(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ゴルフクラブセット
(51)【国際特許分類】
A63B 53/06 20150101AFI20240327BHJP
A63B 53/00 20150101ALI20240327BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20240327BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240327BHJP
【FI】
A63B53/06 C
A63B53/00 A
A63B53/04 E
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020078990
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513163487
【氏名又は名称】株式会社 ロア・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇一郎
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-116080(JP,U)
【文献】特開平5-15621(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203309(JP,U)
【文献】特開平10-85372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0243945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B53/00-53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類が異なる複数のゴルフクラブから構成されるゴルフクラブセットであって、
前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、フェース面の後方に、着脱可能に調整部材が挿入される凹部を有しており、
前記複数のゴルフクラブのうち一部のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されており、前記複数のゴルフクラブのうち、前記一部のゴルフクラブ以外のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されて
おらず、
前記複数のゴルフクラブのうち、基準番手よりも大きな番手の前記一部のゴルフクラブには前記調整部材が挿入されており、前記基準番手以下の番手の前記一部のゴルフクラブ以外のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されていないことを特徴とするゴルフクラブセット。
【請求項2】
種類が異なる複数のゴルフクラブから構成されるゴルフクラブセットであって、
前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、フェース面の後方に、着脱可能に調整部材が挿入される凹部を有しており、
前記複数のゴルフクラブのうち、第1ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には第1種金属により形成された第1調整部材が挿入されており、第2ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には前記第1種金属と異なる第2種金属により形成された第2調整部材が挿入されていることを特徴とするゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記第1ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には、前記第1種金属により形成された前記第1調整部材が挿入されており、前記第1ゴルフクラブよりも番手が小さい前記第2ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には、前記第1種金属よりも硬度が小さい前記第2種金属により形成された前記第2調整部材が挿入されていることを特徴とする、
請求項
2に記載のゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイアン型のヘッド本体の素材本体と異なる金属をヘッド本体に内蔵させることにより、打感の向上を図ることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッド本体部に形成されている凹部に金属製の調整部材が固定されている場合、金属の種類を変更することができない。したがって、ユーザの好みに応じて、ゴルフクラブヘッドの飛距離性能及び打感を容易に変更することができないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ユーザの好みに応じて飛距離性能及び打感を容易に変更可能なゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、ボールを打撃するフェース面を有し、前記フェース面の後方に、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材が着脱可能に挿入される凹部が形成されているヘッド本体部を有することを特徴とするゴルフクラブヘッドを提供する。
【0007】
また、前記調整部材が前記凹部に挿入された状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値が、前記調整部材が前記凹部に挿入されていない状態における前記ゴルフクラブヘッドのCT値よりも小さくてもよい。
【0008】
また、前記凹部は、前記ゴルフクラブヘッドのトウ側に設けられた開口から前記ゴルフクラブヘッドのヒール側に向けて、前記ゴルフクラブヘッドの左右方向の中央位置よりも前記ヒール側まで延伸していてもよい。
【0009】
また、前記凹部が延伸している方向と直交する方向の前記凹部の断面が円形であり、前記凹部の少なくとも一部に螺旋状の溝が形成されていてもよい。
【0010】
また、前記調整部材は、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材本体と、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成されており、前記調整部材本体が前記凹部に挿入された状態において、前記調整部材本体に対して前記凹部の開口側に挿入される調整部材蓋部と、を有していてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、種類が異なる複数のゴルフクラブから構成されるゴルフクラブセットであって、前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、フェース面の後方に、着脱可能に調整部材が挿入される凹部を有しており、前記複数のゴルフクラブのうち一部のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されており、前記複数のゴルフクラブのうち、前記一部のゴルフクラブ以外のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されていないことを特徴とするゴルフクラブセットを提供する。
【0012】
また、前記複数のゴルフクラブのうち、基準番手よりも大きな番手の前記一部のゴルフクラブには前記調整部材が挿入されており、前記基準番手以下の番手の前記一部のゴルフクラブ以外のゴルフクラブには、前記調整部材が挿入されていなくてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様においては、種類が異なる複数のゴルフクラブから構成されるゴルフクラブセットであって、前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、フェース面の後方に、着脱可能に調整部材が挿入される凹部を有しており、前記複数のゴルフクラブのうち、第1ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には第1種金属により形成された第1調整部材が挿入されており、第2ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には前記第1種金属と異なる第2種金属により形成された第2調整部材が挿入されていることを特徴とするゴルフクラブセットを提供する。
【0014】
また、前記第1ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には、前記第1種金属により形成された前記第1調整部材が挿入されており、前記第1ゴルフクラブよりも番手が小さい前記第2ゴルフクラブのフェース面の後方に形成された凹部には、前記第1種金属よりも硬度が小さい前記第2種金属により形成された前記第2調整部材が挿入されていてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様においては、フェース面の後方に、着脱可能に調整部材が挿入される凹部が形成された、種類が異なる複数のゴルフクラブを準備する工程と、前記複数のゴルフクラブのうちの第1ゴルフクラブの前記凹部に、第1種金属により形成された第1調整部材を挿入する工程と、前記複数のゴルフクラブのうちの前記第1ゴルフクラブと異なる第2ゴルフクラブの前記凹部に、第1種金属と異なる第2種金属により形成された第2調整部材を挿入する工程と、を有することを特徴とするゴルフクラブセットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゴルフクラブヘッドにおいて、ユーザの好みに応じて飛距離性能及び打感を容易に変更可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係るゴルフクラブセットを構成する複数のゴルフクラブのうちの1本のゴルフクラブの構成を示す。
【
図2】第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの構成を示す。
【
図3】第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドに形成されている凹部に調整部材が挿入されている状態を示す。
【
図4】第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッドに形成されている凹部に着脱可能に挿入される調整部材の構成を示す。
【0018】
【
図5】第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの構成を示す。
【
図6】第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドに形成されている凹部に調整部材が挿入されている状態を示す。
【
図7】第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッドに形成されている凹部に着脱可能に挿入される調整部材の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
[ゴルフクラブセットの概要]
図1は、第1の実施形態に係るゴルフクラブセットを構成する複数のゴルフクラブTのうちの1本のゴルフクラブTの構成を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の構成を示す図である。
図3は、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1に形成されている凹部112に調整部材4が挿入されている状態を示す図である。
図4は、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1に形成されている凹部112に着脱可能に挿入される調整部材4の構成を示す図である。
【0020】
ゴルフクラブセットは、種類が異なる複数のゴルフクラブTから構成される。ゴルフクラブTは、ゴルフクラブヘッド1、シャフト2、及びグリップ3を有する。ゴルフクラブヘッド1は、ゴルフクラブTの下端に設けられており、ゴルフクラブTにおけるボールを当てる部位である。ゴルフクラブヘッド1の詳細は後述する。
【0021】
シャフト2は、ゴルフクラブヘッド1に接続されている棒状の部位である。グリップ3は、ゴルフクラブTの上端に設けられており、ユーザが把持する部位である。
【0022】
ゴルフクラブTは、例えばアイアンである。ゴルフクラブセットは、複数のゴルフクラブTとして、6つのゴルフクラブTから構成される。6つのゴルフクラブTは、例えば4番アイアン~9番アイアンである。ゴルフクラブセットは、6つのゴルフクラブTから構成されるが、これに限定されない。ゴルフクラブセットを構成するゴルフクラブTの数は任意である。また、ゴルフクラブセットを構成するそれぞれのゴルフクラブTの番手は任意である。
【0023】
図2に示すように、複数のゴルフクラブTのそれぞれは、フェース面111の後方に、凹部112を有している。凹部112には、着脱可能に調整部材4が挿入される。調整部材4は、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。
図4に示すように、調整部材4は、略円柱形状である。調整部材4の少なくとも一部(例えば凹部112の開口113側から所定の範囲内)には螺旋状の溝が形成されている。
【0024】
ゴルフクラブセットに含まれる複数のゴルフクラブTのうち一部のゴルフクラブTには、調整部材4が挿入されており、複数のゴルフクラブTのうち、一部のゴルフクラブT以外のゴルフクラブTには、調整部材4が挿入されていない。複数のゴルフクラブTのそれぞれには、調整部材4を着脱できる凹部112が形成されているので、ユーザは、凹部112に挿入する調整部材4を選択することにより、番手ごとに好みの飛距離性能と打感を容易に調整することができる。
【0025】
ゴルフクラブセットにおいては、複数のゴルフクラブTのうち、基準番手よりも大きな番手の一部のゴルフクラブTには調整部材4が挿入されており、基準番手以下の番手の一部のゴルフクラブT以外のゴルフクラブTには、調整部材4が挿入されていなくてもよい。ゴルフクラブセットがこのように構成されていることで、ロングアイアンは飛距離性能が大きくなり、ショートアイアンは、打感が柔らかくなる。
【0026】
複数のゴルフクラブTのうち、第1ゴルフクラブのフェース面111の後方に形成された凹部112には第1種金属により形成された第1調整部材が挿入されており、第2ゴルフクラブのフェース面111の後方に形成された凹部112には第1種金属と異なる第2種金属により形成された第2調整部材が挿入されていてもよい。
【0027】
例えば、第1ゴルフクラブのフェース面111の後方に形成された凹部112には、第1種金属により形成された第1調整部材が挿入されており、第1ゴルフクラブよりも番手が小さい第2ゴルフクラブのフェース面111の後方に形成された凹部112には、第1種金属よりも硬度が小さい第2種金属により形成された第2調整部材が挿入されている。第1種金属は、例えばチタンであり、第2種金属は、例えばステンレスである。ゴルフクラブセットがこのように構成されていることで、長い番手のクラブは飛距離性能が向上し、短い番手のクラブは打感の柔らかさが向上する。
【0028】
[ゴルフクラブヘッド1の構成]
ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体部11を有する。ヘッド本体部11は、ボールを当てる部位である。ヘッド本体部11は、例えば軟鉄により構成されている。ヘッド本体部11は、フェース面111、及び凹部112を有する。フェース面111は、ボールを打撃する面である。凹部112は、調整部材4が着脱可能に挿入される。凹部112は、ヘッド本体部11におけるフェース面111の後方に形成されている。凹部112の詳細は後述する。
【0029】
ゴルフクラブヘッド1は、このようにフェース面111の後方に、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材4が着脱可能に挿入される凹部112が形成されているヘッド本体部11を有する。よって、ゴルフクラブヘッド1においては、凹部112に調整部材4を着脱することで、飛距離性能及び打感を変更可能になる。この結果、ゴルフクラブヘッド1は、ユーザの好みの飛距離性能及び打感に合わせて容易に調整することができる。
【0030】
ところで、ゴルフクラブヘッドの反発性能は、ゴルフ競技を管理する所定の機関(例えばR&A(Royal and Ancient Golf Club of St. Andrews))が定めるルールによって規制されている。ゴルフクラブヘッドの反発性能が、上記ルールにおいて定められているCT(Characteristic Time)値の規格値を超えた場合、ルール不適合となり、当該ゴルフクラブヘッドをゴルフ競技において使用することができない。ゴルフクラブヘッド1のCT値は、調整部材4が凹部112に挿入された状態においても、調整部材4が凹部112に挿入されていない状態においても規格値以内になるように構成されている。
【0031】
調整部材4が凹部112に挿入された状態におけるゴルフクラブヘッド1のCT値は、調整部材4が凹部112に挿入されていない状態におけるゴルフクラブヘッド1のCT値よりも小さい。したがって、凹部112に調整部材4が挿入されていない状態において、ゴルフクラブヘッド1のCT値が規格値以内になっている。凹部112に調整部材4が挿入されることによりさらにCT値が小さくなってヘッド本体部11の反発性能が低減して、凹部112に調整部材4が挿入されていない場合に比べて飛距離が小さくなる一方で、打感が柔らかくなる。
【0032】
凹部112は、ゴルフクラブヘッド1のトウ側に設けられた開口113からゴルフクラブヘッド1のヒール側に向けて、ゴルフクラブヘッド1の左右方向の中央位置よりもヒール側まで延伸している。ゴルフクラブヘッド1は、このように凹部112が形成されていることで、ユーザがゴルフクラブヘッド1のヒール側とトウ側を結ぶ方向におけるどの位置でボールを打撃しても同等の打感を得ることが可能になる。
【0033】
凹部112が延伸している方向と直交する方向の凹部112の断面は円形であり、凹部112の少なくとも一部に螺旋状の溝が形成されている。ゴルフクラブヘッド1は、このように断面が円形の凹部112が形成されていることで、ユーザは、調整部材4を回転することにより容易に着脱することができる。
【0034】
[ゴルフクラブヘッド1に調整部材4を着脱した場合の試打試験]
次に、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1に調整部材4を着脱した場合の試打試験の結果を示す。試打試験においては、チタン、ステンレス、及びタングステンにより構成される3つの調整部材4を準備した。
【0035】
表1は、ゴルフクラブヘッド1に調整部材4を着脱した場合の試打試験の結果である。
【表1】
【0036】
実施例1は、調整部材4としてチタンにより構成される調整部材4が凹部112に挿入されたゴルフクラブヘッド1の試験結果である。実施例2は、調整部材4としてステンレスにより構成される調整部材4が凹部112に挿入されたゴルフクラブヘッド1の試験結果である。実施例3は、調整部材4としてタングステンにより構成される調整部材4が凹部112に挿入されたゴルフクラブヘッド1の試験結果である。実施例4は、調整部材4が凹部112に挿入されていないゴルフクラブヘッド1の試験結果である。
【0037】
実施例1から実施例4に示すように、調整部材4が凹部112に挿入されていないゴルフクラブヘッド1でボールを打撃した場合、打感は硬い。そして、凹部112に挿入されている調整部材4の硬度が大きくなるにつれて、調整部材4が凹部112に挿入されているゴルフクラブヘッド1でボールを打撃したときの打感が柔らかくなる。
【0038】
また、調整部材4が凹部112に挿入された状態におけるゴルフクラブヘッド1のCT値は、調整部材4が凹部112に挿入されていない状態におけるゴルフクラブヘッド1のCT値よりも小さい。そして、凹部112に挿入されている調整部材4の硬度が大きくなるにつれて、調整部材4が凹部112に挿入された状態におけるゴルフクラブヘッド1のCT値、及び飛距離性能は大きくなる。軟鉄により構成されるゴルフクラブヘッド1のCT値は160~180程度である。また、各実施例における調整部材4が凹部112に挿入された状態におけるゴルフクラブヘッド1及び調整部材4が凹部112に挿入されていない状態におけるゴルフクラブヘッド1の間のCT値の変化量は、5~10程度である。
【0039】
[ゴルフクラブセットの製造方法]
続いて、ゴルフクラブセットの製造方法について説明する。まず、フェース面111の後方に、着脱可能に調整部材4が挿入される凹部112が形成された、種類が異なる複数のゴルフクラブTを準備する。続いて、複数のゴルフクラブTのうちの第1ゴルフクラブの凹部112に、第1種金属により形成された第1調整部材を挿入する。最後に、複数のゴルフクラブTのうちの第1ゴルフクラブと異なる第2ゴルフクラブの凹部112に、第1種金属と異なる第2種金属により形成された第2調整部材を挿入する。以上の工程により、ゴルフクラブセットを製造することができる。
【0040】
[変形例1]
上記第1の実施形態においては、ヘッド本体部11が軟鉄により構成されている例を示したが、これに限定されない。ヘッド本体部11は、例えばチタンにより構成されていてもよい。ヘッド本体部11がチタンにより構成されていることで、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材4が凹部112に挿入されたゴルフクラブヘッド1のCT値の変化量が大きくなる。チタンにより構成されるゴルフクラブヘッド1のCT値は200~210程度である。
【0041】
[変形例2]
上記第1の実施形態においては、調整部材4は、略円柱形状であり、凹部112の内径は、開口113から奥側に向かって一定である例を示したが、これに限定されない。調整部材4の外径は、調整部材4が凹部112に挿入された状態における凹部112の奥側に向かうにつれて小さくなっており、凹部112の内径は、開口113から奥側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
【0042】
調整部材4及び凹部112がこのような形状であることで、調整部材4が凹部112に挿入された場合に、調整部材4が凹部112の開口113から奥側に向かう方向において設計した基準位置に達したところで止められるようにすることができる。
【0043】
[第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1による効果]
第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1は、ボールを打撃するフェース面111を有し、フェース面111の後方に、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材4が着脱可能に挿入される凹部112が形成されているヘッド本体部11を有する。よって、ゴルフクラブヘッド1においては、ユーザが凹部112に調整部材4を着脱することで、飛距離性能及び打感を容易に変更することができる。この結果、ユーザは、好みに合わせてゴルフクラブヘッド1の飛距離性能及び打感を調整することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1aの構成を示す図である。
図6は、第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1aに形成されている凹部112aに調整部材4aが挿入されている状態を示す図である。
図7は、第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1aに形成されている凹部112aに着脱可能に挿入される調整部材4aの構成を示す図である。
【0045】
第2の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1aは、第1の実施形態に係るゴルフクラブヘッド1と比べて、凹部112の代わりに凹部112aを有しており、凹部112aには、着脱可能に調整部材4aが挿入される点で異なる。
【0046】
ゴルフクラブヘッド1aは、ゴルフクラブヘッド1と同様に、ヘッド本体部11aを有する。ヘッド本体部11aは、ヘッド本体部11と同様に、フェース面111a、及び凹部112aを有する。凹部112aは、凹部112と同様に、調整部材4aが着脱可能に挿入される。
図5及び
図6に示すように、具体的には、凹部112aは、後述する調整部材本体41a、及び調整部材蓋部42aが着脱可能に挿入される。凹部112aにおける調整部材本体41aが挿入される範囲においては、凹部112aの内径は、凹部112aの開口113a側から奥側に向かうにつれて小さくなっている。
【0047】
凹部112aが延伸している方向と直交する方向の凹部112aの断面は円形である。凹部112aにおける調整部材本体41aが挿入される範囲の少なくとも一部、及び凹部112aにおける調整部材蓋部42aが挿入される範囲の少なくとも一部には螺旋状の溝が形成されている。
【0048】
調整部材4aは、調整部材本体41a、及び調整部材蓋部42aを有する。調整部材本体41aは、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。
図6及び
図7に示すように、調整部材本体41aの外径は、調整部材本体41aが凹部112aに挿入された状態における凹部112aの奥側に向かうにつれて小さくなっている。調整部材本体41aの少なくとも一部(例えば凹部112aの開口113a側から所定の範囲内)には螺旋状の溝が形成されている。
【0049】
また、調整部材本体41aの長手方向における外径の大きい側の端面には、凹部が形成されている。当該凹部は、例えば十字形状である。当該凹部の形状は任意である。当該凹部は、ユーザがドライバ等の工具の先端を挿入するための凹部である。ユーザは、当該凹部に工具の先端を挿入した状態で工具を回すことで、調整部材本体41aを回転させて調整部材本体41aを凹部112aの奥まで挿入することができる。
【0050】
調整部材蓋部42aは、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される。調整部材蓋部42aの少なくとも一部(例えば凹部112aの奥側から所定の範囲内)には螺旋状の溝が形成されている。
図6に示すように、調整部材蓋部42aは、調整部材本体41aが凹部112aに挿入された状態において、調整部材本体41aに対して凹部112aの開口113a側に挿入される。調整部材蓋部42aは、凹部112aにおいて調整部材本体41aに対してこのような位置に挿入されることで、凹部112aに挿入された調整部材本体41aを保護することができる。
【0051】
また、調整部材蓋部42aの調整部材蓋部42aが凹部112aに挿入された状態における凹部112aの開口113a側の端面には、調整部材本体41aと同様に、凹部が形成されている。当該凹部は、例えば十字形状である。当該凹部の形状は任意である。当該凹部は、調整部材本体41aに形成されている凹部と同様に、ユーザがドライバ等の工具の先端を挿入するための凹部である。
【0052】
ゴルフクラブヘッド1aは、このようにチタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、及びモリブデンのうちの少なくとも一つにより構成される調整部材本体41a及び調整部材蓋部42aが着脱可能に挿入される凹部112aが形成されているヘッド本体部11aを有する。
【0053】
よって、ゴルフクラブヘッド1aにおいては、ユーザが調整部材本体41a、及び調整部材蓋部42aの組み合わせを変更することができる。具体的には、ゴルフクラブヘッド1aにおいては、ユーザは、例えば、それぞれチタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ステンレス、タングステン、カーボン、又はモリブデンにより構成される複数の調整部材本体41a及び複数の調整部材蓋部42aのうちから、1つの調整部材本体41a及び1つの調整部材蓋部42aを選択して調整部材4aとして組み合わせることができる。
【0054】
よって、ゴルフクラブヘッド1aにおいては、ユーザが凹部112aに調整部材本体41a及び調整部材蓋部42aをそれぞれ着脱することで、飛距離性能及び打感の調整の自由度を向上させることができる。この結果、ユーザは、好みに合わせてゴルフクラブヘッド1aの飛距離性能及び打感をさらに細かく調整することができる。
【0055】
なお、
図6においては、調整部材本体41aと調整部材蓋部42aとが接している状態を示しているが、調整部材本体41aと調整部材蓋部42aとの間に空間がある状態で調整部材本体41aが固定されていてもよい。また、凹部112aに挿入される調整部材本体41aは、長さが異なる複数の調整部材本体41aから選択可能であってもよい。長さが異なる複数の調整部材本体41aは、先端側の形状が同一であり、凹部112aの所定の位置まで先端が挿入された状態で固定される。このように、長さが異なる複数の調整部材本体41aから凹部112aに挿入される調整部材本体41aが選択可能であることにより、ユーザは、好みに合わせてゴルフクラブヘッド1aの重量も細かく調整することができる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0057】
T・・・ゴルフクラブ
1、1a・・・ゴルフクラブヘッド
11、11a・・・ヘッド本体部
111、111a・・・フェース面
112、112a・・・凹部
113、113a・・・開口
2・・・シャフト
3・・・グリップ
4、4a・・・調整部材
41a・・・調整部材本体
42a・・・調整部材蓋部