(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
F16B 37/14 20060101AFI20240327BHJP
F16J 13/14 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F16B37/14 J
F16J13/14
(21)【出願番号】P 2020101604
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019179253
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000246343
【氏名又は名称】株式会社イビコン
(73)【特許権者】
【識別番号】392035341
【氏名又は名称】共和ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596160311
【氏名又は名称】株式会社TCM
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 義弘
(72)【発明者】
【氏名】寺阪 剛
(72)【発明者】
【氏名】諫山 智宏
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-047468(JP,A)
【文献】特開2019-060358(JP,A)
【文献】特開2002-206482(JP,A)
【文献】特開平11-336203(JP,A)
【文献】実開昭49-044019(JP,U)
【文献】特開平08-277634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/14
F16J 13/14
E04B 1/38-1/61
E04F 17/00-19/10
E04G 9/00-19/00
E04G 21/14-21/32
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートブロックに設けられた穴の内部に突設させた金具を保護するためのキャップであって、
前記穴を塞ぐことが出来るように、当該穴よりも大きい天板と、
当該天板の裏面に、前記金具の周囲に配置される下方突出部と、を備え、
前記天板は、全体が弾性変形可能な合成樹脂から構成されると共に、前記穴に圧入でき、
前記キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、
弾性変形可能な合成樹脂から構成された前記下方突出部は、前記金具を挟持できるように構成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、
前記下方突出部の下端が、前記穴の内面から離間していることを特徴とする請求項
1記載のキャップ。
【請求項3】
前記キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、
前記下方突出部の外側に位置する前記天板の裏面には、前記穴の内面から離間するように、窪み部が設けられていることを特徴とする請求項
1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記天板の外縁は、内側に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載のキャップ。
【請求項5】
前記天板の外縁の内側に溝部が形成されており、
前記外縁は、前記溝部を潰すように弾性変形可能であることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載のキャップ。
【請求項6】
前記下方突出部で囲まれた前記天板の裏面の底部は、前記下方突出部の外側に位置する前記天板の裏面より窪んで
おり、
前記下方突出部の外側に位置する前記天板の板厚は、前記下方突出部で囲まれた前記天板の前記底部の板厚よりも厚い、
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリートブロックに設けられた穴の内部に突設させた金具が、雨水等に晒されて錆びてしまうことを防ぐキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すような、路面等に設置されるコンクリートブロックが知られており、当該コンクリートブロックは、道路や歩道等の各区画の境界として利用されている。また、当該コンクリートブロックは、道路工事等を行う際に、道路や歩道等の各区画の境界として、工事が終わるまでの一時的な期間だけ設置される場合もある。そして、複数のコンクリートブロックを並べ、互いにボルトの金具等で連結し、路面に設置している。さらに、コンクリートブロックを吊り下げて搬送するために、搬送機の吊り下げ具を固定するための金具がコンクリートブロックに設けられている。そして、これらの金具が表面から突出しないように、コンクリートブロックの表面には穴が設けられており、その穴の内部に金具が配置されている。
【0003】
また、コンクリートブロックを設置した後、穴の内部に雨水等が溜まって、金具が錆びてしまうことを防止するために、穴を塞ぐように嵌められるキャップが利用されている。しかし、このキャップは、コンクリートブロックを設置する度に、何度も着脱を繰り返すため、次第に劣化して固定力が弱くなり、穴から外れやすくなる問題があった。また、野外に設置されるコンクリートブロックは、外気温によって収縮するため、穴に嵌められたキャップが、穴の収縮に対応できずに、外れてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、コンクリートブロックの穴から外れにくいキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、コンクリートブロックに設けられた穴の内部に突設させた金具を保護するためのキャップであって、前記穴を塞ぐことが出来るように、当該穴よりも大きい天板と、当該天板の裏面に、前記金具の周囲に配置される下方突出部と、を備え、前記天板は、全体が弾性変形可能な合成樹脂から構成されると共に、前記穴に圧入できることを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、外気温の影響でコンクリートブロックが僅かに収縮して穴が小さくなっても、キャップの天板は、穴の大きさに対応するように弾性変形できるので、キャップは穴に圧入された状態を維持できるのである。さらに、キャップの天板は、全体が弾性変形可能な合成樹脂から構成されると共に、穴に圧入されるので、キャップを穴に繰り返し着脱しても、穴への固定力が弱くなりにくく、キャップが穴から外れにくいのである。
【0008】
さらに、上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、当該キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、前記下方突出部が、前記金具を挟持するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、キャップが穴から外れることを、更に効果的に防止している。
【0010】
さらに、上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、当該キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、前記下方突出部の下端が、前記穴の内面から離間していることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、下方突出部の先端は穴の底壁の内面から離間しているので、キャップを穴に取り付けた際に、下方突出部が穴の底壁に塞がれて密閉されず、キャップの取り外しが容易に行える。
【0012】
上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、当該キャップが前記穴に圧入されて取り付けられた際に、前記下方突出部の外側に位置する前記天板の裏面には、前記穴の内面から離間するように、窪み部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、窪み部によって、天板の裏面は穴の側壁の内面から離間して、天板の裏面と側壁との間には隙間が出来ているため、天板が穴内で弾性変形し易くなり、キャップを穴に圧入し易くなるのである。
【0014】
上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、前記天板の外縁は、内側に向けて傾斜していることを特徴とする。
【0015】
上記特徴によれば、天板の外縁が内側に向けて傾斜しているので、穴に圧入しやすくなる。
【0016】
上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、前記天板の外縁の内側に溝部が形成されており、前記外縁は、前記溝部を潰すように弾性変形可能であることを特徴とする。
【0017】
上記特徴によれば、溝部が存在することで、外縁はより柔軟に弾性変形できることから、元の形状へ戻ろうと側方に向けて弾性力がより強く働いているので、天板の外縁は穴の側壁の表面に強く密着し、より高い防水効果が得られる。また、外気温の影響でコンクリートブロックが僅かに収縮して穴が小さくなっても、キャップの天板は、溝部を潰すようにして、穴の大きさにより柔軟に対応するように弾性変形できるので、キャップは穴に圧入された状態をより確実に維持できるのである。
【0018】
上記課題を解決するために、本願発明のキャップは、前記下方突出部で囲まれた前記天板の裏面の底部は、前記下方突出部の外側に位置する前記天板の裏面より窪んでいることを特徴とする。
【0019】
上記特徴によれば、金具が傾いていても、金具の頭部が深く窪んだ底部に当接するまで、キャップを穴に圧入でき、キャップが穴から飛び出ることを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本願発明のキャップは、コンクリートブロックの穴から外れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は、本願発明のキャップの全体斜視図、(b)はキャップの平面図、(c)はキャップの側面図である。
【
図2】(a)は、キャップの底面図、(b)は、
図1(b)のA―A断面図である。
【
図3】(a)はコンクリートブロックの全体斜視図、(b)は、B―B断面図であって、穴周辺を拡大した断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴のB-B断面図において、穴にキャップ100を圧入する様子を示すもので、キャップは
図2(b)に示したのと同様にA―A断面図となっている。
【
図5】(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴のB-B断面図において、穴にキャップ100を圧入した様子を示すもので、キャップは
図2(b)に示したのと同様にA―A断面図となっている。
【
図6】(a)は、本願発明の変形例1にかかるキャップの全体斜視図、(b)はキャップの平面図、(c)はキャップの側面図である。
【
図7】(a)は、キャップの底面図、(b)は、
図6(b)のC―C断面図である。
【
図8】(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴のB-B断面図において、穴にキャップを圧入する様子を示すもので、キャップは
図7(b)に示したのと同様にC―C断面図となっている。
【
図9】(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴のB-B断面図において、穴にキャップを圧入する様子を示すもので、キャップは
図7(b)に示したのと同様にC―C断面図となっている。
【符号の説明】
【0022】
100 キャップ
110 天板
112 裏面
120 下方突出部
200 コンクリートブロック
300 穴
500 金具
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本願発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
まず、
図1及び
図2に、本願発明のキャップ(蓋部)100を示す。
図1(a)はキャップ100の全体斜視図、
図1(b)はキャップ100の平面図、
図1(c)はキャップ100の側面図、
図2(a)はキャップ100の底面図、
図2(b)は、
図1(b)のA―A断面図である。
【0025】
図1に示すように、キャップ100は、コンクリートブロックに設けられた穴を塞ぐ天板110と、金具の頭部を囲む下方突出部120とを備え、全体が弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂によって一体成形されている。そして、天板110は、円形で平坦な表面111と裏面112を備えた厚さが均一な円盤形状をしており、天板110全体は、弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂によって一体成形されている。
【0026】
さらに、天板110は、弾性変形して、コンクリートブロックに設けられた穴に圧入出来るように構成されている。そして、天板110は、コンクリートブロックに設けられた穴よりも僅かに大きくなっている。具体的には、天板110の直径L1は、穴300の直径L2(
図3参照)よりも大きくなっている。
【0027】
また、天板110の表面111には、上方へ突出する摘まみ130が設けられている。この摘まみ130は、天板110の中心Oよりも外縁113側に設けられている。そのため、キャップ100をコンクリートブロックの穴から外す際、作業者が摘まみ130を摘まみ上げれば、天板110の外縁113側が変形して、キャップ100を容易に外すことが出来る。また、天板110の外縁113は、表面111から裏面112へ向けて内側に傾斜しており、天板110の外径は、表面111から裏面112にかけて縮径している。
【0028】
また、天板110の裏面112には、当該裏面112から下方へ突出する略筒状の下方突出部120が設けられている。この下方突出部120は、天板110と一体成形されているので、弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂で構成されている。そして、下方突出部120で囲まれた内部の空間は、後述する金具を囲んで収容する収容空間121となっている。また、下方突出部120の先端122は、後述するように、キャップ100がコンクリートブロックの穴に取り付けられた際に、穴の内面に接触せずに、離間するようになっている。
【0029】
なお、下方突出部120は略筒状をしているが、これに限定されず、下方突出部120は金具を囲むことができれば、中空状の直方体等の任意の形状とすることが出来る。また、下方突出部120は、金具の周囲を一周するように連続して形成されているが、これに限定されず、金具の周囲を囲むように、断続的に形成されてもよい。
【0030】
さらに、下方突出部120の外側の天板110の裏面112側には、内側に段状に窪んだ窪み部140が設けられており、窪み部140の上面は天板110の裏面112、窪み部140の内面は下方突出部120の外面123となっている。この窪み部140は、コンクリートブロックの穴から離間しており、キャップ100を穴に取り付けた際に、穴の内面との間に空間を形成している。
【0031】
また、キャップ100の天板110は略円形状であるが、これに限定されず、コンクリートブロックの穴に圧入できるのであれば、略四角形状等の任意の形状とすることが出来る。また、キャップ100全体は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で一体成形されているが、これに限定されず、弾性変形可能であれば、任意の合成樹脂を採用できる。なお、キャップ100は野外に設置されることが多いため、耐候性のある合成樹脂が好ましい。
【0032】
次に、キャップ100を取り付ける対象のコンクリートブロック200について説明する。
図3(a)はコンクリートブロック200の全体斜視図、
図3(b)は、B―B断面図であって、穴300周辺を拡大した断面図である。
【0033】
図3に示すように、コンクリートブロック200は、道路や歩道等の各区画の境界として従来から利用されており、上面210には、複数の穴300が設けられている。この穴300は、
図3(b)に示すように、上面210の表面から略半球状に窪んだものであり、底壁310と側壁320とを備える。また、底壁310内部には金具500が埋め込まれており、金具500の頭部510側は、底壁310から突設されている。この金具500は、例えば、コンクリートブロック200を運搬する際に、搬送機の吊り下げ具を固定するものである。そして、金具500は、穴300内部に配置されており、コンクリートブロック200の上面210から突出していないので、邪魔にならないのである。
【0034】
ここで、搬送機の吊り下げ具を金具500に取り付けて、コンクリートブロック200を目的の場所へ運搬して設置した後は、金具500をしばらくの間利用することはない。そして、コンクリートブロック200は野外に設置される場合があるため、穴300には雨水等が溜まり、金属製の金具500が錆びてしまうことがある。そこで、穴300に雨水等が入らないよう、穴300を塞ぐために、本願発明のキャップ100を穴300に取り付けるのである。なお、本願発明のキャップ100は、金具500を設置した穴300に取り付けられているが、これに限定されず、コンクリートブロックにおいて、金具が設けられた穴であれば、任意の使用目的の穴に取り付けてもよい。例えば、コンクリートブロック200の穴400は、隣接するコンクリートブロック200同士を連結するボルト等の金具を挿入する穴であるが、この穴400を塞ぐためにキャップ100を利用してもよい。
【0035】
では、キャップ100をコンクリートブロック200の穴300に取り付ける様子について、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、
図4(a)及び(b)、並びに
図5(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴300のB-B断面図において、穴300にキャップ100を圧入する様子を示すもので、キャップ100は
図2(b)に示したのと同様にA―A断面図となっている。
【0036】
まず、
図4(a)に示すように、コンクリートブロック200の穴300の上からキャップ100を被せるように設置する。その際、下方突出部120の収容空間121に金具500の頭部510が挿入されるように、キャップ100の位置合わせを行う。また、キャップ100の天板110は穴300よりも僅かに大きくなっているので、天板110は穴300に挿入されておらず、穴300上に載せられた状態となっている。
【0037】
次に、
図4(b)に示すように、作業者は手Hでキャップ100の中心O付近を押さえて、天板110を下方へ押し込む。すると、キャップ100の天板110の外縁113側が僅かに反り返るように弾性変形し、天板110が、穴300の側壁320の上端側から穴300内へ圧入されていくのである。そして、天板110の中心O付近を金具500の頭部510へ向けて強く押し込み、天板110の裏面112に金具500の頭部510が当接するまで、キャップ100を穴300に圧入すると、
図5(a)に示す状態となる。
【0038】
図5(a)に示すように、キャップ100が穴300に圧入された状態では、キャップ100の天板110とコンクリートブロック200の上面210とが同一平面となっている。さらに、穴300に圧入されて弾性変形している天板110の外縁113には、元の形状へ戻ろうと側方に向けて弾性力(復元力)が働いているので、天板110の外縁113は穴300の側壁320の表面に強く密着している。そのため、穴300は、キャップ100の天板110によって密閉された状態となり、穴300内に雨水等が侵入して金具500が錆びるのを防ぐことが出来るのである。
【0039】
また、本願発明のキャップ100によれば、外気温の影響でコンクリートブロック200が僅かに収縮して穴300が小さくなっても、キャップ100の天板110は、穴300の大きさに対応するように弾性変形できるので、キャップ100は穴300に圧入された状態を維持できるのである。さらに、キャップ100の天板110は、全体が弾性変形可能な合成樹脂から構成されると共に、穴300に圧入されるので、キャップ100を穴300に繰り返し着脱しても、穴300への固定力が弱くなりにくく、キャップ100が穴300から外れにくいのである。
【0040】
また、キャップ100を穴300に取り付ける際は、
図4(b)に示すように、作業員は手Hで、天板110の中心O付近を金具500の頭部510へ向けて強く押し付けている。すると、金具500の頭部510が天板110の裏面112の中心O付近に強く当接して、天板110の中心O付近には応力が集中することになるが、天板110全体が弾性変形可能な合成樹脂から構成されているので、天板110は効果的に応力を吸収し、弾性変形後は周囲に応力を分散する。そのため、キャップ100の天板110は、繰り返し着脱された際に、金具500の頭部510に何度も当接して応力を加えられても損傷し難く、キャップ100が穴300から外れにくいのである。
【0041】
また、
図5(a)に示すように、下方突出部120は金具500の頭部510を挟持しているので、キャップ100が穴300から外れることを、更に効果的に防止している。なお、
図5(a)では、下方突出部120が金具500を挟持しているが、これに限定されず、下方突出部120は金具500を挟持しなくてもよい。下方突出部120が、金具500の周囲を囲んでいれば、キャップ100が穴300内で横ズレすることを防止でき、キャップ100を穴300に取り付け易いのである。
【0042】
さらに、
図5(a)に示すように、下方突出部120の先端122は、穴300の底壁310の内面から離間しているので、キャップ100を穴300に取り付けた際に、下方突出部120、特に収容空間121が穴300の底壁310に塞がれて密閉されず、キャップ100の取り外しが容易に行える。仮に、キャップ100を穴300に取り付けた際に、下方突出部120の先端122が穴300の内面に密着して収容空間121が密閉されると、下方突出部120が穴300の内面に吸盤のように付いてしまうので、キャップ100を穴300から取り外しにくくなってしまうのである。
【0043】
さらに、
図5(a)に示すように、キャップ100を穴300に取り付けた際、キャップ100は窪み部140を備えているので、天板110の裏面112は穴300の側壁320の内面から離間して、天板110の裏面112と側壁320との間には隙間が出来ている。そのため、天板110が穴300内で弾性変形し易くなり、キャップ100を穴300に圧入し易くなるのである。また、外気温の影響でコンクリートブロック200が僅かに収縮して穴300が小さくなっても、天板110が穴300内で柔軟に弾性変形でき、キャップ100が穴300から外れにくくなるのである。
【0044】
また、
図5(b)には、外気温の影響でコンクリートブロック200が僅かに収縮して穴300が小さくなった状態を示している。キャップ100の外縁113は、内側へ向けて傾斜した形状をしているので、天板110の中心O側が上方へ僅かに膨らむように弾性変形する。それに伴い、天板110の裏面112側に設けられた下方突出部120は、金具500の頭部510を両側から挟み込むように変形するので、下方突出部120は頭部510をより強く挟持することになり、キャップ100は穴300から外れにくくなるのである。なお、
図5(b)では、説明の都合上分かりやすいように、キャップ100を実際より大きく変形させて表示している。また、キャップ100の外縁113は、内側(下方)へ向けて傾斜した傾斜面となっているので、穴300に圧入しやすくなっているが、これに限定されず、キャップ100の外縁113は、天板110に対して垂直な垂直面でもよく、任意の形状とすることができる。
【0045】
<変形例1>
では以下に、本願発明の変形例1にかかるキャップ100Aについて説明する。なお、変形例1にかかるキャップ100Aは、溝部150Aを備えた点、下方突出部120Aで囲まれた天板110Aの裏面112Aが下方突出部120Aの外側の天板110Aの裏面112Aよりも深く窪んでいる点で、
図1に示すキャップ100と異なるが、その他の構成については、キャップ100の構成と基本的に同一なので、詳細な説明を省略する。
【0046】
まず、
図6及び
図7に、変形例1にかかるキャップ(蓋部)100Aを示す。
図6(a)はキャップ100Aの全体斜視図、
図6(b)はキャップ100Aの平面図、
図6(c)はキャップ100の側面図、
図7(a)はキャップ100Aの底面図、
図7(b)は、
図6(b)のC―C断面図である。
【0047】
図6及び
図7に示すように、キャップ100Aは、コンクリートブロックに設けられた穴を塞ぐ天板110Aと、金具の頭部を囲む下方突出部120Aとを備え、全体が弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂によって一体成形されている。そして、天板110Aは、円形で平坦な表面111Aと裏面112Aを備えた円盤形状をしており、天板110A全体は、弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂によって一体成形されている。
【0048】
さらに、天板110Aは、弾性変形して、コンクリートブロックに設けられた穴に圧入出来るように構成されている。また、天板110Aの表面111Aには、上方へ突出する摘まみ130Aが設けられている。さらに、天板110Aの外縁113Aは、表面111Aから裏面112Aへ向けて内側に傾斜しており、天板110Aの外径は、表面111Aから裏面112Aにかけて縮径している。また、天板110Aの表面111Aには、外縁113Aの内側に溝部150Aが形成されている。この溝部150Aは、天板110Aの周方向に沿って略環状に連続して形成されている。なお、溝部150Aは、略環状に連続して形成されているが、これに限定されず、外縁113Aの内側に形成されるのであれば、任意の形状で断続的に形成してもよい。また、溝部150Aは、天板110Aの表面111Aに設けられているが、これに限定されず、天板110Aの裏面112Aに設けてもよい。
【0049】
また、天板110Aの裏面112Aには、当該裏面112Aから下方へ突出する略筒状の下方突出部120Aが設けられている。この下方突出部120Aは、天板110Aと一体成形されているので、弾性変形可能なEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の合成樹脂で構成されている。そして、下方突出部120Aで囲まれた内部の空間は、金具を囲んで収容する収容空間121Aとなっている。収容空間121Aの底部、すなわち、下方突出部120Aで囲まれた天板110Aの裏面112Aの底部114Aは、下方突出部120Aの外側に位置する天板110Aの裏面112Aよりも深くなっている。具体的には、収容空間121Aの底部114Aは、下方突出部120Aの外側に位置する天板110Aの裏面112Aよりも、天板110Aの中心に向けて深く窪んでおり、
図7(b)に示すように、外側に位置する天板110Aの裏面112Aよりも深さD1だけ深く窪んでいる。
【0050】
さらに、
図7(b)に示すように、下方突出部120Aの外側の天板110Aの裏面112A側には、内側に段状に窪んだ窪み部140Aが設けられており、窪み部140Aの上面は天板110Aの裏面112A、窪み部140Aの内面は下方突出部120Aの外面123Aとなっている。
【0051】
では次に、キャップ100Aをコンクリートブロック200の穴300に取り付ける様子について、
図8を参照して説明する。なお、
図8(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴300のB-B断面図において、穴300にキャップ100Aを圧入する様子を示すもので、キャップ100Aは
図7(b)に示したのと同様にC―C断面図となっている。
【0052】
まず、
図8(a)に示すように、コンクリートブロック200の穴300の上からキャップ100Aを被せるように設置する。その際、下方突出部120Aの収容空間121Aに金具500の頭部510が挿入されるように、キャップ100Aの位置合わせを行う。また、キャップ100Aの天板110Aは穴300よりも僅かに大きくなっているので、天板110Aは穴300に挿入されておらず、穴300上に載せられた状態となっている。
【0053】
次に、
図8(b)に示すように、作業者は手(不図示)でキャップ100Aの天板110Aを下方へ押し込む。すると、キャップ100Aの天板110の外縁113Aが、溝部150Aを潰すように内側に弾性変形し、天板110Aが穴300内へ圧入されていくのである。そして、天板110Aの中心付近を金具500の頭部510へ向けて強く押し込み、天板110Aの底部114Aに金具500の頭部510が当接するまで、キャップ100Aを穴300に圧入する。
【0054】
図8(b)に示すように、天板110Aの外縁113Aには溝部150Aが存在することで、外縁113Aはより柔軟に弾性変形できることから、元の形状へ戻ろうと側方に向けて弾性力(復元力)がより強く働いているので、天板110Aの外縁113Aは穴300の側壁320の表面に強く密着し、より高い防水効果が得られる。
【0055】
また、外気温の影響でコンクリートブロック200が僅かに収縮して穴300が小さくなっても、キャップ100Aの天板110Aは、溝部150Aを潰すようにして、穴300の大きさにより柔軟に対応するように弾性変形できるので、キャップ100Aは穴300に圧入された状態をより確実に維持できるのである。
【0056】
では次に、金具500Aが傾いた状態で穴300に設けられている場合において、キャップ100Aをコンクリートブロック200の穴300に取り付ける様子について、
図9を参照して説明する。なお、
図9(a)及び(b)は、
図3(b)に示す穴300のB-B断面図において、穴300にキャップ100Aを圧入する様子を示すもので、キャップ100Aは
図7(b)に示したのと同様にC―C断面図となっている。
【0057】
まず、
図9(a)に示すように、コンクリートブロック200の穴300の上からキャップ100Aを被せるように設置する。その際、下方突出部120Aの収容空間121Aに金具500Aの頭部510Aが挿入されるように、キャップ100Aの位置合わせを行う。なお、金具500Aが傾いた状態で穴300に設けられているので、金具500Aの頭部510の最も高い部分までの高さH1は、
図8に示すように金具500が垂直にまっすぐに設けられている場合よりも、高くなっている。
【0058】
次に、
図9(b)に示すように、作業者は手(不図示)でキャップ100Aの天板110Aを下方へ押し込む。その際、金具500Aが傾いているので、キャップ100Aの中心と穴300の中心が一致するように垂直に真っすぐ圧入することは難しい。ただ、穴300の中心から僅かにずれるようにキャップ100Aが挿入されても、溝部150Aが存在するため、外縁113Aが、溝部150Aを潰すように内側に柔軟に弾性変形する。そのため、天板110Aの外縁113Aは、穴300の側壁320の表面に隙間なく密着でき、高い防水効果が得られるのである。
【0059】
また、傾いた金具500Aの頭部510の最も高い部分までの高さH1は、
図8に示すように金具500が垂直にまっすぐに設けられている場合よりも高くなっているため、キャップを取り付けると、キャップが穴300から飛び出る虞がある。しかしながら、キャップ100Aでは、下方突出部120Aで囲まれた天板110Aの裏面112Aの底部114Aが、下方突出部120Aの外側に位置する天板110Aの裏面112Aよりも深く窪んでいる。そのため、金具500の頭部510が、深く窪んだ底部114Aに当接するまで、キャップ100Aを穴300に圧入しても、キャップ100Aが穴300から飛び出ることなく、キャップ100Aの天板110Aとコンクリートブロック200の上面210とが同一平面、または、天板110Aをコンクリートブロック200の上面210よりも低くすることができる。
【0060】
また、
図9(b)に示すように、傾いて設置された金具500Aの頭部510を囲む下方突出部120Aは、傾いた頭部510に合わせて僅かに変形している。一方、キャップ100Aでは、下方突出部120Aで囲まれた天板110Aの裏面112Aの底部114Aが、下方突出部120Aの外側に位置する天板110Aの裏面112Aよりも深く窪んでいるため、下方突出部120Aの外側に位置する天板110Aの板厚D3は、下方突出部120Aで囲まれた天板110Aの底部114Aの板厚D2よりも厚くなっている。そのため、板厚D3が厚い外側の天板110Aにより、下方突出部120Aの付け根付近(裏面112Aとの接続箇所付近)は、内側に押圧された状態となっている。これにより、下方突出部120Aが傾いた頭部510に合わせて僅かに変形していても、下方突出部120Aは内側に押圧されているので、金具500Aの頭部510を周囲からしっかりと挟持でき、キャップ100Aが穴300から外れることを、効果的に防止している。
【0061】
なお、本願発明のキャップは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。