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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20240327BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C1/025
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020047303
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146833
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068444(JP,A)
【文献】特開2015-108381(JP,A)
【文献】特表2008-543455(JP,A)
【文献】特開2005-013712(JP,A)
【文献】特開2007-136211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/22 - B60N 2/235
A47C 1/024 - A47C 1/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッション及び前記シートバックのいずれか一方に固定される第1フレーム及び他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面を構成する樹脂製のブッシュが組み付けられる外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて前記外歯に噛合可能であり当該外歯よりも歯数が多い内歯が形成され、前記内歯に対して外周面にて対向する円筒部が形成される内歯歯車と、
回転軸と、
径方向の厚さが一定であって、前記回転軸に連結されることで当該回転軸の回転に伴い前記円筒部の外周面に対して摺動するSK5製の板材料によって成形される連結部材と、
先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、前記先端側が互いに離れるように前記連結部材と前記ブッシュとの間に介挿されるSCM415製の一対のカムと、
前記一対のカムを互いに離反させる方向に付勢する付勢部材と、
を備え
前記カムの外周面と前記ブッシュの内周面との摩擦力よりも前記カムの内周面と前記連結部材の外周面との摩擦力が大きくなることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記連結部材には、軸方向にへこむ凹部が形成され、
前記カムには、前記凹部に対して周方向の所定の隙間が介在するように入り込む凸部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置として下記特許文献1に開示されるリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置は、内歯歯車の内周面を構成するブッシュと外歯歯車のボス部の外周面との間に、回転軸とともに回転するU字状の連結部材と一対のくさび状部材とを配置して、一対のくさび状部材を離反させるようにスプリングによって付勢するように構成されている。
【0003】
このように構成されることで、回転軸が回転しない場合には、スプリングによる付勢によって一対のくさび状部材がそれぞれ連結部材とブッシュとの間に嵌まり込むので、外歯歯車と内歯歯車との相対回転が規制されて、シートクッションに対するシートバックの傾動角度が保持される。その一方で、回転軸が回転する際、回転軸とともに回転する連結部材から受ける摩擦力によって一方のくさび状部材が嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すことで、くさび状部材による規制が解除される。これにより、回転軸の回転に応じて外歯歯車及び内歯歯車が相対回転することで、シートバックがシートクッションに対して傾動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-207253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような構成では、U字状の連結部材は、くさび状部材と接触する部位において、径方向の厚さが先端側ほど厚くなるように形成する必要がある。回転軸が回転する際、くさび状部材は、U字状の連結部材によって外周面側からの摩擦力を受けるとともに、この外周面側からの摩擦力による回転を妨げようとする摩擦力を、外歯歯車のボス部に接触している内周面側から受けることになる。一対のくさび状部材とU字状の連結部材及び外歯歯車のボス部とがいずれも同じ金属製であることから、外周面側からの摩擦力と内周面側からの摩擦力とがほぼ等しくなるため、U字状の連結部材の径方向の厚さが一定であれば、くさび状部材が円滑に回転し難くなる。このため、U字状の連結部材を径方向の厚さが先端側ほど厚くなるように形成することで、U字状の連結部材とくさび状部材との接触部分が先端側ほど小径となるような圧力角が生じるので、この圧力角によって上記回転軸の回転時にくさび状部材を回転させる力を発生させることができる。
【0006】
しかしながら、U字状の連結部材を径方向の厚さが先端側ほど厚くなるように形成することから、厚板の精密打ち抜き加工や鍛造加工等の加工方法を採用する必要があり、形状も複雑になるので、製造コスト低減が困難になるだけでなく、加工性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、径方向の厚さが一定の連結部材を用いて回転軸の回転に応じて一対のカムを回転可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
シートクッション(11)に対してシートバック(12)を傾動可能に保持するシート(10)のリクライニング装置(20)であって、
前記シートクッション及び前記シートバックのいずれか一方に固定される第1フレーム(21)及び他方に固定される第2フレーム(22)と、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯(23a)が形成され、内周面を構成する樹脂製のブッシュ(23b)が組み付けられる外歯歯車(23)と、
前記第2フレームに連結されて前記外歯に噛合可能であり当該外歯よりも歯数が多い内歯(24c)が形成され、前記内歯に対して外周面にて対向する円筒部(24e)が形成される内歯歯車(24)と、
回転軸(25)と、
径方向の厚さが一定であって、前記回転軸に連結されることで当該回転軸の回転に伴い前記円筒部の外周面に対して摺動するSK5製の板材料によって成形される連結部材(28)と、
先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、前記先端側が互いに離れるように前記連結部材と前記ブッシュとの間に介挿されるSCM415製の一対のカム(31a,31b)と、
前記一対のカムを互いに離反させる方向に付勢する付勢部材(29)と、
を備え
前記カムの外周面と前記ブッシュの内周面との摩擦力よりも前記カムの内周面と前記連結部材の外周面との摩擦力が大きくなることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、径方向の厚さが一定であって、回転軸の回転に伴い内歯歯車における円筒部の外周面に対して摺動するSK5製の板材料によって成形される連結部材と、先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、先端側が互いに離れるように連結部材と外歯歯車の内周面を構成する樹脂製のブッシュとの間に介挿されるSCM415製の一対のカムと、これら一対のカムを互いに離反させる方向に付勢する付勢部材と、が設けられる。
【0010】
これにより、回転軸が回転しない場合には、付勢部材による付勢によって一対のカムが連結部材とブッシュとによって構成されるくさび空間にそれぞれ嵌まり込むので、回転軸が回転しない状態での外歯歯車と内歯歯車との相対回転が規制される。これに対して、回転軸が一方向に回転する際、回転軸とともに回転する連結部材によって、一方のカムは付勢部材による付勢方向に沿う摩擦力を受け、他方のカムは付勢部材による付勢方向に抗するように内周面側から摩擦力を受ける。その際、他方のカムは、上記内周面側からの摩擦力による回転を妨げようとする摩擦力を、ブッシュに接触している外周面側から受ける。連結部材及び一対のカムは金属製であってブッシュは樹脂製であることから、内周面側からの摩擦力(回転させようとする力)が外周面側からの摩擦力(回転を妨げる力)によりも大きくなるため、他方のカムを付勢部材による付勢に抗して回転させることができる。また、回転軸が逆方向に回転する場合には、回転軸とともに回転する連結部材によって一方のカムを付勢部材による付勢に抗して回転させることができる。したがって、径方向の厚さが一定の連結部材を用いて回転軸の回転に応じて一対のカムを回転可能な構成を実現することができる。
【0011】
請求項2の発明では、連結部材には、軸方向にへこむ凹部が形成され、カムには、凹部に対して周方向の所定の隙間が介在するように入り込む凸部が形成される。これにより、カムが、連結部材を介した内周面側からの摩擦力によって連結部材とともに回転する場合には、凹部とこの凹部に入り込んだ凸部とが隙間を維持するようにともに回転する。仮に、カムと連結部材との間で回転が一時的にずれたとしても、凹部の縁が凸部に接触するため、凹部と凸部との接触状態が維持されるようにしてカムと連結部材とをともに回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のリクライニング装置を搭載する車両用シートの一例を概念的に示す側面図である。
図2】リクライニング装置の側面図である。
図3図2のリクライニング装置の分解斜視図である。
図4】連結部材の斜視図である。
図5図5(A)は、図4の連結部材の正面図であり、図5(B)は、図4の連結部材の側面図である。
図6】一対のカムの斜視図である。
図7図7(A)は、図6の一方のカムの正面図であり、図7(B)は、図6の一方のカムの側面図である。
図8図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
図9図2に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
図10】連結部材が回転する際にカムが受ける内周面側からの摩擦力と外周面側からの摩擦力との関係を説明する説明図である。
図11図9に示す状態から、シャフト、連結部材、一対のカム及び外歯歯車を回転させた状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明に係るリクライニング装置20を搭載する車両用シート10の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備えた車両用シート10は、着座者の座部を受けるシートクッション11と、このシートクッション11に対して傾動可能であって着座者の背部を受けるシートバック12とを備えている。
【0014】
シートクッション11の骨格となるシートクッションフレーム11aと、シートバック12の骨格となるシートバックフレーム12aとが、シートクッションフレーム11aの端部に設置されたリクライニング装置20の第1フレーム21及び第2フレーム22等を介して連結されている。そして、当該リクライニング装置20に設けられる傾動用モータ(図示略)の回転駆動に応じて、シートバック12がシートクッション11に対して傾動可能となっている。
【0015】
次に、リクライニング装置20の構成について、図面を参照して説明する。
図2及び図3に示すように、リクライニング装置20は、上述した両フレーム21,22に加えて、外歯歯車23、内歯歯車24、シャフト25、プレートカバー26、シャフトカバー27、連結部材28、スプリング29及び一対のカム31a,31bを備えている。なお、図2では、説明の便宜上、両フレーム21,22の記載を省略している。
【0016】
図3に示すように、外歯歯車23は、略円環状に形成されており、その外周面には、外歯23aが形成されている。また、外歯歯車23の内周面には、耐摩耗性に優れ、カム31a,31bの接触部分での摩擦力を低減するために、摩擦係数の小さな円筒形の樹脂製のブッシュ23bが嵌め込まれている。すなわち、外歯歯車23には、内周面を構成する樹脂製のブッシュ23bが組み付けられる。また、外歯歯車23の第1フレーム21側の側面には、第1フレーム21に組み付けるための4つの略円弧状の突起23cが設けられている。
【0017】
図3に示すように、内歯歯車24は、内周面に内歯24cが形成される外筒部24aと、貫通穴24dを中心とする円筒状の内筒部24eが形成される側板部24bとを備えている。内歯24cは、外歯23aに対して偏心して噛合するように当該外歯23aよりも歯数が多くなるように形成されている。具体的には、例えば、外歯23aの歯数が32に設定される場合には、内歯24cの歯数が33に設定される。
【0018】
また、内歯24cは、その幅(軸方向長さ)が外歯23aの幅よりも長くなるように設定されており、側板部24b側の部位が、外歯歯車23及び内歯歯車24の噛合時に外歯23aに噛合しないように形成されている。また、側板部24bには、当該内歯歯車24を第2フレーム22に固定するための3つの略円弧状の突起24fが設けられている。なお、内筒部24eは、「円筒部」の一例に相当し得る。
【0019】
図3に示すように、シャフト25は、樹脂製の回転軸であって、内歯歯車24の内筒部24eに対して同軸的であって回転自在に嵌合するように形成されている。このシャフト25は、シートバック12をシートクッション11に対して傾動させるときに上記傾動用モータの回転駆動に応じて所定の減速比で回転されるものであり、シャフト25の内面には、傾動用モータの回転駆動に応じて回転する回転部材を連結するためのセレーションが形成されている。また、シャフト25の第1フレーム21側の端部には、連結部材28に係合するための複数の係合突起25aが設けられている。
【0020】
連結部材28及び一対のカム31a,31bは、外歯歯車23の内周面を構成するブッシュ23bと内歯歯車24の内筒部24eの外周面との間に配置(介挿)されることで、外歯歯車23に対して内歯歯車24を偏心させた状態で、外歯23aに内歯24cの一部を噛合させるものである。
【0021】
図4及び図5に示すように、連結部材28は、金属(例えば、SK5)製の板材料を曲げたプレス加工によって成形されるもので、隙間28aを除くと、径方向の厚さが一定の薄肉円筒状となるように形成されている。連結部材28には、第1フレーム21側に、シャフト25の各係合突起25aが係合する係合凹部28bが複数形成され、第2フレーム22側に、2つの凹部28cが形成されている。この連結部材28は、内周面にて内筒部24eの外周面に対して摺動可能に形成されている。
【0022】
図3及び図6に示す一対のカム31a,31bは、対称形状であるため、カム31aについて、詳細形状について説明する。
図6及び図7に示すように、カム31aは、金属(例えば、SCM415)製のくさび状部材であって、先端部に設けられる凸部32を除いて、先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されている。例えば、図7(A)に示すように、カム31aの先端側部位の径方向の厚さt1は、カム31aの基端側(反先端側)部位の径方向の厚さt2よりも薄くなっている。凸部32は、後述する介挿状態時に、連結部材28の凹部28cに隙間を介して入り込むもので、その円周方向の長さが凹部28cよりも短くなるように形成されている。このカム31aの基端側の端面には、付勢部材として機能するスプリング29からの付勢力を受けるための溝部33が設けられている。
【0023】
このように構成される連結部材28及び一対のカム31a,31bは、凸部32が凹部28cに入り込んだ状態で、図8及び図9に示すように、噛合状態の外歯歯車23のブッシュ23bと内歯歯車24の内筒部24eの外周面との間に介挿される。そして、一対のカム31a,31bは、スプリング29によって互いに離反する方向に付勢される。また、連結部材28は、図8に示すように、係合凹部28bにてシャフト25の係合突起25aに係合しており、シャフト25とともに回転可能な状態になっている。
【0024】
この介挿状態で、噛合状態の内歯歯車24の外筒部24aの端部にプレートカバー26を溶接することで、外歯歯車23の軸方向の移動が規制される。そして、シャフトカバー27にてシャフト25等を位置決めした状態で、突起23cを利用して外歯歯車23を第1フレーム21に溶接固定するとともに、突起24fを利用して内歯歯車24を第2フレーム22に溶接固定することで、リクライニング装置20の組み付けが完了する。
【0025】
次に、本実施形態の特徴的構成について、図9図11を参照して説明する。
上述のような介挿状態では、図9に示すように、連結部材28は、内周面にて内筒部24eの外周面に面接触し、一対のカム31a,31bは、スプリング29から付勢力を受けることで、それぞれ外周側にてブッシュ23bに面接触するとともに内周側にて連結部材28に面接触する。
【0026】
このような接触状態では、シャフト25が回転しない場合には、スプリング29による付勢によって一対のカム31a,31bが連結部材28とブッシュ23bとによって構成されるくさび空間にそれぞれ嵌まり込むので、シャフト25が回転しない状態での外歯歯車23と内歯歯車24との相対回転が規制される。
【0027】
これに対して、図10に示すように、シャフト25が矢印S方向に回転する場合には、シャフト25とともに回転する連結部材28によって、カム31bはスプリング29による付勢方向に沿う摩擦力を受け、カム31aはスプリング29による付勢方向に抗するように内周面側から摩擦力F1を受ける。その際、カム31aは、上記内周面側からの摩擦力F1による回転を妨げようとする摩擦力F2を、ブッシュ23bに接触している外周面側から受ける。
【0028】
連結部材28及び一対のカム31a,31bは金属製であって、ブッシュ23bは摩擦係数が小さくなる樹脂製であることから、内周面側からの摩擦力(回転させようとする力)F1が外周面側からの摩擦力(回転を妨げる力)F2によりも大きくなる。このため、径方向の厚さが一定の連結部材28であっても、カム31aを、嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すように、スプリング29による付勢に抗して回転させることができる。これにより、図11に示すように、連結部材28とともに回転するカム31bから回転方向の摩擦力を受けている外歯歯車23を、カム31a及びカム31bとともに矢印S方向に回転させることができる。
【0029】
また、シャフト25が矢印Sに対して逆方向に回転する場合には、シャフト25とともに回転する連結部材28によって、カム31bを、嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すように、スプリング29による付勢に抗して上記逆方向に回転させることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るリクライニング装置20では、径方向の厚さが一定であって、シャフト25の回転に伴い内歯歯車24における内筒部24eの外周面に対して摺動する金属製の連結部材28と、先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、先端側が互いに離れるように連結部材28と外歯歯車23の内周面を構成する樹脂製のブッシュ23bとの間に介挿される金属製の一対のカム31a,31bと、これら一対のカム31a,31bを互いに離反させる方向に付勢するスプリング29と、が設けられる。
【0031】
このように構成することで、径方向の厚さが一定の連結部材28であっても、カム31a又はカム31bを、嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すように、スプリング29による付勢に抗して回転させることができる。このため、連結部材28をプレス加工のような加工性が良く安価な加工方法で形成することができる。
【0032】
特に、連結部材28は、径方向の厚さが一定に形成されるため、径方向の厚さが先端側ほど厚くなるように形成される場合と比較して、くさび状のカム(31a,31b)との間で生じる摩擦力がばらつき難くなるので、外歯歯車23の回転が円滑になり、シートクッション11の傾動時の挙動をより一層安定させることができる。
【0033】
さらに、連結部材28には、第2フレーム22側に、軸方向にへこむ2つの凹部28cが形成され、一対のカム31a,31bには、凹部28cに対して所定の隙間が介在するように入り込む凸部32がそれぞれ形成される。
【0034】
これにより、カム31a(31b)が、連結部材28を介した内周面側からの摩擦力F1によって連結部材28とともに回転する場合には、凹部28cとこの凹部28cに入り込んだ凸部32とが隙間を維持するようにともに回転する(図11参照)。仮に、カム31a(31b)と連結部材28との間で回転が一時的にずれたとしても、凹部28cの縁が凸部32に接触するため、凹部28cと凸部32との接触状態が維持されるようにしてカム31a(31b)と連結部材28とをともに回転させることができる。
【0035】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態及び変形例等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)連結部材28とシャフト25とは、係合凹部28bと係合突起25aとの係合によって同軸的に回転するように連結されることに限らず、他の形状、例えば、連結部材28に形成される凸部とシャフト25に形成される凹部との嵌合等によって同軸的に回転するように連結されてもよい。
【0036】
(2)第1フレーム21がシートクッションフレーム11aに連結されるとともに第2フレーム22がシートバックフレーム12aに連結されることに限らず、第1フレーム21がシートバックフレーム12aに連結されるとともに第2フレーム22がシートクッションフレーム11aに連結されてもよい。また、第1フレーム21及び第2フレーム22は、シートクッションフレーム11aやシートバックフレーム12aの一部であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…車両用シート
11…シートクッション
12…シートバック
20…リクライニング装置
21…第1フレーム
22…第2フレーム
23…外歯歯車
23a…外歯
23b…ブッシュ
24…内歯歯車
24c…内歯
24e…内筒部(円筒部)
25…シャフト(回転軸)
28…連結部材
28c…凹部
29…スプリング(付勢部材)
31a,31b…カム
32…凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11