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特許7461040輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置
(51)【国際特許分類】
   B21H 1/06 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B21H1/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020136387
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032527
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591232484
【氏名又は名称】共栄精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】門谷 佳樹
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4869088(US,A)
【文献】特公昭46-20580(JP,B1)
【文献】特開平1-233033(JP,A)
【文献】特開昭58-13426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ローラと、該成形ローラに対向配置されるマンドレルと、該マンドレルの背面側に対接されたサポートローラと、を備えた輪体成形装置であって、
上記成形ローラの主軸に遊嵌される装着部と、
上記装着部に取付けられ、一端が上記主軸に対して、上記成形ローラと上記マンドレルとの間で成形されるワークの下部に延設されたバックアップローラ支持アームと、
上記バックアップローラ支持アームの上記一端に設けられ、上記ワークの外周面に転接するバックアップローラと、
上記バックアップローラの配設位置に対して上記主軸を隔てた反対側において、上記装着部またはバックアップローラ支持アームに取付けられるウエートと、を備えた
輪体成形装置。
【請求項2】
上記装着部またはバックアップローラ支持アームには、重量を異にする複数のウエートが択一的に取付けられる
請求項1に記載の輪体成形装置。
【請求項3】
上記装着部の少なくとも内径部は、上記成形ローラの主軸に遊嵌される円環形状に形成され、
上記装着部の内径部と上記主軸の外径部との間にはベアリングが介設された
請求項1または2に記載の輪体成形装置。
【請求項4】
成形ローラの主軸に遊嵌される装着部と、
上記装着部に取付けられ、一端が圧延加工されるワークの下部位置に延設されるバックアップローラ支持アームと、
該バックアップローラ支持アームの一端に設けられたバックアップローラと、
上記バックアップローラの配設位置に対して上記装着部の中心位置を隔てた反対側において、上記装着部またはバックアップローラ支持アームに取付けられるウエートと、を備えた
バックアップローラ支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベアリングのインナレース、アウタレース、ピロー等の輪体あるいはケージ、スリーブ等の輪体を所定形状に冷間圧延加工して成形する輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輪体成形装置としては、成形ローラと、この成形ローラに対向配置されるマンドレルと、このマンドレルの背面側に対設されたサポートローラと、を備え、上述の成形ローラとマンドレルとの間でワークを成形するものがある。
【0003】
この従来装置においては、冷間圧延によるワークの成形中に、当該ワークが振動し、ワークの成形精度が低下するので、成形後においてサイジング処理が別途必要になるという問題点があった。
このような問題点を解決するために、特許文献1に開示された輪体成形装置が既に発明されている。
【0004】
この特許文献1に開示された従来装置は、成形中のワークの外周面に所定圧力で転接する一対のバックアップローラを設けたものであり、この構成により、成形中のワークの振動を低減させると共に、ワークの成形精度向上を図って、成形後におけるサイジング処理を不要とすることができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来装置の上記一対のバックアップローラは、それぞれクランプアームおよび連結杆を介して油圧シリンダのピストンロッドに連結されている関係上、油圧シリンダの圧力調整(つまり、ワークに対するバックアップローラの転接圧力の調整)が必要なうえ、装置が大掛かりであり、構造が複雑で、かつ装置コストが高いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2825792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、成形中のワークの振動を低減し、ワークの真円度の向上を図ると共に、ワークの成形精度を安定化させつつ、油圧シリンダを用いない簡易な構成の輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による輪体成形装置は、成形ローラと、該成形ローラに対向配置されるマンドレルと、該マンドレルの背面側に対接されたサポートローラと、を備えた輪体成形装置であって、上記成形ローラの主軸に遊嵌される装着部と、上記装着部に取付けられ、一端が上記主軸に対して、上記成形ローラと上記マンドレルとの間で成形されるワークの下部に延設されたバックアップローラ支持アームと、上記バックアップローラ支持アームの上記一端に設けられ、上記ワークの外周面に転接するバックアップローラと、上記バックアップローラの配設位置に対して上記主軸を隔てた反対側において、上記装着部またはバックアップローラ支持アームに取付けられるウエートと、を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、バックアップローラの配設位置に対して主軸を隔てた反対側に設けられたウエートにより、バックアップローラ支持アームが上記装着部の中心(つまり主軸の軸芯部)を支点として、バックアップローラをワークの外周面に転接させ、ワークの成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラはウエートの重量に抗して後退下動する。
これにより、ワーク成形中にはワークの外周面に、常にウエートの重量に相当する圧力が付勢され、バックアップローラ本来の機能が発揮される。
【0010】
この結果、成形中のワークの振動を低減し、ワークの真円度の向上を図ると共に、ワークの成形精度を安定化させつつ、油圧シリンダを用いない簡易な構成の輪体成形装置を構成することができる。
【0011】
また、バックアップローラを備えていない既存の輪体成形装置に対して、上記装着部、バックアップローラ支持アーム、バックアップローラ、ウエートの各要素を後付けすることもできる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記装着部またはバックアップローラ支持アームには、重量を異にする複数のウエートが択一的に取付けられるものである。
この構成によれば、成形されるワークの重量、大きさ、圧延度合等に対応して、重量が異なるウエートを選定して取付けることで、異なるワークの成形に、ウエートの取替えのみで対応することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記装着部の少なくとも内径部は、上記成形ローラの主軸に遊嵌される円環形状に形成され、上記装着部の内径部と上記主軸の外径部との間にはベアリングが介設されたものである。
【0014】
この構成によれば、上記ベアリングにより、成形ローラの主軸外径部と装着部内径部との間の摩擦抵抗の低減を図ることができるので、成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラ、バックアップローラ支持アームの後退を円滑に行なうことができる。
【0015】
この発明によるバックアップローラ支持装置は、成形ローラの主軸に遊嵌される装着部と、上記装着部に取付けられ、一端が圧延加工されるワークの下部位置に延設されるバックアップローラ支持アームと、該バックアップローラ支持アームの一端に設けられたバックアップローラと、上記バックアップローラの配設位置に対して上記装着部の中心位置を隔てた反対側において、上記装着部またはバックアップローラ支持アームに取付けられるウエートと、を備えたものである。
【0016】
上記バックアップローラ支持装置は、その装着部が成形ローラの主軸に遊嵌されて、輪体成形に供される。
上記構成によれば、バックアップローラの配設位置に対して主軸を隔てた反対側に設けられたウエートにより、バックアップローラ支持アームが上記装着部の中心(つまり主軸の軸芯部)を支点として、バックアップローラをワークの外周面に転接させ、ワークの成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラはウエートの重量に抗して後退下動する。
【0017】
これにより、ワーク成形中にはワークの外周面に、常にウエートの重量に相当する圧力が付勢され、バックアップローラ本来の機能が発揮される。
この結果、成形中のワークの振動を低減し、ワークの真円度の向上を図ると共に、ワークの成形精度を安定化させることができる。また、バックアップローラを備えていない既存の輪体成形装置に対して当該バックアップローラ支持装置を後付けすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、成形中のワークの振動を低減し、ワークの真円度の向上を図ると共に、ワークの成形精度を安定化させつつ、油圧シリンダを用いない簡易な構成の輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の輪体成形装置を示す正面図
図2図1の要部の平面図
図3】バックアップローラ支持装置を示す正面図
図4図1のA-A線矢視図
図5】バックアップローラを備えたバックアップローラ支持アームを展開した状態で示す平面図
図6】揺れ止め機構を示す平面図
図7】ワークの圧延状態を示す正面図
図8】重量が大きいウエートを取付けた場合のバックアップローラ支持装置を示す正面図
図9】(a)はバックアップローラ支持装置の他の実施例を示す正面図、(b)は図9(a)のB-B線に沿う部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
成形中のワークの振動を低減し、ワークの真円度の向上を図ると共に、ワークの成形精度を安定化させつつ、油圧シリンダを用いない簡易な構成の輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置を提供するという目的を、成形ローラと、該成形ローラに対向配置されるマンドレルと、該マンドレルの背面側に対接されたサポートローラと、を備えた輪体成形装置であって、上記成形ローラの主軸に遊嵌される装着部と、上記装着部に取付けられ、一端が上記主軸に対して、上記成形ローラと上記マンドレルとの間で成形されるワークの下部に延設されたバックアップローラ支持アームと、上記バックアップローラ支持アームの上記一端に設けられ、上記ワークの外周面に転接するバックアップローラと、上記バックアップローラの配設位置に対して上記主軸を隔てた反対側において、上記装着部またはバックアップローラ支持アームに取付けられるウエートと、を備えるという構成にて実現した。
【実施例
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はバックアップローラ支持装置を備えた輪体成形装置を示し、図1は当該輪体成形装置を示す正面図、図2図1の要部の平面図、図3はバックアップローラ支持装置を示す正面図、図4図1のA-A線矢視図、図5はバックアップローラを備えたバックアップローラ支持アームを展開した状態で示す平面図である。
【0022】
また、図6は揺れ止め機構を示す平面図、図7はワークの圧延状態を示す正面図、図8は重量が大きいウエートを取付けた場合のバックアップローラ支持装置を示す正面図である。
図1図2に示すように、輪体成形装置1はバックアップローラ支持装置2と、このバックアップローラ支持装置2の揺れ止めを行なう揺れ止め機構3と、を備えている。
<輪体成形装置について>
輪体成形装置1はガイドレール(図示せず)に沿って水平方向に前後進可能な可動枠4を設け、この可動枠4の左右の軸受部5,6(図2参照)には主軸としての成形ローラ軸7を介して成形ローラ8を取付けている。この成形ローラ8は中央周面に輪体成形部8aを有すると共に、上述の成形ローラ軸7はカップリングを介して駆動モータ(図示せず)に直結されており、可及的故障が発生しにくい構造になっている。
【0023】
一方で、上述の軸受部5,6および成形ローラ8と対向する位置には、図1に示すように、架構9を立設固定し、この架構9には図2に示すように平面から見てコ字状の軸受部10およびサポートローラ軸11を介してサポートローラ12を取付けている。このサポートローラ軸11は、この実施例においては、上述の駆動モータとは別個の駆動源に連動連結されているが、該サポートローラ軸11およびサポートローラ12は単に従動するだけの構成としてもよい。
【0024】
図2に矢印aで示す成形押圧方向に対して直交する方向(矢印b方向)に往復動可能なマンドレル13を設け、このマンドレル13を上述の成形ローラ8に対して相対接離可能に構成すると共に、このマンドレル13の中央周面には輪体成形部13aを、両側周面には規制面13b,13bを、両端部には可動側軸受14および固定側軸受15に軸支されるジャーナル部13c,13cをそれぞれ一体形成している。
【0025】
この実施例では、図示しないマンドレル移動操作用の流体シリンダにより、上述のマンドレル13を可動側軸受14と共に図2の矢印b方向へ往復動可能に構成している。
【0026】
また、図2に示すように、上述のマンドレル13の背面側に対設されたサポートローラ12は、その摺接面12a,12aがマンドレル13の規制面13b,13bと対接して、マンドレル13の耐久性を確保すべく構成すると共に、上述のサポートローラ12でマンドレル13を間接駆動すべく構成している。
【0027】
そして、上述の成形ローラ8とマンドレル13とサポートローラ12との3つの回転要素を図1に示すように同一平面上に平行に配設して、それぞれ回転可能に軸支している。
【0028】
ところで、上述の可動枠4の背面側(図面上右側)には成形加圧用の流体シリンダとしての油圧シリンダ(図示せず)が設けられている。
図2に示す矢印b方向に往復動可能なマンドレル13を一旦、待避位置に後退させると共に、成形ローラ8も図示右方に後退した状態下で、ロボットアーム等のワーク搬入手段(図示せず)により図1に矢印cで示す上方からワークWを図2の実線位置(成形位置)に搬入した後に、マンドレル移動操作用の流体シリンダでマンドレル13が所定位置に配設される。
【0029】
上記マンドレル13は、図2に示すように可動側軸受14と固定側軸受15とで左右双方から軸支され、次に、上述のロボットアーム等のワーク搬入手段が上方の退避位置に上動退避するように構成している。
<バックアップローラ支持装置について>
次に、図1図7を参照してバックアップローラ支持装置2について説明する。
同図に示すように、このバックアップローラ支持装置2は、成形ローラ8の主軸としての成形ローラ軸7に遊嵌され、かつ、下方に延びる連結部21を有する装着部20と、成形ローラ8の下方部に位置する左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31と、当該バックアップローラ支持アーム30,31の一端に設けられたバックアップローラ50と、該バックアップローラ50の配設位置に対して成形ローラ軸7を隔てた反対側において上記装着部20に取付けられるウエート60,62(図3図8参照)と、を備えている。
【0030】
上述の装着部20は、図3図4に示すように、その内径部および外径部が共に円環形状に形成されたリング部22と、このリング部22から下方に延びる上述の連結部21と、を備えている。
【0031】
図4に示すように、上述のリング部22の内径部と成形ローラ軸7の外径部7aとの間には、ベアリング23が介設されている。
このベアリング23は、アウタレース24とインナレース25との間に複数のボール26を有するボールベアリングで、上述のリング部22における成形ローラ8と対向する側面部には、複数のビス27を用いて軸受カバー28が取付けられている。なお、上記ベアリング23としては、ボールベアリングに代えて、ローラベアリングであってもよい。
【0032】
上述の装着部20の内径部と成形ローラ軸7の外径部7aとの間にベアリング23を介設することで、これら両者20,7間の摩擦抵抗の低減を図るように構成している。
【0033】
図1に示すように、左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31は、成形ローラ8の下部外周に沿うように円弧形状に形成されている。
図3図5に示すように、互いに平行な左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31間に複数のカラー33を介設した状態で、該カラー33内に挿通されるボルト34を用いて、上記左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31を締結することで、これら左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31間の間隔を保持している。
【0034】
図1図3図5に示すように、上述のバックアップローラ支持アーム30,31は、その一端が成形ローラ軸7に対して、成形ローラ8とマンドレル13との間で成形されるワークWの下部に延設されている。
【0035】
図3図5に示すように、左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31の上記一端には、バックアップローラ軸51を介して上述のバックアップローラ50を回転自在に取付けている。ここで、バックアップローラ50の左右両端部とバックアップローラ支持アーム30,31の内面との間には、ワッシャ52をそれぞれ介設している。上記バックアップローラ50はワークWの外周面に転接するものである。
【0036】
図5に示すように左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31の他端側(バックアップローラ50の配設位置と反対側)においては、一方のバックアップローラ支持アーム30内に貫通配置した円柱形状の複数のシャフト35を設け、これら複数のシャフト35の他方側端部(図示の下方側端部)を他方のバックアップローラ支持アーム31の内面に当接させている。そして、各シャフト35の他方側端部と他方のバックアップローラ支持アーム31とをボルト36により締結固定している。
【0037】
また、複数のシャフト35の一方側端部(図示の上方側端部)を、一方のバックアップローラ支持アーム30と平行な連結部21の内面側凹部に配置している。そして、各シャフト35の一方側端部と連結部21とをボルト37により締結固定している。
これにより、一対のバックアップローラ支持アーム30,31を、連結部21を介して装着部20の下部に取付けている。
【0038】
図3図5に示すように、複数のカラー33における最後部のカラー33と、複数のシャフト35における最前部のシャフト35との間において、左右一対のバックアップローラ支持アーム30,31の内面部には、複数のボルト38,39を用いて左右のガイド板40,41を取付けている。これら左右のガイド板40,41は後述するガイドロッド77により摺動案内されるものである。
【0039】
図3図8に示すように、上述の装着部20またはバックアップローラ支持アーム30、この実施例では連結部21の背面部には、複数のボルト61を用いて、重量を異にする複数のウエート60,62が択一的に取付けられるように構成している。図示実施例においては、図3で示すウエート60に対して、図8で示すウエート62の方がその質量が大きく設定されている。
【0040】
これらのウエート60,62は、バックアップローラ50の配設位置に対して上記装着部20の中心(CE)位置、換言すれば、成形ローラ軸7の軸芯位置を隔てた反対側に取付けられるものである。
【0041】
図3に示すように、上記ウエート60(または、図8に示すウエート62)により下向きの荷重F1が作用するので、装着部20の中心CEを支点として回動可能なバックアップローラ支持アーム30,31の一端に設けたバックアップローラ50には、ウエート60,62の質量に対応する上向きのバックアップ力F2が作用することになる。
<揺れ止め機構について>
図1図3図6に示すように、揺れ止め機構3は、ボルト70,70を用いて可動枠4の前面部4aに取付けられる取付け部71と、該取付け部71に延出部72を介して取付けられたガイドロッド支持部73と、を備えている。この実施例においては、上記各要素71,72,73を別部材にて構成したが、これら各要素71,72,73はアルミダイカストにより一体形成してもよい。
【0042】
図3に示すように、上述のガイドロッド支持部73はバックアップローラ支持アーム30,31の下方部に位置して水平に延びており、このガイドロッド支持部73の前側上面には前方が開放する平面視U字状の凹溝74が形成されている。また、当該ガイドロッド支持部73において上記凹溝74と上下方向で連通するように前後方向に延びる長孔75が開口形成されている。
【0043】
そして、下部にネジ部76を備えたガイドロッド77が、ナット78を用いて長孔75の上下の孔縁に締結固定されている。当該ガイドロッド77は、図3図5に示すように、ガイドロッド支持部73から上方に延びていて、その上部がガイド板40,41間に位置している。
【0044】
上述のガイドロッド77は長孔75の範囲内で、その取付け位置を可変調整することができる。また、図5で示した一対のガイド板40,41はバックアップローラ支持アーム30,31の回動時に、上記ガイドロッド77で摺動案内される。
【0045】
すなわち、図4に示すように、バックアップローラ50を備えたバックアップローラ支持アーム30,31は、装着部20により片持ち支持されており、装着部20を支点としてバックアップローラ支持アーム30,31の微少な揺れが懸念されるが、上記ガイドロッド77の上部における左右両面にガイド板40,41を摺接させることで、この揺れを防止すべく構成したものである。
【0046】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
ワークWを成形位置に搬入する前段階においては、マンドレル13および成形ローラ8を後退位置に待避させておく。
【0047】
図1に示す矢印c方向からロボットアーム等のワーク搬入手段(図示せず)によりワークWが同図の実線位置(成形位置)に搬入された後、マンドレル移動操作用の流体シリンダでマンドレル13が所定位置に配設され、このマンドレル13は図2に示すように可動側軸受14と固定側軸受15とで双方から軸支され、次に上述のロボットアーム等のワーク搬入手段が上方の退避位置に上動する。
【0048】
次に可動枠4をサポートローラ12方向へ前進させ、図1図2に示すように、成形ローラ8の輪体成形部8aをワークWの外周面に当接する。この時、バックアップローラ支持装置2のウエート60の重量により、一対のバックアップローラ支持アーム30,31が装着部20の中心CEを支点として回動するので、バックアップローラ50にはバックアップ力F2(図3参照)が作用し、このバックアップローラ50はワークWの下側外周面に転接する。
【0049】
次に、成形加圧用の油圧シリンダ(図示せず)で可動枠4を介して成形ローラ8を押圧しつつ、成形ローラ8、サポートローラ12、マンドレル13、ワークWをそれぞれ図1の矢印方向へ回転させながら、同ワークWの成形を行なうと、図2に示すように、ワークWは成形ローラ8の輪体成形部8aとマンドレル13の輪体成形部13aとによって回転しながら圧延が行なわれ、ワークWは図1の状態から図7に示す所定寸法に圧延される。
【0050】
上述のワークWは、成形ローラ8とマンドレル13との双方から回転トルクが与えられるので、ワークWが成形ローラ8の接線方向に延びるのを防止して、真円度の高い高精度のワーク成形を行なうことができる効果があり、かつマンドレル13、サポートローラ12間のスリップがなくなり、マンドレル13の耐久性の向上を図ることができる効果がある。
【0051】
図1に示す成形初期の状態から図7に示す成形完了時の状態までワークWの成形によってワーク径が変化する。バックアップローラ50は常にワークWの外周面に転接しながら、ワーク径の変化に追従して、ウエート60の重量に抗して後退下動する。これにより、ワークWの成形中には当該ワークWの外周面に常にウエート60の重量に相当するバックアップ力F2が付勢され、バックアップローラ50本来の機能が発揮される。
【0052】
すなわち、バックアップ力F2により、成形中のワークWの振動を低減し、ワークWの真円度の向上を図ると共に、ワークWの成形精度を安定化させることができる。
【0053】
このように、上記実施例の輪体成形装置1は、成形ローラ8と、該成形ローラ8に対向配置されるマンドレル13と、該マンドレル13の背面側に対接されたサポートローラ12と、を備えた輪体成形装置であって、上記成形ローラ8の主軸(成形ローラ軸7参照)に遊嵌される装着部20と、上記装着部20に取付けられ、一端が上記主軸(成形ローラ軸7)に対して、上記成形ローラ8と上記マンドレル13との間で成形されるワークWの下部に延設されたバックアップローラ支持アーム30,31と、上記バックアップローラ支持アーム30,31の上記一端に設けられ、上記ワークWの外周面に転接するバックアップローラ50と、上記バックアップローラ50の配設位置に対して上記主軸(成形ローラ軸7)を隔てた反対側において、上記装着部20またはバックアップローラ支持アーム30(この実施例では連結部21)に取付けられるウエート60,62と、を備えたものである(図1図8参照)。
【0054】
この構成によれば、バックアップローラ50の配設位置に対して主軸(成形ローラ軸7)を隔てた反対側に設けられたウエート60,62により、バックアップローラ支持アーム30,31が上記装着部20の中心CE(つまり主軸の軸芯部)を支点として、バックアップローラ50をワークWの外周面に転接させ、ワークWの成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラ50はウエート60,62の重量に抗して後退下動する。
【0055】
これにより、ワークWの成形中にはワークWの外周面に、常にウエート60,62の重量に相当する圧力(図3に示すバックアップ力F2参照)が付勢され、バックアップローラ50本来の機能が発揮される。
【0056】
この結果、成形中のワークWの振動を低減し、ワークWの真円度の向上を図ると共に、ワークWの成形精度を安定化させつつ、油圧シリンダを用いない簡易な構成の輪体成形装置1を構成することができる。
【0057】
また、バックアップローラを備えていない既存の輪体成形装置に対して、上記装着部20、バックアップローラ支持アーム30,31、バックアップローラ50、ウエート60,62の各要素を後付けすることもできる。
【0058】
また、この発明の一実施形態においては、上記装着部20またはバックアップローラ支持アーム30には、重量を異にする複数のウエート60,62が択一的に取付けられるものである(図3図8参照)。
【0059】
この構成によれば、成形されるワークWの重量、大きさ、圧延度合等に対応して、重量が異なるウエート60,62を選定して取付けることで、異なるワークWの成形に、ウエート60,62の取替えのみで対応することができる。
【0060】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記装着部20の少なくとも内径部は、上記成形ローラ8の主軸(成形ローラ軸7)に遊嵌される円環形状に形成され、上記装着部20の内径部と上記主軸(成形ローラ軸7)の外径部7aとの間にはベアリング23が介設されたものである(図1図4参照)。
【0061】
この構成によれば、上記ベアリング23により、成形ローラ8の主軸(成形ローラ軸7)の外径部7aと装着部20内径部との間の摩擦抵抗の低減を図ることができるので、成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラ50、バックアップローラ支持アーム30,31の後退を円滑に行なうことができる。
【0062】
加えて、上記実施例のバックアップローラ支持装置2は、成形ローラ8の主軸(成形ローラ軸7)に遊嵌される装着部20と、上記装着部20に取付けられ、一端が圧延加工されるワークWの下部位置に延設されるバックアップローラ支持アーム30,31と、該バックアップローラ支持アーム30,31の一端に設けられたバックアップローラ50と、上記バックアップローラ50の配設位置に対して上記装着部20の中心CE位置を隔てた反対側において、上記装着部20またはバックアップローラ支持アーム30(この実施例では、装着部20の一部を構成する連結部21)に取付けられるウエート60,62と、を備えたものである(図3図8参照)。
【0063】
上記バックアップローラ支持装置2は、その装着部20が成形ローラ8の主軸(成形ローラ軸7)に遊嵌されて、輪体成形に供される。
この構成によれば、バックアップローラ50の配設位置に対して主軸(成形ローラ軸7)を隔てた反対側に設けられたウエート60,62により、バックアップローラ支持アーム30,31が上記装着部20の中心CE(つまり主軸の軸芯部)を支点として、バックアップローラ50をワークWの外周面に転接させ、ワークWの成形によるワーク径の変化に追従して、バックアップローラ50はウエート60,62の重量に抗して後退下動する。
【0064】
これにより、ワークWの成形中にはワークWの外周面に、常にウエート60または62の重量に相当する圧力(図3に示すバックアップ力F2)が付勢され、バックアップローラ50本来の機能が発揮される。
【0065】
この結果、成形中のワークWの振動を低減し、ワークWの真円度の向上を図ると共に、ワークWの成形精度を安定化させることができる。また、バックアップローラを備えていない既存の輪体成形装置に対して当該バックアップローラ支持装置2を後付けすることもできる。
<他の実施例>
図9(a)はバックアップローラ支持装置2の他の実施例を示す正面図、図9(b)は図9(a)のB-B線に沿う部分断面図である。
図9に示す他の実施例においては、連結部21を上部連結部21Aと下部連結部21Bとに上下2分割し、上部連結部21Aの下端部に位置決め凹部21aを形成し、下部連結部21Bの上端部には、当該位置決め凹部21a内に着脱可能に挿入される凸部21bを一体形成している。
【0066】
そして、位置決め凹部21aに凸部21bを挿入した状態で、複数の長尺のボルト29,29を用いて、上部連結部21Aと下部連結部21Bとを締結固定している。
このように構成すると、ボルト29による上下の連結部21A,21Bの締結を解除すると、装着部20を成形ローラ軸7に遊嵌したままで、バックアップローラ50を備えたバックアップローラ支持アーム30,31が取外せるので、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0067】
図9で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については、図1図8で示した先の実施例と同様であるから、図9において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の主軸は、上述の実施例の成形ローラ軸7に対応するも、
この発明は、上記実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、ベアリングのインナレース、アウタレース、ピロー等の輪体あるいはケージ、スリーブ等の輪体を所定形状に冷間圧延加工して成形する輪体成形装置およびバックアップローラ支持装置について有用である。
【符号の説明】
【0070】
1…輪体成形装置
2…バックアップローラ支持装置
7…成形ローラ軸(主軸)
8…成形ローラ
12…サポートローラ
13…マンドレル
20…装着部
23…ベアリング
30,31…バックアップローラ支持アーム
50…バックアップローラ
60,62…ウエート
CE…装着部の中心
W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9