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特許7460981アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤、及びアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの臭気変調方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤、及びアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの臭気変調方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20240327BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240327BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 213/64 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 241/12 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 241/18 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 307/38 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 307/44 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 307/48 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 307/60 20060101ALI20240327BHJP
   C07D 309/40 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 J
A61L9/01 K
C02F1/00 F
C02F11/00 F
C07D213/64
C07D241/12
C07D241/18
C07D307/38
C07D307/44
C07D307/48
C07D307/60 Z
C07D309/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017229636
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019097697
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】598118776
【氏名又は名称】山本香料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000238234
【氏名又は名称】シキボウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】包 旭旭
(72)【発明者】
【氏名】辻本 裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳邦
(72)【発明者】
【氏名】肥下 隆一
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】松井 裕典
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/018805(WO,A1)
【文献】特開2003-102819(JP,A)
【文献】特開2002-336337(JP,A)
【文献】特開2003-190264(JP,A)
【文献】特開2003-113392(JP,A)
【文献】特開2017-210589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
C11B1/00-15/00
C11C1/00-5/02
C07D261/00-273/08
C07B31/00-61/00
C07B63/00-63/04
C07C1/00-409/44
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、下水処理場又は浄化槽に沈殿する汚泥銀杏は塗料の臭いの変調用臭気変調剤であって、
フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有し、
前記フラン化合物は、フラネオール、フルフラール、5-メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2-プロピオニルフラン、2-エチルフラン、メントフラン、2-メチル-3-フランチオール、2-メチル-3-テトラヒドロフランチオール、2-メチル-4,5-ジヒドロ-3-フランチオール、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2-ヘキサノイルフラン、2-ペンチルフラン、2-プロピルフラン、2-(3-フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、2-フルフリル-5-メチルフラン、2-ヘプチルフラン、2-メチルベンゾフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-(5-エテニル-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-プロパナール、3-{[2-メチル-(2or4),5-ジヒドロ-3-フリル]チオ}-2-メチルテトラヒドロフラン-3-チオール、2-エテニル-5-イソプロペニル-2-メチルテトラヒドロフラン、5-メチル-2-フランメタンチオール、6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3-c]フラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-ブチルフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5-ジメチル-3-フランチオールからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記ピラン化合物は、マルトール、エチルマルトール、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピラン、3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロピラン、5-メチル-3-ブチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、オクタヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)-2,5,5,8a-テトラメチル-3,4,4a,5,6,8a-ヘキサヒドロ-2H-1-ベンゾピラン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロ-3(4H)-ピラノン、6-ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6-アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピランからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記シクロペンタノン誘導体は、シクロペンタノン、シクロテン、シクロテンアセテート、シクロテンプロピオネート、シクロテンブチレート、シクロテンイソブチレート、2-ゲラニルシクロペンタノン、2-ヘキシルシクロペンタノン、2-ヘキシリデンシクロペンタノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、及び2,3-ジメチル-2-シクロペンテノンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記含酸素環状化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として10~20質量%であり、
更に、ピラジン類を含有し、
前記ピラジン類は、2-エチル-3(5/6)ジメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-アセチル-3,(5/6)-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、2-(フルフリルチオ)-(3/5/6)-メチルピラジン、2-メチル-(5/6)-(メチルチオ)ピラジン、2-エチル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-イソプロピル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-エトキシ-(3/5/6)-メチルピラジン、2-エトキシ-3-エチルピラジン、2-エトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-ヘキシル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロポキシ-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-(3/5/6)-メトキシピラジン、2-メトキシ-(5/6)-メチルピラジン、2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、メトキシピラジン、2-メチル-6-プロポキシピラジン、2-エトキシ-(5/6)-メチルピラジン、及び2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルピラジンからなる群より選択される少なくとも一種である、
ことを特徴とする臭気変調剤。
【請求項2】
前記フラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.8~5質量%である、請求項1に記載の臭気変調剤。
【請求項3】
前記ピラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として5~20質量%である、請求項1又は2に記載の臭気変調剤。
【請求項4】
前記シクロペンタノン誘導体の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.1~5質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の臭気変調剤。
【請求項5】
更に、バニリン系化合物を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の臭気変調剤。
【請求項6】
前記バニリン系化合物は、バニリン、エチルバニリン、アセトアルデヒドエチルバニリンアセタール、バニリンアセテート、エチルバニリンイソブチレート、アセトバニロン、エチルバニレート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニレート、バニリックアシド、バニリンイソブチレート、ブチルバニレート、バニリン2,3-ブタンジオールアセタール、及びバニリンラクテートからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の臭気変調剤。
【請求項7】
前記バニリン系化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として10~20質量%である、請求項5又は6に記載の臭気変調剤。
【請求項8】
更に、ピリジン類を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の臭気変調剤。
【請求項9】
前記ピリジン類は、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-4-イソプロペニルピリジン、4-アセチル-2-イソプロペニルピリジン、2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、3,5-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、及び2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項8に記載の臭気変調剤。
【請求項10】
フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有し、
前記フラン化合物は、フラネオール、フルフラール、5-メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2-プロピオニルフラン、2-エチルフラン、メントフラン、2-メチル-3-フランチオール、2-メチル-3-テトラヒドロフランチオール、2-メチル-4,5-ジヒドロ-3-フランチオール、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2-ヘキサノイルフラン、2-ペンチルフラン、2-プロピルフラン、2-(3-フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、2-フルフリル-5-メチルフラン、2-ヘプチルフラン、2-メチルベンゾフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-(5-エテニル-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-プロパナール、3-{[2-メチル-(2or4),5-ジヒドロ-3-フリル]チオ}-2-メチルテトラヒドロフラン-3-チオール、2-エテニル-5-イソプロペニル-2-メチルテトラヒドロフラン、5-メチル-2-フランメタンチオール、6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3-c]フラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-ブチルフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5-ジメチル-3-フランチオールからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記ピラン化合物は、マルトール、エチルマルトール、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピラン、3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロピラン、5-メチル-3-ブチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、オクタヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)-2,5,5,8a-テトラメチル-3,4,4a,5,6,8a-ヘキサヒドロ-2H-1-ベンゾピラン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロ-3(4H)-ピラノン、6-ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6-アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピランからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記シクロペンタノン誘導体は、シクロペンタノン、シクロテン、シクロテンアセテート、シクロテンプロピオネート、シクロテンブチレート、シクロテンイソブチレート、2-ゲラニルシクロペンタノン、2-ヘキシルシクロペンタノン、2-ヘキシリデンシクロペンタノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、及び2,3-ジメチル-2-シクロペンテノンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記含酸素環状化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として10~20質量%であり、
更に、ピラジン類を含有し、
前記ピラジン類は、2-エチル-3(5/6)ジメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-アセチル-3,(5/6)-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、2-(フルフリルチオ)-(3/5/6)-メチルピラジン、2-メチル-(5/6)-(メチルチオ)ピラジン、2-エチル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-イソプロピル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-エトキシ-(3/5/6)-メチルピラジン、2-エトキシ-3-エチルピラジン、2-エトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-ヘキシル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロポキシ-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-(3/5/6)-メトキシピラジン、2-メトキシ-(5/6)-メチルピラジン、2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、メトキシピラジン、2-メチル-6-プロポキシピラジン、2-エトキシ-(5/6)-メチルピラジン、及び2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルピラジンからなる群より選択される少なくとも一種である臭気変調剤を、アスファルト、下水処理場又は浄化槽に沈殿する汚泥銀杏は塗料の臭いの原因物質に用い、及び/又は、それらの臭いのする場所において用いることを特徴とする、臭気変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤、及びアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの臭気変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日常生活等の様々な分野において発生する悪臭が問題となっている。
【0003】
このような悪臭として、特に、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いが問題となっており、これらの臭気の害を解消することが望まれている。
【0004】
臭気を改善する手段として、ポリフェノールを、アルカリ性を示す溶媒中、酸素分子共存下、反応時のpH値が6.5以上で反応させて得られる有色の化合物を有効成分として含有することを特徴とする消臭剤組成物が開示されており、当該消臭剤組成物を悪臭の消臭に用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述の臭気は消え難く、上述のような臭気を消すことにより消臭を図る消臭剤を用いても、十分に消臭することができないという問題がある。
【0006】
従って、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いによる問題を解決できる手段の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-167218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いを異なる臭気に変調して、これらの臭いによる害を容易に解決することができる臭気変調剤、及び臭気変調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いを、異なる臭気に変調して他の不快でない臭いに感じさせる臭気変調剤によれば、これらの悪臭による不快感を十分に低減することができることを見出した。また、本発明者は、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤を、これらの臭いの原因物質に用い、及び/又は、それらの臭いのする場所において用いることで、悪臭を他の臭いに変調することができ、不快感を容易に低減でき、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤、及びアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの臭気変調方法に関する。
1.アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤であって、
フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有することを特徴とする臭気変調剤。
2.前記含酸素環状化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として10~20質量%である、項1に記載の臭気変調剤。
3.前記フラン化合物は、フラネオール、フルフラール、5-メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2-プロピオニルフラン、2-エチルフラン、メントフラン、2-メチル-3-フランチオール、2-メチル-3-テトラヒドロフランチオール、2-メチル-4,5-ジヒドロ-3-フランチオール、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2-ヘキサノイルフラン、2-ペンチルフラン、2-プロピルフラン、2-(3-フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、2-フルフリル-5-メチルフラン、2-ヘプチルフラン、2-メチルベンゾフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-(5-エテニル-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-プロパナール、3-{[2-メチル-(2or4),5-ジヒドロ-3-フリル]チオ}-2-メチルテトラヒドロフラン-3-チオール、2-エテニル-5-イソプロペニル-2-メチルテトラヒドロフラン、5-メチル-2-フランメタンチオール、6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3-c]フラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-ブチルフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5-ジメチル-3-フランチオールからなる群より選択される少なくとも一種である、項1又は2に記載の臭気変調剤。
4.前記フラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.8~5質量%である、項1~3のいずれかに記載の臭気変調剤。
5.前記ピラン化合物は、マルトール、エチルマルトール、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピラン、3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロピラン、5-メチル-3-ブチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、オクタヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)-2,5,5,8a-テトラメチル-3,4,4a,5,6,8a-ヘキサヒドロ-2H-1-ベンゾピラン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロ-3(4H)-ピラノン、6-ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6-アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピランからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれかに記載の臭気変調剤。
6.前記ピラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として5~20質量%である、項1~5のいずれかに記載の臭気変調剤。
7.前記シクロペンタノン誘導体は、シクロペンタノン、シクロテン、シクロテンアセテート、シクロテンプロピオネート、シクロテンブチレート、シクロテンイソブチレート、2-ゲラニルシクロペンタノン、2-ヘキシルシクロペンタノン、2-ヘキシリデンシクロペンタノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、及び2,3-ジメチル-2-シクロペンテノンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~6のいずれかに記載の臭気変調剤。
8.前記シクロペンタノン誘導体の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.1~5質量%である、項1~7のいずれかに記載の臭気変調剤。
9.更に、バニリン系化合物を含有する、項1~8のいずれかに記載の臭気変調剤。
10.前記バニリン系化合物は、バニリン、エチルバニリン、アセトアルデヒドエチルバニリンアセタール、バニリンアセテート、エチルバニリンイソブチレート、アセトバニロン、エチルバニレート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニレート、バニリックアシド、バニリンイソブチレート、ブチルバニレート、バニリン2,3-ブタンジオールアセタール、及びバニリンラクテートからなる群より選択される少なくとも一種である、項9に記載の臭気変調剤。
11.前記バニリン系化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として10~20質量%である、項9又は10に記載の臭気変調剤。
12.更に、ピリジン類を含有する、項1~11のいずれかに記載の臭気変調剤。
13.前記ピリジン類は、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-4-イソプロペニルピリジン、4-アセチル-2-イソプロペニルピリジン、2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、3,5-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、及び2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジンからなる群より選択される少なくとも一種である、項12に記載の臭気変調剤。
14.更に、ピラジン類を含有する、項1~13のいずれかに記載の臭気変調剤。
15.前記ピラジン類は、2-メチルチオ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-エチル-3(5/6)ジメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-アセチル-3,(5/6)-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、アセチルピラジン、2-(フルフリルチオ)-(3/5/6)-メチルピラジン、2-メチル-(5/6)-(メチルチオ)ピラジン、2-エチル-3-(メチルチオ)ピラジン2-イソプロピル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-エトキシ-(3/5/6)-メチルピラジン、2-エトキシ-3-エチルピラジン、2-エトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-ヘキシル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロポキシ-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-(3/5/6)-メトキシピラジン、2-メトキシ-(5/6)-メチルピラジン、2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、メトキシピラジン、2-メチル-6-プロポキシピラジン、2-エトキシ-(5/6)-メチルピラジン、及び2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルピラジンからなる群より選択される少なくとも一種である、項14に記載の臭気変調剤。
16.フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有する臭気変調剤を、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの原因物質に用い、及び/又は、それらの臭いのする場所において用いることを特徴とする、臭気変調方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤は、これらの臭いを異なる臭気に変調して他の不快でない臭いに感じさせるように変調することができ、これらの悪臭による不快感を低減することができる。また、本発明の臭気変調方法によれば、上記臭気変調剤をアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの原因物質に用い、及び/又は、それらの臭いのする場所において用いることで、これらの臭いを他の臭いに変調することができ、これらの悪臭による不快感を容易に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の臭気変調剤及び臭気変調方法について詳細に説明する。
【0013】
1.アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤
本発明のアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤(本明細書において、単に「臭気変調剤」とも示すことがある。)は、フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有する。本発明の臭気変調剤は、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用に用いられる。
【0014】
アスファルトとしては、原油を蒸留して製造される石油アスファルトや、天然に存在する天然アスファルトが挙げられる。アスファルトの臭いとしては、これらのアスファルトにより地面を舗装した際や、舗装後しばらくの間空気中に漂う、アスファルト成分由来の臭いが挙げられる。
【0015】
汚泥としては、下水処理場や浄化槽に沈殿する沈殿物が挙げられる。
【0016】
汚水としては、下水処理場や浄化槽の下部に貯まる水、下水道の水が挙げられる。
【0017】
銀杏は、イチョウの木の種子であり、街路樹等として植生するイチョウから街路上に落下し、臭いを発生する。
【0018】
堆肥としては、糞便堆肥、植物系堆肥が挙げられる。
【0019】
海獣としては、一般に水族館や動物園等で飼育される海獣が挙げられ、例えば、ペンギン、クジラ、シャチ、イルカ、ラッコ、アザラシ、オットセイ等が例示できる。海獣の臭いとしては、これらの海獣が飼育される水槽、プール、飼育室及び展示エリアにおいて臭う臭いが挙げられる。本発明の臭気変調剤は、これらの中でもペンギンの臭気を変調するのに特に適している。
【0020】
野菜としては、臭いの強いヒガンバナ科の植物が挙げられ、このような植物としては、アリウム属植物であるタマネギ、ネギ、ニンニク等が挙げられる。本発明の臭気変調剤は、これらの中でもタマネギの臭気を変調するのに特に適している。
【0021】
生ゴミとしては、家庭や商業施設から生ゴミとして出され、ゴミ処理施設に運搬される生ゴミが挙げられる。本発明の臭気変調剤は、ゴミ処理施設において、生ゴミが焼却されるまでに一旦貯蔵されるゴミピット(ゴミバンカ)の臭気を変調するのに特に適している。
【0022】
塗料としては、一般に使用される水系塗料、溶剤系塗料等が挙げられる。水系塗料としては、例えば、水溶性アクリル/メラミン樹脂塗料、水溶性アルキド/メラミン樹脂塗料、アクリルエマルション塗料、ウレタンエマルション塗料等が挙げられる。溶剤系塗料としては、例えば、アクリルメラミン樹脂塗料、アルキドメラミン樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料等が挙げられる。
【0023】
(フラン化合物)
フラン化合物は、含酸素環状化合物であり、4個の炭素原子と1個の酸素原子により形成される5員環のフラン骨格を有していれば特に限定されない。フラン化合物としては、例えば、フラネオール、フルフラール、5-メチルフルフラール、フルフリルメルカプタン、フルフリールアルコール、2-プロピオニルフラン、2-エチルフラン、メントフラン、2-メチル-3-フランチオール、2-メチル-3-テトラヒドロフランチオール、2-メチル-4,5-ジヒドロ-3-フランチオール、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2-ヘキサノイルフラン、2-ペンチルフラン、2-プロピルフラン、2-(3-フェニルプロピル)テトラヒドロフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、2-フルフリル-5-メチルフラン、2-ヘプチルフラン、2-メチルベンゾフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-(5-エテニル-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-プロパナール、3-{[2-メチル-(2or4),5-ジヒドロ-3-フリル]チオ}-2-メチルテトラヒドロフラン-3-チオール、2-エテニル-5-イソプロペニル-2-メチルテトラヒドロフラン、5-メチル-2-フランメタンチオール、6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3-c]フラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-ブチルフラン、2,5-ジエチルテトラヒドロフラン、ジフルフリルジスルフィド、ジフルフリルエーテル、ジフルフリルスルフィド、及び2,5-ジメチル-3-フランチオール等が挙げられる。これらの中でも、フラネオール、5-メチルフルフラール、フルフリルメルカプタンが好ましい。
【0024】
フラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.5~10質量%が好ましく、0.8~5質量%がより好ましく、0.8~3質量%が更に好ましく、0.8~1.5質量%が特に好ましく、0.9~1.2質量%が最も好ましい。フラン化合物の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気に変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0025】
上記フラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
(ピラン化合物)
ピラン化合物は、含酸素環状化合物であり、5個の炭素原子と1個の酸素原子により形成される6員環のエーテル化合物を骨格とするピラン骨格を有していれば特に限定されない。ピラン化合物としては、例えば、マルトール、エチルマルトール、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピラン、3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロピラン、5-メチル-3-ブチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、オクタヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、テアスピラン、ビティスピラン、(2S,4aR,8aS)-2,5,5,8a-テトラメチル-3,4,4a,5,6,8a-ヘキサヒドロ-2H-1-ベンゾピラン、6-エテニル-2,2,6-トリメチルテトラヒドロ-3(4H)-ピラノン、6-ヒドロキシジヒドロテアスピラン、6-アセトキシジヒドロテアスピラン、及び2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン等が挙げられる。これらの中でも、エチルマルトールが好ましい。
【0027】
ピラン化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、8~15質量%更に好ましく、8~12質量%が特に好ましい。ピラン化合物の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気に変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0028】
上記ピラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(シクロペンタノン誘導体)
シクロペンタノン誘導体は、含酸素環状化合物であり、5個の炭素原子により形成される5員環のシクロペンタン骨格と、酸素原子を有していれば特に限定されない。シクロペンタノン誘導体としては、例えば、シクロペンタノン、シクロテン、シクロテンアセテート、シクロテンプロピオネート、シクロテンブチレート、シクロテンイソブチレート、2-ゲラニルシクロペンタノン、2-ヘキシルシクロペンタノン、2-ヘキシリデンシクロペンタノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、2,3-ジメチル-2-シクロペンテノン等が挙げられる。これらの中でも、シクロテンが好ましい。
【0030】
シクロペンタノン誘導体の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。ピラン化合物の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気に変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0031】
上記シクロペンタノン誘導体は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明の臭気変調剤は、フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有するものであるが、フラン化合物及びピラン化合物から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有することが好ましい。
【0033】
上記含酸素環状化合物の臭気変調剤中の含有量、すなわち、フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体の含有量の合計は、臭気変調剤を100質量%として、1~25質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、1~15質量%が更に好ましく、10~15質量%が特に好ましい。含酸素環状化合物の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気に変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0034】
臭気変調剤中のフラン化合物と、ピラン化合物との含有量の比は、質量比でフラン化合物:ピラン化合物=1:2~1:5が好ましく、1:3~1:4がより好ましい。フラン化合物と、ピラン化合物との含有量の比を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気に変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0035】
(バニリン系化合物)
本発明の臭気変調剤は、更にバニリン系化合物を含有することが好ましい。臭気変調剤がバニリン系化合物を含有することにより、より優れた臭気変調効果を示すことができ、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭による不快感をより効果的に低減することができる。
【0036】
バニリン系化合物は、バニリン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。バニリン系化合物としては、例えば、バニリン、エチルバニリン、アセトアルデヒドエチルバニリンアセタール、バニリンアセテート、エチルバニリンイソブチレート、アセトバニロン、エチルバニレート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、メチルバニレート、バニリックアシド、バニリンイソブチレート、ブチルバニレート、バニリン2,3-ブタンジオールアセタール、バニリンラクテート等が挙げられる。これらの中でも、バニリン、エチルバニリンが好ましい。
【0037】
バニリン系化合物の含有量は、臭気変調剤を100質量%として5~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~20質量%が更に好ましく、10~15質量%が特に好ましい。バニリン系化合物の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0038】
上記バニリン系化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
(ピリジン類)
本発明の臭気変調剤は、更にピリジン類を含有することが好ましい。臭気変調剤がピリジン類を含有することにより、より優れた臭気変調効果を示すことができ、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭による不快感をより効果的に低減することができる。
【0040】
ピリジン類は、含窒素複素環式芳香族化合物であり、5個の炭素原子と1個の窒素原子により形成される6員環構造を有するピリジンを骨格とするピリジン骨格を有していれば特に限定されない。ピリジン類としては、例えば、2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、2-アセチル-4-イソプロペニルピリジン、4-アセチル-2-イソプロペニルピリジン、2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、3,5-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン、2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン等が挙げられる。これらの中でも、2-アセチルピリジンが好ましい。
【0041】
ピリジン類の含有量は、臭気変調剤を100質量%として、0.05~0.3質量%が好ましく、0.1~0.2質量%がより好ましい。ピリジン類の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0042】
上記ピリジン類は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
(ピラジン類)
本発明の臭気変調剤は、更にピラジン類を含有することが好ましい。臭気変調剤がピラジン類を含有することにより、より優れた臭気変調効果を示すことができ、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭による不快感をより効果的に低減することができる。
【0044】
ピラジン類は、含窒素複素環式芳香族化合物であり、4個の炭素原子と2個の窒素原子により形成される6員環構造を有する化合物であるピラジンを骨格とするピラジン骨格を有していれば特に限定されない。ピラジン類としては、例えば、2-メチルチオ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-エチル-3(5/6)ジメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-アセチル-3,(5/6)-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、アセチルピラジン、2-(フルフリルチオ)-(3/5/6)-メチルピラジン、2-メチル-(5/6)-(メチルチオ)ピラジン、2-エチル-3-(メチルチオ)ピラジン2-イソプロピル-3-(メチルチオ)ピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-エトキシ-(3/5/6)-メチルピラジン、2-エトキシ-3-エチルピラジン、2-エトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-ヘキシル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロポキシ-3-メチルピラジン、2-イソプロピル-(3/5/6)-メトキシピラジン、2-メトキシ-(5/6)-メチルピラジン、2-メトキシ-3,5-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、メトキシピラジン、2-メチル-6-プロポキシピラジン、2-エトキシ-(5/6)-メチルピラジン、2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルピラジン等が挙げられる。これらの中でも、2-メチルチオ-3-メチルピラジンが好ましい。
【0045】
ピラジン類の含有量は、臭気変調剤を100質量%として0.1~0.5質量%が好ましく、0.1~0.4質量%がより好ましい。ピラジン類の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0046】
上記ピラジン類は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
(他の添加剤)
本発明の臭気変調剤は、本発明の効果を妨げない限り、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、上記フラン化合物、ピラン化合物、バニリン系化合物、ピリジン類及びピラジン類以外の有機酸、エステル系化合物、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物等が挙げられる。
【0048】
臭気変調剤中の上記他の添加剤の含有量の合計は、臭気変調剤を100質量%として30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。他の添加剤の含有量の合計を上記範囲とすることにより、臭気変調剤がアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の悪臭を異なる臭気により変調し易くなり、これらの臭気による不快感を十分に低減することができる。
【0049】
(溶媒)
本発明の臭気変調剤において、上記各成分は、溶媒中に分散していることが好ましい。溶媒中に分散していることにより、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ及び塗料の臭いの原因物質に、塗布、添加等により容易に用いることができ、これらの臭いのする場所において、空気中に、容易に噴霧、散布等を行うことができる。
【0050】
溶媒としては水、溶剤を用いることができる。溶剤としては特に限定されず、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、エステル等が挙げられる。中でも、臭気変調剤を空気中に噴霧した際に適度な揮発性を示し、人や海獣に対する有害性が低い点で、アルコールが好ましい。
【0051】
上記アルコールとしては特に限定されず、モノアルコール、又は、ジオール、トリオール等のポリオールが挙げられる。また、上記アルコールとしては、炭素数2~4のアルコールを好適に用いることができる。上記アルコールの炭素数は、2~3がより好ましい。
【0052】
上記アルコールとしては、具体的には、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、臭気変調剤を空気中に噴霧した際に適度な揮発性を示し、人や海獣に対する有害性が低い点で、エタノール、プロピレングリコールが好ましい。
【0053】
上記溶媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
溶媒の含有量は、臭気変調剤を100質量%として20~90質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、40~80質量%更に好ましく、50~80質量%特に好ましい。溶媒の含有量を上記範囲とすることにより、臭気変調剤を空気中に噴霧し易くなり、且つ、空気中に噴霧した際に適度な揮発性及び保留性を示すことができる。
【0055】
溶媒として、水と溶剤とを混合して用いる場合は、水と溶剤との含有量の比は、質量比で水:溶剤=2:98~10:90が好ましく、10:90~20:80がより好ましい。水と溶剤との含有量の比を上記範囲とすることにより、臭気変調剤を空気中に噴霧した際に適度な揮発性を示し、人や海獣に対する有害性をより低減することができる。
【0056】
2.臭気変調方法
本発明は、また、フラン化合物、ピラン化合物及びシクロペンタノン誘導体から選択される少なくとも一種の含酸素環状化合物を含有する臭気変調剤を、アスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの原因物質に用い、及び/又は、それらの臭いのする場所において用いることを特徴とする臭気変調方法でもある。
【0057】
本発明の臭気変調方法において用いる臭気変調剤は、上述のアスファルト、汚泥、汚水、銀杏、堆肥、海獣、野菜、生ゴミ又は塗料の臭いの変調用臭気変調剤を用いることができる。
【0058】
上記臭いの原因物質に用いる方法としては、臭いの原因物質に散布、又は混合する方法が挙げられる。臭いの原因物質に散布する方法としては特に限定されず、臭気変調剤を臭いの原因物質にかける方法が挙げられる。また、臭いの原因物質に混合する方法としては、例えば、臭いの原因物質がアスファルトである場合、加熱された溶融状態のアスファルトに臭気変調剤を添加する方法が挙げられる。
【0059】
臭気変調剤は、臭いの原因物質に用いてもよいし、臭いのする場所において用いてもよいし、両方に用いてもよい。
【0060】
上記臭いのする場所において用いる方法としては、臭気変調剤を霧状にして空気中に噴霧する方法、臭気変調剤を液滴状にして散布する方法等が挙げられる。臭気変調剤を霧状にして空気中に噴霧する方法としては、例えば、スプレー噴霧による方法、マニアスプレッダにより堆肥と同時に噴霧する方法、霧状の臭気変調剤を風により飛散させる方法等の噴霧方法が挙げられる。また、液滴状の臭気変調剤を散布する方法としては、液状の臭気変調剤をノズルから吐出して散布する方法等の散布方法が挙げられる。
【0061】
臭気変調剤を用いる際の臭気変調剤の温度は特に限定されず、10~25℃が好ましく、15~20℃がより好ましい。上記温度範囲で臭気変調剤を用いることにより、臭気変調効果をより一層向上させることができる。
【0062】
臭気変調剤をスプレー又はノズルから、噴霧又は散布する際の圧力は、0.2~0.6MPaが好ましく、0.3~0.5MPaがより好ましい。上記範囲の圧力で臭気変調剤を噴霧又は散布することにより、臭気変調剤をより広い範囲に効果的に噴霧又は散布することができる。
【0063】
臭気変調剤を噴霧又は散布する場所としては特に限定されず、アスファルトの臭いがする道路や工事現場、汚泥の臭いがする下水処理場、浄化槽付近、汚水の臭いがする下水処理場、浄化槽、下水道付近、銀杏の臭いがする街路上、堆肥の臭いがする農場、海獣の臭いがする水族館や動物園、野菜の臭いがする食品加工場、生ゴミの臭いがするゴミ処理施設のゴミピット(ゴミバンカ)、塗料の臭いがする塗装の作業現場等において空気中に噴霧することができる。これらの場所において臭気変調剤を空気中に噴霧することで、悪臭を他の臭いに変調することができ、不快感を容易に低減できる。
【実施例
【0064】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0065】
(臭気変調剤の調製)
表1に示す臭気変調剤の原料を、混合槽に投入して混合、撹拌し、臭気変調剤を調製した。具体的には、加熱装置を備えた混合槽に、表1に示す配合により溶剤を投入し、次いで他の原料を順次添加して、20℃の条件下で30分間撹拌して、臭気変調剤を調製した。
【0066】
(評価)
上記のようにして調製した実施例及び比較例の臭気変調剤を用いて、以下の評価を行った。すなわち、実施例及び比較例の臭気変調剤を質量比でプロピレングリコール(PG):水:臭気変調剤=45:50:5となるように混合して希釈液を調製した。
【0067】
次いで、プラスチック製の内系2cmのキャップ(フタ)内に汚泥0.5gを入れた。菌検査用滅菌シャーレの底面にNo.2の濾紙を置き、濾紙の中央部に上記キャップを置き、キャップの周辺の濾紙に希釈液0.2gを環状に滴下して試料を調製した。また、希釈液を滴下しないブランクも調製した。
【0068】
次いで、試料及びブランクにシャーレで蓋をして、室温下(20℃)で10分間静置した。静置後蓋を開けて、被験者がシャーレの中央の上10cmから臭いを嗅ぎ、ブランクの臭いと対比して、下記評価基準に従って官能評価を行った。被験者8人で上記試験を行い、下記評価基準の配点に、各評価をした人数を乗じて得られた点数により評価した。
【0069】
(1)汚泥の臭いを感じたか
・汚泥の臭いを全く感じなかった(3点)
・汚泥の臭いを感じなかった(2点)
・汚泥の臭いを若干感じた(1点)
・汚泥の臭いを感じた(0点)
【0070】
(2)ブランクから臭いが変わったと感じたか
・ブランクから臭いが変わったと感じた(3点)
・ブランクから臭いが若干変わったと感じた(2点)
・ブランクから臭いがあまり変わっていないと感じた(1点)
・ブランクから臭いが全く変わっていないと感じた(0点)
【0071】
(3)良い臭いだと感じたか
・良い臭いだと感じた(3点)
・若干良い臭いだと感じた(2点)
・あまり良い臭いだと感じなかった(1点)
・全く良い臭いだと感じなかった(0点)
【0072】
汚水、銀杏、植物堆肥、ペンギンの糞尿、玉ねぎ、ゴミピット(ゴミバンカ)の底から採取した液体、塗料についても上記と同一の試験を行い、同一の官能評価を行った。
【0073】
アスファルトの臭いの評価については、以下のようにして評価を行った。すなわち、アスファルトのサンプルを耐熱容器に入れ、加熱を行った。アスファルトが溶融状態となった後、含有量が0.1質量%となるように溶融状態のアスファルトに上述の希釈液を添加し、撹拌して試料を調製した。また、希釈液を添加しないブランクも調製した。次いで、試料の温度を維持しながら被験者が耐熱容器の中央の上10cmから臭いを嗅ぎ、ブランクの臭いと対比して、上述の官能評価を行った。
【0074】
結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】