(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】車両用サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240327BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240327BHJP
B60R 21/04 20060101ALI20240327BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B60J5/00 501A
B60J5/04 Z
B60R21/04 330
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020096863
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】金原 正典
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-237984(JP,A)
【文献】特開2000-318532(JP,A)
【文献】特開2012-131443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
B60J 5/00 - 5/14
B60R 13/01 - 13/04
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドアのインナパネルの車両内側面に設けられているトリム部材と、所定の厚みを有し前記インナパネルと前記トリム部材との間に配置されているパッド部材と、を備え、
前記トリム部材は、側面視で、車両前後方向にスライド可能なシートのスライド範囲内において該シートの車両外側側部に設けられているリクライニングレバーの把持部と重なる位置に配置されているとともに、車両前後方向に延びて断面が段差形状または溝形状に形成されているキャラクターラインを有し、該キャラクターラインが、側面視で、前記リクライニングレバーの前記把持部よりも車両上側に配置されており、
前記パッド部材は、側面視で、前記シートのスライド範囲内において前記リクライニングレバーの前記把持部の少なくとも一部と重なる位置に配置されているとともに、前記パッド部材の下端部が、側面視で、前記リクライニングレバーの前記把持部よりも車両下側まで延びている、車両用サイドドア構造
であって、
前記パッド部材の車両内側に位置する側面は、第1側面部と、該第1側面部よりも車両上側かつ車両内側に位置する第2側面部と、前記第1側面部の上端および前記第2側面部の下端の間に位置し車両前後方向に延びている第1段差部と、を有し、該第1段差部が、側面視で、前記トリム部材の前記キャラクターラインよりも車両上側に配置されている、車両用サイドドア構造。
【請求項2】
前記トリム部材は、車両外側面における前記キャラクターラインより車両上側に位置する部分のみに形成されている格子状のリブ形状部を有し、該リブ形状部には、前記キャラクターラインの位置で車両外側に突出した突形状部が形成されており、
前記パッド部材は、前記第2側面部が前記トリム部材の前記リブ形状部に当接し、かつ、前記第1段差部が前記リブ形状部の前記突形状部の車両上側に隣接している、請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項3】
前記サイドドアのアウタパネルと前記インナパネルとの間に設置され車両前後方向に延びているドアビーム部材をさらに備え、
前記パッド部材の下端部が、側面視で、前記ドアビーム部材と重なる位置まで延びており、
前記インナパネルは、車両内側に突出し車両前後方向に延びているビード形状部を有し、
前記ビード形状部は、前記パッド部材の車両外側に位置する側面の車両下側部分に当接しているとともに、側面視で、前記ドアビーム部材、前記トリム部材の前記リブ形状部の前記突形状部、および前記リクライニングレバーの前記把持部とそれぞれ重なる位置に配置されている、請求項2に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項4】
前記パッド部材は、前記第2側面部が前記トリム部材の車両外側面に当接しているとともに、前記第1側面部が前記トリム部材の前記キャラクターラインより車両下側の部分と間隔を空けて配置されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用サイドドア構造。
【請求項5】
前記パッド部材は、前記第2側面部よりも車両上側かつ車両内側に位置する第3側面部と、前記第2側面部の上端および前記第3側面部の下端の間に位置し車両前後方向に延びている第2段差部と、を有し、該第2段差部が、前記トリム部材の前記リブ形状部の上端より車両上側に隣接しているとともに、前記トリム部材との固定部が前記第2側面部に形成されている、請求項
2に記載の車両用サイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用サイドドア構造として、例えば、特許文献1には、サイドドアに装着されたトリム材の裏面に緩衝材を固着し、該緩衝材により車両の側面衝突時における衝突エネルギーを吸収可能にした車両の車室側壁構造が開示されている。この従来構造では、緩衝体が筒状の周側壁を備えており、該周側壁における下側壁がリクライニングレバーと対応する位置に設定されている。これにより、車両の側面衝突時、周側壁における下側壁をリクライニングレバーが受けることで、トリム材に作用する、緩衝体とリクライニングレバーとのせん断力が緩和されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来構造では、リクライニングレバーがトリム材を介して緩衝体の周側壁における下側壁に押されることで、リクライニングレバーを回動させる方向に力が作用して、シートのリクライニングのロック状態が解除されてしまう可能性があった。車両の側面衝突時にリクライニングのロック状態が解除されると、搭乗者の着座姿勢が変化してしまいシートベルトやエアバッグ等の安全装置の効果が十分に得られなくなる場合があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、側面衝突時に、サイドドアのトリム部材によってリクライニングレバーが押されてリクライニングのロック状態が解除されてしまうのを防ぐことができる車両用サイドドア構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、サイドドアのインナパネルの車両内側面に設けられているトリム部材と、所定の厚みを有し前記インナパネルと前記トリム部材との間に配置されているパッド部材と、を備え、前記トリム部材は、側面視で、車両前後方向にスライド可能なシートのスライド範囲内において該シートの車両外側側部に設けられているリクライニングレバーの把持部と重なる位置に配置されているとともに、車両前後方向に延びて断面が段差形状または溝形状に形成されているキャラクターラインを有し、該キャラクターラインが、側面視で、前記リクライニングレバーの前記把持部よりも車両上側に配置されており、前記パッド部材は、側面視で、前記シートのスライド範囲内において前記リクライニングレバーの前記把持部の少なくとも一部と重なる位置に配置されているとともに、前記パッド部材の下端部が、側面視で、前記リクライニングレバーの前記把持部よりも車両下側まで延びている、車両用サイドドア構造を提供する。この車両用サイドドア構造において、前記パッド部材の車両内側に位置する側面は、第1側面部と、該第1側面部よりも車両上側かつ車両内側に位置する第2側面部と、前記第1側面部の上端および前記第2側面部の下端の間に位置し車両前後方向に延びている第1段差部と、を有し、該第1段差部が、側面視で、前記トリム部材の前記キャラクターラインよりも車両上側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
上記のような本発明に係る車両用サイドドア構造によれば、側面衝突時に、リクライニングレバーの把持部がサイドドアのトリム部材に当接して押圧されても、トリム部材の車両外側への変形が抑えられているので、リクライニングのロック状態が解除されてしまうのを防ぐことができ、シートベルトやエアバッグ等の安全装置の効果を十分に得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用サイドドア構造が適用されるサイドドアとシートの概略構成を示す側面図である。
【
図2】上記実施形態におけるサイドドアの構成例を示す側面図である。
【
図3】
図2においてトリム部材を取り除いた状態を示す側面図である。
【
図4】上記実施形態におけるパッド部材の構成例を示す斜視図である。
【
図6】上記実施形態におけるサイドドア内のパッド部材とリクライニングレバーの把持部との位置的な関係を示す図である。
【
図7】車両の側面衝突時におけるサイドドアとリクライニングレバーの挙動について上記実施形態を適用した場合(実線)と適用していない場合(2点鎖線)とで比較した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1~
図7は、本発明の一実施形態に係る車両用サイドドア構造を示すものである。なお、図において、矢印F方向は車両前後方向で車両前側を示し、矢印O方向は車幅方向で車両外側を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上側を示している。
【0010】
図1は、本実施形態の車両用サイドドア構造が適用されるサイドドアと、該サイドドアに隣り合うシートの概略構成を示す側面図である。また、
図2は、サイドドアの構成例を示す側面図である。さらに、
図3は、
図2においてトリム部材を取り除いた状態を示す側面図である。加えて、
図4は、本実施形態におけるパッド部材の構成例を示す斜視図である。
【0011】
図1~
図4において、車両のサイドドア10は、インナパネル11とアウタパネル12とを有しており、インナパネル11の車両内側面にはトリム部材20が設けられている。インナパネル11とトリム部材20との間には空間が形成されており、該空間内には所定の厚みを有するパッド部材30が配置されている。また、サイドドア10の車両内側には、車幅方向に所定の間隔を空けて、車両前後方向にスライド可能なシート50が配置されている。
【0012】
シート50は、
図1に示すように、座部を構成するシートクッション部51と、該シートクッション部51を支えるシートフレーム部52と、背もたれを構成するシートバック部53とを有している。また、シート50には、
図1のA-A線断面図である
図5に示すように、車両外側側部にリクライニングレバー54の把持部55が設けられている。本実施形態では、リクライニングレバー54の把持部55は、シートクッション部51および/またはシートフレーム部52の車両外側側部に配置されている。
【0013】
リクライニングレバー54は、シートバック部53の傾斜角度を調整可能にするリクライニング機構をロック状態または解除状態にするための操作レバーである。シート50に着座した搭乗者は、リクライニングレバー54に設けられている把持部55を握り車両上側に回動させてリクライニング機構のロックを解除することで、シートバック部53の傾斜を好みの角度に調整することができる。なお、サイドドア10のトリム部材20とリクライニングレバー54の把持部55との間には隙間が設けられている。また、シート50が車両前後方向にスライドされると、それに伴いリクライニングレバー54および把持部55の位置も車両前後方向にスライドする。
【0014】
上記サイドドア10は、具体的に、インナパネル11とアウタパネル12とでドアパネルを構成している。インナパネル11とアウタパネル12との間には、
図5の断面図に示すように、車両前後方向に延びているドアビーム部材13が設置されている。ドアビーム部材13は、車両の側面衝突時にサイドドア10の強度を保持するための筒状の補強材である。インナパネル11には、車両内側に突出し車両前後方向に延びているビード形状部11aが形成されている。このビード形状部11aは、車両の側面視で、ドアビーム部材13と重なる位置に配置されている。本実施形態では、ビード形状部11aの車両下側部分とドアビーム部材13とが側面視で重なるように構成されている。また、ビード形状部11aは、側面視で、リクライニングレバー54の把持部55と重なる位置に配置されている。インナパネル11の車両内側面には、トリム部材20が間隔を空けて覆うように取り付けられている。
【0015】
トリム部材20は、側面視で、シート50におけるリクライニングレバー54の把持部55と重なる位置に配置されている。前述したようにシート50の車両前後方向へのスライドに伴ってリクライニングレバー54の把持部55の位置もスライドするため、トリム部材20は、当該スライドの範囲に亘って、側面視でリクライニングレバー54の把持部55と重なるように設けられている。
【0016】
また、トリム部材20は、
図2に示すように、車両前後方向に延びるキャラクターライン21を有している。このキャラクターライン21は、断面が段差形状または溝形状に形成されている。本実施形態におけるキャラクターライン21の断面形状は、
図5に示すように、車両外側に凹んだ略V溝形となっている。トリム部材20の車両内側面におけるキャラクターライン21よりも車両下側の部分は、キャラクターライン21よりも車両上側の部分よりも僅かに車両内側に位置している。つまり、トリム部材20の車両内側面は、キャラクターライン21の上下で段差を有する形状となっている。上記キャラクターライン21は、側面視で、リクライニングレバー54の把持部55よりも車両上側に配置されている。
【0017】
さらに、トリム部材20は、車両外側面におけるキャラクターライン21より車両上側に位置する部分のみに形成されている格子状のリブ形状部22を有している。換言すると、格子状のリブ形状部22は、トリム部材20の車両外側面において、キャラクターライン21より車両上側に位置する部分(キャラクターライン21を含む)に形成されている一方、キャラクターライン21から車両下側に位置する部分(キャラクターライン21を含まない)には形成されていない。上記リブ形状部22には、キャラクターライン21の位置で車両外側に突出した突形状部22aが形成されている。この突形状部22aは、側面視で、インナパネル11のビード形状部11aと重なる位置に配置されている。リブ形状部22の上端部には、パッド部材30を所定位置に固定するための突起部22bが設けられている。加えて、トリム部材20には、キャラクターライン21を車両前側に延長した部分に開口部23aを有するドアポケット部23が形成されている(
図2を参照)。
【0018】
パッド部材30は、前述したようにインナパネル11とトリム部材20との間の空間に配置されている。このパッド部材30は、
図4の斜視図および
図5の断面図に示すように、所定の厚みを有し、車両内側に位置する側面が、車両上側に向かうに従って車両内側に段階的に近づいていく段差形状に形成されている。本実施形態において、パッド部材30の車両内側に位置する側面は、第1側面部31と、第1側面部31よりも車両上側かつ車両内側に位置する第2側面部32と、第1側面部31の上端および第2側面部32の下端の間に位置し車両前後方向に延びている第1段差部33と、第2側面部32よりも車両上側かつ車両内側に位置する第3側面部34と、第2側面部32の上端および第3側面部34の下端の間に位置し車両前後方向に延びている第2段差部35と、を有している。
【0019】
図6は、サイドドア10内のパッド部材30とリクライニングレバー54の把持部55との位置的な関係を示している。
図6に示すように、パッド部材30は、側面視で、シート50のスライド範囲内においてリクライニングレバー54の把持部55の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。また、パッド部材30の下端部は、
図5および
図6に示すように、側面視で、リクライニングレバー54の把持部55よりも車両下側まで延びているとともに、ドアビーム部材13と重なる位置まで延びている。
【0020】
パッド部材30の第1段差部33は、
図3および
図5に示すように、側面視で、トリム部材20のキャラクターライン21よりも車両上側に配置されている。本実施形態では、第1段差部33が、トリム部材20の車両外側面に形成されているリブ形状部22の突形状部22aよりも車両上側に隣接している。
【0021】
パッド部材30の第1側面部31は、トリム部材20のキャラクターライン21より車両下側の部分と間隔を空けて配置されている。パッド部材30の第2側面部32は、トリム部材20のリブ形状部22に当接している。この第2側面部32には、トリム部材20の突起部22bが挿し込まれてパッド部材30をトリム部材20に固定するための固定部36が形成されている。トリム部材20とパッド部材30との固定部36は、第2側面部32の他に、パッド部材30の車両上側に位置する上面の車両前側部分、および車両後側に位置する側面の車両上側部分にも形成されている(
図4を参照)。
【0022】
パッド部材30の第2段差部35は、側面視で、トリム部材20のリブ形状部22の上端よりも車両上側に隣接している。本実施形態では、リブ形状部22の上端部に突起部22bが設けられているので、この突起部22bよりも車両上側にパッド部材30の第2段差部35が配置されている。パッド部材30の第3側面部34は、トリム部材20の車両外側面に当接している。また、パッド部材30の車両外側に位置する側面の車両下側部分は、インナパネル11のビード形状部11aに当接している(
図5を参照)。
【0023】
次に、本実施形態による車両用サイドドア構造の作用について詳しく説明する。
上述したような構造が適用されたサイドドア10では、車両の側面衝突時に、アウタパネル12およびインナパネル11が車両内側に押し込まれることで、インナパネル11の車両内側面に設けられているトリム部材20が車両内側に移動し、該トリム部材20の車両内側面におけるキャラクターライン21より車両下側の部分がリクライニングレバー54の把持部55に当接する。
【0024】
このとき、インナパネル11とトリム部材20の間の空間内に設けられているパッド部材30の下端部が、側面視で、リクライニングレバー54の把持部55よりも車両下側まで延びていることで、パッド部材30の車両内側に位置する側面の第1側面部31が、リクライニングレバー54の把持部55に当接したトリム部材20を支えるようになる。これにより、トリム部材20が車両外側に押し込まれるのを防止することができるので、トリム部材20の車両外側への変形を抑えることが可能になる。
【0025】
また、パッド部材30の第1段差部33がトリム部材20のキャラクターライン21よりも車両上側に配置されていることで、パッド部材30とトリム部材20とが噛み合い易くなり、互いの当接面積を広げることができる。これにより、パッド部材30とトリム部材20の滑りが抑制されるので、トリム部材20の車両外側への変形を効果的に抑えることが可能になる。トリム部材20の車両外側への変形が抑えられれば、例えば、リクライニングレバー54の把持部55がトリム部材20のキャラクターライン21に落ち込んで保持されてしまい、サイドドア10などの車体の変形によってリクライニングレバー54の回動が促進されるといった状況が発生するのを低減することができる。
【0026】
したがって、本実施形態の車両用サイドドア構造によれば、側面衝突時に、リクライニングレバー54の把持部55がサイドドア10のトリム部材20に当接して押圧されてもリクライニングのロック状態が解除されてしまうのを防ぐことができ、シートベルトやエアバッグ等の安全装置の効果を十分に得ることが可能になる。
【0027】
また、本実施形態の車両用サイドドア構造では、トリム部材20の車両外側面におけるキャラクターライン21より車両上側に位置する部分に格子状のリブ形状部22が形成されていることで、側面衝突時に、トリム部材20のキャラクターライン21より上側の部分の変形が抑えられるようになり、当該部分が車両外側に凹み難くなる。また、トリム部材20の車両外側面におけるキャラクターライン21から車両下側に位置する部分にはリブ形状部22が形成されていないことに加えて、リブ形状部22にはキャラクターライン21の位置で車両外側に突出した突形状部22aが形成されていることによって、トリム部材20は、キャラクターライン21を起点として、相対的に車両下側の部分ほど車両外側に変形し易くなっている。これにより、トリム部材20の車両内側面において車両外側ほど車両上方に向かうような傾斜面が形成され難くなるので、トリム部材20の車両内側面に当接したリクライニングレバー54の把持部55を車両上方に移動させる力が発生するのを抑えることができる。また、パッド部材30の第1段差部33が、リブ形状部22の突形状部22aの車両上側に隣接していることで、パッド部材30とトリム部材20のずれ(滑り)を確実に抑えることができるので、パッド部材30によってトリム部材20を効果的に支えることが可能である。
【0028】
さらに、本実施形態の車両用サイドドア構造では、インナパネル11とアウタパネル12との間にドアビーム部材13が設置されているとともに、インナパネル11には、側面視で、ドアビーム部材13と重なる位置にビード形状部11aが形成されている。このようなドアビーム部材13で補強されたサイドドア10では、側面衝突時、例えば
図7に示すように、アウタパネル12およびドアビーム部材13が車両内側に移動し、ドアビーム部材13がインナパネル11のビード形状部11aに当接して該ビード形状部11aを車両内側に押圧する。ドアビーム部材13によって押圧されたビード形状部11aは、パッド部材30の車両外側に位置する側面の車両下側部分を車両内側上方に向けて押圧する。インナパネル11からの押圧力を受けたパッド部材30は、車両内側に位置する側面の第1側面部31が車両内側に移動し、該第1側面部31がトリム部材20の車両外側面に形成されているリブ形状部22の突形状部22aに当接して該突形状部22aを車両内側に押圧する。このとき、サイドドア10が車両内側に押し込まれたことでトリム部材20も車両内側に移動し、該トリム部材20の車両内側面におけるキャラクターライン21より車両下側の部分がリクライニングレバー54の把持部55に当接するようになる。トリム部材20は、パッド部材30によりリブ形状部22の突形状部22aが車両内側に押圧されているので、トリム部材20におけるキャラクターライン21付近の部分の車両外側への変形をより効果的に抑えることができる。なお、
図7中の実線は本実施形態の車両用サイドドア構造が適用されている場合の挙動を示し、2点鎖線は本実施形態の車両用サイドドア構造が適用されていない場合の挙動を示している。
【0029】
加えて、本実施形態の車両用サイドドア構造では、パッド部材30の第2側面部32がトリム部材20の車両外側面(リブ形状部22)に当接しているとともに、パッド部材30の第1側面部31がトリム部材20のキャラクターライン21より車両下側の部分と間隔を空けて配置されている。これにより、トリム部材20におけるキャラクターライン21より車両上側の部分は車両外側に変形し難くなる一方で、キャラクターライン21より車両下側の部分は、パッド部材30の第1側面部31との間の空間により、車両外側に変形して、車両下側に向かうほど車両外側に傾斜した形状となり易い。このようなキャラクターライン21より車両下側の部分の傾斜形状は、トリム部材20に当接したリクライニングレバー54の把持部55がキャラクターライン21側に誘導されるのを効果的に防止することができる。
【0030】
また、本実施形態の車両用サイドドア構造では、パッド部材30の第2段差部35がトリム部材20のリブ形状部22の上端より車両上側に隣接しているとともに、パッド部材30の第2側面部32にトリム部材20との固定部36が形成されている。これにより、トリム部材20のリブ形状部22の上端にパッド部材30の第2段差部35を合わせることで、トリム部材20の突起部22bとパッド部材30の第2段差部35の固定部36との位置合わせが容易になるので、パッド部材30のトリム部材20への組み付け性を向上させることができる。また、トリム部材20への固定がパッド部材30の上側部分のみで行われ、パッド部材30の下側部分が自由な状態にされていることで、側面衝突時の荷重により、パッド部材30とトリム部材20との間に隙間が発生する可能性を低減することができる。これにより、トリム部材20のキャラクターライン21付近の変形をより確実に抑えることが可能になる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、トリム部材20の車両外側面にリブ形状部22が形成されている一例を示したが、リブ形状部22を省略することも可能である。この場合、パッド部材30の第2側面部32は、トリム部材20の車両外側面に当接するようにしてもよい。
【0032】
また、既述の実施形態では、パッド部材30の車両内側に位置する側面について、第2側面部32の車両上側に第3側面部34および第2段差部35を有する一例を示したが、第3側面部34および第2段差部35が形成されていない構成、すなわち、パッド部材30の車両内側に位置する側面が、第1側面部31、第2側面部32および第1段差部33から構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…サイドドア
11…インナパネル
11a…ビード形状部
12…アウタパネル
13…ドアビーム部材
20…トリム部材
21…キャラクターライン
22…リブ形状部
22a…突形状部
30…パッド部材
31…第1側面部
32…第2側面部
33…第1段差部
34…第3側面部
35…第2段差部
36…固定部
50…シート
54…リクライニングレバー
55…把持部