(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
G10B 3/12 20060101AFI20240327BHJP
G10C 3/12 20060101ALI20240327BHJP
G10H 1/34 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G10B3/12 100
G10C3/12 100
G10H1/34
(21)【出願番号】P 2021207672
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 康志
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-121316(JP,U)
【文献】特開2009-229515(JP,A)
【文献】実開平06-054091(JP,U)
【文献】特開平05-108059(JP,A)
【文献】特開2006-285057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 3/12
G10C 3/12
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵ベース部材と、
前記鍵ベース部材の左右何れか一方に配置される
木質の第1部材と、
何れか他方に配置される
木質の第2部材と、
を備え、
前記第1部材の鍵手前側の上下方向の長さは、鍵盤の両端の少なくとも一方に配置されている前記第1部材がケース上面から押鍵されていない状態で露出している鍵手前側の上下方向の長さよりも長く、かつ、前記第2部材の鍵手前側の上下方向の長さよりも長く、
前記第2部材の鍵手前側の上下方向の長さは、
前記第1部材が前記ケース上面から押鍵されている状態で露出している鍵手前側の上下方向の長さ
よりも長い、
鍵盤楽器。
【請求項2】
前記ケース上面は、鍵手前側に向かって下る傾斜面である、請求項
1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記鍵ベース部材は、打鍵面を備える天板と、前記天板と略同幅であって前記天板の前端部から下方に延設する前板と、前記天板の下面と前記前板の後面と接続する左右の側板と、を有し、
前記第1部材又は前記第2部材は、前記天板の下面、前記前板の後面と当接して前記側板に配置され、
前記側板は、前記天板及び前記前板の各側端と、前記第1部材又は前記第2部材の各側面とが同一面上となる位置に設けられる、請求項1
または2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記鍵ベース部材は、前記第1部材が配置される前記側板が連続して直線状に設けられ、前記第2部材が配置される前記側板が段状に設けられる、請求項
3に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記第1部材は、鍵手前側の前方部と、前記前方部よりも上下方向の長さが短い後方部と、を有する請求項1乃至請求項
4の何れかに記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
前記第2部材は、前第2部材と、前記前第2部材よりも上下方向の長さが短い後第2部材と、を有する、請求項1乃至請求項
5の何れかに記載の鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鍵ベース部材の側面に木質の部材を配置して、質感を高めた鍵を備える鍵盤楽器が開示されている。例えば、特許文献1には、例えばE鍵であれば、鍵の幅広の部分に相当する左側面には木質の部材を貼着し、幅狭の部分に相当する左側面には木質の部材を貼着せず、幅広の部分から幅狭の部分に亘って連続する右側面には全体に亘って木質の部材が貼着される鍵盤楽器が開示されている。そして、これらの木質の部材の上下方向の長さは、同一とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鍵盤楽器においては、意匠性を高めるためにケースの形状に工夫を凝らすことがある。そうすると、木質の部材は、単に打鍵時における隣接する鍵の露出する側面だけではなく、様々な角度から鍵盤楽器を見ても、鍵の側面から木質の部材が切れ目なく見えることが望まれることがある。
【0005】
本発明は、様々な角度から鍵盤楽器を見ても鍵の側面から木質の部材を切れ目なく見ることができて、質感が高められた鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍵盤楽器は、鍵ベース部材と、前記鍵ベース部材の左右何れか一方に配置される木質の第1部材と、何れか他方に配置される木質の第2部材と、を備え、前記第1部材の鍵手前側の上下方向の長さは、鍵盤の両端の少なくとも一方に配置されている前記第1部材がケース上面から押鍵されていない状態で露出している鍵手前側の上下方向の長さよりも長く、かつ、前記第2部材の鍵手前側の上下方向の長さよりも長く、前記第2部材の鍵手前側の上下方向の長さは、前記第1部材が前記ケース上面から押鍵されている状態で露出している鍵手前側の上下方向の長さよりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、様々な角度から鍵盤楽器を見ても鍵の側面から木質の部材を見ることができて、質感が高められた鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の
図1のII-II断面図である。白鍵と黒鍵は側面を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の左側及び右側の部分を拡大し、中間部分を省略して示す上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のC鍵に係る白鍵を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のC鍵における鍵ベース部材の左側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のC鍵における鍵ベース部材の右側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器における白鍵の
図5のVII-VII断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のD鍵に係る白鍵を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のA鍵に係る左側の最端の白鍵を示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のC鍵に係る右側の最端の白鍵を示す分解斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵盤を打鍵した状態の左側の部分を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵盤を打鍵した状態の右側の部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す鍵盤楽器10は、複数の鍵としての複数の白鍵30と複数の黒鍵40を備えるフルサイズ(88鍵)の鍵盤50と、ケース20とを備える。なお、以下の説明においては、鍵盤50の鍵の前後方向FBにおける前を前側F、鍵の前後方向FBの後を後側Bとし、鍵盤50に向かって左を左側L、右を右側Rとする。鍵盤50の鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。本実施形態の鍵盤楽器10は、電子ピアノについて示しているが、奏者(ユーザ)の押鍵操作に応じて発音する楽器であればその他の鍵盤楽器であってもよい。
【0010】
ケース20は、左右方向を長手方向とする略長矩形板状であり、上ケース21と下ケース22に分割される。上ケース21及び下ケース22は、それぞれ樹脂材料により設けられている。ケース20の内部には、基板や電源である電池等が収納される。上ケース21の左側の上面には、ボリュームや各種設定用のツマミやダイヤルを備える操作部11が設けられている。また、上ケース21の左側の前面には、イヤフォンジャック12が設けられている。
【0011】
上ケース21の左側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21a及び右側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21bは、後方から前方に亘って下る傾斜面とされている。また、上ケース21の中央上部に設けられる左右に長い上面21cも傾斜面とされている。また、図示しないが、上ケース21の背面には、スピーカに対応する孔部が設けられている。
【0012】
図2に示すように、ケース20は、下ケース22から立設する下ボス部23と、上ケース21から立設する上ボス部24とがボルトにより螺合接合される等して、上ケース21と下ケース22が組み合わされている。ケース20の内部には、内部ケース25が設けられている。内部ケース25は、鍵の配列方向LRに長く設けられ、
図2の断面視においては下側Loに開口側を向けた略コ字状の断面を備えている。内部ケース25には、上面に回路基板60が設けられている。回路基板60には、各白鍵30及び各黒鍵40に対応して、複数のスイッチ61が設けられている。各白鍵30及び各黒鍵40には、スイッチ61に対応する位置にスイッチ押圧部33(
図2は白鍵30のスイッチ押圧部33を示し、黒鍵40のスイッチ押圧部は不図示)が設けられている。
【0013】
内部ケース25の後方には、各白鍵30及び各黒鍵40を回動自在に支持する支持軸25aが、各白鍵30及び各黒鍵40に対応して設けられている。内部ケース25内には、各白鍵30及び各黒鍵40に対応してハンマー部材70が設けられている。ハンマー部材70は、後側Bにウェイト部71が設けられている。ウェイト部71から前側Fに延びる腕部72は、内部ケース25に設けられる支持軸25bにより回動自在に支持されている。腕部72の先端には、各白鍵30及び各黒鍵40から下側Loに延びるハンマー押圧部31(
図2は白鍵30のハンマー押圧部31を示し、黒鍵40のハンマー押圧部は不図示)に係合するハンマーキャップ73が設けられている。ハンマー押圧部31には、ハンマーキャップ73が係合する孔部31aが設けられている。また、各白鍵30及び各黒鍵40には、前端部に、下側Loに延びて、先端部分が後方に突出する鉤状の規制突起32(
図2は白鍵30の規制突起32を示し、黒鍵40の規制突起は不図示)が設けられている。
【0014】
白鍵30を例に、白鍵30とハンマー部材70の動作を説明する。白鍵30を押下すると、白鍵30のハンマー押圧部31がハンマーキャップ73を押し下げる。すると、ハンマーキャップ73と支持軸25bを挟んで対向して設けられるハンマー部材70のウェイト部71は上昇する。このようにして、白鍵30は、本物のピアノと同様の重みを感じながら打鍵することができる。そして、上昇したウェイト部71は、内部ケース25に設けられるハンマー用の上クッション26に当接する。
【0015】
一方、白鍵30の押下により規制突起32は押し下げられて、規制突起32に対応して設けられる下クッション29に当接する。また白鍵30を押下したとき、白鍵30に設けられるスイッチ押圧部33によりスイッチ61が押下され、押下した白鍵30に対応する音が発音される。そして、白鍵30から手を離すと、ハンマー部材70のウェイト部71が下がって下クッション27に当接し、規制突起32の顎部は上クッション28と当接し、
図2の状態となる。なお、
図5及び
図6に示すように、規制突起32は、板状の左規制突起32aと、板状の右規制突起32bとからなる。
【0016】
図3に示すように、鍵盤50の複数の白鍵30は、その位置(音階)によって形状が異なる。すなわち、鍵の配列方向LRにおける左側Lの最端の白鍵30ALと、右側Rの最端の白鍵30CRは、他に同じ形状の白鍵30はない。白鍵30ALと白鍵30CRの間には、音階Aの鍵であるA鍵としての白鍵30A、以下同様に白鍵30B~30Gを複数備える。白鍵30A,30D,30Gは、左側L及び右側Rに黒鍵40が配置される。白鍵30B,30C,30E,30Fは、左側L又は右側Rに黒鍵40が配置される。従って、以下では代表的に白鍵30C,30Dと、最端の白鍵30AL,30CRについて説明する。
【0017】
ここで、
図4、
図8~
図10に示すように、白鍵30は、基本的な構成として、樹脂の射出成形により製造される鍵ベース部材300と、鍵ベース部材300の左右の側面に配置される第1部材310、第2部材320とを有する。
【0018】
白鍵30Cについて、
図4~
図7を用いて説明する。
図4に示すように、白鍵30Cは、第1部材310と、第2部材320と、鍵ベース部材300Cとを備える。鍵ベース部材300Cは、樹脂の射出成形により製造される。鍵ベース部材300Cには、先述のハンマー押圧部31と、規制突起32、スイッチ押圧部33(
図5、
図6参照)が設けられている。また、鍵ベース部材300Cには、右側Rに段部305が設けられている。段部305よりも後方側は、黒鍵40に隣接して配置される幅狭の部分であり、段部305よりも前方側は、打鍵面を備える幅広の部分である。
【0019】
鍵ベース部材300Cは、天板301を備える。天板301は、段部305から前方の幅広部301aと、段部305から後方の幅狭部301bとを備える。天板301の前端部の下面301q(
図5、
図6参照)からは、下側Loの下方に延設する前板302が設けられている。前板302は、前後方向FBに板面を向けて配置され、天板301の幅広部301aと略同幅に設けられている。
【0020】
また、鍵ベース部材300Cには、天板301の下面301qと前板302の後面302cと接続する左右の側板303,304が設けられている。
図5に示すように、左側Lの側板303は、天板301の幅広部301aに対応する部分である前側板303aと、幅狭部301bに対応する部分である後側板303bとを有する。前側板303a及び後側板303bは、前後方向FBに長い略長矩形状の板状とされ、連続して直線状(側面が略同一面状)に設けられている。前側板303aの鍵の前後方向FBの長さQL1は、後側板303bの鍵の前後方向FBの長さQL3より短く設けられている(QL1<QL3)。前側板303aの上下方向ULの長さQL2は、後側板303bの上下方向ULの長さQL4より長く設けられている(QL2>QL4)。
【0021】
図6に示すように、右側Rの側板304は、天板301の幅広部301aに対応する前側板304aと、幅狭部301bに対応する後側板304bとを有する。前側板304aと後側板304bは、段部305に対応して側板304(前側板304a、後側板304b)に直交する向きの接続板304cにより段状に接続している。前側板304a及び後側板304bは、前後方向FBに長い略長矩形状の板状とされている。前側板304aの鍵の前後方向FBの長さQR1は、後側板304bの鍵の前後方向FBの長さQR3より短く設けられている(QR1<QR3)。前側板304aの上下方向ULの長さQR2は、後側板304bの上下方向ULの長さQR4より長く設けられている(QR2>QR4)。
【0022】
図5、
図6に示すように、左側Lの側板303の前側板303aの前後方向FBの長さQL1は、右側Rの側板304の前側板304aの前後方向FBの長さQR1よりも長い(QL1>QR1)。また、左側Lの側板303の前側板303aの上下方向ULの長さQL2は、右側Rの側板304の前側板304aの上下方向の長さQR2よりも長い(QL2>QR2)。なお、左側Lの側板303の後側板303bの前後方向FBの長さQL3は、右側Rの側板304の後側板304bの前後方向FBの長さQR3よりも短い(QL3<QR3)。左側Lの側板303の後側板303bの上下方向ULの長さQL4は、右側Rの側板304の後側板304bの上下方向ULの長さQR4と略同一である(QL4=QR4)。
【0023】
幅狭部301bに対応する側板303,304の後側板303b,304bには、下側Loに向けて突出する板状のスイッチ押圧部33が設けられている。また、幅広部301aに対応する側板304の下面には、右側Rに突出する突起板306が設けられている。同様に、幅狭部301bに対応する側板303,304の下面には、それぞれ左右方向に突出する突起板307が設けられている。また、左側Lの左規制突起32aの上面32a1と、左側Lのハンマー押圧部31の上面31bは、略同一平面上に配置される。また、右側Rの突起板306の上面と、右側Rの右規制突起32bの上面32b1は、略同一平面上に配置される。また、右側Rのハンマー押圧部31の上面から突出する突起31c(
図4のSI部囲み図も参照)の上面と、右側Rの突起板307の上面は、略同一平面上に配置される。
【0024】
鍵ベース部材300Cの後端部には、ケース20の内部の内部ケース25の支持軸25aと回転自在に係合する回転孔部308が、鍵の配列方向LRに貫通するように設けられている。
【0025】
図4~
図6に示すように、第1部材310は、鍵ベース部材300Cの左右何れか一方である左側Lの側板303に配置される。第2部材320は、鍵ベース部材300Cの何れか他方である右側Rの側板304に配置される。第1部材310、第2部材320共に、木材を材料として木質の板状とされている。
【0026】
図4に示すように、第1部材310は、配置される側板303に対応した形状とされる。すなわち、第1部材310は、側板303の前側板303aに配置される前方部311と、後側板303bに配置される後方部312とを備え、前方部311と後方部312が連続して設けられている。前方部311の上下方向ULの長さは、後方部312の上下方向ULの長さより長く設けられている。第1部材310の上面310aは連続面とされて、下面310bは前方部311と後方部312の接続部で段状に設けられている。
【0027】
第2部材320は、配置される側板304に対応した形状とされる。すなわち、側板304の前側板304aに配置される前第2部材321と、後側板304bに配置される後第2部材322とを備える。前第2部材321の上下方向ULの長さは、後第2部材322の上下方向ULの長さより長く設けられている。
【0028】
図4及び
図5に示すように、第1部材310は、前面310cを鍵ベース部材300Cの前板302の後面302cと当接させ、上面310aを天板301の下面301qと当接させて、側板303の外側面と対向する側面310eに接着剤が塗布されて鍵ベース部材300Cに配置される。すると、
図7に示すように、第1部材310の外側の側面310fは、天板301の左側Lの側端301c1と略同一面となる。また、
図4に示すように、前板302は、天板301の幅広部301aと略同幅に設けられているので、第1部材310の外側の側面310fは、前板302の左側Lの側端302aとも同一面となる。なお、第1部材310の後面310dは、側板303の後端に立設して後面310dと対向する壁部303dに当接せず、隙間が設けられている。
【0029】
また、第1部材310の後方部312においても、第1部材310の外側の側面310fは天板301の側端301c1及び前板302の側端302aと同一面とされている。また、第1部材310の下面310bは、左規制突起32aの上面32a1、ハンマー押圧部31の上面31b、突起板307の上面と若干の隙間を有している。左規制突起32aの上面32a1、ハンマー押圧部31の上面31b、突起板307の上面は、万が一、第1部材310が落下した場合に第1部材310を支持するためのものである。
【0030】
図4及び
図6に示すように、第2部材320の前第2部材321は、前面321cを鍵ベース部材300Cの前板302の後面302cと当接し、上面321aを天板301の下面301qと当接させて、側板304の前側板304aの外側面と対向する側面321eに接着剤が塗布されて鍵ベース部材300Cに配置される。すると、
図7に示すように、前第2部材321の外側の側面321fは、天板301の幅広部301aにおける右側の側端301c2と同一面上となる。また、
図4に示すように、前第2部材321の外側の側面321fは、前板302の右側Rの側端302bと同一面となる。
【0031】
同様に、
図4及び
図6に示すように、第2部材320の後第2部材322は、前面322cを接続板304cに当接し、上面322aを天板301の下面301qと当接させて、後側板304bの外側面と対向する側面322eに接着剤が塗布されて鍵ベース部材300Cに配置される。後第2部材322の外側の側面322fは、天板301の幅狭部301bに対応する右側の側端301c3と同一面となる。なお、第2部材320の後第2部材322の後面322dは、側板304の後端に立設して後面322dと対向する壁部304dに当接せず、隙間が設けられている。また、第2部材320の前第2部材321の後面321dは、開放されている。
【0032】
すなわち、側板303,304は、天板301及び前板302の側端301c1,301c2,302a,302bと、配置された第1部材310、第2部材320(前第2部材321、後第2部材322)の側面310f,321f,322fが同一面となる位置に設けられている。
【0033】
図8に示すように、白鍵30Dは、鍵ベース部材300Dと、2つの第2部材320を備える。鍵ベース部材300Dは、左右両側に黒鍵40が配置されるため、段部305も左右両側に設けられている。すなわち、鍵ベース部材300Dでは、右側Rの側板304と略対称の側板304Lが左側Lに設けられている。なお、右側Rの側板304は、白鍵30Cの側板304と同様である。従って、白鍵30Dの鍵ベース部材300Dには、左右両側に、それぞれ第2部材320が配置される。第2部材320は、白鍵30Cの右側Rの第2部材320と同様に取り付けられる。
【0034】
図9に示すように、白鍵30ALは、鍵ベース部材300ALと、第1部材310と、第2部材320とを備える。鍵ベース部材300ALは、右側Rに黒鍵40が配置されるための段部305が設けられている。すなわち、左右の側板303,304は、白鍵30Cと同様に設けられている。従って、白鍵30ALの鍵ベース部材300ALには、左側Lに第1部材310が取り付けられ、右側Rに第2部材320が取り付けられる。
【0035】
図10に示すように、白鍵30CRは、鍵ベース部材300CRと、2つの第1部材310とを備える。鍵ベース部材300CRには、段部305が設けられていない。すなわち、鍵ベース部材300CRでは、左側Lの側板303と略対称の側板303Rが右側Rに設けられている。従って、白鍵30CRの鍵ベース部材300CRには、左右両側に、それぞれ第1部材310が配置される。第1部材310は、白鍵30Cの左側Lの第1部材310と同様に取り付けられる。
【0036】
このように、鍵ベース部材300には、段部305が設けられていない側板303,303Rには、第1部材310が配置され、段部305が設けられる側板304,304Lには、第2部材320が配置される。
【0037】
【0038】
ha;第2部材320の鍵手前側の上下方向ULの長さ(
図4、
図8~
図10参照)
hb;第1部材310の鍵手前側の上下方向ULの長さ(
図4、
図8~
図10参照)
a;白鍵30の打鍵時における当該白鍵30の鍵手前側の天板301の上面301pから、打鍵した白鍵30と隣り合う白鍵30の鍵手前側の天板301の下面301q(換言すれば、第1部材310の鍵手前側の上面310a又は第2部材320の前第2部材321の鍵手前側の上面321a)までの上下方向ULの長さ(
図11、
図12参照)、換言すれば、鍵盤50の両端以外に配置される第1部材310又は第2部材320の前第2部材321が打鍵時に露出する鍵手前側の上下方向ULの長さ
b;鍵盤50の両端に配置されている各第1部材310が左側Lの上ケース21の上面21a又は右側Rの上ケース21の上面21bから白鍵30(白鍵30AL、白鍵30CR)が押鍵されていない状態で露出している鍵手前側の上下方向ULの長さ(
図11、
図12参照)
【0039】
本実施形態における鍵盤楽器10では、hbはbより大きい(hb>b)。従って、上ケース21における左側L及び右側Rが傾斜する上面21a,21bを備えるケース20を用いても、白鍵30AL,30CRにおいて露出している左側面、右側面において、木質の第1部材310の下面310bが露出されることがない。
【0040】
また、本実施形態における鍵盤楽器10では、haはaよりも大きい(ha>a)。従って、白鍵30の打鍵時においても、打鍵した白鍵30に隣り合う白鍵30の第2部材320の前第2部材321の下面321bが露出されることはない。更に、hbとhaは異なっており(hb≠ha)、hbはhaよりも大きい(hb>ha)。従って、隣り合う白鍵30に第1部材310が配置されていても、当該第1部材310の下面310bが露出されることはない。
【0041】
また、本実施形態においては、bはaよりも大きい(b>a)。従って、以上をまとめると、本実施形態における鍵盤楽器10では、hb>b>ha>aという関係とされている。
【0042】
なお、本実施形態における第1部材310、第2部材320は、白鍵30の幅狭部301bに対応する部位(第1部材310の後方部312、第2部材320の後第2部材322)を備えるが、白鍵30の打鍵時に、黒鍵40が配置される幅狭部301bに対応する白鍵30の側面の露出は少ないので、白鍵30の幅狭部301bに対応する部位(第1部材310の後方部312、第2部材320の後第2部材322)は省略することもできる。
【0043】
鍵盤50の鍵としての白鍵30における、黒鍵40を配置するための段部305が設けられる側面(白鍵30ALの右側面、白鍵30Bの左側面、白鍵30Cの右側面、白鍵30Dの両側面、白鍵30Eの左側面、白鍵30Fの右側面、白鍵30Gの両側面)には、第2部材320が配置される。段部305が設けられず、直線状の白鍵30の側面(白鍵30ALの左側面、白鍵30Bの右側面、白鍵30Cの左側面、白鍵30Eの右側面、白鍵30Fの左側面、白鍵30CRの両側面)には、第1部材310が配置される。従って、上ケース21の上面21a,21bを傾斜して設けることで意匠性を高めた鍵盤楽器10における鍵盤50であっても、木質の部材は、第1部材310と、前第2部材321及び後第2部材322を有する第2部材320を用いれば足り、部品の共通化を促進することができる。
【0044】
すなわち、本提案では、鍵ベース部材の側面に配置する部材は、3種類で足りる。本提案を採用すれば、たとえ鍵盤の両端を外部に露出するような鍵盤装置であったとしても視覚的に美しい鍵盤装置を提供できる。また本提案では、鍵ベース部材の側面に配置する部材として3種類の部材しか使用しないので、鍵ベース部材の各側面に各部材を簡単に配置することができ、鍵盤装置を製造するコストを更に削減できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態では、鍵盤楽器10は、鍵ベース部材300と、鍵ベース部材300の左右何れか一方に配置される第1部材310と、何れか他方に配置される第2部材320と、を備え、第1部材310における鍵手前側の上下方向ULの長さhbは、第2部材320における鍵手前側の上下方向ULの長さhaと異なる。
【0046】
これにより、ケース20の形状に工夫を施したとしても、鍵ベース部材300の側面に取り付けた第1部材310や第2部材320の下面が見えてしまうことを低減することができる。従って、様々な角度から鍵盤楽器10を見ても鍵の側面から木質の部材等を切れ目なく見ることができて、質感が高められた鍵盤楽器10を提供することができる。
【0047】
また、第1部材310の鍵手前側の上下方向ULの長さhbは、鍵盤50の両端の少なくとも一方に配置されている第1部材310がケース20の上面21a,21bから押鍵されていない状態で露出している鍵手前側の上下方向ULの長さbよりも長く、かつ、第2部材320の前第2部材321の鍵手前側の上下方向ULの長さhaよりも長い。これにより、左右の最端の鍵である白鍵30AL,30CRの外側側面の露出範囲が、打鍵された白鍵30に隣り合う白鍵30における露出範囲よりも大きくても、適切に木質の部材等を露出することができる。
【0048】
また、最端の白鍵30AL,30CRに隣接する上ケース21の上面21a,21bは、鍵手前側に向かって下る傾斜面とされる。これにより、最端の白鍵30AL,30CRに隣接するケース20(上ケース21)の上面21a,21bを傾斜させて意匠性を高めた鍵盤楽器10においても、適切に木質の部材を露出することができる。
【0049】
また、鍵ベース部材300は、打鍵面を備える天板301と、天板301と略同幅であって天板301の前端部から下方に延設する前板302と、天板301の下面301qと前板302の後面302cと接続する左右の側板303,304と、を有し、第1部材310又は第2部材320は、天板301の下面301q、前板302の後面302cと当接して側板303,304に配置され、側板303,304は、天板301及び前板302の側端301c1,301c2,302a,302bと、第1部材310又は第2部材320の外側の側面310f,321f,322fとが同一面上となる位置に設けられる。これにより、白鍵30が、全て木質からなるかのように設けることができ、更に見栄えの良い鍵盤楽器10を提供することができる。なお、天板301、前板302、側板303,304は、板状ではなく、ブロック状等であってもよい。
【0050】
また、鍵ベース部材300は、第1部材310が配置される、例えば白鍵30Cの側板303が連続して直線状に設けられ、第2部材320が配置される、例えば白鍵30Cの側板304が段状に設けられる。これにより、例えば白鍵30Cにおいて、黒鍵40に対応する後側板303b,304bにおいても、木質の第1部材310(後方部312)、第2部材320の後第2部材322を配置することができる。
【0051】
また、第1部材310は、鍵手前側の前方部311と、前方部311よりも上下方向ULの長さが短い後方部312と、を有する。これにより、連続する側板303等においても、黒鍵40に隣接する部位まで木質を配置することができる。
【0052】
また、第2部材320は、前第2部材321と、前第2部材321よりも上下方向ULの長さが短い後第2部材322と、を有する。これにより、段状の側板304等においても、黒鍵40に隣接する部位まで木質を配置することができる。
また、本実施例では、鍵ベース部材の側面に配置する部材は木質部材として説明した。しかし、木質部材でなくてもよく、木目調の部材であってもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0054】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]鍵ベース部材と、
前記鍵ベース部材の左右何れか一方に配置される第1部材と、
何れか他方に配置される第2部材と、
を備え、
前記第1部材における鍵手前側の上下方向の長さは、前記第2部材における鍵手前側の上下方向の長さと異なる、鍵盤楽器。
[2]前記第1部材の鍵手前側の上下方向の長さは、鍵盤の両端の少なくとも一方に配置されている前記第1部材がケース上面から押鍵されていない状態で露出している鍵手前側の上下方向の長さよりも長く、かつ、前記第2部材の鍵手前側の上下方向の長さよりも長い、前記[1]に記載の鍵盤楽器。
[3]前記ケース上面は、鍵手前側に向かって下る傾斜面である、前記[2]に記載の鍵盤楽器。
[4]前記鍵ベース部材は、打鍵面を備える天板と、前記天板と略同幅であって前記天板の前端部から下方に延設する前板と、前記天板の下面と前記前板の後面と接続する左右の側板と、を有し、
前記第1部材又は前記第2部材は、前記天板の下面、前記前板の後面と当接して前記側板に配置され、
前記側板は、前記天板及び前記前板の各側端と、前記第1部材又は前記第2部材の各側面とが同一面上となる位置に設けられる、前記[1]乃至前記[3]の何れかに記載の鍵盤楽器。
[5]前記鍵ベース部材は、前記第1部材が配置される前記側板が連続して直線状に設けられ、前記第2部材が配置される前記側板が段状に設けられる、前記[4]に記載の鍵盤楽器。
[6]前記第1部材は、鍵手前側の前方部と、前記前方部よりも上下方向の長さが短い後方部と、を有する前記[1]乃至前記[5]の何れかに記載の鍵盤楽器。
[7]前記第2部材は、前第2部材と、前記前第2部材よりも上下方向の長さが短い後第2部材と、を有する、前記[1]乃至前記[6]の何れかに記載の鍵盤楽器。
【符号の説明】
【0055】
10 鍵盤楽器 11 操作部
12 イヤフォンジャック 20 ケース
21 上ケース 21a 上面
21b 上面 21c 上面
22 下ケース 23 下ボス部
24 上ボス部 25 内部ケース
25a 支持軸 25b 支持軸
26 上クッション 27 下クッション
28 上クッション 29 下クッション
30,30A~30G 白鍵
31 ハンマー押圧部 31a 孔部
31b 上面 31c 突起
32 規制突起 32a 左規制突起
32a1 上面 32b 右規制突起
32b1 上面 33 スイッチ押圧部
40 黒鍵 50 鍵盤
60 回路基板 61 スイッチ
70 ハンマー部材 71 ウェイト部
72 腕部 73 ハンマーキャップ
300 鍵ベース部材 300AL 鍵ベース部材
300C 鍵ベース部材 300CR 鍵ベース部材
300D 鍵ベース部材 301 天板
301a 幅広部 301b 幅狭部
301c1 側端 301c2 側端
301c3 側端 301p 上面
301q 下面 302 前板
302a 側端 302b 側端
302c 後面 303 側板
303R 側板 303a 前側板
303b 後側板 303d 壁部
304 側板 304L 側板
304a 前側板 304b 後側板
304c 接続板 304d 壁部
305 段部 306 突起板
307 突起板 308 回転孔部
310 第1部材 310a 上面
310b 下面 310c 前面
310d 後面 310e 側面
310f 側面 311 前方部
312 後方部 320 第2部材
321 前第2部材 321a 上面
321b 下面 321c 前面
321d 後面 321e 側面
321f 側面 322 後第2部材
322a 上面 322c 前面
322d 後面 322e 側面
322f 側面