(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20240326BHJP
【FI】
H02M7/49
(21)【出願番号】P 2022555469
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2021036629
(87)【国際公開番号】W WO2022075262
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020168285
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】温品 治信
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203517(WO,A1)
【文献】特開2013-27260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数レベルの直流電圧を選択的に出力する複数の単位変換器を直列接続し、これら単位変換器の出力電圧を足し合わせて出力するマルチレベル変換器と、
前記各単位変換器の駆動を制御する制御部と、
前記制御部の動作用電圧を出力する制御用電源部と、
を備え、
前記各単位変換器は、第1および第2出力端子、複数のスイッチ素子、これらスイッチ素子を介して前記第1および第2出力端子に接続されたコンデンサ、このコンデンサの電圧により動作し前記制御部からの駆動信号に応じて前記各スイッチ素子をオン,オフ駆動する駆動部、前記制御用電源部から出力される前記動作用電圧により動作し前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部を含み、前記各スイッチ素子のオン,オフによる複数の通電路の選択的な形成により前記複数レベルの直流電圧を出力する、
前記制御部は、前記各単位変換器の前記電圧検出部の検出結果に基づいて前記駆動部に駆動信号を出力する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記マルチレベル変換器は、その一端が交流系統の各系統ラインに接続され、各マルチレベル変換器の他端が相互接続された中性点を備え、
前記制御用電源部の出力の一端は、前記マルチレベル変換器の中性点と接続されている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記各単位変換器は、前記コンデンサの電圧を前記駆動部の動作用電圧に変換する自給電源部を含む、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記自給電源部は、前記コンデンサの電圧をスイッチングにより前記駆動部の動作に必要な所定レベルの直流電圧に変換するDC-DCコンバータである、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記自給電源部は、前記駆動部の動作に必要な所定レベルの直流電圧に変換する可変抵抗回路である、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記制御部に接続される入力端子およびこの入力端子とは絶縁された状態で前記各スイッチ素子に接続される出力端子を有する絶縁型の増幅回路であり、
前記電圧検出部は、前記コンデンサの一端に第1分圧抵抗器を介して接続される反転入力端子、前記コンデンサの他端に第2分圧抵抗器を介して接続されかつ第3分圧抵抗器を介して前記制御用電源部から出力される前記動作用電圧の基準となる共通電位に接続される非反転入力端子、前記反転入力端子に第4分圧抵抗器を介して接続される出力端子を有する演算増幅器を含み、前記反転入力端子の電位と前記非反転入力端子の電位との差に対応するレベルの電圧を出力する非絶縁型の差動増幅回路である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記各単位変換器は、前記コンデンサに並列接続され、前記各分圧抵抗器の抵抗値の和より小さい抵抗値を有する放電用抵抗器を含む、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記マルチレベル変換器は、前記各単位変換器の出力電圧を足し合わせることにより正弦波に近い波形の交流電圧を生成しそれを交流系統に供給する、
前記制御部は、前記交流系統の交流電圧とほぼ同じ波形の交流電圧を前記マルチレベル変換器で生成させるための交流電圧指令値を設定し、前記各単位変換器の個数と同じ個数で互いに位相が異なる三角波状の複数のキャリア信号を前記交流電圧指令値でパルス幅変調することにより前記各単位変換器に対するスイッチング用の駆動信号を生成する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
さらに、前記制御部は、前記各単位変換器における全ての前記各電圧検出部の検出結果と一致するように、前記交流電圧指令値を補正する、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記各電圧検出部の検出結果のうち、前記各キャリア信号の三角波が頂点となるタイミングの検出結果を取り込む、
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記各単位変換器は、前記第1および第2出力端子の相互間を導通して前記コンデンサをバイパスする第1通電路、前記第1出力端子と前記コンデンサの一端とを導通して前記第2出力端子と前記コンデンサの他端とを導通する第2通電路、前記第2出力端子と前記コンデンサの一端とを導通して前記第1出力端子と前記コンデンサの他端とを導通する第3通電路を、前記各スイッチ素子のオン,オフで選択的に形成することにより、前記複数レベルの直流電圧を出力する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記マルチレベル変換器は、
それぞれが複数レベルの直流電圧を選択的に出力する第1~第Nの複数の単位変換器を直列接続し、これら第1単位変換器の出力電圧を足し合わせることにより正弦波に近い波形の交流電圧を生成しそれを3相交流系統のU相に供給する第1マルチレベル変換器、
それぞれが複数レベルの直流電圧を選択的に出力する複数の第2単位変換器を直列接続し、これら第2単位変換器の出力電圧を足し合わせることにより正弦波に近い波形の交流電圧を生成しそれを前記3相交流系統のV相に供給する第2マルチレベル変換器、
それぞれが複数レベルの直流電圧を選択的に出力する複数の第3単位変換器を直列接続し、これら第3単位変換器の出力電圧を足し合わせることにより正弦波に近い波形の交流電圧を生成しそれを前記3相交流系統のW相に供給する第3マルチレベル変換器、
であり、
前記第1,第2,第3マルチレベル変換器のそれぞれ一端が第1,第2,第3バッファリアクトルを介して前記3相交流系統の各系統ラインに接続され、前記第1,第2,第3マルチレベル変換器のそれぞれ他端が相互接続(星形結線)された、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の単位変換器を直列接続してなるマルチレベル変換器を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれが複数レベル(マルチレベル)の直流電圧を出力する複数の単位変換器(ブリッジセルやチョッパーセルともいう)を直列接続(カスケード接続)し、これら単位変換器の出力電圧を足し合わせることで、高調波抑制用の交流電圧を生成し出力する電力変換器としてモジュラー・マルチレベル変換器(MMC;Modular Multilevel Converter)の開発および実用化が進んでいる。このモジュラー・マルチレベル変換器(単にマルチレベル変換器という)の出力を系統ラインに供給することにより、その系統ラインに流れる高調波を抑制することができる。
【0003】
マルチレベル変換器の各単位変換器は、一対の出力端子、複数のスイッチ素子、これらスイッチ素子を介して各出力端子に接続されるコンデンサ、上記各スイッチ素子を駆動する駆動部、上記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部などを含み、上記各スイッチ素子のオン,オフにより複数レベルの直流電圧を選択的に出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】萩原 誠、赤木泰文 著、「モジュラー・マルチレベル変換器(MMC)のPWM制御法と動作検証」、電気学会論文誌D,128巻7号,2008
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力変換装置では、数多くの単位変換器を備えるため、各単位変換器における駆動部および電圧検出部の動作用電圧をどのように確保するかが構成の簡略化およびコストの低減を図る上で大きな課題となっている。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、マルチレベル変換器の各単位変換器における駆動部および電圧検出部の動作用電圧を適切に確保することができ、これにより構成の簡略化およびコスト低減が図れる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の電力変換装置は、それぞれが複数レベルの直流電圧を選択的に出力する複数の単位変換器を直列接続し、これら単位変換器の出力電圧を足し合わせて出力するマルチレベル変換器と;前記各単位変換器の駆動を制御する制御部と;前記制御部の動作用電圧を出力する制御用電源部と;を備える。前記各単位変換器は、第1および第2出力端子、複数のスイッチ素子、これらスイッチ素子を介して前記第1および第2出力端子に接続されるコンデンサ、このコンデンサの電圧により動作し前記制御部からの駆動信号に応じて前記各スイッチ素子をオン,オフ駆動する駆動部、前記制御用電源部から出力される前記動作用電圧により動作し前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部を含み、前記各スイッチ素子のオン,オフによる複数の通電路の選択的な形成により前記複数レベルの直流電圧を出力する。前記制御部は、前記各単位変換器の前記電圧検出部の検出結果に基づいて前記駆動部に駆動信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は一実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は一実施形態における各単位変換器の構成を示す図である。
【
図3】
図3は一実施形態におけるスイッチングパターンを示す図。
【
図5】一実施形態における自給電源部の構成の一例を示す図。
【
図6】一実施形態における自給電源部の構成の他の例を示す図。
【
図7】一実施形態における各単位変換器の変形例の構成を示す図。
【
図8】一実施形態における各マルチレベル変換器の変形例の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、3相交流系統(電力系統や配電系統を含む)1の系統ラインLu,Lv,Lwに本実施形態の電力変換装置10を介して負荷2が接続されている。負荷2は、ダイオード3a~3fをブリッジ接続してなる3相整流回路3、この3相整流回路3の出力端に直流リアクトル4を介して接続された直流コンデンサ5、この直流コンデンサ5に接続された電気機器6である。電気機器6は、例えばモータを駆動するインバータ等である。
【0011】
電力変換装置10は、バッファリアクトル11u,11v,11w、これらバッファリアクトル11u,11v,11wをそれぞれ介して系統ラインLu,Lv,Lwに一端が接続され他端が相互接続(星形結線)されたマルチレベル変換器(第1,第2,第3マルチレベル変換器)12u,12v,12w、上記系統ラインLu,Lv,Lwにおけるバッファリアクトル11u,11v,11wの接続位置より負荷2側の位置に配置され3相交流系統1の交流電圧(系統電圧ともいう)Eu,Ev,Ewおよび負荷2に流れる電流(負荷電流という)ILu,ILv,ILwを検出する検出器13、バッファリアクトル11u,11v,11wとマルチレベル変換器12u,12v,12wとの間の通電路に配置されそのマルチレベル変換器12u,12v,12wから系統ラインLu,Lv,Lw(主回路ともいう)に供給される補償電流(出力電流ともいう)Icu,Icv,Icwを検出する検出器14、これら検出器13,14の検出結果に応じてマルチレベル変換器12u,12v,12wを制御する制御部15、この制御部15の動作に必要な直流電圧(動作用電圧という)Vddを出力する制御用電源部16を含む。この動作用電圧Vddは、例えば5Vまたは15Vであり、マルチレベル変換器12u,12v,12w内の後述する電圧検出部34,44,54の動作用電圧としても用いられる。
【0012】
制御用電源部16の出力電圧の基準となる共通電位Gの端子は、例えば、マルチレベル変換器12u,12v,12wの他端の相互接続(星形結線)されている中性点Kに接続されている。また、共通電位Gの端子は、さらに電位固定のために直流コンデンサ5の負側端子に接続される場合もある。
【0013】
系統ラインLuに接続されたマルチレベル変換器12uは、それぞれが複数レベル(マルチレベル)の直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する第1~第Nの複数の単位変換器(第1単位変換器;チョッパセル、ブリッジセルまたはPWMコンバータともいう)21u,22u,23uを直列接続してなるいわゆる多直列変換器クラスタであり、単位変換器21u,22u,23uの出力電圧(セル出力電圧)Vcu1,Vcu2,Vcu3を足し合わせることにより高調波を低減するための交流電圧Vcu0を生成し出力する。本実施形態では単位変換器の個数が3つの例を示している。系統ラインLv,Lwに各々接続されるマルチレベル変換器12v,12wもマルチレベル変換器12uと同じ構成を有している。
【0014】
制御部15は、負荷電流ILu,ILv,ILwをできるだけ交流電圧Eu,Ev,Ewと同期した正弦波に近づけるために、その負荷電流ILu,ILv,ILwに足し合わせるべき補償電流Icu,Icv,Icwをそれぞれ算出する。さらに、制御部15は、算出した補償電流Icu,Icv,Icwを供給するのに必要な交流電圧Vcu0,Vcv0,Vcw0を算出し、その交流電圧Vcu0を得るための単位変換器21u,22u,23uの出力電圧Vcu1,Vcu2,Vcu3を決定する。そして、制御部15は、決定した出力電圧Vcu1,Vcu2,Vcu3が得られるように各単位変換器21u,22u,23u、21v,22v,23v、21w,22w,23wの動作を制御する。
【0015】
一般的に、3相交流系統1に接続されたマルチレベル変換器では、上述のように算出される出力電圧Vcu0,Vcv0,Vcw0はほぼ正弦波に近い波形となる。
【0016】
マルチレベル変換器12vは、それぞれが複数レベル(マルチレベル)の直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する複数の単位変換器(第2変換器)21v,22v,23vを直列接続してなる多直列変換器クラスタであり、単位変換器21v,22v,23vの出力電圧(セル出力電圧)Vcv1,Vcv2,Vcv3を足し合わせることにより高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcv0を生成し出力する。
【0017】
マルチレベル変換器12wは、それぞれが複数レベル(マルチレベル)の直流電圧をスイッチングにより選択的に生成し出力する複数の単位変換器(第3変換器)21w,22w,23wを直列接続してなる多直列変換器クラスタであり、単位変換器21w,22w,23wの出力電圧(セル出力電圧)Vcw1,Vcw2,Vcw3を足し合わせることにより高調波を低減するための正弦波に近い波形の交流電圧Vcw0を生成し出力する。
【0018】
交流電圧Vcu0,Vcv0,Vcw0がマルチレベル変換器12u,12v,12wから系統ラインLu、Lv,Lwに供給されることにより、負荷電流ILu,ILv,ILwに含まれる高調波を補償して抑制することができる。
【0019】
単位変換器21u,22u,23uの回路構成を
図2に示す。
単位変換器21uは、出力端子(第1出力端子)P1、出力端子(第2出力端子)N1、スイッチ素子(第1スイッチ素子)Q1aおよびスイッチ素子(第2スイッチ素子)Q1bを直列接続してなる第1スイッチングレグ、スイッチ素子(第3スイッチ素子)Q1cおよびスイッチ素子(第4スイッチ素子)Q1dを直列接続してなり上記第1スイッチングレグに並列接続された第2スイッチングレグ、これらスイッチ素子Q1a~Q1dを介して出力端子P1,N1に接続されるコンデンサC1、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q1a,Q1bをオン,オフ駆動する駆動部(ゲートアンプ)31、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q1c,Q1dをオン,オフ駆動する駆動部32、コンデンサC1の電圧(コンデンサ電圧という)Vc1を駆動部31,32の動作に必要な直流電圧(動作用電圧という)に変換する自給電源部33、制御用電源部16から出力される動作用電圧Vddにより動作しコンデンサ電圧Vc1を検出する電圧検出部34を含み、スイッチ素子Q1a~Q1dのオン,オフによる複数の通電路の選択的な形成により複数レベル(正レベル・零レベル・負レベル)の直流電圧Vcu1を生成し出力する。
【0020】
単位変換器22uは、出力端子(第1出力端子)P2、出力端子(第2出力端子)N2、スイッチ素子(第1スイッチ素子)Q2aおよびスイッチ素子(第2スイッチ素子)Q2bを直列接続してなる第1スイッチングレグ、スイッチ素子(第3スイッチ素子)Q2cおよびスイッチ素子(第4スイッチ素子)Q2dを直列接続してなり上記第1スイッチングレグに並列接続された第2スイッチングレグ、これらスイッチ素子Q2a~Q2dを介して出力端子P2,N2に接続されるコンデンサC2、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q2a,Q2bをオン,オフ駆動する駆動部(ゲートアンプ)41、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q2c,Q2dをオン,オフ駆動する駆動部42、コンデンサC2の電圧(コンデンサ電圧という)Vc2を駆動部41,42の動作に必要な直流電圧(動作用電圧という)に変換する自給電源部43、制御用電源部16から出力される動作用電圧Vddにより動作しコンデンサ電圧Vc2を検出する電圧検出部44を含み、スイッチ素子Q2a~Q2dのオン,オフによる複数の通電路の選択的な形成により複数レベル(正レベル・零レベル・負レベル)の直流電圧Vcu2を生成し出力する。
【0021】
単位変換器23uは、出力端子(第1出力端子)P3、出力端子(第2出力端子)N3、スイッチ素子(第1スイッチ素子)Q3aおよびスイッチ素子(第2スイッチ素子)Q3bを直列接続してなる第1スイッチングレグ、スイッチ素子(第3スイッチ素子)Q3cおよびスイッチ素子(第4スイッチ素子)Q3dを直列接続してなり上記第1スイッチングレグに並列接続された第2スイッチングレグ、これらスイッチ素子Q3a~Q3dを介して出力端子P3,N3に接続されるコンデンサC3、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q3a,Q3bをオン,オフ駆動する駆動部(ゲートアンプ)51、制御部15からの駆動信号に応じてスイッチ素子Q3c,Q3dをオン,オフ駆動する駆動部52、コンデンサC3の電圧(コンデンサ電圧という)Vc3を駆動部51,52の動作に必要な直流電圧(動作用電圧という)に変換する自給電源部53、制御用電源部16から出力される動作用電圧Vddにより動作しコンデンサ電圧Vc3を検出する電圧検出部54を含み、スイッチ素子Q3a~Q3dのオン,オフによる複数の通電路の選択的な形成により複数レベル(正レベル・零レベル・負レベル)の直流電圧Vcu3を生成し出力する。
【0022】
なお、単位変換器21u,22u,23uの各スイッチ素子Q1a~Q3dには例えばIGBTを用いることができる。
【0023】
単位変換器21uにおけるスイッチ素子Q1a~Q1dのオン,オフにより形成される複数の通電路として第1通電路、第2通電路、第3通電路がある。同様に、単位変換器22uにおけるスイッチ素子Q2a~Q2dのオン,オフにより形成される複数の通電路として第1通電路、第2通電路、第3通電路があり、単位変換器23uにおけるスイッチ素子Q3a~Q3dのオン,オフにより形成される複数の通電路として第1通電路、第2通電路、第3通電路がある。
【0024】
例えば、
図2の単位変換器21uにおいて示すように、交流電圧Euの正レベル期間において、スイッチ素子Q1b,Q1dをオンしてスイッチ素子Q1a,Q1cをオフする動作により、出力端子P1,N1の相互間を導通してコンデンサC1をバイパスする第1通電路が実線矢印のように形成され、零レベルのセル出力電圧Vcu1(=0)が出力端子P1,N1間に生じる。
【0025】
図2の単位変換器22uにおいて示すように、交流電圧Euの正レベル期間において、スイッチ素子Q2a,Q2cをオンしてスイッチ素子Q2b,Q2dをオフする動作によっても、同様に出力端子P2,N2の相互間を導通してコンデンサC2をバイパスする第1通電路が実線矢印のように形成され、零レベルのセル出力電圧Vcu2(=0)が出力端子P2,N2間に生じる。零レベルのセル出力電圧については、単位変換器21uにおいて示す動作と単位変換器22uにおいて示す動作のどちらを用いてもよい。
【0026】
図2の単位変換器23uにおいて示すように、交流電圧Euの正レベル期間において、スイッチ素子Q3a,Q3dをオンしてスイッチ素子Q3b,Q3cをオフする動作により、出力端子P3とコンデンサC3の一端とを導通して出力端子N3とコンデンサC3の他端とを導通する第2通電路が実線矢印のように形成され、コンデンサ電圧Vc3に基づく正レベルのセル出力電圧Vcu3(=+Vc)が出力端子P3,N3間に生じる。
【0027】
図2の同じく単位変換器23uにおいて示すように、交流電圧Euの正レベル期間において、スイッチ素子Q3a,Q3dをオンしてスイッチ素子Q3b,Q3cをオフする動作により、出力端子N3とコンデンサC3の一端とを導通して出力端子P3とコンデンサC3の他端とを導通する第3通電路が破線矢印のように形成され、コンデンサ電圧Vc3に基づく負レベルのセル出力電圧Vcu3(=-Vc)が出力端子P3,N3間に生じる。
【0028】
単位変換器21uの出力端子P1が上記バッファリアクトル11uを介して系統ラインLuに接続され、単位変換器21uの出力端子N1に単位変換器22uの出力端子P2が接続され、単位変換器22uの出力端子N2に単位変換器23uの出力端子P3が接続され、単位変換器23u出力端子N3が当該マルチレベル変換器12uの他端として他のマルチレベル変換器12v,12wの他端と相互接続(星形結線)されている。この単位変換器21u,22u,23uの直列接続(カスケード接続)により、単位変換器21u,22u,23uのセル出力電圧Vcu1,Vcu2,Vcu3を足し合わせた電圧Vcu0が系統ラインLuに供給される。
図2の例ではVcu0=“0”+“0”+“+Vc”=+Vcとなる。
【0029】
以下、単位変換器21uを例にとって説明するが、他の単位変換器21v,21wも同様である。さらに、他のマルチレベル変換器12v,12w内の各単位変換器も同様の動作を行う。
【0030】
単位変換器21uから複数レベル(正レベル・零レベル・負レベル)のセル出力電圧Vcu1を得るためのスイッチ素子Q1a~Q1dのオン,オフパターンとセル出力電圧Vcu1との関係を
図3に示す。所望のレベルを得るには、三角波変調波と目標とする出力電圧を指示する指令値信号によって、パルス幅変調制御(PWM制御)を用いれば良い。
【0031】
また、特殊な変調方式(疑似3レベル変調ともいう)を用いたスイッチングを行うための制御部15のパルス幅変調制御(PWM制御)を
図4に示す。
すなわち、制御部15は、3相交流系統1の交流電圧Euとほぼ同じ波形の交流電圧をマルチレベル変換器12uで生成させるための交流電圧指令値Vcu sinθを設定し、単位変換器21u,22u,23uの個数と同じ個数で互いに位相が異なる三角波状のキャリア信号Vt1,Vt2,Vt3の電圧レベルとその交流電圧指令値Vcu sinθの電圧レベルとを比較するパルス幅変調により、単位変換器21u,22u,23uのスイッチ素子Q1a~Q3dに対するスイッチング用の駆動信号(ゲート信号ともいう)を生成する。これら駆動信号の生成に際し、制御部15は、単位変換器21u,22u,23uの各スイッチングレグにおいて直列に配置されているスイッチ素子Q1a,Q1bのオンとオフの間、スイッチ素子Q2a,Q2bのオンとオフの間、スイッチ素子Q3a,Q3bのオンとオフの間にそれぞれ短絡防止のためにオフ状態となるデッドタイムを確保する。
【0032】
また、制御部15は、単位変換器21u,22u,23uのコンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3をバランスさせるバランス制御を実行する。具体的には、マルチレベル変換器12uの単位変換器21u,22u,23uのうち、互いに隣り合う2つの単位変換器21u,22uにおけるコンデンサC1,C2の電圧Vc1,Vc2の平均値、互いに隣り合う2つの単位変換器22u,23uにおけるコンデンサC2,C3の電圧Vc2,Vc3の平均値、N番目と1番目の2つの単位変換器23u,21uにおけるコンデンサC3,C1の電圧Vc3,Vc1の平均値が、単位変換器21u,22u,23uのすべてのコンデンサC1,C2,C3の電圧Vc1,Vc2,Vc3の平均値Vcaveに一致するように、交流電圧指令値Vcu sinθを補正する。なお、3つのマルチレベル変換器12u,12v,12wに対して制御部15が設定する交流電圧指令値Vcu sinθは、互いに120°位相がずれている。
【0033】
[自給電源部の構成]
単位変換器21uの自給電源部33は、
図5のDC-DCコンバータ(チョッパー回路ともいう)または
図6の可変抵抗回路(シリーズレギュレータともいう)を用いることができる。
【0034】
図5のDC-DCコンバータは、入力コンデンサ60,スイッチ素子61,62、リアクトル63、出力コンデンサ64を含み、コンデンサC1の電圧Vc1をスイッチングにより駆動部31,32の動作に必要な所定レベル(例えば10V)の直流電圧Vd1に変換(降圧)する。このDC-DCコンバータは、構成する部品の価格は高いが、大きな電力を扱うことができ、しかも効率がよいという利点がある。
【0035】
一方、
図6の可変抵抗回路は、入力コンデンサ70,可変抵抗器71、出力コンデンサ72を含み、コンデンサC1の電圧Vc1を可変抵抗器71により上記駆動部31,32の動作に必要な所定レベルの直流電圧Vd1に変換する。この可変抵抗回路は、抵抗による電力消費によって効率が低下するが、構成が簡素でしかも部品の価格が安いという利点がある。なお、一般的には可変抵抗器71はトランジスタ等の半導体素子で構成される。
【0036】
図5のDC-DCコンバータおよび
図6の可変抵抗回路の直列回路を1つの自給電源部33とする構成を採用し、コンデンサ電圧Vc1をDC-DCコンバータで降圧してから可変抵抗回路で所定レベルの直流電圧に変換する構成としてもよい。
【0037】
単位変換器22u,23uの自給電源部43,53も、コンデンサC2,C3の電圧Vc2,Vc3をスイッチングにより駆動部41,42,51,52の動作に必要な所定レベルの直流電圧Vd2,Vd3に変換するDC-DCコンバータまたは可変抵抗回路である。
【0038】
[駆動部の構成]
単位変換器21uの駆動部31,32は、制御部15からの駆動信号が入力される入力端子およびこの入力端子とは電気的に絶縁された状態でスイッチ素子Q1a~Q1dのゲートに接続される出力端子を有する絶縁型の増幅回路(ゲートアンプ)である。単位変換器22uの駆動部41,42および単位変換器23uの駆動部51,52も絶縁型の増幅回路である。
【0039】
これら駆動部31~52から各スイッチ素子のゲートに供給するオン,オフ駆動用の駆動信号(ゲート信号)の分解能は1μs程度であり、これに伴い、ゲートアンプである駆動部31~52には数MHz程度の応答性が必要になる。これら駆動部31~52として、例えばフォトカプラやレベルシフタなどが用いられる。
【0040】
[電圧検出部の構成]
単位変換器21uの電圧検出部34は、コンデンサC1の一端に第1分圧抵抗器R1を介して接続される反転入力端子(-)、コンデンサC1の他端に第2分圧抵抗器R2を介して接続されかつ第3分圧抵抗器R3を介して共通電位Gに接続される非反転入力端子(+)、上記反転入力端子(-)に第4分圧抵抗器R4を介して接続される出力端子を有する演算増幅器(オペアンプという)Aを含み、反転入力端子(-)の電位と非反転入力端子(+)の電位との差、すなわちコンデンサC1の両端間電圧Vc1に対応するレベルの電圧Vx1をオペアンプAから出力する差動増幅回路である。
【0041】
単位変換器22uの電圧検出部44及び単位変換器23uの電圧検出部54も、同様に、それぞれコンデンサC2,C3の両端間電圧に対応するレベルの電圧Vx2,Vx3をそれぞれのオペアンプAから出力する。
【0042】
単位変換器21u,22u,23uの各オペアンプAは、
図1に示す制御用電源部16から出力される動作用電圧Vddに基づく正電圧+Vddが印加される正側電源端子、および動作用電圧Vddに基づく負電圧-Vddが印加される負側電源端子を備える。
【0043】
負側電源端子の電位の変動を取り除くオフセット回路を設ける構成を採用すれば、正電圧+Vddのみを動作用電圧としてオペアンプAに加えてもよい。
【0044】
以上のように、単位変換器21u,22u,23uの駆動部31~52の動作用電圧についてはコンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc2を用いながら、単位変換器21u,22u,23uの電圧検出部34,44,54の動作用電圧については特別の電源を設けることなく制御部15用の動作用電圧Vddを流用する構成なので、構成の簡略化およびコスト低減が図れる。
【0045】
なお、制御部15用の動作用電圧Vddを電圧検出部34,44,54の各オペアンプAに共通に加える構成の場合、単位変換器21u,22u,23uの相互間の電位差(例えば50V)が各オペアンプAに加わるので、各オペアンプAが破壊に至る可能性がある。また、電圧検出部34,44,54の各オペアンプAの共通電源となる制御用電源部16の共通電位Gと、主回路であるマルチレベル変換器12u,12v,12wの中性点Kの電位が同じなので、主回路の電源電圧(例えば200V)が各オペアンプAに加わり、各オペアンプAが破壊する可能性もある。
【0046】
このような各オペアンプAの破壊が生じないよう、本実施形態では、電圧検出部34,44,54のそれぞれ分圧抵抗器R1,R2として抵抗値の大きいものを採用し、各オペアンプAに加わる電圧を抑制する。
【0047】
一方、コンデンサC1,C2,C3の両端の電位が各スイッチ素子のオン,オフに伴って急峻に変動する。この電位変動については電圧検出部34,44,54の各分圧抵抗器によって取り除くことができると考えられるが、実際には、各分圧抵抗器の抵抗値のばらつきや誤差あるいは各オペアンプAの漏れ電流の影響により、コンデンサC1,C2,C3の両端に生じる急峻な電位変動を完全には取り除くことができない。
【0048】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、電圧検出部34,44,54の各オペアンプAの出力端子と制御部15との間の各信号線にフィルタ35,44,55を配置している。フィルタ35,44,55は、コンデンサC1,C2,C3の両端に生じる電位変動のうち、数MHzの急峻な電位変動をノイズとして取り除く。これにより、誤差のない適正なコンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3を検出して制御部15に知らせることができる。
【0049】
また、上記のように、電圧検出部34,44,54の各オペアンプAの共通電源となる制御用電源部16の共通電位Gと、主回路であるマルチレベル変換器12u,12v,12wの中性点Kの電位が同じとなる構成なので、コンデンサC1,C2,C3がそれぞれ分圧抵抗器R2,R3を介して主回路に接続される。このような状況において、単位変換器21u,22u,23uのセル出力電圧Vcu1,Vcu2,Vcu3が互いに異なると、コンデンサC1,C2,C3から分圧抵抗器R2,R3を介して放電される電荷量が異なる。一方、交流系統の電圧に対抗するべく、コンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3の和はある一定以上の電圧となるように制御される。したがって、中性点Kから最も離れた位置に存する単位変換器21uのコンデンサC1が最も多く放電し、中性点Kに最も近い位置に存する単位変換器21wのコンデンサC3が充電され続ける事態が生じ、コンデンサC3に加わる電圧がコンデンサC3の定格電圧を超過する可能性がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、分圧抵抗器R2,R3の抵抗値の和より小さい抵抗値を有する放電用抵抗器36,46,56を単位変換器21u,22u,23uのコンデンサC1,C2,C3にそれぞれ並列接続している。これら放電用抵抗器36,46,56の並列接続により、コンデンサC3に加わる電圧がコンデンサC3の定格電圧を超過する不具合を解消するとともに各コンデンサC1,C2,C3のコンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3を互いに近い値に維持することができる。
【0051】
なお、以上は系統ラインLuに接続された単位変換器21uを主体に詳細に説明したが、系統ラインLv,Lwにそれぞれ接続される単位変換器21v,21wも上述の単位変換器21u同一の構成となっており、同様の動作を行う。
【0052】
[変形例1]
上記実施形態では、コンデンサC1,C2,C3の両端に生じる急峻な電位変動を取り除くため、電圧検出部34,44,54の各オペアンプAの出力端子と制御部15との間の各信号線にフィルタ35,44,55を配置する構成としたが、それに代えて、電圧検出部34,44,54の各オペアンプAの出力信号(検出結果)のうち、
図4に示すパルス幅変調用のキャリア信号Vt1,Vt2,Vt3のそれぞれ三角波が頂点となるタイミングの出力信号を、電圧検出結果として制御部15に取り込む構成としてもよい。
【0053】
コンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3は、基本的に三角波状のキャリア信号Vt1,Vt2,Vt3の電圧レベルと交流電圧指令値Vcu sinθとが交差する点で変化するので、キャリア信号Vt1,Vt2,Vt3のそれぞれ三角波が頂点となるタイミングでは変化が少ない。したがって、キャリア信号Vt1,Vt2,Vt3のそれぞれ三角波が頂点となるタイミングの出力信号を電圧検出結果として制御部15が取り込む構成であれば、ノイズの影響が少なく、誤差のない適正なコンデンサ電圧Vc1,Vc2,Vc3を制御部15において認識することができる。
【0054】
[変形例2]
上記実施形態では、単位変換器21u,22u,23uがそれぞれ4つのスイッチ素子と2つの駆動部31,32を含む場合を例に説明したが、
図7に示すように、単位変換器21u,22u,23uがそれぞれ2つのスイッチ素子と1つの駆動部31を含む場合についても同様に実施できる。
【0055】
[変形例3]
上記実施形態では、マルチレベル変換器12u,12v,12wの一端をバッファリアクトル11u,11v,11wを介して交流系統ラインに接続し、マルチレベル変換器12u,12v,12wの他端を相互接続(星形結線)する構成の電力変換装置について説明したが、
図8に示すように、それぞれ一対のマルチレベル変換器12u,12v,12wの一端をそれぞれバッファリアクトル11u,11v,11wを介して交流系統ラインに接続し、それぞれマルチレベル変換器12u,12v,12wの他端を直流系統ラインに接続する構成の電力変換装置においても同様に実施できる。この場合、直流系統ラインの負側が共通電位Gに接続される。
【0056】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態および変形例は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…3相系統電源、2…負荷、10…電力変換装置、12u,12v,12w…マルチレベル変換器、15…制御部、16…制御用電源部、21u,22u,23u…単位変換器、21v,22v,23v…単位変換器、21w,22w,23w…単位変換器、Q1a~Q3d…スイッチ素子、C1,C2,C3…コンデンサ、Gu1~Gu3´…駆動信号、系統ラインLu,Lv,Lw。