(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】流体送給機構における回転シール機構およびロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
F16L 27/08 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F16L27/08 Z
(21)【出願番号】P 2023145559
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 諭
(72)【発明者】
【氏名】板橋 友喜
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261405(JP,A)
【文献】特開2014-009720(JP,A)
【文献】特開2014-016010(JP,A)
【文献】特開2014-025482(JP,A)
【文献】特開2000-230642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の回転流路が設けられた回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置してなり、2つの流体供給源から供給され供給圧と適正なシール面圧値との比が異なる2種類の流体を軸心廻りに回転する前記回転部の回転流路へ前記固定流路を介して選択的に送給する流体送給機構における回転シール機構であって、
前記回転部に設けられ側端面に前記回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、
前記固定流路が前記軸方向に貫通して形成された固定軸部を有し、一方側の側端面に前記固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、
前記固定部の本体を構成するハウジング部材に設けられ前記固定軸部が前記軸方向の移動が許容された状態で嵌合する嵌合孔と、
前記固定軸部を、前記嵌合孔に嵌合する軸径で設けられた大径部およびこの大径部よりも小さい軸径で前記第2のシール面側に近接して設けられた小径部に区分する段差部と、
前記嵌合孔に前記固定軸部が嵌合した状態において前記嵌合孔の内周面と前記小径部および大径部との間の隙間をそれぞれシールする第1の軸シール部および第2の軸シール部と、
前記第1の軸シール部および第2の軸シール部の間において前記小径部と前記嵌合孔の内周面との間の隙間に開孔し、前記隙間内に面圧調整流体を送給する加圧開孔と、
前記複数の流体供給源から前記複数種類の流体のうちのいずれかを前記嵌合孔内へ選択的に供給して前記固定流路を介して前記回転流路へ送給するとともに、前記加圧開孔に面圧調整用流体を送給する流体供給手段とを備え、
前記第2の軸シール部は、Oリングが当該Oリングの装着用溝に自由状態で装着され、かつ前記装着用溝の低圧側の側面および前記固定軸部との摺動面の全周にわたって接触可能に配置されるとともに
、前記装着用溝内に設けられ
軸心方向に波打ち状体とした樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって前記装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で押圧され、かつ前記面圧調整流体の供給停止時の残圧により前記ウェーブワッシャによる押圧力と反対方向の力を作用させて脱圧させるものであり、
前記固定軸部の他方側の側端面に前記供給された流体の流体圧を作用させて前記固定シール部を前記回転シール部に対して押圧することにより、前記第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、
前記加圧開孔を介して前記面圧調整流体を前記隙間内に送給して前記段差部に面圧調整流体圧を作用させることにより、前記固定シール部に前記流体圧による押圧力と反対方向の力を作用させ、前記面シール部のシール面圧を低減させることを特徴とする流体送給機構における回転シール機構。
【請求項2】
軸方向の回転流路が設けられた回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置して成り、流体供給源から供給される流体を軸心廻りに回転する前記回転部の回転流路へ前記固定流路を介して送給する流体送給機構に用いられるロータリジョイントであって、
前記回転部に設けられ側端面に前記回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、
前記固定流路が前記軸方向に貫通して形成された固定軸部を有し、一方側の側端面に前記固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、
前記固定部の本体を構成するハウジング部材に設けられ前記固定軸部が前記軸方向の移動が許容された状態で嵌合する嵌合孔と、
前記固定軸部を、前記嵌合孔に嵌合する軸径で設けられた大径部およびこの大径部よりも小さい軸径で前記第2のシール面側に近接して設けられた小径部に区分する段差部と、
前記嵌合孔に前記固定軸部が嵌合した状態において前記嵌合孔の内周面と前記小径部および大径部との間の隙間をそれぞれ密封する第1の軸シール部および第2の軸シール部と、
前記第1の軸シール部および第2の軸シール部の間において前記小径部と前記嵌合孔の内周面との間の隙間に開孔し、前記隙間内に面圧調整流体を送給する加圧開孔とを備え、
前記第2の軸シール部は、Oリングが当該Oリングの装着用溝に自由状態で装着され、かつ前記装着用溝の低圧側の側面および前記固定軸部との摺動面の全周にわたって接触可能に配置されるとともに
、前記装着用溝内に設けられ
軸心方向に波打ち状体とした樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって前記装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で押圧され、かつ前記面圧調整流体の供給停止時の残圧により前記ウェーブワッシャによる押圧力と反対方向の力を作用させて脱圧させるものであり、
前記流体供給源から前記嵌合孔内へ前記流体を供給して前記固定軸部の他方側の側端面に流体圧を作用させて、前記固定シール部を前記回転シール部に対して押圧することにより、前記第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、
前記加圧開孔を介して前記面圧調整流体を前記隙間内に送給して前記段差部に面圧調整流体圧を作用させることにより、前記固定シール部に前記流体圧による押圧力と反対方向の力を作用させ、前記面シール部のシール面圧を低減させることを特徴とするロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部に流体を送給するための流体送給機構における回転シール機構およびこの回転シール機構に用いられるロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸など作動時に回転状態にある回転部に冷却用のクーラントなどの流体を送給する流体送給機構において、固定された流体送給配管を回転部の流路と接続する流体継手としてロータリジョイントが用いられる。ロータリジョイントは、回転部に結合されて回転する回転軸と流体送給機構に接続される固定軸とを同軸に配置して軸方向に対向させ、それぞれの対向端面に装着された回転シールのシール面を相互に密着させることにより流体の漏洩を防止する構造となっている。
【0003】
ところで近年、従来一般に用いられていた水系の液体クーラントのほかに、エアを冷却媒体として用いる場合がある。エアを用いることにより、冷却対象に応じた適切な冷却特性が得られること、また使用後の排液処理などの環境対策が不要で環境負荷を低減することができることなどの利点がある。そして同一装置によって液体クーラントとエアとを使い分ける必要がある場合には、流体継手として用いられるロータリジョイントは、流体としての特性の異なる液体と気体の双方に対して使用可能となるよう考慮がなされたものであることが必要とされ、従来このような用途を想定したタイプのロータリジョイントが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に示す例は、流体供給源から供給される複数種類の流体を軸心廻りに回転する回転部へ固定部を介して送給する流体送給機構に用いられるロータリジョイントにおいて、ハウジング部材の嵌合孔に嵌合して軸方向に移動する固定軸部の外周面に段差部を設け、低いシール面圧値とすることが求められる種類の流体を供給する場合には、加圧開孔を介して導入された面圧調整流体を段差部に作用させて、固定シール部に流体圧による押圧力と反対方向の力を作用させ、面シール部のシール面圧を低減させるように構成したものである。
【0005】
また、上記特許文献1に示すロータリジョイントにおいて、第1の軸シール部および第2の軸シール部は、一般的にOリング等にて軸方向と径方向を潰すことでシールする。そして、面圧調整流体としてエアを供給する場合、第1の軸シール部と第2の軸シール部との間に面圧調整エアを供給し、面圧をコントロールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記面圧調整エアの供給を止めた場合に、第1の軸シール部および第2の軸シール部のシール性が保持される。そのため、第1の軸シール部および第2の軸シール部の間の空間に内圧が掛かったままとなり、この内圧により第1の軸シール部および第2の軸シール部が固定軸部を締め付けることにより、固定軸部が拘束され、面シール部の動作不良となる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明においては、面圧調整流体の供給停止後の脱圧が可能な流体送給機構における回転シール機構およびこの回転シール機構に用いられるロータリジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転シール機構は、軸方向の回転流路が設けられた回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置してなり、2つの流体供給源から供給され供給圧と適正なシール面圧値との比が異なる2種類の流体を軸心廻りに回転する回転部の回転流路へ固定流路を介して選択的に送給する流体送給機構における回転シール機構であって、回転部に設けられ側端面に回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、固定流路が軸方向に貫通して形成された固定軸部を有し、一方側の側端面に固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、固定部の本体を構成するハウジング部材に設けられ固定軸部が軸方向の移動が許容された状態で嵌合する嵌合孔と、固定軸部を、嵌合孔に嵌合する軸径で設けられた大径部およびこの大径部よりも小さい軸径で第2のシール面側に近接して設けられた小径部に区分する段差部と、嵌合孔に固定軸部が嵌合した状態において嵌合孔の内周面と小径部および大径部との間の隙間をそれぞれシールする第1の軸シール部および第2の軸シール部と、第1の軸シール部および第2の軸シール部の間において小径部と嵌合孔の内周面との間の隙間に開孔し、隙間内に面圧調整流体を送給する加圧開孔と、複数の流体供給源から複数種類の流体のうちのいずれかを嵌合孔内へ選択的に供給して固定流路を介して回転流路へ送給するとともに、加圧開孔に面圧調整用流体を送給する流体供給手段とを備え、第2の軸シール部は、Oリングが当該Oリングの装着用溝に自由状態で装着され、かつ装着用溝の低圧側の側面および固定軸部との摺動面の全周にわたって接触可能に配置されるとともに装着用溝内に設けられた樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で押圧され、かつ面圧調整流体の供給停止時の残圧によりウェーブワッシャによる押圧力と反対方向の力を作用させて脱圧させるものであり、固定軸部の他方側の側端面に供給された流体の流体圧を作用させて固定シール部を回転シール部に対して押圧することにより、第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、加圧開孔を介して面圧調整流体を隙間内に送給して段差部に面圧調整流体圧を作用させることにより、固定シール部に流体圧による押圧力と反対方向の力を作用させ、面シール部のシール面圧を低減させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の回転シール機構によれば、樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で適度に押圧されているOリングが、面圧調整流体の供給停止時に、この面圧調整流体の残圧によりウェーブワッシャの押圧力に抗して押し返されることにより脱圧されるので、適度な押圧と残圧抜きを両立することができる。
【0011】
なお、Oリングに対するウェーブワッシャの全体の押圧力が5N未満の場合、ウェーブワッシャの押圧力が弱すぎて固定軸部とOリングとの摩擦抵抗に打ち勝てず、Oリングをシールする隙間を擁する側の装着用溝の壁に押し付けることができなくなる可能性がある。また、ウェーブワッシャの1山あたりの押圧力が25Nを超えると、面圧調整流体の残圧によるシール性の解除が難しくなるうえ、一般的に用いられるOリングの硬さにおいては、ウェーブワッシャの山の部分だけが押し付けられることによるOリングの変形が過大となり、押し付けていない部分のシール性が損なわれ、本来果たすべきシール性を損ねることがある。
【0012】
また、ウェーブワッシャが金属製の場合、素材自体の弾性率が高いため、望ましい押圧力、すなわち全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下となる押圧力を得ようとすると薄くする必要があるが、薄くした場合には装着の際や、固定軸部の移動時に引き摺られてOリングが変形して固定軸部とウェーブワッシャとの隙間にはみ出した際にOリングを傷付け、シール性を損なう可能性がある。そこで、本発明では、ウェーブワッシャを樹脂製またはエラストマ製とすることで、望ましい押圧力を得るために装着の際に変形しづらい厚さを確保し、これにより固定軸部の移動時に引き摺られた場合でも、Oリングを傷付けることなく、シール性が損なわれない。
【0013】
本発明のロータリジョイントは、軸方向の回転流路が設けられた回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置して成り、流体供給源から供給される流体を軸心廻りに回転する回転部の回転流路へ固定流路を介して送給する流体送給機構に用いられるロータリジョイントであって、回転部に設けられ側端面に回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、固定流路が軸方向に貫通して形成された固定軸部を有し、一方側の側端面に固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、固定部の本体を構成するハウジング部材に設けられ固定軸部が軸方向の移動が許容された状態で嵌合する嵌合孔と、固定軸部を、嵌合孔に嵌合する軸径で設けられた大径部およびこの大径部よりも小さい軸径で第2のシール面側に近接して設けられた小径部に区分する段差部と、嵌合孔に固定軸部が嵌合した状態において嵌合孔の内周面と小径部および大径部との間の隙間をそれぞれ密封する第1の軸シール部および第2の軸シール部と、第1の軸シール部および第2の軸シール部の間において小径部と嵌合孔の内周面との間の隙間に開孔し、隙間内に面圧調整流体を送給する加圧開孔とを備え、第2の軸シール部は、Oリングが当該Oリングの装着用溝に自由状態で装着され、かつ装着用溝の低圧側の側面および固定軸部との摺動面の全周にわたって接触可能に配置されるとともに装着用溝内に設けられた樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で押圧され、かつ面圧調整流体の供給停止時の残圧によりウェーブワッシャによる押圧力と反対方向の力を作用させて脱圧させるものであり、流体供給源から嵌合孔内へ流体を供給して固定軸部の他方側の側端面に流体圧を作用させて、固定シール部を回転シール部に対して押圧することにより、第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、加圧開孔を介して面圧調整流体を隙間内に送給して段差部に面圧調整流体圧を作用させることにより、固定シール部に流体圧による押圧力と反対方向の力を作用させ、面シール部のシール面圧を低減させることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のロータリジョイントによれば、樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャによって装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で適度に押圧されているOリングが、面圧調整流体の供給停止時に、この面圧調整流体の残圧によりウェーブワッシャの押圧力に抗して押し返されることにより脱圧されるので、適度な押圧と残圧抜きを両立することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、面圧調整流体の供給停止時に脱圧されるので、面圧が掛かったままとなるのを防止することができ、動作不良がない流体送給機構における回転シール機構およびこの回転シール機構に用いられるロータリジョイントを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態における流体送給機構の構成説明図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における流体送給機構の回転シール機構に用いられるロータリジョイントの断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントのハウジング部材の構造説明図である。
【
図4】本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントのフローティングシートの構造説明図である。
【
図5】第2の軸シール部のシール構造を示す断面図である。
【
図6】押圧用スプリングを示す図であって、(イ)は正面図、(ロ)は一部拡大側面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントの動作説明図である。
【
図8】本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一実施の形態における流体送給機構の構成説明図、
図2は本発明の一実施の形態における流体送給機構の回転シール機構に用いられるロータリジョイントの断面図、
図3は本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントのハウジング部材の構造説明図、
図4は本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントのフローティングシートの構造説明図、
図5は第2の軸シール部のシール構造を示す断面図、
図6は押圧用スプリングを示す図であって、(イ)は正面図、(ロ)は一部拡大側面図、
図7,
図8は本発明の一実施の形態におけるロータリジョイントの動作説明図である。
【0018】
まず
図1を参照して、流体送給機構1の全体構成を説明する。
図1において、流体送給機構1は、工作機械のスピンドルなどの回転軸へ流体供給部7から供給される冷却用の流体を送給する機能を有するものである。流体送給機構1は、軸方向の回転流路が設けられた回転部2aおよび軸方向の固定流路が設けられた固定部2bを同軸配置してなるロータリジョイント2を主体としている。
【0019】
回転部2aはスピンドル軸4の締結孔4aに締結されている。スピンドル軸4は、スピンドルに内蔵されたモータによって回転駆動されてフレーム5に設けられた挿通孔5a内で軸心A廻りに回転するとともに、クランプ/アンクランプシリンダによって軸方向の進退動作を行う。また、固定部2bは、円筒ブロック形状のケーシング3に設けられた装着孔3aに嵌合して装着されている。固定部2bはケーシング3をボルトなどの締結手段(図示省略)によってフレーム5に着脱自在に締結することにより、回転部2aと同軸に配置される。
【0020】
流体供給部7は第1の流体供給源7aおよび第2の流体供給源7bを備えている。第1の流体供給源7aは液体クーラント(第1流体)を、第2の流体供給源7bはエア(第2流体)をそれぞれ供給する。ここで、第2の流体供給源7bから供給されるエアは、一般の工場用エア、工場用エアをドライヤによって処理したドライエア、または所定量のオイルミストが混入されたオイルミスト含有エアなど、供給対象に応じて各種の形態のものを選択できるようになっている。
【0021】
流体供給部7から供給される流体は、第1の開閉バルブ6a、第2の開閉バルブ6bおよび逆止弁6cを備えた流体供給回路6によって選択的に送給される。すなわち、第1の流体供給源7aは耐圧配管よりなるクーラント配管8aによって第1の開閉バルブ6aを介してケーシング3の流路孔3bに接続されている。第1の開閉バルブ6aを開閉することにより、固定部2bへの第1の流体供給源7aから供給される液体クーラントの送給をオンオフすることができる。
【0022】
また、第2の流体供給源7bは樹脂チューブなどよりなるエア配管8bによって第2の開閉バルブ6b、逆止弁6cを介してクーラント配管8aにつなぎ込まれている。第2の開閉バルブ6bを開閉することにより、固定部2bへの第2の流体供給源7bから供給されるエアの送給をオンオフすることができる。逆止弁6cはクーラント配管8a側からエア配管8bへの流体の逆流を防止するために設けられている。さらに、第2の開閉バルブ6bの下流側において分岐したエア配管8cは、固定部2bに設けられた加圧開孔20(
図2参照。)に接続されている。このエア配管8cは、供給対象の流体がエアである場合には、後述するように固定部2bに面圧調整用流体としてのエアを送給するようになっている。
【0023】
すなわち、上記構成において、工作機械における加工対象物に応じて第1の開閉バルブ6a、第2の開閉バルブ6bを切り換えることにより、送給される冷却用の流体の種類を選択して切り換えることができるとともに、特定の流体については、固定部2bに面圧調整用流体を送給することができる。したがって、
図1に示す流体供給回路6は、複数の流体供給源から複数種類の流体のうちのいずれかを後述する嵌合孔13a内へ選択的に供給し、固定部2bの固定流路15dを介して回転部2aの回転流路10aへ送給するとともに、加圧開孔20に面圧調整用流体を送給する流体供給手段となっている(
図2参照。)。そして、ロータリジョイント2および流体供給回路6は、複数の流体供給源から供給される複数種類の流体を、軸心廻りに回転する回転部2aの回転流路10aへ固定部2bの固定流路15dを介して選択的に送給する機能を有する回転シール機構を構成する。
【0024】
次に、
図2,
図3,
図4を参照して、ロータリジョイント2の詳細構造を説明する。
図2において回転部2aは、軸心部に軸方向に貫通して回転流路10aが設けられ、外面に締結ねじ部10bが設けられたロータ10を主体としている。ロータ10は、締結ねじ部10bを締結孔4aに螺合させることによりスピンドル軸4にねじ締結され、Oリング12によってねじ締結部が密封される。これにより、回転流路10aはスピンドル軸4の流路孔4bと連通する。
【0025】
ロータ10の右側(固定部2bと対向する側)の側端面には、回転流路10aの開孔面を囲む配置で、円環状の環状凸部10cが形成されている。環状凸部10cの内側に形成された凹部には、第1のシールリング11が固定されている。第1のシールリング11はセラミックなどの耐摩耗性に富む硬質材料を、中央部に開口部11aを有する円環形状に成形したものである。第1のシールリング11は、平滑面に仕上げられた第1のシール面11bを外面側にした状態で環状凸部10cに固定される。そしてこの状態では、回転流路10aは開口部11aと連通して第1のシール面11bに開口する。すなわち、第1のシールリング11が固定されたロータ10は、回転部2aに設けられ側端面に回転流路10aが開口した第1のシール面11bを有する回転シール部となっている。
【0026】
次に、ケーシング3に装着される固定部2bの構造を説明する。ケーシング3の装着面3cには流路孔3bと連通して設けられた装着孔3aが開口している。装着孔3aには固定部2bの本体を構成する円筒形状のハウジング部材13に設けられた装着凸部13bが嵌合する。そして
図3に示すように、等配された複数のボルト14を装着面3cに設けられたねじ孔3dに螺合させることにより、ハウジング部材13はケーシング3にボルト締結され、Oリング16によって装着凸部13bの嵌合部が密封される。ハウジング部材13の中心部には軸方向に貫通する嵌合孔13aが設けられており、さらに嵌合孔13aの内周面には、Oリング溝13c,13dが設けられている。
【0027】
図2においてフローティングシート15は、一方側(図において回転部2aと対向する側)に円板形状のフランジ部15aが設けられ、他方側に固定流路15dが軸方向に貫通して形成された固定軸部15bを有する形状となっている。そして固定軸部15bは、ハウジング部材13の嵌合孔13aに軸方向の移動が許容された状態で嵌合する。
【0028】
フランジ部15aの左側(回転部2aと対向する側)の側端面には、固定流路15dの開孔面を囲む配置で、円環状の環状凸部15cが形成されている。環状凸部15cの内側に形成された凹部には、第2のシールリング17が固定されている。第2のシールリング17は第1のシールリング11と同様の硬質材料を中央部に開口部17aを有する円環形状に成形したものである。第2のシールリング17は、平滑面に仕上げられた第2のシール面17bを外面側にした状態で環状凸部15cに固定される。そしてこの状態では、固定流路15dは開口部17aと連通して第2のシール面17bに開口する。すなわち第2のシールリング17が固定されたフローティングシート15は、固定流路15dが軸方向に貫通して形成された固定軸部15bを有し、側端面に回転流路10aが開口した第2のシール面17bを有する固定シール部となっている。
【0029】
図4を参照して、フローティングシート15の詳細形状を説明する。フランジ部15aは
図3に示すボルト14の位置に対応して等配位置で切欠き部15jが設けられており、フローティングシート15をハウジング部材13に装着した状態で、ハウジング部材13のケーシング3へのボルト締結が可能となっている。また第2のシールリング17の第2のシール面17bには、複数のシール面潤滑用の凹部17cが形成されている。凹部17cは、第2のシール面17bが第1のシール面11bと密着して面シール部を形成した状態において、開口部17a内の流体を第1のシール面11bと第2のシール面17b相互の摺動面に導いて潤滑性を向上させる機能を有している。なお凹部17cは必須ではなく、対象とする流体の特性やシール面圧値、使用回転数などの摺動条件によっては設ける必要がない場合がある。
【0030】
固定軸部15bは、長手方向の中間部に設けられた段差部15gによって、第2のシールリング17に近接した位置に設けられた外径D1の小径部15eと、外径D1よりも大きく嵌合孔13aに嵌合するサイズの外径D2で設けられた大径部15fとに区分されている。ここで大径部15fの側端面15hにおける側面積、すなわち外径D2の円から内径dの固定流路15dの部分を除いた側面積はA1となっており、また段差部15gにおいて外径D2の円から小径部15eの断面積を除いた側面積はA2となっている。
【0031】
図2に示すように、固定軸部15bを嵌合孔13aに嵌合させた状態において、Oリング溝13c,13d(
図3参照。)はそれぞれ固定軸部15bにおける小径部15e、大径部15fの位置に有る。Oリング溝13cはOリング21aの装着用溝である。Oリング21aがOリング溝13c内に装着された状態では、第1の軸シール部21を構成する。
【0032】
Oリング溝13cは、Oリング21aを装着した時、Oリング外周側が溝底に接触しない深さを有すると共に、Oリング断面太さより適宜幅広い溝幅を有するように形成されている。Oリング21aの内径は、Oリング溝13cに装着されたとき、固定軸部15bの小径部15eの外周に全周線接触する程度の大きさである。
【0033】
Oリング溝13dはOリング22aの装着用溝である。Oリング溝13dにはOリング22aの他、押圧用スプリング26が装着される。Oリング22aおよび押圧用スプリング26がOリング溝13d内に装着された状態では、第2の軸シール部22を構成する。
【0034】
Oリング溝13dは、Oリング22aを装着した時、Oリング外周側が溝底13eに接触しない深さを有すると共に、Oリング断面太さより適宜幅広い溝幅を有するように形成されている。Oリング22aの内径は、Oリング溝13dに装着されたとき、固定軸部15bの大径部15fの外周に全周線接触する程度の大きさである。すなわち、Oリング22aは圧縮状態でセットするのではなく、自由状態でセットして、単にOリング溝13dの低圧側側壁13g(
図5参照。)と固定軸部15bの摺動面とに接触させる構造としている。
【0035】
Oリング22aの押圧用スプリング26は、Oリング22aをOリング溝13dの低圧側、つまりロータ10側に押圧させることにより、低圧側に生じる隙間を密閉しシール作用を行なわせるものである。押圧用スプリング26は、
図6(イ)に示すように、スプリング材によりOリング22aと略同一の内外径を有し周面を軸心方向に波打ち状体とした波打ち状体部26aに形成してリング状に設けられたウェーブワッシャである。波の周期の数は3つ以上としている。
【0036】
押圧用スプリング26の押圧力は軸摺動時に摺動抵抗による外力より高くなるように、全体の押圧力が5N以上に設定されている。また、Oリング溝13dはOリング22aおよび押圧用スプリング26の装着時に押圧用スプリング26の波型が失われない空間を有しており、Oリング22aには押圧用スプリング26の波の山の頂上部分が当たるが、その押圧力が1山あたり25Nを超えないように、すなわち、1山あたり25N以下となるように押圧用スプリング26のバネ定数と装着時のバネの圧縮距離が設定されている。
【0037】
なお、本実施の形態の押圧用スプリング26はスプリング材として樹脂のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)))を使用して製作されているが、他の樹脂製またはエラストマ製とすることができる。
【0038】
図5はそのセット状態を示している。押圧用スプリング26はOリング22aの側面を高圧側から低圧側に押圧するように、つまりOリング溝13d内でOリング22aより高圧側にセットされる。この場合、波打ち状体部26aは、背面側を溝側壁に接地してOリング22aを押圧し、Oリング22aをOリング溝13dの低圧側側壁13gに全周均等に密着させる。
【0039】
上記構成により、第1の軸シール部21、第2の軸シール部22は、嵌合孔13aに固定軸部15bが嵌合した状態において、嵌合孔13aの内周面と小径部15eおよび大径部15fとの間の隙間27(
図5参照。)をそれぞれ密封する。この状態において、嵌合孔13a内の流体の圧力は、受圧面積がA1の側端面15hに作用する。
【0040】
ハウジング部材13には、
図1に示すエア配管8cと接続される加圧開孔20が設けられている。加圧開孔20は、第1の軸シール部21および第2の軸シール部22の間において、小径部15eと嵌合孔13aの内周面との間の円環状隙間23に開孔する。そしてこの状態で、第2の流体供給源7bからエア配管8cを介してエアを送給することにより、円環状隙間23内に面圧調整流体としてのエアが送給される。円環状隙間23内の流体の圧力は、受圧面積がA2の段差部15gに作用する。
【0041】
流路孔3b内に供給対象の流体が送給されることにより、この流体圧は固定軸部15bの他方側(第2のシールリング17の反対側)の側端面15hに作用する。これにより、固定軸部15bは嵌合孔13a内で回転部2a側へスライドし、第2のシールリング17は第1のシールリング11に対して押圧される。この押圧力は第2のシール面17bと第1のシール面11bとを相互に密着させ、これにより固定流路15dから軸廻りに回転状態の回転流路10aへ送給される流体の漏洩を防止する面シール部18が形成される。このフローティングシート15のスライドにおいて、フランジ部15aのねじ孔15i(
図4)に螺設されたボルト24およびボルト24を外包する円筒カラー25が、ハウジング部材13に軸方向に設けられたガイド孔13f内を摺動することにより、フローティングシート15の軸方向の移動がガイドされるとともに、軸廻りの廻り止めが行われる。
【0042】
ロータリジョイント2の作動状態においては、送給される流体の圧力によるフローティングシート15の進出と、スピンドル軸4の進退動作によって、面シール部18のシール面の接離が行われる。すなわちフローティングシート15が後退して第1のシール面11bと第2のシール面17bとが相互に離隔した状態において、嵌合孔13a内に流路孔3bを介して流体が送給されることによりフローティングシート15が前進(矢印a方向)し、第1のシール面11bが第2のシール面17bに当接して面シール部18が形成される。
【0043】
そしてスピンドル軸4が固定部2bに対して相対的に前進(矢印d方向)することにより、フローティングシート15は後退(矢印b方向)し、フランジ部15aがハウジング部材13に近接した位置に復帰する。そしてこの状態からスピンドル軸4を相対的に後退(矢印c方向)させることにより、第1のシール面11bと第2のシール面17bとが相互に離隔した状態に戻る。このとき、Oリング22aは押圧用スプリング26に押され、固定軸部15bとOリング溝13dの低圧側側壁13gとの接触状態に戻るため、次回の流体供給時に漏れを発生させずに良好なシール性を確保できる。なお、この押圧用スプリング26の押圧力が1山あたり25Nを超える場合、Oリング22aが過度の圧縮による変形で、固定軸部15bやOリング溝13dの低圧側側壁13gとの間に隙間が生じ、良好なシール性を確保できなくなる。
【0044】
次に、
図7,
図8を参照して、複数種類の流体を送給する場合におけるロータリジョイント2の動作を説明する。
図7、
図8は送給される流体がそれぞれ液体クーラント、エアである場合を示している。まず、供給される流体が液体クーラントである場合について説明する。
【0045】
図7において、第1の開閉バルブ6aを開にすることにより、嵌合孔13a内には第1の流体供給源7aから液体クーラント(圧力P1)が送給される。この液体クーラントは固定流路15dを介して回転流路10aへ流通する。このとき嵌合孔13a内において圧力P1が側端面15hに作用し、側端面15hの受圧面積A1(
図4参照。)に見合った流体力F(L)が固定軸部15bに作用する。そして面シール部18には、流体力F(L)から第1の軸シール部21、第2の軸シール部22による摺動抵抗f1,f2を減じた押圧力F1が作用する。この押圧力F1を第1のシール面11bと第2のシール面17bが接触するシール面積で除した値が、面シール部18のシール面圧値となる。
【0046】
次に供給される流体がエアである場合について説明する。
図8において、第2の開閉バルブ6bを開にすることにより、嵌合孔13a内には、第2の流体供給源7bから逆止弁6cを通過してエア(圧力P2)が送給されるとともに、加圧開孔20にも同様にエア(圧力P2)が送給される。嵌合孔13a内に送給されたエアは固定流路15dを介して回転流路10aへ流通する。このとき嵌合孔13a内において圧力P2が側端面15hに作用し、受圧面積A1(
図4参照。)に見合った流体力F(G1)が固定軸部15bに作用する。
【0047】
また加圧開孔20に送給されたエアは円環状隙間23内において段差部15gに作用し、受圧面積A2(
図4参照)に見合った流体力F(G2)が、流体力F(G1)と反対方向に作用する。そして面シール部18には、流体力F(G1)から前述の摺動抵抗f1,f2および流体力F(G2)を減じた押圧力F2が作用する。この場合には押圧力F2を前述のシール面積で除した値がシール面圧値となる。
【0048】
ここでロータリジョイントにおけるシール面圧について説明する。回転摺動面を密着させて流体のシールを行う回転シール機構においては、対象となる流体の特性や供給圧に応じた適正なシール面圧値を設定する必要がある。例えば本実施の形態に示すように比較的高い供給圧(例えば1Mpa~20Mpa)で供給される場合が多い液体クーラントが対象である場合には、シール面からのリークを極力防止するため、供給圧とほぼ同レベルの圧力のシール面圧値が設定される。
【0049】
これに対し、低い供給圧(例えば0.1Mpa~1Mpa)で用いられるエアを対象とする場合には、シール面の摺動による損耗を極力防ぐため、シール面圧を供給圧の半分以下とすることが求められる。これは液体を供給対象とする場合には、シール面に侵入した液体の薄膜が摺動面を潤滑する潤滑膜として作用するのに対し、エアの場合には、オイルミストを混入するなどの潤滑対策が施されている場合を除き、一般にはこのような潤滑作用がないことによる。
【0050】
このように、供給圧や所望のシール面圧値が異なる流体を供給対象とする場合には、供給圧に対するシール面圧値の比を流体に応じて変更する必要がある。ここで、面シール部のシール面積はいずれの流体についても共通であることから、供給圧に対するシール面圧値の比を変更するには、流体圧が作用する受圧面積を流体の種類に応じて異ならせる必要がある。本実施の形態においては、
図8に示すように、低いシール面圧値が求められるエアを対象とする場合において面シール部18に作用する押圧力を発生させる実質的な受圧面積は(A1-A2)であり、液体クーラントを対象とする場合における受圧面積A1と異なるものとなっている。
【0051】
すなわち、
図8に示す場合においては、加圧開孔20を介して面圧調整流体としてのエアを円環状隙間23内に送給して段差部15gにエア圧(面圧調整流体圧)を作用させることにより、固定シール部であるフローティングシート15に、側端面15hに作用する流体圧による押圧力F(G1)と反対方向の流体力F(G2)を作用させ、面シール部18のシール面圧を低減させるようにしている。
【0052】
そしてロータリジョイント2の設計に際しては、
図7に示す押圧力F1による面シール部18のシール面圧値が、圧力P1の液体クーラントについての適正値となるように、また
図8に示す押圧力F2による面シール部18のシール面圧値が、圧力P2のエアについての適正値となるように、各部寸法を設定する。すなわち、所与の設計数値データとしての前述の圧力P1,P2,各流体についての適正なシール面圧値、前述の摺動抵抗f1,f2などに基づき、小径部15e、大径部15fの径寸法D1,D2、固定流路15dの径寸法dなどが決定される。
【0053】
本実施の形態に示すロータリジョイント2において、面圧調整エアの供給を止めた場合、押圧用スプリング26によってOリング溝13dの低圧側側壁13gに押圧されているOリング22aが、この押圧用スプリング26の押圧力より高い面圧調整エアの残圧により押圧用スプリング26による押圧力と反対方向の力によって押し返されることにより脱圧される。したがって、面圧調整エアの供給停止時に内圧が掛かったままとなるのを防止することができ、第1の軸シール部21および第2の軸シール部22の残圧による面シール部18の動作不良を解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の流体送給機構における回転シール機構およびロータリジョイントは、面圧調整を合理的に行うことができるという特徴を有し、工作機械の主軸などの回転部に液体クーラントとエアを送給する用途に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 流体送給機構
2 ロータリジョイント
2a 回転部
2b 固定部
4 スピンドル軸
6 流体供給回路
7 流体供給部
7a 第1の流体供給源
7b 第2の流体供給源
10 ロータ
10a 回転流路
11 第1のシールリング
11b 第1のシール面
13 ハウジング部材
13a 嵌合孔
13d Oリング溝
13e 溝底
13g 低圧側側壁
15 フローティングシート
15a フランジ部
15b 固定軸部
15d 固定流路
15e 小径部
15f 大径部
15g 段差部
16 Oリング
17 第2のシールリング
17b 第2のシール面
18 面シール部
20 加圧開孔
21 第1の軸シール部
21a Oリング
22 第2の軸シール部
22a Oリング
23 円環状隙間
26 押圧用スプリング
【要約】
【課題】面圧調整流体の供給停止後の脱圧が可能な流体送給機構における回転シール機構およびロータリジョイントの提供。
【解決手段】流体供給源から供給される複数種類の流体を軸心廻りに回転する回転部2aへ固定部2bを介して送給する流体送給機構に用いられるロータリジョイント2において、第2の軸シール部22は、Oリング22aが当該Oリング22aの装着用溝に自由状態で装着され、かつ装着用溝の低圧側の側面および固定軸部との摺動面の全周にわたって接触可能に配置されるとともに装着用溝内に設けられた樹脂製またはエラストマ製のウェーブワッシャである押圧用スプリング26によって装着用溝の低圧側の側面に全体の押圧力が5N以上かつ1山あたりの押圧力が25N以下で押圧され、かつ加圧開孔20からの面圧調整エアの供給停止時の残圧により押圧用スプリング26による押圧力と反対方向の力を作用させて脱圧させる。
【選択図】
図2