(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】同時ロングタームエボリューション(LTE)信号、および産業、科学、および医療用(ISM)無線バンドにおける信号を最適化するデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240327BHJP
H04W 4/00 20180101ALI20240327BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240327BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20240327BHJP
【FI】
H04W48/16 132
H04W4/00 110
H04W84/12
H04W88/06
(21)【出願番号】P 2021014688
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2015525439の分割
【原出願日】2013-07-16
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-30
(32)【優先日】2012-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ウリ ウェインリブ
(72)【発明者】
【氏名】アロン ペイシェール
(72)【発明者】
【氏名】ケレン ドール
【合議体】
【審判長】齋藤 哲
【審判官】廣川 浩
【審判官】圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/092574(WO,A1)
【文献】特開2007-110373(JP,A)
【文献】国際公開第2010/151849(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24- 7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスにデータを送信及び受信することのできるデバイスであって、
処理ユニットであって、
ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ってデータを送信及び受信する第1のチップと、
前記第1のチップと並行して動作してワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を通じてデータを送信及び受信する第2のチップと、
を含む、前記処理ユニットを含み、
前記処理ユニットが、
WLANを通じて前記第2のチップによりそれを介してデータが送信及び受信され得る複数のアクセスポイント(AP)を判定し、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する判定を少なくとも含む複数の要因に基づいて最適なAPを特定し、
前記第2のチップが前記最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続されている場合に、前記最適なAP以外の前記任意のAPから前記第2のチップを切断し、
前記第2のチップを前記最適なAPを介してWLANに接続する、
ように構成される、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記複数の要因が、少なくとも、各異なるAPのパフォーマンススピード容量と各異なるAPのネットワーク負荷と各異なるAPの受信信号強度表示(RSSI)と各異なるAPの信号対ノイズ比(SNR)とを更に含む、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、
前記最適のAPを特定することが、
前記各異なるAPのパフォーマンススピード容量と前記各異なるAPのネットワーク負荷と前記各異なるAPのRSSIと前記各異なるAPのSNRとを含む前記複数の要因に基づいて前記複数のAPの各々に複数のグレードの1つを割り当てることであって、より高いグレードが前記第1のチップと前記第2のチップとのより高い
全体のスループットを示す、前記割り当てることと、
特定のAPにおいて前記第1のチップためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記特定のAPの前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させると判定する場合に、前記特定のAPのグレードを下方に調整することと、
これに続いて、前記複数のAPのうちのどのAPが最高のグレードを有するかを判定することと、
を含む、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの受信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの同時の送信によってブロックされるかどうかを各異なるAPに対して判定することを含む、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第1のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの送信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの受信の間に相互変調を生じさせるかどうかを各異なるAPに対して判定することを含む、デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの受信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの同時の送信によりブロックされるかどうかを各異なるAPに対して判定することと、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの送信が、LTE規格に従った前記第1のチップによるデータの受信の間に相互変調を生じさせるかどうかを各異なるAPに対して判定することと、
を含む、デバイス。
【請求項7】
ワイヤレスにデータを送信及び受信することができるデバイスであって、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ってデータを送信及び受信する第1のチップと、前記第1のチップと並行して動作してワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を通じてデータを送信及び受信する第2のチップとを備える処理ユニットを含むデバイスにおいて実装される方法であって、
前記処理ユニットによって、前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する判定を少なくとも含む複数の要因に基づいて最適のAPを特定することと、
前記第2のチップが前記最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続されている場合に、前記処理ユニットによって、前記最適なAP以外の前記任意のAPから前記第2のチップを切断することと、
前記処理ユニットによって、前記第2のチップを前記最適なAPを介してWLANに接続することと、
を含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記複数の要因が、少なくとも、各異なるAPのパフォーマンススピード容量と各異なるAPのネットワーク負荷と各異なるAPの受信信号強度表示(RSSI)と各異なるAPの信号対ノイズ比(SNR)とを更に含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記最適なAPを特定することが、
前記処理ユニットによって、前記各異なるAPのパフォーマンススピード容量と前記各異なるAPのネットワーク負荷と前記各異なるAPのRSSIと前記各異なるAPのSNRとを含む前記複数の要因に基づいて前記複数のAPの各々に複数のグレードの1つを割り当てることであって、より高いグレードが前記第1のチップと前記第2のチップとのより高い
全体のスループットを示す、前記割り当てることと、
特定のAPにおいて前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させると判定する場合に、前記処理ユニットによって、前記特定のAPのグレードを下方に調整することと、
これに続いて、前記処理ユニットによって、前記複数のAPのうちのどのAPが最高のグレードを有するかを判定することと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
前記処理ユニットによって、WLANを通じての前記第2のチップによるデータの受信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの同時の送信によってブロックされるかどうかを判定することを含む、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
前記処理ユニットによって、WLANを通じての前記第2のチップによるデータの送信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの受信の間に相互変調を生じさせるかどうかを各異なるAPに対して判定することを含む、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
前記処理ユニットによって、WLANを通じての前記第2のチップによるデータの受信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの同時の送信によってブロックされるかどうかを各異なるAPに対して判定することと、
前記処理ユニットによって、WLANを通じての前記第2のチップによるデータの送信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの受信の間に相互変調を生じさせるかどうかを各異なるAPに対して判定することと、
を含む、方法。
【請求項13】
記憶される命令を備えた持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、ワイヤレスにデータを送信及び受信することのできるデバイスにおいて、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ってデータを送信及び受信する第1のチップと、前記第1のチップと並行して動作してワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を通じてデータを送信及び受信する第2のチップとを備える処理ユニットによって実行される場合に、当該デバイスにおいて実行される方法が、
WLANを通じて前記第2のチップによりそれを介してデータが送信及び受信され得る複数のアクセスポイント(AP)を判定することと、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する判定を少なくとも含む複数の要因に基づいて最適なAPを特定することと、
前記第2のチップが前記最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続されている場合に、前記最適なAP以外の前記任意のAPから前記第2のチップを切断することと、
前記第2のチップを前記最適なAPを介してWLANに接続することと、
を含む、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
請求項13に記載の持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記複数の要因が、少なくとも、各異なるAPのパフォーマンススピード容量と各異なるAPのネットワーク負荷と各異なるAPの受信信号強度表示(RSSI)と各異なるAPの信号対ノイズ比(SNR)とを更に含む、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項14に記載の持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記最適のAPを特定することが、
前記各異なるAPのパフォーマンススピード容量と前記各異なるAPのネットワーク負荷と前記各異なるAPのRSSIと前記各異なるAPのSNRとを含む前記複数の要因に基づいて、前記複数のAPの各々に複数のグレードの1つを割り当てることであって、より高いグレードが前記第1のチップと前記第2のチップとのより高い
全体のスループットを示す、前記割り当てることと、
特定のAPにおいて、前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させると判定する場合に、前記特定のAPのグレードを下方に調整することと、
それに続き、前記複数のAPのうちのどのAPが最高のグレードを有するかを判定することと、
を含む、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
請求項13に記載の持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの受信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの同時の送信によってブロックされるかどうかを各異なるAPに対して判定することを含む、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
請求項13に記載の持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記第1のチップのためのLTE信号と前記第2のチップのためのWLAN信号との間のブロッキング又は相互変調が前記第1のチップと前記第2のチップとの
全体のスループットを減少させるかどうかの各異なるAPに対する前記判定が、
WLANを通じての前記第2のチップによるデータの送信がLTE規格に従った前記第1のチップによるデータの受信の間に相互変調を生じさせるかどうかを各異なるAPに対して判定することを含む、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、ワイヤレスデータ通信方法およびデバイスに関し、詳細には、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ったデータの同時ワイヤレス通信と、産業、科学、および医療用(ISM)無線バンドにおけるワイヤレス通信とに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電話およびワイヤレスタブレットを含むワイヤレス通信デバイスには、複数のプロトコルに従ってデータをワイヤレスで送信および受信するものがある。これらのプロトコルは、概して、広域通信および狭域通信を含むものと特徴付けられ得る。ワイヤレス通信デバイスは、IEEE802.11(「802.11」)規格などの狭域プロトコルに従って、狭域の(例えば、30メートル未満の)通信を行い得る。
【0003】
802.11規格は、この規格の商用の名称である「WiFi」として一般に知られている。ワイヤレス配信方法を用いて2つ以上のデバイスをリンクさせる、たいていのワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)は、802.11規格を実装する。802.11規格に従って送信されるワイヤレス信号は、2450MHz(2.45GHz)の周波数で伝搬する。
【0004】
802.11に従って生成されるワイヤレス信号は、産業、科学、および医療用(ISM)無線バンド内の周波数によって特徴付けられる。ISM無線バンドは、通信以外の、産業、科学、および医療用の目的で無線周波数(RF)エネルギーを使用するために国際的に確保された電波スペクトルの一部である。ISMバンドにおける用途の例には、高周波プロセス加熱、電子レンジ、および医療用ジアテルミー機器が含まれる。これらのデバイスの強力な放出が、電磁干渉を引き起こすことがあり、同一周波数を用いる無線通信を妨害することがある。これが、ISMデバイスが特定の周波数のバンドに限定された理由である。
【0005】
本来の割り当ての意図にも関わらず、近年、802.11規格に従ったWLAN通信などの狭域低電力通信システムのために、ISMバンドの使用が急速に拡大している。ISMバンドにおいて動作するその他の通信システムには、コードレス(非携帯式)電話、Bluetooth(商標)デバイス、および近距離無線通信(NFC)システムがある。一般的に、ISMバンドにおいて動作する通信機器は、ISM機器により生成される干渉に耐える必要があり、ユーザは、ISMデバイスからの法規的な保護がない。
【0006】
しかしながら、WLAN通信を実行するさらに大きな問題は、1つまたは複数の広域プロトコルに従って生成される同時ワイヤレス通信に関する。これらの広域プロトコルは、国際電気通信連合による2000年式移動通信方式(International Mobile Telecommunications‐2000、IMT-2000)を実現する携帯電話および移動通信サービスのための規格の一世代である「3G」を含め、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)によって公表された規格を含む。他のさらに最近の広域プロトコルは、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX)およびロングタームエボリューション(LTE)規格を含む、「4G」プロトコルである。
【0007】
WiMAX規格は、ワイヤレスネットワーク規格のIEEE802.16ファミリーの商業上の実装である。WiMAX規格は、従来のWLANの30メートルのワイヤレス範囲をはるかに凌ぐ範囲にわたり、30~40メガビット毎秒データレートを提供する。具体的には、WiMAX信号は、半径約50kmの信号で提供される。
【0008】
4G‐LTEとして市場に出されているLTE規格は、3GPPによって開発されたワイヤレス通信用の規格であり、プロジェクトのリリース8ドキュメントシリーズに規定され、わずかな高度化がリリース9に記載されている。ワイヤレスデータ通信用のLTE規格は、Global System for Mobile Communications(GMS)/Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)規格の発展である。LTE規格の目標は、2000年頃に開発された新たなデジタル信号処理技術および変調を用いて、ワイヤレスデータネットワークの容量および速度を向上させることであった。別の目標は、3Gアーキテクチャと比較して転送待ち時間を著しく削減したIPベースシステムへの、ネットワークアーキテクチャの再設計および単純化であった。
【0009】
上述のように、ワイヤレス通信デバイスが、WLAN信号と、3Gまたは4G LTE信号とを同時に処理する場合、幾つかの問題が生じる。こういった問題が生じるのは、3Gおよび4G LTE規格が、WLAN(およびBluetooth(商標))信号が伝搬するISMバンドに隣接または重複する周波数を有する信号で実装されるからである。この信号の重複のために、例えば、重複する周波数で、あるデバイスによってLTE信号が伝送される場合、同時に伝送されたWLAN信号がこのデバイスによって受信されることが妨害され得る。さらに、信号がWLANでこのデバイスによって送信される場合、当該信号は、このデバイスによって受信されるLTE信号と相互変調され得る。それゆえ、必要とされるのは、WLAN信号とLTE信号を同時に処理でき、WLAN信号とLTE信号の周波数の重複に責任を負うことのできるワイヤレス通信デバイスである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において開示する一実施形態は、データをワイヤレスに送信および受信するように動作可能なデバイスに関する。デバイスは、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ってデータを送信および受信する第1のチップを備える処理ユニットを含む。処理ユニットはさらに、第1のチップと並行して動作し、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)でデータを送信および受信する、第2のチップを含む。
【0011】
処理ユニットは複数のアクセスポイント(AP)を決定するように構成され、このAPを介してデータがWLANで第2のチップによって送信および受信され得る。処理ユニットはさらに、各異なるAPのために、第2のチップによるWLANでのデータの送信または受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップによるデータの送信または受信が、第1のチップと第2のチップの全体のスループットを減少させるかどうかを少なくとも判断することを含め、複数の要因に基づき最適のAPを特定するように構成される。
【0012】
第2のチップは、最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続され得る。この場合、処理ユニットはさらに、最適なAP以外のこの任意のAPから第2のチップを切断するように構成される。処理ユニットはさらに、最適なAPを介してWLANに第2のチップを接続するように構成される。
【0013】
データをワイヤレスに送信および受信するように動作可能なデバイスにおいて実装される方法も、本明細書において開示される。デバイスは、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従ってデータを送信および受信する第1のチップを備える処理ユニットを含む。処理ユニットはさらに、第1のチップと並行して動作し、ローカルエリアネットワーク(WLAN)でデータを送信および受信する第2のチップを備える。
【0014】
方法は、処理ユニットによって複数のアクセスポイント(AP)を決定することを含む。このアクセスポイントを介して、データがWLANで第2のチップによって送信および受信され得る。方法はさらに、各異なるAPのために、第2のチップによるWLANでのデータの送信または受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップによるデータの送信または受信が、第1のチップと第2のチップの全体のスループットを減少させるかどうかを少なくとも判断することを含め、複数の要因に基づいて最適なAPを処理ユニットによって特定することを含む。
【0015】
第2のチップは、最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続され得る。方法はさらに、第2のチップが、最適なAP以外の任意のAPを介してWLANに予め接続される場合に、処理ユニットにより、最適なAP以外のこの任意のAPから第2のチップを切断することを含む。方法はさらに、処理ユニットが、第2のチップを最適なAPを介してWLANに接続することを含む。
【0016】
持続性のコンピュータ可読の記憶媒体も開示される。記憶媒体は、そこに記憶される命令を有する。命令が上記のように処理ユニットによって実行される場合、上記のようなワイヤレス通信デバイスにおいて、上記の方法のステップが成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】1つまたは複数のワイヤレス通信デバイスが動作する複数のアクセスポイント(AP)を有するWLAN環境を示す図である。
【0018】
【
図2】データをワイヤレスに送信および受信するように動作可能なデバイスを示す図である。
【0019】
【
図3】データをワイヤレスに送信および受信するように動作可能なデバイスにおいて実行される方法を示すフローチャートである。
【0020】
【
図4】ISMワイヤレスバンドにおけるワイヤレス通信信号の周波数範囲と、3G信号および4G LTE信号の周波数範囲とのチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、信号が、WLANで且つLTE規格に従って、同時に送信および受信されるデバイスとのワイヤレス通信に関する。WLAN信号およびLTE信号に適応するデバイスは、2つの専用のチップを用いてこれらの信号を処理するのが通常である。即ち、WLAN信号を処理するための1つのチップと、LTE信号を処理するためのもう1つのチップである。本明細書においてWLANチップまたはLTEチップに対してなされる言及は、WLAN信号またはLTE信号を処理するそれぞれのチップに対する言及である。
【0022】
ワイヤレス通信デバイスは、従来、WLANチップによるWLAN信号の処理に及ぼすLTE信号の影響を考慮しておらず、同様に、LTEチップによるLTE信号の処理に及ぼすWLAN信号の影響を考慮していない。上述のように、これらの影響にはブロッキングおよび相互変調が含まれる。本明細書において記載および主張される実施形態は、WLANチップとLTEチップの全体のスループットへの同時LTE通信の影響を考慮するとき、WLANチップにより、WLANにおける最適なアクセスポイント(AP)を識別し、その最適なAPに接続することに注目する。
【0023】
本明細書に記載する機能性のほとんどは、デジタル信号プロセッサやソフトウェア、および/または特定用途向けの集積回路(IC)などのソフトウェアまたはICに実装され得る。
【0024】
本発明の様々な原則およびその組合せが、同時に存在するWLAN信号およびLTE信号それぞれのブロッキングおよび相互変調を削減するために有利に用いられる。ISMバンドにおけるワイヤレス通信信号の性質を理解するとともに、3G信号、4G信号、および4G LTE信号の性質と、それらの信号が伝搬する周波数とを理解することは、開示する実施形態によりこれがどのように達成されるかを理解する助けとなり得る。ISMバンドにおけるワイヤレス通信信号と、3G信号および4G信号との周波数範囲のチャート400を示す
図4は、この点に関して有用であり得る。
【0025】
チャート400は最初に、2400MHz~2483.5MHzでISMバンド401の一部において信号を伝搬する、2つの異なるワイヤレス技術を示す。具体的には、上記のように802.11/WiFi規格に従って生成された信号であるWLAN信号407は、2.4GHzのISMバンド内のいくつかのチャンネル(国毎に異なる)で伝搬され、チャート400においては単におよそ2450MHzと述べられている。Bluetooth(商標)409信号は、周波数ホッピング拡散スペクトルによって生成される。このスペクトルは、送信されたデータを刻み、そのチャンク(まとまり)を最大79バンドで送信する。この79バンドは、2400~2483.5MHzの範囲において、1MHz離間され、2402~2480MHzに集中している。
【0026】
チャート400から理解できるように、Bluetooth(商標)409信号およびWLAN407信号は、様々な3G規格および4G規格に従って生成された信号に対して、隣接する周波数帯域を共有している。例えば、LTE信号は、どの国や世界の地域でデバイスが動作しているかに応じて、様々なモードに従って生成される。ヨーロッパでは、参照番号413により示す、3GPPバンド7で周波数分割二重通信(FDD)を用いて伝達されるLTE信号は、2500~2570MHzの間の周波数範囲においてアップリンク(送信)される。
【0027】
3GPPバンド7送信の周波数範囲が、WLAN信号の周波数範囲と近接しているので、WLANチップによるWLAN信号のダウンリンク(受信)がブロックされ得る。それゆえ、ヨーロッパでは、LTE信号413が2500MHzで送信される場合、2500MHzのLTE信号がワイヤレス通信デバイスのWLANチップにより受信されるのを防ぐべく、フィルタがない可能性があり、また、拡散が十分でないかもしれない。それゆえ、2480MHzの実際の同時のWLAN信号がWLANチップにより受信されることから妨害され得る。
【0028】
チャート400からさらに理解できるように、中国では、LTE信号は、参照番号405で示すように、3GPPバンド40で時分割二重通信(TDD)を用いて伝達および受信される。TDDを用いて、信号は、2300~2400MHzの間の同一周波数範囲においてアップリンクおよびダウンリンクされる。3GPPバンド40伝送の周波数範囲がWLAN信号の周波数範囲に近接しているので、WLANチップによるWLAN信号のダウンリンクがブロックされ得る。例えば、中国では、LTE信号405が2390MHzで送信される場合、2390MHzのLTE信号が、ワイヤレス通信デバイスのWLANチップにより受信されるのを防ぐべく、フィルタがない可能性があり、また、拡散が十分でないかもしれない。それゆえ、2410MHzの実際の同時のWLAN信号が、WLANチップによって受信されることから妨害されるであろう。
【0029】
状況によっては、LTEチップを対象とした信号のブロッキングも生じ得ることに留意すべきである。中国ではLTE信号405が同一周波数範囲においてアップリンクおよびダウンリンクされるので、2390MHzのWLAN信号が、例えば、ワイヤレス通信デバイスのLTEチップにより受信されることを防ぐべく、フィルタがない可能性があり、また、拡散が十分でないかもしれない。それゆえ、2390MHzの実際の同時のLTEが、LTEチップによって受信されることからブロックされるであろう。
【0030】
上述のように、WLAN周波数バンドに隣接するLTE周波数バンドの結果として、相互変調も発生する。相互変調は、単に、様々な入力の周波数の差である周波数から成る、信号の生成である。それゆえ、2つのチャンネルで同時にLTE信号とWLAN信号の両方を同時にアップリンクする結果として、相互変調された信号が第3のチャンネルにおいて受信される。引き起こされた相互変調は、次式によって与えられる。
2*[Center Frequency(1st)-Center Frequency(2nd)]=Intermodulated Signal
2*[中心周波数(1st)-中心周波数(2nd)]=相互変調された信号
【0031】
ヨーロッパでは、LTE信号は、2620~2690MHzの間の周波数範囲において、参照番号417によって示すように、3GPPバンド7でFDDを用いてダウンリンクされる。LTEチップが、3GPPバンド7アップリンク(413)でLTE信号をアップリンクし、同時にWLANチップが、802.11規格に従ってWLAN信号を送信する場合、3GPPバンド7ダウンリンク(417)で受信される信号は、相互変調され得る。それゆえ、例えば、相互変調された信号は、次式と等しい。
2[Center Frequency(WLAN Signl)-Center Frequency(LTE Signal)]→2[Center Frequency(WLAN Signal)-2525MHz on Channel 1]=Intermodulation on 2645MHz at 3GPP B7 Downlink 417
2[中心周波数(WLAN信号)-中心周波数(LTE信号)]→2[中心周波数(WLAN信号)-チャンネル1の2525MHz]=3GPPバンド7ダウンリンク417の2645MHzでの相互変調
【0032】
チャート400は、WiMAXバンド1(403)で伝達されるWiMAX信号が、2300~2400MHzの周波数範囲においてFDDおよびTDDを用いて処理されることも示すことに留意すべきである。さらに、WiMAXバンド3A(411)で伝達されるWiMAX信号は、2469~2690MHzの周波数範囲においてFDDおよびTDDを用いて処理される。最後に、チャート400からさらに理解できるように、LTE信号は、参照番号415によって示すように、3GPPバンド38でTDDを用いて伝達および受信される。TDDを用いて、信号は、2750~2620MHzの間の同一周波数範囲においてアップリンクおよびダウンリンクされる。信号のWLANまたはBluetooth(商標)による送信および受信を考慮して検討する場合、上記の信号の全てがブロッキングおよび相互変調の問題の影響を受ける。
【0033】
ワイヤレス通信デバイスがWLANおよびLTEネットワークで同時に通信するであろう様々な物理的なロケーションがある。このようなロケーションの例には、モール、レストラン、職場、運動用アリーナ等がある。これらの領域では、ワイヤレス通信デバイスは、さらにルータに(有線ネットワークを介して)接続されるか、それ自身がルータであるワイヤレスAPを用いて、802.11規格に従って通信する。
【0034】
ワイヤレス通信デバイスがWLANで動作する各物理的なロケーションにおいて、APは、規則的な距離間隔で設けられ得る。例えば、一定数の平方メートル毎にAPが設けられ得る。こうして、APのネットワークが形成される。
【0035】
各APは、わずかに異なる周波数で(チャンネルとして知られる)動作し得る。このようにして、異なるAP間にネットワーク負荷が拡散され得る。さらに、干渉が減少する。
【0036】
複数のAPを有し、1つまたは複数のワイヤレス通信デバイスが動作するWLAN環境を示す図である
図1を検討及び説明する。図において理解できるように、複数の個人105が存在し、各々がワイヤレス通信デバイスを携帯している。ワイヤレス通信デバイスを携帯する各個人105に適応するように、いくつかのAP101(a)、101(b)、101(c)が提供され、これらのAPを介してワイヤレス通信デバイスは802.11(WiFi)規格を用いて通信できる。
【0037】
図1において理解できるように、AP101(a)、101(b)、101(c)の各々は、異なるチャンネルで、すなわち、それぞれ、第1のチャンネル、第2のチャンネル、第3のチャンネルで、動作する。第1、第2、および第3のチャンネルというここでの特定の番号付けは、特定の周波数を示すのではなく、第1、第2、および第3のチャンネルがそれぞれ互いに異なることを示すということに留意すべきである。WLANにおけるワイヤレス通信デバイス(個人105によって携帯される)は、地理的に最も近接したAPを用いて通信するように見えるであろうが、必ずしもそうではない。
【0038】
むしろ、慣習的に、ワイヤレス通信デバイスは、複数のAPの各々を走査し、また、この複数のAPの各々のグレードを提供することにより、どのAPに接続するかを決定する。各APのグレードは、例えば、個々のAPのパフォーマンススピード性能/容量、ネットワーク負荷、受信信号強度表示(RSSI)、およびAPの信号対ノイズ比(SNR)を含め、いくつかの要因に基づく。最高グレードのAPが、WLAN通信を確立するために個々のワイヤレス通信デバイスによって選択される。しかしながら、慣習的に、WLAN処理に対するLTE信号の影響、LTE処理に対するWLAN信号の影響、およびデバイスのスループットに与えるそれらの相互の影響は、考慮されていない。
【0039】
本発明の原理に従ったワイヤレス通信デバイスは、LTE規格に従ってデータを送信および受信するように構成された第1のチップと、この第1のチップと並行してWLANでデータを送信および受信する働きをするように構成された第2のチップとを含む。第1のチップおよび第2のチップはともに処理ユニットを形成する。この新規性のあるワイヤレス通信デバイスが
図1に示される環境に導入された場合、デバイスは、やはり、WLAN通信が生じ得る、全ての可能性のあるAPを走査する。
【0040】
続いて、処理ユニットは最適なAPを特定する。最適なAPは、各APのために、第2のチップによるWLANでのデータの送信または受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップによるデータの送信または受信が、第1のチップおよび第2のチップのスループットを減少させるかどうかを少なくとも判定することを含め、複数の要因に基づいて特定される。特に、任意のLTE信号が、第2のチップに指定されたWLAN信号の受信をブロックするかどうかを判定するために、各異なるAPの特定のチャンネルは、隣接するLTEバンドの既知の周波数を考慮して分析される。そうである場合、第2のチップのスループットは減少されるであろう。さらに、第1のチップによって受信された信号が相互変調されるかどうかを判定するために、各異なるAPの特定のチャンネルは、隣接するLTEバンドの既知の周波数を考慮して分析される。そうである場合、第1のチップのスループットはやはり減少される。
【0041】
最適なAPの特定は、ワイヤレス通信デバイスがWLANの範囲内にあるとすぐに決定され、かつデバイスが、このWLANの範囲内に維持される限りは決定され続けるということに留意すべきである。それゆえ、最適のAPに接続する前に、処理ユニットは、第2のチップが最適のAP以外のAPに予め接続されているかどうかを判定する。第2のチップが、最適のAP以外のAPを介してWLANに予め接続されている場合、第2のチップは、この最適でないAPから切断される。続いて、第2のチップは最適のAPに接続される。上記で使用される「接続される」という表現は単に、第2のチップが、特定のAPによって使用されている特定のチャンネルでデータを送信および受信するように構成されることを意味する。「切断」という表現は単に、データが特定のチャンネルでもはや送信および受信されないことを示している。
【0042】
上述のように、従来、WLANデバイスが接続するAPを決定する際に考慮されるいくつかの要因がある。そしれこれらの要因も、個々のAPのパフォーマンススピード性能/容量、ネットワーク負荷、RSSI、およびSNRを含み得る。この列挙は、包括的であることを意図していない。これらおよびその他の要因も、ワイヤレス通信デバイスのために最適なAPの特定にあたってさらに含まれ得る。
【0043】
具体的には、最適のAPを特定することは、上記の要因に基づいて、複数のAPの各々の初期のグレードを提供することを含む。このようなグレーディングは、上記のとおり従来実施されている。しかしながら、特定のAPの第2のチップによるWLANでのデータの送信および受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップによるデータの送信および受信が、特定のAPの第1のチップおよび第2のチップの全体のスループットを減少させるであろうことを決定する場合に、この特定のAPのグレードは下方に調整される。複数のAPのグレードの各々が、第1のチップおよび第2のチップの全体のスループットへの同時のWLAN信号およびLTE信号の影響を補償するように調整が一旦されると、最高グレードのAPが特定され得る。
【0044】
上記のグレーディングの概要の一例が、ここで次のように次の表に与えられる。
【表1】
【0045】
この例では、表1において理解できるように、所与のWLANにおいて、AP(1)、AP(2)、AP(3)、およびAP(4)の4つのアクセスポイントがある。上記のように、各APには、いくつかの要因に基づく初期のスコアおよび/またはグレードが提供される。ある意味で、全ての要因が、WLANにおいて使用されているワイヤレス通信デバイスのスループットに最終的に関連する。
【0046】
RSSIやSNRなどの要因が信号品質に関連するが、これらの要因を考慮しても、究極の懸念は、どれ程のデータがワイヤレス通信デバイスによって所定の時間期間に確実に処理され得るか、ということである。この例では、WLANデータ通信とLTEデータ通信の両方の観点から(但し、同時のWLAN通信およびLTE通信は考慮しない)ワイヤレス通信デバイスの全体のスループットを反映する初期のスコアが与えられる。例えば、AP(1)にはグレード42が提供され、AP(2)にはグレード56が提供され、AP(3)にはグレード58が提供され、AP(4)にはグレード64が提供される。
【0047】
表1に見られるように、グレードが64であるAP(4)は、1位にランク付けされるAPである。それゆえ、従来、WLANおよびLTE通信が可能なワイヤレス通信デバイスは、AP(4)に割り当てられたチャンネルで、WLAN信号を送信および受信するであろう。しかしながら、各異なるAPのために、ワイヤレス通信デバイスは、WLANでの(WLANチップによる)データの受信が、LTE規格に従ったLTEチップによるデータの同時の送信によってブロックされるかどうかを判定する。ワイヤレス通信デバイスは、さらに、各異なるAPのために、WLANでの第2のチップによるデータの送信が、LTE規格に従ったLTEチップによる信号の受信の間相互変調を引き起こすかどうかを判定する。
【0048】
これらの付加的な検討事柄を考慮すると、WLANチップとLTEチップの全体のスループットが減少される場合、グレードは下方に調整される。それゆえ、表1において、AP(1)には調整されたグレード40が提供されるが、AP(2)の初期のグレードは変化しないことが理解され得る。これは、勿論、AP(2)を介した同時のWLAN信号およびLTE信号の処理によるスループットの損失がないことを示している。
【0049】
AP(3)には調整されたグレード54が提供され、AP(4)には調整されたグレード52が提供される。それゆえ、4つのAPのうちの3つが、これらのAPを介したWLAN信号とLTE信号の同時の処理により、ある種の下方へのグレーディングを受ける。調整されたグレードが各APに提供されると、特定のWLANにおいて動作する複数のAPのうちのどれが、最高の調整されたグレードを備えるかを判定する。表1の例において、最初に3番目に低いグレードを備えたAP(2)が、ここで最高のグレード(56であり、第1にランク付けされる)を有する。このように、検討中の特定のワイヤレス通信デバイスは、AP(2)が動作するチャンネルでWLAN通信を処理するべきである。
【0050】
図2は、データをワイヤレスに送信および受信可能なデバイス201を示す。ワイヤレス通信デバイス201は、トンラシーバ221、処理ユニット203、第1の(LTE)チップ205、第2の(WLAN)チップ207、メモリ209、ディスプレイメカニズム223、キーパッドおよび/またはタッチスクリーン225、スピーカ227、および音声増幅メカニズム229を含む。第1のチップ205および第2のチップ207を含む処理ユニット203は、1つまたは複数のマイクロプロセッサおよび/あるいは1つまたは複数のデジタル信号プロセッサを含み得る。処理ユニット203の特定の処理機能は、両チップ205、207とは無関係のマイクロプロセッサによって実行され得る。
【0051】
メモリ209は、処理ユニット203と、第1のチップ205および第2のチップ207とに接続され得、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラマブルROM(PROM)、および/または電気的消去可能なリードオンリメモリ(EEPROM)を含み得る。メモリ209は、とりわけ、第1のチップ205および第2のチップ207を含む処理ユニット203によって実行されるコンピュータプログラムのための、オペレーティングシステム、データ、および変数211を記憶するための複数の記憶場所を含み得る。コンピュータプログラムにより、第1のチップ205および第2のチップ207を含む処理ユニット203は、ここで述べたような様々な機能に関連して動作することとなる。
【0052】
第1の機能213が、処理ユニット203に複数のAPを決定させ、この複数のAPを介してデータがWLANで第2のチップによって送信および受信され得る。第2の機能215が、処理ユニット203に、各異なるAPに対し、第2のチップ207によるWLANでのデータの送信または受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップ205によるデータの送信または受信が、第1のチップ205と第2のチップ207の全体のスループットを減少させるかどうかを、少なくとも決定することを含め、複数の要因に基づいて最適なAPを特定させる。
【0053】
第3の機能217が、処理ユニット203に、第2のチップ207が最適のAP以外のAPを介してWLANに予め接続される場合に、最適のAP以外のそのAPから第2のチップ207を切断させる。第4の機能219が、処理ユニット203に、最適のAPを介してWLANに第2のチップ207を接続させる。メモリ209は付加的に、本明細書において具体的に言及されないその他のデータを記憶するための様々なデータベース220を含む。
【0054】
ディスプレイメカニズム223、キーボードおよび/またはタッチスクリーン225、スピーカ227、および音声増幅メカニズム229は、それぞれ、必要に応じて従来の電気通信機能を提供する働きをする。トランシーバ221が、WLANネットワーク上ともにLTE規格に従って信号を処理するための、複数のアンテナまたは単一のアンテナを含み得ることに留意すべきである。
【0055】
図3は、ワイヤレスにデータを送信および受信可能なデバイスにおいて実装される方法を示すフローチャートである。301で、方法はスタートする。方法が実装されるデバイスは、LTE規格に従ってデータを送信および受信する第1のチップと、第1のチップと並行して動作し、また、WLANでデータを送信および受信する第2のチップとを備える処理ユニットを含む。方法は、303で、処理ユニットにより複数のAPを決定することを含み、この複数のAPを介して、データはWLANで第2のチップにより送信および受信され得る。
【0056】
方法はさらに、305で、各異なるAPのために、第2のチップによるWLANでのデータの送信または受信と同時の、LTE規格に従った第1のチップによるデータの送信または受信が、第1のチップと第2のチップの全体のスループットを減少させるかどうかを少なくとも決定することを含め、複数の要因に基づき最適なAPを特定することを含む。307で、方法はさらに、第2のチップが、最適なAP以外のAPを介してWLANに予め接続される場合に、処理ユニットにより、最適なAP以外のこのAPから第2のチップを切断することを含む。方法は最後に、309で、処理ユニットが最適のAPを介してWLANに第2のチップを接続させることを含む。311で方法は終了する。
【0057】
「ワイヤレス通信ユニット」という用語は、ユーザと通常は関連したデバイスと、例えばサービス契約に従った公衆ネットワークにより、または企業ネットワークなどの私的なネットワーク内で使用され得るワイヤレス携帯デバイスとを意味する。このようなユニットが、異なるネットワークにおける動作のために配置および構築されるならば、このようなユニットの例には、パーソナルデジタルアシスタント、パーソナルアサイメントパッド、ワイヤレス動作を備えたパーソナルコンピュータ、携帯電話機またはデバイス、あるいはこれらの均等物が含まれる。
【0058】
「ワイヤレスローカルエリアネットワークでのデータの送信および受信」または「WLANでのデータの送信および受信」という表現は、802.11規格または商業的に利用可能なWiFi規格に従って生じるワイヤレス通信デバイスによるあらゆる送信または受信を含む。本開示はISMバンドにおける802.11通信を強調し得るが、本開示に記載された原則は、2000~2483.5MHzの間のISMバンドの一部におけるBluetooth(商標)通信にも同様に適用できる。より具体的には、同時のWLAN通信およびLTE通信を対象とした特許請求の範囲と同等の範囲から成る、同時のBluetooth(商標)通信およびLTE通信を対象とした任意の特許請求の範囲が、本開示によってサポートされるとみなすべきである。
【0059】
「ロングタームエボリューション規格に従ってデータを送信および受信する」または「LTE規格に従ってデータを送信および受信する」という表現は、国際電気通信連合によるInternational Mobile Telecommunications‐2000(IMT‐2000)仕様を実行する第3世代移動通信に基づく、または、International Mobile Telecommunications Advanced(IMT‐Advanced)仕様と名付けられた、4G規格のために2008年3月に国際電気通信連合無線部門(ITU-R)が規定した一連の要件に基づく、あらゆる送信または受信を含む。
【0060】
しかしながら、モバイルWiMAXおよびLTEの最初のリリースバージョンが、IM
T‐Advanced仕様の1Gビット/ピークビットレートよりもはるかに低いレートをサポートすることがよく知られているように、「LTE規格に従ってデータを送信および受信する」という表現は、3PPプロジェクトのリリース8およびリリース9に従って設計されたものを含め、商業的に既知の任意のLTE規格の下で信号を処理することを含むと理解すべきである。さらに、「LTE規格に従ってデータを送信および受信する」という表現は、IEEE802.16下の規格のWiMAXファミリーに従って通信を処理することを含むと理解すべきである。
【0061】
請求される発明の範囲内で、多くの改変がなされ得、多くのその他の実施形態が可能であることを当業者は理解するであろう。