(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】アンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型及びアンダーカット形状を有する成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20240327BHJP
B29C 45/44 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/44
(21)【出願番号】P 2019195702
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】597052695
【氏名又は名称】有限会社 松▲崎▼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 正治
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106518(JP,A)
【文献】特開2007-118471(JP,A)
【文献】特開2002-192571(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045032(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/44
B29C 45/26-45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型であって、
前記成形用型は、雄型と雌型を備え、
前記雌型は、枠型と押出し型とを備え、
前記押出し型は、アンダーカット形状に対応した凸部を有し、
前記押出し型又は前記枠型のいずれか一方を他方から離間する方向に移動させて、前記押出し型の凸部を前記成
形品から分離し、
前記押出し型の凸部が、前記成形品を押すことで、前記枠型から前記成形品を分離させることで抜出し行うことを特徴とする成形用型。
【請求項2】
前記枠型は、アンダーカット形状に対応した凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の成形用型。
【請求項3】
前記枠型は、前記押出し型に対して垂直方向に移動可能とし、前記押出し型より離間する方向に前記枠型を移動させて前記成形品を前記押出し型より分離させた後、前記枠型を前記押出し型側の方向に移動させることで、前記押出し型の凸部が前記成形品を押し、前記枠型から前記成形品を分離させることで抜出しを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用型。
【請求項4】
前記押出し型は、前記枠型に対して垂直方向に移動可能とし、前記枠型より離間する方向に前記押出し型を移動させて前記成形品を前記押出し型より分離させた後、前記押出し型を前記枠型側の方向に移動させることで、前記押出し型の凸部が、前記成形品を押し、前記枠型から前記成形品を分離させることで抜出しを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形用型。
【請求項5】
前記成形品の形状は、筒状であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の成形用型。
【請求項6】
前記成形品の材質は、弾性体であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成形用型。
【請求項7】
成形用型を用いたアンダーカット形状を有する成形品の製造方法であって、
前記成形用型は、雄型と雌型を備え、
前記雌型は、枠型と押出し型とを備え、
前記枠型は、アンダーカット形状に対応した凹部を有し、
前記押出し型は、アンダーカット形状に対応した凸部を有するものであって、
前記押出し型又は前記枠型のいずれか一方を他方から離間する方向に移動させて、前記押出し型の凸部を前記成
形品から分離し、
前記成形用型における前記押出し型の凸部が、前記成形品を押し、前記枠型から前記成形品を分離させることで抜出しを行うことを特徴とするアンダーカット形状を有する成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型に関する。また、本発明は、アンダーカット形状を有する成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、成形加工においては互いに係合する二つの型(雄型、雌型)を上下に組み合わせること(以下「型締め」という。)で、原材料を成形品に成形する。そして、雄型と雌型を上下に分離させること(以下「型開き」という。)で、成形品を型から取り出し(以下「抜出し」という。)ている。
しかし、凸形状又は凹形状を有するため、上下に型開きをするだけでは上手く抜出すことのできない成形品が知られており、これらの凸形状又は凹形状は、アンダーカット形状と呼ばれている。
【0003】
そこで、アンダーカット形状を有する成形品を成形する成形用型において、アンダーカット形状に対応する形で成形品を抜出すことのできる成形用型が開発されている。例えば、特許文献1に示すように、成形用型を構成する部品を組み合わせる動作を行った後、複数の部品で構成される型を分解することで、成形後の成形品を型から抜出すスライドコア方式の成形用型が知られている。また、押出ピン等で押すことで成形後の成形品自体を変形させて型から抜出す、いわゆる無理抜きという抜出し方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、スライドコア方式等の複数の部品で構成されている型は、構造が複雑になり、装置が大型化し製造にコストが嵩むだけでなく、補修や調整などにも手間がかかる。さらに、成形品を製造するため型開きを行うたびに多くの部品が一斉に駆動することは効率が悪いという問題がある。
また、無理抜きには、手作業で抜出しを行う方法と、押出しピン等により抜出しを行う方法があるが、手作業で抜出しを行う場合、成形品は高熱で型に張り付いているため、耐熱グローブ等を装着した作業員がエアーブロー等を行いながら成形後の成形品を一つ一つ型から手作業で行う必要があり作業時間が長期化し効率が非常に悪い。また、押出ピン等で成形後の成形品を型より押出して抜出す場合、成形後の成形品に押出ピンの痕がついてしまうことや、成形後の成形品が破損してしまうこと等の問題が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、簡単な構造で効率良くアンダーカット形状を有する成形品を製造するための成形用型及び成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、雄型と雌型からなる成形用型であって、枠型と押出し型とを備える雌型のうち、押出し型のアンダーカット形状に対応した凸部が、成形品を押すことで、成形後の成形品を効率良く型から抜出せるようになることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の成形用型及び成形品の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するための、本発明の成形用型とは、アンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型であって、成形用型は、雄型と雌型を備え、雌型は、枠型と押出し型とを備え、押出し型は、アンダーカット形状に対応した凸部を有し、押出し型の凸部が、成形品を押すことで、枠型から成形品を分離させることで抜出し行うことという特徴を有する。
この特徴によれば、複数の部品からなる複雑な構造の成形用型を使用せずに、簡単な構造の成形用型で効率良くアンダーカット形状を有する成形品を製造することができる。また、アンダーカット形状を有する成形品の製造を一連の動作で完了することができるため、別途手作業等による抜出しを必要としないことから作業効率を向上させることが可能となる。
【0009】
さらに、他の実施態様によれば、枠型は、アンダーカット形状に対応した凹部を有するという特徴を有する。
アンダーカット形状に対応した凹部を有する枠型の場合には、外周に凸状のアンダーカット形状を有する成形品を得ることができる。従来では、このような形状の成形品を型から抜出すには、主に手作業で行い、自動化することが困難であった。しかし、本発明の成形用型によれば、外周に凸状のアンダーカット形状を有する成形品を自動で抜出すことが可能となり、効率よく製造することができる。
【0010】
さらに、他の実施態様によれば、枠型は、押出し型に対して垂直方向に移動可能とし、押出し型より離間する方向に枠型を移動させて成形品を押出し型より分離させた後、前記枠型を前記押出し型側の方向に移動させることで、押出し型の凸部が成形品を押し、枠型から成形品を分離させることで抜出しを行うという特徴を有する。
この特徴によれば、枠型が移動することで成形品の抜出しを行うため、押出し型は固定されており、強い力で確実に型締めを行うことができる。それによりバリの少ない精度の高い成形品を成形することができる。
【0011】
さらに、他の実施態様によれば、押出し型は、枠型に対して垂直方向に移動可能とし、枠型より離間する方向に押出し型を移動させて成形品を押出し型より分離させた後、押出し型を枠型側の方向に移動させることで、押出し型の凸部が、成形品を押し、枠型から成形品を分離させることで抜出し行うという特徴を有する。
この特徴によれば、押出し型が移動することで、成形品の抜出しを行うため、効率よくアンダーカット形状を有する成形品を製造することができる。
【0012】
さらに、他の実施態様によれば、成形品の形状は、筒状であるという特徴を有する。
従来、筒状の内部にアンダーカット形状を有する成形品は、自動的に抜出しを行うことが難しく、作業員による手作業で抜出しを行う必要があった。この特徴によれば、筒状の内部にアンダーカット形状を有する成形品を自動的に抜出すことができるため、生産効率を向上することができる。
【0013】
さらに、他の実施態様によれば、成形品の材質は、弾性体であるという特徴を有する。
この特徴によれば、成形品の変形・復元が容易となるため、抜出し時に成形品の破損を防ぐことができる。これにより、アンダーカット形状を有する成形品の生産効率が上がり、かつ成形品の品質も向上させることができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための、本発明の成形品の製造方法とは、成形用型を用いたアンダーカット形状を有する成形品の製造方法であって、成形用型は、雄型と雌型を備え、雌型は、枠型と押出し型とを備え、枠型は、アンダーカット形状に対応した凹部を有し、押出し型は、アンダーカット形状に対応した凸部を有するものであって、成形用型における押出し型の凸部が、成形品を押し、枠型から成形品を分離させることで抜出しを行うという特徴を有する。
この特徴によれば、複数の部品からなる複雑な構造の成形用型を使用せずに、簡単な構造の成形用型で効率良くアンダーカット形状を有する成形品を製造することができる。また、アンダーカット形状を有する成形品の製造を、型締めから型開きまでを自動的に完了することができるため、別途手作業等による抜出し工程を必要としない。これにより、作業効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構造で効率良くアンダーカット形状を有する成形品を製造するための成形用型及び成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施態様における成形用型の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様における成形用型の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施態様における成形用型の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施態様における成形用型の構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様における成形用型の構造及び動作工程を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施態様における成形用型の構造及び動作工程を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の成形用型によって製造される成形品の一例を示す図である。
【
図8】本発明の成形用型によって製造される成形品の他の例を示す図である。
【
図9】本発明の成形用型によって製造される成形品の他の例を示す図である。
【
図10】本発明の成形用型によって製造される成形品の他の例を示す図である。
【
図11】本発明の成形用型によって製造される成形品の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施態様]
まず、本発明の成形用型100について説明する。
図1は、本発明の第1の実施態様における成形用型100を正面から見た場合の断面図である。また、
図2は成形用型100を構成している後述する雄型2、枠型4、押出し型5を正面から見た場合の断面図である。以下、本実施態様における成形用型100を
図1及び
図2を用いて説明する。
【0018】
〔成形用型〕
本実施態様における成形用型100は、原材料1を成形し、アンダーカット形状を有する成形品8を製造するものである。
図1に示すとおり、成形用型100は、雄型2と、雌型3とを備えている。また、雌型3は、枠型4と、押出し型5と、ガイド部6とを備えている。そして、雄型2、枠型4、押出し型5の原材料1と接する部分により、原材料1を所望の形状に成形するための成形部7を構成する。
【0019】
成形用型100は、アンダーカット形状を有する成形品8を製造することができれば、材質等は特に制限されない。例えば、金属や強化プラスチック等の材質であることが挙げられる。好ましくは、鉄や鋼等の耐久性の高い金属である。一般に、成形用型は、繰り返しの使用によって型の精度が下がる。具体的には、型の表面が摩耗することで型締めが不十分となるため、バリが発生するなど成形品の品質が低下する。このため、成形用型は定期的なメンテナンスが必要である。耐久性の高い金属で成形用型100を作成することにより、メンテナンスの間隔を長くし、生産効率を向上させることができる。
【0020】
〔原材料〕
原材料1(非図示)は、本実施態様の成形用型100によって、アンダーカット形状を有する成形品8に成形されるものである。原材料1は、成形用型100によって成形され、熱等によって溶解、又は変形する材料であれば特に種類は問わない。例えば、ゴム、プラスチック等の合成樹脂、又は亜鉛合金やアルミニウム等の金属等が挙げられる。中でもゴム、プラスチック等の合成樹脂が原材料1として適している。ゴム、プラスチック等の合成樹脂は、比較的変形し易い素材であるため、抜出しが容易だからである。さらに、ゴム等の弾性が高い素材(弾性体)が原材料1として特に適している。弾性体で成形された成形品は、変形が容易であるとともに復元力が高いことから、抜出し時の破損を防ぐことができる。これにより、原材料の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた生産数の比率である歩留まりを高くすることが可能である。よって、生産効率が上がり、かつ成形品の品質も向上させることができる。
【0021】
(雄型)
図1及び
図2(A)に示すとおり、雄型2は雄型成形部2Aを備え、雌型3と一体となることで原材料1を所望の形状に成形するものである。
また、
図2(A)に示すとおり雄型成形部2Aは雄型2の一部を構成し、原材料1を所望の形状に成形するものである。雄型成形部2Aの形状は、成形品8の形状に応じて様々であり特に限定されるものではない。例えば、円筒形状の成形品8を成形するために、雄型成形部2Aの形状を円柱状とすることや、内部の断面形状が多角形である多角筒形状の成形品8を成形するために、雄型成形部2Aの形状を多角柱形状とすること等が挙げられる。中でも好ましくは、雄型成形部2Aの形状を円柱形状とすることが良い。成形された成形品8に角部が存在すると、抜出し時に角部から成形品8が破損する場合がある。このため、成形品8を円筒形状とすることにより、抜出し時成形品8が破損するリスクを下げることができる。
【0022】
また、雄型2は雌型3と一体となることで型締めを行い、原材料1を成形することができればよく、構造等は特に制限されない。例えば、雄型2は雌型3と隙間なく一体化するような構造にすることがよい。雄型2を雌型3と隙間なく一体化するような構造にすることで、バリ等の無い高精度な成形品8を製造することができる。
【0023】
(雌型)
図1に示すとおり、雌型3は、雄型2と一体となることにより型締めを行うことで、原材料1(非図示)の成形を行うことを目的とするものである。雌型3は枠型4と、押出し型5と、ガイド部6とを備えており、本実施態様における雌型3は、枠型4と押出し型5が分割可能に合体していることを特徴としている。
また、雌型3は雄型2と一体となることで型締めを行い、原材料1を成形することができればよく、その他の構造等は特に制限されない。例えば、雌型3は雄型2と隙間なく一体化するような構造にすることが挙げられる。雌型3を雄型2と隙間なく一体化するような構造にすることで、バリ等のない精度の高い成形品8を製造することができる。
【0024】
(枠型)
図1に示すとおり、枠型4は、押出し型5と一体となって雌型3を構成すものである。また、枠型4は、枠型成形部4Aにより原材料1を所望の形状に成形するものである。また、押出し型5と離間する方向に移動することで、アンダーカット形状を有する成形品8を押出し型5より分離した後、再び押出し型5側に移動させることでアンダーカット形状を有する成形品8を成形用型100より抜出すことができる。
図2(B)に示すとおり、枠型成形部4Aは、枠型4の一部で原材料1と接する部分であり原材料1を所望の形状に成形するものである。枠型成形部4Aの形状は、成形品8の形状に応じて様々であり特に限定されるものではない。例えば、円筒形状の成形品8を成形するために、枠型成形部4Aの形状を、枠型4に開けられた円孔形状とすること。または、外部の断面形状が多角形である多角筒状の成形品8を成形するために、枠型成形部4Aの形状を枠型4に開けられた多角孔形状とすること等が挙げられる。中でも好ましくは、枠型成形部4Aの形状を円孔形状とすることが良い。成形された成形品8の外周に角部が存在すると、抜出し時に角部から角部から成形品8が破損する場合がある。このため、枠型成形部4Aの形状を円筒形状の成形品8に対応した円柱状とすることにより、抜出し時成形品8が破損するリスクを下げることができる。さらに、枠型成形部4Aは成形品8のアンダーカット形状に対応する凹部4Bを備える。
【0025】
凹部4Bは、成形品8の外周にアンダーカット形状として凸部を形成するものを成形することを目的とする。凹部4Bは、成形品8のアンダーカット形状に合わせた設計を行うものとし、形状については制限されない。例えば、突起のような凸部を有する成形品8を成形するため、凹部4Bとしては突起に対応する窪みを有するものが挙げられる。また、他の例としては、外周に沿ってリブ形状の凸部を有する成形品8を成形するため、凹部4Bとして枠型成形部4Aの内周に沿って円周状の溝を有するもの等が挙げられる。
【0026】
(押出し型)
図1及び
図2(C)に示すとおり、押出し型5は押出し型成形部5Aを備え、枠型4と一体となって雌型3を構成し、後述する凸部5Bによりアンダーカット形状を有する成形品8を成形用型100より抜出すことを目的とする。
押出し型成形部5Aは、押出し型5の一部で原材料1と接する部分であり原材料1を所望の形状に成形するものである。押出し型成形部5Aの形状は、成形品8の形状に応じて様々であり特に限定されるものではない。例えば、内周が円筒形状の成形品8を成形するために、押出し型成形部5Aの形状を円柱状とすること。または、内周の断面形状が多角形である多角筒状の成形品8を成形するために、押出し型成形部5Aの形状を成形品8の内周に対応した多角柱状とすること等が挙げられる。中でも好ましくは、押出し型成形部5Aの形状を円柱状とすることが良い。成形された成形品8の内周に鋭角な部分が存在すると、抜出し時に角部から成形品8が破損する場合がある。このため、押出し型成形部5Aの形状を円筒形状の成形品8に対応した円柱状とすることにより、抜出し時成形品8が破損するリスクを下げることができる。さらに、押出し型成形部5Aは成形品8のアンダーカット形状に対応する凸部5Bを備える。
【0027】
凸部5Bは、成形品8の内周に凹形状のアンダーカット形状を形成するものを成形することを目的とする。凸部5Bは、成形品8の内周のアンダーカット形状に合わせた設計を行うものとし、形状については制限されない。例えば複数の部分的な窪みを有する成形品8を成形するため、凸部5Bとしては窪みに対応する複数の凸部を有するものが挙げられる。また、他の例としては、内周に沿って溝状の窪みを有する成形品8に対応するため、凸部5Bとしては押出し型成形部5Aの外周に沿って円周状の凸部を有するもの等が挙げられる。
【0028】
また、凸部5Bは枠型4に張り付いているアンダーカット形状を有する成形品8を枠型4より押出すことで、成形用型100より抜出しを行うことを目的とする。アンダーカット形状を有する成形品8を枠型4より押出すことで、成形用型100より抜出しを行うことができれば、凸部5Bとしてはどのような構造であっても構わない。
【0029】
(ガイド部)
図1及び
図2(B)に示すとおりガイド部6は、枠型4に貫通するように設けられ、枠型4をガイド部6に沿って正確に往復動作をさせることを目的としている。ガイド部6は、枠型4をガイド部6に沿って正確に往復動作をさせることができれば、どのようなものであってもよく、例えば、枠型4に、枠型4の移動方向と平行となる角度で複数のシャフトを貫通させ、シャフトに沿って枠型4が安定して垂直方向に移動するような構造等が挙げられる。
【0030】
(成形部)
成形部7は、原材料1を所定の形状に成形することを目的とするものである。また、
図1、2に示すとおり成形部7は、雄型2、枠型4、及び押出し型5を型締めした際に、雄型2の雄型成形部2Aと、枠型4の枠型成形部4Aと、押出し型5の押出し型成形部5Aによって囲まれた空間である。成形部7は、成形品8の形状に応じて様々であり特に限定されない。
【0031】
(成形品)
成形品8は、本実施態様の成形用型100を用いて成形される成形品である。本発明における成形品8としては、アンダーカット形状を有するものであればよく、その他の形状や材質に制限はない。例えば、円筒形状や、多角筒形状、有底円筒形状等が挙げられる。中でも好ましくは、円筒状とすることが良い。成形された成形品8に角部が存在すると、抜出し時に角部から成形品8が破損する場合がある。このため、成形品8を、円筒状とすることにより、抜出し時に破損するリスクを下げることができる。なお、成形品8の具体的な形状については、複数の例示を後述する。
【0032】
(成形用型100の動作)
次に、本実施態様の成形用型100の動作について説明する。ここで、成形用型100の動作とは、成形用型100を用いた成形品8の製造工程に相当するものである。
図5に基づき、本実施態様の成形用型100を用いてアンダーカット形状を有する成形品8を製造する工程を説明する。なお、
図5においては、成形用型100の動作工程、すなわち成形品8の製造工程を(A)成形工程、(B)離型工程、(C)抜出し工程1、(D)抜出し工程2の4ステップで示している。
【0033】
(A)成形工程
まず成形工程について説明する。成形工程とは、原材料1を成形品8に成形するための工程である。
図5(A)成形工程には、成形用型100が型締めを行う様子が示されている。まず、枠型4と押出し型5が一体となって雌型3を構成している。そして、雄型2と雌型3は分離して、雄型成形部2Aと押出し型成形部5Aが向かい合うように配置されている。そして、成形部7に原材料1が配置される。次に、雄型2が雌型3方向に移動し、雄型2と雌型3がしっかりと圧着することで型締めを行う。原材料1は成形部7の形状に対応したアンダーカット形状を有する成形品8に成形される。ここで、成形工程は、アンダーカット形状を有する成形品8を成形することができれば特に制限されない。例えば、溶解した原材料を、あらかじめ一体となって型締めされている雄型2と雌型3の間に注入器のようなもので射出注入する射出成形を行うことなどが挙げられる。
【0034】
(B)離型工程
次に離型工程について説明する。離型工程とは、雄型2が雌型3より離れることで、型開きを行う工程である。離型工程は、
図5(B)離型工程に示されるように、雄型2が雌型3から離間する方向に移動することで、雄型成形部2Aが成形品8から離れることである。
【0035】
(C)抜出し工程1
次に抜出し工程について説明する。抜出し工程は、成形用型100から成形品8を抜出し行う工程である。まず、
図5(C)抜出し工程1に示すように、枠型4が、ガイド部6に沿って押出し型5から離間する方向に移動する。この動作により枠型成形部4Aに張り付いている成形品8が押出し型5から離間する方向に変形する。そして、互いに噛合していた成形品8と凸部5Bが分離する。これにより成形品8は押出し型成形部5Aより分離する。
【0036】
(D)抜出し工程2
図5(D)抜出し工程2に示すように、枠型4は、ガイド部6に沿って押出し型5側の方向に移動することで、再度、枠型4と押出し型5が一体となる。その時、凸部5Bが枠型成形部4Aに張り付いている成形品8を押出すことで、枠型4から成形品8を分離し、成形用型100から、アンダーカット形状を有する成形品8の抜出しを完了する。
【0037】
本実施態様によれば、枠型4が押出し型5に対して往復移動を行うことで、少ない部品による一連の動作で型締めから型開きまでの工程を完了することができる。このため、多数の部品が動作し複雑な型開きを行う方法や、作業員による手作業での抜出しに比べて作業効率が高く、かつ、コストを抑えることができる。さらに、枠型4が移動することで、アンダーカット形状を有する成形品8に引っ張り応力がかかることで、アンダーカット形状を有する成形品8が適度に変形するため、抜出しを容易にしている。これにより、精度の高いアンダーカット形状を有する成形品8を製造することができる。また、成形品8の破損も抑えることができるため、歩留まりが良いという効果もある。
【0038】
[第2の実施態様]
図3は、本発明の第2の実施態様の成形用型200の構造を示す概略説明図である。なお、
図6における(A)成形工程、(B)離型工程、(C)抜出し工程1、(D)抜出し工程2は、後述する成形用型200の動作工程を示すものである。以下、成形用型200の構造については、主に
図3及び
図4を用いて説明する。
図3、
図4は、
図1、
図2の内、枠型4に設けられていたガイド部6を、押出し型12に設けたこと以外は同一である。
【0039】
図3に示すとおり、本発明の第2の実施態様の成形用型200は、雄型9と雌型10を備えるものである。また、
図4に示すとおり、雄型9は雄型成形部9Aを備え、雌型10は枠型11と、押出し型12と、ガイド部13を備えるものである。本実施態様の成形用型200は、第1の実施態様の成形用型100の構成の内、特に枠型4及び押出し型5の動作に係る構成を変更したものである。
なお、第2の実施態様の成形用型200の構成のうち、第1の実施態様の成形用型100の構成と同じものについては、説明を省略する。したがって、第1の実施態様の成形用型100から変更した構成として、雌型10に係る構成である枠型11、押出し型12、ガイド部13について、以下説明する。
【0040】
(枠型)
図3及び
図4(B)に示すとおり第2の実施態様における枠型11は、第1の実施態様における枠型4と、基本的に同一の機能を有するものであるが、第1の実施態様におけるガイド部6を備えていない点と、定位置に固定されて移動を行わない点で枠型4と異なる。また、枠型11は、枠型成形部11Aを備えており、第1の実施態様における枠型成形部4Aと同様の機能を有するものである。また、枠型成形部11Aは凹部11Bを備えており、第1の実施態様における凹部4Bと同様の機能を有するものである。
【0041】
(押出し型)
図3及び
図4(C)に示すとおり第2の実施態様における押出し型12は、第1の実施態様における押出し型5と、基本的に同一の機能を有するものであるが、ガイド部13を備える点と、ガイド部13に沿って往復移動を行うことで、アンダーカット形状を有する成形品8を成形用型200より抜出す点で異なる。また、押出し型12は、押出し型1成形部12Aを備えており、第1の実施態様における押出し型成形部12Aと同様の機能を有するものである。また、押出し型成形部12Aは凸部12Bを備えており、第1の実施態様における凸部5Bと同様の機能を有するものである。
【0042】
(ガイド部)
第2の実施態様におけるガイド部13は、押出し型12に貫通するように設けられ、押出し型12を正確に動作させるために支持を行うことを目的としている。ガイド部13は、押出し型12を正確に動作させることができれば、どのようなものであってもよく、例えば、押出し型12に、押出し型12の移動方向と平行となる角度で複数のシャフトを貫通させ、シャフトに沿って押出し型12が安定して垂直方向に移動できるような構造等が挙げられる。
【0043】
(成形用型200の動作)
次に、本実施態様の成形用型200の動作について説明する。ここで、成形用型200の動作とは、成形用型200を用いた成形品8の製造工程に相当するものである。
図6に基づき、本実施態様の成形用型200を用いてアンダーカット形状を有する成形品8を製造する工程を説明する。
図6においては、成形用型200の動作工程、すなわち成形品8の製造工程を(A)成形工程、(B)離型工程、(C)抜出し工程1、(D)抜出し工程2の4ステップで示している。
なお、成形用型200は、成形用型100の内、枠型4に代わって押出し型12が移動することで、成形品8の抜出しを行うことを特徴とする。
【0044】
(A)成形工程
図6(A)成形工程に関しては、第1の実施態様において、
図5(A)成形工程に基づき説明した成形用型100の動作と同様であるため説明を省略する。
【0045】
(B)離型工程
(B)離型工程については、第1の実施態様において、
図5(B)離型工程に基づき説明した成形用型100の動作と同様であるため説明を省略する。
(C)抜出し工程1
抜出工程は、
図6(C)抜出し工程1に示すように、押出し型12が枠型11から離間する方向に移動する。この時、枠型成形部11Aに張り付いている成形品8が、伸びるように変形することで、凸部12Bから離脱し、押出し型12より分離される。その後、
図6(D)抜出し工程2に示すように、押出し型12は、枠型11側の方向に移動することで、再度、枠型11と押出し型12が一体となる。その時、凸部12Bが枠型成形部11Aに張り付いている成形品8のアンダーカット形状を押すことで枠型成形部11Aから成形品8を分離し、成形用型200から、アンダーカット形状を有する成形品8の抜出しを完了する。
【0046】
本実施態様によれば、押出し型12が移動することで、成形品8の抜出しを行うため、自動で抜出すことの難しかったアンダーカット形状を有する成形品8を効率よく製造することができる。
【0047】
以上のように、本実施態様の成形用型及び成形用型を用いた成形品の製造方法により、所望の成形品を効率的に製造することが可能となる。以下、本実施態様の成形用型により成形可能な成形品について例示する。
【0048】
図7~
図11は、それぞれ、本実施態様の成形用型で成形可能な成形品8の一例を示す図である。各図中の(A)~(C)はそれぞれ、成形品8の(A)斜視図、(B)平面図、(C)断面図を示している。
【0049】
図7(A)~(C)に示す成形品8は、円筒状の形状の本体を有しており、本体の外周上に二つのリブ形状の凸部を形成するアンダーカット形状と、内周には溝状の凹部を形成するアンダーカット形状が本体と同心円を描くように成形されている。なお、
図7に示した成形品は、外周に設けられた二つのリブ形状と内周に設けられた溝形状により、部品として使用される時に、固定し易く、安定して使用することができるという利点を有する。
図8(A)~(C)に示す成形品8は、円筒状の形状の本体を有しており、内周に溝状の凹部を形成するアンダーカット形状が本体と同心円を描くように成形されている。なお、
図8に示した成形品は、内周に設けられた溝形状により、部品として使用される時に、固定し易く安定して使用できるという利点を有する。
図9(A)~(C)に示す成形品8は、円筒形状の一部が欠けた形状の本体を有しており、本体の外周上に一つのリブ形状の凸部を形成するアンダーカット形状と、内周には溝状の凹部を形成するアンダーカット形状が本体と同心円を描くように成形されている。なお、
図9に示した成形品は、外周に設けられ一つのリブ形状と内周に設けられた溝形状により、部品として使用される時に、固定し易く、安定して使用することができるうえ、円筒形状の一部が欠けているため、変形し易く、機械等に組み込む際に、機械の形状に併せて容易に組み込むことができるという利点を有する。
図10(A)~(C)に示す成形品8は、円筒状の形状の本体を有しており、本体の外周上に本体と同心円を描くリブ形状の凸部を形成するアンダーカット形状と、内周には溝状の凹部を形成するアンダーカット形状が本体と同心円を描くように成形されている。なお、
図10に示した成形品は、外周に設けられたリブと内周に設けられた溝形状により、部品として使用される時に、固定し易いという利点を有する。
図11(A)~(C)に示す成形品8は、2つに分割された円筒状の形状の本体を有しており、本体の外周上に本体と同心円を描くリブ形状の凸部を形成するアンダーカット形状と、内周には溝状の凹部を形成するアンダーカット形状が本体と同心円を描くように成形されている。なお、
図11に示した成形品は、2分割されていること、及び、外周に設けられたリブと内周に設けられた溝形状により、部品として使用される時に、固定し易いという利点を有する。
【0050】
図7~
図11に示した成形品8の材質等は特に制限されない。例えば、ゴム、プラスチック等の合成樹脂、又は亜鉛合金やアルミニウム等の金属が挙げられる。また、成形品8の用途としては、例えば、水道等の配管設備に用いられる止水用パッキン等として好適に利用することが挙げられる。
なお、
図7~11に示す成形品8の形状は、本実施態様の成形用型を用いて製造される一例であって、他の形状を否定するものではない。
【0051】
なお、上述した実施態様は、アンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型及び成形品の製造方法の一例を示すものである。本発明のアンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型及び成形品の製造方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るアンダーカット形状を有する成形品を製造する成形用型及び成形品の製造方法を変更しても良い。
【0052】
例えば、本発明の成形用型を、複数連結することを特徴するものとしても良い。この特徴によれば、作業スペースを削減し、より効率よくアンダーカット形状を有する成形品を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の成形用型及び成形品の製造方法は、成形品の製造に利用することができる。具体的には、アンダーカット形状を有する成形品の製造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
100,200…成形用型、1…原材料、2,9…雄型、2A,9A…雄型成形部、3,10…雌型、4,11…枠型、4A,11A…枠型成形部、4B,11B…凹部、5,12…押出し型、5A,12A…押出し型成形部、5B,12B…凸部、6,13…ガイド部、7,14…成形部、8…成形品