(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】樹脂封止装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240327BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20240327BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/02
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2020152302
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 茂行
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-172241(JP,A)
【文献】特開平08-238644(JP,A)
【文献】特開平11-126784(JP,A)
【文献】特開昭50-136347(JP,A)
【文献】特開平09-312309(JP,A)
【文献】特開平09-246298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 45/02
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備える樹脂封止金型を用いて、ワークを樹脂封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、
前記樹脂封止金型内へタブレット型の樹脂を搬送するローダを備え、
前記ローダは、前記樹脂を保持する
保持孔を有する樹脂保持部と、
前記保持孔内に保持した前記樹脂を加熱する樹脂加熱装置と、前記
保持孔内をクリーニングする第1クリーニング装置と、を有
し、
前記第1クリーニング装置は、前記保持孔内を移動する棒状部と、前記棒状部に設けられて前記保持孔の内壁部に摺接し、前記内壁部に付着した樹脂粉を掻き落とす掻き落とし部と、を有すると共に、横方向の駆動力を90度変換して前記棒状部を縦方向に移動させる昇降装置を有し、
前記掻き落とし部は、前記棒状部に取付けられたブラシ部、又は前記棒状部に一体もしくは別体に設けられた拡径部を有し、
前記棒状部は、前記保持孔内から前記樹脂が落下しない場合に下端面で該樹脂を押動するプッシャを兼用する構成であること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記ローダは、前記ワークを保持するワーク保持部と、保持した前記ワークを加熱するワーク加熱装置と、を有すること
を特徴とする請求項
1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記樹脂加熱装置は、前記樹脂保持部を昇温させるヒーターを有すること
を特徴とする請求項
1又は請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
前記ローダにおける前記樹脂保持部への前記樹脂の出入口が設けられる下面をクリーニングする第2クリーニング装置をさらに備えること
を特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂封止装置。
【請求項5】
前記第2クリーニング装置は、前記下面に沿って移動可能なように前記ローダに支持されて設けられていること
を特徴とする請求項
4記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記第2クリーニング装置は、前記ローダが移動する経路途中に設けられていること
を特徴とする請求項
4記載の樹脂封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを樹脂で封止する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造に関し、基材に電子部品が搭載されたワークを樹脂で封止して成形品に加工する樹脂封止装置が広く用いられている。
【0003】
樹脂封止装置の一例として、トランスファモールド装置が知られている。このトランスファモールド装置は、上型と下型とを備えてワークを型締めし、樹脂封止金型のポットからプランジャで溶融樹脂を押し出し、キャビティに樹脂を充填して樹脂封止する装置である(特許文献1:特開2012-131142号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に例示される樹脂封止装置において、熱硬化性の樹脂の場合に樹脂封止金型は180℃程度に昇温され、樹脂封止金型に樹脂を投入すると、昇温された樹脂封止金型から当該樹脂に熱が奪われ、投入部やその周囲の温度が低下する現象が生じる。この現象は、樹脂の投入のみならず、ワークを樹脂封止金型にセットする際にも生じ得る。
【0006】
このような温度低下が生じた際には、樹脂封止金型のヒーターを作動させて、所定の温度まで回復させる工程が実施される。これをできる限り防止するため、樹脂やワークを予め80℃程度に予熱する方法もあるが、樹脂封止金型との温度差はある。この工程による温度回復には数十秒かかるものの、樹脂封止成形のサイクル中に完了するため、次の成形への影響は少ない。
【0007】
しかしながら、近年、車載用大型パワーデバイス等に例示される半導体装置において、大容量の樹脂を用いる成形が増加している。このような場合においては、上記の温度回復工程が樹脂封止成形のサイクル中に完了できず、所定の温度まで回復する前に次の成形サイクルに入ってしまい、熱量不足による成形不具合(未充填、ボイド等)が発生し易くなる課題が生じる。逆に、所定の温度まで回復するのを待って次の成形サイクルに入ることとすれば熱量不足は解消できるものの、サイクルタイムが増加して生産性が低下してしまう課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、樹脂封止金型へのモールド樹脂投入時に生じる樹脂封止金型の温度の低下という課題の解決を図ると共に、その解決を図るための構成において新たに生じる樹脂保持部の汚れという課題の解決を同時に図ることが可能な樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る樹脂封止装置は、上型及び下型を備える樹脂封止金型を用いて、ワークを樹脂封止して成形品に加工する樹脂封止装置であって、前記樹脂封止金型内へタブレット型の樹脂を搬送するローダを備え、前記ローダは、前記樹脂を保持する保持孔を有する樹脂保持部と、前記保持孔内に保持した前記樹脂を加熱する樹脂加熱装置と、前記保持孔内をクリーニングする第1クリーニング装置と、を有し、前記第1クリーニング装置は、前記保持孔内を移動する棒状部と、前記棒状部に設けられて前記保持孔の内壁部に摺接し、前記内壁部に付着した樹脂粉を掻き落とす掻き落とし部と、を有すると共に、横方向の駆動力を90度変換して前記棒状部を縦方向に移動させる昇降装置を有し、前記掻き落とし部は、前記棒状部に取付けられたブラシ部、又は前記棒状部に一体もしくは別体に設けられた拡径部を有し、前記棒状部は、前記保持孔内から前記樹脂が落下しない場合に下端面で該樹脂を押動するプッシャを兼用する構成であることを要件とする。
【0011】
これによれば、ローダの樹脂保持部にタブレット型の樹脂を保持して搬送等を行う間に当該樹脂を加熱することができる。したがって、樹脂封止金型に樹脂を投入しても、樹脂封止金型から当該樹脂に熱が奪われることに起因する投入部やその周囲の温度低下を防止することができる。さらに、樹脂保持部の内部に樹脂を保持して加熱することによって、当該内部に樹脂の汚れが付着し易くなるという課題が新たに生じるが、クリーニングにより当該汚れの除去を行うことができる。
【0012】
また、前記ローダは、前記ワークを保持するワーク保持部と、保持した前記ワークを加熱するワーク加熱装置と、を有することが好ましい。これによれば、ローダによってワークを搬送する間に、当該ワークを加熱することができ、所定温度まで昇温させた状態とすることができる。したがって、樹脂封止金型にワークを載置したときに、昇温された樹脂封止金型から当該ワークが奪う熱量を減少させることができるため、載置部やその周囲の温度が低下する現象を抑制することができる。
【0013】
また、樹脂保持部内において棒状部を縦方向(上下方向)に移動させて、掻き落とし部が保持孔の内壁部に摺接しながら移動する作用が得られる。これにより、内壁部に付着した汚れ(樹脂粉等)を、掻き落とし部によって掻き落とすことができる。したがって、ワークを樹脂で封止して成形品に加工する際に、樹脂保持部内に付着した汚れが樹脂と共にポット内に入り込み、異物として混入されることを原因とする成形不具合の発生を防止できる。また、棒状部をプッシャとして兼用することができるため、棒状部の下端面で樹脂を押動する作用が得られる。
【0014】
また、棒状部が設置されるローダの高さ方向寸法を小さく形成することができる。
【0015】
また、前記樹脂加熱装置は、前記樹脂保持部を昇温させるヒーターを有することが好ましい。これによれば、樹脂保持部を昇温させることによって、保持孔内を均一な温度に保つことができる。そのため、直接的に加熱する方法と比べて、樹脂の表面が高温となり、内部が低温となるアンバランスな状態の発生を抑制でき、樹脂全体をより均一な温度分布で昇温させることが可能となる。
【0016】
また、前記ローダにおける前記樹脂保持部への前記樹脂の出入口が設けられる下面をクリーニングする第2クリーニング装置をさらに備えることが好ましい。例えば、前記第2クリーニング装置は、前記下面に沿って移動可能なように前記ローダに支持されて設けられている構成や、前記ローダが移動する経路途中に設けられている構成とすることが考えられる。これによれば、ローダの下面に付着した汚れ(樹脂粉等)を除去する作用が得られる。したがって、ワークを樹脂で封止して成形品に加工する際に、ローダの下面に付着した汚れがポット内やワーク支持部上もしくはワーク支持部上に載置されたワーク上に落下して、異物として混入されることを原因とする成形不具合の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂封止金型にタブレット型の樹脂を投入した際に、樹脂封止金型から当該樹脂に熱が奪われることに起因して生じる投入部やその周囲の温度低下を防止すること可能となる。したがって、樹脂封止工程において、サイクルタイムを長くさせることなく、且つ、樹脂の温度低下等に起因して生じ得る成形不具合を低減することができる。その一方で、樹脂保持部の内部に樹脂を保持して加熱する構成に起因して、当該内部に樹脂の汚れが付着し易くなるという課題が新たに生じるが、クリーニングにより当該汚れの除去を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
【
図2】
図1の樹脂封止装置のII-II位置の左側面図である。
【
図3】
図1の樹脂封止装置のプレス装置及び第1ローダの例を示す正面断面図(
図1のIII-III線断面図)である。
【
図4】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の例を示す側面断面図(
図3のIV-IV線断面図)である。
【
図5】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の掻き落とし部の例を示す正面断面図(
図3のA部拡大図)である。
【
図6】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の掻き落とし部の他の例を示す正面断面図である。
【
図7】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の掻き落とし部の他の例を示す正面断面図である。
【
図8】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の昇降装置の例を示す側面図である。
【
図9】
図1の樹脂封止装置の第1クリーニング装置の昇降装置の他の例を示す側面図である。
【
図10】
図1の樹脂封止装置の第2クリーニング装置の例を示す正面断面図(
図1のX-X線断面図)である。
【
図11】
図1の樹脂封止装置の第2クリーニング装置の例を示す側面断面図(
図10のXI-XI線断面図)である。
【
図12】
図1の樹脂封止装置の第2クリーニング装置の他の例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置100の例を示す概略図(平面図)である。また、
図2~
図12は、樹脂封止装置100の各構成の詳細を示す概略図である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置100における前後、左右、上下の方向を説明する場合がある。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
本実施形態に係る樹脂封止装置100は、ワーク(被成形品)Wの樹脂封止成形を行うトランスファモールド装置である。
【0021】
先ず、成形対象であるワークWについて、一般的な構成例を説明する。ワークWは、基材である第1部材Wa上に、主として電子部品である第2部材Wbが搭載された構成を備えている。より具体的には、第1部材Waとして、例えば短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、リードフレーム、キャリア、ウェハといった各種の内包部材が例に挙げられる。さらに形状は短冊状に限らず円形、四角形であってもよいし、任意の外形形状を有する異形状であってもよい。また、第2部材Wbとして、半導体チップ(単に、「チップ」と称する場合がある)、電子部品、放熱板、配線・放熱のためのリードフレーム、電気的接続のためのバンプといった各種の部材が例に挙げられる。すなわち、本発明におけるワークWは、これらの第1部材Wa上に第2部材Wbが搭載(ダイ実装、フリップチップ実装、ワイヤボンディング実装等)されて重ね合わされた状態のものをいう。したがって、当該ワークWには、基板に一段あるいは複数段にチップが搭載されたもの、基板に半導体装置が搭載されたもの、基板に撮像素子が搭載され撮像素子の受光面に光透過ガラスを接合したもの等も含まれる。ここでは、樹脂封止する形態として、基板実装された複数の搭載部品を一つのキャビティに収容して一括して樹脂封止する場合を想定している。なお、個々の搭載部品ごとに個別にキャビティに収容して樹脂封止する場合にも適用し得る。また、放熱板でチップを挟み込んだ放熱構造を有するワークWであってもよい。
【0022】
続いて、樹脂封止装置100の概要について説明する。
図1に示すように、樹脂封止装置100は、タブレット型(一例として、円柱状)のモールド樹脂(単に「樹脂」と称する場合がある)R及びワークWを供給する供給ユニット100A、ワークWを樹脂封止するプレスユニット100B、樹脂封止後の成形品Wpを収納する成形品収納ユニット100Cを主要構成として備えている。
【0023】
先ず、供給ユニット100Aは、ワークWを収納したマガジン(不図示)を収容するストッカ62を備えている。各マガジンからプッシャ(不図示)により送り出されたワークWが、例えば二枚一組でセット台64に向い合わせで並べられる。セット台64に並べられたワークWは、後述の搬送機構(第1ローダ(インローダ)82)によって保持されてプレスユニット100Bへ搬送される。
【0024】
セット台64の側方には、樹脂Rを供給するための機構として、ホッパー及びフィーダ等を備える樹脂供給部66と、エレベータ等の移送機構を備えて樹脂供給部66から後述の第1ローダ82へ樹脂Rを受渡す樹脂受渡し部68とが設けられている。樹脂受渡し部68にセットされた樹脂Rは、第1ローダ82によって保持されてプレスユニット100Bへ搬送される。
【0025】
次に、プレスユニット100Bは、後述する樹脂封止金型10を開閉駆動して予熱されたワークWをクランプして樹脂封止するプレス装置70を備えている。プレス装置70は、樹脂封止金型10を型開閉方向に押動する公知の型締め機構、樹脂封止金型10のポット40内で溶融した樹脂をポット40からキャビティ30に充填するトランスファ駆動機構(後述)を備えている。
【0026】
なお、プレス装置70において、フィルム供給機構を設けて、樹脂封止金型10の金型面(樹脂封止面)を公知のリリースフィルムにより被覆して樹脂封止する構成としてもよい(不図示)。
【0027】
次に、成形品収納ユニット100Cは、樹脂封止後の成形品Wpをセットするセット部74、成形品Wpからゲート等の不要樹脂を除去するゲートブレイク部76、不要樹脂が除去された成形品Wpを収納するストッカ78を備えている。成形品Wpは、収納用のマガジン80に収納され、成形品Wpが収納されたマガジン80はストッカ78に順次収容される。
【0028】
次に、本実施形態に係る樹脂封止装置100は、各ユニット間に跨って搬送を行う機構として、樹脂RとワークWをプレスユニット100Bの樹脂封止金型10内へ搬入する第1ローダ82及び成形品Wpと不要樹脂(成形後のカル、ランナー)をプレスユニット100Bの樹脂封止金型10内から搬出する第2ローダ(オフローダ)84を備えている。ここで、供給ユニット100A、プレスユニット100B及び成形品収納ユニット100Cは、ユニット化された架台同士が連結されて樹脂封止装置100が組み立てられている。各ユニットの装置奥側にはガイド部86が各々設けられ、ガイド部86同士を直線的に連結するように組み付けることでガイドレールが形成されている。第1ローダ82と第2ローダ84は各々、ガイドレールに沿ってガイド部86上の所定位置から供給ユニット100A、プレスユニット100B、成形品収納ユニット100Cに向かって直線的に進退動可能に設けられている。
【0029】
続いて、樹脂封止装置100のプレスユニット100Bに設けられるプレス装置70の構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、プレス装置70は、第1金型(ここでは、下型)20と第2金型(ここでは、上型)21とを有する樹脂封止金型10を備えている。構成例として、符号22は可動プラテン、符号24は固定プラテン、符号42はポストである。なお、下型20が可動型、上型21が固定型の場合を例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。
【0031】
また、下型20には、樹脂Rが投入される筒状のポット40が一つもしくは複数(ここでは、複数)設けられている。ポット40は、下型ベース34及び下型チェイスブロック36に連続する貫通孔として形成されている。ポット40内には公知のトランスファ駆動機構(不図示)により押動されるプランジャ16が配設されている。このプランジャ16が押動されて、ポット40内の樹脂Rがキャビティ30内へ供給される。
【0032】
ここで、下型ベース34には、下型ヒーター46が設けられており、図示しないサポートピラー等を介してポット40の周囲に熱伝導され、ポット40内の樹脂Rを短時間で効率よく所定温度まで加熱して(一例として、ポット40内壁部温度が180℃程度となるまで加熱して)、溶融させることができる。なお、下型ヒーター46には、公知の電熱線ヒーター、シーズヒーター等が用いられる。
【0033】
上型チェイスブロック28の下面にはワークWの所定部位(第2部材Wbが搭載された部位)が収容されるキャビティ30が設けられている。本実施形態においては上記の下型チェイスブロック36のワーク支持部38に対応する位置に、一つのキャビティ30が設けられている。また、上型チェイスブロック28には、キャビティ30に連通する樹脂流路(カル、ランナ等)32が設けられている。
【0034】
ここで、上型ベース26には、上型ヒーター47が設けられており、図示しないサポートピラー等を介してキャビティ30及び樹脂流路(カル、ランナ等)32の周囲に熱伝導され、キャビティ30及び樹脂流路32内に充填される溶融状態の樹脂Rを所定温度に加熱することができる。なお、上型ヒーター47には、公知の電熱線ヒーター、シーズヒーター等が用いられる。
【0035】
続いて、本実施形態に特徴的な構成である第1ローダ(インローダ)82ついて詳しく説明する。
【0036】
本実施形態に係る第1ローダ82は、
図3に示すように、ワークWを保持するワーク保持部50を備えている。一例として、ワーク保持部50は、水平移動(もしくは回転移動)によってワークWに接離するチャック爪44を備えて構成されている。
【0037】
また、第1ローダ82は、
図3、
図4に示すように、樹脂Rを保持する樹脂保持部52を備えている。一例として、樹脂保持部52は、樹脂Rを内部に保持する円筒状の保持孔52a、保持孔52aに対して樹脂Rを出し入れする出入口52b、及び出入口52bの開閉を行うシャッタ52cを備えて構成されている。
【0038】
これらの構成による動作例は次の通りである。先ず、第1ローダ82をセット台64の直上に移動させる。次いで、セット台64を所定位置まで上昇(もしくは、第1ローダ82を所定位置まで下降)させ、ワークWがチャック爪44と同じ高さ位置となるようにする。次いで、チャック爪44を移動させてワークWを挟持する。次いで、第1ローダ82を樹脂受渡し部68の直上に移動させる。次いで、樹脂受渡し部68を所定位置まで上昇(もしくは、第1ローダ82を所定位置まで下降)させ、樹脂Rを保持孔52aの内部に進入させる。次いで、シャッタ52cを前後方向に移動させることで出入口52bをシャッタ52cの孔でない部分で塞ぎ出入口52bを閉じの状態として樹脂Rを保持孔52a内に保持する。次いで、第1ローダ82を樹脂封止金型10内の下型20の直上に移動させ、下型20を所定位置まで上昇(もしくは、第1ローダ82を所定位置まで下降)させる。次いで、チャック爪44を移動させてワークWの挟持を解除して、ワークWをワーク支持部38に載置する。これと同時に(もしくは、前後して)、シャッタ52cを移動させて出入口52bを開きの状態として樹脂Rを落下させ、ポット40内に投入する。このようにして、ワーク支持部38へのワークWの載置、及びポット40内への樹脂Rの投入が完了する。ただし、これらの構成に限定されるものではなく、例えば、ワークWの挟持を行う前に、樹脂Rの保持を行う等、動作や順序に関して種々の変形例を採用し得る。
【0039】
ここで、第1ローダ82は、樹脂保持部52によって保持した樹脂Rを加熱する樹脂加熱装置53を備えている。
【0040】
前述の通り、従来の樹脂封止装置においては、樹脂封止金型(ここでは、下型)に樹脂を投入したときに、昇温された樹脂封止金型から当該樹脂に熱が奪われ、投入部やその周囲の温度が低下する現象が生じていた。このような温度低下が生じた際には、樹脂封止金型のヒーターを作動させて、所定の温度まで回復させる工程が実施される。しかし、近年、増加傾向にある大容量の樹脂を用いる成形の場合には、温度回復工程が樹脂封止成形のサイクル中に完了できず、所定の温度まで回復する前に次の成形サイクルに入ってしまい、熱量不足による成形不具合(未充填、ボイド等)が発生し易くなる課題があった。一方、所定の温度まで回復するのを待って次の成形サイクルに入ることとすれば熱量不足は解消できるものの、サイクルタイムが増加して生産性が低下してしまう課題があった。
【0041】
このような課題に対して、本実施形態に係る上記構成によれば、樹脂Rを樹脂受渡し部68から下型20(具体的には、ポット40)へ搬送する間に、樹脂加熱装置53によって樹脂Rを加熱することができ、所定温度まで昇温させた状態とすることができる。したがって、樹脂封止金型10(ここでは、下型20)に樹脂を投入したときに、昇温された樹脂封止金型10から当該樹脂Rが奪う熱量を減少させることができるため、投入部やその周囲の温度が低下する現象を抑制することができる。すなわち、当該温度低下が僅かとなることにより、温度回復工程が短時間で実施でき、樹脂封止成形のサイクル中に完了させることができる。その結果、所定の温度まで回復する前に次の成形サイクルに入ってしまうことに起因した熱量不足による成形不具合(未充填、ボイド等)の発生を防止でき、且つ、サイクルタイムが増加して生産性が低下してしまうことも防止できる。
【0042】
一例として、樹脂加熱装置53は、樹脂保持部52(具体的には、保持孔52aの周壁部)を昇温させることにより樹脂Rを常温から所定温度(具体的には、Bステージ前の温度、すなわち、熱硬化性樹脂である樹脂Rが溶融・硬化しない温度であって、一例として120℃程度)に加熱するヒーターを備えて構成されている。当該ヒーターの例としては、電熱線ヒーター、シーズヒーター等が挙げられる。
【0043】
このように、樹脂保持部52を昇温させることによって、保持孔52a内を均一な温度に保つことができる。そのため、樹脂Rに熱線を照射させるような直接的に加熱する方法と比べて、樹脂Rの表面が高温となり、内部が低温となるアンバランスな状態の発生を抑制でき、樹脂R全体をより均一な温度分布で昇温させることが可能となる。
【0044】
ただし、樹脂加熱装置53は、上記構成に限定されるものではなく、変形例として、赤外線ヒーター、カーボンヒーター、レーザーヒーター、高周波加熱装置等のように、直接的に、樹脂Rを加熱するヒーターを樹脂保持部52(具体的には、保持孔52aの周壁部)等に設ける構成としてもよい。
【0045】
一方、上記の樹脂封止金型10における温度低下の現象は、樹脂封止金型10(ここでは、下型20)に樹脂Rを投入するときだけではなく、樹脂封止金型10(ここでは、下型20)にワークWを載置するときにも発生する。つまり、昇温された樹脂封止金型10から当該ワークWに熱が奪われ、載置部(ここでは、ワーク支持部38)やその周囲の温度が低下するためである。したがって、上記と同様に、成形不具合や生産性低下の課題が生じる。
【0046】
このような課題に対して、本実施形態に係る第1ローダ82は、ワーク保持部50によって保持したワークWを所定温度(ワークWを構成する第1部材Wa、第2部材Wbの耐熱温度等に基づいて設定される温度)に加熱するワーク加熱装置51を備えている。一例として、ワーク加熱装置51は、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター、レーザーヒーター、高周波加熱装置等のように、直接的に、ワークWを加熱するヒーターをワーク保持部50(具体的には、ワークWとの対向部)に設ける構成が考えられる。また、ワーク加熱装置51は、樹脂加熱装置53よりも加熱する対象の温度が高温になるように温度設定できる構成とすることが好ましい。例えば放熱板を有するようなワークWと樹脂Rであれば、樹脂Rは搬送中に溶融してしまうのを防止するために加熱するにしても一定温度以下に設定することが好ましいのに対し、このようなワークWを搬送中に十分に加熱する必要があるからである。
【0047】
上記の構成によれば、ワークWをセット台64から下型20(具体的には、ワーク支持部38)へ搬送する間に、当該ワークWを加熱することができ、所定温度まで昇温させた状態とすることができる。したがって、樹脂封止金型10(ここでは、下型20)にワークWを載置したときに、昇温された樹脂封止金型10から当該ワークWが奪う熱量を減少させることができるため、載置部(ここでは、ワーク支持部38)やその周囲の温度が低下する現象を抑制することができる。すなわち、当該温度低下が僅かとなることにより、温度回復工程が短時間で実施でき、樹脂封止成形のサイクル中に完了させることができる。その結果、所定の温度まで回復する前に次の成形サイクルに入ってしまうことに起因した熱量不足による成形不具合(未充填、ボイド等)の発生を防止でき、且つ、サイクルタイムが増加して生産性が低下してしまうことも防止できる。
【0048】
以上のように、第1ローダ82が樹脂R及びワークWを搬送する通常のサイクル中において、樹脂R及びワークWの加熱をしてそれぞれ所定温度まで昇温させた状態とすることができるため、サイクルタイムが長くならず、生産性が低下してしまうことがない。むしろ、樹脂Rの溶融を促進させることができるため、成形不具合の改善のみならず、樹脂封止成形時のサイクルタイムの短縮を図ることができる。ただし、樹脂Rがさらに多量である等によって、第1ローダ82が樹脂封止金型10へ進入・進出する両方の移動中において加熱を行っても熱量が不足する場合には、サイクルタイムは長くなるものの、第1ローダ82の移動速度を低下させて(つまり、搬送時間を長くさせて)、所定の温度まで加熱する構成としてもよい。また、複数のプレスユニット100Bのそれぞれと樹脂受渡し部68との距離が相違するためにこの搬送時間が相違する場合には、第1ローダ82の移動速度を調整して搬送時間を均等にすることも考えられる。
【0049】
ところで、本願発明者が鋭意研究した結果、上記の構成を備える樹脂封止装置100によれば、樹脂R投入時に生じる樹脂封止金型10の温度の低下という課題の解決を図ることが可能となる。しかし、その一方で、新たな課題が生じ得ることが明らかとなった。具体的には、樹脂保持部52(保持孔52a)にタブレット型の樹脂Rを保持した状態で当該樹脂Rを所定温度(例えば、前述の120℃程度)まで加熱することによって、樹脂Rの外周面において僅かに溶融が起こり、樹脂保持部52(具体的には、保持孔52aの内壁部52d)に樹脂粉が汚れとして付着してしまうという課題である。この汚れは、樹脂Rの一部溶融により発生したものの他に、元々樹脂Rに付着していたもの等も含まれる。いずれにしても、保持孔52aの内壁部52dに付着した汚れは、樹脂Rを第1ローダ82の樹脂保持部52から、下型20のポット40へ投入する際に、当該樹脂Rに付着してポット40内に入り込んでしまう。ここで、樹脂Rが熱硬化性樹脂である場合には、内壁部52dに付着した樹脂による汚れは堆積していくおそれがあり、この場合には付着し堆積した樹脂は硬化した後の樹脂であるため、ポット40内への混入は好ましくない。あるいは、搬送の途中でワーク支持部38上もしくはワーク支持部38上に載置されたワークW上に落下してしまうおそれもある。その結果、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、異物として混入されて成形不具合を引き起こす原因となる。
【0050】
また、樹脂保持部52(保持孔52a)内で加熱されることによって、外周面において僅かに溶融が起こった樹脂Rは、樹脂保持部52(具体的には、保持孔52aの内壁部52d)に接触して、溶着(固着)した状態となってしまう場合がある、したがって、シャッタ52cを移動させて出入口52bを開きの状態としても、樹脂Rが落下しない事象が生じ得る。その場合、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、樹脂量が不足した成形不具合を引き起こす原因となる。
【0051】
さらに、保持孔52aの内壁部52dにおいて汚れ(樹脂粉)の堆積が進行すれば、保持孔52a内に樹脂Rが保持された状態で、シャッタ52cを移動させて出入口52bを開きの状態としても、樹脂Rが内壁部52dの汚れ(樹脂粉)に引っ掛かり、落下しない事象も生じ得る。その場合、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、樹脂量が不足した成形不具合を引き起こす原因となる。
【0052】
このような課題に対して、本実施形態に係る第1ローダ82は、
図3、
図4に示すように、樹脂保持部52内(ここでは、保持孔52aの内壁部52d)をクリーニングする第1クリーニング装置54を備えている。この第1クリーニング装置54は、樹脂保持部52内を移動する棒状部54aと、当該棒状部54aに設けられて保持孔52aの内壁部52dに摺接し、内壁部52dに付着した樹脂粉を掻き落とす掻き落とし部54bとを備えている。本実施形態においては、棒状部54aは、複数のポット40と同数設けられる保持孔52aごとに設けられる(すなわち、ポット40と同数設けられる)。また、各棒状部54aの上端部が一つの固定部材54dに固定されている。したがって、固定部材54dを縦方向(上下方向)に移動させることによって、全ての棒状部54aを同時に縦方向(上下方向)に移動させる作用が得られる。
【0053】
ここで、掻き落とし部54bは、一例として、
図5に示すように、棒状部54aに取付けられたブラシ部を備えて構成されている。あるいは、変形例として、
図6に示すように、棒状部54aに一体に設けられた拡径部を備える構成や、
図7に示すように、棒状部54aに別体に設けられる拡径部(例えば、樹脂材料等を用いて形成される環状部材等)を備える構成としてもよい。
【0054】
また、第1クリーニング装置54は、棒状部54aを縦方向(上下方向)に移動させる機構として、横方向の駆動力を角度90度変換して棒状部54aを縦方向に移動させる昇降装置54cを備えて構成されている。昇降装置54cは、一例として、
図8に示すように、スライド機構55を備えて構成されている。あるいは、変形例として、
図9に示すように、リンク機構56を備える構成としてもよい。いずれの構成によっても、棒状部54aが設置される第1ローダ82の高さ方向寸法を小さく形成することができる。
【0055】
ここで、スライド機構55の例として、エアシリンダやスライダ等の駆動機構(不図示)に接続されて横方向移動を行う板状もしくは棒状のスライド部材55aを備えている。この、スライド部材55aには所定角度で傾斜した長孔55bが設けられており、固定部材54dの側部に突設されたピン54eがスライド移動可能に嵌入されている。この構成によれば、スライド部材55aを横方向に移動させることにより、ピン54eが長孔56d内をスライド移動しながら、固定部材54dが上下方向に移動する作用が得られる。この構成によれば、きわめて簡素な構造によって、棒状部54aを縦方向(上下方向)に移動させる構成が実現できる。
【0056】
一方、リンク機構56の例として、エアシリンダやスライダ等の駆動機構(不図示)に接続されて横方向移動を行う板状もしくは棒状のスライド部材56aと、略L字型を有し回動支点56cにおいて回動可能に固定されると共に一端部がスライド部材56aに回動可能に枢結された連結部材56bを備えている。この、連結部材56bの他端部には長孔56dが設けられており、固定部材54dの側部に突設されたピン54eがスライド移動可能に嵌入されている。この構成によれば、スライド部材56aを横方向に移動させることにより、連結部材56bが回動して、ピン54eが長孔56d内をスライド移動しながら、固定部材54dが上下方向に移動する作用が得られる。この構成によれば、棒状部54aが設置される第1ローダ82の高さ方向寸法を相対的に小さくしつつ、棒状部54aの上下方向の移動量を相対的に大きくする構成が実現できる。
【0057】
以上説明した構成によれば、樹脂保持部52内において棒状部54aを縦方向(上下方向)に移動させて、掻き落とし部54bが保持孔52aの内壁部52dに摺接しながら移動する作用が得られる。これにより、内壁部52dに付着した汚れ(樹脂Rに付着していた樹脂粉や一部溶融により発生した樹脂粉等)を、掻き落とし部54bによって掻き落とすことができる。
【0058】
したがって、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、樹脂保持部52内に付着した汚れ(樹脂粉)が樹脂Rと共にポット40内に入り込み、異物として混入されることを原因とする成形不具合の発生を防止できる。
【0059】
また、樹脂保持部52(保持孔52a)内で樹脂Rを加熱することによって、万一、樹脂Rが内壁部52dに溶着(固着)して、落下しない事象が発生した場合や、あるいは、内壁部52dに堆積した汚れ(樹脂粉)に樹脂Rが引っ掛かり、落下しない事象が発生した場合においても、縦方向(上下方向)に移動する棒状部54aをプッシャとして兼用することができるため、棒状部54aの下端面で樹脂Rを押動する作用が得られる。
【0060】
したがって、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、樹脂Rが落下せず、樹脂Rがポット40内に投入されないことを原因とする成形不具合の発生を防止できる。
【0061】
ここで、本願発明者が鋭意研究した結果、上記の構成を備える樹脂封止装置100において、樹脂保持部52(保持孔52a)にタブレット型の樹脂Rを保持した状態で所定温度(例えば、前述の120℃程度)まで加熱することによって、樹脂保持部52(保持孔52aの内壁部52d)に樹脂粉が汚れとして付着してしまうという課題の解決を図ることが可能となる。一方で、樹脂保持部52で樹脂Rを加熱したりワーク加熱装置51でワークWを加熱したりすることによって、樹脂保持部52(保持孔52a)内から取除かれた汚れ(樹脂粉)や装置内で浮遊する粉塵等が第1ローダ82の下面82a(樹脂Rの出入口52bが設けられる面であってシャッタ52cの下面を含む)に付着してしまうおそれがある。この第1ローダ82の下面82aに付着した汚れは、ポット40内やワーク支持部38上もしくはワーク支持部38上に載置されたワークW上に落下してしまうおそれがあり、その結果、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、異物として混入されて成形不具合を引き起こす原因となる。
【0062】
このような課題に対して、本実施形態に係る樹脂封止装置100は、第1ローダ82の下面82aをクリーニングする第2クリーニング装置57を備えている。一例として、第2クリーニング装置57(57A)は、
図1に示すように、第1ローダ82が移動する経路途中、例えば、供給ユニット100Aにおいて、第1ローダ82が通過する直下位置に設けられている。ただし、プレスユニット100B等に設けられる構成としてもよい。
【0063】
第2クリーニング装置57(57A)の具体的な構成例として、
図10、
図11に示すように、外枠部58aと底部58bとを有して上面が開口形成されたケース部58(58A)と、ケース部58(58A)を上下方向に移動させる駆動機構59と、ケース部58(58A)の内部と外部とを連通する管状のパイプ部60と、パイプ部60が接続されてケース部58(58A)内に吸引力を作用させる集塵装置61と、を備えて構成されている。この構成の動作例として、第2クリーニング装置57(57A)の直上に第1ローダ82を静止させて、駆動機構59を駆動して、ケース部58(58A)の外枠部58aの上端部58cが第1ローダ82の下面82aに当接(もしくは近接)する位置まで当該ケース部58(58A)を上昇させる。次いで、集塵装置61を稼働させパイプ部60を介してケース部58(58A)内の空気を吸引する。これによって、第1ローダ82の下面82a(シャッタ52cの下面を含む)に付着した汚れ(樹脂粉)を吸引することができる。この動作は、第1ローダ82がワークW及び樹脂Rを樹脂封止金型10へ搬入する前でそれらを保持している状態(すなわち、シャッタ52cが閉じの状態)で実施してもよく、もしくは、第1ローダ82がワークW及び樹脂Rを樹脂封止金型10へ搬入した後でそれらを保持していない状態(すなわち、シャッタ52cが閉き(もしくは閉じ)の状態)で実施してもよい。なお、シャッタ52cが閉きの状態で実施すれば、保持孔52a内にも吸引力を作用させて、その内部の汚れ(樹脂粉)を吸引することもできる。また、第2クリーニング装置57(57A)は、ワーク保持部50をクリーニングしてもよい(後述する他の構成についても同様)。
【0064】
あるいは、他の例として、第2クリーニング装置57(57B)は、第1ローダ82の下面82aに沿って移動可能なように当該第1ローダ82に支持されて設けられている。
【0065】
第2クリーニング装置57(57B)の具体的な構成例として、外枠部58aと底部58bとを有して上面が開口形成されたケース部58(58B)と、ケース部58(58B)の内部と外部とを連通する管状のパイプ部60と、パイプ部60が接続されてケース部58(58B)内に吸引力を作用させる集塵装置61と、を備えて構成されている。ここで、ケース部58(58B)は、移動機構(不図示)を有して、第1ローダ82の下面82aに沿って移動可能なように当該第1ローダ82に支持されている。このとき、外枠部58aの上端部58cが第1ローダ82の下面82aに当接(もしくは近接)する位置となるように配置されている。
【0066】
この構成の動作例として、第1ローダ82の移動中や停止中において、移動機構(不図示)を駆動して、ケース部58(58B)を第1ローダ82の下面82aに沿って移動させる。このとき、集塵装置61を稼働させて、パイプ部60を介してケース部58(58B)内の空気を吸引する。これによって、第1ローダ82の下面82a(シャッタ52cの下面を含む)に付着した汚れ(樹脂粉)を吸引することができる。この動作は、第1ローダ82がワークW及び樹脂Rを樹脂封止金型10へ搬入する前でそれらを保持している状態(すなわち、シャッタ52cが閉じの状態)で実施してもよく、もしくは、第1ローダ82がワークW及び樹脂Rを樹脂封止金型10へ搬入した後でそれらを保持していない状態(すなわち、シャッタ52cが閉き(もしくは閉じ)の状態)で実施してもよい。なお、シャッタ52cが閉きの状態で実施すれば、保持孔52a内にも吸引力を作用させて、その内部の汚れ(樹脂粉)を吸引することもできる。また、この動作は、第1ローダ82の移動中に実施すれば、サイクルタイムが増加して生産性が低下してしまうことがない。また、第2クリーニング装置57(57B)は、図示しない第1ローダ82の左右方向への搬送機構側に固定しておき、第1ローダ82の前後方向への移動の際に第1ローダ82の下面82aが第2クリーニング装置57(57B)上を通過することで、クリーニングできる構成としてもよい。
【0067】
以上説明した第2クリーニング装置57によれば、第1ローダ82の下面82a(シャッタ52cの下面を含む)に付着した汚れ(樹脂粉)を除去する作用が得られる。したがって、ワークWを樹脂Rで封止して成形品Wpに加工する際に、第1ローダ82の下面82aに付着した汚れ(樹脂粉)がポット40内やワーク支持部38上もしくはワーク支持部38上に載置されたワークW上に落下して、異物として混入されることを原因とする成形不具合の発生を防止できる。
【0068】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂封止装置100によれば、樹脂封止金型10にタブレット型の樹脂Rを投入した際に、樹脂封止金型10から当該樹脂Rに熱が奪われることに起因して生じる投入部やその周囲の温度低下を防止すること可能となる。したがって、樹脂封止工程において、サイクルタイムを長くさせることなく、且つ、樹脂Rの温度低下等に起因して生じ得る成形不具合を低減することができる。その一方で、樹脂保持部52の内部に樹脂Rを保持して加熱する構成に起因して、当該内部に樹脂Rの汚れが付着し易くなるという課題が新たに生じるが、クリーニングにより当該汚れの除去を行うことが可能となる。
【0069】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、圧縮成形方式の樹脂封止装置においても、インローダによる搬送時にワークを加熱する装置(本実施形態に係るワーク加熱装置)や、インローダの下面をクリーニングする装置(本実施形態に係る第2クリーニング装置)を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 樹脂封止金型
20 下型
21 上型
40 ポット
50 ワーク保持部
51 ワーク加熱装置
52 樹脂保持部
53 樹脂加熱装置
54 第1クリーニング装置
54a 棒状部
54b 掻き落とし部
54c 昇降装置
57 第2クリーニング装置
70 プレス装置
82 第1ローダ(インローダ)
84 第2ローダ(オフローダ)
100 樹脂封止装置
R モールド樹脂
W ワーク
Wa 第1部材
Wb 第2部材
Wp 成形品