns:統計学的に有意ではない。上記の結果は、平均±標準偏差で示した。A.U:任意単位(arbitrary unit)。APTEDB-DSPE:APTEDB-conjugated PEG2000-DSPE;APTEDB-DSPE-DTX:DTX-loaded APTEDB-DSPE micellar nano-DDS;DSPE-DTX:DTX-loaded PEG2000-DSPE micellar nano-DDS;DTX:docetaxel;PEG2000-DSPE:ポリエチレングリコール(2000)-DSPE(アンモニウム塩)。
【0040】
図6】U87MG皮下異種移植マウスモデルでAPTEDB-DSPE-DTXのインビボ(in vivo)取り込み及び抗癌効果を示したものである。(A)は、U87MG異種移植腫瘍保持げっ歯類モデルにおける(n=3 mice per group)PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS及びAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS取り込みのIVISローダミンBリアルタイム画像を示したものである。スケールバー=10mm。(B)は、薬物治療によるU87MG異種移植腫瘍成長曲線を示したものである。マウスにおける腫瘍のサイズを3日ごとに測定した(n=4 mice per group)。赤の矢印は、薬剤IV注入スケジュール(drug IV infusion schedule)を示したものである。(C)は、マイセルナノ-DDSの抗癌効果を示したものである。DSPE-DTX、APTEDB-DSPE-DTX、又は塩分(saline)処理による腫瘍サイズの変化を示し、塩分を陰性対照群と比較した(n=4 mice per group)。(D)は、異種移植モデルから切開した腫瘍の代表的な画像を示したものである。薬物処理したマウスを各々7、10、14、及び17日目に犠牲にした(n=1 mouse per group)。スケールバー=10mm。U87MG皮下異種移植マウスモデルにおいて、(E)は、同所モデルの実験スケジュールを示したものであり、(F)は、悪性脳腫瘍でマイセルナノ-DDSの阻害効果を示している(n=4 per group)。各検体において最も大きい腫瘍体積の脳スライスを選別して分析した。(G)は、脳腫瘍のサイズの比較を示した代表的な画像である。マウス脳は、20μmの厚さに切断し、脳腫瘍はH&E染色で示した。スケールバー=1mm。統計学的分析:ウェルチのt検定。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、ns:統計学的に有意ではない。上記の結果は、平均±標準偏差で示した。APTEDB-DSPE-DTX:docetaxel-loaded APTEDB-DSPE micellar nano-DDS;DDS:drug delivery system;DSPE-DTX:docetaxel-loaded PEG2000-DSPE micellar nano-DDS;DTX:docetaxel;nano DDS Tx:nano drug delivery system treatment。
【0041】
図7】APTEDB-DSPE-DTXのインビボ生体適合性を示したものである。(A)は、APTEDB-DSPE-DTXの癌標的能力を示したものである。各U87MG脇腹異種移植マウスに(n=3 mice per group)PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS又はAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSを注入し、予め指定された時間(6、12、24、及び48時間)に、IVISインビボ画像システムを使用してローダミンB-標識されたマイセルの腫瘍取り込みを比較した。スケールバー=1cm。(B)は、正常主要臓器に及ぼすマイセルナノ-DDSの最小毒性を示したものである。実験最後に(17日、腫瘍体積が80~120mm3の時)、U87MG脇腹異種移植モデルから心臓、肝臓、脾臓、肺臓、及び腎臓を抽出し、H&E染色を行った。スケールバー=100μm。(C)は、U87MG皮下異種移植モデルで(左、n=3 mice per group)、マウス体重に及ぼすマイセルナノ-DDSの最小毒性を示したものである。実験では、マウスの体重を毎日測定し、マウスの初期及び最終体重をグラフで示した。統計学的分析:ウェルチのt検定。*p<0.05.上記の結果は、平均±標準偏差で示した。APTEDB-DSPE-DTX:docetaxel-loaded APTEDB-DSPE micellar nano-DDS;DSPE-DTX:docetaxel-loaded PEG2000-DSPE micellar nano-DDS。
【0042】
図8】同所異種移植モデルにおけるEDB-FN発現を示したものである。より具体的には、同所異種移植された脳腫瘍におけるEDB-FNの発現を示したものである。モデルマウスに塩分(対照群)、DSPE-DTX、又はAPTEDB-DSPE-DTXマイセルナノ-DDSを2週間注入した。マウス脳は20μmの厚さに切開した。(A)は、EDB-FN(緑)及び細胞核(nuclei)(青)でIHC画像を示した。スケールバー=1mm。(B)は、腫瘍部位の拡大画像を示したものである。スケールバー=100μm。APTEDB-DSPE-DTX:docetaxel-loaded APTEDB-DSPE micellar nano-DDS;DSPE-DTX:docetaxel-loaded PEG2000-DSPE micellar nano-DDS。
【0043】
図9】EDB-FNの潜在的バイオマーカーとして臨床的重要性及び悪性神経膠腫の標的配位子として実現の可能性を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明者らは、脳腫瘍で過剰発現するフィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)に対して鋭意研究した結果、EDB-FNを標的とするナノ薬物伝達体を開発し、本発明を完成した。
【0045】
より具体的には、重合脂質であるPEG2000-DSPEで形成されたマイセルナノ製剤より、APTEDB:PEG2000-DSPE=1:2で含むAPTEDB-DSPEマイセルナノ製剤がEDB-FN親和力が高く、脳腫瘍における細胞の取り込み率がより高く、腫瘍内に多く蓄積することができる点、ナノ製剤が12nm以下として脳血管腫瘍障壁を容易に透過できること、ナノ製剤を含むナノ薬物伝達体は、腫瘍抑制効果が高く、正常組織及び他の器官に影響を与えず、抗癌効果が高いことを確認した。
【0046】
本発明において、「アプチド(aptide)」という用語は、標的に対する親和性を保ちながら、安定性が改善されたアプタマー類似ペプチド(aptamer-like peptide)を意味する。アプチドは、環状のβ-ヘアピンベースのペプチドバインダで構成されたスキャフォールドとスキャフォールドの両端にn個のアミノ酸とを含む構成であり、これは、特定の生物学的標的と結合することができる。アプチドは、様々なライブラリ構築が可能な標的結合部位(target-binding region)を含んでもよい。アプチドは、L-アミノ酸及びD-アミノ酸からなる群から選択されるいずれか1つ以上のアミノ酸で構成されてもよい。「安定性」という用語は、アプチドの物理的、化学的、及び生物学的安定性を含むことができ、具体的には、生物学的安定性を意味し得る。即ち、生物学的に安定したアプチドは、生体内でタンパク質分解酵素の作用に対する耐性を有し得る。
【0047】
本発明によるアプチドは、EDB-FN遺伝子(Entrez Gene ID:2335)に特異的に結合するアプチドであり、具体的には配列番号1として記載されるアミノ酸配列で構成することができる。アミノ酸配列は、リシン(K)にシステイン(C)残基が付いていることを特徴とすることができる(図2A)。EDB-FNに対するアプチドは、3kDaのサイズで安定しており、EDB-FNに対して<100nMの高い親和性で結合することができる。
【0048】
【表1】
【0049】
アプチドは、本発明によるアプチドの構造及び活性に影響を及ぼさない範囲内でアミノ酸残基の欠失、挿入、置換、又はこれらの組み合わせによって異なる配列を有するアプチドの変異体又は断片であり得る。分子の活性を全体的に変化させないタンパク質又はペプチドにおけるアミノ酸交換は、当技術分野において公知である。場合によっては、リン酸化、硫化、アクリル化、糖化、メチル化、ファルネシル化などに修飾することができる。アプチドは、配列番号1として記載されるアミノ酸配列と70、80、85、90、95、又は98%の相同性を有し得る。
【0050】
本発明において、「薬物伝達体」という用語は、標的細胞、組織、又は器官に活性成分(例えば、薬物)と化学的又は物理的に結合した複合体であり、活性成分を運搬及び伝達するのに適した担体又はビヒクルを意味する。電気化学的結合は、化学反応による化学結合を意味し、物理的な結合は、吸着(adsorption)、凝集(coheison)、絡み付き(entanglement)、捕捉(entrapment)などの物理的固定だけでなく、ファンデルワールス結合のような電気的相互作用が、単独で又は物理的固定と共に作用して発生する非化学的固定を含む概念である。
【0051】
本発明において、「ナノ薬物伝達体」という用語は、薬物伝達体が約1ナノメートル(nm)~約1000nmサイズの範囲を有することを意味する。ナノ薬物伝達体は、薬学的に許容可能な担体であり得る。
【0052】
用語「薬物」は、薬理活性を有するものであり、ポリペプチド、タンパク質などを含み、本発明では、好ましくは造影剤又は抗癌剤を意味する。抗癌剤の具体的な例としては、ドセタキセル、ハラベン、ビンクリスチン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、グリベック、カルボプラチン、バルルビシン、フルタミド、ゲムシタビン、ブレオマイシン、テモゾロミド、プロカルバジン、ロムスチン(CCNU;1-(2-chloroethyl)-3-cyclohexyl-1-nitrosourea)、ビンクリスチン、又はカルムスチン(BCNU)などを含むが、これらに限定されることはない。
【0053】
本発明において、「予防」という用語は、本発明の組成物の投与による癌の発生、拡散、又は再発を抑制又は遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物の投与による疾患の症状が好転又は有利に変更される全ての行為を意味する。
【0054】
本発明において、「診断」とは、特定の疾病又は疾患に対するある個体の感受性を判定すること、ある個体が特定の疾病又は疾患を現在有しているか否かを判定すること、特定の疾病又は疾患にかかったある個体の予後を判定すること、又はセラメトリクス(therametrics)(例えば、治療の有効性に関する情報を提供するために個体の状態を監視すること)を含む。
【0055】
本発明において、「医薬組成物」という用語は、疾病の予防又は治療を目的として製造されたものを意味し、それぞれ通常の方法に従って様々な形態で製剤化して使用され得る。例えば、酸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口製剤に製剤化することができ、外用剤、坐剤、及び滅菌注射用溶液の形態で製剤化して使用され得る。
【0056】
本発明において、「有効成分として含む」とは、所望の生物学的効果を実現するために必要又は十分な量で該当成分が含まれることを意味する。実際の適用において有効成分として含まれる量の決定は、対象疾病を治療するための量として、他の毒性を引き起こさない事項を考慮して決定することができ、例えば、治療される疾病又は病態、投与される組成物の形態、被験体の大きさ、又は疾病又は病態の重症度などの様々な要因に応じて変化し得る。本発明が属する分野で通常の技術を有する技術者であれば、過度の実験を伴わずに個々の組成物の有効量を経験的に決定することができる。
【0057】
本発明の組成物は、所望の方法に従って薬学的に有効な量で経口又は非経口投与することができ、本発明の用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに充分かつ副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量レベルは、患者の健康状態、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路、及び排出率、治療期間、配合又は同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野で周知の要素に応じて決定され得る。
【0058】
従って、本発明の医薬組成物を個体に投与して脳腫瘍を予防、治療、及び/又は診断することができ、「脳腫瘍」は、悪性であるか陽性であるかにかかわらず全ての新生細胞の成長及び増殖を示す全ての前癌細胞及び癌細胞を指し、好ましくは悪性神経膠腫を意味する。非限定的な例としては、星状細胞腫、多形性膠芽腫、乏突起細胞腫、乏突起星細胞腫、上衣細胞腫、血管芽細胞腫、血管芽細胞腫、髄膜腫、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、又は脈絡叢乳頭腫であってもよい。
【0059】
本発明における用語「個体」は、ネズミ、家畜、マウス、ヒトなどの哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであり得る。
【0060】
本発明の医薬組成物は、個体への投与のための様々な形態で製剤化することができ、非経口投与用の製剤の代表的なものは注射用製剤であり、等張性水溶液又は懸濁液が好ましい。注射用製剤は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して当技術分野で周知の技術によって製造することができる。例えば、各成分を食塩水又は緩衝剤に溶解させて注射用に製剤化してもよい。また、経口投与用の製剤としては、例えば、摂取型錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、及びウェハなどが挙げられるが、これらの製剤は、有効成分以外に希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/又はグリシン)と滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、及びそのマグネシウム又はカルシウム塩、及び/又はポリエチレングリコール)を含んでもよい。錠剤は、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリジンなどの結合剤を含んでもよく、場合によっては、デンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩などの崩壊剤、取り込み剤、着色剤、香味剤及び/又は甘味剤をさらに含んでもよい。製剤は、通常の混合、顆粒化、又はコーティング方法によって製造され得る。
【0061】
また、本発明の医薬組成物は、防腐剤、水和制、乳化促進剤、浸透圧の調節のための塩、又は緩衝剤などの補助剤、及びその他の治療的に有用な物質をさらに含むことができ、通常の方法によって製剤化され得る。
【0062】
本発明による医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈、又は筋肉を含むいくつかの経路を介して投与することができ、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、及び患者の重症度などの様々な要因に応じて適切に選択され得る。また、本発明の組成物は、所望の効果を高めることができる周知の化合物とも並行して投与してもよい。
【0063】
本発明において、「動物モデル」という用語は、ヒトの疾病と非常に類似した形態の疾病を有する動物を指す。ヒトの疾病の研究において疾患モデル動物が意味を有するのは、ヒトと動物との間の生理的又は遺伝的な類似性による。疾病の研究において生体医学疾患モデル動物は、疾病の様々な原因と発症過程及び診断に対する研究用材料を提供し、疾患モデル動物の研究を通じて疾病に関連する遺伝子を調べ、遺伝子間の相互作用を理解できるようにし、開発された新薬候補物質の実際の有効性及び毒性検査によって実用化の可能性があるか否かを判断する基礎資料を得ることができる。「動物」又は「実験動物」という用語は、ヒト以外の任意の哺乳動物を意味する。動物は、胚子、胎児、新生児、及び成人を含む全ての年齢の動物を含む。本発明で使用するための動物は、例えば、商業用ソースから利用することができる。これらの動物は、実験用動物又は他の動物、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ネズミ、ハムスター、アレチネズミ、及びモルモット)、牛、羊、豚、ヤギ、馬、犬、猫、鳥(例えば、鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ)、霊長類(例えば、チンパンジー、猿、赤毛猿)を含むがこれらに限定されない。
【0064】
本発明において、「培養」という用語は、生物体や生物体の一部(器官、組織、細胞など)を適宜人工的に調節した環境条件で生育させることであって、この場合、外的条件として、温度、湿度、光、気相の組成(二酸化炭素や酸素の分圧)などが重要であり、他に培養される生物体に最も重要な直接的な影響を与えるのは培地(培養基)であり、その生物体の直接的な環境であると同時に生存や増殖に必要な各種栄養素の供給場である。
【0065】
本発明において、「体外培養」という用語は、細胞などが体内で成長する状態と区分される方法で、実験室のインキュベーター(incubator)で体内の環境と同様の条件で培養する一連の実験室の過程を意味するものである。
【0066】
本発明において、「培地」又は「培地組成物」という用語は、糖、アミノ酸、各種栄養物質、血清、成長因子、無機質などの細胞の成長及び増殖などに必須の要素を含む生体外での細胞などの成長及び増殖のための混合物をいう。
【実施例
【0067】
本発明は、様々な変換を加えることができて、様々な実施形態を有することができるが、以下に特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明で詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定することを意味するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。本発明の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をぼかし得ると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0068】
実施例1.遺伝子発現プロファイル(gene expression profile)及び生存分析(survival analysis)
全ての遺伝子発現プロファイルは、Oncopressionから得ることができ、EDB-FN関連データは、FN又はED-Bとしても知られているフィブロネクチン1(fibronectin 1、FN1、Entrez Gene ID:2335)を研究することによって収集した。FN1遺伝子の変異体は、ClinVar(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar)を用いて調べ、126個の変異体が確認された。悪性神経膠腫における発現レベルをスクリーニングするために、トランスクリプトミクスデータベース分析を行ったため、変異体の分析は本発明で実行されなかった。EDB-FNのトランスクリプトミクス発現レベルは、Single Channel Array Normalization and Universal exPression Codes(SCAN.UPC)package of Rで正規化し、UPC値で表した。より具体的には、Oncopressionデータのために単一サンプル正規化方法を使用し、全てのサンプルは、Affymetrix Human Genome U133 Plus 2.0(GPL570 or A-AFFY-44)platformから受け取った。発現値は、0.0から1.0で表され、1.0は、完全に転写活性化した場合を示す。正常細胞に対する癌細胞の比率(cancer-to-normal ratio)は、癌細胞における発現値を正常細胞における平均発現値で割って算出した。生存分析のために、発現プロファイル及び患者予後情報を含む脳腫瘍データセットを収集した後、30個以下のサンプルを分析から除外した。全ての遺伝子発現値は、データセットによってクオンタイル正規化(quantile normalization)した。Z値は、各データセットでログランク検定(log-rank test)して算出し、体重として各データセットの患者数の平方根を用いてLiptak methodで平均を出した。
【0069】
実施例2.患者組織マイクロアレイ(tissue microarray、TMA)サンプル製造及び解釈
患者組織サンプルは、手術及び病理学的診断の後、パラフィンブロック(paraffin block)に保管され、患者は、成人21人で、年齢18歳から75歳であり、多形性膠芽腫と診断された。各患者別に、3~4種類の他の腫瘍部位から合計65個の組織サンプルを含む組織マイクロアレイスライドを製造した。組織コア(tissue core)は、直径2mmで各ブロック別に45個の孔を含む被移植者パラフィンブロック(recipient paraffin block)で移植された。パラフィンで満たされたブロックを3μmの厚さに切り、スライド上に置いた。その後、組織を後述する免疫組織化学(immunohistochemistry)部分に記載したように染色した。免疫染色後、病理学者から盲検レビュー(blind review)を介してEDG-FNの存在及びレベルに対する読み取りを受けた。染色強度は、none又は「1+」(非常に弱い陽性)から「4+」(非常に強い陽性)で表した。本発明において、「1+」及び「2+」は、低発現群(low-expression group)に、「3+」及び「4+」は、高発現群(high-expression group)で分類した。EDB-FN発現と患者の予後予測との間の相関関係を分析するために、患者組織マイクロアレイにおけるEDB-FN発現レベルの結果と各患者の臨床データとを結びつける作業を行った。変数として無進行生存期間(progression-free survival、PFS)及び全生存期間(overall survival、OS)を使用して患者予後を分析した。
【0070】
実施例3.材料(materials)
ポリエチレングリコール(2000)-1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(アンモニウム塩)(PEG2000-DSPE)、DSPE-N-(リサミンローダミンBスルホニル)(アンモニウム塩)(Rh-DSPE)、及びN-マレイミド-PEG2000-DSPE(アンモニウム塩)(Mal-PEG2000-DSPE)は、Avanti Polar Lipids社(CA、USA)から購入した。EDB-FN-特異的ペプチドN’-CSSPIQGSWTWENGK(C)WTWGIIRLEQ-C’は、Anygen社(光州、大韓民国)で注文製造した。マウス抗-EDB-FN抗体(mouse anti-EDB-FN antibody)、及び抗マウスフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート二次抗体(anti-mouse fluorescein isothiocyanate(FITC)-conjugatedsecondary antibody)は、アブカム社(Abcam)(Cambridge、UK)から購入した。ドセタキセル(DTX)及びセファロース(Sepharose)CL-4Bカラムは、シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(MO、USA)から購入し、封入液(mounting solution)は、Dako Diagnostics社(Glostrup、Denmark)から購入し、アラマーブルーアッセイキット(Alamar Blue assay kit)は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)(MA、USA)から購入した。全ての試薬は、ラボラトリグレード(laboratory grade)であり、提供されたとおり使用した。
【0071】
実施例4.細胞培養
U87MG、U251MG、U373MG、MCF-7、PC3、B16F10、及びB16F1細胞は、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(VA、USA)で購入した。全ての細胞は、湿度5%のCO2環境で37℃を保持した。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS;fetal bovine serum)(Gibco、IL、USA)、100U/mLのペニシリン(penicillin)(Gibco)、及び100μg/mLのストレプトマイシン(streptomycin)(Gibco)を添加して基礎培地(minimal essential medium)(MCF-7)、RPMI(PC3、B16F10、B16F1)、又はダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)(U87MG、U251MG、U373MG)で培養した。全ての細胞培養培地は、Gibcoで購入した。
【0072】
実施例5.インビトロ3D回転楕円体培養(spheroid culture)
3D回転楕円体培養のために、全ての3つの悪性神経膠腫細胞株(U87MG、U251MG、and U373MG)をウェル(well)当たり1~5×103細胞(cell)でNunclon Sphera Microplate 96-well round bottom plate(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)で培養した。プレート(plate)を2分間200xgで遠心分離した後、37℃、5%CO2培養基に置いた。細胞は、6日間培養し、3日目に培地の半分を変更した。画像化のために、形成された回転楕円体を4%(w/v)パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)(Wako、VA、USA)で固定された8-well chambered coverglass slide(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に移し、後述する免疫細胞化学(immunocytochemistry)が実行された。
【0073】
実施例6.インビボEDB-FN免疫細胞化学のための悪性神経膠腫脇腹異種移植(MG flank xenograft)モデル
脇腹皮下異種移植(flank subcutaneous xenograft)マウスモデル(n=1 mouse per group)を形成するために、BALB/cヌードマウスの右脇腹にマウス当たり5×106細胞で、U87MG、U251MG、及びU373MG細胞を注入した。腫瘍が80~120mm3の体積になると、マウスを犠牲にして、切り出した腫瘍の免疫細胞化学を行った。
【0074】
実施例7.リアルタイム定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Real-time quantitive reverse transcription-polymerase chain reaction)
細胞を収集して、RNAアイソレーションキット(RNA isolation kit)(GeneAll、ソウル、大韓民国)を使用してRiboExでリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)を抽出した。各サンプルから合計1μgのRNAを使用して逆転写(reverse transcription)によって相補的DNA(complementary DNA、cDNA)を合成した。その結果、以下の遺伝子が推定された。EDB-FN遺伝子(順方向プライマー:5’-AACTCACTGACCTAAGCTTT-3’;逆方向プライマー:5’-CGTTTGTTGTGTCAGTGTAG-3’);及びグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素遺伝子(順方向プライマー:5’-AATCCCATCACCATCTTCCA-3’;逆方向プライマー:5’-TGGACTCCACGACGTACTCA-3’)。ポリメラーゼ連鎖反応プロトコルは、以下の通りである。94℃で5分間の最初の変性工程(initial denaturation step);94℃で1分間の変性、55℃で1分間のプライマー結合(annealing)、及び72℃で2分間の伸長(extension)を30回繰り返す工程、及び72℃で7分間の最終の伸長をする工程。4μLの超純水(ultrapure water)に1μgのcDNAを添加し、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time polymerase chain reaction)(Qiagen社、東京、日本)を実施する前に5μLのSYBR Green real-time mixture(Takara社、東京、日本)を添加した。2-ΔΔCt methodを使用して各遺伝子のメッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)レベルを定量化し、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素のメッセンジャーRNAで正規化した。
【0075】
実施例8.細胞及び組織染色(cell and tissue staining)
8.1.免疫細胞化学(immunocytochemistry)
7つの異なる細胞株を2D染色するために、染色前に8-well chamberedカバーガラススライドに24時間、10,000個の細胞を培養した。3D染色のために、回転楕円体(spheroids)を培養皿から8-well chamberedカバーガラススライドに移した。培養された細胞は、冷リン酸緩衝食塩水(cold phosphate buffered saline)(PBS;Welgene社、Gyeongsan、大韓民国)で3回洗浄した後、室温で15分間4%(w/v)パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定し、PBSで洗浄し、0.1%(v/v)Triton X-100(Amresco社、PA、USA)/PBSで10分間透過し、4℃で一晩中1%(w/v)bovine serum albumin(BSA;Millipore社、MA、USA)/0.1%(v/v)Triton X-100/PBSで、primary antibody against EDB-FN(ab154210、1:500 for 2D、1:100 for 3D;Abcam)で培養した。PBSで洗浄した後、免疫標識されたタンパク質を、蛍光標識二次抗体(fluorescence-conjugatedsecondary antibodies)を室温で60分間処理して可視化した。細胞は、PBSで洗浄した後、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)封入剤(mounting medium)(Vector laboratories社、CA、USA)で封入し、カバースリップ(cover slips)で封止した後、共焦点レーザ走査顕微鏡(confocal laser scanning microscope)(LSM 700;Carl Zeiss社、NY、USA)を使用して検査した。
【0076】
8.2.パラフィン添加された組織マイクロアレイ及び動物サンプルの免疫組織化学(immunohistochemistry)
EDB-FNの染色程度は、患者組織サンプルに対して組織マイクロアレイを、皮下異種移植動物組織サンプルに対して免疫組織化学を適用して分析した。組織マイクロアレイスライドを55℃で30分間加熱して蜜蝋を除去した後、5分間3回洗浄して、100、95、及び80%(v/v)のエタノールで5分間洗浄して連続的に純粋な蒸留水になるように再水化(rehydration)した。10mMのクエン酸ナトリウム(sodium citrate)(pH 6.0)で95℃、30分間、区間を加熱することによって抗原回収(antigen retrieval)した。3%(w/v)の過酸化水素(hydrogen peroxide)で30分間培養することによって内因性ペルオキシダーゼ活性(endogenous peroxidase activity)を阻害した。室温で30分間universal blocking serum(Dako Diagnostics社)を使用して基本反応性(background reactivity)を除去した。スライドにEDB-FNに特異的な抗体(orb227981、1:50;Biorbyt社、Cambridge、UK)を処理して1時間培養した後、ビオチン標識二次抗体(biotin-labeledsecondary antibody)を処理して30分間培養した。Streptavidin-peroxidase(Dako Diagnostics社)を使用して開発した。ヘマトキシリン(hematoxylin)を処理して少し対照染色(counterstaining)した後、顕微鏡観察のためにスライドを脱水し、カバースリップで封入した。
【0077】
実施例9.活性EDB-FN標的マイセルナノ-DDSの合成
9.1.APTEDB-conjugated PEG2000-DSPEの合成
追加のシステイン残基を含む(cysteinylated)EDB-FN-特異的アプタマー類似ペプチド(aptamer-like peptide)(APTEDB、Anygen社)をジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich社)に溶解し、Mal-PEG2000-DSPEをクロロホルム(chloroform)(Sigma-Aldrich社)に溶解した。APTEDB:Mal-PEG2000-DSPEのモル比を1:2とし、不活性条件において周辺温度(ambient temperature)で12時間コンジュゲーション(conjugation)反応を行った。APTEDB-conjugated PEG2000-DSPE(APTEDB-DSPE)を逆相高速液体クロマトグラフィー(reversed-phase high-performance liquid chromatography)で精製し、マトリックス支援レーザ脱離イオン化法/イオン化飛行時間質量分析(matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry)を用いてコンジュゲーション効率を決定した。コンジュゲーションされていないペプチドを除去するために、透析膜(dialysis membrane)(Spectrum Chemical社、NJ、USA)を使用して分子量3.5kDaに基づいて透析を行った。48時間後、コンジュゲーションを減圧下で凍結乾燥した。
【0078】
9.2.様々な重量パーセントのAPTEDB-DSPEを処理したマイセルナノ-DDSの製造
原液(stock solution)から2mg/mLのPEG2000-DSPEの陰イオン脂質膜(anionic lipid film)を製造した。蛍光標識されたマイセルナノ-DDSを製造するために、PEG2000-DSPE溶液(solution)に0.5wt%のローダミンBフルオロフォアで標識されたRh-DSPEを添加した。製剤に1.0、2.5、又は5.0wt%の濃度でAPTEDB-DSPEを添加した。例えば、1.0wt%のAPTEDB-DSPEの活性標的APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS(APTEDB-conjugated)を形成するために、0.5wt%のRh-DSPEを含むPEG2000-DSPE溶液の2mg/mLに20μgのAPTEDB-DSPEコンジュゲート(conjugate)を添加した。陰性対照群として、受動的/非標的(passive/nontargeting)PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS(APTEDB-unconjugated)を合成した。全ての成分をガラスバイアルに入れ、真空下で乾燥し、一晩中減圧した後に凍結乾燥して残ったクロロホルムを全て除去した。最終的に2mg/mLの濃度のマイセル溶液を得るために、再水化の間、脂質膜に1mLの超純水(Welgene)を添加した。均一なサイズのマイセルを形成するために、毎分1,000回転(revolution)の一定の撹拌下で再水化を行った。Amicon(登録商標)ウルトラ15遠心式フィルタ(Ultra-15 centrifugal filter)3kDa Units(Merck社、Darmstadt、Germany)を使用して、マイセルを溶解した溶液をPBSバッファに変えた。超過サイズのナノ粒子又は凝集体を除去するために、溶液を0.1μmの膜(Millipore)で濾過し、サイズ排除クロマトグラフィー(CL-4B column;Merck社)で精製した。製造後、PBSで全てのマイセル製剤のサイズ及びゼータ電位を動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)及びゼータ電位分析(zeta potential analysis)で分析した。2mg/mLマイセルの1mLを透明なキューベット(transparent cuvette)に移し、Zetasizer Nano ZS90(Malvern Instruments社、Malvern、UK)を使用して各マイセルの流体力学的直径(hydrodynamic diameter)及びゼータ電位を測定した。
【0079】
9.3.DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXの合成及び開発
受動的/非標的DSPE-DTX(APTEDB-unconjugated)及び活性標的APTEDB-DSPE-DTX(APTEDB-conjugated)は、従来に開示された方法を適用して開発された(Chong K et al.,Chem Commun(Camb).2013;49:11476-8)。先ず、APTEDB-DSPE脂質(lipid)を得るために、cysteinylated APTEDBをPEG2000-DSPE脂質(lipid)のマレイミド基(maleimide group)とコンジュゲートした。DTXをロードするために、DTXをクロロホルムに溶解し、再水化の間に最終的な濃度が50g/mLになるようにマイセル脂質膜に添加した。本発明において、DTX-ロードされたPEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS及びAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSをそれぞれ「DSPE-DTX」及び「APTEDB-DSPE-DTX」と命名した。DSPE-DTX及びAPTEDB-DPSE-DTXを0.1μmの膜で濾過し、サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。
【0080】
実施例10.APTEDB-コンジュゲートマイセルナノ粒子を使用して悪性神経膠腫の治療標的としてEDB-FN検証
10.1.APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビトロ細胞の取り込み(cellular uptake)
APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの細胞の取り込み効率は、EDB-FN-陽性U87MG及びU251MG細胞に各マイセル製剤を処理することによって決定した。U87MG及びU251MG細胞は、5,000細胞/ウェル(cells/well)において96ウェルプレート(well plate)で培養した。細胞を殺菌されたカバースリップにおいてコンフルエンス(confluence)で培養した後、細胞をAPTEDB-DSPEを1.0、2.5、又は5.0wt%の濃度で処理し、100μg/mLのPEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSs又はAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSsと共に1時間37℃で培養した。細胞をPBSで洗浄し、4%(w/v)のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定し、nuclear dye DAPI(Invitrogen社、CA、USA)で対照染色した後、glass slidesで封入し、ローダミンB(rhodamine B)-標識されたマイセルの取り込み率を確認するために、共焦点レーザ走査顕微鏡で確認した。
【0081】
10.2.競合分析(Competition assay)
EDB-FN高発現細胞(U87MG及びU251MG)及びEDB-FN低発現細胞(MCF-7及びB16F1)を約80%の合流点(confluence)に達するまでガラスカバースリップに培養した。細胞を様々な濃度(100μg/ml及び500μg/ml)の自由APTEDBペプチドで30分間前処理した。その後、ローダミン(rhodamine)標識されたAPTEDB-DSPEを添加し、細胞をさらに30分間培養した。その後、細胞をPBSで洗浄し、4%(w/v)パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で固定した後、共焦点顕微鏡下で見るために顕微鏡スライドに封入した。
【0082】
10.3.siRNA(small interfering RNA)の形質導入
EDB-FN特異的siRNA及びスクランブル対照群siRNA(scrambled control siRNA)は、Bioneer社(Daejeon、大韓民国)から購入した。RNA干渉に使用されるEDB-FN siRNAの標的配列は、以下の通りである。sense;ACAGUCCCAGAUCAUGGAG、antisense;CUCCAUGAUCUGGGACUGU。Lipofectamine 2000(Invitrogen社、CA、USA)を形質導入するために、細胞を一晩中成長させた後、60~70%の合流点(confluence)で96ウェル又は6ウェルプレートで培養した。製造業者の説明に従ってLipofectamine-siRNA複合体を製造した。形質導入有効性は、48時間後に分析した。
【0083】
10.4.APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビトロ細胞の取り込み(cellular uptake)
EDB-FN発現量に応じた細胞内取り込みを確認するために、U87MG細胞に上述した対照群siRNA又はEDB-FN siRNAを形質導入した。形質導入した細胞に100μg/mLのPEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS又はAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSを1.0wt%の濃度で処理し、1時間37℃で培養した。APTEDB-DSPEは、EDB-FNに対抗する抗体を使用して免疫細胞化学によって染色し、DAPIを含む封入液(mounting solution)で封入した。時間依存的細胞の取り込みを確認するために、U87MG細胞に1.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEで100μg/mLのAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSを5分、15分、30分、1時間、及び4時間処理した。
【0084】
10.5.U87MG及びU251MG細胞でAPTEDB-DSPE-DTXのインビトロ細胞毒性(cytotoxicity)
悪性神経膠腫の分子標的としてEDB-FNの有用性及び価値を決定するために、上述した方法でDTXをPEG2000-DSPE及びAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSsの中心にカプセル化した。24時間、各ナノ-DDS製剤を段階的に希釈して細胞と共培養した。製剤を除去した後、細胞をAlamar Blue assay(Bio-Rad社、CA、USA)の前にさらに24時間培養した。各製剤のIC50値は、プロビット分析(ProBit analysis)によって決定した。
【0085】
10.6.皮下異種移植モデル(subcutaneous xenograft model)でAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビボ取り込み(uptake)
インビボ異種移植モデルで、APTEDB-DPSEマイセルナノ-DDSの取り込みを評価するために、BALB/cヌードマウス(n=3 mice per group)の右脇腹に5×106細胞/マウスにU87MG細胞を注入した。3週間後、腫瘍成長を測定し、この時点で腫瘍体積は80~120mm3であった。その後、200μgのPEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS in PBS又はAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS in PBSを各マウスに注入し、予め指定された時間(15、30、60、及び120分)に、IVIS in vivo imaging system(PerkinElmer社、MA、USA)を使用してローダミンB-標識されたマイセルの腫瘍取り込みを比較した。
【0086】
10.7.APTEDB-DSPEのインビボ取り込み及び毒性
APTEDB-DPSEマイセルナノ-DDSインビボ組織取り込みを評価するために、U87MG細胞を5×106の細胞/マウスでBALB/cヌードマウスの右脇腹に注入した(n=3 mice per group)。3週間後、腫瘍成長を測定し、腫瘍体積は、80~120mm3に決定した。その後、200μgのPEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS又はAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSを各マウスに注入し、予め指定された時間(6、12、24、及び48時間)に、IVISインビボ画像システム(PerkinElmer社、MA、USA)を使用してローダミンB-標識されたマイセルの腫瘍取り込みを比較した。
【0087】
APTEDB-DSPEの安全性を検証するために、実験前後マウスの体重を確認した。実験の最後に、H&E染色のために主要臓器(心臓、肝臓、脾臓、肺臓、及び腎臓)を収集するためにマウスを安楽死した。
【0088】
10.8.皮下異種移植モデルの凍結サンプルの免疫組織化学(Immunohistochemistry)
スライドガラスに取り付けられた皮下異種移植モデルの脳スライスを冷PBSで2回洗浄し、ブロッキングした後、ブロッキングバッファ(blocking buffer)(PBS containing 0.3% Triton X-100 and 2% BSA)で1時間透過できるようにした。EDB-FNに特異的な主要抗体(ab154210 Abcam、MA、USA)をブロッキングバッファで1:100に希釈し、組織と共に4℃で一晩中培養した。PBSで洗浄した後、ブロッキングバッファで1:200に希釈したAlexa Fluor 488コンジュゲート二次抗体(A11001;Invitrogen社、CA、USA)を処理し、室温で1時間培養した。組織を、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Invitrogen社、NY、USA)で対照染色し、カバースライドで覆った後、共焦点レーザ走査顕微鏡及びスライドスキャナ(Axio Scan.Z1;Carl Zeiss社、NY、USA)を使用して分析した。
【0089】
10.9.APTEDB-DSPE-DTXのインビボ抗癌効果
脇腹皮下異種移植マウスモデルを製造するために、BALB/cヌードマウスの右脇腹に5×106の細胞/マウスでU87MG細胞を注入した。腫瘍体積が80~120mm3になると、マウスに塩分を5mg/kgのDTX濃度で(代表的な腫瘍組織摘出のためのn=1 mouse per groupを含み、n=5 mice per group)DPSE-DTX in PBS、又はAPTEDB-DSPE-DTX in PBSを静脈注射した。以前の研究プロトコルに基づいて、各製剤を2日ごとに3回静脈注射した。腫瘍のサイズは、摘出するまで3日に1回測定した。以下の式を使用して腫瘍体積を算出した。(長さ×幅×高さ)×0.5。以下の式を使用して腫瘍抑制率を算出した。[1-{(TDayE-TDay1)/TDay1×CDay1/(CDayE-CDay1)}]=100(TDayE=実験群の最終腫瘍体積;TDay1=実験群の最初(1日)の腫瘍体積;CDayE=対照群の最終腫瘍体積;CDay1=対照群の最初の腫瘍体積)。
【0090】
同所異種移植マウスモデル(orthotopic xenograft mouse models)を製造するために、BALB/cヌードマウスの頭部を定位固定装置(stereotactic device)で固定し、Ozawa及びJamesの方法によって頭頂点(bregma)から2mm側面及び冠状縫合(coronal suture)から1mm前面に高速ドリルで小型バーホール(burr hole)を施術した。22-gauge needle(Hamilton Company社、NV、USA)を使用して、3×105の細胞/マウスで頭蓋骨の内側皮質骨(inner cortical bone)から3mmの深さにU87MG細胞を注入した。7日後、マウスに1回塩分、10mg/kgのDTXの濃度でDSPE-DTX、又はAPTEDB-DSPE-DTXを1回静脈注射した(n=4 mice per group)。移植後の21日目に腫瘍のサイズ分析のためにマウスを犠牲にした。10%(v/v)のホルマリン(formalin)(Sigma-Aldrich社)を散布した後、各脳を除去し、OCTコンパウンド(optimal cutting temperature compound)(Sakura Finetek社、東京、日本)に挟んで入れた。脳サンプルを凍結し、cryostat sectioningを使用して20μmにスライスした。脳スライスをヘマトキシリン・エオジン染色キット(hematoxylin and eosin(H&E)staining kit)(ScyTek社、UT、USA)を使用して染色し、以下の式を使用して腫瘍体積を算出した。(長さ×幅×幅)×0.5.最も長い寸法を長さに設定し、最も長い垂直直径を幅に設定した。
【0091】
実施例11.画像化及び統計学的分析
ImageJ software(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を使用して画像プロセッシング及びデータ分析を行った。全てのデータは、GraphPad Prism 7 software(GraphPad,La Jolla社、CA、USA)を使用して分析し、means±standard errors(std.errors)で示すIC50値を除いて、means±standard deviations(std.devs.)で示した。群間の比較は、主に正規分布データの場合、対応のない2標本t検定(unpaired two-tailed t test)with Welch’s correction(ウェルチのt検定)、非正規分布データの場合、マン・ホイットニーのU検定(Mann-Whitney test)を行った。P values of<0.05は、統計的に有意であるとみなされ、以下のように表示された。p<0.05(*)、p<0.01(**)、p<0.001(***)、及びp<0.0001(****)。
【0092】
実施例12.倫理的承認(Ethical approval)
動物実験のために全ての適用可能な国際、国内、及び/又は機関のガイドラインを遵守した。本発明における動物に関する全ての実験は、KAIST動物実験倫理委員会(KAIST Institutional Animal Care and Use Committee)及び高麗大学医科大学(Korea University College of Medicine)(IACUC No.KA2013-13及びKOREA-2019-0123)の倫理的基準に準拠する。患者サンプル研究は、高麗大学九老病院機関監査委員会(Korea University Guro Hospital Institutional Review Board)(IRB No.2017GR0330)で承認されたガイドライン及びプロトコルを遵守した。
【0093】
[実験結果]
本発明者らは、EDB-FNが様々な癌に対してマーカーであり、標的として実現可能であるかを評価するために、正規化されたビッグデータ及びEDB-FN発現レベルの患者組織サンプルを分析した。さらに、正常細胞に対する癌細胞におけるEDB-FNの発現率が最も高い癌の1つである悪性神経膠腫の診断マーカーであり、薬物伝達標的としてEDB-FNの有用性を検証した。
【0094】
実験結果1.癌細胞株におけるEDB-FN発現
様々なヒト癌細胞株におけるEDB-FN発現レベルを決定するためにスクリーニングを行った。乳癌細胞株MCF7、前立腺癌細胞株PC3、黒色種細胞株B16F1及びB16F10、及び悪性神経膠腫細胞株U373MG、U87MG、及びU251MGが実験に使用された。EDB-FNタンパク質の発現パターンは、2D単層培養(two-dimensional monolayer culture)中に定量的分析によって確認した(図1A)。PC3細胞株及びU373MG細胞株では、EDB-FN発現が弱いと検出されたが、U87MG細胞株では、明確な発現が観察された。また、EDB-FN発現の定量的分析のためにmRNAを抽出することによって、qRT-PCRを行った(図1B)。その結果(MCF7、47.8±7.9;PC3、12.1±2.1;B16F1、0.6±0.5;B16F10、23.3±1.4;U373MG、2.6±0.8;U251MG、643.0±31.0;U87MG、1430.3±61.4)、U251MG細胞株において統計学的にかなりの過剰発現が観察され(p<0.001、他の全ての細胞株に対して、ウェルチのt検定)、最も高い発現は、U87MG細胞株で観察された(p<0.001、他の全ての細胞株に対して、ウェルチのt検定)。上記の結果を通して、他の癌に比べて悪性神経膠腫においてEDB-FNが過剰発現されたことを確認した。
【0095】
腫瘍微小環境(tumor microenvironment)を作るために、3Dで悪性脳膠腫細胞株を培養して、悪性神経膠腫脇腹異種移植動物モデルを作製した。免疫染色を用いたEDB-FN発現の定量的分析の結果、3D培養の間U87MG細胞株においてU251MG及びU373MG細胞株よりもEDB-FNがさらに過剰発現された(図1C)。異種移植マウスモデルでは、U251MG及びU87MG細胞株がU373MG細胞株より相対的に高い発現パターンを示した(図1D)。mRNA qRT-PCRによる定量的分析の結果(図1E)、2D培養されたU373MG細胞株と比較してU87MG細胞株においてEDB-FNがかなり発現した(p<0.01、ウェルチのt検定)。上記の結果と比較して、腫瘍微小環境を模倣した3D培養されたU87MG細胞株でより高いEDB-FN発現を示し(p<0.001、2D培養されたU87MG細胞株と比較して、ウェルチのt検定)、異種移植動物モデルで最も高いEDB-FN発現を示した(p<0.0001、3D培養されたU87MG細胞株と比較して、ウェルチのt検定)。上記の結果は、悪性神経膠腫におけるEDB-FN発現と腫瘍微小環境類似性との間の線形の相関関係を示唆し、これは、EDB-FNを悪性神経膠腫のバイオマーカーとして使用できることを示している。
【0096】
最終的に、悪性神経膠腫細胞において他の癌細胞よりもEDB-FNがより過剰発現し、悪性神経膠腫細胞株中にゆっくり増殖するU373MG細胞においてEDB-FNが相対的に低い発現を示した。積極的に増殖することが知られているU87MG細胞株は、最も高いEDB-FN発現レベルを示し、多形性膠芽腫幹細胞のような特徴を有するU251MG細胞株がその次に該当した。上記の結果に基づいて、後述する研究ではU87MG及びU251MG細胞株を使用した。
【0097】
実験結果2.合成APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの特性分析(characteristic analysis)
マイセルの動的光散乱(DLS)分析の結果、11.5±1.9nm for the PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSに対して、11.5±1.9nmの直径、1.0、2.5、及び5.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEを処理したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSに対して、各々8.2±1.3nm、10.5±1.9nm、及び10.3±1.3nmの直径を示した(図2A及びB)。PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSと比較してAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのDLS-測定のサイズが減少したことと、1.0wt%の濃度で同じDDSと比較して2.5及び5.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEにおいてAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの測定されたサイズが増加したことは、マイセルの外面にAPTEDBの存在がマイセルナノ-DDSにおいて形態学的変化に影響を及ぼすことを示した。各ナノ-DDSのゼータ電位(ナノ粒子の表面電荷を推定することができる)を測定した。PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSのゼータ電位は、-9.3±1.1mVであり、1.0、2.5、及び5.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEを処理したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのゼータ電位は、各々-9.5±0.7mV、-10.4±1.3mV、及び-12.1±0.7mVであった(図2C)。
【0098】
実験結果3.APTEDB-DSPE密度による細胞の取り込み
最適化された標的配位子密度を決定するために、脂質膜形成前に、1.0、2.5、及び5.0wt%の濃度でPEG2000-DSPEを混合したRh-DSPEのクロロホルム溶液にAPTEDB-DSPEを添加した。全ての条件下で、癌細胞における活性標的APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの取り込み効力(uptake efficacy)は、消極的/非標的PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSの取り込み効力よりも高かった(図4A)。興味深いことに、2.5wt%の濃度のAPTEDB-DSPEを処理したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSは、U251MG細胞で最も高い細胞の取り込みを示した(PEG2000-DSPE、44.5±9.6;1.0% APTEDB-DSPE、76.4±8.1;2.5% APTEDB-DSPE、128.8±12.1;5.0% APTEDB-DSPE、53.4±5.1)、一方、1.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEを処理したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSは、U87MG細胞で最も高い細胞の取り込みを示した(PEG2000-DSPE、6.8±5.1;1.0% APTEDB-DSPE、165.7±3.7;2.5% APTEDB-DSPE、93.2±6.7;5.0% APTEDB-DSPE、56.7±7.9)。APTEBD-DSPEの濃度が増加するにつれてより負の方向にあり(図2C)、5.0wt%の濃度のAPTEDB-DSPEを処理したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの減少した細胞の取り込みは、ナノ-DDSにおける負電荷によって部分的に説明可能である。しかし、U87MG及びU251MG細胞の両方が悪性神経膠腫細胞であり、同じ標的配位子が使用されたにもかかわらず、最も高い細胞の取り込み効力を有するAPTEDB-DSPE濃度が細胞株ごとに異なった。従って、配位子密度は、細胞株及び細胞型によって異なり、それによって細胞の取り込みも異なることが分かった。
【0099】
APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのEDB-FNを標的とする能力を立証するために、EDB-FN高発現及び低発現細胞をEDB-FNを標的とするアプチド(targeting aptide)とAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSで同時に処理することによって、競合分析を行った。EDB-FN高発現細胞であるU87MG及びU251MGにおけるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの取り込みは、EDB-FNを標的とするアプチドの濃度が増加するにつれて減少した。APTEDB-DSPEの取り込みが最小であったにもかかわらず、EDB-FN低発現細胞であるMCF-7及びB16F1においてもEDB-FNの妨害効果が示された(図3A及びB)。
【0100】
活性標的APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSがEDB-FN発現に依存することを確認するために、U87MG細胞におけるEDB-FNをノックダウン(knock down)した。U87MG細胞におけるEDB-FN発現は、EDB-FN-siRNA処理後にかなり減少した。一方、対照群siRNA(control siRNA、1.00±0.08;EDB-FN siRNA、0.45±0.01;p<0.01、ウェルチのt検定)を処理した細胞のEDB-FN発現は一定であった(図4A)。siRNAを処理した後、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS残量の取り込みにも変化はなかった。しかし、EDB-FN発現が抑制された細胞では、活性標的APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの取り込みは減少した(図4B)。さらに、U87細胞におけるAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの時間依存的取り込みも4時間観察した。5分間の処理後、細胞内APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS濃度を徐々に増加させ、1時間から4時間内に飽和に達した(図4C)。
【0101】
上記の結果は、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSは、EDB-FN発現依存的及び時間依存的に、細胞によって取り込まれることを示唆し、より明確に標的配位子密度が実際にはナノ粒子の細胞の取り込みにとって重要であることを示している。
【0102】
実験結果4.EDB-FNを標的にすることによる癌標的及び抗癌効果の向上
4.1.APTEDB-DSPE-DTXのインビトロ毒性
EDB-FNの悪性神経膠腫の分子標的として価値及び有用性を決定するために、PEG2000-DSPE及びAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの中心にDTXをカプセル化した。各マイセルナノ-DDSのローディング能力は10wt%、カプセル化有効性は約95%で算出した。細胞生存率(cell viability)は、DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXを用いて評価した(図5B)。DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXシステムにおいて、DTXがU251MG及びU87MG細胞の生存率を阻害するにもかかわらず、阻害の程度は異なった。U87MG細胞におけるIC50値は、DSPE-DTXの場合、87.38±6.87nM、APTEDB-DSPE-DTXの場合、23.15±1.67nMであり、APTEDB-DSPE-DTXがDSPE-DTXより約3.8倍低かった(p<0.0001、ウェルチのt検定)。U251MG細胞におけるIC50値は、DSPE-DTXの場合、43.16±7.05nM、APTEDB-DSPE-DTXの場合、26.20±1.53nMであり、APTEDB-DSPE-DTXがDSPE-DTXより約1.6倍低かった(p<0.05、ウェルチのt検定)(図5C)。U87MG及びU251MG細胞におけるインビトロ細胞毒性データは、優れた癌標的能力を暗示し、薬物の取り込みの増加は、消極的/非標的に比較してEDB-FN活性標的によって達成できると考えられる。DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXのIC50値の有意な差がU87MG細胞で観察されたが、U87MG細胞をインビボモデリング及び悪性神経膠腫の分子標的としてEDB-FNを評価するために使用することにより選別した。
【0103】
4.2.APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSのインビボ取り込み
U87MG脇腹異種移植マウスモデルにおけるリアルタイムIVIS画像の研究の結果、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSは、消極的/非標的PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSと比較して腫瘍局在化(tumor localization)のかなりの増加を示した。腫瘍局在化の増加は、15分から120分の間持続的に観察された(図6A)。15分で、最小のナノ粒子蓄積が観察された。30分後、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS群でより高い蓄積が開始された。60分後、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDS群は、PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDS群より腫瘍部位でより多くの蓄積を示した。また、DDSが腫瘍より他の器官に影響を与えるか否かを決定するために、マイセルナノ-DDSの組織取り込みを48時間測定した(図7A)。消極的/非標的PEG2000-DSPEマイセルナノ-DDSは、徐々に48時間内に体内全般に拡散した。しかし、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSは、安定的かつ限定された腫瘍部位として残った。上記の結果は、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの安定性及び高い悪性神経膠腫標的能力を示す。APTEDB-DSPEが高いEDB-FN標的能力を有することで、高い親和性でEDB-FNに結合することにより、悪性神経膠腫で非常に増加したAPTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの保持時間(retention time)を示し、それにより、増加した腫瘍における薬物の生物学的利用の可能性を有した。
【0104】
4.3.APTEDB-DSPE-DTXのインビボ抗癌効果
インビボ抗癌効果は、U87MG皮下異種移植動物モデルで検証した。有効性は、経時的な対照群、DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTX群における腫瘍成長の傾向を比較することによって評価した(図6B)。対照群では、腫瘍体積は、16日内(17日)に初日(1日)より約5.9倍増加した(1日:91.5±7.4mm3対17日:538.0±115.9mm3;p<0.01、ウェルチのt検定)。DSPE-DTX又はAPTEDB-DSPE-DTXを処理することによって腫瘍成長を著しく阻害した。上述のように、腫瘍阻害のパーセントを算出した結果、DSPE-DTXが腫瘍成長を約54.8%抑制した(1日:87.9±12.6mm3対17日:281.7±29.4mm3;p<0.001、ウェルチのt検定)、一方、APTEDB-DSPE-DTXは、腫瘍成長を約97.6%にかなり抑制することを確認した(1日:87.5±12.6mm3対17日:97.8±2.6mm3;p<0.20、ウェルチのt検定)。初日、腫瘍体積は群間に有意な差はなかった。しかし、ナノ-DDSを3回服用した2日目、4日目、及び6日目に、群間の腫瘍体積の差は、時間が経つにつれて顕著となった(図6C及びD)。APTEDB-DSPE-DTX群は、対照群と比較して7日目からかなりの腫瘍抑制を示し(p<0.001、ウェルチのt検定)、DSPE-DTX群と比較した場合、17日目から差があった(p<0.01、ウェルチのt検定)。
図7Bに示すように、マイセルナノ-DDSを体内投与した結果、心臓、肝臓、脾臓、肺臓、及び腎臓などの主要臓器では何の副作用も観察されず、実験が終了するまでマウスの体重には大きな変化がなかった(1日、対照群=20.4±0.6g、DSPE-DTX=21.4±0.2g、APTEDB-DSPE-DTX=18.9±0.6g;17日、対照群=19.8±1.6g、DSPE-DTX=20.7±1.2g、APTEDB-DSPE-DTX=19.5±0.9g)(図7C)。これは、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSが毒性をほどんど有さず、生体適合性を有することを示している。
【0105】
4.4.同所脳腫瘍マウスモデルでAPTEDB-DSPE-DTXの抗癌効果
脳腫瘍の治療標的として、その実現の可能性を評価するために、U87MG同所異種移植動物モデルを作製した。図6Eに示すように、塩分(saline)を対照群として、DSPE-DTX及びAPTEDB-DSPE-DTXを細胞移植後に7日間静脈注射により注入した(n=4 mice per group)。2週間後、脳を抽出し、各群の腫瘍体積を比較した。H&E染色を使用してスライスされた脳組織の正常及び腫瘍部位の局在化(tumor localization)を行い、各モデルにおける最も大きい腫瘍のスライスに基づいて腫瘍のサイズを測定した(図6F及びG)。その結果、EDB-FN標的マイセルナノ-DDS処理により腫瘍成長が著しく阻害されることが分かった。対照群と比較して(116.9±21.0mm3)、DSPE-DTX(86.7±28.7mm3)及びAPTEDB-DSPE-DTX(46.5±27.0mm3)群は、各々25.8%(p<0.15、ウェルチのt検定)及び60.2%(p<0.01、ウェルチのt検定)の腫瘍成長を抑制した。統計学的に大きな差が見られなかったが、APTEDB-DSPE-DTX群は、DSPE-DTX群(p<0.09、ウェルチのt検定)より約34.4%さらに高い腫瘍成長抑制を示した。実験中、全ての群でかなりの体重変化が観察されることはなかった(1日、対照群=22.7±1.3g、DSPE-DTX=23.3±2.5g、APTEDB-DSPE-DTX=23.3±1.6g;21日、対照群=24.5±1.3g、DSPE-DTX=25.1±1.7g、APTEDB-DSPE-DTX=25.5±1.5g)(図8C)。上記の結果は、本発明のEDB-FN-標的マイセルナノ-DDSが悪性神経膠腫を治療する潜在力を有し、EDB-FNが薬物治療のための有用な標的であることを示している。
【0106】
悪性神経膠腫同所マウスモデルで移植されたU87MG細胞がEDB-FNを過剰発現するという点を確認するために、全ての群で腫瘍を含むマウス脳スライスを用いた免疫組織化学分析を実行した。マウス脳組織の正常部位と比較して、全ての群の腫瘍部位でEDB-FNがより高く発現した(図8A)。興味深いことに、腫瘍におけるEDB-FN発現は、対照群及びDSPE-DTX群と比較してAPTEDB-DSPE-DTX群でわずかに減少し(図8B)、これは、APTEDB-DSPE-DTXが腫瘍でEDB-FN発現レベルに影響を与える可能性があることを示唆する。
【0107】
[考察]
本発明は、癌細胞の表面及び細胞外基質内に位置するEDB-FNに関する。より具体的には、表面及び細胞外基質内のタンパク質は、薬物伝達体(drug delivery systems、DDSs)のための有用な標的だけでなく、癌診断バイオマーカーとして活用することができる。
【0108】
上記の結果を考慮するとき、本発明者らは、検証のために皮下異種移植動物モデル実験を含むインビトロ(In vitro)及びインビボ(in vivo)実験を行った。細菌などの中枢神経系の侵入を防止するために発達したBBBが適用されたBBTBは、12nmより小さい微細な生理学的孔のサイズを有するため、はるかに小さいサイズのナノ-DDSを使用することがBBTBを介した容易な透過を保障することができる。従って、本発明者は、薬物伝達を向上させるために、DSPE高分子を使用して超小型マイセル(~12nm)を開発し、マイセルの表面にAPTEDBを接着することにより、悪性神経膠腫の診断及び治療に使用することのできるシステムを作製した。従来には、薬物伝達体が約115±13nmサイズのリポソーム又は34nmサイズの超常磁性酸化鉄ナノ粒子(superparamagnetic iron oxide nanoparticles)を含む非常に大きな方であったが、本発明は、小型の12nmマイセルにかなり減少した(図2)。
【0109】
本発明者らは、EDB-FN発現レベルと患者の予後間の相関関係とを定量的に比較し(図2)、悪性神経膠腫におけるEDB-FN標的の有用性を検証した(図5及び図6)。EDB-FNの過剰発現及びEDB-FN標的DDSによる向上した薬物伝達は、単一層細胞培養だけでなく、同所異種移植モデルでも確認されており、これは、EDB-FNが悪性神経膠腫細胞及び組織において発現し、ナノ-DDSがEDB-FN標的を介して悪性神経膠腫と接続又は基盤を置いていることを示唆する(図9)。同所異種移植動物モデルのためのDTX服用量が、DTXの神経毒性を考慮して脇腹異種移植動物モデルのための15mg/kgより33%少ない合計10mg/kgに決定されたにもかかわらず、異種移植モデルにおける脇腹モデルで表れた顕著な抗癌効果が示された。BBTBの限界にもかかわらず、製造されたEDB-FN標的マイセルナノ-DDSは、統計学的に顕著な抗癌効果がない非標的マイセルナノ-DDSと比較してかなりの治療効果を示した。APTEDBの悪性神経膠腫細胞に対する特異的な結合は、APTEDB-DSPEマイセルナノ-DDSの腫瘍保持時間を効率的に増加させ、優れた抗癌効果を示した。EDB-FNは、悪性神経膠腫組織において特異的に高い発現を示したが、隣接する正常組織及び正常脳組織では最小限に発現した。特性は、悪性神経膠腫治療のための標的配位子としてEDB-FN使用における実現の可能性を高めるのに役立つ。
【0110】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当技術分野の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は、単に好ましい実施様態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が限定されるものではないことは明らかであろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付する特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、PEG2000-DSPE重合脂質及びAPTEDB-PEG2000-DSPEポリマーを含むマイセル構造の薬物伝達体に関し、薬物伝達体は、脳腫瘍(brain tumor)で過剰発現するフィブロネクチンエキストラドメインB(EDB-FN)を標的とし、血液脳関門(BBB)又は脳血管腫瘍障壁(BBTB)を通過して脳腫瘍細胞に特異的に薬物を送達することができる。従って造影剤、抗癌剤などの薬物がロードされた本発明の薬物伝達体を有効成分として含む組成物は、脳腫瘍内部に蓄積され、腫瘍細胞内部に陥入されることがあり、脳腫瘍診断及び治療分野で有用に利用することができる。
図1
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【配列表】
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