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特許74609121,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの製造方法、および1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの製造方法、および1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/32 20060101AFI20240327BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 37/20 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 39/367 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 205/26 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 209/78 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 211/53 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 213/08 20060101ALI20240327BHJP
   C07C 215/76 20060101ALI20240327BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240327BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C07C17/32
C07C22/08
C07C37/20
C07C39/367
C07C41/30
C07C43/225 A
C07C43/23 A
C07C201/12
C07C205/26
C07C209/78
C07C211/53 CSP
C07C213/08
C07C215/76
C08G73/10
C07B61/00 300
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020571190
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003964
(87)【国際公開番号】W WO2020162408
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019019823
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】細井 健史
(72)【発明者】
【氏名】廣瀧 謙亮
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋介
(72)【発明者】
【氏名】堀 弘人
(72)【発明者】
【氏名】江口 弘
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表昭57-502055(JP,A)
【文献】米国特許第03388097(US,A)
【文献】英国特許出願公告第01036870(GB,A)
【文献】国際公開第2018/123649(WO,A1)
【文献】G. K. Surya Prakash et al.,Fluoroanalogs of DDT: Superacidic BF3 - H2O catalyzed facile synthesis of 1,1,1,-trifluoro-2,2-diarylethanes and 1,1-difluoro-2,2-diarylethanes,Organic Letters,2011年,Vol.13, No.15,pp.4128-4131
【文献】DELVIGS Peter et al.,Addition polyimides from non-mutagenic diamines,High Performance Polymers,2001年,Vol.13,pp.301-312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水条件下、フルオラールとフッ化水素との混合物に、下記一般式[1]:
【化1】
[一般式[1]中、Xはそれぞれ独立して水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲンを表し、mは0~3の整数を表す。Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表し、nは0~(5-m)の整数を表す。]
で表されるアリール化合物を縮合反応させることにより、下記一般式[2]:
【化2】
[一般式[2]中、X、R、m及びnは一般式[1]におけるX、R、m及びnと同じである。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを得る製造方法。
【請求項2】
前記反応に、添加剤として、ルイス酸またはブレンステッド酸を添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ルイス酸または前記ブレンステッド酸が、無機酸、有機酸および金属ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機酸が、リン酸、塩化水素、臭化水素、濃硝酸、濃硫酸、発煙硝酸及び発煙硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記有機酸が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属ハロゲン化物が、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化ホウ素(III)、三塩化アルミニウム(III)、二塩化亜鉛(II)、四塩化チタン(IV)、四塩化スズ(IV)、五塩化アンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応を、有機溶媒を用いることなく行う、請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記反応を、-20℃~+200℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa~4.0MPa(絶対圧)の圧力範囲で行う、請求項1乃至7の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の方法で一般式[2A]:
【化3】
[一般式[2A]中、nは、0~4の整数であり、Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表す。]
で表される芳香族ジアミンを得る工程と、
前記芳香族ジアミンと、一般式[17]:
【化4】
[一般式[17]中、Rは、4価の有機基である。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを重縮合して、一般式[18]:
【化5】
[一般式[18]中、Rは一般式[2B]:
【化6】
[一般式[2B]中、nは、0~4の整数であり、Rは一般式[2A]におけるRと同義である。]
で表される2価の有機基であり、Rは4価の有機基である]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドを得る製造方法。
【請求項10】
が、以下から選択される少なくとも1つの2価の有機基である、請求項9に記載の製造方法。
【化7】
【請求項11】
が、以下から選択される少なくとも1つの4価の有機基である、請求項9または10に記載の製造方法。
【化8】
【請求項12】
ポリイミドの重量平均分子量が、1000以上、1000000以下である、請求項9乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
一般式[2A]で表される前記芳香族ジアミンと、一般式[17]で表される前記テトラカルボン酸二無水物とを縮重合して、一般式[18]で表されるポリイミドを得る前記工程が、一般式[2A]で表される前記芳香族ジアミンと、一般式[17]で表される前記テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、一般式[19]:
【化9】
[一般式[19]中、Rは一般式[18]中のRと同義であり、Rは一般式[17]中のRと同義である。]
で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を得る工程と、
一般式[19]で表される前記ポリアミド酸を脱水閉環して、一般式[18]で表されるポリイミドに変換する工程と、
を含む、請求項9乃至12の何れかに記載の製造方法。
【請求項14】
式[3]:
【化10】
[式[3]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項15】
式[3a]:
【化11】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタンである、請求項14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項16】
式[3b]:
【化12】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)エタンである、請求項14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項17】
式[4a]:
【化13】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、請求項14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項18】
式[4b]:
【化14】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、請求項14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項19】
式[4c]:
【化15】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、請求項14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項20】
式[5]:
【化16】
[式[5]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【請求項21】
式[5a]:
【化17】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタンである、請求項20に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの製造方法、および1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンに関する。
【背景技術】
【0002】
特殊な骨格を有する2,2-ビスアリールエタンは、汎用樹脂モノマーの2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)同様、主にエレクトロニクス分野やモビリティー分野の高機能部材に使用されている樹脂原料モノマー(ポリカーボネート、エポキシ、そしてポリイミド)である。国際公開2016/117237号公報に開示されているように、2,2-ビスアリールエタンの代表的な化合物の一つである2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(慣用名:ビスフェノールE)から得られる樹脂は、一般的に柔軟性と高耐熱性とを両立できる非常にユニークな物性を持つことが知られている。一方、本発明で対象とする、中心骨格にトリフルオロメチル基を有する、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンから得られる樹脂は、低誘電率、低屈折率、高透明性、高溶解性等の物性を有する優れた光学材料であり、これまでに幾つかの製造方法が知られている。
【0003】
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの製造方法に関する従来技術は、フルオラール(2,2,2-トリフルオロアセトアルデヒド)の等価体である水和物をフッ化水素存在下、フェノールにて処理することにより1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを得る方法(特許文献1)、フルオラールのメチルヘミアセタール体を塩化水素ガスの存在下、フェノール類と反応させることにより対応する1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを得る方法(特許文献2)、ルイス酸触媒として三フッ化ホウ素(BF)の存在下、フルオラールのメチルヘミアセタール体を芳香族炭化水素類と反応させて1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを合成する方法(非特許文献1)、及び、フルオラールのエチルヘミアセタールとアニリンより、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)エタンを得る方法(非特許文献2)が開示されている。
一方、本発明にて開示する、フッ化水素中で安定化された無水のフルオラールから1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを製造する方法は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許3388097号明細書
【文献】特表昭57-502055号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】ORGANIC LETTERS,2011年,13巻,15号,4128-4131頁
【文献】HIGH PERFORMANCE POLYMERS,2001年,13巻,4号,301-312頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にアリール化合物とフルオラールの縮合反応により目的とする1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを効率よく得るためには、反応を促進させるためにブレンステッド酸やルイス酸を添加することが好ましい。この縮合反応は、形式上、目的物を得るために化学量論量の水が発生するが、触媒として添加しているブレンステッド酸やルイス酸の物性を考慮すると、それら添加剤はなるべく無水の反応状態が好ましい。しかしながら、フルオラールは通常、その等価体として比較的安定な水和物やヘミアセタール体を利用することが一般的であり、それらは通常、化学量論量以上の水やアルコールを含んで市販されており、無水の反応状態とは言い難い面がある。原料のフルオラールは一般的に重合性に富む化合物であるため、それ自体の取り扱いが困難な化合物であるから、前記縮合反応の為に無水のフルオラールを調製し、それを用いることは極めて難しい。
【0007】
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの製造例(特許文献1~2、及び非特許文献1~2)は、いずれも原料であるフルオラールは、その等価体である水和物やヘミアセタールとして使用されており、反応の進行と共に原料のフルオラールより発生する水やアルコールが反応を阻害する懸念がある。そのため、反応を円滑に進行させるには、大過剰のブレンステッド酸やルイス酸を添加剤として加える必要があった。また、その反応で得られる1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの収率は中程度のものが多かった。
【0008】
本発明は、安価で反応性の高い無水のフルオラールから、簡便な操作にて1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、無水条件下、フルオラールとフッ化水素との混合物(本明細書中、該混合物を「フルオラール/フッ化水素の混合物」と記載することがある。)に対し、一般式[1]:
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式[1]中、Xはそれぞれ独立して水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲンを表し、mは0~3の整数を表す。Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表し、nは0~(5-m)の整数を表す。]
で表されるアリール化合物を縮合反応させることにより、一般式[2]:
【0012】
【化2】
【0013】
[一般式[2]中、X、R、m及びnは一般式[1]におけるX、R、m及びnと同じである。]
で表される、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを選択的に得る知見を得た。
【0014】
本発明で用いる原料のフルオラールに着目した場合、特開平3-184933号公報に開示されている通り、その製法は安価なクロラール(2,2,2-トリクロロアセトアルデヒド)の触媒気相フッ素化反応により、ほぼ定量的にフルオラールに変換することが可能である。しかしながら、当該化合物の物性の関係上、得られる反応混合物中より、反応に使用したフッ化水素や塩化水素の除去は非常に困難であり、煩雑な精製操作が必要であった。
【0015】
ところが、この方法により得られるフルオラールと、フッ化水素と、塩化水素との反応混合物を無水条件下で取り扱った場合、常圧下、フッ化水素を還流させることにより反応混合物中から優先的に塩化水素を除去することは意外にも可能であり、フルオラール/フッ化水素の混合物の溶液として安定に取り扱えるという新たな知見を得た。なお、フルオラール/フッ化水素の混合物に対してアリール化合物を添加した場合、残存するフッ化水素は、自身が持つ酸性物質としての機能を有することから、酸触媒や脱水剤として作用することが期待される。
【0016】
さらに、反応系内にブレンステッド酸やルイス酸を添加剤として共存させることで、反応速度が飛躍的に向上する、好ましい知見も得た。このことは、添加剤が脱水反応の促進剤として機能し、縮合反応が進行しやすくなったものと推測される。得られた1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンは、晶析操作や蒸留と言った簡便な精製方法で純度を高めることが可能であり、本発明の有用性、価値は極めて高い。また、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを用いて芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応により、高透明性や高溶解性等の物性を有するポリイミドを容易に製造できる知見も得た。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の[発明1]~[発明13]に記載する、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンおよび1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを用いたポリイミドの製造方法、さらに、以下の[発明14]~[発明37]に記載する1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを提供する。
【0018】
[発明1]
無水条件下、フルオラールとフッ化水素との混合物に、下記一般式[1]:
【0019】
【化3】
【0020】
[一般式[1]中、Xはそれぞれ独立して水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲンを表し、mは0~3の整数を表す。Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表し、nは0~(5-m)の整数を表す。]
で表されるアリール化合物を縮合反応させることにより、下記一般式[2]:
【0021】
【化4】
【0022】
[一般式[2]中、X、R、m及びnは一般式[1]におけるX、R、m及びnと同じである。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを得る製造方法。
【0023】
[発明2]
前記反応に、添加剤として、ルイス酸またはブレンステッド酸を添加する、発明1に記載の製造方法。
【0024】
[発明3]
前記ルイス酸または前記ブレンステッド酸が、無機酸、有機酸および金属ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明2に記載の製造方法。
【0025】
[発明4]
前記無機酸が、リン酸、塩化水素、臭化水素、濃硝酸、濃硫酸、発煙硝酸及び発煙硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記有機酸が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明3に記載の製造方法。
【0026】
[発明5]
前記金属ハロゲン化物が、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である、発明2に記載の製造方法。
【0027】
[発明6]
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化ホウ素(III)、三塩化アルミニウム(III)、二塩化亜鉛(II)、四塩化チタン(IV)、四塩化スズ(IV)、五塩化アンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明2に記載の製造方法。
【0028】
[発明7]
前記反応を、有機溶媒を用いることなく行う、発明1乃至6の何れかに記載の製造方法。
【0029】
[発明8]
前記反応を、-20℃~+200℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa~4.0MPa(絶対圧)の圧力範囲で行う、発明1乃至発明7の何れかに記載の製造方法。
【0030】
[発明9]
【0031】
【化5】
[一般式[2A]中、nは、0~4の整数であり、Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表す。]
で表される芳香族ジアミンを得る工程と、
前記芳香族ジアミンと、一般式[17]:
【0032】
【化6】
[一般式[17]中、Rは、4価の有機基である。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを重縮合して、一般式[18]:
【0033】
【化7】
[一般式[18]中、Rは一般式[2B]:
【0034】
【化8】
[一般式[2B]中、nは、0~4の整数であり、Rは一般式[2A]におけるRと同義である。]
で表される2価の有機基であり、Rは4価の有機基である]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドを得る製造方法。
【0035】
[発明10]
が、以下から選択される少なくとも1つの2価の有機基である、発明9に記載の製造方法。
【0036】
【化9】
【0037】
[発明11]
が、以下から選択される少なくとも1つの4価の有機基である、発明9または10に記載の製造方法。
【0038】
【化10】
【0039】
[発明12]
ポリイミドの重量平均分子量が、1000以上、1000000以下である、発明9乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【0040】
[発明13]
一般式[2A]で表される前記芳香族ジアミンと、一般式[17]で表される前記テトラカルボン酸二無水物とを縮重合して、一般式[18]で表されるポリイミドを得る前記工程が、一般式[2A]で表される前記芳香族ジアミンと、一般式[17]で表される前記テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、一般式[19]:
【0041】
【化11】
[一般式[19]中、Rは一般式[18]中のRと同義であり、Rは一般式[17]中のRと同義である。]
で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を得る工程と、
一般式[19]で表される前記ポリアミド酸を脱水閉環して、一般式[18]で表されるポリイミドに変換する工程と、を含む、発明9乃至12の何れかに記載の製造方法。
【0042】
[発明14]
式[3]:
【0043】
【化12】
[式[3]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0044】
[発明15]
式[3a]:
【0045】
【化13】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0046】
[発明16]
式[3b]:
【0047】
【化14】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0048】
[発明17]
式[4a]:
【0049】
【化15】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0050】
[発明18]
式[4b]:
【0051】
【化16】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0052】
[発明19]
式[4c]:
【0053】
【化17】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明14に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,-ビスアリールエタン。
【0054】
[発明20]
式[5]:
【0055】
【化18】
[式[5]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0056】
[発明21]
式[5a]:
【0057】
【化19】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタンである、発明20に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0058】
[発明22]
式[6]:
【0059】
【化20】
[式[6]中、nは1~5の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン(ただし、以下の化合物:
【0060】
【化21】
は除く。)。
【0061】
[発明23]
式[6a]:
【0062】
【化22】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンである、発明22に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0063】
[発明24]
式[7]:
【0064】
【化23】
[式[7]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン(ただし、以下の化合物:
【0065】
【化24】
は除く。)。
【0066】
[発明25]
式[7a]:
【0067】
【化25】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンである、発明24に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0068】
[発明26]
式[8]:
【0069】
【化26】
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタン。
【0070】
[発明27]
式[11]
【0071】
【化27】
[式[11]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0072】
[発明28]
式[11a]:
【0073】
【化28】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)エタンである、発明27に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0074】
[発明29]
式[11b]:
【0075】
【化29】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-フルオロ-4-アミノフェニル)エタンである、発明27に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0076】
[発明30]
式[12]:
【0077】
【化30】
[式[12]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0078】
[発明31]
式[12a]:
【0079】
【化31】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-アミノフェニル)エタンである、発明30に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0080】
[発明32]
式[13]
【0081】
【化32】
[式[13]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0082】
[発明33]
式[13a]:
【0083】
【化33】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンである、発明32に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0084】
[発明34]
式[14]:
【0085】
【化34】
[式[14]中、nは1~4の整数を表す。]
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0086】
[発明35]
式[14a]:
【0087】
【化35】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタンである、発明34に記載の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタン。
【0088】
[発明36]
式[15]:
【0089】
【化36】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-ニトロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン。
【0090】
[発明37]
式[16]:
【0091】
【化37】
で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン。
【発明の効果】
【0092】
本発明によれば、安価で反応性の高い無水のフルオラールから、簡便な操作で効率的に1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
【0094】
本発明に係る、トリフルオロメチル基を1つ有する1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンは、下記の反応式で示すように、フルオラール/フッ化水素の混合物と一般式[1]で表されるアリール化合物を反応させることにより得られる。
【0095】
【化38】
【0096】
本発明で使用する出発原料のフルオラールの調製は、それの等価体として市販品(東京化成工業株式会社品)の水和物やフルオラールのヘミアセタールが利用可能であり、一方、特開平5-97757号公報等の文献に記載の方法でフルオラールの水和物やフルオラールのヘミアセタール体を調製できる。
【0097】
一般的に、フルオラールは水和物やヘミアセタール体として用いることが多い為、本発明のように、フルオラールを無水条件下で用いる場合、フルオラールの水和体やヘミアセタール体を脱水させることで無水フルオラールを調製できる。一方、特開平3-184933号公報に記載の方法のとおり、安価なクロラールの触媒気相フッ素化反応により、ほぼ定量的にフルオラールへ変換させることが可能であり、これを利用することで、無水フルオラールを調製することもできる(調製例1)。
【0098】
本発明の出発原料であるフルオラールは低沸点化合物であり、一般的に自己反応性が高く、取り扱いが困難な化合物であるが、本工程において、フルオラールがフッ化水素溶液中で非常に安定に取り扱えるという知見を新たに得た。フルオラールをフッ化水素中で取り扱った場合、下記スキームで表す通り、フルオラールとフッ化水素からなる付加体である、1,2,2,2-テトラフルオロエタノールが生成する(調製例1)。
【0099】
【化39】
【0100】
このように、1,2,2,2-テトラフルオロエタノールは、該フルオラールと該付加体との間で平衡状態が形成され、さらに系内にフッ化水素が過剰に存在することにより、平衡状態が保たれ、その結果、フルオラールの分解が抑制されているものと推測される。前述したフッ化水素中のフルオラールは、化合物の安定性の向上だけではなく、沸点の上昇も確認されており、室温付近でも低沸点化合物であるフルオラールを、フッ化水素の付加体として容易に取り扱える。
【0101】
調製したフルオラールをフッ化水素との混合物として取り扱う場合、用いるフッ化水素の添加量は、調製されたフルオラール1モルに対し、通常0.1~100モルであり、好ましくは1~75モル、更に好ましくは2~50モルである。0.1モルよりフッ化水素の添加量が少ない場合には、十分な安定化効果が得られないので好ましくない。また、100モル以上のフッ化水素を添加しても同様の安定効果は期待できるが、生産性や経済性の面から好ましくない。また、本工程で用いるフルオラール/フッ化水素の混合物には、過剰量のフッ化水素が含まれる場合もあるが、それはフッ化水素自身が持つ酸性物質としての機能を有する故、酸触媒や脱水剤として効果的に作用し、反応を促進させる添加剤としても利用できるため、原料のフルオラール/フッ化水素の混合物として取り扱う利点はあると言える。
【0102】
一般式[1]で表されるアリール化合物中のXは、機能性モノマーへの誘導が可能な置換基であれば限定はされないが、それぞれ独立して、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及び、ハロゲン原子を表す。中でも、水酸基やアミノ基が好ましい。アリール化合物中に結合するXの数(m)は0~3の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0103】
上記一般式[1]で表されるアリール化合物中のRはそれぞれ独立して、一価の有機基を表す。一価の有機基としては限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、およびハロゲノ基(例えば、フルオロ基)等が好ましく挙げられ、これらはフッ素原子およびカルボキシル基などの置換基を有していてもよく、中でもアルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)、ハロゲノ基(例えば、フルオロ基)、ニトロ基がより好ましい。Rとしてのアルキル基は限定されないが、炭素数1~6の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、中でもn-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、エチル基及び、メチル基が好ましく、特にエチル基とメチル基が好ましい。一方、Rとしてのアルコキシ基は限定されないが、炭素数1~6の直鎖または分岐のアルコキシ基であることが好ましく、中でもn-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、エトキシ基及び、メトキシ基が好ましく、特にエトキシ基とメトキシ基が好ましい。また、当該アルキル基やアルコキシ基はその任意の炭素上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基及び、ハロアルコキシ基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであっても良い。さらに、アリール化合物中のRの数が2以上である場合、これら2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。アリール化合物中に結合するRの数(n)は0~(5-m)の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0104】
アリール化合物の使用量は、フルオラール1モルに対し、1モル以上あれば良く、通常は2~10モルを用いると反応は円滑に進行するため好ましく、さらに、後処理操作を考慮すると、2~5モルが特に好ましい。
【0105】
本発明は、反応溶媒の存在下、行うことができる。反応溶媒は脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系等が挙げられる。具体例としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。
【0106】
なお、本発明は溶媒を用いずに反応を行うこともできる。後述の実施例で開示しているように、反応を無溶媒で行うことは、反応後の精製操作が簡便となり、高純度な該目的物を簡便な精製操作のみで得る利点があり、より好ましい。
【0107】
本工程において、フルオラール/フッ化水素の混合物とアリール化合物と共に、ルイス酸またはブレンステッド酸を反応系に添加することは、本発明における縮合反応の変換率を向上させることができることから、本発明における好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0108】
本工程で用いるルイス酸としては、ホウ素(III:酸化数をいう。以下、本明細書で同じ)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である。なお、用いる金属ハロゲン化物としては、通常取りうる最大の原子価を有する金属のハロゲン化物が好ましい。
これらの金属を用いた金属ハロゲン化物のうち、三フッ化ホウ素(III)、三塩化アルミニウム(III)、二塩化亜鉛(II)、四塩化チタン(IV)、四塩化スズ(IV)、五塩化アンチモン(V)が特に好ましい。
【0109】
ルイス酸を添加剤として機能させるには、その使用量は、フルオラール1モルに対し、0.001モル以上、通常は0.01~2.0モル用いるのが良い。但し、ルイス酸は、2.0当量を超える量を用いた場合、経済的に好ましくない。
【0110】
本工程で用いるブレンステッド酸は無機酸または有機酸であり、無機酸の具体的な例はリン酸、塩化水素、臭化水素、濃硝酸、濃硫酸、発煙硝酸及び発煙硫酸等が挙げられ、有機酸の具体的な例は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
ブレンステッド酸を添加剤として機能させるには、その使用量は、フルオラール1モルに対し、0.001モル以上、通常は0.01~2.0モル用いるのが良い。但し、ブレンステッド酸は、2.0当量を超える量を用いた場合、経済的に好ましくない。
【0111】
温度条件は、-20から+200℃の範囲で行えば良く、通常は-10から+180℃が好ましく、中でも0から+160℃が特に好ましい。
【0112】
圧力条件は、大気圧から4.0MPa(絶対圧、以下、同じ)の範囲で行えば良く、通常は大気圧から2.0MPaが好ましく、特に大気圧から1.5MPaがより好ましい。本発明で用いる反応容器としては、ステンレス鋼、モネルTM、ハステロイTM、ニッケルなどの金属製容器や、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、プロピレン樹脂、そしてポリエチレン樹脂などを内部にライニングしたもの等、常圧又は加圧下で十分反応を行うことができる反応器を使用することができる。
【0113】
反応時間は、通常は24時間以内であるが、フルオラール/フッ化水素の混合物とアリール化合物の組み合わせ、および添加剤であるルイス酸やブレンステッド酸の使用量に起因した反応条件の違いにより異なってくる。ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0114】
反応後の後処理は、反応終了液に対して通常の精製操作、例えば反応終了液を水またはアルカリ金属の無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム等)の水溶液に注ぎ込み、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、トルエン、メシチレン、塩化メチレン等)で抽出することにより、目的とする一般式[2]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンの単体を容易に得ることができる。目的生成物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
【0115】
本実施形態の製造方法により、高い異性体選択性で式[1]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンを製造することができる。式[1]で表される化合物の中でも、例えば、式[3]で表される化合物、式[5]で表される化合物、式[6]で表される化合物、式[7]で表される化合物、式[8]で表される化合物、式[11]で表される化合物、式[12]で表される化合物、式[13]で表される化合物、式[14]で表される化合物、式[15]で表される化合物、および式[16]で表される化合物は、本実施形態の方法を用いて特に高い異性体選択性で高収率で製造され得る。なお、以下の式中、「n」は1~5の整数を表し、「Me」はメチル基を表す。
【0116】
【化40】
【0117】
【化41】
【0118】
【化42】
(ただし、式[6]の化合物において、以下の化合物:
【0119】
【化43】
は除く。)
【0120】
【化44】
(ただし、式[7]の化合物において、以下の化合物:
【0121】
【化45】
は除く。)
【0122】
【化46】
[式中、Meはメチル基を表す。]
【0123】
【化47】
【0124】
【化48】
【0125】
【化49】
【0126】
【化50】
【0127】
【化51】
【0128】
【化52】
【0129】
式[3]で表される化合物の中でも、式[3a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタン、式[3b]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)エタン、式[4a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン、式[4b]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン、式[4c]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンは本実施形態の方法により高収率で製造され得る。以下の式において、「Me」はメチル基を表す。
【0130】
【化53】
【0131】
【化54】
【0132】
【化55】
【0133】
【化56】
【0134】
【化57】
【0135】
式[5]で表される化合物の中でも、式[5a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。
【0136】
【化58】
【0137】
式[6]で表される化合物の中でも、式[6a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。以下の式において、「Me」はメチル基を表す。
【0138】
【化59】
【0139】
式[7]で表される化合物の中でも、式[7a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。以下の式において、「Me」はメチル基を表す。
【0140】
【化60】
【0141】
式[11]で表される化合物の中でも、式[11a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)エタン、および式[11b]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-フルオロ-4-アミノフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。
【0142】
【化61】
【0143】
【化62】
【0144】
式[12]で表される化合物の中でも、式[12a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-アミノフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。
【0145】
【化63】
【0146】
式[13]で表される化合物の中でも、式[13a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。
【0147】
【化64】
【0148】
式[14]で表される化合物の中でも、式[14a]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタンは、本実施形態の方法により高収率で製造され得る。
【0149】
[ポリイミドおよびポリアミド酸(ポリアミック酸)製造方法]
本実施形態の方法により得られる一般式[2]で表される1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンのうち、下記一般式[2A]:
【0150】
【化65】
[一般式[2A]中、nは、0~4の整数であり、Rはそれぞれ独立して一価の有機基を表す。]
で表される芳香族ジアミンは、一般式[17]:
【0151】
【化66】
[一般式[17]中、Rは、4価の有機基である。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物で表されるテトラカルボン酸二無水物との反応により、透明性や耐熱性に優れるとともに、成膜加工性に優れた、一般式[18]:
【0152】
【化67】
[一般式[18]中、Rは一般式[2B]:
【0153】
【化68】
[一般式[2B]中、nは、0~4の整数であり、Rは一般式[2A]におけるRと同義である。]
で表される2価の有機基であり、Rは4価の有機基である]
で表される繰り返し単位を有するポリイミドが得られる。
【0154】
ポリイミドの製造方法の例としては、上記芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を150℃以上で相互に溶融させる方法が挙げられる。
さらに、その他の製造例として、上記芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒中で縮重合させ、得られる下記一般式[19]:
【0155】
【化69】
[一般式[19]中、Rは一般式[18]中のRと同義であり、Rは一般式[17]中のRと同義である。]
で表されるポリアミド酸を脱水閉環することで、本実施形態に係るポリイミドを製造する方法が挙げられる。この縮重合反応は-20~80℃で行い、前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とをモル比で表して1対1で反応させることが好ましい。
【0156】
一般式[2A]で表されるジアミンのうち、Rは一般式[1]で表されるアリール化合物中のRと同じである。Rの種類は限定されないが、例えば、Rがアルキル基の場合、炭素数1~6の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、中でもn-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、エチル基及び、メチル基が好ましく、特にエチル基とメチル基が好ましい。
【0157】
ここで、Rがメチル基の場合の例示として、以下の構造の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0158】
【化70】
【0159】
一般式[17]で表されるテトラカルボン酸二無水物のRは4価の有機基であり、以下の有機基が挙げられる。
【0160】
【化71】
【0161】
また、テトラカルボン酸二無水物の具体的な化合物として、以下の構造のものが例示できる。
【0162】
【化72】
【0163】
【化73】
【0164】
一般式[18]で表される繰り返し単位を有する本実施形態のポリイミドは、以下の式のいずれかで表される構造単位を有するポリイミドが例示できる。
【0165】
【化74】
【0166】
【化75】
【0167】
【化76】
【0168】
【化77】
【0169】
【化78】
【0170】
【化79】
【0171】
【化80】
【0172】
本実施形態のポリイミドにおいて、その重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、ポリイミドの重量平均分子量は、通常、1000以上、1000000以下であり、好ましくは、30000以上、200000以下である。1000より少ない場合、もしくは1000000より多い場合、ポリイミドの、基板としての性能や基材上への成膜状況に影響を及ぼすことがある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と称することがある)により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いポリスチレン換算して得られる値である。
【0173】
併用できる他のジアミン化合物を例示すると、入手の容易性から、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、4-ジアミノ-m-キシレン、2,4-ジアミノキシレン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、または2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが挙げられる。透明性の低下の少ない2,2-ビス(4-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンが特に好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、二種類以上併用してもよい。
【0174】
前記縮重合反応に使用できる有機溶媒は、原料化合物が溶解すれば特に制限されず、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ラクトン系溶媒等が挙げられる。具体的にはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0175】
本実施形態に係るポリイミド(一般式[18])は、縮重合反応で得られたポリアミド酸(一般式[19])をさらに脱水閉環させイミド化することで得られる。この脱水閉環反応は、環化を促進する、加熱法、化学法等の条件で行う。加熱法は、重合直後のポリアミド酸を150~350℃の高温加熱でイミド化し、化学法は、室温(0~50℃)でピリジンまたはトリエチルアミン等の塩基と無水酢酸を原料のジアミンに対してそれぞれ0.1モル当量以上10当量未満を加えることでイミド化し、本実施形態に係るポリイミドの溶液を得ることができる。この溶液中のポリイミドの濃度は、5質量%以上、50質量%以下が好ましい。5質量%より少ないと実用性や効率性に、また、50質量%を超えると溶解性に影響が出る場合がある。さらに、好ましくは10質量%以上、40質量%以下である。
【0176】
なお、一般式[19]で表される繰り返し単位を有する本実施形態のポリアミド酸は、以下の式のいずれかで表される構造単位を有するポリアミド酸が例示できる。
【0177】
【化81】
【0178】
【化82】
【0179】
【化83】
【0180】
【化84】
【0181】
【化85】
【0182】
【化86】
【0183】
【化87】
【0184】
本実施形態に係るポリアミド酸において、その重量平均分子量は、前述したポリイミドのそれと同様である為、ここでは繰り返しの記載を省略する。また、本実施形態のポリイミドおよびポリアミド酸は、単独で用いても良いし、ポリイミドとポリアミド酸が混合していても良い。
【0185】
実施形態に係るポリイミドおよびポリアミド酸の溶液は、フィルムや膜の製造の際の原料に利用できる。例えば、本実施形態に係るポリイミドおよびポリアミド酸の溶液中に含まれる残存モノマー、低分子量体を除去する目的で、水またはアルコール等の貧溶媒中に、本実施形態に係るポリイミドおよびポリアミド酸の溶液を加え、該ポリイミドおよびポリアミド酸を沈殿、単離精製する。その後、改めて有機溶媒に前記濃度(5質量%以上、50質量%以下)になるように溶解させて調整し、その濃度に調整した溶液を電子部品、光学用部品の、高屈折性と高透明性が要求される部品へ塗布することで、平滑性に優れた膜を形成することが可能である。
【0186】
ここで用いる有機溶媒は特に限定はないが、本実施形態に係るポリイミドおよびポリアミド酸が溶解すれば特に制限はなく、例えば、前記縮重合反応に使用できる有機溶媒で挙げたものと同様の種類の有機溶媒が挙げられる。単独で用いてもよいし、二種以上の混合溶媒を用いてもよい。
【実施例
【0187】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(以下GCと記す。特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
【0188】
[触媒調製例]
896gの特級試薬CrCl・6HOを純水に溶かして3.0Lとした。この溶液に粒状アルミナ400gを浸漬し、一昼夜放置した。次に濾過してアルミナを取り出し、熱風循環式乾燥器中で100℃に保ち、さらに一昼夜乾燥した。得られたクロム担持アルミナは、電気炉を備えた直径4.2cm長さ60cmの円筒形SUS316L製反応管に充填し、窒素ガスを約20mL/分の流量で流しながら300℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素を同伴させ、その濃度を徐々に高めた。充填されたクロム担持アルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで反応器温度を350℃に上げ、その状態を5時間保ち触媒の調製を行った。
【0189】
[調製例1]
【0190】
【化88】
【0191】
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径2.5cm・長さ40cm)に触媒として前記の触媒調製例で調製した触媒を125mL充填した。約100mL/分の流量で空気を流しながら、反応管の温度を280℃に上げ、フッ化水素を約0.32g/分の速度で1時間にわたり導入した。次いで、原料である式[1]のクロラールを約0.38g/分(接触時間15秒)の速度で反応管へ供給開始した。反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出するガスを、-15℃の冷媒にて冷却した吹き込み管付きSUS304製シリンダーへ18時間かけて捕集した。
ここで得たフルオラール含有の484.8gの捕集液に関して滴定により、フッ化水素含量、塩化水素含量、そして有機物含量を算出すると、フッ化水素40重量%、塩化水素11重量%、そして有機物含有量49重量%であり、有機物の回収率は88%(供給原料クロラールモル数基準)であった。また、回収した有機物の一部を樹脂製のNMRチューブに採取し、19F-NMRにてフッ素化度を確認すると、低次フッ素化物はほぼ未検出であり、定量的にフッ素化が進行していることを確認した。
【0192】
次に、捕集したフルオラール含有の混合物の一部、150g(フッ化水素:40重量%、塩化水素:11重量%、有機物:49重量%)を-15℃の冷媒を通液させた冷却管と温度計と攪拌機を備え付けた500mlのSUS製反応器に仕込み、反応器を25℃になるように加温した。常圧下、冷却管にてフッ化水素を還流させながら、冷却管の頂塔からすり抜ける塩化水素を、水に吸収させて除去した。5時間の還流後、反応器からサンプリングを行い、その混合物に関して滴定により、フッ化水素含量、塩化水素含量、そして有機物含量を算出すると、フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%であった。また、混合物の一部を樹脂製NMRチューブに採取し、19F-NMRの積分比より、無水フッ化水素中のフルオラールは、フルオラール/フッ化水素の組成物である1,2,2,2-テトラフルオロエタノールへ変換していることが確認された。一方、塩化水素の吸収に用いた水を滴定に供したところ、飛沫同伴によるフッ化水素の含有は一部認められるものの、有機物はほぼ含まれていなかった。
[物性データ]
1,2,2,2-テトラフルオロエタノール:
19F-NMR(400MHz,CFCl)δ(ppm):-85.82(3F,s),-137.95(1F,d,J=54.9Hz)
フッ化水素:
19F-NMR(400MHz,CFCl)δ(ppm):-193.37(1F,s)
【0193】
(実施例1)
【0194】
【化89】
【0195】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、ベンゼン4.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ベンゼンの変換率は98%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジフェニルエタンを収率97%で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジフェニルエタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.68(1H,q,J=10.0Hz),7.30-7.40(10H,m)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-65.7(3F,d,J=8.7Hz)
【0196】
(実施例2)
【0197】
【化90】
【0198】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、トルエン5.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、トルエンの変換率は97%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-メチルフェニル)エタンを収率97%、異性体比56/32/3/3/2(2,2-ビス(4-メチルフェニル)体/2-(4-メチルフェニル)-2-(2-メチルフェニル)体/未同定/未同定/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-メチルフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.31(6H,s),4.60(1H,q,J=10.0Hz),7.14(4H,q,J=8.4Hz),7.25(4H,q,J=7.9Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.5(3F,d, J=8.7Hz)
【0199】
(実施例3)
【0200】
【化91】
【0201】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2-キシレン6.4g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-キシレンの変換率は97%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[6a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンを収率98%、異性体比76/24(2,2-ビス(3、4-ジメチルフェニル)体/2-(3、4-ジメチルフェニル)-2-(2、3-ジメチルフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.31(12H,s),4.53(1H,q,J=10.2Hz),7.03-7.15(6H,m)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.4(3F,d,J=11.5Hz)
【0202】
(実施例4)
【0203】
【化92】
【0204】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、ナフタレン7.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ナフタレンの変換率は53%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、回収物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ナフタレンが47%、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(ナフト-1-イル)エタンが53%、異性体比57/37/6(2,2-ビス(ナフト-1-イル)体/2-(ナフト-1-イル)-2-(ナフト-2-イル)体/未同定)であった。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(ナフト-1-イル)エタン:
H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.29(1H,q,J=10.1Hz),7.40-8.00(14H,m)
19F-NMR(400MHz,DMSO-d6,CFCl)δ(ppm):-63.0(3F,d,J=8.6Hz)
【0205】
(実施例5)
【0206】
【化93】
【0207】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、フェノール5.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、フェノールの変換率は96%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率94%、異性体比78/22(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)体/2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2-ヒドロキシフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.55(1H,q,J=9.9Hz),5.10(2H,s),6.80(4H,d,J=8.6Hz),7.22(4H,d,J=8.83Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.9(3F,d,J=8.6Hz)
【0208】
(実施例6)
【0209】
【化94】
【0210】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2-クレゾール6.5g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-クレゾールの変換率は93%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、抽出操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率93%、異性体比96/4(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.21(6H,s),4.47(1H,q,J=10.1Hz),6.76(2H,d,J=8.3Hz),7.05(2H,d,J=8.3Hz),7.08(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.7(3F,d,J=11.5Hz)
【0211】
(実施例7)
【0212】
【化95】
【0213】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2,6-キシレノール7.4g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,6-キシレノールの変換率は99%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率96%、異性体比96/4(2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCN)δ(ppm):2.18(12H,s),4.53(1H,q,J=10.6Hz),6.13(2H,s),7.00(4H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCN,CFCl)δ(ppm):-66.5(3F,d,J=11.5Hz)
【0214】
(実施例8)
【0215】
【化96】
【0216】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2,5-キシレノール7.4g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,5-キシレノールの変換率は93%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[7a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率92%、異性体比98/2(2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル):
H-NMR(400MHz,CDCN)δ(ppm):2.08(6H,s),2.16(6H,s),4.93(1H,q,J=10.0Hz),6.58(2H,s),6.71(2H,s),7.05(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCN,CFCl)δ(ppm):-65.5(3F,d,J=8.7Hz)
【0217】
(実施例9)
【0218】
【化97】
【0219】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、アニリン5.6g(60mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸2.3g(15mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和し、酢酸エチル100gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アニリンの変換率は96%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)エタンを収率93%、異性体比92/8(2,2-ビス(4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.42(4H,s),4.45(1H,q,J=10.1Hz),6.62(4H,d,J=8.3Hz),7.12(4H,d,J=8.3Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.9(3F,d,J=11.5Hz)
【0220】
(実施例10)
【0221】
【化98】
【0222】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を15.9g(フルオラール:90mmol、フッ化水素:0.36mol)と、フッ化水素28.8g(1.44mol)、2-トルイジン19.5g(0.18mol)、三フッ化ホウ素3.0g(45mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を300gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を210g投入して中和し、酢酸エチル300gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-トルイジンの変換率は98%であった。抽出操作で回収した有機層を水150gで洗浄し、さらに飽和重曹水150gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[3]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタンを収率96%、異性体比96/4で得た。温度計保護管、攪拌モーターを備えた200mL硝子製反応器内に、得られた粗結晶25gとトルエン75gを加え90℃に昇温して完全に溶解させ、ヘプタン50gを1時間掛けて滴下し結晶を析出させた。30℃に降温後、濾過で回収した結晶をエバポレーターで乾燥し、目的物である式[3a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタンを収率87%、純度99.8%、異性体比99%以上(2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタン:H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.13(6H,s),3.14(4H,s),4.41(1H,q,J=10.4Hz),6.62(2H,d,J=10.4Hz),7.01(2H,s),7.02(2H,d, J=8.3Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.7(3F,d,J=11.5Hz)
【0223】
(実施例11)
【0224】
【化99】
【0225】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2,6-キシリジン7.3g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和し、酢酸エチル100gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,6-キシリジンの変換率は99%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[4a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンを収率95%、異性体比97/3(2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.15(12H,s),3.55(4H,s),4.36(1H,q,J=10.4Hz),6.62(2H,d,J=10.4Hz),6.93(4H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.6(3F,d,J=8.6Hz)
【0226】
(実施例12)
【0227】
【化100】
【0228】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、3-トルイジン6.5g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和し、酢酸エチル100gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、3-トルイジンの変換率は83%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[3b]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)エタンを収率71%、異性体比97/2/1(2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)体/未同定/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-メチル-4-アミノフェニル)エタン:H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.21(6H,s),3.58(4H,bs),4.83(1H,q,J=9.6Hz),6.48(2H,s),6.50(2H,d,J=9.4Hz),7.17(2H,d,J=8.7Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-65.6(3F,d,J=11.6Hz)
【0229】
(実施例13)
【0230】
【化101】
【0231】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2,5-キシリジン7.3g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和し、酢酸エチル100gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,5-キシリジンの変換率は98%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[4c]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタンを収率94%、異性体比99/1(2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,5-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.12(6H,s),2.19(6H,s),3.53(4H,bs),4.80(1H,q,J=9.6Hz),6.45(2H,s),7.04(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-65.5(3F,d,J=8.7Hz)
【0232】
(実施例14)
【0233】
【化102】
【0234】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、2-アミノフェノール6.6g(60mmol)を量り取り150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.3MPaで5時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和し、析出した固体を吸引濾過で回収し液体クロマトグラフィーで分析したところ、2-アミノフェノールの変換率は97%であった。得られた固体をエバポレーターで乾燥し、目的物である式[5a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率95%、異性体比88/12(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)体/2-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDOD)δ(ppm):4.41(1H,q,J=10.42Hz),4.88(6H、s),6.60-6.80(6H,m)
19F-NMR(400MHz,CDOD,CFCl)δ(ppm):-66.8(3F,d,J=11.6Hz)
【0235】
(実施例15)
【0236】
【化103】
【0237】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、フルオロベンゼン5.8g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、フルオロベンゼンの変換率は99%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)エタンを収率93%、異性体比84/16(2,2-ビス(4-フルオロフェニル)体/2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-フルオロフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.66(1H,q,J=9.7Hz),7.02-7.06(4H,m),7.30(2H,d,J=8.8Hz),7.32(2H,d,J=8.8Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.3(3F,d,J=8.7Hz),-113.8(2F,s)
【0238】
(実施例16)
【0239】
【化104】
【0240】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、トリフルオロメトキシベンゼン9.8g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、トリフルオロメトキシベンゼンの変換率は96%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-トリフルオロメトキシフェニル)エタンを収率94%、異性体比91/9(2,2-ビス(4-トリフルオロメトキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-トリフルオロメトキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.72(1H,q,J=9.7Hz),7.21(4H,d,J=8.6Hz),7.38(4H,d,J=8.6Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-57.3(6F,s),-66.1(3F,d,J=8.7Hz)
【0241】
(実施例17)
【0242】
【化105】
【0243】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を5.3g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、グアイアコール7.5g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グアイアコールの変換率は96%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[8]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率85%、異性体比49/30/13(2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)体/2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒオドロキシ-4-メトキシフェニル)体/2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)体)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.81-3.84(6H,s),4.47-4.57(1H,m),6.78-6.96(6H,m)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.1(3F,d,J=8.7)
【0244】
(実施例18)
【0245】
【化106】
【0246】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で捕集したフルオラール含有の混合物(フッ化水素:40重量%、塩化水素:11重量%、有機物:49重量%)を6.0g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:0.12mol)と、フッ化水素9.6g(0.48mol)、ベンゼン4.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.1MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ベンゼンの変換率は99%であり、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジフェニルエタンが79%であった。
【0247】
(実施例19)
【0248】
【化107】
【0249】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を15.5g(フルオラール:82mmol、フッ化水素:0.37mol)と、フッ化水素12.4g(0.62mol)、2,3-キシリジン20g(165mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧0.55MPaで18時間反応させた。反応液を100gの氷へ注ぎ込み、48%水酸化カリウム水溶液を116g投入して中和し、酢酸エチル100gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2,3-キシリジンの変換率は90%であった。抽出操作で回収した有機層を水50gで洗浄し、さらに飽和重曹水50gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[4b]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン(式[4b])を収率77%、異性体比99/1(2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]
1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジメチル-4-アミノフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):2.10(6H,s),2.18(6H,s),4.19(4H,bs),5.01(1H,q,J=9.6Hz),6.59(2H,d,J=8.4Hz),7.07(2H,d,J=8.4Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-64.6(3F,d,J=9.2Hz)
【0250】
(実施例20)
【0251】
【化108】
【0252】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を5.6g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:134mmol)と、フッ化水素4.5g(226mmol)、2-フルオロアニリン6.7g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧0.8MPaで20時間反応させた。反応液を氷水50gと酢酸エチル50mLの混合物に注ぎこんだ。48%水酸化カリウム水溶液を42g投入して中和した後、有機層を水50gで洗浄し、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-フルオロアニリンの変換率は99%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[11a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)エタンを収率93%、異性体比50/1(2,2-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)エタン
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.71(4H,br-s),4.43(1H,q,J=9.6Hz),6.71(2H,dd、J=12.0,8.0Hz),6.90(2H,d,J=8.0Hz),6.97(2H,d,J=12.0Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-134.3(2F,br-s),-66.4(3F,d,J=8.7Hz)
【0253】
(実施例21)
【0254】
【化109】
【0255】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を5.6g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:134mmol)と、フッ化水素9.3g(465mmol)、3-フルオロアニリン6.7g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.0MPaで16時間反応させた。反応液を氷水200gと酢酸エチル100mLの混合物に注ぎこんだ。48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和した後、有機層を水50gで洗浄し、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-フルオロアニリンの変換率は94%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[11b]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-フルオロ-4-アミノフェニル)エタンを収率80%、異性体比69/1(2,2-ビス(2-フルオロ-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(2-フルオロ-4-アミノフェニル)エタン
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.70(4H,br-s),5.20(1H,q,J=9.6Hz),6.34(2H,d,J=11.6Hz),6.39(2H,d,J=8.4Hz),7.20(2H,dd,J=11.6,8.4Hz)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-1116.5(2F,br-s),-66.5(3F,d,J=8.7Hz)
【0256】
(実施例22)
【0257】
【化110】
【0258】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を9.4g(フルオラール:50mmol、フッ化水素:226mmol)と、フッ化水素15.5 g(774mmol)、2-イソプロピルアニリン13.5 g(100mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧0.9MPaで24時間反応させた。反応液を氷水72gと酢酸エチル50mLの混合物に注ぎこんだ。48%水酸化カリウム水溶液を170g投入して中和した後、有機層を水50gで洗浄し、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-イソプロピルアニリンの変換率は60%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[16]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-イソプロピル-4-アミノフェニル)エタンを収率57%、異性体比24/1(2,2-ビス(3-イソプロピル-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-イソプロピル-4-アミノフェニル)エタン
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.23(12H,d,J=6.8Hz)2.87(2H,qq,J=6.8,6.8Hz),3.64(4H,br-s),4.44(1H,q,J=10.0Hz),6.61(2H,d,J=8.4Hz),7.02(2H,d,J=8.4Hz),7.14(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.3(3F,d,J=8.7Hz)
【0259】
(実施例29)
【0260】
【化111】
【0261】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた50mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を5.6g(フルオラール:30mmol、フッ化水素:135mmol)と、フッ化水素9.3g(465mmol)、2-アミノベンゾトリフルオリド9.7 g(60mmol)を量り取り、150℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.1MPaで18時間反応させた。反応液を氷水50gと酢酸エチル50mLの混合物に注ぎこんだ。48%水酸化カリウム水溶液を70g投入して中和した後、有機層を水50gで洗浄し、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-アミノベンゾトリフルオリドの変換率は85%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[12a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-アミノフェニル)エタンを収率62%、異性体比8/1(2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-アミノフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-アミノフェニル)エタン
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.20(4H,br-s)4.47(1H,q,J=9.5Hz),6.71(2H,d,J=8.9Hz),7.25(2H,d,J=8.9Hz),7.35(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.6(3F,d,J=8.7Hz),-62.8(6F,s)
【0262】
(実施例24)
【0263】
【化112】
【0264】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を21.1 g(フルオラール:111 mmol、フッ化水素:506mmol)と、フッ化水素33.4 g(1.67mol)、2-ニトロフェノール 30g(215 mmol)を量り取り、140℃のオイルバスで加熱し、絶対圧1.6MPaで24時間反応させた。反応液を氷水120gと酢酸エチル120 mLの混合物に注ぎこんだ。分離した有機層を240gの飽和重曹水で洗浄し、さらに水120gにて洗浄した後、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-ニトロフェノールの変換率は99%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[15]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-ニトロ-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率95%、異性体比3/1(2,2-ビス(3-ニトロ-4-ヒドロキシフェニル)体/2-(3-ニトロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(2-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)体)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-ニトロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.69(1H,q,J=9.4Hz),7.20(2H,d,J=8.9Hz),7.55(2H,dd,J=8.7,2.3Hz),8.09(2H,d,J=2.3Hz),10.57(2H,s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-66.9(3F,d,J=8.7Hz)
【0265】
(実施例25)
【0266】
【化113】
【0267】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1で得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:44重量%、塩化水素:1重量%、有機物:55重量%)を32.5g(フルオラール:182mmol、フッ化水素:715mmol)と、フッ化水素29.6g(1.48mol)、2-フルオロフェノール39.9g(0.365mmol)を量り取り、60℃、絶対圧1.0MPaで4時間反応させた。反応液を400gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル400gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-フルオロフェノールの変換率は99%であった。抽出操作で回収した有機層を水100gで洗浄し、さらに飽和重曹水100gで洗浄した後、分液操作で有機層を回収した。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[14a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率85%、異性体比94/6(2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):4.74(1H,q),6.93(2H,t,J=8.7Hz),7.03(2H,d,J=8.5Hz),7.12(2H,d,J=12.1Hz),7.22(2H,br-s)
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-136.3(2F,t,J=11.5Hz),-66.0(3F,d,J=8.7Hz)
【0268】
(実施例26)
【0269】
【化114】
【0270】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、調製例1と同様に調製して得られたフルオラール含有の混合物(フッ化水素:48重量%、塩化水素:0.1重量%未満、有機物:52重量%)を9.41g(フルオラール:50mmol、フッ化水素:226mmol)と、フッ化水素15.5g(774mmol)、2-トリフルオロメチルフェノール16.2 g(100mmol)を量り取り、室温下、絶対圧0.15MPaで24時間反応させた。反応液を氷水100gと酢酸エチル140mLの混合物に注ぎこんだ。分離した有機層を240gの飽和重曹水100gで中和し、さらに水40gにて洗浄した後、分液操作により有機層を回収した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2-トリフルオロメチルフェノールの変換率は96%であった。有機層をエバポレーターで濃縮し、目的物である式[13a]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンを収率67%、異性体比25/1(2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)体/未同定)で得た。
[物性データ]1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-トリフルオロメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン:
19F-NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):-67.1(3F,d,J=8.7Hz),-62.7(6F,s)
【0271】
[比較例1]
【0272】
【化115】
【0273】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、35%含水フルオラール水和物5.4g(30mmol)とフッ化水素12g(0.60mol)、ベンゼン4.7g(60mmol)を量り取り、25℃、絶対圧0.2MPaで24時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ベンゼンが19%、1,1,1-トリフルオロ-2-フェニル-2-ヒドロキシエタンが73%、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジフェニルエタンは7%、その他が1%であった。
【0274】
[比較例2]
【0275】
【化116】
【0276】
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた100mLステンレス鋼製オートクレーブ反応器内に、35%含水フルオラール水和物5.4g(30mmol)とフッ化水素3g(0.15mol)、フェノール5.7g(60mmol)を量り取り、室温で15時間反応させた。反応液を50gの氷へ注ぎ込み、酢酸エチル50gで有機物を抽出した。抽出した有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、フェノールが60%、1,1,1-トリフルオロ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシエタンが11%、目的物の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが24%、その他が5%であった。
【0277】
[実施例27]
【0278】
【化117】
【0279】
窒素気流下、メカニカルスターラーと温度計を備えた500mLガラス製四口セパラブルフラスコ反応器内に、実施例10で得られた式[3]の1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)エタン15g(51mmol)と3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸無水物15g(51mmol)、ジメチルアセトアミド(超脱水品)120gを量り取り溶解させた。溶液を20度の恒温槽で24時間反応することでポリアミド酸(ポリアミック酸)を合成した後、ピリジン8.5g(0.11mmol)と無水酢酸10.9g(0.11mmol)を加え2時間攪拌して化学イミド化を行った。化学イミド化溶液は均一な高粘度液体であり、ゲル化してないことから、合成されたポリイミドは高い溶媒溶解性を有することが示された。得られたポリイミドの分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定したところ、75万であった。硝子板にスピンコートでポリイミド溶液を塗布し、イナートガスオーブンで窒素気流下焼成して自立膜を作成した。作成した自立膜の窒素気流下における5%重量減少温度を熱重量示差熱分析装置(TGDTA)で測定したところ、474度であり、従来のポリイミドと同等もしくは高い耐熱性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0280】
本発明で対象とする1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビスアリールエタンは、低誘電率、低屈折率、高透明性、そして高溶解性の物性を特徴とする優れた光学材料として利用できる。
【0281】
この出願は、2019年2月6日に出願された日本出願特願2019-019823号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。