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特許7460901連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/128 20060101AFI20240327BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B22D11/128 340A
B22D11/128 340F
B22D11/128 340D
F16C13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020096745
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021186845
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 亮太
(72)【発明者】
【氏名】石森 裕一
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-253810(JP,A)
【文献】特開昭58-081916(JP,A)
【文献】特開昭59-137170(JP,A)
【文献】特表2006-524136(JP,A)
【文献】実開昭55-134057(JP,U)
【文献】特開昭58-093549(JP,A)
【文献】実開昭55-106563(JP,U)
【文献】特開2011-177724(JP,A)
【文献】特開2017-106620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/128
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体と、ロール本体の外周側にスリーブが嵌合され、
繊維強化セラミックス製作された回転防止キーによりロール本体とスリーブが固定されていることを特徴とする連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール。
【請求項2】
スリーブが複数のリング状部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール。
【請求項3】
前記スリーブにはロールの周方向に延びるスリット状溝部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール。
【請求項4】
前記スリーブは複数のリング状部材で構成され、
繊維強化セラミックス製作されたスペーサが前記複数のリング状部材の間に配置されて前記スリット状溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール。
【請求項5】
ロール本体とスリーブの間に繊維強化セラミックス製作された層が、回転防止キーに対しロール周方向にずれた箇所に備えられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロールに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の製綱分野における連続鋳造において、鋳型後段の鋳片搬送用セグメントロール(以下、セグメントロールと称する。)は、マシンストップ時に、搬送しえいる鋳片からセグメントロールへの偏熱により熱応力が発生、熱変形で曲がってしまうことで、セグメントロール表面に熱亀裂が発生することがある。そして再稼働後、熱変形で曲がった当該セグメントロールは、自身の回転および搬送される鋳片の重量により、繰り返し曲げ矯正がかかるため、前記亀裂が円周方向、および径方向に進展し、最終的に当該セグメントロールが折損する場合がある。このため、特許文献1に記載されているように、折損防止を目的としたスリーブや亀裂進展防止粒子埋め込み等、多くのセグメントロール構造に関する対策があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-137170号公報
【0004】
しかしながら、セグメントロールは熱の負荷および熱変形が大きいため、スリーブを使い続けても亀裂が進展し、やはり折損に至る場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景でなされた発明であり、本発明が解決しようとする課題は、セグメントロールの熱変形による亀裂成長を回避し、寿命低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、ロール本体と、ロール本体の外周側にスリーブが嵌合され、繊維強化セラミックスを用いて製作された回転防止キーによりロール本体とスリーブが固定されていることを特徴とする連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロールとする。
【0007】
また、スリーブが複数のリング状部材で構成されていてもよく、さらに前記スリーブにはロールの周方向に延びるスリット状溝部が形成された構成であるが好ましい。
【0008】
また、前記スリーブは複数のリング状部材で構成され、繊維強化セラミックスを用いて製作されたスペーサが前記複数のリング状部材の間に配置されて前記スリット状溝部が形成された構成であることが好ましい。
【0009】
また、ロール本体とスリーブの間に繊維強化セラミックスを用いて製作された層が、回転防止キーに対しロール周方向にずれた箇所に備えられている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明を用いると、セグメントロールの熱変形による亀裂成長を回避でき、寿命低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】連続鋳造機の一例の側面図である。但し、連続鋳造機に用いられるセグメントロールの部分拡大図も示している。
図2】実施形態の連続鋳造における鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロールの一例の分解斜視図である。
図3図2のセグメントロール周方向および胴長方向の断面図である。
図4】リング状に分断したスリーブを用いた場合の鋳片搬送用スリーブ付きセグメントロール胴長方向断面図である。
図5】一本の筒状のスリーブに部分的に径方向の長さが短い個所を作ることでスリット状溝部を設けた例を表す図である。
図6】複数枚重ねることでスリーブを構成するリング状部材に対し、他のリング状部材と隣り合う箇所に部分的に径方向の長さが短い個所を作ることで、リング状部材を重ねた際にスリーブにスリット状溝部を設けた例を表す図である。
図7】複数のリング状部材を備えるスリーブに関し、スリット形成用スペーサをリング状部材の間に配置してスリット状溝部を設けた例を表す図である。
図8】ロール本体とスリーブの間であって、回転防止キーと周方向にずれた箇所に、繊維強化セラミックスで製作した層を備えた例における円周方向断面図およびその断面図についての胴長方向A-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。図2から図3に示すことから理解されるように、本実施形態のスリーブ付きセグメントロール1は、ロール本体2とロール本体2の外周側に位置するスリーブ3を備え、繊維強化セラミックス(CMC:Ceramic Matrix Composite)を用いて製作した回転防止キー4によりロール本体2とスリーブ3が固定されている。繊維強化セラミックスは、高温強度が大きく、亀裂も進展し難いため、スリーブ3をロール本体2に固定するのに好適である。また回転防止キー4は、キー溝19内に1本、乃至は短いものを複数本配置する。回転防止キー4が1本の場合はスリーブ付きセグメントロール1の胴長方向に長く、抑え部材6の部分を除くキー溝19のほぼ全長にわたるものが好ましい。短いものを複数本配置する場合も、同様である。
【0013】
尚、図2に示すことから理解されるように、実施形態においては、円柱状のロール本体2の両端に設ける抑え部材6に挟まれるように、回転防止キー4が配置される。つまり、回転防止キー4は、ロール本体2、スリーブ3及び抑え部材6により、周囲が囲われるように配置される。このため、高価だが酸化・減肉がしやすい繊維強化セラミックスが早期に劣化することを抑制することができる。
【0014】
また実施形態の抑え部材6は、スリーブ3及びロール本体2に設けられたスリット19に、回転防止キー4と同様に挿入されるものであるが、これらの抑え部材6は、スリーブ3及びロール本体2に溶接されることが好ましい。
【0015】
また、実施形態のスリーブ付きセグメントロール1は、その回転中心周りに貫通穴29を備えている。この貫通穴29は冷却水などを通すために使用されるため、スリーブ付きセグメントロール1が昇温するのを抑制することができる。
【0016】
本発明であれば、周囲の温度や鋳片の温度、鋳片搬送の衝撃などの影響により、スリーブ3の表面に周方向の亀裂が入り、径方向に向けて進展しても、スリーブ3と回転防止キー4の境界部分、スリーブ3とロール本体2の境界部分は不連続であるため、回転防止キー4またはロール本体2への亀裂の進展が抑制される。したがって、熱亀裂が発生してもロール本体2へ伝播しないことから、スリーブ付きセグメントロール1の寿命が短くなるのを抑制することが可能となる。
【0017】
なお、スリーブ3の施工の都合や、亀裂が入った部分のみ交換して寿命を延長するために、図4に示すように、リング状に分断したスリーブ36をロール本体2に嵌合、回転防止キー4を用いてロール本体2に固定し、一緒に回転させることが好ましい。
【0018】
スリーブ3の表面は鋳片からの熱の影響を大きく受ける部分であるため、図5に示すように、周方向に延びるスリット状溝部31がスリーブ3に備えられた構成とするのが好ましい。このようにすると、スリーブ3が加熱された場合に、スリーブ3の胴長方向に向けて膨らむことができ、スリーブ3に亀裂が入ることや、亀裂が拡大することを抑制できる。スリット状溝部31の設け方に特段の制限は無いが、一本の筒状のスリーブ3に部分的に径方向の長さが短い個所を作ることでスリット状溝部31を設けても良い。
【0019】
リング状に分断したスリーブ36を用いる場合は、図6に示すように、複数枚重ねることでスリーブ3を構成するリング状部材36に対し、他のリング状部材36と隣り合う箇所に部分的に径方向の長さが短い個所を作ることで、リング状部材36を重ねた際にスリーブ3にスリット状溝部31を設けられるようにしても良い。
【0020】
また、図7に示すことから理解されるように、複数のリング状部材37を備えるスリーブ3に関し、スリット形成用スペーサ38をリング状部材37の間に配置してスリット状溝部31を設けるようにしても良い。この場合、スリット形成用スペーサ38は金属でもよいが、繊維強化セラミックスを用いて製作したものとするのが好ましい。
【0021】
ところでスリーブ3の表面に入った亀裂は、時間が経過すると、スリーブ付きセグメントロール1の回転軸側に向けて進展する。ロール本体2及びスリーブ3は金属製であるため、スリーブ3から進展した亀裂がロール本体2まで伝播することも考えられる。そこで、図8に示す例では、ロール本体2とスリーブ3の間であって、回転防止キー4と周方向にずれた箇所に、繊維強化セラミックスで製作した層5を備えた構成としている。
【0022】
この場合、繊維強化セラミックスで製作した層5は、回転軸方向の長さに関し、スリーブ3が鋳片と接触する部分と対応する長さ以上とするのが好ましい。また、回転方向に関し、ロール本体2の周方向全体に設けるようにするのが好ましい。ただし、スリーブ3の強度などを考慮して、間引くように層5を設けても構わない。この場合、ロール本体2とスリーブ3の間に複数の部材を配置しても良いし、部分的に空間を備えた部材をロール本体2とスリーブ3の間に配置しても良い。
【0023】
繊維強化セラミックスは、熱伝導がロール本体2よりも良好なものであるのが好ましく、具体的にはSiCまたはSiCを主成分とするものが好ましい。
【0024】
以上、実施形態を中心として本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 スリーブ付きセグメントロール
2 ロール本体
3 スリーブ
4 回転防止キー
5 層
31 スリット状溝部
37 リング状部材
38 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8