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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20240327BHJP
   C01B 21/04 20060101ALI20240327BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240327BHJP
【FI】
F25J3/04 101
C01B21/04 Z
C01B32/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020037522
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139545
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 剛
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0125044(US,A1)
【文献】特開平10-325673(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00925821(EP,A1)
【文献】特開平03-063490(JP,A)
【文献】特開平08-042964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J1/00-5/00
B01D53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を圧縮する第一圧縮機(C1)と、
前記第一圧縮機(C1)と直列または並列に設置される第二圧縮機(2)と、
前記第一圧縮機(C1)および/または前記第二圧縮機(2)で圧縮された原料空気を冷却する、第一冷凍機(R1)と、
前記第一冷凍機(R1)と直列または並列に設置される第二冷凍機(R2)と、
前記第一冷凍機(R1)および/または前記第二冷凍機(R2)で冷却された原料空気を予備精製する予備精製部(50)と、
前記予備精製部(50)で予備精製された原料空気の流量を測定する流量測定部(F1)と、
前記予備精製部(50)で予備精製された原料空気を導入し熱交換する主熱交換器(1)と、
前記主熱交換器(1)から導出される原料空気が供給されて、当該原料空気から製品窒素および/または製品酸素を分離精製する精製部と、
製品窒素および/または製品酸素の製造量の増減に応じて、前記第一圧縮機(C1)および前記第二圧縮機(2)から吐出される原料空気の吐出量を制御する圧縮機制御部(200)と、を備え、
前記圧縮機制御部(200)は、
前記精製部へ供給される原料空気の流量に応じて、当該精製部の圧力設定値を決定する圧力設定部(201)と、
前記精製部へ供給される原料空気の流量に応じて、当該精製部に貯留される酸素富化液の液面設定値を決定する液面設定部(202)と、
原料空気の流量が第一流量閾値以上で、待機側の第一圧縮機(C1)または第二圧縮機(C2)を自動で起動し、原料空気の流量が前記第一流量閾値未満で、第一圧縮機(C1)または第二圧縮機(C2)の内から選択される待機させる圧縮機を自動で停止する圧縮機自動駆動部(203)と、を有する、空気分離装置。
【請求項2】
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度が、第一温度閾値以上で第一継続時間維持した場合に、待機側の前記第一冷凍機(R1)または前記第二冷凍機(R2)を自動で稼働し、
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度が、前記第一温度閾値よりも低い第二温度閾値以下で第二継続時間維持した場合に、第一冷凍機(R1)または第二冷凍機(R2)の内から選択される待機させる冷凍機を自動で停止し、
上流側の前記第一冷凍機(R1)または第二冷凍機(R2)に送られる原料空気の温度が、第三温度閾値以下であり、かつ、前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度が、第二温度閾値以下で第二継続時間維持した場合に、第一冷凍機(R1)および第二冷凍機(R2)を自動で停止する冷凍機自動駆動部(250)を、さらに有する、請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項3】
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度と、前記予備精製部(50)に導入される原料空気の圧力と、前記精製部へ供給される原料空気の流量とに基づいて、原料空気中の水分量および二酸化炭素量を算出し、当該水分量および二酸化炭素量と、予備精製部(50)の吸着剤の充填量から、当該吸着剤に吸着可能な水分の水分吸着可能時間と、当該吸着剤に吸着可能な二酸化炭素の二酸化炭素吸着可能時間とを算出し、水分吸着可能時間と二酸化炭素吸着可能時間の内小さい方の値を、吸着処理時間に決定する、吸着処理時間決定部を、さらに有する、請求項1または2に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記水分量および前記二酸化炭素量と、前記吸着処理時間とから、吸着された吸着水分総重量および吸着二酸化炭素総重量とを算出し、当該吸着水分総重量の水分を吸着剤から脱離するための水分脱離熱量と、当該吸着二酸化炭素総重量の二酸化炭素を吸着剤から脱離するための二酸化炭素脱離熱量とを算出し、水分脱離熱量と二酸化炭素脱離熱量とを加算して脱離総熱量を算出し、脱離総熱量を加温部(52)で加温された加温廃ガスの熱量で除算して再生処理時間を算出する、再生処理時間決定部を、有する、請求項3に記載の空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気分離装置に供給される原料空気は、予め圧縮および冷却され、予備精製(除炭除湿)後に、熱交換器を通過し精留塔へ供給される(例えば、特許文献1および2など参照)。
空気分離装置で製造される製品窒素または製品酸素の製造量は、需要に応じて変動するため、空気分離装置のオペレータは、製造量に応じて原料空気の供給量を制御する必要があった。製造量が大幅に増減する場合、原料空気供給量の制御方法として、低圧精製部の圧力調整の設定を手動で行っていた。また、製造量が大幅に増減する場合、中圧精製部の下部の酸素富化液である液化空気溜まりの液面指示が安定しないことがあった。また、ある一定以上の速度で負荷調整(供給量調整あるいは製造量調整)を行うと、液化空気溜まりを低圧精製部に送り出す際に空気分離装置が安定しないことがあった。このような状況の場合では、オペレータが手動で、あらゆる設定器を操作して安定化させていた。
【0003】
また、製造量が大幅に増減する場合、原料空気を常時圧縮する運転側の圧縮機のみでは足らず、スタンバイ側(予備)の圧縮機が必要となる。このような場合、スタンバイ側(予備)の圧縮機の起動または停止の制御が必要となる。そして、スタンバイ側(予備)の圧縮機を昇圧して吐出弁を開き、運転側の圧縮機と並列状態にしてから運転調整を手動で行っていた。スタンバイ側(予備)の圧縮機を停止させる際にも同様の操作を手動で行っていた。
【0004】
また、圧縮機で圧縮された圧縮原料空気を冷却するため冷凍機として、常時運転している運転側とスタンバイ側(予備)との2台が並列に設置される場合に、圧縮原料空気の供給量や温度によって、冷凍機の運転台数をオペレータが決定し、冷却必要能力に応じて、手動でスタンバイ側の冷凍機を起動または停止させていた。
また、圧縮原料空気の予備精製プロセス(吸着プロセス、再生プロセス)は、オペレータが決定したサイクルで各プロセスの時間が決定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-86564号公報
【文献】特開2003-106763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、空気分離装置の稼働設測定部点から負荷(製造量)を例えば、39%から96%まで増量させる操作と、逆に96%から39%まで減量させる操作とを手動で行い、負荷調整に伴う空気分離装置の変動を最小限に抑えることは非常に困難であった。また操作回数が多く、ミスオペレーションが発生するリスクもあった。さらに、オペレータの感覚的な予知操作に頼らないといけないということも問題であった。
【0007】
そこで、本発明は、製造量が大幅に増減する場合でも手動による操作を低減し、需要に応じた自動負荷(製造量)調整を可能とし、圧縮機および冷凍機の自動運転(起動および停止、吐出量制御)を可能とする空気分離装置を提供することを目的とする。
また、予備精製プロセス(吸着処理、再生処理)を最適に行える空気分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気分離装置(100)は、
原料空気を圧縮する第一圧縮機(C1)と、
前記第一圧縮機(C1)と直列または並列に設置される第二圧縮機(C2)と、
前記第一圧縮機(C1)および/または前記第二圧縮機(C2)で圧縮された原料空気(圧縮空気)を冷却する、第一冷凍機(R1)と、
前記第一冷凍機(R1)と直列または並列に第二冷凍機(R2)と、
前記第一冷凍機(R1)および/または前記第二冷凍機(R2)で冷却された原料空気(冷却圧縮空気)を予備精製(例えば、二酸化炭素および/または水分を除去)する予備精製部(50)と、
前記予備精製部(50)で予備精製された原料空気(予備精製原料空気)の流量を(主熱交換機(1)の上流または下流で)測定する流量測定部(F1)と、
前記予備精製部(50)で予備精製された原料空気(予備精製原料空気)を導入し(温源と)熱交換する主熱交換器(1)と、
前記主熱交換器(1)から導出される原料空気が供給されて、当該原料空気から製品窒素(高純度窒素)および/または製品酸素(高純度酸素)を分離精製する精製部と、
製品窒素および/または製品酸素の製造量の増減に応じて、原料空気の供給量(導入量)を制御する(運転側の圧縮機の吐出量を制御する)制御部(200)と、を備え、
前記制御部(200)は、
前記精製部へ供給される原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)に応じて圧力設定値を決定する圧力設定部(201)と、
前記精製部へ供給される原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)に応じて、当該精製部に貯留される酸素富化液の液面設定値(上限から下限値範囲)を決定する液面設定部(202)と、
原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)が第一流量閾値以上で、待機側の第一圧縮機(C1)または第二圧縮機(C2)を自動で起動し、原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)が、前記第一流量閾値よりも低い第二流量閾値以下で(あるいは第一閾値流量未満で)、第一圧縮機(C1)または第二圧縮機(C2)の内から選択される待機させる圧縮機を自動で停止する圧縮機自動駆動部(203)と、を有する。
【0009】
前記制御部(200)は、
前記圧力設定値になるように、当該精製部から導出されるガス(例えば廃ガス、窒素富化ガス)を放出することで(ガスを大気放出する放出量をベント(54)で制御することで)、当該精製部の圧力(例えば、低圧塔または高圧塔の圧力、圧力測定部(P14またはP12)の測定値)を調整する圧力調整部(280)と、
(液面レベル測定部(201)の測定データが)前記液面設定値になるように、(高圧塔(2)の塔底部(21)から低圧塔(4)の精製部(42)へ送られる)酸素富化液の導出量を調整する制御弁(V2)の開度を制御する導出量制御部(290)と、を有する。
【0010】
前記圧縮機自動駆動部(203)は、
自動で起動した(待機側の)圧縮機の吐出圧力(吐出圧は圧縮機に設けられる圧力測定部で測定される)と、運転側の圧縮機の吐出圧力との圧力差が閾値以下になった場合に、待機側の圧縮機の吐出弁を閉から開にして運転側の圧縮機から吐出される原料空気と合流させる、ように制御してもよい。
前記圧縮機自動駆動部(203)は、
前記精製部へ供給される原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)に応じて、待機側の圧縮機から吐出される原料空気を大気放出する量を増減させ、運転側の圧縮機から吐出される原料空気と合流させる量を減増させるように、第一、第二圧縮機(C1、C2)の吐出側に設けられた、大気放出するベント(51)を制御してもよい。
前記制御部(200)は、
第一圧縮機(C1)の吐出弁の開度を制御することで、第一圧縮機(C1)からの吐出量を制御してもよい。
前記制御部(200)は、
第二圧縮機(C2)の吐出弁の開度を制御することで、第二圧縮機(C2)からの吐出量を制御してもよい。
前記圧縮機自動駆動部(203)は、
運転側の圧縮機の吐出量と、前記精製部へ供給される原料空気の流量(を測定する流量測定部(F1)の測定データ)に応じて、待機側の圧縮機から大気放出される原料空気の量を自動で制御し、大気放出される量が閾値以下になると、待機側の圧縮機を自動で停止してもよい。
【0011】
前記制御部(200)は、
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度(温度測定部(T2)で測定された測定データ)が、第一温度閾値以上で第一継続時間維持した場合に、待機側の前記第一冷凍機(R1)または前記第二冷凍機(R2)を自動で稼働し、
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度(温度測定部(T2)で測定された測定データ)が、前記第一温度閾値よりも低い第二温度閾値以下で第二継続時間維持した場合に、第一冷凍機(R1)または第二冷凍機(R2)の内から選択される待機させる冷凍機を自動で停止し、
上流側の前記第一冷凍機(R1)または第二冷凍機(R2)に送られる原料空気の温度(温度測定部(T1)で測定された測定データ)が、第三温度閾値(あるいは前記第一温度閾値)以下であり、かつ、前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度(温度測定部(T2)で測定された測定データ)が、第二温度閾値以下で第二継続時間維持した場合に、第一冷凍機(R1)および第二冷凍機(R2)を自動で停止する冷凍機自動駆動部(250)を有していてもよい。
【0012】
前記制御部(200)は、
前記予備精製部(50)に導入される原料空気の温度(冷凍機で冷却された後の温度測定部(T2)で測定された測定データ)と、前記予備精製部(50)に導入される原料空気の圧力(冷凍機で冷却された後の圧力測定部(P1)で測定された測定データ)と、前記精製部へ供給される原料空気の流量(流量測定部(F1)の測定データ)とに基づいて、原料空気中の水分量Mおよび二酸化炭素量Mを算出し(時系列データとして算出し)、当該水分量Mおよび二酸化炭素量Mと、予備精製部(50)の吸着剤の充填量(および吸着性能データ)から、当該吸着剤に吸着可能な水分の水分吸着可能時間Tと、当該吸着剤に吸着可能な二酸化炭素の二酸化炭素吸着可能時間Tとを算出し(時系列データとして算出し)、水分吸着可能時間Tと二酸化炭素吸着可能時間Tの内小さい方の値を、吸着処理時間Tに決定する、吸着処理時間決定部(260)を、有していてもよい。
【0013】
前記制御部(200)は、
前記水分量M[g/m]および前記二酸化炭素量M[g/m]と、前記吸着処理時間Tとから、吸着された吸着水分総重量Mwtおよび吸着二酸化炭素総重量Mctとを算出し、吸着剤の充填量(および吸着性能データ)と、当該吸着水分総重量Mwtの水分を吸着剤から脱離するための水分脱離熱量Qと、当該吸着二酸化炭素総重量Mctの二酸化炭素を吸着剤から脱離するための二酸化炭素脱離熱量Qとを算出し、水分脱離熱量Qと二酸化炭素脱離熱量Qとを加算して脱離総熱量Qを算出し、脱離総熱量Q(kcal)を加温部(52)で加温された加温廃ガスの熱量Q[kcal/min](または加温部で加温されていない廃ガスの熱量)で除算して再生処理時間T(加温再生処理時間)を算出する、再生処理時間決定部(270)を、有していてもよい。
【0014】
前記空気分離装置は、
前記精製部から導出される廃ガスを、前記主熱交換器(1)を通過させた後で、前記予備精製部(50)へ送る廃ガス経路(L14)と、
前記予備精製部(50)の手前で、前記廃ガス経路(L14)(主熱交換器(1)より下流または上流)に設けられる廃ガスを放出する放出部(54)と、を備える。
【0015】
前記精製部は、
前記主熱交換器(1)を通過した原料空気が導入される高圧塔(2)と、
前記高圧塔(2)の塔頂部(23)から導出される高圧塔精留物を凝縮する凝縮部(3)と、
前記高圧塔(2)の塔底部(21)から導出される酸素富化液が導入される低圧塔(4)と、を有していてもよい。
前記精製部は、粗アルゴン塔、高純度精製アルゴン塔、熱交換器などをさらに有していてもよい。
【0016】
(作用効果)
(1)製造量が大幅に増減する場合でも手動による操作を低減し、需要に応じた自動負荷(製造量)調整を可能とする。
(2)製品酸素、製品窒素の放出ロスを大幅に削減できる。
(3)圧縮機および冷凍機の自動運転(起動および停止)を可能とする。
(4)予備精製プロセス(吸着処理、再生処理)を最適に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1の空気分離装置を示す図である。
図2】実施形態1の空気分離装置の制御要素の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0019】
(実施形態1)
実施形態1の空気分離装置100について図1を用いて説明する。
原料空気(Feed Air)は、経路(配管)L10上の濾過手段301、触媒塔302を通過し、空気中の異物、固形物が除去され、それらよりも後段の第一温度測定部T1で温度が測定される。経路L10に設けられた第一優先の第一圧縮機C1と、経路L10から分岐された分岐経路L11に設けられる第二優先の第二圧縮機C2とが並列に配置される。通常は第一優先の第一圧縮機C1が常に運転状態であり、第二圧縮機C2は待機状態であり、製造量の増加に従って運転開始される。運転状態と待機状態の圧縮機の運転制御は、圧縮機自動駆動部203の機能説明で詳述する。
【0020】
分岐経路L11は第二圧縮機C2の後段で分岐し、メイン経路は経路L10に合流し、分岐経路は大気放出するためのベント51へ接続される。ベント51による原料空気の大気放出制御は、圧縮機自動駆動部203の機能説明で詳述する。
【0021】
圧縮された圧縮原料空気は、次いで、直列または並列に配置された第一冷凍機R1および第二冷凍機R2にて、所定の温度に冷却される。
【0022】
予備精製部50の上流に、予備精製部50へ導入される原料空気の温度を測定する第二温度測定部T2と、原料空気の圧力を測定する第一圧力測定部P1とが、経路L10に設けられる。
【0023】
(予備精製部)
予備精製部50は、第一吸着塔A1と、第一吸着塔A1と並置される第二吸着塔A2を備える。一方の吸着塔で吸着処理が実行され、他方の吸着塔で再生処理が実行され、吸着処理と再生処理が交互に実行される。
まず、吸着処理について説明する。原料空気を吸着塔へ導入するための経路L10は、第一吸着塔A1へ接続される第一分岐導入経路L101と、第二吸着塔A2へ接続される第二分岐導入経路L102とに分岐し、第一分岐導入経路L101には第一入口弁V11が、第二分岐導入経路L102には第二入口弁V12がそれぞれ設けられる。第一吸着塔A1で吸着処理をさせる場合には、第一入口弁V11を開け、第二入口弁V12を閉じる。第二吸着塔A2で吸着処理をさせる場合には、第一入口弁V11を閉じ、第二入口弁V12を開ける。
第一吸着塔A1の出口側の第一分岐導出経路L101には、第一出口弁V21が、第二吸着塔A2の出口側の第二分岐導出経路L102には、第二出口弁V22がそれぞれ設けられる。第一吸着塔A1で吸着処理をさせる場合には、第一出口弁V21を開け、第二出口弁V22を閉じる。第二吸着塔A2で吸着処理をさせる場合には、第一出口弁V21を閉じ、第二出口弁V22を開ける。図1において、第一分岐導出経路L101と第二分岐導出経路L102は合流し経路L10となる。
第一吸着塔A1または第二吸着塔A2で予備精製処理された原料空気は、経路L10を通じて下流の主熱交換器1へ導入される。
【0024】
次いで、再生処理について説明する。低圧塔4の塔頂部43から導出された廃ガスが、経路L14を介して、主熱交換器1を通過し、加温部52で加温され予備精製部50へ導入される。
廃ガス導入経路である経路L14は、第一吸着塔A1へ接続される第一分岐導入経路と、第二吸着塔A2へ接続される第二分岐導入経路とに分岐し、第一分岐導入経路には第一廃ガス入口弁V31が、第二分岐導入経路には第二廃ガス入口弁V32がそれぞれ設けられる。第一吸着塔A1で再生処理をさせる場合には、第一廃ガス入口弁V31を開け、第二廃ガス入口弁V32を閉じる。第二吸着塔A2で吸着処理をさせる場合には、第一廃ガス入口弁V31を閉じ、第二廃ガス入口弁V32を開ける。
第一吸着塔A1の廃ガス出口側の第一分岐導出経路には、第一廃ガス出口弁V41が、第二吸着塔A2の廃ガス出口側の第二分岐導出経路には、第二廃ガス出口弁V42がそれぞれ設けられる。第一吸着塔A1で再生処理をさせる場合には、第一廃ガス出口弁V41を開け、第二廃ガス出口弁V42を閉じる。第二吸着塔A2で再生処理をさせる場合には、第一廃ガス出口弁V41を閉じ、第二廃ガス出口弁V42を開ける。図1において、第一分岐導出経路と第二分岐導出経路は合流し経路L14となり、例えば大気放出される。
【0025】
(精製部の構成)
空気分離装置100は、主熱交換器1と、主熱交換器1を通過した原料空気が配管L10を介して導入される高圧塔2と、高圧塔2の塔頂部23から導出される高圧塔精留物を凝縮する凝縮部(窒素凝縮器)3と、高圧塔2の塔底部21から導出される酸素富化液が導入される低圧塔4とを備える。
【0026】
高圧塔2は、主熱交換器1を通過した原料空気が導入される気相部と、酸素富化液が貯留される液相部とを有する塔底部21と、塔底部21の上方に設けられる精製部22と、精製部22の上方に設けられる塔頂部23とを有する。
塔頂部23は、塔頂部23の圧力を測定する圧力測定部P12が設けられている。高圧塔2の塔底部21に、酸素富化液の液面高さを測定する液面レベル測定部201が設けられている。各種測定データは、制御部200へ送られ、メモリ205に時系列データとして保存される。
塔底部21から導出される酸素富化液は、熱交換器E5で熱交換された後で、低圧塔4の精製部42の中間段と同じまたは上下方向で近辺の精留段へ、配管L21を介して導入される。配管L21には制御弁V2が設けられており、液面レベル測定部201の測定データに応じて、制御弁V11が制御部200で制御され、酸素富化液の導入量が調整される。
高圧塔2の塔頂部23から経路(配管)L23で導出される高圧塔精留物(還流液)は、主熱交換器1に送られる。
高圧塔2の精製部22の上方段から導出されたガス(気液混合物)は、経路L22を介して低圧塔4の塔頂部43へ送られる。
【0027】
凝縮器3は、低圧塔4の塔底部41から導出された高酸素富化液(O)を貯留する液相部31と、液相部31を冷源として利用し、高圧塔2の塔頂部23から導出される高圧塔精留物を冷却する冷却部(32)と、液相部31の上方の気相部33とを有する。
冷却部32で冷却された高圧塔精留物は、高圧塔2の塔頂部23へ戻り精製部22へ送られる。冷却部32で熱交換に用いられた高酸素富化液(O)は、一部がガス状になり気相部33から経路L33を介して主熱交換器1へ送られる。一方、液相部31の高酸素富化液(O)は、製品タンクへ送られ、製品酸素として使用される。高酸素富化液(O)の酸素濃度は、酸素富化液の酸素濃度よりも大きい。
【0028】
低圧塔4は、高酸素富化液(O)を貯留する塔底部41と、塔底部41の上方に設けられる精製部42と、精製部42の上方に設けられる塔頂部43とを有する。
塔頂部43は、塔頂部43の圧力を測定する圧力測定部P14が設けられている。低圧塔4の塔底部41に、高酸素富化液(O)の液面高さを測定する液面レベル測定部202が設けられている。測定データは制御部200へ送られ、メモリ205に時系列データとして保存される。
塔頂部43から導出された廃ガス(低圧塔頂部精留物)は、経路L14を介して主熱交換器1へ送られ、その後、再生ガスとして使用される。また、塔頂部43から導出された(圧塔頂部精留物は、経路L44を介して、直接または熱交換器E5で熱交換された後で、主熱交換器1へ送られる。塔底部41の気相部から導出されたガスは、経路L33へ合流し、主熱交換器1へ送られる。
【0029】
予備精製部50から主熱交換機1まで間の経路L10に、原料空気の流量(導入量)を測定する流量測定部F1が設けられている。
塔頂部43から予備精製部50まで伸びる経路L14は、主熱交換機1と加温部52との間に、廃ガスを放出するベント54が設けられている。
【0030】
(制御部の構成)
図2に制御部200の構成を示す。制御部200は、製品窒素および/または製品酸素の製造量の増減に応じて、原料空気の供給量(導入量)を制御する。例えば、制御部200は、第一圧縮機C1の吐出弁の開度を制御して第一圧縮機C1からの吐出量を制御し、
第二圧縮機C2の吐出弁の開度を制御して第二圧縮機C2からの吐出量を制御し、これら合計吐出量を制御することで、製品窒素および/または製品酸素の製造量を制御できる。合計吐出量は、流量測定部F1でモニターできる。
制御部200は、圧力設定部201、液面設定部202、圧縮機自動駆動部203、圧力調整部280、導出量制御部290を有する。
圧力設定部201は、高圧塔2へ供給される原料空気の導入量を測定する流量測定部F1の測定データに応じて、低圧塔4の塔頂部43の圧力設定値を決定する。圧力調整部280は、圧力測定部P14で測定される圧力データが、この圧力設定値になるように、低圧塔4の塔頂部43から導出される廃ガスを大気放出する放出量をベント54で制御することで、低圧塔4の塔頂部43の圧力を調整する。
液面設定部202は、流量測定部F1の測定データに応じて、高圧塔2の塔底部21に貯留される酸素富化液の液面設定値(上限から下限値範囲)を決定する。導出量制御部290は、制御弁V2の開度を制御することで、液面レベル測定部201の測定データがこの液面設定値になるように、高圧塔2の塔底部21から低圧塔4の精製部42へ送られる酸素富化液の導出量を調整する。
以上のように、高圧塔の液面と低圧塔の圧力の2重のフィードバック制御をすることで、空気分離装置の負荷変動に対し原料空気の導入量を増減しても、分離性能を低下させることなく運転可能となる。
【0031】
(待機圧縮機の起動と停止)
圧縮機自動駆動部203は、流量測定部F1の測定データが第一流量閾値以上で、待機側の第二圧縮機C2を自動で起動し、流量測定部F1の測定データが、第一流量閾値よりも低い第二流量閾値以下で、第二圧縮機C2(待機させる側の圧縮機)を自動で停止する。
また、圧縮機自動駆動部203は、自動で起動した第二圧縮機C2の吐出圧力(吐出圧は圧縮機に設けられる圧力測定部で測定される)と、第一圧縮機C1の吐出圧力との圧力差が閾値以下になった場合に、第二圧縮機C2の吐出弁を閉から開にして第一圧縮機C1から吐出される原料空気と合流させるように制御することができる。
また、圧縮機自動駆動部203は、流量測定部F1の測定データに応じて、第二圧縮機C2から吐出される原料空気をベント51から大気放出する量を増減させ、第一圧縮機C1から吐出される原料空気と合流させる量を減増させるように、第一、第二圧縮機C1、C2の吐出側に設けられた大気放出するベント51を制御することができる。
また、圧縮機自動駆動部203は、第一圧縮機C1の吐出量と、流量測定部F1の測定データに応じて、第二圧縮機C2から大気放出される原料空気の量を自動で制御し、大気放出される量が閾値以下になると、第二圧縮機C2を自動で停止することができる。
【0032】
以上のように、待機状態の圧縮機の起動および停止を空気分離装置の負荷の増減に対応して素早く行えるので、高圧塔2へ導入される原料空気の圧力を安定化でき、また、消費電力の低減も可能となる。
【0033】
(待機状態の冷凍機の起動と停止)
制御部200は、冷凍機自動駆動部250を有する。
冷凍機自動駆動部250は、予備精製部50に導入される原料空気の温度(温度測定部T2で測定された測定データ)が、第一温度閾値(例えば、15℃から20℃の範囲から選択される値)以上で第一継続時間(例えば、5分から30分)維持した場合に、待機側の第二冷凍機R2を自動で稼働する。
また、冷凍機自動駆動部250は、予備精製部50に導入される原料空気の温度(温度測定部(T2)で測定された測定データ)が、第一温度閾値よりも低い第二温度閾値(例えば、10℃から14℃の範囲から選択される値)以下で第二継続時間(例えば、2分から20分)維持した場合に、第二冷凍機R2(待機させる冷凍機)を自動で停止する。
第一継続時間は、第二継続時間よりも大きいほうが好ましい。第一、第二温度閾値は、空気分離装置の設計仕様によって設定される。
また、冷凍機自動駆動部250は、上流側の第一冷凍機R1に送られる原料空気の温度(温度測定部(T1)で測定された測定データ)が、第三温度閾値(例えば、15℃から20℃の範囲から選択される値)以下であり、かつ、予備精製部50に導入される原料空気の温度(温度測定部(T2)で測定された測定データ)が、第二温度閾値(例えば、10℃から14℃の範囲から選択される値)以下で第二継続時間(例えば、2分から20分)維持した場合に、第一冷凍機R1および第二冷凍機R2を自動で停止する。
【0034】
以上のように、待機状態の冷凍機の起動および停止を空気分離装置の負荷の増減に対応して素早く行えるので、高圧塔2へ導入される原料空気の温度を安定化でき、また、消費電力の低減も可能となる。
【0035】
(吸着処理と再生処理の最適化)
制御部200は、吸着処理時間決定部260と、再生処理時間決定部270を有する。
吸着処理時間決定部260は、予備精製部50に導入される原料空気の温度(冷凍機で冷却された後の温度測定部(T2)で測定された測定データ)と、予備精製部50に導入される原料空気の圧力(冷凍機で冷却された後の圧力測定部(P1)で測定された測定データ)と、精製部50へ供給される原料空気の流量(流量測定部(F1)の測定データ)とに基づいて、原料空気中の水分量Mおよび二酸化炭素量Mを算出し、当該水分量Mおよび二酸化炭素量Mと、予備精製部50の吸着剤の充填量(および吸着性能データ)から、当該吸着剤に吸着可能な水分の水分吸着可能時間Tと、当該吸着剤に吸着可能な二酸化炭素の二酸化炭素吸着可能時間Tとを算出し、水分吸着可能時間Tと二酸化炭素吸着可能時間Tの内小さい方の値を、吸着処理時間Tに決定する。
【0036】
具体的には以下の計算式で決定される。
(式1)
原料空気中の水分量M(水蒸気量)[g/m]=飽和水蒸気量(各温度で予め設定される)×相対湿度[%RH]
相対湿度[%RH]=水蒸気圧[Pa]/飽和水蒸気圧[Pa]
飽和水蒸気圧は、JIS 28806に記載されている飽和水蒸気圧表を使用、またはSonntagの式を使用する。
水蒸気圧は、原料空気の圧力とみなす。
相対湿度は、湿度測定部で測定された値を用いてもよい。
水分吸着可能時間T=単位質量[kg]あたりの水分吸着量×充填量[kg]÷(原料空気中の水分量M[g/m]×原料空気の流量[m/h])
(式2)
原料空気中の二酸化炭素量M[g/m]=1mあたりの原料空気の質量×二酸化炭素の体積比×空気の平均分子量(28.8g/mol)/二酸化炭素の分子量(44g/mol)×温度補正係数(γ)
温度補正係数(γ)は、温度変化を考慮した補正係数であり、温度ごとに予め設定される。
二酸化炭素吸着可能時間T=単位質量[kg]あたりの二酸化炭素吸着量×充填量[kg]÷(原料空気中の二酸化炭素量M[g/m]×原料空気の流量[m/h])
(式3)
吸着処理時間T=MIN(水分吸着可能時間T,二酸化炭素吸着可能時間T
【0037】
また、別実施形態として、吸着処理時間決定部(260)は、水分測定部で測定された原料空気中の水分量M[g/m]と、二酸化炭素濃度測定部(濃度を質量に換算する)で測定された原料空気中の二酸化炭素量M[g/m]と、予備精製部(50)の吸着剤の充填量(および吸着性能データ)とから、水分吸着可能時間、二酸化炭素吸着可能時間を算出し、水分吸着可能時間と二酸化炭素吸着可能時間の内小さい方の値を、吸着処理時間に決定してもよい。
【0038】
再生処理時間決定部270は、水分量M[g/m]および二酸化炭素量M[g/m]と、吸着処理時間Tとから、吸着された吸着水分総重量Mwtおよび吸着二酸化炭素総重量Mctとを算出し、吸着剤の充填量(および吸着性能データ)と、当該吸着水分総重量Mwtの水分を吸着剤から脱離するための水分脱離熱量Qと、当該吸着二酸化炭素総重量Mctの二酸化炭素を吸着剤から脱離するための二酸化炭素脱離熱量Qとを算出し、水分脱離熱量Qと二酸化炭素脱離熱量Qとを加算して脱離総熱量Qを算出し、脱離総熱量Q[kcal]を加温部52で加温された加温廃ガスの熱量Q[kcal/min]で除算して再生処理時間Tを算出する。
【0039】
具体的には以下の計算式で決定される。
(式4)
吸着水分総重量Mwt[g]=水分量M[g/m]×吸着処理時間T[h]×原料空気の流量[m/h]
吸着二酸化炭素総重量Mct[g]=二酸化炭素量M[g/m]×吸着処理時間T[h]×原料空気の流量[m/h]
(式5)
水分脱離熱量Q[kcal]=吸着水分総重量Mwt[g]×吸着剤の単位あたりの水分脱離熱量[kcal/g]
二酸化炭素脱離熱量Q[kcal]=吸着二酸化炭素総重量Mct[g]×吸着剤の単位あたりの二酸化炭素脱離熱量[kcal/g]
脱離総熱量Q[kcal]=水分脱離熱量Q[kcal]+二酸化炭素脱離熱量Q[kcal]
(式6)
再生処理時間T[min]=脱離総熱量Q[kcal]÷加温廃ガスの熱量Q[kcal/min]
【0040】
以上のように、吸着処理の時間を決定し、かる再生処理時間を決定できるため、予め設定された時間による吸着、再生処理よりも、吸着剤の利用効率が格段にあがり、また、再生ガスとして利用する廃ガスを無駄なく利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 主熱交換器
2 高圧塔
21 塔底部
22 精製部
23 塔頂部
3 凝縮器
4 低圧塔
41 塔底部
42 精製部
44 塔頂部
E5 熱交換器
C1 第一圧縮機
C2 第二圧縮機
R1 第一冷凍機
R2 第二冷凍機
A1 第一吸着塔
A2 第二吸着塔
50 予備精製部
201 液面レベル測定部
V2 制御弁
図1
図2