(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】可動式足場の設置構造
(51)【国際特許分類】
E04G 3/34 20060101AFI20240327BHJP
E04D 15/00 20060101ALI20240327BHJP
E04G 3/22 20060101ALI20240327BHJP
E04G 3/28 20060101ALI20240327BHJP
E04G 23/03 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04G3/34
E04D15/00 V
E04G3/22 A
E04G3/28 302B
E04G23/03
(21)【出願番号】P 2020122659
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000253400
【氏名又は名称】舩木商事有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-129442(JP,U)
【文献】特開平03-183868(JP,A)
【文献】特開平09-119204(JP,A)
【文献】特開平09-072058(JP,A)
【文献】特開平06-322971(JP,A)
【文献】実開昭59-012358(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312481(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0079134(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 3/34
E04D 15/00
E04G 23/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の軒先に沿って位置を変更できる可動式足場の設置構造であって、
基端が建築物に取り付けられる二つ以上の安全帯と、
前記安全帯に固定される起立部、屋根面に沿う斜辺部、及び両者を連結する繋ぎ部を備える二つ以上の支持体と、
前記支持体に対して架設状に設置される軌道体と、
前記軌道体内に先端が位置される支持腕、該支持腕から鉛直方向に延びる脚部、該脚部に一体的に設けられる作業体を備える作業基体と、からなることを特徴とする可動式足場の設置構造。
【請求項2】
前記支持体は、前記起立部と前記斜辺部と前記繋ぎ部とが角度調整可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の可動式足場の設置構造。
【請求項3】
前記軌道体は、前記作業基体の移動を制限するストッパ機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動式足場の設置構造。
【請求項4】
前記作業基体の前記支持腕は、少なくとも二つ以上であって、少なくともそのうちの一つは前記軌道体と連動して移動手段を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の可動式足場の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う建築物との距離が狭くても安価に設置が容易であって、その利用に際しても作業者が落下等の問題を生ずることがなく建築物の軒樋や外壁、或いは付属物等の改修、補修、メンテナンスを行うことができる可動式足場の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の異常気象に常に晒されている既設建築物は、軒樋を含む屋根周りの破損や老朽化に伴い、新たな高性能の軒樋を施工する必要性が生じている。このような一例を含め、住宅などの既設建築物の屋根や外壁、軒樋等の屋根周りの改修や補修、或いはメンテナンス等に際しては、各種の作業を行う施工に先立って、建築物の周囲、近隣の住宅との境に各種の作業を行うための足場を施工することが一般的に行われている。
即ち実際の建築物の改修は、建築物の周囲に足場を設置する作業が第一に必要であり、この足場設置が、時間や費用、及びその他の無視できない或いは調整が困難な問題となっている。
【0003】
前記足場設置は、改修や補修等を行う業者とは異なる業者が行うため、改修や補修等の作業日程は、足場設置の作業日程を待って決定する必要があった。
また、前記足場設置は、建築物(改修部分)の高さ及び幅長さに応じたパーツ部材(資材)を現場付近に持ち込み、これらの資材を組み立てて施工領域を覆うように足場を設置するものであるから、前記資材自体は繰り返し使用できるものであっても、足場を設置する費用は安価ではなかった。即ち膨大量の前記資材を仮置きする場所や足場を設置する場所を確保する必要があるが、それらの場所を確保することが困難であることも多かった。さらに、特に隣り合う住宅との境界が狭小である場合には、隣り合う住宅の庭の設備や樹木類を破損しないような手当も必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように従来の足場設置は、改修部分の高さ及び幅長さに応じたパーツ部材を現場付近に持ち込み、これらを組み立てて施工領域を覆うように足場を設置するものであるため、時間や費用など調整困難な問題を抱えるものであった。
【0005】
そこで、本発明は、隣り合う建築物との距離が狭くても安価に設置が容易であって、その利用に際しても作業者が落下等の問題を生ずることがなく建築物の軒樋や外壁、或いは付属物等の改修、補修、メンテナンスを行うことができる可動式足場の設置構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、屋根の軒先に沿って位置を変更できる可動式足場の設置構造であって、基端が建築物に取り付けられる二つ以上の安全帯と、前記安全帯に固定される起立部、屋根面に沿う斜辺部、及び両者を連結する繋ぎ部を備える二つ以上の支持体と、前記支持体に対して架設状に設置される軌道体と、前記軌道体内に先端が位置される支持腕、該支持腕から鉛直方向に延びる脚部、該脚部に一体的に設けられる作業体を備える作業基体と、からなることを特徴とする可動式足場の設置構造に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記設置構造において、前記支持体は、前記起立部と前記斜辺部と前記繋ぎ部とが角度調整可能に連結されていることを特徴とする可動式足場の設置構造をも提案する。
【0008】
さらに、本発明は、前記設置構造において、前記軌道体は、前記作業基体の移動を制限するストッパ機能を備えていることを特徴とする可動式足場の設置構造をも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記設置構造において、前記作業基体の前記支持腕は、少なくとも二つ以上であって、少なくともそのうちの一つは前記軌道体と連動して移動手段を有することを特徴とする可動式足場の設置構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可動式足場の設置構造は、隣り合う建築物との距離が狭くても安価に設置が容易であって、その利用に際しても落下等の問題を生ずることがなく、屋根の軒先に沿ってスライド状に作業基体に乗る作業者が、施工作業の進行に伴ってその作業位置を変更することができる。
そのため、従来の施工や費用に関する各種の問題を生ずることなく、極めて容易に且つ安価に、建築物の軒樋や外壁、或いは付属物の改修や補修、メンテナンス等に適用することができる。
【0011】
前記支持体が、起立部と斜辺部と繋ぎ部とが角度調整可能に連結されている場合には、各種の屋根勾配に安定に適用することができる。
【0012】
前記軌道体が、作業基体の移動を制限するストッパ機能を備えている場合には、作業基体を停止させた状態で安全に各種の施工作業を行うことができるし、作業基体が軌道体から脱落する等の事故も防止できる。
【0013】
前記作業基体の支持腕が、少なくとも二つ以上であって、少なくともそのうちの一つは前記軌道体と連動して移動手段を有する場合には、停止状態でも安定に支持され、スライド状の移動状態でも安定に支持され、且つ円滑に移動されるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例の可動式足場の設置構造を示す斜視図である。
【
図2】(a)第1実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図、(b)それと異なる態様の可動式足場の設置構造を示す側断面図、(c)~(h)支持基体のバリエーションを示す斜視図である。
【
図3】(a)第2実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図、(b)それに用いた作業基体を示す正面図及び側面図、(c)第3実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図である。
【
図4】(a)転倒防止機能を備える保持具を示す斜視図、正面図、側面図、(b),(c)起立部の下端に転倒防止機能を付設した仕様を示す斜視図、正面図、側面図、(d)転倒防止機能を備える保持具を示す斜視図、正面図、側面図である。
【
図5】(a)起立部に設けた複数の取付孔に直接的にレール材を固定する仕様を示す側面図、(b),(c)起立部に設けた複数の取付孔にレール材を保持する保持具を取り付ける仕様を示す側面図である。
【
図6】(a)第4実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図、(b)それに用いた作業基体及び軌道体の一部(副軌道体)を示す斜視図、(c)副軌道体を拡大して示す斜視図、正面図及び側面図、(d)第5実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図、(e)第6実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図である。
【
図7】(a)~(d)軌道体に設ける移動制御のバリエーションを示す斜視図、側面図、正面図、(e)第7実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図である。
【
図8】第8実施例の可動式足場の設置構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の可動式足場の設置構造は、屋根の軒先に沿って位置を変更できる可動式足場の設置構造であって、基端が建築物に取り付けられる二つ以上の安全帯と、前記安全帯に固定される起立部、屋根面に沿う斜辺部、及び両者を連結する繋ぎ部を備える二つ以上の支持体と、前記支持体に対して架設状に設置される軌道体と、前記軌道体内に先端が位置される支持腕、該支持腕から鉛直方向に延びる脚部、該脚部に一体的に設けられる作業体を備える作業基体と、からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の可動式足場の設置構造を構成する前記安全帯、前記支持体、前記軌道体、前記作業基体を、以下にその順で説明する。
【0017】
前記安全帯は、前述のように基端が建築物に取り付けられる略線状の材料であって、基端を取り付ける建築物の部位を特定するものではない。例えば後述する図示実施例に示すように施工対象の反対側の軒先でもよいし、棟頂部でもよいし、その併用でもよいが、これらに限定されるものではなく、安全を確保できる強度があれば公知の安全綱(ロープ、ベルト)の取付でもよい。また、寄棟の場合、他の三辺に取り付けるものでもよい。
なお、その取付手段(方法)についても、係合等のどのようなものでもよいし、その材料についても、支持体を含むその他の部材を支持できる強度を有するものであれば、帯状鋼材でも線状鋼材でも、ナイロン等の合成繊維からなる綱、ロープ、帯等のその他の材料でもよい。
【0018】
前記支持体は、前述のように前記安全帯に固定される起立部、屋根面に沿う斜辺部、及び両者を連結する繋ぎ部を少なくとも備える材料であって、各部にて形成される三角形状を含むものである。各部(各辺)は、角材(角パイプ)、L字状、コ字状、フラット状などのアングル材等を用いることができる。これらの各辺は、後述する図示実施例に示すように起立部は略垂直状、繋ぎ部は略水平状に配されることが望ましいが、特にそれに限定するものではない。
なお、前記起立部は、前記安全帯に固定されるが、その固定箇所は、上端に限定されるものではなく、適宜位置に固定されていればよい。
また、前記繋ぎ部は、屋根勾配や支持体として所要の強度を得るために、傾斜状、水平状に配置したり、複数の繋ぎ部(材)を設けてもよい
【0019】
前記支持体を形成する各辺は、角度調整可能に連結されていることで、各種の屋根勾配に安定に適用することができる。この構成としては、公知のどのような構成を採用しても良く、例えば後述する図示実施例のように起立部に複数の取付孔を設けておき、適宜角度に調整しつつ繋ぎ部を任意の取付孔に固定するようにしてもよい。
【0020】
なお、これらの安全帯及び支持体は、この可動式足場では、建築物(屋根面)の大きさ等に応じてそれぞれ二つ以上設けられるが、それぞれ簡易な構成であるため、費用や重量(荷重)が嵩むことはない。
【0021】
前記軌道体は、前述のように前記支持体に対して架設状に設置される部材であって、二つ以上の支持体に直交状に跨るように架設される。即ち前記支持体に対し、直交するように且つ水平状に配設されるように、スライド状の可動が確保されるように設置される。このスライド状の可動は、支持基体を吊り支持させた状態で行われるので、原則的には前記支持体の起立部に移動手段としての軌道体を少なくとも一本設けるが、可動を円滑に行うために規制手段としての更なる(副)軌道体を設けるようにしてもよい。即ち移動手段としての軌道体は必須であって、規制手段としての軌道体のみではスライド状の可動を行えない。
例えば断面がU字状、角U字状等の連続するレール材を形成する場合には、該レール材を前記支持体に取り付けるようにすればよい。この取付構造は、レール材を締着具等にて直接固定するものでも、保持具を支持体に固定して該保持具にレール材を保持させるものでもよい。なお、このレール材は、二本以上であることが望ましく、その場合、複数のレール材が当該軌道体となる。その際、少なくとも一本のレール材は、前記支持体の起立部に固定されるが、二本以上を取り付ける場合には、起立部のみに限定されず、起立部と繋ぎ部に固定されるようにしてもよい。
【0022】
この軌道体には、作業基体の動きを制限(制止)するストッパ(機能)を備えて(設けて)いてもよい。このストッパは、作業基体に移動範囲を制限するものと、軌道体からの脱落を防止するものとが想定される。このストッパは、特にその構成を具体的に限定するものではないが、例えば後述する図示実施例のように軌道体の端部や中間の任意箇所に孔やスリット等を設け、棒材や板材を挿着するものでもよい。
【0023】
前記作業基体は、前述のように前記軌道体内に先端が位置される支持腕、該支持腕から鉛直方向に延びる脚部、該脚部に一体的に設けられる作業体を備える。これらの各部位は、主に丸、角等のパイプ材、型材からなり、軽量かつ強度を得られるものであればその材質等を問うものではなく、支持腕、脚部、作業体の各部位が単一部材でも、各部位が複数の部材からなるものでもよい。また、複数部材からなる場合、その組付け手段は、締着、溶接等の公知の方法であればよい。
前記支持腕は、前記軌道体と同様に二つ以上設けることが安定の観点から望ましく、前記軌道体内に位置させる先端には、ローラ等が設けられるが、その数や具体的構成を限定するものではない。なお、このローラ等は、前記軌道体内を移動するための移動手段であるが、当該作業基体の倒れ等を防ぐ規制手段を兼ねるものでもよい。
前記脚部は、前記支持腕から縦方向に延在する部位であり、前記作業体は、該脚部に一体的に設けられて各種の施工作業を行う作業者が位置する部位であり、後述する図示実施例のように落下等を防止しつつ作業を行うことができる安全枠等が設けられていることが望ましい。また、この脚部(下方)には、外壁側に延在する規制部(脚部が内輪に傾くのを防ぐために壁面に接触する部位)を設けてもよく、該規制部の先端にローラがあるとよりよい。
【0024】
なお、前記支持腕は、前記軌道体内に配置される先端からの距離を確保する部位であって、前記脚部から直線状に延在するものでも湾曲状に延在するものでもよい。例えば軒先に軒樋等の部材を取り付ける作業等においては、軒先に近過ぎると作業が困難となってしまうので、この支持腕にて作業スペースを確保することができる。
また、この作業基体の前記支持腕は、前述のように二つ以上が望ましいが、少なくともそのうちの一つは前記軌道体と連動して移動手段を有することが望ましい。この場合には、停止状態でも安定に支持され、スライド状の移動状態でも安定に支持され、且つ円滑に移動されるものとなる。
【0025】
これらの安全帯、支持体、軌道体、作業基体からなる可動式足場の設置構造は、各部材の何れもが軽量の部材にて構成されることが望ましく、作業基体内に位置して作業を行う作業者を、前記安全帯及び前記支持体にて吊り支持している状態で軒先に沿うようにスライド状に位置を変更しながら作業を行うことができる。
【0026】
そのため、作業者は、建築物の軒樋や外壁、或いは付属物の改修や補修、メンテナンス等に際し、落下等の問題を生ずることがなく、屋根の軒先に沿ってスライド状に作業位置を変更することができる。したがって、改修や補修等を行う業者が、各種の施工作業を行うに先立って、容易にこの可動式足場の設置構造を利用することができ、総じて時間及び費用の調整が極めて容易に行えるものである。
【実施例1】
【0027】
図1に示す本発明の第1実施例の可動式足場の設置構造は、基端11が建築物Aに取り付けられる二つ以上の安全帯1と、前記安全帯1に固定される起立部21、屋根面Bに沿う斜辺部22、及び両者21,22を連結する繋ぎ部23を備える二つ以上の支持体2と、前記支持体2に対して架設状に設置される軌道体3と、前記軌道体3内に先端411が位置される支持腕41、該支持腕41から鉛直方向に延びる脚部42、該脚部42に一体的に設けられる作業体43を備える作業基体4と、からなり、屋根Bの軒先に沿って位置を変更できる。
【0028】
前記安全帯1は、基端11が建築物に取り付けられる略線状の材料であって、図示実施例では屋根面Bの棟のように示されているが、施工対象の反対側の軒先でもよい。なお、その材質についても、ロープでもよい。
【0029】
前記支持体2は、前記起立部21、前記斜辺部22、前記繋ぎ部23が、それぞれコ字状のアングル材であって、当該第1実施例では、起立部21が略垂直状に、繋ぎ部23が略水平状に配されるように調整されている。
即ち起立部21に複数の取付孔が形成されており、繋ぎ部23が略水平状に配されるような取付孔に連結されている。
【0030】
これらの安全帯1及び支持体2は、この第1実施例では、それぞれ三つ設けられているが、それぞれ簡易な構成であるため、費用や重量(荷重)が嵩むことはない。
【0031】
前記軌道体3(レール材3A)は、前記支持体2に対して架設状に設置される部材であって、三つの支持体2に直交状に跨るように架設されている。
この第1実施例では、前記支持体2の起立部21の取付孔に、上下二箇所に断面J字状の保持具3bが取り付けられ、隣り合う起立部21,21に固定した上下二箇所の保持具3b,3bにそれぞれ架け渡すように断面角U字状のレール材3A,3Aがそれぞれ水平状に配設されるように設置されている。したがって、スライド状の可動が確保される。
【0032】
前記作業基体4は、前記支持腕41、前記脚部42、前記作業体43が、それぞれ中空の角パイプ材の成形体であって、当該第1実施例では、支持腕41が略水平状に延在して垂下する逆L字状に配設されている。なお、この第1実施例では、この作業基体4は、梯子体を成形させた形状、即ち横幅を有する二重の成形体であって、前記支持腕41も前記脚部42も前記作業体43もそれぞれ梯子状の成形部位を指している。例えば支持腕41は、前述のように逆L字状に成形されているが、梯子体(横幅を備える二重状体)が逆L字状に成形された形状であり、脚部42は、縦方向に延在するまさに梯子状である。
【0033】
前記支持腕41は、前記レール材3Aと同様に上下に二つ設けられ、前記レール材3A内に位置させる先端411には、回転可能にローラが枢着されている。なお、この支持腕41は、前述のように梯子体を逆L字状に成形したものであるから、一つの支持腕41には、下方へ向かう脚状端が二つ形成され、該脚状端にはそれぞれローラが枢着されているため、二つの支持腕41には、合計四つのローラが取り付けられている。このローラは、前記レール材3A内を移動する際に回転する移動手段であることは説明するまでもない。
【0034】
前記脚部42は、前記支持腕41から縦方向に延在する縦杆状であって、前記作業体43は、該脚部42を含んで梯子状に形成されて各種の施工作業を行う作業者が位置する部位であり、作業者が立つ底板431が下端に、落下等を防止しつつ作業を行うことができるコ字状の安全枠432が高さの中程に上下二箇所に設けられている。
【0035】
これら安全帯1、支持体2、軌道体3、作業基体4からなる可動式足場の設置構造は、各部材1~4の何れもが軽量の部材にて構成され、作業基体4内に位置して作業を行う作業者を、前記安全帯1及び前記支持体2にて吊り支持している状態で軒先に沿うようにスライド状に位置を変更しながら作業を行うことができる。
なお、作業者が行う作業自体は説明しないが、建築物の軒樋や外壁、或いは付属物の改修や補修、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【0036】
図2(a),(b)に示す可動式足場の設置構造は、同図(a)が前記第1実施例とほぼ同様に軌道体3(レール材3A)が起立部21に二箇所に設けられる態様であって、同図(b)は軌道体3'(レール材3A,3C)が起立部21と繋ぎ部23にそれぞれ設けられる態様である。
同図(c)~(h)は、作業基体4のバリエーションであって、同図(c),(d)に記載の作業基体4c,4dは、同図(a)の態様に用いられ、同図(e)~(h)に記載の作業基体4e~4hは、同図(b)の態様に用いられるものである。
なお、同図(b)に用いられる作業基体4'については、後述する作業基体4eとほぼ同様であるからここでの説明は省略する。
【0037】
図2(c),(d)に示される作業基体4c,4dは、前記第1実施例の作業基体4とほぼ同様であって、二つの支持腕41の下端には対向状に保持板5aが設けられ、該保持板5aにローラ5bが枢着されている。なお、前記
図1では、支持腕41の先端を、符号411で示していたが、当該
図2では、より具体的に保持板5aとローラ5bとして示した。
そのため、前記作業基体4と同様に同図(a)の態様に用いられる作業基体4c,4dには、ローラ5bが合計四つ取り付けられている。なお、作業基体4dは、二つの支持腕41,41間に補強杆45,45を連結してこれらの支持腕41,41の強度を向上させている。
【0038】
図2(e)~(h)に示される作業基体4e~4hは、同図(b)の態様に用いられる作業基体4'と同様に支持腕41は一つだけ存在して、その下端には、前記軌道体3'内を移動する移動手段として二つのローラ5bが設けられているが、脚部42の上端には、作業基体4'の倒れ等を防ぐ規制手段として合計2つずつのローラ5cが枢着されている。
即ち移動手段としてのローラ5bの作用は、前記第1実施例などと同様に、作業者や作業基体4'を吊り支持しつつ円滑に移動させることであるが、規制手段としてのローラ5cは、支持体2の繋ぎ部23'に固定されたレール材3C内を移動することで、作業基体4'の倒れ等を防止することで前記移動を円滑に行うものである。
なお、同図(f)に示される作業基体4fのように安全枠432'は、建物側に設けてもよいし、同図(g)に示される作業基体4gは、脚部42,42間の上端に補強杆46を連結してこれらの脚部42,42の強度を向上させるようにしてもよく、同図(h)に示される作業基体4hのように作業腕41に三つのローラ5bを枢着してもよい。
【0039】
図3(a)に示される第2実施例は、軌道体3(二本のレール材3A)が支持体2IIの起立部21iiでなく繋ぎ部23ii及び斜辺部22iiに直接的に取り付けられており、作業基体4IIの二つの作業腕41iiがそれぞれ逆J字状に形成されている点が、前記第1実施例と異なるが、それ以外の構成はほぼ同様であるため、図面に同一符号を付して説明を省略する。
なお、同図(a)は、作業基体4IIを軌道体3へ取り付ける直前の状態を示しており、作業者が一名又は二名にて容易に配設することができる。
【0040】
この第2実施例では、支持体2IIが、略鉛直状の起立部21ii、屋根面Bに沿う斜辺部22ii、略水平状の繋ぎ部23iiを備える点では前記第1実施例と同様であるが、繋ぎ部23iiが起立部21iiより軒側へ延在しており、該繋ぎ部23ii及び斜辺部22iiの上面側にそれぞれレール材3Aが直接的に固定されている。
【0041】
図3(b)に示される作業基体4IIは、前述のように二つの作業腕41iiがそれぞれ逆J字状に形成され、前記レール材3A内に位置させる先端には、回転可能にローラ5bが枢着されている。それ以外の構成はほぼ同様であるため、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
図3(c)に示される第3実施例は、安全帯1IIIの基端11iiiが施工対象の反対側の軒先に係合状に取り付けられている点が、前記第2実施例と異なるが、それ以外の構成はほぼ同様であるため、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図4(a),(d)は、レール材3Aを保持する保持具3dに転倒防止機能を付設した仕様を示し、
図4(b),(c)は起立部21の下端に転倒防止機能を付設した仕様を示すものである。なお、前記転倒防止機能とは、支持体2(斜辺部22の横幅)より幅広な部材を接地部(底面)として設けていることを指す。
図4(a)に示す保持具3dは、前記保持具3bと同様にレール材3Aが挿着される凹状部を有する断面J字状であるが、その下面が建築物側へ延在して起立部21の下端を受ける底面部31を兼ねている。即ちこの保持具3dは、下面(底面部)を一定長さとし、起立部21の下方に取り付けることで、近接状態となり転倒防止として働くものである。なお、常時接触しているか否かは限定するものではない。また、転倒防止片211は、この保持具3dと支持体2(起立部21)を連結するための部材である。
図4(b)に示す転倒防止機能は、起立部21に独立して設けられるものであり、略水平状に延在する長方形状の底面部212と該底面部212から起立部21へ連絡される傾斜片状の転倒防止片211,211とからなる。即ちこの転倒防止機能は、屋根の勾配に交わる方向に横長な帯板状のプレート212を起立部21の下端に取り付けたものであって、その取付方法は特に問うものではなく、斜辺部22の裏面に設けてもよく、また、1つの支持体2に長手方に向所定間隔で複数のプレート212を設けてもよい。
一方、
図4(c)には、底面部213が正方形状に形成されるため、転倒防止片211は設けられていないが、この底面部213には、起立部21の下端が挿着される挿着凹部が備えられ、前記挿着凹部に挿着した起立部21には斜辺部22の先端を固定することができる。即ちこの転倒防止機能は、底面部213を横長ではなく矩形としたもので、取付箇所や方法等は、前記
図4(b)と同様である。
図4(d)に示す保持具3d'は、前記保持具3dと基本構成は同様であるが、底面部31'が、屋根勾配に交わる方向ばかりでなく軒先へ向かう方向にも幅広に形成されていることで、転倒防止作用が高められている。
これらの
図4(b),(c)のように起立部21の下端や斜辺部22の裏面等の支持体2に、幅広な接地部(底面部)212,213を設けて転倒防止を図るようにしてもよいし、
図4(a),(d)のように保持具3d,3d'の底面部31,31'を幅広に設けて転倒防止を図るようにしてもよい。また、保持具3d'の幅広の底面部31'には、レール材3Aを載置する凹状部分の外側(前面側)を、軒樋等の資材置きとしても利用することができる。
【0044】
図5(a)~(c)は、支持体に対する軌道体の取付態様を示すものであって、同図(a)は起立部21に設けた複数の取付孔に直接的にレール材3A"を固定する仕様を示しており、同図(b),(c)は起立部21に設けた複数の取付孔にレール材3Aを保持する保持具3e,3fを取り付ける仕様を示している。
前記レール材3A"は、起立部21の下端を受ける横片部を備える点が前記レール材3A,3A'と異なる。また、前記保持具3eは、起立部21の前方側から嵌め付けるように取り付けることができる対向状の取付部301を上下二箇所に備え、該取付部301をボルトナット302にて起立部21に固定する。更に、前記保持具3fは、起立部21の前方側から沿わせた状態でビス303にて固定するものである。
【0045】
図6(a)に示す第4実施例は、移動手段としての軌道体3と、規制手段としての副軌道体6とをそれぞれ備えている。なお、当該
図6以外では、この副軌道体を軌道体の一部と説明していたので、その際の構成と同一でも、当該
図6では異なる符号を付して説明する。
この第4実施例における前記副軌道体6は、同図(c)に示すように下方が開放する逆U字状材6Aと、その内面に所定間隔で対向状に設けられる複数の筒体6bとからなり、該軌道体6には、脚部42ivの上端が挿着状に配置された際に、その長さ方向に円滑に移動させる作業を果たす。
この第4実施例における作業基体4IVは、同図(b)に示すように前記副軌道体6が支持体2の起立部21に取り付けられた取付杆44に下向きに固定され、移動手段としてのローラ5bを備える支持腕41ivよりも高く脚部42ivが延在しており、該脚部42ivの上端には特に加工が施されてはいない。
【0046】
この第4実施例における前記副軌道体6は、脚部42ivの上端が、前後面に対向状に設けられた多数の筒体6b間を移動するので、各筒体6bはそれぞれの場で自転することにより、脚部42ivの上端と圧接並びに摩擦することがなくその長さ方向に円滑に移動させることができる。
そのため、この第4実施例では、作業基体4IVを、屋根の軒先に沿って円滑にスライド状に可動させることができる。
【0047】
図6(d)に示す第5実施例は、副軌道体が、取付杆44に下向きに固定された下方が開放する逆U字状のレール材6dと、脚部42vの上端に取り付けられたローラ6cとからなり、前記ローラ6cは、前記レール材6d内を縦方向に回転しながら、脚部42vをスライド状に可動させることができる。
図6(e)に示す第6実施例は、副軌道体が、取付杆44に下向きに固定された下方が開放する逆U字状のレール材6fと、脚部42vの上端に取り付けられたローラ6eとからなり、前記ローラ6eは、前記レール材6f内を横方向(水平方向)に回転しながら、脚部42viをスライド状に可動させることができる。
【0048】
これらの第5,第6実施例でも、脚部42v,42viの上端(ローラ6c,6e)が、レール材6d,6f内を移動するので、脚部42v,42viの上端と圧接並びに摩擦することがなく円滑に移動させることができる。
そのため、これらの第5,第6実施例でも、前記第4実施例と同様に、作業基体4V,4VIを、屋根の軒先に沿って円滑にスライド状に可動させることができる。
【0049】
図7(a)~(c)は、各軌道体(それぞれ上方が開放するU字状のレール材7A~7C)に設ける移動制御のバリエーションを示すものである。
まず、
図7(a)に示すレール材7Aは、両側面に長さ方向に沿って所定間隔で取付用の通孔71が設けられ、該通孔71に停止杆72を挿着してローラ5bの進行を止めるストッパとしている構成である。
次に、
図7(b)に示すレール材7Bは、両側面に上端から切り欠いた取付溝73が設けられ、該取付溝73に前端及び後端を折り下げた停止蓋74を上方から冠着してローラ5bのストッパとしている。
また、
図7(c)に示すレール材7Cは、片側の側面に上端から切り欠いた取付溝75が設けられ、該取付空部75に立て掛け状に停止棒76を配置させてローラ5bのストッパとしている。
【0050】
図7(d)に示すレール材7Dも、片側の側面に上端から切り欠いた取付溝75'が設けられているが、当該取付溝75'は幅狭のスリット状であり、該取付溝75'に折り畳み式の係止バー77を配置させてローラ5bの進行を止めるストッパとした構成である。
そして、
図7(e)はそれを用いた第7実施例の可動式足場の設置構造であって、起立部21の上方に位置するレール材3Aは、前記
図5(a)に示した保持具3eにて保持され、起立部21の下方に位置するレール材7Dに、前記取付溝75'が設けられ、係止バー77がストッパとして用いられる構成である。
そのため、この第7実施例では、作業基体4VIIは、二本のレール材3A,7Dに安定に吊り支持されてスライド状に可動でき、適宜位置にて停止させることができる。
【0051】
図8に示す第8実施例は、支持体2VIIIが、起立部21、斜辺部22、及び繋ぎ部23viiiからなり、軌道体3VIIIが、前記起立部21に取り付けられるレール材3A,3C"からなり、支持基体4VIIIが、ローラ5b,5bを有する支持腕41viiiと脚部42と作業体43とからなる。なお、前記実施例と同様の構成については、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
前記支持体2VIIIは、起立部21を縦長に形成しているので、斜辺部22と連結させる繋ぎ部23は軒先側を高く傾斜状に取り付けている。
前記軌道体3VIIIは、前記支持体2VIIIの起立部21の下端に、移動手段用のレール材3Aを上方が開放するように固定され、前記支持体2VIIIの起立部21の上方に、規制手段用のレール材3C"を下方が開放するように固定されている。
前記作業基体4VIIIは、前記起立部21と略平行状に配設される垂直部とそれと直交する水平部とそれらの先端を繋ぐ傾斜部とからなる支持腕41viiiが三角形状に組み合わされて形成され、前記水平部の基端の下面側に移動手段用のローラ5bが縦方向に回転可能に取り付けられ、前記垂直部の上端に規制手段用のローラ5cが水平方向に回転可能に取り付けられている。
【0053】
この第8実施例では、支持体2VIIIの安定性が高く、作業基体4VIIIも軌道体3VIIIにてより安定に移動可能に支持されているので、該作業基体4VIIIに乗る作業者が、施工作業の進行に伴ってその作業位置を変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 安全帯
11 基端
2 支持体
21 起立部
22 斜辺部
23 繋ぎ部
3,3' 軌道体
3A,3C レール材
3b 保持具
4 作業基体
41 支持腕
42 脚部
43 作業体
5b ローラ
A 建築物
B 屋根(面)