(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物、及び、ガラス繊維強化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 13/02 20060101AFI20240327BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20240327BHJP
【FI】
C03C13/02
D03D15/267
(21)【出願番号】P 2023560206
(86)(22)【出願日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2023020837
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022136222
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細川 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】小向 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】高木 一成
(72)【発明者】
【氏名】栗田 忠史
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第6468409(JP,B1)
【文献】特開平11-292567(JP,A)
【文献】特開2005-330176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109626816(CN,A)
【文献】特開平08-333137(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0001656(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
D03D 15/267,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量に対し、0.0001~0.3500質量%の範囲のNb
2O
5と、0.0010~0.0100質量%の範囲のSO
3とを含む、ガラス繊維用ガラス組成物であって、
ガラス繊維用ガラス組成物の全量からSO
3及びNb
2O
5を除いた残部を100質量部とするときに、48.0~60.0質量部の範囲のSiO
2と、18.4~27.0質量部の範囲のB
2O
3と、10.8~17.0質量部の範囲のAl
2O
3と、0~2.5質量部の範囲のMgOと、0~6.0質量部の範囲のCaOと、0~4.5質量部の範囲のSrOと、0.5~3.5質量部の範囲のTiO
2と、合計で、0~2.5質量部の範囲のF
2及びCl
2とを含み、
Nb
2O
5の含有量に対するSO
3の含有量の比(SO
3/Nb
2O
5)の値が、0.07~13.70の範囲であることを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項2】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、Nb
2O
5の含有量に対するSO
3の含有量の比(SO
3/Nb
2O
5)の値が、0.16~6.20の範囲であることを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
【請求項3】
請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とする、ガラス繊維。
【請求項4】
請求項3記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維織物。
【請求項5】
請求項3記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物、及び、ガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられおり、該樹脂成形品は、サーバー、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体又はプリント配線基板等の部品に用いられている。
【0003】
一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギーを熱として吸収するので、前記樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該樹脂成形品が発熱するという問題がある。
【0004】
ここで、通信信号の減衰を表す伝送損失のうち、ガラスに吸収され熱になる誘電損失はガラスの成分及び構造により定まる誘電率の平方根及び誘電正接に比例し、下記式(A)で表される。
W=kf×ε1/2×tanδ ・・・(A)
【0005】
ここで、Wは誘電損失、kは定数、fは周波数、εは誘電率、tanδは誘電正接を表す。式(A)から、誘電率及び誘電正接が大きい程、また周波数が高い程、誘電損失が大きくなり、前記樹脂成形品の発熱が大きくなることがわかる。
【0006】
近年、前記電子機器に用いられる交流電流の周波数(前記式(A)のf)が高くなっていることを受けて、誘電損失を低減するために、前記電子機器の筐体又は部品に用いられるガラス繊維に、より低い誘電率及びより低い誘電正接を備えることが求められている。
【0007】
前記低い誘電率と低い誘電正接とを備えるガラス繊維として、本出願人は、ガラス繊維の全量に対して、52.0~59.5質量%の範囲のSiO2と、17.5~25.5質量%の範囲のB2O3と、9.0~14.0質量%の範囲のAl2O3と、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOとを含み、F2及びCl2を合計で0.1~2.5質量%の範囲で含む、ガラス繊維用ガラス組成物を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、プリント配線基板等にガラス繊維を使用する場合、ガラス繊維中に泡が残留すると、紡糸時の切断の原因となったり、プリント配線基板としたときに信頼性を著しく低下させたりするので、該ガラス繊維に対する泡の混入を抑制することが求められる。
【0010】
通常、泡が残留していないガラス繊維を製造するには、最も汎用的なガラス組成とされるEガラス組成を備えるEガラス繊維の場合、紡糸温度より高い溶融温度(たとえば100ポイズ温度)で溶融することで溶融ガラス中の泡を除去したのち、紡糸温度(1000ポイズ温度)で紡糸することで、泡の個数がゼロであるガラス繊維を得ることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の低い誘電率と低い誘電正接とを備えるガラス繊維を製造する場合は、前記Eガラス繊維の場合と異なり、紡糸温度より高い温度で、溶融ガラス中の泡数や泡体積を充分低減させたとしても、溶融ガラスの温度を紡糸温度付近まで降温する際に、新たな泡が発生してしまうため、溶融ガラスの温度を紡糸温度付近に低下させた後に、さらに長時間溶融する工程(以下、泡抜き工程、ということがある)を必要とするという不都合がある。
【0012】
前記泡抜き工程を長時間確保するためには、泡抜き工程のために溶融ガラスが滞留する溶融槽の容積を大きくする必要があり、溶融槽(溶融炉)が不必要に大きくなるため溶融に必要な電力が大きくなり、炉材を多く必要とするため非経済的である。
【0013】
本発明は、かかる不都合を解消して、低い誘電率と低い誘電正接とを備えるガラス繊維を得ることができ、しかも、泡抜き工程に要する時間を短縮することができるガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むガラス繊維、該ガラス繊維を含むガラス繊維織物及び、該ガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.0001~0.3500質量%の範囲のNb2O5と、0.0010~0.0100質量%の範囲のSO3とを含む、ガラス繊維用ガラス組成物であって、ガラス繊維用ガラス組成物の全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、48.0~60.0質量部の範囲のSiO2と、18.4~27.0質量部の範囲のB2O3と、10.8~17.0質量部の範囲のAl2O3と、0~2.5質量部の範囲のMgOと、0~6.0質量部の範囲のCaOと、0~4.5質量部の範囲のSrOと、0.5~3.5質量部の範囲のTiO2と、合計で、0~2.5質量部の範囲のF2及びCl2とを含み、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が、0.07~13.70の範囲であることを特徴とする。
【0016】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物によれば、前記組成を備えることにより、低い誘電率と低い誘電正接とを備えるガラス繊維を得ることができ、しかも、泡抜き工程に要する時間を短縮しても、該ガラス繊維に対する泡の混入を抑制することができる。
【0017】
なお、ここで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維が、低い誘電率を備えるとは、誘電率が、測定周波数10GHzにおいて4.6以下であることを意味し、低い誘電正接を備えるとは、誘電正接が、測定周波数10GHzにおいて0.0024以下であることを意味する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維は、本発明のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とし、本発明のガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物は、本発明のガラス繊維を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0020】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.0001~0.3500質量%の範囲のNb2O5と、0.0010~0.0100質量%の範囲のSO3とを含む、ガラス繊維用ガラス組成物であって、ガラス繊維用ガラス組成物の全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、48.0~60.0質量部の範囲のSiO2と、18.4~27.0質量部の範囲のB2O3と、10.8~17.0質量部の範囲のAl2O3と、0~2.5質量部の範囲のMgOと、0~6.0質量部の範囲のCaOと、0~4.5質量部の範囲のSrOと、0.5~3.5質量部の範囲のTiO2と、合計で、0~2.5質量部の範囲のF2及びCl2とを含み、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が、0.07~13.70の範囲である。
【0021】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するNb2O5の含有量が、0.0001質量%未満であると、ガラス溶解時の清澄効果が好適に働かず、溶融ガラスの温度を下げる前の泡数を少なくすることが難しくなる。また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するNb2O5の含有量が、0.3500質量%を超えると、溶融ガラス中に泡が発生し過ぎるために、より長時間の泡抜き工程が必要となる。ここで、前記清澄効果とは、バッチからのガラス化過程において発生する泡が、Nb2O5のガラスへの溶解時などに発生すると考えられる泡と一体化して大きくなったり、巻き込まれて溶融ガラス外へと浮上したりすることによる脱泡が促進される効果を意味する。
【0022】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するNb2O5の含有量は、好ましくは、0.1000質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.0500質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.0300質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、0.0100質量%以下の範囲であり、最も好ましくは、0.0010~0.0050質量%の範囲である。
【0023】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSO3の含有量が、0.0010質量%未満であると、ガラス溶解時の清澄効果が少なくなり過ぎ、溶融ガラスの温度を下げる前に泡が多く残るようになり、より長時間の泡抜き工程が必要となり、さらには泡抜き工程を経ても十分に泡数が減らなくなる。また、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSO3の含有量が、0.0100質量%を超えると、降温時の新たな泡の発生が多くなり過ぎ、より長時間の泡抜き工程が必要となる。
【0024】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSO3の含有量は、好ましくは、0.0020~0.0080質量%以下の範囲であり、より好ましくは、0.0035~0.0070質量%の範囲であり、最も好ましくは0.0040~0.0050質量%の範囲である。
【0025】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が、0.07未満であると、溶融ガラスの昇温過程におけるNb2O5の発泡が激しくなり過ぎ、より長時間の泡抜き工程が必要となる。また、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が、13.70を超えると、溶融ガラスの降温時におけるSO3の発泡が抑制できなくなり、より長時間の泡抜き工程が必要となる。
【0026】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SiO2の含有量が48.0質量部未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の機械的強度が大きく低下し、該ガラス繊維が有する、ガラス繊維強化樹脂組成物における補強材としての機能が損なわれる。一方、SiO2の含有量が60.0質量部超であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0027】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SiO2の含有量が、好ましくは、51.1~56.9質量部の範囲であり、より好ましくは、52.1~55.9質量部の範囲であり、さらに好ましくは、52.4~55.2質量部の範囲であり、特に好ましくは、52.7~54.5質量部の範囲であり、最も好ましくは、53.0~54.4質量部の範囲である。
【0028】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、B2O3の含有量が18.4質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。一方、B2O3の含有量が27.0質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0029】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、B2O3の含有量が、好ましくは、19.4~25.5質量%の範囲であり、より好ましくは、20.1~24.9質量%の範囲であり、さらに好ましくは、20.7~24.4質量%の範囲であり、とりわけ好ましくは、21.6~24.2質量%の範囲であり、特に好ましくは、22.0~23.8質量%の範囲であり、最も好ましくは、22.4質量部~23.4質量部の範囲である。
【0030】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、Al2O3の含有量が10.8質量部未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。一方、Al2O3の含有量が17.0質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、Al2O3の含有量が、好ましくは、11.7~16.4質量部の範囲であり、より好ましくは、12.1~15.9質量部の範囲であり、さらに好ましくは、12.6~15.4質量部の範囲であり、特に好ましくは、12.9~14.9質量%の範囲であり、最も好ましくは、13.2質量部~14.7質量部の範囲である。
【0032】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、MgOの含有量が2.5質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物に脈理が発生し、紡糸中のガラス繊維切断が生じ易くなるおそれがある。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、MgOの含有量が、好ましくは、0.1~2.3質量部の範囲であることにより、ガラスの結晶化を抑制することができ、液相温度の上昇を抑えて作業温度範囲を十分に確保することができる。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、MgOの含有量が、より好ましくは、0.2~2.0質量部の範囲であり、さらに好ましくは、1.9質量部以下の範囲であり、とりわけ好ましくは、0.3~1.2質量部の範囲であり、特に好ましくは、0.5~1.1質量部の範囲であり、殊に好ましくは、0.5~0.9質量部の範囲であり、最も好ましくは、0.7~0.95質量部の範囲である。
【0034】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、CaOの含有量が6.0質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、CaOの含有量が、好ましくは、0.5~5.8質量部の範囲であることにより、ガラスの結晶化を抑制することができ、高温での溶融ガラスの電気抵抗値を低下させることができる。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、CaOの含有量が、好ましくは、0.5~5.8質量部の範囲であり、より好ましくは、1.0~5.5質量部の範囲であり、さらに好ましくは、2.0~5.3質量部の範囲であり、とりわけ好ましくは、2.8~5.1質量部の範囲であり、特に好ましくは、3.2~4.9質量部の範囲であり、最も好ましくは、3.5~4.8質量部の範囲である。
【0036】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SrOの含有量が4.5質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化し、目標の誘電特性を満たすことができない。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SrOの含有量が、好ましくは、3.1質量部以下の範囲であり、より好ましくは、2.9質量部以下の範囲であり、さらに好ましくは、2.5質量部以下の範囲であり、特に好ましくは2.3質量部以下の範囲であり、最も好ましくは2.1質量部以下の範囲であることにより、得られるガラス繊維の誘電正接を低減することができる。一方、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SrOの含有量が、好ましくは、0.1質量部以上の範囲である。さらに、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、SrOの含有量が、より好ましくは、0.5質量部以上の範囲であり、さらに好ましくは、0.8質量部以上の範囲であり、特に好ましくは、1.2質量部以上の範囲であり、最も好ましくは1.5質量部以上の範囲であることにより、ガラス繊維の長繊維化を容易にすることができる。
【0038】
前記ガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、TiO2の含有量が0.5質量部未満であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。一方、TiO2の含有量が3.5質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができず、また、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加するため、安定したガラス繊維の製造を行うことができなくなる。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、TiO2の含有量が、好ましくは、0.7~3.2質量部の範囲であり、より好ましくは、0.9~2.7質量部の範囲であり、さらに好ましくは、1.2~2.5質量部の範囲である。
【0040】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、F2及びCl2の含有量が、合計で、2.5質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の化学的耐久性が低下する。
【0041】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、F2及びCl2の含有量が、合計で、好ましくは、0.1%以上であることにより、高温での粘性を下げ、ガラスの誘電特性を向上させ、誘電率および誘電正接を低減することができる。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、F2及びCl2の含有量が、合計で、好ましくは、0.1~2.2質量%の範囲であり、より好ましくは、0.3~1.9質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.5~1.6質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.6~1.4質量%の範囲である。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、F2の含有量に対するCl2の含有量が、好ましくは、1.0%以下の範囲であり、より好ましくは、0.1%以下の範囲であることにより、泡抜き工程での泡の発生を抑え、泡抜き工程にかかる時間が、さらに短縮される傾向にある。
【0043】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、合計で1.00質量部未満の範囲で、Na2O、K2O及びLi2Oを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Na2O、K2O及びLi2Oを含む場合、これらの合計の含有量が1.00質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が大きく悪化し、目標の誘電特性を達成することができない。
【0044】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、Na2O、K2O及びLi2Oを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、これらの合計の含有量は、好ましくは、0.80質量部未満の範囲であり、より好ましくは、0.50質量部未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量部未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量部未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量部未満の範囲である。
【0045】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0~3.00質量部の範囲でZnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ZnOを含む場合、ZnOの含有量が3.00質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の紡糸中に失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなり、また、ガラス繊維の誘電特性が悪化する。
【0046】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ZnOを含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、ZnOの含有量は、好ましくは、2.50質量部以下の範囲であり、より好ましくは、1.50質量部以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.50質量部以下の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量部以下の範囲であり、最も好ましくは、0.01質量部未満の範囲である。
【0047】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、4.00質量部未満の範囲でP2O5を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、P2O5を含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、P2O5の含有量が4.00質量部以上であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の分相が抑えられなくなり、耐水性が悪化する。
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、P2O5を含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、P2O5の含有量は、好ましくは、3.0質量部以下の範囲であり、より好ましくは、2.50質量部以下の範囲であり、さらに好ましくは、1.50質量部以下の範囲であり、ことさら好ましくは、0.40質量部以下の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量部以下の範囲であり、最も好ましくは、0.01質量部未満の範囲である。
【0049】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0~1.00質量部の範囲でFe2O3を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Fe2O3を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、Fe2O3の含有量が0.05~0.60質量部の範囲であることが有効である。
【0050】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0~1.00質量部の範囲でSnO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、SnO2を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、SnO2の含有量が0.05~0.60質量部の範囲であることが有効である。
【0051】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0~3.00質量部の範囲でMnO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、MnO2を含む場合、MnO2の含有量が3.00質量部超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化し、所望の誘電特性を得ることができない。
【0052】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、MnO2を含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、MnO2の含有量は、好ましくは2.50質量部以下の範囲であり、より好ましくは、1.50質量部以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.50質量部以下の範囲である。
【0053】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0.60質量部未満の範囲でZrO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ZrO2を含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、ZrO2の含有量は、好ましくは0.60質量部未満の範囲であり、より好ましくは0.45質量部未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.40質量部未満の範囲であり、とりわけ好ましくは、0.20質量部未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量部未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量部未満の範囲である。
【0054】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、0.05質量部未満の範囲でCr2O3を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Cr2O3を含む場合、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、Cr2O3の含有量が0.05質量部以上であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の紡糸中に失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0055】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、合計で3.00質量部未満の範囲で含んでもよく、好ましくは、2.00質量部未満であり、より好ましくは1.00質量部未満である。特に、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、不純物として、BaO、CeO2、Y2O3、La2O3、Bi2O3、Gd2O3、Pr2O3、Sc2O3、又は、Yb2O3を含む場合、その含有量は、それぞれ独立に、好ましくは0.40質量部未満の範囲であり、より好ましくは、0.20質量部未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.10質量部未満の範囲であり、特に好ましくは、0.05質量部未満の範囲であり、最も好ましくは、0.01質量部未満の範囲である。
【0056】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、全量に対する、SiO2、B2O3、Al2O3、MgO、CaO、SrO、TiO2、F2及びCl2の合計含有量が、例えば、91.0質量部以上の範囲であり、好ましくは、95.0質量部以上の範囲であり、より好ましくは、98.0質量部以上の範囲であり、さらに好ましくは、99.0質量部以上の範囲であり、とりわけ好ましくは、99.3質量部以上の範囲であり、特に好ましくは、99.5質量部以上の範囲であり、殊に好ましくは、99.7質量部以上の範囲であり、最も好ましくは、99.9質量部以上の範囲である。
【0057】
なお、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有量は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて測定を行うことができ、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定を行うことができる。
【0058】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で、ガラスバッチにおいては、80mm径の白金ルツボに入れ、室温から1650℃まで10℃/分で昇温し、1650℃の温度で2時間溶融したのち、10℃/分の降温速度で1450℃まで降温し、10分保持し均質な溶融ガラスを得る。このとき、前記ガラス繊維は、ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる。
【0059】
次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化してガラス粉末とする。Nb、Sについては、前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いてファンダメンタルパラメーター法によって測定できる。Nb、S以外の元素は、後述の方法によって各成分の含有量を分析し、Nb2O5、SO3を除いた残りが100質量部となるように、各成分の含有量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量を求めることができる。
【0060】
Nb、S以外の元素の含有量の分析は、軽元素であるLiについては得られたガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。波長分散型蛍光X線分析装置を用いた定量分析は、具体的には、ファンダメンタルパラメーター法によって測定した結果をもとに検量線用試料を作製し、検量線法により分析することができる。なお、検量線用試料における各成分の含有量は、ICP発光分光分析装置によって定量分析することができる。
【0061】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、誘電率が、測定周波数10GHzにおいて4.6以下の範囲であることが好ましく、4.4以下の範囲であることがより好ましい。また、下限は特に限定されないが、3.7以上の範囲であることが好ましい。
【0062】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、誘電正接が、測定周波数10GHzにおいて0.0024以下の範囲であることが好ましく、0.0021以下の範囲であることがより好ましく、0.0019以下の範囲であることがさらに好ましい。また、下限は特に限定されないが、0.0008以上の範囲であることが好ましい。
【0063】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融固化後において前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融した後、冷却して固化することにより得ることができる。
【0064】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物から、本実施形態のガラス繊維を形成する際には、まず、前述のように調合したガラス原料をガラス溶融炉に供給し、前記紡糸温度より高い溶融温度域、具体的には1510~1700℃の範囲の温度で溶融する。次いで、前記温度に溶融された溶融ガラスを、紡糸温度域、具体的には1300~1500℃の範囲の温度に制御された溶融槽に供給する。次いで、泡抜き工程、すなわち、5分~96時間の範囲の時間、前記溶融槽に滞留させ、該溶融ガラスに含まれる泡を消失させる。前記泡抜き工程の時間は、5分以上~30分未満の範囲であることが好ましく、5分以上~10分未満の範囲であることがより好ましい。次いで、前記溶融ガラスを1~8000個の範囲の個数のノズルチップ又は孔から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維を形成することができる。
【0065】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0~35.0μmの範囲の直径を有する。低い誘電特性が求められる用途には、前記ガラスフィラメントは、3.0~6.0μmの範囲の直径を有することが好ましく、3.0~4.5μmの範囲の直径を有することがより好ましい。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、非円形(例えば、楕円形、長円形)の断面形状を有するガラスフィラメントを得ることができる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、例えば、2.0~10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)が3.0~35.0μmの範囲にある。
【0066】
本実施形態のガラス繊維は、通常、前記ガラスフィラメントが、10~8000本の範囲の本数で集束されたガラス繊維束(ガラスストランド)の形状をとり、1~10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。なお、複数のノズルチップ又は孔から吐出されたガラスフィラメントは、1本のガラス繊維束に集束されることもあり、複数本のガラス繊維束に集束されることもある。
【0067】
本実施形態のガラス繊維は、前記ガラスストランドにさらに種々の加工をして得ることができる、ヤーン、織物、編物、不織布(チョップドストランドマットや多軸不織布を含む)、チョップドストランド、ロービング、パウダー等の種々の形態を取り得る。
【0068】
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の範囲の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液が付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0069】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシランを挙げることができる。本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0071】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0072】
エポキシシランとしては、β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0073】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0074】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0075】
(メタ)アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0076】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。本実施形態では、前記潤滑剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0078】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0079】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0080】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0081】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0082】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0083】
脂肪酸アミドとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0084】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0085】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0087】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。高級アルキルアミン塩としては、酢酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。
【0088】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0089】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。アミノ酸型両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等を挙げることができる。ベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルジメチルベタイン等を挙げることができる。
【0090】
本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を、少なくとも経糸又は緯糸の一部として、それ自体公知の織機により製織することより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸及び緯糸として用いることが好ましい。
【0091】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維は、フィラメント径3.0~9.0μmの範囲のガラスフィラメントが、35~400本の範囲の本数で集束されて、0~1.0回/25mmの範囲の撚りを備え、0.9~69.0tex(g/1000m)の範囲の質量を備えることが好ましい。
【0092】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸又は緯糸として用いる場合、経糸織密度は、40~120本/25mmの範囲であることが好ましく、緯糸織密度は、40~120本/25mmの範囲であることが好ましい。
【0093】
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
【0094】
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350~400℃の範囲の温度の加熱炉内に40~80時間の範囲の時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理を挙げることができる。
【0095】
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の範囲の温度で、1~30分間の範囲の時間、加熱乾燥させる処理を挙げることができる。
【0096】
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に30~200Nの範囲の張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
【0097】
本実施形態のガラス繊維織物は、7.0~190.0g/m2の範囲の質量を備え、8.0~200.0μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0098】
本実施形態のガラス繊維織物の経糸の糸幅は、110~600μmの範囲であることが好ましく、緯糸の糸幅は、110~600μmの範囲であることが好ましい。
【0099】
本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が前記表面処理層を含む場合、該表面処理層は、該表面処理層を含むガラス繊維織物全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
【0100】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%の範囲のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の範囲の樹脂を含み、その他の添加剤を0~40質量%の範囲で含む。
【0101】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0102】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0103】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0104】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0105】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0106】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0107】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0108】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0109】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0110】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0111】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールとを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0112】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物と、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0113】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0114】
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
【0115】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
【0116】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0117】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0118】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)を挙げることができる。
【0119】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0120】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0121】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0122】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0123】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0124】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0125】
不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化反応させることで得られる樹脂を挙げることができる。
【0126】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂を挙げることができる。
【0127】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0128】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体を挙げることができる。
【0129】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0130】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂を挙げることができる。
【0131】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0132】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、低い誘電特性を求められる用途に用いられることから、前記樹脂としては、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が好ましい。
【0133】
その他の添加剤としては、ガラス繊維以外の強化繊維、ガラス繊維以外の充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
【0134】
ガラス繊維以外の強化繊維としては、炭素繊維、金属繊維等を挙げることができる。
【0135】
ガラス繊維以外の充填剤としては、ガラスパウダー、タルク、マイカ等を挙げることができる。
【0136】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
【0137】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して、種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0138】
このような成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品、車両外装部材、車両内装部材、車両エンジン周り部材、マフラー関連部材、高圧タンク等を挙げることができる。
【0139】
電子部品としては、プリント配線板等を挙げることができる。
【0140】
車両外装部材としては、バンパー、フェンダー、ボンネット、エアダム、ホイールカバー等を挙げることができる。
【0141】
車両内装部材としては、ドアトリム、天井材等を挙げることができる。
【0142】
車両エンジン周り部材としては、オイルパン、エンジンカバー、インテークマニホールド、エキゾーストマニホールド等を挙げることができる。
【0143】
マフラー関連部材としては、消音部材等を挙げることができる。
【0144】
なお、本実施形態のガラス繊維は、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物以外にも、石膏やセメントといった無機材料の補強材としても好適に用いることができる。例えば、石膏(とりわけ、厚さ4~60mmの石膏ボード)の補強材として用いられる場合、前記の範囲のガラス組成を備えるガラス繊維は、石膏の全質量に対して、0.1~4.0質量%の範囲で含まれることができる。
【0145】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0146】
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示す実施例1~7及び、表2に示す比較例1~6の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。
【0147】
次に、各実施例又は各比較例のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、80mm径の白金ルツボに入れ、1650℃の温度で24時間溶融した後、ルツボから取り出して、ガラスバルクを得た。得られたガラスバルクを580℃の温度で2時間徐冷し、ガラス1gあたりの泡個数を計数した。結果を、表1及び表2に示す。
【0148】
次に、各実施例又は各比較例のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、80mm径の白金ルツボに入れ、室温から1650℃まで10℃/分で昇温し、1650℃の温度で2時間溶融したのち、10℃/分の降温速度で1450℃まで降温し、ガラス1gあたりの泡数が1個以下になるまでの時間を測定し、泡抜き工程時間とした。泡抜き工程時間は、ガラス1gあたりの泡数が1個以下になるまでの時間が、1450℃に降温させてから10分未満であるものを「◎」、30分未満であるものを「〇」、30分以上かかるものを「×」と評価した。結果を泡抜工程時間として、表1及び表2に示す。
【0149】
次に、各実施例又は各比較例のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、80mm径の白金ルツボに入れ、室温から1650℃まで10℃/分で昇温し、1650℃の温度で2時間溶融したのち、10℃/分の降温速度で1450℃まで降温し、10分保持し、ルツボから取り出し、均質なガラスバルクを得た。得られたガラスバルクを580℃の温度で2時間徐冷し、試験片を得た。試験片を研磨し、80mm×3mm(厚さ1mm)の研磨試験片を作成した。次いで、得られた研磨試験片を、絶乾後、23℃の温度、60%の湿度の室内に24時間保管した。次いで、得られた研磨試験片につき、JIS C 2565:1992に準拠し、空洞共振器法誘電率測定装置(株式会社エーイーティー製、商品名:ADMS01Oc1)を用いて、10GHzにおける誘電率(誘電定数Dk)及び誘電正接(散逸率Df)を測定した。なお、実施例1の誘電率は4.3、誘電正接は0.0015であり、実施例4及び実施例7の誘電率は4.3、誘電正接は0.0016であり、実施例6の誘電率は4.3、誘電正接は0.0018であった。
【0150】
【0151】
【0152】
表1から、実施例1~7のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチによれば、1650℃の温度で24時間溶融したときの泡個数がゼロであり、泡抜工程時間が10分未満又は30分未満であり、泡抜き工程に要する時間を短縮することができることが明らかである。
【0153】
一方、表2から、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が13.70超である比較例1、5のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチ、又は、Nb2O5の含有量に対するSO3の含有量の比(SO3/Nb2O5)の値が0.07未満である比較例2~4、6のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチによれば、1650℃の温度で24時間溶融したときの泡個数はゼロであるが、泡抜工程時間が30分以上であり、泡抜き工程に要する時間を短縮することができないことが明らかである。
【要約】
低い誘電率と低い誘電正接とを備えるガラス繊維を得ることができ、泡抜き工程を短縮することができるガラス繊維用ガラス組成物を提供する。本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0.0001~0.3500質量%のNb2O5と、0.0010~0.0100質量%のSO3とを含み、全量からSO3及びNb2O5を除いた残部を100質量部とするときに、48.0~60.0質量部のSiO2と、18.4~27.0質量部のB2O3と、10.8~17.0質量部のAl2O3と、0~2.5質量部のMgOと、0~6.0質量部のCaOと、0~4.5質量部以下のSrOと、0.5~3.5質量部のTiO2と、合計で、0~2.5質量部の範囲のF2及びCl2とを含み、SO3/Nb2O5の値が、0.07~13.70の範囲である。