(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】レール継目板取付作業用治具
(51)【国際特許分類】
E01B 31/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
E01B31/00
(21)【出願番号】P 2020175142
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390027292
【氏名又は名称】根本企画工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】麻生 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 貴志
(72)【発明者】
【氏名】根本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢治
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0098647(US,A1)
【文献】特開2019-124309(JP,A)
【文献】特開2000-297538(JP,A)
【文献】国際公開第03/048456(WO,A1)
【文献】特開2017-177302(JP,A)
【文献】実開平06-036791(JP,U)
【文献】特開2004-141977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
E01B 27/00-37/00
B25H 7/00
B23P 19/00
B21J 15/44
F16B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向での端部同士を前記長手方向において向かい合わせて配置してある一対の鉄道レールの側面に前記一対の鉄道レールの前記端部同士を跨いで継目板を添わせ、前記鉄道レールおよび前記継目板を貫通するボルトおよび前記ボルトにねじ込まれるナットによって前記継目
板と前記鉄道レール
とを一括して締結することにより前記一対の鉄道レールを連結するために使用されるレール継目板取付作業用治
具であって、
前記鉄道レールの両側面に添わされた一方の前記継目板から他方の継目板まで貫通する長さ以上の長さでかつ前記継目板のボルト孔および前記鉄道レールのボルト孔に挿入される吊り下げ用軸部と、
前記鉄道レールの前記ボルト孔から前記鉄道レールの上面までの間隔以上の間隔を空けて前記吊り下げ用軸部に対向して設けられているハンドル用軸部と、
前記吊り下げ用軸
部の端部と前記ハンドル用軸
部の端部とを連結し
て前記吊り下げ用軸部と前記ハンドル用軸部とを一体化させている連結部と
を備えていることを特徴とするレール継目板取付作業用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部同士を突き合わせるように配置されている鉄道レールを連結するための継目板を取り付ける作業に用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新幹線用の線路を始めとする重要区間では、途切れのない一連のレール(ロングレール)が使用されている。しかしながら、レールの製造上の理由や、熱膨張によるレールの変形を抑制するため、あるいは消耗したレールを交換するためなどの種々の理由により、所定の長さのレールを複数連結して線路を構成している。このようにレールを連結するための部材として継目板が使用されている。継目板は、レールの端部同士に掛け渡した状態でレールの両側面に添わせ、それらの継目板およびレールにボルトを貫通させ、かつそのボルトにナットをねじ込んで締め付けている。そのボルトは、一般的には、一箇所のレールの継ぎ目部分に、4本ないし6本使用される。
【0003】
この継目板の形状や材料などは、日本工業規格(JIS)によって定められている。例えば、60kg/mレールを連結する継目板は、1枚当たり21.5kgとなり、50Nレールを連結する継目板は、1枚当たり14.3kgの重量となる。そのため、継目板をレールに締結する作業は、通常、1名の作業員が継目板をレールにあてがって、その状態を維持し、ついで他の1名の作業員がボルトを通して、ナットを締め付けるという2名1組で行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレールに継目板を取り付ける作業は、路盤上またはまくらぎ上に置かれたレールに比較的重量のある継目板をあてがって保持し、また保持された継目板をボルト固定する作業であるから、作業員は路盤に膝をついてかがんだ姿勢を取るなど、苦しい姿勢を余儀なくされるきつい作業である。しかも、炎天下や降雨・降雪などの天候の影響を受ける屋外での作業であり、そればかりかバラスト軌道などの足場の悪い箇所や傾斜している箇所などでの作業になることがある。そのため、従来では、作業員の負担が大きいうえに、継目板が作業員の足に落下する可能性があり危険な作業であり、労働環境の改善や、確実かつ効率的な作業の推進などの点で改善すべき余地が多分にあった。
【0005】
本発明は、このような効率の悪い、かつきつい作業を解消し、作業員の負担を軽減するとともに作業の効率化を図ることのできる継目板取付作業用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、長手方向での端部同士を前記長手方向において向かい合わせて配置してある一対の鉄道レールの側面に前記一対の鉄道レールの前記端部同士を跨いで継目板を添わせ、前記鉄道レールおよび前記継目板を貫通するボルトおよび前記ボルトにねじ込まれるナットによって前記継目板と前記鉄道レールとを一括して締結することにより前記一対の鉄道レールを連結するために使用されるレール継目板取付作業用治具であって、前記鉄道レールの両側面に添わされた一方の前記継目板から他方の継目板まで貫通する長さ以上の長さでかつ前記継目板のボルト孔および前記鉄道レールのボルト孔に挿入される吊り下げ用軸部と、前記鉄道レールの前記ボルト孔から前記鉄道レールの上面までの間隔以上の間隔を空けて前記吊り下げ軸部に対向して設けられているハンドル用軸部と、前記吊り下げ用軸部の端部と前記ハンドル用軸部の端部とを連結して前記吊り下げ用軸部と前記ハンドル用軸部とを一体化させている連結部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレール継目板取付作業用治具によれば、吊り下げ用軸部を継目板のボルト孔に挿入した状態で、ハンドル用軸部を持てば、継目板を吊り下げ用軸部に引っ掛けた状態で持ち上げることができる。したがって、二つの治具を用いることにより、継目板を鉄道レールと平行にした状態で持ち上げ、鉄道レールの側面に添わせることができる。吊り下げ用軸部は、鉄道レールとその両側面に添わせた二枚の継目板を貫通する長さを有しているから、一方の継目板を上記のようにして持ち上げて鉄道レールに添わせる際に、吊り下げ用軸部の先端部を鉄道レールのボルト孔に挿入する。こうすることにより、鉄道レールのボルト孔と継目板のボルト孔とを一致させた状態で継目板を鉄道レールに添わせることができる。その状態で治具を鉄道レールに対して固定することにより、一方の継目板を鉄道レールに添わせた状態に維持できる。吊り下げ用軸部は、鉄道レールおよび二枚の継目板を貫通するのに十分な長さを有しているから、前記一方の継目板を鉄道レールに添わせた状態に保持している状態で、前記一方の継目板とは反対側に大きく突き出ている。その突き出ている吊り下げ用軸部に他方の継目板のボルト孔を嵌合させることにより、当該他方の継目板を鉄道レールの他方の側面に添わせることができる。このように他方の継目板を鉄道レールに添わせる間、前記一方の継目板は治具によって鉄道レールに添わせた状態に保持されるから、継目板の取付作業を一人の作業員によって行うことができる。なお、ボルトの挿入やナットの締め付けは、各継目板を前記吊り下げ用軸部によって吊り下げた状態で、すなわち作業員が継目板を持ち上げたり鉄道レールに強く押し付けたりすることなく、順次、容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明では、係止部や止め部を設ければ、治具が抜け落ちることを確実に防止でき、継目板の取付作業をより安全かつ容易に、また効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】その治具の使用状況を示す鉄道レール継ぎ目部分の側面図である。
【
図4】その治具の使用状況を示す鉄道レール継ぎ目部分の正面図である。
【
図5】その治具の他の使用状況を示す鉄道レール継ぎ目部分の側面図である。
【
図6】その治具の更に他の使用状況を示す鉄道レール継ぎ目部分の側面図である。
【
図7】継目板の取付作業の完了状態を示す鉄道レール継ぎ目部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示す一実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【0011】
本発明に係るレール継目板取付作業用治具(以下、単に治具と記す場合がある。)は、作業員による手作業で鉄道レール継目板(以下、単に継目板と記す場合がある。)を持ち上げて、鉄道レールの側面に添わせるために使用する治具である。したがって本発明に係る治具は、鉄道レールを吊り下げるための吊り下げ用軸部と、作業員が手を掛けるハンドル用軸部とを一体化した構造になっている。その一例を
図1に示してある。
【0012】
図1に示す治具1は、鋼丸棒を折り曲げて全体を一体に構成した例であり、その鋼丸棒は、鉄道レールや継目板のボルト孔に挿入できる太さあるいはそれらのボルト孔の内径とほぼ等しい外径の鋼丸棒である。その鋼丸棒を二箇所で同じ方向に二回折り曲げてほぼコの字形状をなすように構成されている。したがって、互いに平行もしくは対向している二本の軸部2,3をそれぞれの端部で連結して一体化した構造になっている。
図1に示す長い方の軸部2が本発明における吊り下げ用軸部に相当する挿入部2であり、継目板および鉄道レールのボルト孔に挿入される。その長さは、鉄道レールおよびその両側面に添わせた各継目板を貫通するのに十分な長さになっている。
【0013】
この挿入部2に対して平行もしくは対向している他の軸部3が本発明におけるハンドル用軸部に相当する把持部3であり、これらの挿入部2および把持部3をそれぞれの端部側で繋いでいる部分が本発明における連結部に相当するアーム部4である。このアーム部4の長さ、すなわち挿入部2と把持部3との間隔は、以下のように設定されている。治具1は、挿入部2を継目板のボルト孔に挿入した状態で把持部3に手を掛けて持ち上げ、こうして吊り下げた継目板をレールの側面に運ぶとともに挿入部2をレールのボルト孔に挿入する。したがって、挿入部2と把持部3との間には、レールのボルト孔から頭部までの部分および把持部3を持つ作業員の手もしくは指が入ることになるから、挿入部2と把持部3との間隔は、挿入部2をレールのボルト孔に挿入した状態であっても把持部3に作業員が手を掛けていることのできるスペースを確保する間隔に設定されている。なお、把持部3には、持ち易くするための適宜のカバー5が被せられている。
【0014】
把持部3の先端部(アーム部4とは反対側の端部)に係止部としてフランジ部6が設けられている。フランジ部6は把持部3の外径より大きい円板状の部分であり、把持部3がレールの上面に接触するように治具1を倒した場合に、フランジ部6がレールの頭部の側面に引っ掛かるようになっている。すなわち、挿入部2をレールのボルト孔に充分深く挿入した状態では、把持部3の先端部およびここに設けているフランジ部6が、レールの頭部の上方をその幅方向に横切って挿入側とは反対側に突き出るように、各挿入部2および把持部3の長さが設定されている。挿入部2は、継目板のボルト孔やレールのボルト孔の内部で回転できる断面形状もしくは外径に設定されており、したがって治具1は挿入部2を中心にして回転させることができる。治具1をこのように回転させて把持部3をレールの上面に接触させると、フランジ部6がレールの頭部の側面に対向する位置にまで下がり、レールの幅方向に対して係合することになる。
【0015】
フランジ部6は、把持部3の先端部に円板を接合し、あるいは嵌合して把持部3に一体化させた構成としてもよいが、ここで説明している実施例では、フランジ部6はねじによって把持部3に取り付けられている。
図1に示すように、フランジ部6の一方の側面の中心部にねじ軸6aが垂直に設けられている。一方、把持部3の先端面の中央部には、ネジ孔6bが形成されている。このねじ孔6bにねじ軸6aをねじ込むことにより、フランジ部6が把持部3に一体化されている。これらねじ軸6aおよびネジ孔6bの長さは充分長く、フランジ部6の側面と把持部3の先端面との間に所定の間隔をあける程度にねじ軸6aをネジ孔6bにねじ込んだ状態であっても、フランジ部6を把持部3に取り付けた状態を維持できるようになっている。すなわち、把持部3の実質的な長さ、あるいは後述する符号L1で示す間隔を調整できるように構成されている。このような構成は、例えばいずれか一方のレールRa(もしくはRb)の高さ調整のためのシム(図示せず)などをそのレールRa(もしくはRb)と継目板との間には挟み込むことになったり、あるいは前回挟み込んでいたシムを今回は使用しなくなったり、さらにはレールRa(もしくはRb)の種別が異なって継目板F,F’の厚さなどが変わったりして、継目板がレールRa(もしくはRb)の側面からシムの厚さ分離れ、あるいは接近した場合であっても、上記の間隔L1を調整して対応するためである。
【0016】
他方、挿入部2におけるアーム部4側の端部に本発明における止め部に相当するストッパ7が設けられている。このストッパ7は、継目板におけるボルト孔の内径より大きい外径の円板状(もしくはリング状)の部分であり、挿入部2がボルト孔に挿入されている継目板が、このストッパ7に引っ掛かって、それ以上にはアーム部4側に移動できないようになっている。
【0017】
ここで、フランジ部6とストッパ7との間隔(挿入部2の軸線方向に測った間隔)L1 について説明する。これらフランジ部6とストッパ7とは、レールの側面に沿わせた継目板がレールから脱落しないように保持するためのものであり、したがってフランジ部6とストッパ7との間隔L1 は、レールの側面に添わせた継目板における前記ストッパ7が引っ掛かっている側面と、当該レールの頭部の側面(継目板が添わされている側の側面とは反対側の側面)との間隔程度もしくはそれより僅かに大きい程度の間隔とされている。したがって、把持部3がレールの上面に接触するように治具1を回転させて(倒して)フランジ部6をレールの頭部の側面に係合させることにより、レールおよびその一方の側面に添わせた継目板を、フランジ部6とストッパ7との間に挟み込むようになっている。
【0018】
図1に示す治具1の他の部分の寸法について併せて説明すると、上記のストッパ7を設けたことにより、実質的な挿入部2はそのストッパ7より先端側の部分であり、この実質的な挿入部2の長さL2 は、レールの両側面に継目板を添わせた場合の全体の幅、すなわち、一方の継目板の外側の側面から他方の継目板の外側の側面までの長さ以上の長さ、特に挿入部2の先端部が他方の継目板の外側の側面からある程度長く突き出る長さに設定されている。
【0019】
また、挿入部2の表面から前記フランジ部6の外周縁との最小間隔L3 は、挿入部2をレールのボルト孔に挿入した状態で、レールの上面とフランジ部6との間に隙間が生じる程度の間隔、より具体的には挿入部2をレールのボルト孔に出し入れする操作に支障がない程度の隙間が生じ、また把持部3に手を掛けていられる程度の隙間が生じる間隔に設定されている。
【0020】
つぎに本発明に係る上述した治具1の作用あるいは使用方法について説明する。以下の説明では、レール継ぎ目部分に継目板を取り付ける作業を説明するが、継ぎ目から継目板を取り外す作業は順序が逆になるだけであるから、取り外しの際の手順はその説明を省略する。
【0021】
継目板Fは、重量がありかつ長い部材であるから、治具1は二本を1セットとして使用する。新しい継目板F、あるいは古いレールから取り外した再使用可能な継目板Fは、
図2(a)に示すように横倒しして地上に平らな姿勢で置かれているものとする。
図2はボルト孔8が四箇所の例であり、それらのボルト孔8のうちの例えば外側の二箇所に各治具1の挿入部2を差し込む。その状態では、治具1はいわゆる下向きになっているので、その把持部3を手で掴んで治具1を引き起こすと、継目板Fが
図2の(b)に示すように引き起こされる。継目板Fがいわゆる縦姿勢になった状態では、挿入部2がほぼ水平になり、あるいはその先端部が幾分上向きの状態になるので、把持部3を手で持って、継目板Fを治具1と共に持ち上げることができる。
【0022】
こうして治具1によって持ち運んだ継目板F
を、長手方向での端部同士を前記長手方向で向かい合わせて配置してある一対のレールRa,Rbのうちの一方のレールRa(もしくはRb)における継ぎ目部分の側面にあてがって添わせる。その状態を
図3に示してあり、挿入部2をレールRa(もしくはRb)に設けられているボルト孔9に挿入するとともに更に押し込むと、ストッパ7に引っ掛かっている継目板Fがストッパ7によって押されて、レールRa(もしくはRb)の側面に押し付けられる
。二箇所のボルト孔8について同様の作業を行うことにより、継目板Fは、各レールRa,Rbの端部同士を跨いだ状態で各レールRa,Rbの側面に添わされる。
【0023】
挿入部2をレールRa(もしくはRb)のボルト孔8に限界まで挿入すると、把持部3の先端部に設けてあるフランジ部6は、レールRa(もしくはRb)の上方をレールRa(もしくはRb)の幅方向に横切り、レールRa(もしくはRb)の頭部の他方の側面側(
図3の左側面側)に位置する。
【0024】
継目板Fおよび治具1をこのようにセットした後に、把持部3がレールRa(もしくはRb)の上面に接触するように治具1を倒す。すなわち、挿入部2を中心にして治具1を回転させる。その状態を
図4に示してある。上述したようにフランジ部6は、レールRa(もしくはRb)の上方をその幅方向に横切って他方の側面側に突き出ているから、治具1を
図4の矢印で示すように倒すと、フランジ部6の下側の部分がレールRa(もしくはRb)の頭部の側面に対向した状態になる。すなわち、挿入部2をレールRa(もしくはRb)のボルト孔8から引き抜く方向に治具1が移動しようとすると、フランジ部6がレールRa(もしくはRb)の頭部の側面に係合し、引き抜くことができなくなる。このフランジ部6と継目板Fが引っ掛かっているストッパ7との間隔L1 が前述した間隔になっているので、レールRa(もしくはRb)とその側面に添わされている継目板Fとは、フランジ部6とストッパ7とによって挟み付けられる。すなわち、継目板FはレールRa(もしくはRb)に対して未だボルト止めされていないが、レールRa(もしくはRb)の側面に添わせた状態に保持される。
【0025】
図5は、治具1によって、継目板FをレールRa(もしくはRb)の側面に添わせて保持している状態を示しており、この状態では挿入部2の先端部が、レールRa(もしくはRb)の他方の側面側(継目板Fを未だ添わせていない側面側)に大きく突き出ている。その突き出ている先端部を利用して、他方の継目板F’をレールRa(もしくはRb)の他方の側面に添わせる。すなわち、他方の継目板F’を手で持ち上げ、そのいずれかのボルト孔に、挿入部2の先端部を挿入し、その先端部をガイドとして、他方の継目板F’をレールRa(もしくはRb)の他方の側面に添わせる。その場合、他方の継目板F’が挿入部2に突き当たったり擦れたりするから、挿入部2(治具1)には、レールRa(もしくはRb)のボルト孔8から抜け出る方向の荷重が作用する場合がある。しかしながら、治具1は、フランジ部6によってレールRa(もしくはRb)に係合していてレールRa(もしくはRb)の幅方向には移動しないから、他方の継目板F’のガイドとして機能する挿入部2がレールRa(もしくはRb)のボルト孔8から抜け出たり、脱落したりすることはない。こうして、他方の継目板F’をもレールRa(もしくはRb)の側面に添わせた状態を
図6に示してある。
【0026】
なお、他方の継目板F’は他の治具1を使用して持ち上げることもでき、その場合、他方の継目板F’のボルト孔8のうち、既にレールRa(もしくはRb)に係合させてある治具1の挿入部2に干渉しないボルト孔8に他の治具1の挿入部2を差し込む。さらに、その挿入部2をレールRa(もしくはRb)のボルト孔9に差し込む。そして、各挿入部2をガイドとして他方の継目板F’をレールRa(もしくはRb)の側面に添わせる。
【0027】
図6に示すように、二本の治具1を利用して、レールRa(もしくはRb)の両側面に継目板F,F’を添わせた状態では、各ボルト孔8,9が同一軸線上にほぼ一致しているので、治具1の挿入部2を挿入していないいわゆる未使用もしくは解放状態のボルト孔8,9にボルトBを挿入するとともにそのボルトBにナットNを取り付けて、各継目板F,F’を仮止めする。その後、治具1をレールRa(もしくはRb)から取り外し、治具1に替えてボルトBをボルト孔8,9に挿入し、かつそれらのボルトBにナットNを取り付ける。そして、最終的に、ナットNを順に締め付
けることにより、継目板F,
F’とレールRa,Rbとを一括して締め付けてレール
Ra,Rbの接続を終了する。この状態を
図7に示してある。
【0028】
なお、本発明に係る治具1は、レールRa(もしくはRb)のボルト孔8を利用して継目板FをレールRa(もしくはRb)に添わせるように構成されているから、その構造あるいは各部の寸法などは、レールRa(もしくはRb)に合わせたものとなる。そのレールRa(もしくはRb)は、新幹線から地方ローカル線に至るまで、わが国全体では数種類のレールが使用されているが、一つの線区で見ればせいぜい二種類であるから、保線の各現場で用意する治具1の種類はそれほど多くはなくてよい。
【0029】
以上説明したように、本発明に掛かる治具1は、把持部3と一体になっている挿入部2が充分に長いことにより、その挿入部2で吊り下げてレールRa(もしくはRb)の側面に添わせた継目板Fをその状態に保持することができる。したがって、二枚の継目板F,F’のうちの一方をレールRa(もしくはRb)の側面に添わせた後、他方の継目板F’をレールRa(もしくはRb)の他方の側面に添わせるまでの間、作業者はレールRa(もしくはRb)あるいはその継ぎ目部分から離れていることができ、重量のある継目板F,F’を、かがみ込むなどの不自然な姿勢でレールRa(もしくはRb)に対して押し付けるなどの作業から作業員を解放することができる。また、ボルトBは頭部の形状やその他で頭部が自由に回らないように工夫されているので、ナットN側を締め付けるだけで締結することができる。そのため、本発明に係る治具1を使用することにより、継目板F,F’の持ち運び、レールRa(もしくはRb)への組み付けならびに締結までの一連の作業をすべて1名で安全に行うことができる。また、不自然な姿勢による力仕事が少なくなるので、作業員の負担を軽減し、それに伴い迅速かつ効率的な作業が可能になる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施例に限定されないのであり、吊り下げ用軸部およびハンドル用軸部ならびに連結部は、一本の鋼丸棒から造らずに、それぞれ別部材として造って一体化してもよい。したがって、それらの断面形状は円形に限られない。また、本発明における係止部や止め部は、フランジ部などの円板状に形成する必要はなく、ピンや突起などの適宜の形状であってよい。また、それらの係止部や止め部の素材は、吊り下げ用軸部やハンドル用軸部とは異なる合成樹脂などの素材であってもよい。また、本発明に係る治具は、継目板F,F’に限らず、間隔材などのボルト孔が複数形成されている軌道材料の搬送やハンドリングなどに使用することができる。
【0031】
なおまた、上述した実施例を参照して説明した本発明は、特許請求の範囲に記載した発明に加えて、以下の発明を含む。
【0032】
本発明における吊り下げ用軸部は、鉄道レールのボルト孔および継目板の前記ボルト孔の内径に相当する外径の軸部材によって構成されていることを特徴とするレール継目板取付作業用治具。
【0033】
本発明は、ハンドル用軸部の連結部とは反対側の端部に、ハンドル用軸部を鉄道レールの上面に接近させることにより鉄道レールの頭部の側面に係合してハンドル用軸部の鉄道レールの幅方向への移動を阻止する係止部が設けられていることを特徴とするレール継目板取付作業用治具。
【0034】
本発明は、前記吊り下げ用軸部の前記連結部側の端部に、前記吊り下げ用軸部が挿入された前記継目板における前記ボルト孔の開口端に引っ掛かる止め部が設けられ、前記係止部と前記止め部との前記吊り下げ用軸部の軸線方向に測った間隔が、前記係止部が係合する前記頭部の側面と前記鉄道レールの側面に添わせた一方の前記継目板における前記止め部が引っ掛かる前記ボルト孔の前記開口端との間隔に調整可能に構成されていることを特徴とするレール継目板取付作業用治具。
【符号の説明】
【0035】
1…治具
2…挿入部(吊り下げ用軸部)
3…把持部(ハンドル用軸部)
4…アーム部(連結部)
5…カバー
6…フランジ部
7…ストッパ
8,9…ボルト孔
B…ボルト
F,F’…継目板
N…ナット
Ra,Rb…レール