(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】飲料容器
(51)【国際特許分類】
B65D 53/02 20060101AFI20240327BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B65D53/02
B65D41/04 200
(21)【出願番号】P 2022082881
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515043956
【氏名又は名称】株式会社アトラス
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】中澤 駿
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-165708(JP,A)
【文献】特開2017-088237(JP,A)
【文献】特開2006-298415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D53/02
A47J41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料が貯留される貯留部と飲料が流出する開口部と前記開口部近傍に配置される被螺合部とを備える容器本体と、前記被螺合部に螺合する螺合部を備え回動により前記螺合部が前記被螺合部に螺合して前記容器本体に取り付けられる蓋部とを有し、
前記蓋部は、前記蓋部が前記容器本体に取り付けられるとき、当該蓋部の中央部と同じか前記中央部より開口部側に位置し、前記開口部に当接し変形可能な
平坦な平坦部を有し、
前記
平坦部が前記開口部と当接して前記開口部が前記
平坦部にめり込んだときの深さと、前記
平坦部が変形していないときの厚さとの比が1:3~1:4であることを特徴とする飲料容器。
【請求項2】
前記
平坦部と前記中央部は一体に形成されたパッキンであり、前記
平坦部と前記中央部との間に段差を有し、前記パッキンに設けられた基端部から前記中央部の表面まで第1の幅と、前記基端部から前記
平坦部の表面までの第2の幅との比が1:3~1:4である請求項1に記載の飲料容器。
【請求項3】
前記段差は、前記
平坦部が前記開口部と当接する部分の前記中央部側近傍に位置している請求項2に記載の飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パッキンを備える飲料容器が知られている。例えば、飲料、食品などを入れて保管することができ、上端部で密閉蓋と締結することで密閉力を提供するように、螺旋状に突出する内側締結部材を具備した密閉容器と、密閉容器と締結され、所定の密閉力を提供し、内側締結部材と締結するように外周面で螺旋状に突出する外側締結部材と、密閉容器の上端部に密着して密閉力を提供する略環状のパッキンと、外側締結部材と一定間隔に構成され、パッキンが分離しないように支持する離脱防止部材からなる密閉蓋と、を備え、パッキンが、パッキンの下端部の中央に位置し、密閉容器の上端の面を支持する内側突起と、内側突起の内側または内外の両側に位置し、密閉容器の上端の内周面または内外周面に密着する外側突起と、内側突起及び外側突起の起部に位置し、密閉蓋が一定方向に回転されて内側突起と外側突起が密閉容器の上端部に密着する時に、中央部が上方に向かってアーチ状に反る支持パネルと、を備えるパッキンを具備した密閉容器蓋が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器本体に螺合して蓋を留め付けるタイプの飲料容器において、容器本体の開口部を覆う中央部を取り囲むように深い溝を設けて開口端部を封止する構造の蓋の場合、溝の部分が洗いにくいという問題がある。しかしながら蓋の溝を浅くすると、蓋を容器本体に留め付ける際に、蓋に設けたパッキンにかかる負荷が大きくなる。
1つの側面では、本発明は、蓋の洗いやすさとパッキンへの負荷軽減の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、開示の飲料容器が提供される。この飲料容器は、飲料が貯留される貯留部と飲料が流出する開口部と開口部近傍に配置される被螺合部とを備える容器本体と、被螺合部に螺合する螺合部を備え回動により螺合部が被螺合部に螺合して容器本体に取り付けられる蓋部とを有し、蓋部は、蓋部が容器本体に取り付けられるとき、当該蓋部の中央部と同じか中央部より開口部側に位置し、開口部に当接し変形可能な変形部を有し、変形部が開口部と当接して開口部が変形部にめり込んだときの深さが、変形部の厚さの1:3~1:4である。
【発明の効果】
【0006】
1態様では、蓋の洗いやすさとパッキンへの負荷軽減の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態の飲料容器を、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
以下の図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。
実施の形態において単数形で表される要素は、文面で明らかに示されている場合を除き、複数形を含むものとする。
<実施の形態>
【0010】
図1は、実施の形態の飲料容器を示す斜視図である。
図2は、実施の形態の飲料容器の展開図である。
図3は、実施の形態の蓋部の側部断面図である。
図4は、実施の形態の蓋部の斜視断面図である。
図5は、実施の形態の飲料容器の側部断面図である。
実施の形態の飲料容器1は、容器本体2と、蓋部3とを有している。
【0011】
容器本体2は、例えば真空二重壁構造であり、飲料を貯留する貯留部21と、貯留部21の飲料が流出する開口部(飲み口)22(
図5参照)を備えている。開口部22の外周部には、蓋部3と螺合する被螺合部23が設けられている。
貯留部21と開口部22の構成材料としては例えばステンレス鋼等が挙げられる。
【0012】
蓋部3は、外蓋31と断熱部32と封止部33と固定部34とパッキン35とを有している。断熱部32と封止部33と固定部34とパッキン35は、外蓋31内に収容される。
外蓋31は、凹部311と段差部312とを有している。
凹部311には、固定部34に設けられた後述する凸部が挿入される。
段差部312は、固定部34が外蓋31内に収容されたときに離脱を抑制するロック機構の一例である。
断熱部32は、容器本体2に貯留される飲料の温度変化を抑制(保冷、保温)する。
封止部33は、樹脂部331とパッキン332とを有している。樹脂部331には、断熱部32の形状に対応する凹部331aが形成されている。
【0013】
図4に示すように、パッキン332は、円形状の中央部332aと環状の平坦部332bとを有している。平坦部332bは、容器本体2に蓋部3が取り付けられたときに開口部22が当接する部位である。中央部332aと平坦部332bとの間には段差が形成されており、中央部332aは平坦部332bに対し窪んでいる。
【0014】
このように、実施の形態のパッキンは、開口部22に当接する平坦部332bが中央部332aよりも開口部22側に位置している。従って、汚れやすい当接部分を容易に洗浄することができ、蓋部3を清潔に保つことができる。
【0015】
パッキン332の構成材料としては特に限定されないが、例えばシリコーンゴム(Silicone rubber)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer)が挙げられる。
【0016】
容器本体2の被螺合部23が後述する固定部34に設けられた螺合部と螺合しているとき、平坦部332bには開口部22が当接してめり込む。これにより、開口部22が封鎖され、飲料の流出を抑制することができる。
また、封止部33は、固定部34に固定する凸部333を有している。
固定部34は、螺合部341と凹部342と凹部343とを有している。螺合部341は、被螺合部23に着脱自在に螺合する。
凹部342は、凸部333と対応して設けられており、凸部333が挿入可能である。
凹部343は、パッキン35と対応して設けられており、パッキン35が挿入可能である。
【0017】
また、固定部34は、外蓋31の凹部311に対応する凸部344を有している。また、固定部34は、外蓋31の段差部312に対応する凹部345を有している。
パッキン35は、外蓋31と固定部34との間に飲料が入らないようにする。
【0018】
蓋部3を使用する際には、封止部33の凸部333を固定部34の凹部342に挿入する。また、パッキン35を凹部343に挿入する。そして、断熱部32を凹部331aに載置し、凹部311を凸部344の位置に合わせて外蓋31を被せる。これにより、段差部312が凹部345に嵌合し、断熱部32と封止部33と固定部34とパッキン35が固定された状態で外蓋31内に収容される。
図3に示すように、前述したように固定部34が外蓋31内に収容されたときに段差部312が凹部345に嵌合することで固定部34の離脱を抑制している。
【0019】
また、固定部34に封止部33が取り付けられたときに、平坦部332bの縁に当接する当接部346が固定部34に設けられている。これにより外蓋31への飲料の流出を抑制することができる。
図5に示すように、前述したように螺合部341を被螺合部23に螺合させると、平坦部332bに開口部22が当接してめり込む(変形する)。
図6は、螺合前後の各部の寸法を説明する図である。
【0020】
図6(b)に示すように、平坦部332bの厚みH1(
図6では5.0mm)は、開口部22が平坦部332bに当接してめり込むときのめり込み幅H2(
図6では1.30mm)に比べて3~4倍であるのが好ましい。
【0021】
比較のため、厚みH1がめり込み幅H2と等しい(等倍)の飲料容器を試作して複数回(実施例では100回程度)蓋部を締めては空ける動作を繰り返した。この飲料容器では、100回空け締めを繰り返した後に平坦部に傷が確認できた。
【0022】
また、厚みH1がめり込み幅H2の2倍の飲料容器を試作して複数回(実施例では100回程度)蓋部を締めては空ける動作を繰り返した。この飲料容器では、100回空け締めを繰り返した後に平坦部に傷が確認できなかったが、蓋部を締める際に開口部と平坦部との摩擦が、実施の形態の飲料容器1に比べて大きくなった。
【0023】
これに対し、厚みH1がめり込み幅H2の3倍以上の飲料容器1では、100回空け締めを繰り返した後に平坦部332bの表面を目視したが、平坦部332bの表面に傷は確認できなかった。また、厚みH1がめり込み幅H2の2倍の飲料容器に比べて蓋部3を軽快に空け締めできた。
【0024】
厚みH1をめり込み幅H2の3~4倍にすることにより、螺合部341を被螺合部23に螺合させる動作を繰り返し使用しても平坦部332bの表面に傷が残りにくく、平坦部332bの破損を抑制することができる。また、蓋部3を締める際に開口部22と平坦部332bとの摩擦が小さく蓋部3を締めやすくなる。
【0025】
なお、厚みH1がめり込み幅H2の4倍より大きくてもよいが、繰り返し使用しても3倍以上の場合と比べて傷の残りにくさに変わりが無かったため、3~4倍としている。
【0026】
また、厚みH1は、
図6(a)に示すパッキン332の基端部332cからの中央部332aの厚みH3(
図6では1.5mm)に比べて3~4倍であるのが好ましい。
【0027】
また、中央部332aと平坦部332bとの間には段差が形成されており、開口部22が平坦部332bに当接してめり込んだとき、当接した部分の内側(中央部332a側)近傍(例えば当接した部分から1~2mm内側:
図6(b)の幅H4参照)に段差の基部が位置している。このため、平坦部332bに開口部22が当接してめり込んだときに、平坦部332bの中央部332a側が変形して開口部22が平坦部332bを押圧する力の一部を逃がすことができる。従って、蓋部3を締める際に開口部22と平坦部332bとの摩擦を軽減し、蓋部3が回転しやすくなる。なお、平坦部332bの環の幅H5は一例として6mmである。
【0028】
以上述べたように、実施の形態の飲料容器1によれば、容器本体2は、飲料が貯留される貯留部21と飲料が流出する開口部22と開口部22近傍に配置される被螺合部23とを備える。蓋部3は、被螺合部23に螺合する螺合部341を備え回動により螺合部341が被螺合部23に螺合して容器本体2に取り付けられる。
【0029】
蓋部3は、蓋部3が容器本体2に取り付けられるとき、当該蓋部3の中央部332aより開口部22側に位置し、開口部22に当接し変形可能な平坦部332bを有し、平坦部332bが開口部22と当接して開口部22が平坦部332bにめり込んだときの深さが、平坦部332bの厚さの1:3~1:4である。
【0030】
開口部22に当接する平坦部332bは、中央部332aよりも開口部22側に位置している。このため、例えば容器本体の開口部を覆う中央部を取り囲むように深い溝を設けて開口端部を封止する構造の蓋に比べて開口部との当接部分が洗いやすい。また、平坦部332bが開口部22と当接して開口部22が平坦部332bにめり込んだときの深さが、平坦部332bの厚さの1:3~1:4であると、平坦部332bの破損を抑制することができる。また、蓋部3を締める際に開口部22と平坦部332bとの摩擦が小さく蓋部3を締めやすくなる。これにより、蓋の洗いやすさとパッキンへの負荷軽減の両立を図ることができる。
【0031】
また、平坦部332bと中央部332aとの間に段差を設け、基端部332cから平坦部332bの表面までの幅H1と基端部332cから中央部332aの表面までの幅H3との比率が1:3~1:4であるのが好ましい。
【0032】
また、段差は平坦部332bが開口部22と当接する部分の中央部332a側近傍に位置している。これにより、平坦部332bの中央部332a側が変形して開口部22が平坦部332bを押圧する力の一部を逃がすことができ、蓋部3を締める際に開口部22と平坦部332bとの摩擦を軽減し、蓋部3が回転しやすくなる。
【0033】
なお、本実施の形態では、中央部332aと平坦部332bとの間に段差を設けたが、これに限らず、中央部332aと平坦部332bとの間に段差を設けず、平たくしてもよい。
【0034】
以上、本発明の飲料容器を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 飲料容器
2 容器本体
21 貯留部
22 開口部
23 被螺合部
3 蓋部
31 外蓋
32 断熱部
33 封止部
332a 中央部
332b 平坦部
34 固定部
341 螺合部
35 パッキン