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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/187 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022565383
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021043035
(87)【国際公開番号】W WO2022114019
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2020194545
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 貴博
(72)【発明者】
【氏名】庄原 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】矢作 惠司
(72)【発明者】
【氏名】津森 宏治
(72)【発明者】
【氏名】神園 織衣
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104319496(CN,A)
【文献】特開2018-195439(JP,A)
【文献】特表2019-533284(JP,A)
【文献】米国特許第06250974(US,B1)
【文献】特開2014-078373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/10-13/14
H01R13/15-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子が挿入される端子挿入孔を有するベース部材と、
前記端子挿入孔に収容され、前記ベース部材と接触すると共に、前記端子挿入孔に挿入された前記相手方端子と接触するように構成された筒状のばね部材と、を備え、
前記ばね部材は、
前記端子挿入孔の内周面に接触する環状の第1の支持部と、
前記第1の支持部から前記端子挿入孔の入口側に向かって突出する複数の第1のばね片と、
前記端子挿入孔の内周面に接触すると共に、前記第1の支持部よりも前記端子挿入孔の奥側に配置される環状の第2の支持部と、
前記第2の支持部から前記端子挿入孔の入口側に向かって突出する複数の第2のばね片と、
前記第1の支持部と前記第2の支持部とを連結する第1の連結部と、を含み、
前記第1のばね片は、自由端である第1の先端部を有すると共に、前記端子挿入孔の中心軸に近づくように傾斜し、
前記第2のばね片は、自由端である第2の先端部を有すると共に、前記端子挿入孔の中心軸に近づくように傾斜し、
前記第1及び第2の支持部のそれぞれの外周面に、前記ばね部材の径方向外側に向かって突出する複数の突起が設けられており、
複数の前記突起は、
前記第1の支持部の外周面に設けられると共に、前記第1の支持部の周方向に沿って間隔を空けて一列に並べられた複数の第1の突起と、
前記第1の支持部の外周面に設けられると共に、前記第1の支持部の周方向に沿って間隔を空けて一列に並べられ、前記第1の突起よりも前記端子挿入孔の奥側に位置する複数の第2の突起と、
前記第2の支持部の外周面に設けられると共に、前記第2の支持部の周方向に沿って間隔を空けて一列に並べられた複数の第3の突起と、
前記第2の支持部の外周面に設けられると共に、前記第2の支持部の周方向に沿って間隔を空けて一列に並べられ、前記第3の突起よりも前記端子挿入孔の奥側に位置する複数の第4の突起を含み、
前記第1の突起及び第2の突起は、前記第1の支持部の周方向に沿って互いにずれて配置され、
前記第3の突起及び第4の突起は、前記第2の支持部の周方向に沿って互いにずれて配置されている端子。
【請求項2】
請求項に記載の端子であって、
相互に隣り合う前記第1の突起は、前記第1のばね片の仮想中心線に対して線対称に配置されるとともに、前記第2の突起は、前記第1のばね片の仮想中心線上近傍に配置され、
相互に隣り合う前記第3の突起は、前記第2のばね片の仮想中心線に対して線対称に配置されるとともに、前記第4の突起は、前記第2のばね片の仮想中心線上近傍に配置されている端子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の端子であって、
前記ベース部材は、前記端子挿入孔の内周面において前記第1のばね片に対向する位置に溝を有することを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関するものである。
文献の参照による組み込みが認められる指定国については、2020年11月24日に日本国に出願された特願2020-194545に記載された内容を参照により本明細書に組み込み、本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
従来の端子(雌端子)は、相手方端子(雄端子)が挿入可能な中空筒のベース部材(接続部)と、ベース部材の内部に設けられ、ベース部材の内側に撓む複数のスプリング片を備えたばね部材(接触バネ部材)と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような端子に相手方端子を挿入する際には、相手方端子はスプリング片を外側に押し拡げながらベース部材内に進入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-31488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のばね部材では、スプリング片の両端が円環部に固定されているため、相手方端子の挿入時に大きな力が必要となり、挿入作業性が悪化してしまう場合がある。
【0005】
本発明の目的は、相手方端子の挿入力の低減を図ることができる端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る端子は、相手方端子が挿入される端子挿入孔を有するベース部材と、前記端子挿入孔に収容され、前記ベース部材と接触すると共に、前記端子挿入孔に挿入された前記相手方端子と接触するように構成された筒状のばね部材と、を備え、前記ばね部材は、前記端子挿入孔の内周面と接触する環状の第1の支持部と、前記第1の支持部から前記端子挿入孔の入口側に向かって突出する複数の第1のばね片と、前記端子挿入孔の内周面と接触すると共に、前記第1の支持部よりも前記端子挿入孔の奥側に配置される環状の第2の支持部と、前記第2の支持部から前記端子挿入孔の入口側に向かって突出する複数の第2のばね片と、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを連結する第1の連結部と、を含み、前記第1のばね片は、自由端である第1の先端部を有すると共に、前記端子挿入孔の中心軸に近づくように傾斜し、前記第2のばね片は、自由端である第1の先端部を有すると共に、前記端子挿入孔の中心軸に近づくように傾斜する端子である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る端子では、第1のばね片の第1の先端部が自由端となっていることで、相手方端子の挿入力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における端子を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態における端子を示す分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図3に示すベース部材の断面図である。
図5図5は、図3のV部の拡大断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態におけるばね部材の斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態におけるばね部材の展開図である。
図8図8(a)は、本発明の実施形態における第1及び第2の突起を説明する図であり、図8(b)は、第1及び第2の突起をずらさずに配置した変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における端子を示す斜視図であり、図2は本実施形態における端子を示す分解斜視図であり、図3図1のIII-III線に沿った断面図であり、図4図3に示すベース部材の断面図であり、図5図3のV部の拡大断面図であり、図6は本実施形態におけるばね部材の斜視図であり、図7は本実施形態におけるばね部材の展開図である。
【0011】
本実施形態の端子1は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の自動車に搭載される充電コネクタに用いられる大電流用の充電端子である。この端子1は、図1図3に示すように、ベース部材10と、ばね部材20と、キャップ部材30と、を備えている。
【0012】
図2及び図3に示すように、この端子1において、ベース部材10の端子挿入孔111の内部に筒状のばね部材20が設けられており、相手方端子100(図3参照)は、このばね部材20の内側に挿入されることで、端子1と電気的に接続される。相手方端子100は、プラグ型コネクタ(給電プラグ)が有する棒状の電源端子であり、端子1が設けられる充電コネクタは、当該プラグ型コネクタと嵌合するレセプタクル型コネクタである。
なお、本実施形態の端子1の用途は、特に上記に限定されない。
【0013】
本実施形態における端子1が本発明における「端子」の一例に相当し、本実施形態におけるベース部材10が本発明における「ベース部材」の一例に相当し、本実施形態におけるばね部材20が本発明における「ばね部材」の一例に相当する。
【0014】
ベース部材10は、金属材料等の導電性を有する材料から構成されている。このベース部材10は、図4に示すように、相手方端子100を接続可能な端子接続部11と、電線(不図示)を接続可能な電線接続部12と、を備えている。
【0015】
端子接続部11は、円筒形状を有しており、有底の端子挿入孔111を有している。この端子挿入孔111は、入口E側から相手方端子100が挿入される穴である。端子挿入孔111は、中心軸CAに沿って延在するように形成されており、当該端子挿入孔111の内部には、上記のばね部材20及びキャップ部材30が収納されている。本実施形態における端子挿入孔111が本発明における「端子挿入孔」の一例に相当する。
【0016】
電線接続部12においても、中心軸CAに沿って延在するように電線挿入孔121が形成されている。この電線挿入孔121は、電線接続部12の端部で開口していると共に、電線の導体部の外径に応じた内径を有している。この電線挿入孔121に電線を挿入した状態で、電線接続部12を外側から加締めて電線接続部12と電線とを圧着することで、電線が電線接続部12に接続される。
【0017】
端子接続部11の端子挿入孔111は、入口部111aと、大径部111bと、小径部111cと、を有している。入口部111a、大径部111b及び小径部111cは、端子挿入孔111の中心軸CAに沿ってこの順に並んでおり、入口部111aの中心軸と、大径部111bの中心軸と、小径部111cの中心軸は、いずれも、端子挿入孔111の中心軸CAと実質的に一致している。
【0018】
入口部111aは、端子接続部11の先端に配置されており、一端がベース部材10の外部に開口しているのに対し、他端が大径部111bと接続されている。この入口部111aは、端子挿入孔111において最も大きな内径を有している。また、図3に示すように、入口部111aの直径はキャップ部材30の外径と略一致しており、この入口部111aには、キャップ部材30が配置されている。
【0019】
大径部111bは、図4に示すように、円筒形状を有しており、一端が入口部111aと接続されていると共に、他端が小径部111cと接続されている。この大径部111bは、入口部111aの内径よりも小さい内径を有していると共に、小径部111cの内径よりも大きい内径を有している。また、図3に示すように、大径部111bは、ばね部材20を収容可能な直径を有しており、この大径部111bには、ばね部材20が配置されている。
【0020】
大径部111bは、当該大径部111bと入口部111aとの間に係止壁112を有している。キャップ部材30は、この係止壁112によって端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)への移動が制限されている。
【0021】
大径部111bの内周面には、溝114が形成されている。本実施形態では、この溝114は、大径部111bの内周面の全周に亘って連続的に形成されている。この溝114は、ばね部材20のばね片26(後述)に対応する位置に設けられており、ばね片26と対向している。この溝114の幅方向(Y方向)断面における断面形状が台形となっている。そして、この溝114は、当該溝114における端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)の端部がばね片26の根元部271と実質的に一致するように、大径部111bの内周面に形成されている。本実施形態における溝114が、本発明における「溝」の一例に相当する。
【0022】
端子挿入孔111の内部に泥などの異物が入っても異物が溝114に収容され、異物によるばね片26の弾性変形の阻害を抑制できる。また、溝114を大径部111bの内周面の全周に亘って連続的に形成することで、溝114が収容可能な異物の量を増やすことができ、ばね片26の弾性変形の阻害の発生をより抑制できる。また、溝114をばね片26の根元部261に対向させることで、根元部261の近傍の異物が溝に収容され、ばね片26の弾性変形の阻害の発生をより抑制できる。
【0023】
なお、この溝114は、大径部111bの内周面の周方向(後述の環状部21の周方向Dと同一の方向)に沿って間欠的に形成されていてもよい。一例を挙げれば、大径部11bの内周面においてばね片26と対向する位置のみに溝114が形成されていてもよい。また、この溝114の断面形状も、上述した台形に限定されず、矩形や半円形等であってもよい。さらに、溝114がばね片26に対向していれば、当該溝114の形成位置もばね片26の根元部261に対向する位置に限定されない。
【0024】
小径部111cは、図4に示すように、有底の円筒形状を有しており、一端が大径部111bと接続されていると共に、他端が底面115により閉塞されている。この小径部111cは、大径部111bの内径よりも小さい内径を有している。また、特に限定されないが、本実施形態では、底面115は、中心軸CAに近いほど端子挿入孔111の入口Eから離れていくように傾斜している。
【0025】
小径部111cは、大径部111bとの間に係止壁113を有している。ばね部材20は、この係止壁113によって端子挿入孔111の奥側(+Y方向側)への移動が制限されている。
【0026】
また、端子接続部11は、端子挿入孔111の小径部111cで開口するドレイン孔116を有している。ドレイン孔116は、小径部111cの内周面から端子接続部11の外周面まで貫通している貫通孔であり、小径部111cの内周面において底面115と隣接する位置に形成されている。
【0027】
ばね部材20は、金属材料等の導電性を有する材料から構成されており、図6に示すように、有端の円筒形状を有している。ここで、「有端円筒形状」とは、円筒の周壁の一部が当該円筒の軸方向に沿って切断されており、当該円筒の周方向において不連続となる端部を有している形状を意味する。本実施形態では、ばね部材20は、当該ばね部材20の中心軸CAに沿った方向に、スリット20aにより切断されている。ばね部材20は、端子挿入孔111の内部に配置される前には、大径部111bの内径よりも大きな外径を有している。このばね部材20は、スリット20aの幅を狭めて外径を小さくした状態で端子挿入孔111に挿入され、端子挿入孔111の内部においてばね部材20が外側に広がることで、ばね部材20の第1~第4の突起211,212,221,222(後述)がベース部材10の大径部111bに当接する。これにより、ベース部材10に対するはね部材20の十分な接触圧力を確保することができる。
【0028】
このばね部材20は、第1~第3の環状部21~23と、第1及び第2の連結部24,25と、ばね片26,27と、第1の環状部21の外周面に形成された第1及び第2の突起211,212と、第2の環状部22の外周面に形成された第3及び第4の突起221,222と、を備えている。本実施形態では、例えば、金属製の平板を打ち抜き加工やプレス加工等により加工した後に円筒状に丸めることで形成されており、これにより、第1~第3の環状部21~23と、第1及び第2の連結部24,25と、ばね片26,27と、が一体的に形成されている。
【0029】
本実施形態における第1の環状部21が本発明における「第1の支持部」の一例に相当し、本実施形態における第2の環状部22が本発明における「第2の支持部」の一例に相当する。また、本実施形態におけるばね片26が本発明における「第1のばね片」の一例に相当し、本実施形態におけるばね片27が本発明における「第2のばね片」の一例に相当する。また、本実施形態における第1の突起212が本発明における「第1の突起」の一例に相当し、本実施形態における第2の突起212が本発明における「第2の突起」の一例に相当し、本実施形態における第3の突起221が本発明における「第3の突起」の一例に相当し、本実施形態における第4の突起222が本発明における「第4の突起」の一例に相当する。
【0030】
図5及び図6に示すように、第1~第3の環状部21,22,23は、スリット21a,22a,23aを有する有端の円環形状を有している。ここで、「有端円環形状」とは、円環の周壁の一部が当該円環の軸方向に沿って切断されており、当該円環の周方向において不連続となる端部を有している形状を意味する。同軸上に配置された第1~第3の環状部21,22,23は、スリット21a,22a,23aの幅を狭めて外径を小さくした状態で端子挿入孔111にそれぞれ挿入され、端子挿入孔111の内部においてスリット21a,22a,23aの幅を広げて外径を大きくすることで大径部111bの内周面に沿うようにして配置される。
【0031】
また、第1~第3の環状部21,22,23は同軸上に配置され、第1の環状部21よりも端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)に第2の環状部22が配置され、第1の環状部21よりも端子挿入孔111の入口E側(図中の-Y方向側)に第3の環状部23が配置されている。なお、第2の環状部22は、中心軸CAに沿って延在する複数(本例では4本)の第1の連結部24を介して第1の環状部21に連結され、第3の環状部23は、中心軸CAに沿って延在する複数(本例では4本)の第2の連結部25を介して、第1の環状部21と連結されている。また、第2の環状部22は小径部111cの係止壁113に接触し、第3の環状部23は入口部111aのキャップ部材30に接触しており、これによって、端子挿入孔111に収容されたばね部材20は、中心軸CA方向(図中Y方向)の移動が制限されている。
【0032】
第1の環状部21は、端子挿入孔111の大径部111bの内周面に沿うようにして設けられており、第1の環状部21には、複数(本例では12枚)のばね片26が設けられている。これらのばね片26は、第1の環状部21から第3の環状部23に向かって突出している。なお、ばね部材20が有するばね片26の数は特に上記に限定されない。また、第1の環状部21の外周面には、複数の突起211,212が設けられており、これら突起が大径部111bの内周面と当接している。
【0033】
図5及び図6に示すように、それぞれのばね片26は、第1の環状部21から端子挿入孔111の入口E側(図中の-Y方向側)に向かって突出する板状の形状を有している。このばね片26は、第1の環状部21と第3の環状部23との間に配置されている。また、このばね片26は、第1の環状部21に接続された根元部261と、端子挿入孔111の大径部111bの内周面から離れた自由端である先端部262と、を有している。また、それぞれのばね片26の幅は、根元部261から先端部262に向かって徐々に狭くなっており、ばね片26は、根元部261の幅に対して先端部262の幅が若干小さい先細形状を有している。本実施形態における先端部262が、本発明における「第1の先端部」の一例に相当する。
【0034】
複数のばね片26は、第1の環状部21の周方向Dに沿って並べられ、ばね部材20の径方向に沿って弾性変形することが可能となっている。それぞれのばね片26は、第1の環状部21に一端が支持されていると共に、端子挿入孔111の入口Eに近づくに従って中心軸CAに近づくように傾斜しており、対向する先端部262同士が互いに接近している。また、第1の環状部21によって一端が支持された複数のばね片26は、弾性変形によって中心軸CAから離れる方向に先端部262を変位させ、互いに接近する先端部262同士の間隔を押し広げることが可能となっている。
【0035】
このばね片26が、端子挿入孔111に挿入された相手方端子100(図3参照)と接触することで、ばね部材20が相手方端子100と電気的に接続される。すなわち、端子挿入孔111に相手方端子100が挿入された際に、ばね片26は、相手方端子100と接触し、当該相手方端子100によって中心軸CAから離れる方向に押圧されることで弾性変形する。これにより、ばね片26が相手方端子100と十分な接触圧力を確保した状態で接触し、ばね片26と相手方端子100が電気的に接続され、相手方端子100からばね片26に電流が流入する。
【0036】
本実施形態では、図5に示すように、第1の環状部21から突出するばね片26が自由端である先端部262を有し、上記のように中心軸CAに近づくように傾斜していることで、ばね片26と大径部111bとの間に間隙Gが形成されている。この間隙Gは、中心軸CAに沿った断面において、一方がばね片26及び大径部111bによって閉じられており、他方が開放されている。そして、このばね片26の先端部262が自由端となっていることで、当該先端部が固定端である場合と比較して、ばね片26の弾性力を小さくすることができ、相手方端子100の挿入に要する力の低減を図ることができる。
【0037】
また、それぞれのばね片26の先端部262は、中心軸CAから離れる方向に向かって湾曲する湾曲部262aを有している。このように、先端部262が湾曲部262aを有していることで、相手方端子100を端子挿入孔111に挿入する際に、相手方端子100が曲面状の湾曲部262aと接触して挿入が案内され、相手方端子100をスムーズに挿入することができる。そのため、相手方端子100の挿入に要する挿入力の低減を一層図ることができる。
【0038】
図6及び図7に示すように、第1の環状部21の外周面には、複数の第1及び第2の突起211,212が形成されている。複数の第1及び第2の突起211,212は、第1の環状部21の外周面から、ばね部材20の径方向外側に向かって突出しており、ベース部材10の大径部111bの内周面と接触している。この第1及び第2の突起211,212がベース部材10と接触していることで、相手方端子100(図3参照)からばね片26に流入した電流は、第1及び第2の突起211,212を通過してベース部材10に流入する。
【0039】
第1の突起211は、第1の環状部21の周方向Dに沿って間隔を空けて一列に並べられており、第1の突起211は、本実施形態では、ばね片26の根元部261の両端近傍に設けられている。また、第2の突起212は、第1の突起211よりも端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)において、第1の環状部21の周方向Dに沿って間隔を空けて一列に並べられており、さらに第2の突起212は、第1の突起211に対して第1の環状部21の周方向Dにずれた位置に設けられている。
【0040】
より具体的には、第1の突起211は、相互に隣り合うばね片26の間に配置されており、相互に隣り合う第1の突起211は、ばね片26の仮想中心線CLに対して線対称に配置されている。また、第2の突起212は、ばね片26の仮想中心線CL上近傍に配置されている。なお、仮想中心線CLとは、ばね片26を2等分すると共に、当該ばね片26の長手方向に沿って延在する仮想上の直線である。
【0041】
すなわち、第1及び第2の突起211,212を中心軸CAに沿って仮想平面(不図示)上に投影した場合に、第1及び第2の突起211,212は相互に一致せず、かつ、第1及び第2の突起211,212は交互に略等間隔で円周上に並ぶように配置されている。なお、上記の仮想平面とは、中心軸CA(図中のY方向)に対して実質的に直交する仮想上の平面であり、図中のXZ平面に相当する。
【0042】
本実施形態のように、第1の環状部21の外周面に形成された第1及び第2の突起211,212を、中心軸CAに沿ってずれて配置すると共に、周方向Dに沿って相互にずれて配置することで、ばね片26の近傍に位置する突起数を増加できる。そして、ばね片26に流入した電流は、ばね片26の近傍の突起を介してベース部材10に流れ込む。ベース部材10に対する第1及び第2の突起211,212の接触圧力は、第1の環状部21の真円度、第1及び第2の突起211,212の高さのばらつき、及び、ばね片26の弾性変形に起因する第1の環状部21の撓み等の影響を受けて、均等でなくなる場合がある。しかしながら、本実施形態のように、第1及び第2の突起211,212が、第1の環状部21の周方向Dに沿って相互にずれて配置されていることで、一部の第1及び第2の突起211,212で上記接触圧力が不十分となったとしても、残りの第1及び第2の突起211,212に向かって電流が流れる。そのため、端子1の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
また、第1の突起211が、ばね片26の根元部261の両端近傍に設けられていることで、ばね片26を流れる電流が、一方の第1の突起211に向かって流れる電流と、他方の第1の突起211に向かって流れる電流と、第2の突起212に向かって流れる電流と、に分配され、ばね部材20において電流の集中(電流密度の増加)がより生じ難くなる。そのため、端子1の温度上昇をより抑制することができる。
【0044】
また、第1の突起211は、相互に隣り合うばね片26の間に配置されていることで、1つの第1の突起211が隣り合うばね片26それぞれの近傍に位置することとなる。すなわち、ばね片26の近傍に2つの第1の突起211を配置できる。この場合、突起を狭ピッチで配置する必要がないので、ばね部材の加工が容易になる。
【0045】
また、特に、隣り合う第1の突起211が、上記の仮想中心線CLに対して線対称に設けられていることで、電流が略均等に分配され、いずれか一方の第1の突起211に電流が集中し難くなる。また、第1の突起211よりも端子挿入孔111の奥側に位置する第2の突起212が、上記の仮想中心線CL上近傍に設けられていることで、2つの第1の突起と1つの第2の突起に電流が分配され、いずれかの突起に電流が集中し難くなる。そのため、端子1の温度上昇をより抑制することができる。
【0046】
ばね部材20の第2の環状部22は、上述の第1の環状部21と同様に、大径部111bの内周面に沿って設けられており、第2の環状部22には、複数(本例では12枚)のばね片27が設けられている。これらのばね片27は、第2の環状部22から第1の環状部21に向かって突出している。なお、ばね部材20が有するばね片27の数は特に上記に限定されない。また、第2の環状部22の外周面には、複数の第3及び第4の突起221,222が設けられており、これら突起が大径部111bの内周面と当接している。
【0047】
図5及び図6に示すように、それぞれのばね片27は、第2の環状部22から端子挿入孔111の入口Eに近づく方向(図中の-Y方向)に向かって突出する板状の形状を有している。このばね片27は、第2の環状部22に接続された根元部271と、端子挿入孔111の大径部111bの内周面から離れた自由端である先端部272と、を有している。本実施形態における先端部272が、本発明における「第2の先端部」の一例に相当する。
【0048】
本実施形態において、ばね片27の外形は、ばね片26の外形と同一となっている。また、この先端部272は、先端部262と同様に、中心軸CAから離れる方向に向かって湾曲する湾曲部272aを有している。
【0049】
複数のばね片27は、第2の環状部22の周方向に沿って並べられ、ばね片26と同様に、ばね部材20の径方向に沿って弾性変形することが可能となっている。それぞれのばね片27は、第2の環状部22に一端が支持されていると共に、端子挿入孔111の入口Eに近づくに従って中心軸CAに近づくように傾斜しており、対向する先端部272同士が互いに接近している。また、第2の環状部22によって一端が支持された複数のばね片27は、弾性変形によって中心軸CAから離れる方向に先端部272を変位させ、互いに接近する先端部272同士の間隔を押し広げることが可能となっている。
【0050】
このばね片27は、ばね片26と同様に、端子挿入孔111に挿入された相手方端子100(図3参照)と接触し、これによって、はね部材20が相手方端子100と電気的に接続される。すなわち、端子挿入孔111に相手方端子100が挿入された際に、このばね片27は、相手方端子100と接触し、当該相手方端子100によって中心軸CAから離れる方向に押圧されることで弾性変形する。これにより、ばね片27が相手方端子100と十分な接触圧力を確保した状態で接触し、ばね片27と相手方端子100が電気的に接続され、相手方端子100からばね片27に電流が流入する。
【0051】
本実施形態では、図5に示すように、第2の環状部22から突出するばね片27が自由端である先端部272を有し、上記のように中心軸CAに近づくように傾斜していることで、ばね片27と大径部111bとの間に間隙Gが形成されている。この間隙Gは、中心軸CAに沿った断面において、一方がばね片27及び大径部111bによって閉じられており、他方が開放されている。そして、このばね片27の先端部272が自由端となっていることで、当該先端部が固定端である場合と比較して、ばね片27の弾性力を小さくすることができ、相手方端子100の挿入に要する力の低減を図ることができる。また、ばね片27の先端部272が、ばね片26の先端部262よりも端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)に設けられ、それぞれの先端部262,272が中心軸CA方向にずれて配置されているため、それぞれのばね片26,27における相手方端子100の挿入力のピークを相互にずらすことができ、相手方端子100の挿入に要する力を小さく抑えることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、図7に示すように、ばね片27の仮想中心線CLは、ばね片26の仮想中心線CLと一致している。すなわち、ばね片26,27の仮想中心線CL,CLを中心軸CAに沿って仮想平面(不図示)上に投影した場合に、ばね片26,27の仮想中心線CL,CLは相互に一致している。なお、ばね片26とばね片27の周方向Dに沿った相対的な位置関係は、上記実施形態に限定されることはなく、ばね片26の仮想中心線CLとばね片27の仮想中心線CLが一致していなくてもよい。
【0053】
図6及び図7に示すように、第2の環状部22の外周面には、第1の環状部21と同様に、複数の第3及び第4の突起221,222が形成されている。第3及び第4の突起221,222は、第2の環状部22の外周面から、ばね部材20の径方向外側に向かって突出しており、ベース部材10の大径部111bの内周面と接触している。この第3及び第4の突起221,222がベース部材10と接触していることで、相手方端子100(図3参照)からばね片27に流入した電流は、第3及び第4の突起221,222を通過してベース部材10に流入する。
【0054】
第3の突起221と第4の突起222の相対的な位置関係は、第1の突起211と第2の突起212の相対的な位置関係と同様である。第3の突起221は、第1の突起211と同様に、第2の環状部22の周方向(第1の環状部21と同一の方向D)に沿って間隔を空けて一列に並べられており、第3の突起221は、本実施形態では、ばね片27の根元部271の両端近傍に設けられている。また、第4の突起222は、第3の突起221よりも端子挿入孔111の奥側(図中の+Y方向側)において、第2の環状部22の周方向に沿って間隔を空けて一列に並べられており、さらに第4の突起222は、第3の突起221に対して第2の環状部22の周方向にずれた位置に設けられている。
【0055】
より具体的には、第3の突起221は、相互に隣り合うばね片27の間に配置されており、相互に隣り合う第3の突起221は、ばね片27の仮想中心線CLに対して線対称に配置されている。また、第4の突起222は、ばね片27の仮想中心線CL上近傍に配置されている。なお、仮想中心線CLとは、ばね片27を2等分すると共に、当該ばね片27の長手方向に沿って延在する直線である。
【0056】
すなわち、第3及び第4の突起221,222を中心軸CAに沿って仮想平面(不図示)上に投影した場合に、第3及び第4の突起221,222は相互に一致しておらず、かつ、第3及び第4の突起221,222は交互に略等間隔で円周上に並ぶように配置されている。また、第1から第4の突起211,212,221,222をばね部材20の中心軸CAに沿って仮想平面(不図示)上に投影した場合に、本実施形態では、第1の突起211と第3の突起221は相互に一致し、第2の突起212と第4の突起222は相互に一致している。なお、上記実施形態に限定されることはなく、第1の突起211と第3の突起221は相互に一致していなくてもよいし、第2の突起212と第4の突起222は相互に一致していなくてもよい。
【0057】
本実施形態では、第2の環状部22の外周面において、第3及び第4の突起221,222が、上記のように配置されていることで、第1及び第2の突起211,212と同様に、ばね片27に流入した電流が、各突起221,222に向かって流れる電流に分配され、電流の集中を抑制することができる。そのため、端子1の温度上昇を抑制することができる。
【0058】
図3及び図5に示すように、本実施形態におけるキャップ部材30は、開口31を有する円環状の部材であり、端子接続部11の入口部111aに嵌合している。この開口31の中心軸は、端子挿入孔111の中心軸CAと実質的に一致している。このキャップ部材30は、加締め等によりベース部材10に固定されている。そして、ばね部材20は、このキャップ部材30によって端子挿入孔111の入口E側(図中-Y方向)への移動が制限されており、当該ばね部材20がキャップ部材30と端子挿入孔111の係止壁113との間に挟まれることで固定されている。また、キャップ部材30の入口E側の端部には、テーパ面32が開口31の全周に亘って形成されており、このテーパ面32によって端子挿入孔111への相手方端子100の挿入作業の容易化が図られている。
【0059】
以上に説明した端子1と相手方端子100とは、以下のように接続される。
【0060】
相手方端子100が端子挿入孔111の入口Eから挿入されると、先ず、相手方端子100はばね片26の先端部262と接触する。このばね片26は、相手方端子100によって押圧されることによって、中心軸CAから離れる方向(径方向外側)に向かって変位する。この押圧によって、相手方端子100がばね片26と電気的に接続される。
【0061】
相手方端子100が端子挿入孔111のさらに奥側(+Y方向側)に挿入されると、次に、相手方端子100はばね片27の先端部272と接触する。このばね片27も、ばね片26と同様に、相手方端子100によって押圧されることによって、中心軸CAから離れる方向に向かって変位する。この押圧によって、相手方端子100がばね片27と電気的に接続される。
【0062】
相手方端子100が端子挿入孔111のさらに奥側(+Y方向側)に挿入されると、当該相手方端子100は、ばね片26,27によって周囲から押圧された状態で安定して保持される。ここで、上述のように、第1~第4の突起211,212,221,222が大径部111bの内周面と当接していることで、ばね部材20がベース部材10に電気的に接続されている。このため、ばね片26,27が相手方端子100と電気的に接続されることで、相手方端子100がばね部材20を介してベース部材10と電気的に接続され、結果的に、端子1を介して相手方端子100が電線と電気的に接続される。
【0063】
この際、本実施形態では、ばね片26,27の先端部262,272が自由端となっていることで、当該先端部が固定端である場合と比較して、当該ばね片26,27の弾性力を小さくすることができ、相手方端子100の挿入力の低減を図ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、ばね片26とばね片27とが軸方向に沿って並べられているため、相手方端子100とばね片27との接触開始のタイミングと、相手方端子100とばね片26との接触開始のタイミングとが相互にずれている。これによって、ばね片26,27による相手方端子100の挿入力のピークを相互にずらすことができるため、相手方端子100の挿入力を小さく抑えることができる。
【0065】
また、ばね片26とばね片27は、個別の第1及び第2の環状部21,22に設けられているため、電流の集中を抑制することができ、ばね部材20の発熱を抑制することができる。これに対して、1つの環状部の前後両端にばね片を設けた場合には、当該環状部に電流が集中し、ばね部材の発熱が生じてしまう。
【0066】
また、本実施形態では、ばね片26が第1の環状部21から端子挿入孔111の入口Eに向かって突出しているので、入口E近傍での相手方端子100との接触を確保することができる。自動車用充電装置などでは、プラグ型コネクタは、電源端子(相手方端子100)と、棒状の通信端子(不図示)と、を備えており、レセプタクル型コネクタは、電源端子と嵌合可能な電源ソケット(端子1)と、通信端子と嵌合可能な通信ソケット(不図示)と、を備えている。このような充電装置は、通信端子が通信ソケットから抜かれると電力を供給しないように構成されている。そして、相手方端子100が端子1から抜かれた状態で電力供給される誤動作を防止するため、通信端子が通信ソケットから抜かれた後に相手方端子100と端子1との接続を解除させる必要がある。この点について、本実施形態の端子1は、ばね片26が入口E近傍まで延出し、相手方端子100との接触がより長く確保されているので、通信端子が通信ソケットから抜かれた後に相手方端子100と端子1との接続を解除させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、端子挿入孔111の大径部111bの内周面に、円環状の溝114が形成されており、この溝114は、ばね片26に対応するように設けられている。このため、外部から侵入した異物がばね片26の根元部261と端子挿入孔111の内周面との間に入り込んでも、この溝114の内部に当該異物を収容することで、ばね片26の弾性変形が異物により阻害されるのを防止することができる。従って、本実施形態では、相手方端子100との嵌合作業の作業性を向上することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ベース部材10が、端子挿入孔111から当該ベース部材10の外側に貫通するドレイン孔116を有しており、当該ドレイン孔116は、ばね部材20よりも端子挿入孔111の奥側に配置されている。このため、このドレイン孔116を介して、端子挿入孔111の内部から異物を排出することができる。特に、端子接続部11が上側になるように端子1を傾けて使用する場合には、重力を利用して端子挿入孔111の内部からこのドレイン孔116を介して外部に異物を効果的に排出することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1及び第2の環状部21,22の外周面に、ばね部材20の径方向外側に向かって突出する複数の突起211,212,221,222が設けられている。そして、複数のばね片26,27のそれぞれの近傍に、少なくとも一つの突起が配置されている。このため、相手方端子からばね片26,27に流入した電流は、ばね片26,27の近傍の突起を介してベース部材10に流れる。従って、本実施形態では、ばね部材20における電流の集中が生じ難く、端子1の温度上昇を抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、第1の環状部21の外周面に設けられた第1及び第2の突起211,212が、第1の環状部21の周方向Dに沿って相互にずれて配置されていることで、ばね片26に流入した電流が第1及び第2の突起211,212に向かって分配され、ばね部材20において電流の集中がより生じ難くなる。同様に、第2の環状部22の外周面に設けられた第3及び第4の突起221,222が、第1の環状部22の周方向Dに沿って相互にずれて配置されていることで、ばね片27に流入した電流が第3及び第4の突起211,212に向かって分配され、ばね部材20において電流の集中がより生じ難くなる。これにより、端子1の温度上昇をより抑制することができる。
【0071】
第1及び第2の環状部21,22の外周面に設けられた複数の突起は、複数のばね片26,27のそれぞれの近傍に少なくとも一つ配置され、好ましくは、複数のばね片26,27のそれぞれの近傍に複数配置される。複数の突起の変形例として、例えば、第1の環状部21において、周方向に沿って一列に並んだ複数の第1の突起211のみが配置され、第2の環状部22において、周方向に沿って一列に並んだ複数の第3の突起221のみが配置されてもよい。また、複数の突起の他の変形例として、例えば、第1の環状部21において、第1及び第2の突起211,212が互いにずらさずに配置され、第2の環状部22において、第3及び第4の突起221,222が互いにずらさずに配置されてもよい。
【0072】
本実施形態のように、第1の環状部21に複数の第1及び第2の突起211,212を配置するとともに、第1及び第2の突起211,212を互いにずらして配置した場合の効果を、図8(a)及び図8(b)を参照して具体的に説明する。図8(a)は、本実施形態における第1及び第2の突起211,212を説明する図であり、図8(b)は、第1及び第2の突起を互いにずらさずに配置した変形例を説明する図である。
【0073】
例えば、第1の環状部21,21’に、端子挿入孔111の大径部111bの内周面に沿わない部分が生じた場合、当該部分に位置する第1及び第2の突起では、大径部111bの内周面と十分な接触圧力を確保できず、電気抵抗が高くなって電流が流れ難くなってしまう。図8(a)は、本実施形態において、ばね片26bの近傍の2つの突起211c,212bで、大径部111bの内周面との接触圧力が不十分となっている状態を示している。図8(b)は、変形例において、ばね片26b’の近傍の2つの突起211b’212b’で、大径部111bの内周面との接触圧力が不十分となっている状態を示している。
【0074】
図8(a)に示す本実施形態では、ばね片26aの近傍に、2つの第1の突起211a,211bと1つの第2の突起212aが配置され、ばね片26bの近傍に、2つの第1の突起211b,211cと1つの第2の突起212bが配置されている。このため、ばね片26aと相手方端子100(図3参照)との接点Paを通過してばね片26aに流入した電流は、ばね片26aの根元部261aの両端近傍に設けられた第1の突起211a,211bを通過してベース部材10に流れ込む電流Ia1,Ia3と、第2の突起212aを通過してベース部材10に流れ込む電流Ia2とに分配されることとなる(I=Ia1+Ia2+Ia3)。また、ばね片26bと相手方端子100(図3参照)との接点Pbを通過してばね片26bに流入した電流Iは、ばね片26bの近傍の第1の突起211bを通過してベース部材10に流れ込むこととなる。すなわち、電流Iが流れ込む第1の突起211bには、分配された電流Ia3が流れ込むので、電流の集中をより抑制することができ、端子1の温度上昇をより抑制することができる。また、大径部111bの内周面との接触圧力が十分な第1の突起211bがばね片26bの近傍にあるので、高電気抵抗の突起211c,212bへの電流Iの流れ込みをより抑制でき、端子1の温度上昇をより抑制することができる。
【0075】
一方、図8(b)に示す変形例では、ばね片26a’の近傍に、1つの第1の突起211a’と1つの第2の突起212a’が配置され、ばね片26bの近傍に、1つの第1の突起211b’と1つの第2の突起212bが配置されている。このため、ばね片26a’と相手方端子100(図3参照)との接点Pa’を通過して相手方端子からばね片26a’に流入した電流Iは、ばね片26a’に最も近い第1の突起211a’を通過してベース部材10に流れ込むこととなる。また同時に、ばね片26b’と相手方端子100(図3参照)との接点Pb’を通過して相手方端子からばね片26b’に流入した電流Iの殆どが、第1の突起211a’を通過してベース部材10に流れ込むこととなる。すなわち、図8(a)の本実施形態と比較して、1つの第1の突起211a’に電流I及び電流Iが集中しやすくなってしまう。そのため、ばね部材における電流密度が部分的に高くなってしまい、図8(a)の本実施形態と比較して、ばね部材の一部に発熱が生じてしまう場合がある。また、大径部111bの内周面との接触圧力が十分な突起がばね片26b’から離れていると、電流Iの一部が、ばね片26b’の近傍にある高電気抵抗の突起211b’にも流れ込んでしまい、図8(a)の本実施形態と比較して、ばね部材の一部に発熱が生じてしまう場合がある。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0077】
例えば、上記実施形態において、ばね部材20には、軸方向に沿って2列のばね片26,27が設けられているがこれに限定されない。ばね片は3列以上設けられていてもよく、例えば、ばね片が軸方向に沿って3列又は4列で設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…端子
10…ベース部材
11…端子接続部
111…端子挿入孔
E…入口
111a…入口部
111b…大径部
111c…小径部
112,113…係止壁
114…溝
115…底面
CA…中心軸
116…ドレイン孔
12…電線接続部
121…電線挿入孔
20…ばね部材
20a…スリット
21~23…第1~第3の環状部
21a~23a…スリット
211,211a~211c…第1の突起
212,212a,212b…第2の突起
221…第3の突起
222…第4の突起
24,25…第1,第2の連結部
26,26a,26b…ばね片
261…根元部
262…先端部
CL…仮想中心線
262a…湾曲部
27…ばね片
271…根元部
272…先端部
272a…湾曲部
CL…仮想中心線
,G…間隙
30…キャップ部材
31…開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8