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  • 特許-搬送安定化バケット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】搬送安定化バケット
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/12 20060101AFI20240327BHJP
   B65G 47/53 20060101ALI20240327BHJP
   B65G 47/24 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B65G17/12 H
B65G47/53 G
B65G47/24 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020042380
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143041
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】515002377
【氏名又は名称】株式会社オーエム機械
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】植田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】門脇 磨生
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-040178(JP,A)
【文献】特開2014-019559(JP,A)
【文献】特開平06-080113(JP,A)
【文献】特開2000-318710(JP,A)
【文献】米国特許第04177891(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/12
B65G 47/53
B65G 47/24
B65G 47/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細りの方向から順次送り込まれてくる略錐形の被収容物を一つずつ収容し、送り込みの方向と異なる方向に順次移送していくバケットであって、
底面部の両側から側面部が延伸した樋状体の中央に、側面部の間隔を狭める姿勢規制部を突設し、全体が、樋状体の底面部中心をとおる鉛直線に対して180°回転対称な形状または、樋状体の長手方向を法線方向とした、樋状体の中心を通る平面に対して反転対称な形状であることを特徴とする搬送安定化バケット。
【請求項2】
姿勢規制部は側面部に対して張り付いた三角錐の外形を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の搬送安定化バケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送安定化バケットを植設した無端ベルトと、
上空から被収容物または搬送安定化バケットをピックアップし所定個数おきに180°回転させる反転機構と、
を具備したことを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリームコーンつきのアイスを大箱に収容する際などに用いるバケットおよび搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイスクリームコーンに乗せ入れたアイス(以降では適宜コーンアイスと称する。)は、たとえば、透明フィルムで個別包装され6個一箱で売られている。このような箱詰に際しては、一列で流れてくるコーンアイスを一つずつバケットに収容して順次横移動させ、下流にて6個単位で開口した箱に収容していく。
バケット収容前の一列搬送に際しては、その上流にてアイス側(広面積側)が押されて繰り出され、円錐の先細りの方(とがった方)が進行方向に向いている。したがって、受け入れ側のバケットでは、端部にクッション材を設けるなどしてウエハースが壊れないようにしている。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
コーンアイスの供給速度は例えば200個/分であり、バケットの間欠駆動を、停止期0.1秒、移動期0.2秒とするなど、非常に高速である。このとき、包装材の影響もあり、必ずしも総てのコーンアイスの挙動が一定せず、コーン先端が壊れてしまう、バケットから飛び出してしまう、という問題が生じる場合があった。
【0004】
また、錐形であるので、6個一箱に組むときは、横移動の途中で3個をピックアップして反転させ置き直す処理が加わることもあり、上蓋のついたバケットや錐形に追従したクッションを設けたバケットは事実上採用できないという問題点があった。換言すれば、バケットには汎用性を持たせる必要性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-310173
【文献】特開平11-105828
【文献】特開平03-297354
【文献】実全昭59-126380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、汎用性があり、脆性な錐形被収容物を高速に受け入れ安定的に搬送するバケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の搬送安定化バケットは、先細りの方向から順次送り込まれてくる略錐形の被収容物を一つずつ収容し、送り込みの方向と異なる方向に順次移送していくバケットであって、底面部の両側から側面部が延伸した樋状体の中央に、側面部の間隔を狭める姿勢規制部を突設し、全体が、樋状体の底面部中心をとおる鉛直線に対して180°回転対称な形状または、樋状体の長手方向を法線方向とした、樋状体の中心を通る平面に対して反転対称な形状であることを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、半割の筒状とすることにより、筒軸方向(長手方向)のどちら側からでも被収容物を受け入れ、両端解放により突き当たりの破損を生じさせない。加えて、中央の規制部により安定的な進入停止および姿勢保持が可能となる。また、簡素な構成であって対称形を簡便に構築できるため、汎用性が高く、安価に製造可能でもある。
【0009】
略錐形とは、円錐、角錐の例を挙げることができる。進行方向後端の形状は特に限定されず、本願では略矩形の被収容物とは、送り込まれる側からみて、次第に拡径しているものを意味する。
異なる方向とは、通常は送り込み方向に直角な方向であるがこれに限定されない。
底面部の両側から側面部が延伸するとは、必ずしも三面構造でなく、半円やU字状も含まれ、幅の狭い底面すなわちV字状も含まれる。底面部と側面部とは必ずしも境界が明瞭でなくてもよく、溝が概念できるのであれば樋状体に含まれる。
180°回転対称とは、樋状体の底面部中心をとおる鉛直線に対しての対称形を意味する。反転対称な形状とは、鏡映、鏡像となっている形状をいう。すなわち、樋状体の長手方向を法線方向とした、樋状体の中心を通る平面(鉛直面)に対して面対称の形状を意味する。
なお、回転対称も反転対称も、樋状体に姿勢規制部が加わった構成部分の対称性をいい、付加要素があることによる対称性の破れがあったとしても、ここでいう対称性はあるものとする。たとえば、片方の側面部に更に持ち上げ用のつまみしろが延設されていても本願ではこの部分は考慮に入れず回転対称形は保たれていると考えるものとする(なお、この場合でも反転対称性は保たれる)。
両側面の立ち上がり角度は、被収容物を安定的に収容できれば特に限定されないが、水平から60°~80°とするのが好ましい。
姿勢規制部が突設されているとは、そのように中央が絞られた、くびれた外形を有することを意味し、被収容物の円滑な侵入停止および保持安定性を発揮するものであれば特に限定されず、実際に突設された態様を含むほか、たとえば、ひょうたんのように中央がなめらかに縮径している形状も含まれるものとする。
【0010】
請求項2に記載の搬送安定化バケットは、請求項1に記載の搬送安定化バケットにおいて、姿勢規制部は側面部に対して張り付いた三角錐の外形を有するものであることを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2にかかる発明は、なめらかな進入停止を実現し、保持安定性もより高めることができる。また、構成も簡便であるので、汎用性が高く、安価に製造可能である。
【0012】
三角錐は、二等辺三角形を底面とした扁平形(錐の高さが二等辺より小さい)とし、底面を側面部に貼り付け、頂角側を下とする形状例を挙げることができる。頂角から高さ方向に至る稜線(反転対称形であるときは鉛直面内にあることとなる)、は、側面の立ち上がりより急峻となり、被収容物を安定的に保持する。なお、稜線の立ち上がり角度は、水平に対して、70°~90°とするのが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の搬送装置は、請求項1または2に記載の搬送安定化バケットを植設した無端ベルトと、上空から被収容物または搬送安定化バケットをピックアップし所定個数おきに180°回転させる反転機構と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3にかかる発明は、上からのピックアップが容易であり汎用性、利便性の高い搬送装置を提供できる。
【0015】
なお、植設は一般的には等間隔である。植設は固着でなく脱着可能も含むものとする。
ピックアップ方法は特に限定されず、吸着であってもアーム把持であってもよい。
所定個数おきとは一つおきが一般的であるが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汎用性があり、脆性な錐形被収容物を高速に受け入れ、安定的に搬送するバケットを提供できる。換言すれば、衝撃吸収性、動揺減衰性に優れた汎用性の高い簡素な構成のバケットを提供可能となる。
また、錐形の被収容物を安定的に搬送するとともに収容のための整列をおこなう搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の搬送装置を含めたラインの構成模式図である。
図2】本発明の搬送安定化バケットの外観斜視図である。
図3】本発明の搬送安定化バケットの平面図およびAA断面図(鉛直面Pにおける断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、搬送安定化バケット(バケット10)に収容する被収容物は、透明の包装フィルムにより個別に包装されたコーンアイスIであり、一列移送装置1で流されてきたコーンアイスIを、搬送装置2にて一つずつバケット10に収容して横移送し、中途で一つおきに反転する例について説明する。
図1は、本発明の搬送装置を含めたラインの構成模式図である。図2は、本発明の搬送安定化バケットの外観斜視図である。図3は、本発明の搬送安定化バケットの平面図およびAA断面図(鉛直面Pにおける断面図)である。
【0019】
コーンアイスIの形状は、表出しているアイス部分が半球、アイスクリームコーン部分がウエハース製で底面が半球と略同径の半円(実際にはアイスクリームが乗っているので底面相当部分は外からは見えない)の円錐である。コーン先端は丸みを帯びている。大きさは特に限定されないが、たとえば、直径45mm、円錐高さは80mmとする例を挙げることができる。包装フィルムはポリエチレン製でピロー包装とする例を挙げることができる。
【0020】
コーンアイスIは、ベルトコンベア1bにより略等間隔に一列に載置され、先細り側が進行方向を向いて送られる。搬送速度(処理速度)は、約200個/分である。
従って、コーンアイスI先端が進行方向そのままに突き当たるとカケその他の破損が生じやすい。また、包装フィルムの影響もあり、姿勢安定性が必ずしも高くない。
【0021】
バケット10は、このコーンアイスIを待ち受け、一つずつ収容し、横移動させるための入れ物である。搬送装置2では、バケット10は等間隔で無端ベルト2bに植設され、後述の反転機構2tにより下流にて一つおきに向きが反転される。その後、開口した箱に6個ずつ押し入れられる(図示せず)。
【0022】
バケット10について詳述する。
バケット10は、金属板により形成され、樋部20と規制部30とにより構成される。
樋部20は、適宜面取りされている長方形の金属板を長手中心線Mに対して左右対称に平行な二直線(折上線21L(R)と称することとする。)にて折り上げて形成される。形状的には、一方向に長い長方形の底面部22の両側から、長方形の側面部23が上に向けて延設された形状である。
【0023】
規制部30は、高さの低い扁平な三角錐形であって、左右の側面部23中央から向かい合うように対称に突設された形状を有する部位である。詳細には、三角錐底面は二等辺三角形であって逆三角形に配位して側面部23に突設されている。すなわち頂角31Tが折上線21に接し、二等辺31Sが側面部23にてV字を形成し、残余の一辺31Bが水平となり側面部23の上方に位置する。また、頂角31Tからの稜線31Nと二等辺31Sとの間にある二つの三角形31Dは合同(鏡像)であるとする。換言すれば、二つの規制部30の向かい合う稜線31Nは、同一の鉛直面内(これを鉛直面Pとする。)にあることになり、鉛直面Pの法線方向は長手中心線M方向を向いている。
【0024】
規制部30がこのような形状であるので、第1に、稜線31Nは側面部23より立ち上がり角度が急であって、稜線31N間は側面部23間より幅狭となる。第2に、三角形31Dが案内板の役割を担う。従って、コーンアイスIが高速に進入してきても、円滑に三角形31Dに案内されつつ減速し、先端を詰めてしまうことなく、稜線31N間に挟持されることとなる。
また、バケット10は鉛直面Pに対して、180°回転対称であり(反転対称でもある)、長手方向のどちら側からの進入も受け付けるので汎用性が高い。
【0025】
バケット10の大きさは、コーンアイスIの形状に合わせればよいが、たとえば、1.2mm厚のSUS板を用いて、底面部22が170mm×35mm、立ち上がりの角度は水平面に対して70°、側面部23の高さを40mmとすることができる。また、辺31Bの長さは500mm、立ち上がりの角度(稜線31Nの角度)は85°とすることができる。なお、規制部30は、外形が三角錐であればよく、必ずしも三角錐の底面は必要ではない。残る3面の内の二つの三角形31Dでない面部分は実体の面として存在しなくてもよい。一例として、稜線31N部分で折り曲げ両側に三角形31Dを形成した板材(盛り上がった板材)を、二等辺31S部分を側面部23に取り付けた(溶接した)例を挙げることができる。
【0026】
次に搬送装置2について説明する。
搬送装置2は、バケット10が短手方向を搬送方向に向けて等間隔に配された無端ベルト2bと、反転機構2tと、により構成される。
無端ベルト2bによる搬送方向は、一列移送装置1の移送方向と直角である。駆動部は図示しないが、無端ベルト2bは、0.1秒の停止期、0.2秒の移動期を繰り返し間欠駆動する。すなわち、バケット10は0.1秒の停止期に速やかにコーンアイスIを受け入れて挟持し、続く0.2秒で隣のバケット10の位置まで駆動する。このような高速な間欠駆動にあっては、従来のバケットであれば、収容時でも搬送時でも、コーンアイスIがぶれたり最悪飛び出したりして姿勢が安定しないところ、バケット10では安定的な挟持により衝撃吸収性、動揺減衰性にすぐれ、安定搬送が実現される。
【0027】
反転機構2tは、アーム2aによりコーンアイスIをピックアップし、一つおきの3個分を180°反転し、互い違いに配列した6個一組として、次の箱詰ライン(図示せず)に送り出す。このときも、コーンアイスIがバケット10上にて事実上の位置決めがされているため、包装フィルムが不定型であっても、コーンアイスIを精度よくピックアップすることができ、ピックアップミスなどが生じない。
【0028】
また、バケット10は上部が解放されているため、上空からのピックアップが可能であり、この点からも汎用性が高いといえる。アーム2aその他の設計自由度も高まる。
【0029】
以上の様に、本発明のバケット10そして搬送装置2は、コーンアイス等の、脆性な錐形被収容物を高速に受け入れ安定的に搬送することができる。
【0030】
なお、本発明は、上記の例に限定されない。たとえば、バケット10は三面構造でなく断面が半円状、U字状、V字状であってもよい。素材も、樹脂とすることもできる。
また、中央の規制部30は、たとえば頂角31Tは、折上線21より上方にあってもよい。また、形状も、三角錐でない(扁平)錐形であってもよい。面ファスナや両面テープにより、また、側面部上辺から懸架して着脱可能とし、規制部30部分だけを交換可能にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、たとえば、アイスクリームコーン自体の整列やクラッカーの整列にも利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 一列移送装置
1b ベルトコンベア
2 搬送装置
2b 無端ベルト
2t 反転機構
2a アーム
10 バケット
20 樋部
21 折上線(左の折上線21L、右の折上線21R)
22 底面部
23 側面部
30 規制部
31B 三角錐底面の二等辺三角形の二等辺でない残余の一辺
31N 稜線
31S 三角錐底面の二等辺三角形の二等辺
31T 頂角
31D 三角形
I コーンアイス
M 長手中心線
P 鉛直面
図1
図2
図3