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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20240327BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240327BHJP
   H02N 2/10 20060101ALI20240327BHJP
   H10N 30/88 20230101ALI20240327BHJP
   H10N 30/50 20230101ALN20240327BHJP
【FI】
F16K31/02 A
H10N30/20
H02N2/10
H10N30/88
H10N30/50
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020155727
(22)【出願日】2020-09-16
(62)【分割の表示】P 2020031577の分割
【原出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134916
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009035(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0221853(US,A1)
【文献】特開平03-234981(JP,A)
【文献】特開平09-079408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
H02N 2/00- 2/18
H10N 30/20
H10N 30/50
H10N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の弁部をそれぞれ個別に駆動する複数のアクチュエータと、
前記複数の弁部とそれぞれ個別に接離する弁座を複数有するバルブ機能モジュールと、
前記バルブ機能モジュールを収納するハウジングと、を備えるバルブ装置であって、
前記複数のアクチュエータのそれぞれは、
基盤となる基部と、
前記基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、
前記取付け面に前記圧電素子と並んで一端部が取付けられ、前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部材と、
前記圧電素子および前記支持部材それぞれにおける他端部と接続され、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向および前記第2長手方向それぞれと異なる方向である変位方向に変位して前記弁部を駆動する作用部と、を備え、
前記ハウジングは、
流体が供給される供給口と、
前記複数の弁部とそれぞれ個別に接離する前記弁座との離間によって前記供給口から供給された流体をそれぞれ個別に排出する複数の排出口と、
前記バルブ機能モジュールと前記ハウジングとの空隙を確保して前記バルブ機能モジュールを保持する保持部と、を備え
前記ハウジングに蓋が取り付けられて前記バルブ機能モジュールが前記ハウジング内に収納されている
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記バルブ機能モジュールの第1面を保持することにより前記バルブ機能モジュールとの空隙を確保する、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記保持部は、締結部品によって前記バルブ機能モジュールを前記保持部に締結することにより前記バルブ機能モジュールを保持する、請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
それぞれの前記アクチュエータは、前記基部および前記作用部それぞれに連結され、前記圧電素子を前記第1長手方向に圧縮する圧縮部材をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
それぞれの前記アクチュエータが備える前記圧電素子に個別に電圧又は電流を供給して、前記圧電素子を個別に伸縮駆動させる駆動部をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記圧電素子の一端部または他端部の少なくとも一方は、前記支持部材よりも熱膨張率の高い連結部材を介して接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記連結部材は、前記基部と一体に形成されている、請求項6に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記連結部材は、前記作用部と一体に形成されている、請求項6に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、比較的低い電圧で所要の変位を発生させる素子として、圧電素子(ピエゾ素子)が存在する。圧電素子は、圧電効果を備えた物質と薄い電極とを交互に積み重ねた構造を持ち、力を電圧に変換する、または、電圧を力に変換する機能を持った素子である。圧電素子は、電圧の制御によって微妙に伸縮変化させることが可能であるため、インクジェットプリンタのインク射出機構やアクチュエータなどの制御機構等、種々の分野に用いられている。圧電素子は、電圧が印加されると伸縮するが、発生する変位が小さいため、当該伸縮する圧電素子の変位を拡大して対象物に作用させるアクチュエータが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、2つの圧電素子を変位させることにより、変位量を効果的に拡大して出力することができるアクチュエータが開示されている。
【0004】
また、流体の通過と停止を制御するバルブ装置において圧電素子の変位を利用して弁部を駆動して弁座との接離を制御する技術がある。圧電素子によって駆動された弁部は、弁座と離間されることによって流体を通過させ、または弁座と密接されることによって流体を停止させる。
【0005】
例えば、特許文献2には、バルブ本体に取り付けられた弁座と圧電素子によって変位される弁部を有する圧電式バルブ装置が開示されている。圧電素子の変位はアクチュエータによって拡大されて弁部を駆動して弁部と弁座とを接離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2019/009035号
【文献】特開2017-192192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のアクチュエータでは、圧電素子を2つ用いるため、それぞれの圧電素子の駆動を制御する必要があり、所望する変位を得るための駆動系の制御が難しいという問題があった。
【0008】
また、バルブ装置本体は様々な温度環境において設置される可能性があり、バルブ装置本体の温度変化によって変位拡大機能の温度が変化する場合がある。変位拡大機能は圧電素子の小さな変位を拡大するため、変位拡大機能の温度が変化すると変位拡大機能の熱膨張または熱収縮によって弁部と弁座との位置関係または接触圧力が変化して、流体の流量特性が大きく変化してしまう場合があった。
【0009】
そこで、本発明は、簡単に駆動系を制御することができるとともに、バルブ装置本体に温度変化があった場合であっても流量特性の変化が小さいバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の課題を解決するため、バルブ装置は、弁部を駆動するアクチュエータと、弁部と接離する弁座を有するバルブ機能モジュールと、バルブ機能モジュールを収納するハウジングと、を備えるバルブ装置であって、アクチュエータは、基盤となる基部と、基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、取付け面に圧電素子と並んで一端部が取付けられ、第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部材と、圧電素子および支持部材それぞれにおける他端部と接続され、圧電素子の伸縮に伴って、第1長手方向および第2長手方向それぞれと異なる方向である変位方向に変位して弁部を駆動する作用部と、を備え、ハウジングは、流体が供給される供給口と、弁部と弁座との離間によって供給口から供給された流体を排出する排出口と、バルブ機能モジュールとハウジングとの空隙を確保してバルブ機能モジュールを保持する保持部と、を備える。
【0011】
(2)また、実施形態のバルブ装置において、保持部は、バルブ機能モジュールの第1面を保持することによりバルブ機能モジュールとの空隙を確保するものであってもよい。
【0012】
(3)また、実施形態のバルブ装置において、保持部は、締結部品によってバルブ機能モジュールを保持部に締結することによりバルブ機能モジュールを保持するものであってもよい。
【0013】
(4)また、実施形態のバルブ装置において、アクチュエータは、基部および作用部それぞれに連結され、圧電素子を第1長手方向に圧縮する圧縮部材をさらに備えるものであってもよい。
【0014】
(5)また、実施形態のバルブ装置において、圧電素子に電圧又は電流を供給して、圧電素子を伸縮駆動させる駆動部をさらに備えるものであってもよい。
【0015】
(6)また、実施形態のバルブ装置において、圧電素子の一端部または他端部の少なくとも一方は、支持部材よりも熱膨張率の高い連結部材を介して接続されているものであってもよい。
【0016】
(7)また、実施形態のバルブ装置において、連結部材は、基部と一体に形成されているものであってもよい。
【0017】
(8)また、実施形態のバルブ装置において、連結部材は、作用部と一体に形成されているものであってもよい。
【0018】
(9)上記の課題を解決するため、バルブ装置は、複数の弁部をそれぞれ個別に駆動する複数のアクチュエータと、複数の弁部とそれぞれ個別に接離する弁座を複数有するバルブ機能モジュールと、バルブ機能モジュールを収納するハウジングと、を備えるバルブ装置であって、複数のアクチュエータのそれぞれは、基盤となる基部と、基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、取付け面に圧電素子と並んで一端部が取付けられ、第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部材と、圧電素子および支持部材それぞれにおける他端部と接続され、圧電素子の伸縮に伴って、第1長手方向および第2長手方向それぞれと異なる方向である変位方向に変位して弁部を駆動する作用部と、を備え、ハウジングは、流体が供給される供給口と、複数の弁部とそれぞれ個別に接離する弁座との離間によって供給口から供給された流体をそれぞれ個別に排出する複数の排出口と、バルブ機能モジュールとハウジングとの空隙を確保してバルブ機能モジュールを保持する保持部と、を備える。
【0019】
(10)また、実施形態のバルブ装置において、保持部は、バルブ機能モジュールの第1面を保持することによりバルブ機能モジュールとの空隙を確保するものであってもよい。
【0020】
(11)また、実施形態のバルブ装置において、保持部は、締結部品によってバルブ機能モジュールを保持部に締結することによりバルブ機能モジュールを保持するものであってもよい。
【0021】
(12)また、実施形態のバルブ装置において、それぞれのアクチュエータは、基部および作用部それぞれに連結され、圧電素子を第1長手方向に圧縮する圧縮部材をさらに備えるものであってもよい。
【0022】
(13)また、実施形態のバルブ装置において、それぞれのアクチュエータが備える圧電素子に個別に電圧又は電流を供給して、圧電素子を個別に伸縮駆動させる駆動部をさらに備えるものであってもよい。
【0023】
(14)また、実施形態のバルブ装置において、圧電素子の一端部または他端部の少なくとも一方は、支持部材よりも熱膨張率の高い連結部材を介して接続されているものであってもよい。
【0024】
(15)また、実施形態のバルブ装置において、連結部材は、基部と一体に形成されているものであってもよい。
【0025】
(16)また、実施形態のバルブ装置において、連結部材は、作用部と一体に形成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、バルブ装置は、弁部を駆動するアクチュエータと、弁部と接離する弁座を有するバルブ機能モジュールと、バルブ機能モジュールを収納するハウジングと、を備えるバルブ装置であって、アクチュエータは、基盤となる基部と、基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、取付け面に圧電素子と並んで一端部が取付けられ、第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部材と、圧電素子および支持部材それぞれにおける他端部と接続され、圧電素子の伸縮に伴って、第1長手方向および第2長手方向それぞれと異なる方向である変位方向に変位して弁部を駆動する作用部と、を備え、ハウジングは、流体が供給される供給口と、弁部と弁座との離間によって供給口から供給された流体を排出する排出口と、バルブ機能モジュールとハウジングとの空隙を確保してバルブ機能モジュールを保持する保持部と、を備えることにより、簡単に駆動系を制御することができるとともに、バルブ装置本体に温度変化があった場合であっても流量特性の変化が小さいバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るバルブ装置の正面図である。
図2】実施形態に係るバルブ装置の側面図である。
図3】第1変形例に係るバルブ装置の側面図である。
図4】第1実施例に係るアクチュエータの正面図である。
図5】第1実施例に係るアクチュエータの斜視図である。
図6】第1実施例に係る圧縮部材の正面図である。
図7】第2実施例に係るアクチュエータの正面図である。
図8】第2実施例に係る圧縮部材の正面図である。
図9】第3実施例に係るアクチュエータの正面図である。
図10】第3実施例に係る圧縮部材の正面図である。
図11】第2変形例に係るバルブ装置の斜視図である。
図12】第2変形例に係るバルブ機能モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態におけるバルブ装置について詳細に説明する。なお、各図において重複する同一符号の説明は省略する場合がある。
【0029】
先ず、図1および図2を用いて、バルブ装置について説明する。図1は、実施形態に係るバルブ装置の正面図である。
【0030】
図1において、バルブ装置100は、第1実施例に係るアクチュエータ1、バルブ機能モジュール2およびハウジング3を備える。
【0031】
第1実施例に係るアクチュエータ1は、弁部11を駆動する。アクチュエータ1は、基部12、圧電素子13、支持部材14、作用部15および連結部材16を備える。
【0032】
基部12は、アクチュエータ1の基盤となる部分であり、アクチュエータ1は、基部12を介してバルブ機能モジュール2に取付けられる。基部12は、取付穴122を有し、例えば取付穴122に対応してバルブ機能モジュール2に設けられたタップ穴に対して、ねじを、取付穴122を貫通させて取り付けることによりアクチュエータ1をバルブ機能モジュール2に取付けることができる。基部12は、例えば、ステンレス鋼等で形成することができる。
【0033】
圧電素子13は、基部12の取付け面に圧電素子13の一端部が接続されている。基部12の取付け面には、基部12と一対形成されている取付部121が取り付けられており、圧電素子13は、取付部121を介して基部12に取り付けられている。圧電素子13は、第1長手方向D1に延びる細長い形状に形成されている。圧電素子13は、例えば、図1に示すように長方体に形成することができる。
【0034】
圧電素子13は、電圧又は電流を供給されることにより第1長手方向D1に収縮する。圧電素子13を構成する主要な材料としては、圧電効果を有する物質である圧電体、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。圧電素子13は、薄い電極と、薄い圧電体を交互に積み重ねた積層構造であってもよい。このような積層構造とすることで、低い電圧でも大きな変位を実現することが可能になる。なお、図1において圧電素子13は、長方体に形成される場合を例示したが、形状は長方体に限定されるものではない。圧電素子13は、例えば、三角柱状または円柱状に形成されてもよい。
【0035】
本実施形態において、圧電素子13は、連結部材16を介して基部12に取り付けられている。連結部材16は、圧電素子13の熱膨張によるアクチュエータ1に対する影響を補償する目的で用いられる。熱膨張に関する影響については後述する。
【0036】
支持部材14は、基部12の取付け面に圧電素子13と並んで支持部材14の一端部が取付けられる。支持部材14は、取付部121を介して基部12に取り付けられている。支持部材14は、第1長手方向D1と交差する第2長手方向D2の方向に延びるように長方体に形成されているが、支持部材14の形状は、これに限定されるものではない。
【0037】
作用部15は、圧電素子13および支持部材14のそれぞれにおける他端部と接続される。作用部15の先端には弁部11が取り付けられている。作用部15は、圧電素子13の伸縮に伴って、第1長手方向D1および第2長手方向D2のそれぞれとは異なる方向である変位方向D4に変位して弁部11を駆動する。例えば、圧電素子13が伸びると、支持部材14もそれに合わせて変形するため、作用部15の先端に取り付けられた弁部11を、変位方向D4の図示下方向に移動させることができる。一方、圧電素子13が縮むと、支持部材14もそれに合わせて変形するため、作用部15の先端に取り付けられた弁部11を、変位方向D4の図示上方向に移動させることができる。作用部15の先端に取り付けられた弁部11は、圧電素子13の伸縮が作用部15の移動に伴い、変位方向D4に所定のストロークで移動される。すなわち、圧電素子13の第1長手方向D1の伸縮は作用部15の図示左右方向の長さによって変位方向D4の弁部11のストロークに拡大される。
【0038】
弁部11は、変位方向D4に所定のストロークで移動されることによりバルブ機能モジュール2に形成された弁座21と接離する。弁部11は、例えばゴムによって形成される。弁座21は弁部11の形状に対応した弁部11との接触面を有している。弁座21の形状は、例えば、バルブ機能モジュール2の平面部に排出用の穴を開けることにより形成される。また、弁座21の形状は、バルブ機能モジュール2に煙突状の突起を設けることにより形成されてもよい。なお、弁座21の形状を煙突状の突起とすることにより、弁部11との接触面積が小さくなり、接圧を向上させることができる。また、弁座21の形状を煙突状の突起とすることにより、流体の流量を安定化させ、または流量を大きくことが可能となる。弁部11と弁座21が接離することにより、流体を遮断しまたは通過させるバルブ機能が実現される。本実施形態におけるバルブ装置100は、流体が空気である場合のエアバルブを例示するが、流体は空気に限定されるものではなく、例えば、液体、粉体、ゲル状体等であってもよい。また、流体には固体等の不純物が含まれていてもよい。
【0039】
弁部11は、弁座21と接することによりバルブの閉状態を作りだし、空気圧力室5と排出口24の間の空気の通過を遮断することができる。弁部11は、所定の接圧で弁座21と接することにより、空気の遮断力を高めることができる。一方、弁部11は、弁座21と離れることによりバルブの開状態を作り出し、空気圧力室5と排出口24の間の空気の通過を可能とすることができる。一般的にバルブは、バルブの開度に対する流量の変化にて表されるバルブ特性(流量特性)を有している。本実施形態では、変位方向D4の弁部11の移動ストローク、すなわち弁部11と弁座21との距離によって流量特性が決定される。従って、バルブ装置100の流量特性は、作用部15の変位方向D4における移動によって決定される。
【0040】
ハウジング3は、アクチュエータ1が取り付けられたバルブ機能モジュール2を収納する。ハウジング3は、収納しているアクチュエータ1をバルブ装置100の外部の粉塵等から保護する保護枠として機能する。ハウジング3は、保持部33を備える。保持部33は、バルブ機能モジュール2を保持して、バルブ機能モジュール2とハウジング3との空隙4を確保する部分である。保持部33は、バルブ機能モジュール2の第1面22と接し、締結部品331(例えば、ネジ)によってバルブ機能モジュール2と締結されることによりバルブ機能モジュールを保持する。空隙4は、ハウジング3とバルブ機能モジュール2との間の熱抵抗を増やし(熱伝導を小さくし)、ハウジング3の温度変化がバルブ機能モジュールに伝わりにくくすることができる。保持部33と第1面22の接触による熱抵抗率は空隙4の熱抵抗率に比べて小さい(熱伝導率が大きい)ため、熱伝導を小さくするには保持部33と第1面22との接触面積は小さい方が好ましい。従って、第1面22には接触面積を小さくする形状(例えば、凹凸形状など)を用いてもよい。また、保持部33と第1面22との間に、熱伝導率が小さい部材(断熱材)を挟み込むようにしてもよい。
【0041】
アクチュエータ1は、圧電素子13の伸縮を拡大して弁部11を移動させるため、アクチュエータ各部の温度変化による熱膨張または熱収縮は、弁部11の移動量に影響を与え、バルブの流量特性が変化する。ハウジング3とバルブ機能モジュール2の間に空隙4を作ることにより、ハウジング3とバルブ機能モジュール2との接触面積が小さくなり、ハウジング3とバルブ機能モジュール2の間の熱伝導が小さくなり、ハウジング3に温度変化があった場合であってもアクチュエータ1が取り付けられているバルブ機能モジュール2の温度変化が小さくなり、もって流量特性の変化を小さくすることができる。
【0042】
バルブ機能モジュール2の第1面22には、弁部11と弁座21が離れることにより排出される空気を排出する排出口24を有する。ハウジング3は、保持部33において排出口24に対抗して、排出口24から排出された空気を排出する排出口32を有する。
【0043】
ハウジング3は、空気を供給するための供給口31を有する。供給口31から供給された圧力空気は、空隙4を介して空気圧力室5に導入される。空気圧力室5に導入された圧力空気は、弁部11と弁座21が離れることにより排出口32から排出される。なお、供給口31から供給された圧力空気は、例えば、アクチュエータ1、圧電素子13または支持部材14を冷却するように流路を形成して空気圧力室5に導入されてもよい。
【0044】
圧縮部材60は、基部12および作用部15それぞれに連結され、圧電素子13を第1長手方向D1に圧縮する。圧縮部材60は、引張方向(D1)の加重に対して損傷しやすい圧電素子13に、引張方向の加重がかかりにくくすることで圧電素子13の損傷を防止することができる。圧縮部材60の形状の詳細は後述する。
【0045】
駆動部70は、圧電素子13に電圧又は電流を供給して、圧電素子13を伸縮駆動させる。駆動部70は図示しない制御装置からの入力信号に基づき圧電素子13を駆動することにより、圧力空気の遮断または排出を制御することができる。
【0046】
なお、バルブ装置100は、圧電素子13に電圧が印加等されていない状態で、圧力空気の排出が遮断されるノーマルクローズであってもよく、一方、圧電素子13に電圧が印加等されていない状態で、圧力空気の排出がされるノーマルオープンであってもよい。すなわち、圧電素子13に対する非通電時における弁座21に対する弁部11の位置と、通電時における圧電素子13の伸縮方向の組合せによって、バルブ装置100はノーマルクローズとノーマルオープンの両方を実施することが可能となる。非通電時における弁座21に対する弁部11の位置は、例えば取付穴122の大きさを大きめにしておくことにより、ネジの締結時において設定することができる。また、通電時における圧電素子13の伸縮方向は、駆動部70から供給される電圧等の極性を変更することにより設定することができる。
【0047】
図2は、実施形態に係るバルブ装置100の側面図である。図2において、バルブ装置100は、ハウジング3と、ハウジング3に取り付けられた蓋35を有する。
【0048】
ハウジング3と蓋35は、アルミダイキャストあるいはPPS等の樹脂材料を適用することができる。蓋35は、ハウジング3に取り付けられることにより、ハウジング3の内部を密閉して、導入された圧力空気の圧力を維持する。ハウジング3と蓋35の間には、例えばゴムパッキンが挟まれてもよい。
【0049】
バルブ機能モジュール2は、第1面22においてハウジング3の保持部33において、上下の2本の締結部品331によって保持される。このため、バルブ機能モジュール2とハウジング3の間には空隙4が生じる。このため、ハウジング3とバルブ機能モジュールとの接触面積が小さくなり、ハウジング3とバルブ機能モジュール間の熱伝導が小さくなり、ハウジング3に温度変化があった場合であってもアクチュエータ1が取り付けられているバルブ機能モジュールの温度変化が小さくなり、流量特性の変化が小さくなる。
【0050】
次に、図3を用いて、バルブ装置100の第1変形例を説明する。図3は、第1変形例に係るバルブ装置の側面図である。
【0051】
第1変形例に係るバルブ装置100aは、図2で説明したバルブ装置100に対して、バルブ機能モジュール2aが第2面23においてハウジング3に接している点において異なる。バルブ機能モジュール2aは、第1面22および第2面23の2面においてハウジング3の底部と接することにより、例えば、振動等に対するアクチュエータ1の振動を低減させる等の機械的な強度を向上させることができる。なお、図3における第2面23の位置はバルブ機能モジュール2aの図示左端に設ける場合を例示したが、第2面23の位置および数は任意である。例えば、第2面23の位置を図示右端に設けてハウジング3の底部と接するようにしてもよい。また、1または複数の第2面23をハウジング3または蓋35と接するように設けてもよい。図3における他の部分は図2の説明と重複するため、説明を省略する。
【0052】
次に、図4および図5を用いて、図1で説明した第1実施例に係るアクチュエータ1の詳細を説明する。図4は、第1実施例に係るアクチュエータ1の正面図である。
【0053】
図4において、作用部15は、図1で説明したように、圧電素子13の伸縮に伴って変位方向D4に変位して弁部11を駆動する。したがって、圧電素子13が温度変化によって熱膨張または熱収縮した場合、弁部11の位置または弁座21との接触圧に影響を与え、流量特性に影響を与える。ここで、連結部材16を用いた温度変化に対する圧電素子13の伸縮に対する補償について説明する。
【0054】
圧電素子13は、連結部材16を介して基部12に取り付けられている。ここで、連結部材16は、支持部材14より熱膨張率の高い材料によって作られている。例えば、圧電素子13の熱膨張率をα1、第1長手方向D1の長さをL1とした場合、温度上昇1℃における長さの変化dL1は、dL1=α1×L1である。同様に、連結部材16の熱膨張率をα2、第1長手方向D1の長さをL2とした場合、温度上昇1℃における長さの変化dL2は、dL2=α2×L2、支持部材14の熱膨張率をα3、第2長手方向D2の長さをL3とした場合、温度上昇1℃における長さの変化dL3は、dL3=α3×L3である。
【0055】
圧電素子13の熱膨張率α1は、例えば、-4.32PPM/℃と負の値となるため、圧電素子13と合わせた変化dL1+dL2は、dL1+dL2=α2×L2-α1×L1(α1は正の値)となる。ここでdL1+dL2=dL3となるように各パラメータを設計することにより、変位方向D4における変位を補償することができる。例えば、dL1+dL2=dL3とすると、α2×L2-α1×L1=α3×L3。ここで、L1+L2=L3とすると、α2/α3=1+(L1/L2)×(1+α1/α3)>1となり、α2>α3となる。すなわち、連結部材16の熱膨張率α2を、支持部材14の熱膨張率α3より高い材料とすることにより、アクチュエータ1の熱膨張に対する流量特性の補償をすることが可能となる。
【0056】
なお、連結部材16は、圧電素子13の一端部に代えて、圧電素子13の他端部に配置されてもよい。すなわち、連結部材16は、圧電素子13における他端部と、作用部15と、を接続するようにしてもよい。さらに、連結部材16は、圧電素子13の一端部および他端部に配置されててもよい。すなわち、連結部材16の一方は、圧電素子13における一端部と、基部12と、を接続するとともに、連結部材16の他方は、圧電素子13における他端部と、作用部15とを接続するようにしてもよい。
【0057】
図5は、第1実施例に係るアクチュエータ1の斜視図である。図5において、アクチュエータ1は、2つの圧縮部材60を有する。2つの圧縮部材60は、圧電素子13および支持部材14を挟む位置にそれぞれ配置されている。2つの圧縮部材60を用いることにより、圧電素子13に対して圧縮力を均等に掛けることが可能となり、圧電素子13の損傷を防止することが可能となる。
【0058】
圧縮部材60は、引張方向(D1)の加重に対して損傷しやすい圧電素子13に、引張方向の加重がかかりにくくすることで圧電素子13の損傷を防止することができる。
【0059】
次に、図6を用いて、第1実施例に係る圧縮部材60の詳細を説明する。図6は、第1実施例に係る圧縮部材60の正面図である。
【0060】
図6において、圧縮部材60は、平面視において、第1長手方向D1および第2長手方向D2それぞれと交差する第3長手方向D3に延びている。圧縮部材60には、第3長手方向D3に伸縮可能な伸縮部61および固定部62が形成されている。
【0061】
伸縮部61は、平面視で第3長手方向D3に延びるとともに、繰り返し湾曲する蛇腹状に形成されている。図示の例では、第3長手方向に3箇所湾曲している構造となっているが、この例に限られず、形状は任意に変更することができる。伸縮部61は、圧縮部材60における第3長手方向D3の中間部に形成されている。固定部62は、圧縮部材60の第3長手方向D3における両端部に形成されている。固定部62は、第3長手方向D3と直交する方向の寸法である幅寸法が大きく形成され、図5に示すように、基部12および作用部15それぞれに連結される。
【0062】
次に、図7および図8を用いて、第2実施例に係るアクチュエータを説明する。図7は、第2実施例に係るアクチュエータの正面図である。図8は、第2実施例に係る圧縮部材の正面図である。
【0063】
第2実施例に係るアクチュエータ1aは、圧縮部材60Bが取り付けられる位置が、第1実施例に係るアクチュエータ1と異なっている。すわなち、2つの圧縮部材60Bの一方は、圧電素子13に沿って第1長手方向D1に延びており、他方の圧縮部材60Bは支持部材14に沿って第2長手方向D2に延びている。そして、第1長手方向D1に延びる圧縮部材60Bには、図8に示す、第1長手方向D1に伸縮可能な伸縮部61Bが形成されている。
【0064】
圧縮部材60Bの第1長手方向D1における両端部には、第1長手方向D1と直交する方向の寸法である幅寸法が大きく形成された固定部62Bが形成されている。図8に示す2つの固定部62B同士の第3長手方向D3の寸法L3は、図7に示す作用部15および基部12それぞれに形成された固定用のスリットの間隔よりも短くなっている。
【0065】
このため、圧縮部材60Bを作用部15および基部12の固定用のスリットに装着する際には、圧縮部材60Bを第1長手方向D1に引張り、少し伸ばした状態に弾性変形した状態で取付ける。これにより、圧縮部材60Bがスリットに装着された後に、第3長手方向D3に復元変形することで、圧縮部材60Bからの圧縮力を、作用部15および基部12を介して圧電素子13に与えることができる。
【0066】
次に、図9および図10を用いて、第3実施例に係るアクチュエータを説明する。図9は、第3実施例に係るアクチュエータの正面図である。図10は、第3実施例に係る圧縮部材の正面図である。
【0067】
第3実施例に係るアクチュエータ1bにおいては、圧縮部材60Cの形状が、第1実施例に係るアクチュエータ1の圧縮部材60と異なっている。すなわち、第3実施例に係るアクチュエータ1bの圧縮部材60Cには、アクチュエータ1における伸縮部61に相当する部位が形成されておらず、全体が第3長手方向D3に真っすぐ延びている。図10に示す2つの固定部62同士の第3長手方向D3の寸法L5は、図9に示す作用部15および基部12それぞれに形成された固定用のスリット同士の第3長手方向D3の寸法L2よりも短くなっている。
【0068】
このため、圧縮部材60Cを作用部15および基部12の固定用のスリットに装着する際には、圧縮部材60Cを第1長手方向D1に引張り、少し伸ばした状態に弾性変形した状態で取付ける。これにより、圧縮部材60Cが装着された後に、第3長手方向D3に復元変形することで、圧縮部材60Cからの圧縮力を作用部15および基部12に与えることができる。
【0069】
また、その他の実施例として、圧電素子13における第1長手方向D1の一端部、および支持部材14における第2長手方向D2の一端部の少なくとも一方に、圧電素子13および支持部材14に対して、変位方向D4の変形を促すヒンジ部材が設けられてもよい。このようなヒンジ部材は、圧電素子13における第1長手方向D1の他端部、および支持部材14における第2長手方向D2の他端部の少なくとも一方に設けてもよい。
【0070】
次に、図11および図12を用いて、第2変形例に係るバルブ装置を説明する。図11は、第2変形例に係るバルブ装置の斜視図である。図12は、第2変形例に係るバルブ機能モジュールの斜視図である。
【0071】
図11において、第2変形例に係るバルブ装置100bは、第3実施例に係るアクチュエータ1bと同形状のアクチュエータ1baとアクチュエータ1bbを有している。アクチュエータ1baとアクチュエータ1bbは、それぞれバルブ機能モジュール2aに取り付けられる。アクチュエータ1baは、弁部11aを駆動し、弁座21aとの接離によって、図12の排出口24aを介して排出口32aから圧縮空気を排出する。同様に、アクチュエータ1bbは、弁部11bを駆動し、弁座21bとの接離によって、図12の排出口24aを介して排出口32bから圧縮空気を排出する。アクチュエータ1baとアクチュエータ1bbは図示しない駆動部から個別にすることができる。
【0072】
図12において、バルブ機能モジュール2aは、図1におけるバルブ機能モジュール2と同様に、第1面22aにおいてハウジング3aに取り付けられることにより、ハウジング3aとの間に図11に示す空隙4を形成することが可能となり、ハウジング3aからの熱伝導を小さくすることができる。これによりバルブ装置100bに温度変化があった場合であっても流量特性の変化を小さくすることができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るアクチュエータ1~1bによれば、基部に圧電素子と支持部材とが取付けられ、これらに作用部が取付けられている。このため、圧電素子が第1長手方向に変位することで、作用部を変位方向に変位させることができる。これにより、一つの圧電素子だけを用いてアクチュエータを構成することで、圧電素子を2つ用いる場合と比較して、簡単に駆動系を制御することができる。
【0074】
また、アクチュエータ1~1bが圧縮部材を備えているので、圧電素子に対して、圧縮方向の予圧を与えることができる。これにより、引張方向の加重に対して損傷しやすい圧電素子に、引張方向の加重がかかりにくくすることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0076】
例えば、本発明の一実施形態に係るアクチュエータは、直列又は並列に複数配置して、複合的に使用しても良い。その際に、複数のアクチュエータを直列に接続するような使い方、つまり、アクチュエータの基部と別のアクチュエータの作用部とを接続することも可能であり、それによって、変位をより大きくすることもできる。特に、スペースの制約が厳しい箇所では、このような使い方は、有効である。また、2台のアクチュエータを、その接続角度が90゜になるように結合する等の接続方法のバリエーションも考えられる。
【0077】
さらに、また、上記実施の形態では伸縮素子として圧電素子を用いた場合について説明したが、伸縮する素子であれば特に限定されず、磁歪素子あるいは形状記憶合金等の伸縮機能を有する他の素子を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 アクチュエータ
11 弁部
12 基部
121 取付部
122 取付穴
13 圧電素子
14 支持部材
15 作用部
16 連結部材
2 バルブ機能モジュール
21 弁座
22 第1面
23 第2面
24 排出口
3 ハウジング
31 供給口
32 排出口
321 第1排出口
322 第2排出口
33 保持部
331 締結部品
34 蓋取付部
35 蓋
4 空隙
5 空気圧力室
60 圧縮部材
61 伸縮部
62 固定部
70 駆動部
100 バルブ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12