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特許7460938プラズマ制御システム及びプラズマ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プラズマ制御システム及びプラズマ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240327BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
H01L21/205
H01L21/31 C
C23C16/505
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023118705
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2019130261の分割
【原出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2023143937
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】岩苔 翼
(72)【発明者】
【氏名】岸田 茂明
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216318(JP,A)
【文献】特開2018-041531(JP,A)
【文献】特開2003-303810(JP,A)
【文献】特開平11-135488(JP,A)
【文献】特開2003-031504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0185228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/505
H01J 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と、
前記高周波電源に接続された複数のアンテナを有するアンテナ群と、
前記複数のアンテナの給電側及び接地側に接続された複数のリアクタンス可変素子と、
前記複数のアンテナの給電側及び接地側に流れる電流を検出する電流検出機構と、
前記電流検出機構により検出された電流値に基づいて、前記複数のアンテナを流れる電流の均一性指標値を算出する均一性算出部と、
前記均一性算出部により算出された均一性指標値が所定の設定値に近づくように、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを順次変更するリアクタンス変更部とを具備し、
前記均一性算出部が、前記電流検出機構により検出された電流値の最大値及び最小値をパラメータとして、前記最大値と前記最小値との和に対する前記最大値と前記最小値との差分の比率を算出し、その比率を用いて前記均一性指標値を算出する、プラズマ制御システム。
【請求項2】
前記リアクタンス変更部が、前記リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更させることで、前記均一性指標値が前記設定値から遠ざかった場合に、当該リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更前のリアクタンスに戻して、次の前記リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更する、請求項に記載のプラズマ制御システム。
【請求項3】
前記リアクタンス変更部が、前記設定値とは異なる閾値と、前記均一性指標値とを比較して、前記閾値よりも前記均一性指標値が大きい場合と小さい場合とでリアクタンス変更量を異ならせる、請求項1又は2に記載のプラズマ制御システム。
【請求項4】
前記リアクタンス変更部が、前記リアクタンス可変素子の現状のリアクタンスに応じてリアクタンス変更量を異ならせる、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のプラズマ制御システム。
【請求項5】
前記複数のリアクタンス可変素子それぞれに予め重み付けた値であって、前記均一性指標値に及ぼす影響度合いを示す重み値を記憶する重み値記憶部をさらに具備し、
前記リアクタンス変更部が、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを前記重み値の大きいものから順に変更する、請求項1乃至のうち何れか一項に記載のプラズマ制御システム。
【請求項6】
高周波電源と、前記高周波電源に接続された複数のアンテナを有するアンテナ群と、前記アンテナ群を構成する複数の前記アンテナの給電側及び接地側に接続された複数のリアクタンス可変素子と、前記アンテナ群を構成する複数の前記アンテナの給電側及び接地側に流れる電流を検出する電流検出機構と、を具備するプラズマ制御システムに用いられるプログラムであって、
前記電流検出機構により検出された電流値に基づいて、前記複数のアンテナを流れる電流の均一性指標値を算出する均一性算出部と、
前記均一性算出部により算出された均一性指標値が所定の設定値に近づくように、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを順次変更するリアクタンス変更部としての機能をコンピュータに発揮させ、
前記均一性算出部が、前記電流検出機構により検出された電流値の最大値及び最小値をパラメータとして、前記最大値と前記最小値との和に対する前記最大値と前記最小値との差分の比率を算出し、その比率を用いて前記均一性指標値を算出する、プラズマ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに高周波電流を流して発生させる誘導結合型のプラズマを制御するプラズマ制御システム及びこのプラズマ制御システムに用いられるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させるものとして、特許文献1に示すように、複数本のアンテナを真空容器内の基板の四方に配置して、これらのアンテナに高周波電流を流すように構成されたプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
より詳細に説明すると、このプラズマ処理装置は、複数のアンテナそれぞれに接続された可変インピーダンス素子と、複数のアンテナそれぞれの給電側に設けられたピックアップコイル又はキャパシタとを備えている。そして、ピックアップコイル又はキャパシタからの出力値に基づいて可変インピーダンス素子のインピーダンスをフィードバック制御することで、それぞれのアンテナの周囲に発生するプラズマの密度を所定範囲内に制御して、真空容器に発生させるプラズマ密度の空間的な均一化を図っている。
【0004】
ところが、基板が大型なものになると、特許文献1のプラズマ処理装置に用いられているような比較的短尺なアンテナを基板の四方に配置したのでは対応することができず、この場合には特許文献2に示すような長尺状のアンテナが用いられる。
【0005】
このような長尺状のアンテナを真空容器内に配置して誘導結合型プラズマを生成する場合、アンテナとプラズマとの間で生じる静電結合により、プラズマを介してアンテナと真空容器の壁との間で電流が流れたり、プラズマを介して互いに隣り合うアンテナ間で電流が流れたりする。
その結果、アンテナの長手方向に沿った電流量の分布が均一にならず、プラズマ密度が不均一になるという問題が生じる。
【0006】
さらに、本願発明者が鋭意検討した結果、上述した問題は、複数のアンテナを用いた場合により顕著になることを見出した。何故ならば、1つのアンテナに流れる電流量の分布を均一にするべく、そのアンテナに接続されたインピーダンス素子のインピーダンスを変更したはずが、そのインピーダンスの変更が別のアンテナを流れる電流量に影響を及ぼしてしまい、プラズマ密度制御がより困難になるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-228354号公報
【文献】特開2016-138598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、複数のアンテナを用いて基板の大型化に対応することができるようにしつつ、均一なプラズマを発生させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るプラズマ制御システムは、高周波電源と、前記高周波電源に接続された複数のアンテナを有するアンテナ群と、前記複数のアンテナの給電側及び接地側に接続された複数のリアクタンス可変素子と、前記複数のアンテナの給電側及び接地側に流れる電流を検出する電流検出機構と、前記電流検出機構により検出された電流値に基づいて、前記複数のアンテナを流れる電流の均一性指標値を算出する均一性算出部と、前記均一性算出部により算出された均一性指標値が所定の設定値に近づくように、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを順次変更するリアクタンス変更部とを具備することを特徴とするものである。
【0010】
このように構成されたプラズマ制御システムによれば、均一性指標値が設定値に近づくように、複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを順次変更するので、複数のアンテナに流れる電流を可及的に均一にすることができる。その結果、複数のアンテナを用いて基板の大型化に対応できるようにしつつ、均一なプラズマを発生させることが可能となる。
【0011】
より具体的な実施態様としては、前記アンテナ群が、前記高周波電源に接続されるとともに、互いに直列接続された少なくとも2つの第1アンテナ及び第2アンテナと、前記高周波電源に接続されるとともに、互いに直列接続され、且つ、前記第1アンテナ及び第2アンテナに並列接続された少なくとも2つの第3アンテナ及び第4アンテナとを有し、前記リアクタンス可変素子が、前記第1アンテナの給電側、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの間、前記第2アンテナの接地側、前記第3アンテナの給電側、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナの間、前記第4アンテナの接地側それぞれに設けられており、前記電流検出機構が、前記第1アンテナの給電側、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの間、前記第2アンテナの接地側、前記第3アンテナの給電側、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナの間、前記第4アンテナの接地側それぞれに流れる電流を検出する構成を挙げることができる。
このような構成であれば、各アンテナの給電側及び接地側それぞれに流れる電流を検出するので、各アンテナに流れる電流を可及的に等しくすることができるし、各アンテナの給電側及び接地側それぞれにリアクタンス可変素子を設けているので、プラズマ密度をより細やかに制御することができる。
【0012】
前記均一性算出部が、前記電流検出機構により検出された電流値の最大値及び最小値をパラメータとして前記均一性指標値を算出することが好ましい。
このように算出された均一性指標値を用いれば、各アンテナに流れる電流を可及的に等しくすることができる。
【0013】
前記リアクタンス変更部が、前記リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更させることで、前記均一性指標値が前記設定値から遠ざかった場合に、当該リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更前のリアクタンスに戻して、次の前記リアクタンス可変素子のリアクタンスを変更することが好ましい。
このような構成であれば、均一性指標値を確実に設定値に近づけていくことができる。
【0014】
前記リアクタンス変更部が、前記設定値とは異なる閾値と、前記均一性指標値とを比較して、前記閾値よりも前記均一性指標値が大きい場合と小さい場合とでリアクタンス変更量を異ならせることが好ましい。
このような構成であれば、均一性指標値が閾値に到達するまではリアクタンス変更量を大きくし、均一性指標値が閾値に到達してから設定値に到るまではリアクタンス変更量を小さくすることができる。これにより、制御時間の短縮化を図れる。
【0015】
前記リアクタンス変更部が、前記リアクタンス可変素子の現状のリアクタンスに応じてリアクタンス変更量を異ならせることが好ましい。
このような構成であれば、リアクタンス可変素子がリアクタンスを緩やかに変更できる状態か、リアクタンスが大きく変動してしまう状態かに応じて、リアクタンス変更量を適切に調整することができる。
【0016】
前記複数のリアクタンス可変素子それぞれに予め重み付けた値であって、前記均一性指標値に及ぼす影響度合いを示す重み値を記憶する重み値記憶部をさらに具備し、前記リアクタンス変更部が、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを前記重み値の大きいものから順に変更することが好ましい。
このような構成であれば、均一性指標値に及ぼす影響の高いリアクタンス可変素子のリアクタンスから変更していくことができるので、効率良く制御を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係るプラズマ制御プログラムは、高周波電源と、前記高周波電源に接続された複数のアンテナを有するアンテナ群と、前記複数のアンテナの給電側及び接地側に接続された複数のリアクタンス可変素子と、前記複数のアンテナの給電側及び接地側に流れる電流を検出する電流検出機構と、を具備するプラズマ制御システムに用いられるプログラムであって、前記電流検出機構により検出された電流値に基づいて、前記複数のアンテナを流れる電流の均一性指標値を算出する均一性算出部と、前記均一性算出部により算出された均一性指標値が所定の設定値に近づくように、前記複数のリアクタンス可変素子のリアクタンスを順次変更するリアクタンス変更部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。
このようなプラズマ制御プログラムによれば、上述したプラズマ制御システムと同様の作用効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、長尺状のアンテナを用いて基板の大型化に対応することができるようにしつつ、アンテナの長手方向に沿って均一なプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のプラズマ制御システムの構成を示す模式図である。
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
図3】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図である。
図4】同実施形態の接続導体を模式的に示す横断面図である。
図5】同実施形態の接続導体を模式的に示す縦断面図である。
図6】同実施形態の可変コンデンサを導入ポート側から見た側面図である。
図7】同実施形態の固定金属板及び可動金属板が対向しない状態を示す模式図である。
図8】同実施形態の固定金属板及び可動金属板が対向した状態を示す模式図である。
図9】同実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
図10】同実施形態の制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図11】同実施形態の制御装置による均一性指標値の変動を示すグラフ。
図12】その他の実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るプラズマ制御システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<システム構成>
本実施形態のプラズマ制御システム200は、図1に示すように、誘導結合型のプラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置100と、そのプラズマを制御するための制御装置Xを少なくとも具備している。
【0022】
まず、プラズマ処理装置100について説明する。
プラズマ処理装置100は、図2に示すように、基板Wに、例えばプラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等の処理を施すものである。基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0023】
具体的にプラズマ処理装置100は、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された長尺状のアンテナ3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0024】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置5によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0025】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及び真空容器2の側壁に形成されたガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。
【0026】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ6が設けられている。この例のように、基板ホルダ6にバイアス電源7からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ6内に、基板Wを加熱するヒータ61を設けておいても良い。
【0027】
アンテナ3は、ここでは直線状のものであり、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)配置されている。
【0028】
アンテナ3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材8がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材8を、アンテナ3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン91によって真空シールされている。各絶縁部材8と真空容器2との間も、例えばパッキン92によって真空シールされている。なお、絶縁部材8の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0029】
さらに、アンテナ3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材8によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0030】
そして、複数のアンテナ3は、内部に冷却液CLが流通する流路3Sを有する中空構造のものである。本実施形態では、直管状をなす金属パイプである。金属パイプの材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0031】
なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路11によりアンテナ3を流通するものであり、前記循環流路11には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構111と、循環流路11において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構112とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0032】
上述したアンテナ3は、図1及び図3に示すように、複数本設けられている。すなわち、本実施形態のプラズマ処理装置100は、高周波電源4に接続された複数本のアンテナからなるアンテナ群3xを備えてなる。
【0033】
このアンテナ群3xは、互いに直列接続された少なくとも2つのアンテナ3を複数組並列接続してなるものであり、ここでは直列接続された2つのアンテナを3組並列接続した計6本のアンテナ3から構成されている。
以下では、説明の便宜上、直列接続された第1アンテナ3A及び第2アンテナ3B、第3アンテナ3C及び第4アンテナ3D、第5アンテナ3E及び第6アンテナ3Fの3組が並列接続されているものとする。
【0034】
直列接続された複数のアンテナ3は、図3に示すように、接続導体12によって接続されて1本のアンテナ構造となるように構成されている。つまり、互いに隣接するアンテナ3における真空容器2の外部に延出した端部同士を接続導体12によって電気的に接続している。より具体的に説明すると、本実施形態では2本のアンテナ3が接続導体12により接続されており、一方のアンテナ3の端部と他方のアンテナ3の端部とが電気的に接続されている。
【0035】
以下では、接続導体12として第1アンテナ3A及び第2アンテナ3Bを接続するものを取り上げて説明するが、第3アンテナ3C及び第4アンテナ3Dを接続するものや、第5アンテナ3E及び第6アンテナ3Fを接続するものも同様の構成である。
【0036】
接続導体12により接続される第1アンテナ3A及び第2アンテナ3Bの端部は同じ側壁側に位置する端部である。これにより、第1アンテナ3A及び第2アンテナ3Bに互いに逆向きの高周波電流IRが流れる。
【0037】
そして、接続導体12は内部に流路を有しており、その流路に冷却液CLが流れように構成されている。具体的には、接続導体12の一端部は、第1アンテナ3Aの流路と連通しており、接続導体12の他端部は、第2アンテナ3Bの流路と連通している。これにより、互いに隣接するアンテナ3A、3Bにおいて第1アンテナ3Aを流れた冷却液CLが接続導体12の流路を介して第2アンテナ3Bに流れる。これにより、共通の冷却液CLにより複数のアンテナ3を冷却することができる。また、1本の流路によって複数のアンテナ3を冷却することができるので、循環流路11の構成を簡略化することができる。
【0038】
各アンテナ3A、3Bのうち接続導体12で接続されていない一方の端部(ここでは、第1アンテナ3Aの一端部)が給電側端部3a1となり、当該給電側端部3a1には、整合回路41を介して高周波電源4が接続される。また、他方の端部(ここでは、第2アンテナ3Bの他端部)である終端部3b2は接地されている。
【0039】
上記構成によって、高周波電源4から、整合回路41を介して、アンテナ3に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0040】
<接続導体12の構成>
次に接続導体12について、図4図8を参照して詳細に説明する。なお、図4及び図5などにおいて一部のシール部材などは記載を省略している。
【0041】
接続導体12は、図4及び図5に示すように、各アンテナ3A、3Bに電気的に接続される可変コンデンサVCと、当該可変コンデンサVCと第1アンテナ3Aの他端部3a2とを接続する第1の接続部14と、可変コンデンサVCと第2アンテナ3Bの一端部3b1とを接続する第2の接続部15とを有している。
【0042】
第1の接続部14は、第1アンテナ3Aの他端部3a2を取り囲むことによって、該アンテナ3Aに電気的に接触するとともに、該アンテナ3Aの他端部3a2に形成された開口部3Hから冷却液CLを可変コンデンサVCに導くものである。
【0043】
第2の接続部15は、第2アンテナ3Bの一端部3b1を取り囲むことによって、該アンテナ3Bに電気的に接触するとともに、可変コンデンサVCを通過した冷却液CLを該アンテナ3Bの一端部3b1に形成された開口部3Hに導くものである。
【0044】
これらの接続部14、15の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0045】
本実施形態の各接続部14、15は、アンテナ3の端部において、開口部3Hよりも真空容器2側でOリングなどのシール部材Saを介して液密に装着されるものであり、開口部3Hよりも外側は拘束しないように構成されている(図4参照)。これにより、接続部14、15に対するアンテナ3の若干の傾きを許容する構成としている。
【0046】
可変コンデンサVCは、第1アンテナ3Aに電気的に接続される第1の固定電極16と、第2アンテナ3Bに電気的に接続される第2の固定電極17と、第1の固定電極16との間で第1のコンデンサを形成するとともに、第2の固定電極17との間で第2のコンデンサを形成する可動要素たる可動電極18とを有している。
【0047】
本実施形態の可変コンデンサVCは、可動電極18が所定の回転軸C周りに回転することによって、その静電容量を変更できるように構成されている。そして、可変コンデンサVCは、第1の固定電極16、第2の固定電極17及び可動電極18を収容する絶縁性を有する収容容器19を備えている。
【0048】
収容容器19は、第1アンテナ3Aからの冷却液CLを導入する導入ポートP1と、冷却液Clを第2アンテナ3Bに導出する導出ポートP2とを有している。導入ポートP1は、収容容器134の一方の側壁(図4では左側壁)に形成され、導出ポートP2は収容容器19の他方の側壁(図4では右側壁)に形成されており、導入ポートP1及び導出ポートP2は互いに対向した位置に設けられている。なお、本実施形態の収容容器19は、内部に中空部を有する概略直方体形状をなすものであるが、その他の形状であってもよい。
【0049】
第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、可動電極18の回転軸C周りに互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、第1の固定電極16は、収容容器19の導入ポートP1から収容容器19の内部に挿入して設けられている。また、第2の固定電極17は、収容容器19の導出ポートP2から収容容器19の内部に挿入して設けられている。これにより、第1の固定電極16及び第2の固定電極17は、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられている。
【0050】
第1の固定電極16は、図5及び図6に示すように、互いに対向するように設けられた複数の第1の固定金属板161を有している。また、第2の固定電極17は、互いに対向するように設けられた複数の第2の固定金属板171を有している。これら固定金属板161、171はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられている。
【0051】
そして、複数の第1の固定金属板161は、互いに同一形状をなすものであり、第1のフランジ部材162に支持されている。第1のフランジ部材162は、収容容器19の導入ポートP1が形成された左側壁に固定される。ここで、第1のフランジ部材162には、導入ポートP1に連通する貫通孔162Hが形成されている。また、複数の第2の固定金属板171は、互いに同一形状をなすものであり、第2のフランジ部材172に支持されている。第2のフランジ部材172は、収容容器19の導出ポートP2が形成された右側壁に固定される。ここで、第2のフランジ部材172には、導出ポートP2に連通する貫通孔172Hが形成されている。これら複数の第1の固定金属板161及び複数の第2の固定金属板171は、収容容器19に固定された状態で、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられる。
【0052】
また、第1の固定金属板161及び第2の固定金属板171は平板状をなすものであり、図7に示すように、平面視において、回転軸Cに向かうに従って幅が縮小する形状をなしている。そして、各固定金属板161、171において、幅が縮小する端辺161a、171aは回転軸Cの径方向に沿って形成されている。なお、互いに対向する端辺161a、171aのなす角度は、90度である。また、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161b、171bは円弧状をなしている。
【0053】
可動電極18は、図4及び図5に示すように、収容容器19の側壁(図4では前側壁)に回転軸C周りに回転可能に軸支される回転軸体181と、当該回転軸体181に支持されて第1の固定電極16に対向する第1の可動金属板182と、回転軸体181に支持されて第2の固定電極17に対向する第2の可動金属板183とを有している。
【0054】
回転軸体181は、回転軸Cに沿って延びる直線状をなすものである。この回転軸体181は、その一端部が収容容器19の前側壁から外部に延出するように構成されている。そして、この収容容器19の前側壁においてOリングなどのシール部材Sbにより回転可能に支持される。ここでは、前側壁において2つのOリングにより2点支持されている。また、回転軸体181の他端部は、収容容器19の内面に設けられた位置決め凹部191に回転可能に接触している。
【0055】
また、回転軸体181は、第1の可動金属板182及び第2の可動金属板183を支持する部分181xが金属製などの導電材料から形成され、収容容器19から外部に延出した部分181yが樹脂製などの絶縁材料から形成されている。
【0056】
第1の可動金属板182は、第1の固定金属板161に対応して複数設けられている。なお、第1の可動金属板182はそれぞれ同一形状をなすものである。また、第2の可動金属板183は、第2の固定金属板171に対応して複数設けられている。なお、第2の可動金属板183はそれぞれ同一形状をなすものである。これら可動金属板182、183はそれぞれ、回転軸Cに沿って互いに略等間隔に設けられている。また、本実施形態では、各可動金属板182、183が各固定金属板161、171の間に挟まれる構成としてある。図4では、固定金属板161、171を6枚とし、可動金属板182、183を5枚としているが、これに限られない。なお、可動金属板182、183と固定金属板161、171とのギャップは例えば1mmである。
【0057】
第1の可動金属板182及び第2の可動金属板183は、図5に示すように、回転軸Cに関して対称となる位置に設けられるとともに、互いに同一形状をなすものである。具体的に各可動金属板182、183は、図7に示すように、平面視において、回転軸Cから径方向外側に行くに従って拡開する扇形状をなすものである。本実施形態では、中心角が90度の扇形状をなすものである。
【0058】
このように構成された可変コンデンサVCにおいて可動電極18を回転させることによって、図8に示すように、第1の固定金属板161及び第1の可動金属板182の対向面積(第1の対向面積A1)が変化し、第2の固定金属板171及び第2の可動金属板183の対向面積(第2の対向面積A2)が変化する。本実施形態では、第1の対向面積A1と第2の対向面積A2とは同じように変化する。また、各固定金属板161、171の回転軸C側の先端辺161b、171bが円弧状であり、可動電極18を回転させることによって、第1の対向面積A1と第2の対向面積A2とは、可動電極18の回転角度θに比例して変化する。
【0059】
上記の構成において、収容容器19の導入ポートP1から冷却液CLが流入すると、収容容器19の内部が冷却液CLにより満たされる。このとき、第1の固定金属板161及び第1の可動金属板182の間が冷却液CLで満たされるとともに、第2の固定金属板171及び第2の可動金属板183の間が冷却液CLで満たされる。これにより、冷却液CLが第1のコンデンサの誘電体及び第2のコンデンサの誘電体となる。本実施形態では、第1のコンデンサの静電容量と第2のコンデンサの静電容量とは同じである。また、このように構成される第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは直列に接続されており、可変コンデンサVCの静電容量は、第1のコンデンサ(又は第2のコンデンサ)の静電容量の半分となる。
【0060】
このように構成された接続導体12は、アンテナ3と高周波電源4との間に設けられていても良い。この場合、第1の固定電極16は高周波電源4に電気的に接続され、第2の固定電極17はアンテナ3に電気的に接続される。
また、接続導体12は、アンテナ3と接地との間に設けられるものであってもよい。この場合、第1の固定電極16はアンテナ3に電気的に接続され、第2の固定電極17は接地される。
かかる構成により、アンテナ群3xを構成する複数のアンテナの給電側及び接地側には可変コンデンサVCが接続されていることになる。
【0061】
ここでは、図1及び図3に示すように、各アンテナ3A~3Fそれぞれの給電側及び接地側に可変コンデンサVCが接続されており、以下では、図1に示す通り、第1アンテナ3Aの給電側、第1アンテナ3Aと第2アンテナ3Bとの間、第2アンテナ3Bの接地側、第3アンテナ3Cの給電側、第3アンテナ3Cと第4アンテナ3Dとの間、第4アンテナ3Dの接地側、第5アンテナ3Eの給電側、第5アンテナ3Eと第6アンテナ3Fとの間、及び第6アンテナ3Fの接地側の9箇所に接続された可変コンデンサVCをそれぞれ、第1可変コンデンサVC1、第2可変コンデンサVC2、第3可変コンデンサVC3、第4可変コンデンサVC4、第5可変コンデンサVC5、第6可変コンデンサVC6、第7可変コンデンサVC7、第8可変コンデンサVC8、第9可変コンデンサVC9ともいう。
【0062】
然して、本実施形態のプラズマ制御システム200は、図1に示すように、アンテナ群3xを構成する複数のアンテナ3の給電側及び接地側に流れる電流を検出する電流検出機構Sxをさらに備えており、上述した制御装置Xが、電流検出機構Sxにより検出された電流値に基づいて、可変コンデンサVCのリアクタンスを順次変更するように構成されている。なお、図2及び図3においては、電流検出機構Sxの記載は省略してある。
【0063】
電流検出機構Sxは、各アンテナ3A~3Fそれぞれの給電側及び接地側を流れる電流を検出するものであり、各アンテナ3A~3Fそれぞれの給電側及び接地側に設けられた複数の電流検出部S1~S9からなるものである。
【0064】
各電流検出部S1~S9は、例えばカレントトランス等のカレントモニタであり、検出された検出信号は、直流変換回路により交流から直流に変換され、AD変換器によりアナログ信号からデジタル信号に変換されて、制御装置Xに出力される。
【0065】
制御装置Xは、物理的にはCPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えたPLC等のコンピュータであり、前記メモリに記憶されたプラズマ制御プログラムが実行され、各機器が協業することで、図9に示すように、少なくとも均一性算出部X1及びリアクタンス変更部X2としての機能を発揮するものである。
【0066】
均一性算出部X1は、各電流検出部S1~S9により検出された検出信号を取得して、各検出信号が示す電流値に基づいて、複数のアンテナ3A~3Fを流れる電流の均一性を示す均一性指標値を算出する。
【0067】
この均一性指標値は、電流検出部S1~S9により検出された電流値の少なくとも一部をパラメータとして算出する値であり、値が小さいほど各アンテナ3A~3Fを流れる電流の均一性が高く、値が大きいほど各アンテナ3A~3Fを流れる電流の均一性が低いことを示している。
【0068】
ここでの均一性算出部X1は、各電流検出部S1~S9により検出された電流値の最大値及び最小値をパラメータとして均一性指標値を算出するように構成されており、具体的には下記の算出式を用いている。
均一性指標値Ix
=(最大値Imax-最小値Imin)/(最大値Imax+最小値Imin)×100(%)
なお、均一性指標値Ixとしては、上記の算出式により算出された値に限らず、例えば各電流検出部S1~S9により検出された電流値の平均値や標準偏差などを用いて算出しても良い。
【0069】
リアクタンス変更部X2は、均一性算出部X1により算出された均一性指標値Ixが所定の設定値Isに近づくように、複数の可変コンデンサVCのリアクタンスを順次変更するものである。
【0070】
ここでのリアクタンス変更部X2は、可変コンデンサVCの可動電極18を回転させる駆動部に駆動信号を出力することで静電容量を変更するものであり、予め定めた順番で第1可変コンデンサVC1~第9可変コンデンサVC9の静電容量を変更するように構成されている。
【0071】
以下では、図10のフローチャートを参照しながら、第1可変コンデンサVC1乃至第9可変コンデンサVC9の静電容量をこの順番で変更するように設定した場合について説明する。
【0072】
まず、リアクタンス変更部X2は、カウンタ回路を用いてカウンタ設定する(T1)。具体的には、これまでの動作回数を表すカウント数mを1ずつ増加させていくことでカウント数mを増やしていく。
【0073】
続いて、リアクタンス変更部X2は、S2におけるカウント数mに応じた第m可変コンデンサVCmの静電容量を変更するにあたり、可動電極18の初期回転方向を正転方向又は逆転方向の何れかに、言い換えれば第m可変コンデンサVCmの静電容量の初期変更方向を増大方向又は減少方向の何れかに設定する(T2)。
【0074】
具体的には、まず可動電極18を例えば正転方向(例えばインピーダンスが増える方向)に所定角度(例えば3°)回転させる。これにより均一性指標値Ixが設定値Isに近づけば、正転方向を初期回転方向として設定し、逆に均一性指標値Ixが設定値Isから遠ざかれば、逆転方向を初期回転方向として設定する。なお、必ずしも最初に正転方向に回転させる必要はなく、逆転方向に回転させることで初期回転方向を設定しても良い。
【0075】
次いで、リアクタンス変更部X2が、均一性指標値Ixと設定値Isとを比較して、均一性指標値Ixが設定値Isに到達したか否か、言い換えれば、均一性指標値Ixが設定値Isより小さいか否かを判断する(T3)。
【0076】
T3において、均一性指標値Ixが設定値Isより小さければ、制御を終了する。
【0077】
一方、T3において、均一性指標値Ixが設定値Is以上である場合、リアクタンス変更部X2は、可動電極18を回転させたことにより、均一性指標値Ixが回転前に比べて上がった否かを判断する(T4)。
【0078】
T4において、均一性指標値Ixが下がった場合、リアクタンス変更部X2は、上述した第m可変コンデンサVCmの可動電極18を初期回転方向に所定角度(例えば3°)回転させて、静電容量を変更し(T4)、T3に戻る。
【0079】
一方、T4において、均一性指標値Ixが上がった場合、リアクタンス変更部X2は、第m可変コンデンサVCmの可動電極18を初期回転方向とは反対方向(例えばインピーダンスが減少する方向)に上述した所定角度(例えば3°)回転させて、第m可変コンデンサVCmの静電容量を変更前に戻す(T6)。
【0080】
その後、カウント数mが、制御対象となる可変コンデンサVCの総数である最大カウント数(本実施形態では9)に一致しているか否かを判断し(T7)、一致している場合にはカウント数mを0にリセットして(T8)、T1に戻り、一致していない場合にはカウント数mを維持したままT1に戻る。
【0081】
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態のプラズマ制御システム200によれば、図11に示すように、均一性指標値Ixが設定値Isに近づくように、複数の可変コンデンサVCの静電容量、すなわち複数の可変コンデンサVCのリアクタンスを順次変更するので、複数のアンテナ3に流れる電流を可及的に均一にすることができる。その結果、複数のアンテナ3を用いて基板の大型化に対応できるようにしつつ、均一なプラズマを発生させることが可能となる。なお、図11に例示したものは、第1可変コンデンサVC1~第4可変コンデンサVC4の静電容量を変更した場合の均一性指標値Ixの変動である。
【0082】
また、複数の可変コンデンサVCの静電容量を順次変更する制御方法であるので、アンテナ3の本数が増減しても、制御方法は大きく変更する必要がなく、簡単な制御方法により、種々の装置構成においてプラズマの均一化を図れる。
【0083】
さらに、各アンテナ3の給電側及び接地側それぞれに流れる電流を検出しているので、各アンテナ3に流れる電流を可及的に等しくすることができるし、各アンテナ3の給電側及び接地側それぞれに可変コンデンサVCを設けているので、プラズマ密度をより細やかに制御することができる。
【0084】
加えて、アンテナ3を冷却液CLにより冷却することができるので、プラズマPを安定して発生させることができる。また、第1可変コンデンサVC1の誘電体をアンテナ3を流れる冷却液CLにより構成しているので、第1可変コンデンサVC1を冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0085】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0086】
例えば、前記実施形態のアンテナ群は、直列接続された2つのアンテナを3組並列接続した計6本のアンテナから構成されていたが、アンテナ群を構成するアンテナの数はこれに限らず、複数のアンテナを有していれば良く、例えば互いに直列接続された2つのアンテナを2組並列接続した4本のアンテナを備えていても良い。
【0087】
また、前記実施形態では、均一性指標値が設定値より小さくなるまで、可動電極を一定角度ずつ回転させるようにしていたが、回転角度を段階的に変更しても良い。
具体的には、均一性指標値に対して設定値とは異なる閾値を設けて、この閾値に到る前後で回転角度を変える態様や、可変コンデンサVCの現状のリアクタンス、すなわち可動電極の現状の角度に応じて回転角度を変える態様が挙げられる。
【0088】
前者の態様の一例としては、均一性指標値が設定値よりも大きい場合に、リアクタンス変更部が、その均一性指標値と閾値とを比較して、均一性指標値が閾値よりも大きい場合には、可動電極を所定の第1角度(例えば3°)回転させ、均一性指標値が閾値よりも小さい場合には、可動電極を第1回転角度よりも小さい所定の第2角度(例えば1°)回転させる態様が挙げられる。
このような構成であれば、均一性指標値が閾値に到達するまではリアクタンス変更量を大きくし、均一性指標値が閾値に到達してから設定値に到るまではリアクタンス変更量を小さくすることができ、制御時間の短縮化を図れる。
なお、閾値を複数設けて、回転角度をより多段階に変更させても良い。
【0089】
後者の態様の一例としては、可動電極が高角度側にある状態よりも、低角度側にある状態の方が、同じ角度回転させたときのリアクタンスの変化が大きいことから、低角度側と高角度側との境界として境界角度を設定しておく態様が挙げられる。そして、均一性指標値が設定値よりも大きい場合に、リアクタンス変更部が、可動電極の現状の角度と境界角度とを比較して、現状の角度が境界角度よりも大きい場合には、可動電極を所定の第1角度(例えば3°)回転させ、現状の角度が境界角度よりも小さい場合には、可動電極を第1角度よりも小さい所定の第2角度(例えば1°)回転させる。
このような構成であれば、可変コンデンサのリアクタンスを緩やかに変更できる状態か、リアクタンスが大きく変動してしまう状態かに応じて、リアクタンス変更量を適切に調整することができる。
なお、境界角度を複数設けて、回転角度をより多段階に変更させても良い。
【0090】
また、制御装置Xとしては、図12に示すように、複数の可変コンデンサそれぞれに予め重み付けた値であって、均一性指標値に及ぼす影響度合いを示す重み値を記憶する重み値記憶部X3としての機能をさらに備えていても良い。
このような重み値としては、例えば複数の可変コンデンサを1つずつ正転方向及び/又は逆転方向に一定角度ずつ回転させて、これによる均一性指標値の変化量(減少量)を確認し、その変化量が大きいものほど重み値が大きくなるように設定されたものを挙げることができる。なお、重み値としてはこれに限らず、種々の方法で設定して構わない。
そして、均一性指標値が設定値よりも大きい場合に、リアクタンス変更部X2が、重み値記憶部X3に記憶された各リアクタンス可変素子の重み値を参照して、リアクタンスを重み値の大きい可変コンデンサから順に変更する。
このような構成であれば、均一性指標値に及ぼす影響の高い可変コンデンサのリアクタンスから変更していくことができるので、制御の高効率化を図れる。
【0091】
さらに、前記実施形態では、各アンテナの給電側及び接地側のそれぞれに可変コンデンサを設けていたが、必ずしもこれら全ての可変コンデンサを設けておく必要はなく、例えば前記実施形態における第1可変コンデンサ、第4可変コンデンサ、又は第7可変コンデンサのうち、1つ又は2つは省略して構わない。
【0092】
前記実施形態の可変コンデンサでは、可動電極が回転軸周りに回転するものであったが、可動電極が一方向にスライド移動するものであってもよい。ここで、可動電極がスライドする構成としては、可動電極が固定電極との対向方向に直交する方向にスライドして対向面積が変化するものであってもよいし、可動電極が固定電極との対向方向に沿ってスライドして対向距離が変化するものであってもよい。
この構成において、駆動部としては、前記実施形態のようにモータであっても良いし、シリンダ等であっても良い。
【0093】
前記実施形態における可変コンデンサの代わりに、可変インピーダンス素子や可変抵抗素子など、可動要素が動くことによりリアクタンスが変わるリアクタンス可変素子を用いても良い。
【0094】
前記実施形態では、アンテナは直線状をなすものであったが、湾曲又は屈曲した形状であっても良い。この場合、金属パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良いし、絶縁パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良い。
【0095】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
200・・・プラズマ制御システム
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合型プラズマ
IR ・・・高周波電流
2 ・・・真空容器
3x ・・・アンテナ群
3 ・・・アンテナ
3a1・・・一端部
3a2・・・他端部
VC ・・・可変コンデンサ
18 ・・・可動電極(可動要素)
CL ・・・冷却液(液体の誘電体)
Sx ・・・電流検出機構
X ・・・制御装置
X1 ・・・均一性算出部
X2 ・・・リアクタンス変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12