(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】回路遮断器、分電盤、及び、コイルユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 73/18 20060101AFI20240326BHJP
H01H 9/46 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01H73/18 A
H01H9/46
(21)【出願番号】P 2022577021
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045110
(87)【国際公開番号】W WO2022158154
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021006878
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中道 義也
(72)【発明者】
【氏名】毛 翔
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-152286(JP,U)
【文献】米国特許第4654614(US,A)
【文献】実開昭58-183753(JP,U)
【文献】実開昭56-135649(JP,U)
【文献】国際公開第2014/167605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/18
H01H 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点及び可動接点からなる接点部を開極する回路遮断器であって、
コイルユニットを備え、
前記コイルユニットは、
前記短絡電流を検知するためのコイルと、
前記コイルの一方の端部が接続される第一端子と、
前記コイルの他方の端部が接続される、前記固定接点を含む第二端子とを備え、
前記第一端子は、
外部電路に接続される端子部と、
前記接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部とを備える
回路遮断器。
【請求項2】
前記端子部、前記アーク走行部、及び、前記第二端子は、前記コイルの軸に沿う方向において、この順に並んでいる
請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記第一端子は、さらに、前記端子部及び前記アーク走行部を連結する長尺状の連結部を備え、
前記端子部は、前記連結部の一方の端部に接続され、
前記アーク走行部は、前記連結部の他方の端部に接続され、前記連結部の前記他方の端部から前記連結部の前記一方の端部に向かって延在している
請求項1または2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記端子部、及び、前記アーク走行部は、一体形成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記アーク走行部は、線材によって形成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回路遮断器と、
前記回路遮断器を収容する筐体とを備える
分電盤。
【請求項7】
負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点及び可動接点からなる接点部を開極する回路遮断器に用いられるコイルユニットであって、
前記短絡電流を検知するためのコイルと、
前記コイルの一方の端部が接続される第一端子と、
前記コイルの他方の端部が接続される、前記固定接点を含む第二端子とを備え、
前記第一端子は、
外部電路に接続される端子部と、
前記接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部とを備える
コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器に用いられるコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
短絡電流などの異常電流を検知して、負荷及び電源を接続する回路を遮断する回路遮断器が知られている。特許文献1には、部品数の増加を抑え、かつ、ハンドルに対してリンク部材の位置を規制することの可能な回路遮断器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接点部周辺の構造が簡素化された回路遮断器等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る回路遮断器は、負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点及び可動接点からなる接点部を開極する回路遮断器であって、コイルユニットを備え、前記コイルユニットは、前記短絡電流を検知するためのコイルと、前記コイルの一方の端部が接続される第一端子と、前記コイルの他方の端部が接続される、前記固定接点を含む第二端子とを備え、前記第一端子は、外部電路に接続される端子部と、前記接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部とを備える。
【0006】
本発明の一態様に係る分電盤は、前記回路遮断器と、前記回路遮断器を収容する筐体とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係るコイルユニットは、負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点及び可動接点からなる接点部を開極する回路遮断器に用いられるコイルユニットであって、前記短絡電流を検知するためのコイルと、前記コイルの一方の端部が接続される第一端子と、前記コイルの他方の端部が接続される、前記固定接点を含む第二端子とを備え、前記第一端子は、外部電路に接続される端子部と、前記接点部の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッドに対向配置されるアーク走行部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接点部周辺の構造が簡素化された回路遮断器等が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る回路遮断器の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す第一の図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す第二の図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係るコイルユニットの内部構造を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るコイルユニットの第一の外観斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るコイルユニットの第二の外観斜視図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係るコイルユニットの正面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るコイルユニットの第一の外観斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るコイルユニットの第二の外観斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るコイルユニットの正面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る分電盤の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0012】
また、以下の実施の形態で説明に用いられる図面においては座標軸が示される場合がある。Z軸方向プラス側は、上側(上方)と表現され、Z軸方向マイナス側は、下側(下方)と表現される場合がある。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に垂直な平面上において、互いに直交する方向である。
【0013】
(実施の形態)
[回路遮断器の構成]
以下、実施の形態に係る回路遮断器について説明する。
図1は、実施の形態に係る回路遮断器の外観斜視図である。
図2及び
図3は、実施の形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
図1及び
図2は、接点部11(
図3に図示)が開極状態であるときの回路遮断器10を示しており、
図3は、接点部11が閉極状態であるときの回路遮断器10を示している。
【0014】
回路遮断器10は、分電盤などに使用され、負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする装置である。回路遮断器10の差込口21には、負荷に接続された電線の端部が差し込まれ、当該端部は差込口21内に設けられた負荷側端子構造30に電気的に接続される。また、差込口21と反対側に位置する差込口22には、電源に接続された電線の端部が差し込まれ、当該端部は、差込口22に設けられた電源側端子構造70に電気的に接続される。
【0015】
回路遮断器10は、主として、筐体20と、負荷側端子構造30と、コイルユニット40と、開閉機構50と、バイメタル板60と、電源側端子構造70と、消弧装置80とを備える。以下、これらの各構成要素について具体的に説明する。
【0016】
筐体20は、負荷側端子構造30、コイルユニット40、開閉機構50、バイメタル板60、電源側端子構造70、及び、消弧装置80を収容する。筐体20は、図中のX軸方向を厚み方向として扁平な形状を有し、筐体20をX軸方向から見た形状は凸字状である。筐体20は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により形成される。
【0017】
負荷側端子構造30は、ねじ33の回動によって電線の端部が押圧固定される、いわゆるピラー端子(ねじ式端子)である。負荷側端子構造30は、筐体20内の差込口21の近傍に取り付けられる。負荷側端子構造30は、負荷側端子板31と、端子金具32と、ねじ33とを備える。
【0018】
負荷側端子板31は、角筒状の端子金具32内に位置する金属板である。コイルユニット40の第一端子47に含まれる端子部47aが、負荷側端子板31としても機能する。
【0019】
端子金具32は、Y軸方向に沿う筒軸を有する角筒状の構造体であり、金属材料によって形成される。ねじ33は、ねじ先が端子金具32のねじ孔にねじ込まれた状態で、筐体20内に収容される。
【0020】
電線の端部は、端子金具32と負荷側端子板31との間の空間に差し込まれる。ねじ33が回動されると、端子金具32は、ねじ33の頭側へ移動し、端子金具32と負荷側端子板31との間の空間が狭くなる。これにより、電線の端部は、端子金具32と負荷側端子板31とによって挟持される。
【0021】
コイルユニット40は、短絡電流などの異常電流を検知したときに、開閉機構50を駆動することによって接点部11を開極させる。
図4は、コイルユニット40の内部構造(コイルボビン42内の構造)を示す図である。コイルユニット40は、具体的には、コイル41と、コイルボビン42と、固定プランジャ43と、可動プランジャ44と、コイルばね45と、プッシングピン46と、第一端子47と、第二端子48とを備える。
【0022】
コイル41は、巻回軸がY軸方向に沿うようにコイルボビン42に巻き付けられた電線である。コイル41は、負荷及び電源の短絡電流を検知するために用いられる。コイル41の一方の端部は、第一端子47に電気的及び構造的に接続され、コイル41の他方の端部は、第二端子48に電気的及び構造的に接続される。コイルボビン42は、Y軸方向に沿う筒軸を有する円筒状の構造体であり、筐体20に取り付けられている。
【0023】
固定プランジャ43及び可動プランジャ44は、コイルボビン42内に位置する。
図4に示されるように、固定プランジャ43は、コイルボビン42のY軸方向プラス側に固定されている。可動プランジャ44は、固定プランジャ43よりもY軸方向マイナス側に位置し、固定プランジャ43及び可動プランジャ44の間には、コイルばね45が位置する。可動プランジャ44は、コイルボビン42内をY軸方向に沿って移動することが可能である。可動プランジャ44は、通常時には、コイルばね45の弾性力によってコイルボビン42内のY軸方向マイナス側に位置している。固定プランジャ43及び可動プランジャ44は、磁性材料によって形成される。
【0024】
プッシングピン46は、固定プランジャ43に設けられた開口に挿入され、Y軸方向マイナス側の端部が可動プランジャ44に固定されており、可動プランジャ44と一体的に動く。プッシングピン46及び可動プランジャ44は、コイル41に短絡電流が流れることで生じる電磁力により、コイルばね45の弾性力に抗してY軸方向プラス側に移動し、開閉機構50の第一アーム52aをY軸方向プラス側に押し出す。これにより、接点部11が開極される。接点部11が開極されると短絡電流が停止し、コイルばね45の弾性力により、可動プランジャ44及びプッシングピン46は元の位置に戻る。
【0025】
第一端子47は、端子部47a、アーク走行部47b、及び、連結部47cを備える。端子部47aは、負荷側端子板31として機能し、端子部47aには外部電路(具体的には、負荷側の電線)が接続される。アーク走行部47bは、消弧グリッド82と対向する。連結部47cは、端子部47a及びアーク走行部47bを連結する。
【0026】
第二端子48は、接点部11の固定接点48aを構成し、かつ、アーク走行板としても機能する端子である。
【0027】
開閉機構50は、相互に連動する、ハンドル51、第一リンク52、及び、第二リンク53を有する。開閉機構50は、ハンドル51をY軸方向マイナス側に倒す開操作(オフ操作)に応じて、接点部11を開極する。また、開閉機構50は、ハンドル51をY軸方向プラス側に倒す閉操作(オン操作)に応じて、接点部11を閉極する。
【0028】
ハンドル51は、開閉機構50のうちユーザによって操作される部分であり、筐体20の外部に露出している。ハンドル51は、Y軸方向マイナス側にトーションばね(図示せず)によって付勢されており、トーションばねの付勢力に抗してハンドル51がY軸方向プラス側に動かされるとハンドル51が保持される構造となっている。ハンドル51は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。
【0029】
第一リンク52は、上述のようにコイル41に短絡電流が流れたときにプッシングピン46によって押される第一アーム52a、及び、後述のように過電流が流れたときにバイメタル板60によって押される第二アーム52bを有する。ハンドル51がオンの位置で保持されているときに第一アーム52aまたは第二アーム52bが押されると保持が解除され、トーションばねの付勢力によりハンドル51はオフの位置に戻る。そして、第二リンク53が動き、接点部11が開極する。
【0030】
第二リンク53は、接点部11の可動接点を構成し、ハンドル51及び第一リンク52と連動する。上述のようにハンドル51がオンの位置である場合には、第二リンク53は第二端子48の固定接点48aに接触し、接点部11が構成される。ハンドル51がオフの位置である場合には、第二リンク53は第二端子48の固定接点48aから離れる。第二リンク53は、金属材料によって形成され、編組銅線61によってバイメタル板60と電気的に接続される。
【0031】
バイメタル板60は、過負荷による過電流を検知したときに、開閉機構50を駆動することによって、接点部11を開極させる。バイメタル板60は、長尺板状の部材であり、材料が異なる金属板の貼り合わせによって形成される。バイメタル板60は、例えば、自己発熱によって湾曲する直熱型であるが、ヒータによって加熱されることで湾曲する傍熱型であってもよい。
【0032】
バイメタル板60のY軸方向マイナス側の面の中央部には編組銅線61が接続され、バイメタル板60は編組銅線61によって第二リンク53に電気的に接続される。バイメタル板60のZ軸マイナス方向の端部には編組銅線62が接続され、バイメタル板60は、編組銅線62によって電源側端子板71に電気的に接続される。また、バイメタル板60のZ軸マイナス方向の端部にはアーク走行板81が接続され、バイメタル板60はアーク走行板81にも電気的に接続される。
【0033】
バイメタル板60に過電流が流れると、バイメタル板60の温度が上昇しバイメタル板60は湾曲する。この結果、バイメタル板60のZ軸プラス方向の端部は、Y軸方向プラス側に変位し、第二アーム52bをY軸方向プラス側に押し出す。これにより、接点部11が開極される。接点部11が開極されると過電流が停止し、バイメタル板60の温度が低下する。この結果、バイメタル板60は元の形状に戻る。
【0034】
電源側端子構造70は、ねじ73の回動によって電線の端部が押圧固定される、いわゆるピラー端子(ねじ式端子)である。電源側端子構造70は、筐体20内の差込口22の近傍に取り付けられる。電源側端子構造70は、電源側端子板71と、端子金具72と、ねじ73とを備える。
【0035】
電源側端子板71は、一方の端部(Y軸方向プラス側の端部)が角筒状の端子金具72内に位置し、他方の端部(Y軸方向マイナス側の端部)が編組銅線62を介してバイメタル板60及びアーク走行板81に電気的に接続される金属板である。電源側端子板71は、L字状に曲がった板状である。
【0036】
端子金具72は、Y軸方向に沿う筒軸を有する角筒状の構造体であり、金属材料によって形成される。ねじ73は、ねじ先が端子金具72のねじ孔にねじ込まれた状態で、筐体20内に収容される。
【0037】
消弧装置80は、接点部11の開極時に発生するアークを引き伸ばすと共に分断して消弧する。消弧装置80は、アーク走行板81と、消弧グリッド82とを備える。
【0038】
アーク走行板81は、長尺板状の金属部材(金属板)を折り曲げ加工することによって形成される。アーク走行板81は、筐体20の底壁に沿って配置される。アーク走行板81のY軸方向プラス側の端部は、バイメタル板60のZ軸方向マイナス側の端部に接続されている。アーク走行板81のY軸方向マイナス側の端部は、消弧グリッド82と対向する。
【0039】
消弧グリッド82は、Z軸方向に間隔を空けて配置された複数の消弧板と、複数の消弧板を指示する支持部とを備える。複数の消弧板は、金属材料によって形成される。支持部は、絶縁材料によって形成されている。なお、筐体20には、アークにより発生したガスを排出するための排出口23が設けられている。消弧装置80によって弱められたアークによって生じる電流は、アーク走行部47bを介して回路遮断器10内の電路に流れる。
【0040】
[コイルユニットの具体的構成]
次に、コイルユニット40の具体的構成、特に、第一端子47及び第二端子48の具体的構成について説明する。
図5及び
図6は、コイルユニット40の外観斜視図である。
図7は、コイルユニット40の正面図(X軸方向プラス側から見た図)である。
【0041】
コイルユニット40が備える第一端子47は、例えば、スズめっきが施された鉄材によって形成される。第一端子47は、上記鉄材の曲げ加工などによって形成される。
【0042】
第一端子47の厚みは、第二端子48の厚みよりも分厚い。後述のように、第一端子47は、負荷に接続された電線の端部が接続される端子部47aを含む。第一端子47の厚みが分厚いことで、電線を接続するために必要な第一端子47の強度が確保される。なお、第一端子47の厚みは、第二端子48の厚みよりも分厚いことは必須ではなく、第一端子47の厚みは第二端子48の厚みと同一であってもよいし、第一端子47の厚みは第二端子48の厚みよりも薄くてもよい。
【0043】
第一端子47は、端子部47aと、アーク走行部47bと、連結部47cとを備える。端子部47a、アーク走行部47b、及び、第二端子48は、Y軸方向において、この順に並んでいる。Y軸方向は、言い換えれば、コイル41の巻回軸に沿う方向である。
【0044】
端子部47aは、第一端子47のうち、負荷に接続された電線の端部(つまり、外部電路)に接続される部分である。端子部47aは、例えば、L字状に曲がった板状である。
【0045】
アーク走行部47bは、第一端子47のうち、消弧グリッド82に対向配置され、連結部47cよりも消弧グリッド82寄り(Z軸方向マイナス側)に位置する部分である。また、アーク走行部47bは、連結部47cよりもX軸方向プラス側に位置している。アーク走行部47bは、X軸方向プラス側から見た形状がL字状の部分である。なお、アーク走行部47bが連結部47cよりもX軸方向プラス側に位置することは必須ではなく、アーク走行部47bは、X軸方向における位置が連結部47cと同じであり、連結部47cのZ軸方向マイナス側(直下)に位置してもよい。
【0046】
アーク走行部47bは、連結部47cのY軸方向プラス側の端部に接続され、当該端部に接続された部分を起点として、当該端部からY軸方向マイナス側に向かって延在している。このようなアーク走行部47bの形状によれば、消弧グリッド82によって弱められたアークによって生じる電流は、Y軸方向マイナス側からプラス側へ流れ、この電流によって生じる電磁力がアークを消弧グリッド82側へ向かわせるので、アークの遮断性能が向上される。つまり、アーク走行部47bは、アークを消弧グリッド82側へ向かわせる電磁力が発生するように配置が工夫されている。
【0047】
連結部47cは、第一端子47のうち、端子部47aとアーク走行部47bとを連結する長尺板状の部分である。連結部47cは、Y軸方向を長手方向としており、連結部47cのY軸方向マイナス側の端部には、端子部47aが接続され、連結部47cのY軸方向プラス側の端部には、アーク走行部47bが接続される。
【0048】
第二端子48は、第一端子47と分離した端子であり、固定接点48aを含んでいる。第二端子48は、銅めっきが施された鋼板などの板状の金属材料に曲げ加工等を行うことにより形成される。固定接点48aは、第二端子48のY軸方向プラス側に設けられた円柱状の凸部である。
【0049】
一般的なコイルユニットでは、上記アーク走行部47bの機能を第二端子48に持たせることが多いが、コイルユニット40では、上記アーク走行部47bの機能を第一端子47に持たせることで、第二端子48の構造が簡素化される。一般的に、第一端子47の元となるスズめっきが施された鉄材は、第二端子48の元となる銅めっきが施された鋼板よりも低コストである。このため、第二端子48(接点部11の周辺の部材)の構造が簡素化されれば、コイルユニット40の低コスト化を図ることができる。
【0050】
[コイルユニットの変形例]
コイルユニット40が備える第一端子47においては、端子部47a、アーク走行部47b、及び、連結部47cは、一体形成されるが、第一端子47は、端子部47aとは別体のアーク走行部47b及び連結部47cを含む部材が端子部47aに取り付けられることで形成されてもよい。
図8及び
図9は、このような変形例に係るコイルユニットの外観斜視図である。
図10は、変形例に係るコイルユニットの正面図である。
【0051】
図8~
図10に示されるように、変形例に係るコイルユニット40dは、第一端子47dを備え、第一端子47dは、端子部47e、アーク走行部47f、及び、連結部47gを備える。
【0052】
端子部47eは、端子部47aと同様の構成であり、例えば、スズめっきが施された鉄材によって形成される。
【0053】
アーク走行部47f、及び、連結部47gは、U字状に湾曲された線材によって一体的に形成される。線材は、例えば、ニッケルメッキが施された鋼線であるが、特に限定されない。線材の直径は、例えば、1.6mm程度である。
【0054】
第一端子47dは、端子部47eに、上記線材が取り付けられることによって形成される。上記線材は、例えば、かしめ加工により端子部47eに取り付けられるが、溶接によって端子部47eに取り付けられてもよい。
【0055】
一般的に、上記線材は材料費が比較的安価である。したがって、コイルユニット40dは、低コストで製造できる利点がある。また、コイルユニット40dにおいては、アーク走行部47fを線材によって形成することで、アーク走行部47fの幅を容易に狭くすることができる。アーク走行部47fの幅が狭ければ、アークが広がることが抑制される(つまり、アークの走行性が向上される)のでアーク電圧を高めることができる。アーク電圧が高められれば、アークの遮断性が向上される。このように、コイルユニット40dは、回路遮断器10のアークの遮断性の向上を図ることができる。
【0056】
[分電盤の構成]
本発明は、回路遮断器10を備える分電盤として実現されてもよい。
図11は、実施の形態に係る分電盤の外観斜視図である。
【0057】
図11に示されるように、分電盤100は、筐体101を備え、筐体101の内部に回路遮断器10を少なくとも1つ備える。分電盤100は、回路遮断器10を複数備えてもよい。回路遮断器10は、分岐回路における負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする分岐ブレーカとして使用されてもよいし、主幹回路における負荷及び電源の電気的な接続をオン及びオフする主幹ブレーカとして使用されてもよい。なお、回路遮断器10は、上述のいずれのコイルユニットを備えていてもよい。
【0058】
このような分電盤100は、アークの遮断性が向上された分電盤として有用である。
【0059】
[効果等]
以上説明したように、回路遮断器10は、負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点48a及び可動接点からなる接点部11を開極する回路遮断器である。回路遮断器10は、接点部11の開極時に発生するアークを分断する消弧グリッド82と、コイルユニット40とを備える。コイルユニット40は、短絡電流を検知するためのコイル41と、コイル41の一方の端部が接続される第一端子47と、コイル41の他方の端部が接続される、固定接点48aを含む第二端子48とを備える。第一端子47は、外部電路に接続される端子部47aと、消弧グリッド82に対向配置されるアーク走行部47bとを備える。
【0060】
このような回路遮断器10は、アーク走行部47bが第一端子47に設けられることで、第二端子48の構造、つまり、接点部11周辺の構造が簡素化された回路遮断器10として有用である。例えば、第二端子48の材料が第一端子47の材料よりも高価である場合には、第二端子48の構造が簡素化されることにより、回路遮断器10の低コスト化が実現される。
【0061】
また、例えば、端子部47a、アーク走行部47b、及び、第二端子48は、コイル41の軸に沿う方向において、この順に並んでいる。
【0062】
このようなコイルユニット40の構成によれば、接点部11周辺の構造が簡素化される。
【0063】
また、例えば、第一端子47は、さらに、端子部47a及びアーク走行部47bを連結する長尺状の連結部47cを備える。端子部47aは、連結部47cの一方の端部に接続され、アーク走行部47bは、連結部47cの他方の端部に接続され、連結部47cの他方の端部から連結部47cの一方の端部に向かって延在している。
【0064】
このようなコイルユニット40の構成によれば、回路遮断器10は、アークを消弧グリッド82側へ向かわせる電磁力を発生させ得る。
【0065】
また、例えば、端子部47a、及び、アーク走行部47bは、一体形成されている。
【0066】
このように、コイルユニット40は、金属材料の曲げ加工などによって単一の部材から作製することができる。
【0067】
また、コイルユニット40dにおいては、アーク走行部47fは、線材によって形成されている。
【0068】
このように、コイルユニット40dは、線材によって実現することができる。
【0069】
また、分電盤100は、回路遮断器10と、回路遮断器10を収容する筐体101とを備える。
【0070】
このような分電盤100は、回路遮断器10内の接点部11周辺の構造が簡素化された分電盤100として有用である。
【0071】
また、コイルユニット40は、負荷及び電源の短絡電流を検知したときに固定接点48a及び可動接点からなる接点部11を開極する回路遮断器10に用いられるコイルユニットである。コイルユニット40は、短絡電流を検知するためのコイル41と、コイル41の一方の端部が接続される第一端子47と、コイル41の他方の端部が接続される、固定接点48aを含む第二端子48とを備える。第一端子47は、外部電路に接続される端子部47aと、消弧グリッド82に対向配置されるアーク走行部47bとを備える。
【0072】
このようなコイルユニット40は、アーク走行部47bが第一端子47に設けられることで、第二端子48の構造、つまり、回路遮断器10の接点部11周辺の構造を簡素化することができる。例えば、第二端子48の材料が第一端子47の材料よりも高価である場合には、第二端子48の構造が簡素化されることにより、回路遮断器10の低コスト化が実現される。
【0073】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0074】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法のいずれによって実現されてもよい。例えば、本発明は、回路遮断器、分電盤、または、コイルユニットの製造方法として実現されてもよい。
【0075】
その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10 回路遮断器
11 接点部
40、40d コイルユニット
41 コイル
47、47d 第一端子
47a、47e 端子部
47b、47f アーク走行部
47c、47g 連結部
48 第二端子
48a 固定接点
82 消弧グリッド
100 分電盤
101 筐体