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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】溶液中の粒子の特徴付け
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1434 20240101AFI20240327BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240327BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20240327BHJP
   G01N 21/51 20060101ALI20240327BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01N15/1434 100
G01N15/14 C
G01N21/03 Z
G01N21/51
G01N21/64 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022525259
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2020081370
(87)【国際公開番号】W WO2021089834
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】19208187.5
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20197910.1
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515132571
【氏名又は名称】ナノテンパー・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】バースケ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デリクス,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ハスリンガー,ロベルト
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03159674(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313758(US,A1)
【文献】特表2018-507387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0136611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/1434
G01N 15/14
G01N 21/51
G01N 21/64
G01N 21/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の粒子の特徴を測定する方法であって、
- 溶液中の前記粒子のサンプルを含む少なくとも1つの容器を提供するステップ、
- 単色光源および光検出器を提供するステップと、
- 前記単色光源からの光を前記サンプルを含む前記容器へ伝送するステップと、
- 前記容器から放出された光を前記光検出器によって検出するステップと、
- 動的光散乱(DLS)測定に基づいて、前記サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の特徴を判定するステップとを含み、前記DLS測定が、5秒未満で取得されるステップ
前記DLS測定が、
- 前記光検出器から取得されたアナログ出力信号を取得するステップと、
- 前記取得されたアナログ出力信号を処理するステップとを含み、
前記取得されたアナログ出力信号を処理する前記ステップが、前記取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化するステップを含む、
前記デジタル化された出力信号が、
i)前記光検出器により検出された光の強度が、1秒当たりの検出光子の所定数を下回る場合、前記デジタル化された出力信号を、デジタル化された単一光子パルス信号として処理するステップ、
および/または
ii)前記光検出器により検出された光の強度が、1秒当たりの検出光子の所定数を上回る場合、前記デジタル化された出力信号を、アナログ信号の離散値として処理するステップ
によってさらに処理される、
方法。
【請求項2】
前記容器がガラス毛細管であり、そして前記サンプルが0.1μL~15μLの体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記サンプルに含まれる溶液中の前記粒子および/もしくは前記容器の材料の蛍光を測定するステップであり、前記蛍光が、前記粒子および/もしくは前記容器の前記材料の自家蛍光である、ステップ、ならびに/または
- 前記サンプルを含む前記容器の後方反射を測定するステップ
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記単色光が、レーザ波長単一モードファイバを介して、前記単色光源から送達される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ファイバがレーザ波長偏光維持単一モードファイバである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記単色光源からの光が、前記容器の長手方向軸に対して角度φLで、前記容器へ伝送され、φLが0度~45度であり、
前記光検出器によって検出される光が、前記容器の長手方向軸に対して角度φDで、前記容器から放出され、φDが0度~45度である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記単色光源から前記容器へ伝送される前記光と、前記容器から放出されて前記光検出器によって検出される前記光との間の角度φSが、0度~150度である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記伝送単色光が、対物レンズを使用して、前記サンプルを含む前記容器内で集束させられ、前記容器から放出される前記光がまた、前記対物レンズによって集束させられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対物レンズが、10mm~200mmの焦点距離を有し、および/または
前記伝送単色光が、3μm~30μmの半値全幅(FWHM)を有する焦点によって、前記容器内で集束させられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
0.01nl~0.1nlの測定体積が得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光検出器が、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPM)、またはアバランシェフォトダイオード(APD)光子計数検出器である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記DLS測定が1秒未満で取得される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
- 少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、前記容器を時間とともに調温するステップ
をさらに含み、
少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、前記容器を時間とともに調温する前記ステップが、1分当たり0.01℃~1分当たり30℃の焼戻し速度で、前記容器を調温するステップを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記容器がホルダに配置された複数の毛細管であり、各毛細管が、溶液中の粒子のサンプルを含み、溶液中の粒子の特徴が各毛細管に対して測定される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記特徴が、粒径分布、凝集温度、融解温度、転移温度、アンフォールディング開始温度、液-液相分離温度(TLLPS)、自由フォールディングエネルギー、第2ビリアル係数(B22)、粒子の自己相互作用、コロイド安定性、流体力学半径、粒子間の斥力または引力相互作用(K)、可溶性、長期のタンパク質安定性、および臨界変性剤濃度からなる群から選択される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法に従って、溶液中の粒子の特徴を検出するためのデバイスであって、
- 溶液中の前記粒子のサンプルを含む少なくとも1つの容器を収容する手段と、
- 単色光源および光検出器と、
- DSL測定を実行する手段と、
- 制御手段とを備え、前記制御手段が、
少なくとも1つの容器を収容する前記手段を制御し、
前記単色光源からの光を前記少なくとも1つの容器へ伝送するように前記単色光源を制御し、
前記少なくとも1つの容器からの信号を検出するように前記光検出器を制御し、
DSL測定を実行する前記手段を制御する
ように適合される、
前記DSL測定を実行する前記手段は、
- 前記光検出器から取得されたアナログ出力信号を取得する手段と、
- 前記取得されたアナログ出力信号を処理する手段とを含み、
前記取得されたアナログ出力信号を処理する前記手段が、前記取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化する手段を含む、
前記デジタル化された出力信号が、
i)前記光検出器により検出された光の強度が、1秒当たりの検出光子の所定数を下回る場合、前記デジタル化された出力信号を、デジタル化された単一光子パルス信号として処理する手段、
および/または
ii)前記光検出器により検出された光の強度が、1秒当たりの検出光子の所定数を上回る場合、前記デジタル化された出力信号を、アナログ信号の離散値として処理する手段
によってさらに処理される、
デバイス。
【請求項17】
- 前記光検出器から取得された信号をデジタル化する手段をさらに備え前記制御手段が、前記光検出器から取得された信号をデジタル化する前記手段を制御するようにさらに適合される、
請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記光検出器から取得された信号をデジタル化する手段が、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
- ナノDSF測定を実行する手段および/または後方反射を測定する手段をさらに備え、前記制御手段が、ナノDSF測定を実行する前記手段および/または後方反射を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される、
請求項16から18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
- さらなる光検出器と、
- 静的散乱光測定を実行する手段とをさらに備え、前記制御手段が、静的散乱光測定を実行する前記手段を制御するようにさらに適合される、
請求項16から19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
- 単一モードファイバと、
- 前記単一モードファイバを介して前記単色光源からの単色光を送達する手段とをさらに備え、前記制御手段が、前記単一モードファイバを介して前記単色光源からの単色光を送達する前記手段を制御するようにさらに適合される、
請求項16から20のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、動的光散乱に基づいて溶液中の粒子を特徴付ける方法に関する。詳細には、本発明は、特に小さいサンプル体積の場合、好ましくは1秒未満で測定される動的光散乱(DLS)を使用して、たとえば示差走査蛍光定量法(DSF)と組み合わせて、好ましくは、たとえば温度に依存する安定性を含む、溶液中のタンパク質の3次元構造およびタンパク質の3次元構造の変化の特徴付けを可能にする方法、ならびにその方法を実行するためのデバイスに関する。本発明は、好ましくは、短い時間および単一のシステムの範囲内で、粒子、たとえばタンパク質の凝集および固有特性、たとえばフォールディングの強化された正確な測定を提供する方法およびシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
生成物の特徴を高速かつ正確に判定することは、多くの応用例にとって非常に重要である。たとえば、薬学またはバイオテクノロジーの分野、ならびに食品産業および材料科学において、その生産中および場合により貯蔵中に、生成物の高い純度および/または安定した品質を確実にすることが重要である。品質の制御は、生成物のサンプル、および/または溶液中に粒子、たとえばタンパク質などの生成物を含むサンプルに基づいて、日常的に実行される。これらの制御は、典型的に時間がかかり、結果が利用可能になるまでにかなりの遅延を引き起こす可能性がある。したがって、不純物および/または望ましくない生成物特性から生じるコストを低減させるために、高い精度、好ましくはリアルタイムで、溶液中の生成物、たとえば粒子の特徴を評価するための解決策を手元に有することが望ましいはずである。
【0003】
そのような粒子の一例は、タンパク質である。タンパク質は、ほぼすべての細胞過程に関与しており、したがってヒトを含む細胞生物の機能にとって非常に重要である。タンパク質は、その機能に応じて、たとえば細胞および組織の構造を決定する構造タンパク質、触媒機能を有するタンパク質、すなわち酵素、細胞のイオン濃度、したがって浸透恒常性およびシグナル伝達を調節するイオンチャネル、輸送タンパク質、ホルモンを含む調節タンパク質、ならびに抗体などの免疫反応に関与するタンパク質として分類することができる。タンパク質の量および/または活性は、たとえば高い温度を含む生理的ストレス状態に曝露された場合、および/または遺伝性疾患の場合に、影響を受ける可能性がある。それらの広がりおよび細胞過程に対する影響のため、タンパク質の量および/または活性の変化は生物の生存および健康に著しい影響を与える可能性がある。
【0004】
タンパク質は、その関連性のため、医学を含む様々な応用例において、その構造、機能、分布、レベル、および潜在的な用途の点から集中的に調査されてきた。タンパク質は、ペプチド結合によって連結したアミノ酸からなる高分子化合物である。タンパク質の1次構造とも呼ばれる特有のアミノ酸配列が、遺伝学的に判定される。アミノ酸配列は、タンパク質のアミノ酸残基間の水素結合のために折り畳まれている可能性があり、その結果、2次構造とも呼ばれる立体構造が生じ、アミノ酸配列の空間配置が、3次構造と呼ばれる。タンパク質の3次構造、したがって3次元のフォールディングは、その調査がタンパク質の分子構造に関する情報を提供するだけではないため、特に興味深い。これにより、たとえば酵素の触媒活性中心または抗体の抗原結合部位における反応性アミノ酸残基の空間配置、したがってその活性に関する詳細な情報をさらに提供することができる。さらに、タンパク質の中には、4次構造を有するものもあり、これはタンパク質の凝集および/または会合を指し、したがって安定した(オリゴ)タンパク質を形成し、個々のタンパク質は、(オリゴマー)タンパク質のサブユニットと呼ばれる。タンパク質の天然の立体構造の偏差は通常、その有効性の低減に関連付けられるため、特にタンパク質の3次元構造は、その生物学的効果にとって不可欠であると考えることができる。
【0005】
タンパク質の利用可能性を最適化することは、特に生物活性の立体構造において、たとえば治療の状況で有望な手法である。対象が、制御グループなどの他の対象で観察することができるレベルと比較して、タンパク質のレベルの低下を呈した場合、所定の量の前記タンパク質を取得することが、この対象にとって有益となりうる。特に治療の応用例では、投与時の望ましくない免疫反応を回避するために、所与の立体構造において目的のタンパク質の高い純度が必要とされる。同じ理由で、タンパク質ベースの生物薬剤の活性成分などの活性物質は、貯蔵中に安定していなければならず、すなわち生物薬剤中に含まれる目的のタンパク質は、完全な状態で意図される立体構造のまま残っているべきであり、したがって貯蔵中の劣化、3次元構造の変化、および/または凝集体の形成が生じるべきではない。
【0006】
抗体などの活性物質は、天然の形態でのみ活性になるように開発されてきたため、変性した活性物質は有効でないことが多く、回避されなければならない。変性は、タンパク質などの生体分子の構造変化を指し、ほとんどの場合、これらの分子の生物学的機能の損失を伴う。変性は、物理的または化学的な影響によって生じる可能性がある。抗体などの粒子の変性は、有効性を低減させることから、回避されるべきである。したがって、薬物の変性を防止し、すなわち薬物を熱的、化学的、かつ/または時間的に安定化させることができるような活性成分製剤が開発されなければならない。さらに、凝集、すなわち活性物質の凝集もまた、無効性につながる可能性がある。加えて、凝集および/または変性した粒子、たとえば凝集した抗体の投与は、体内の免疫システムの反応を誘発する可能性があり、したがって薬物から回避されなければならず、または薬物中の割合が最小化されるべきである。したがって、たとえば抗体治療薬における粒子の凝集は、免疫システムの反応を引き起こし、有効性の低減につながる可能性もあるため、回避されるべきである。
【0007】
しかし多くの場合、なぜ粒子が凝集および/または変性するのか、粒子は変性によって凝集するのか、すなわち天然の形態では存在しないのか、それとも天然の形態で凝集し、次いで変性するのかは明らかでない。
【0008】
天然の条件ならびに化学的および/または熱的変性条件を含む様々な環境条件下で(オリゴマー)タンパク質の3次元構造を特徴付けることを目的として、様々な手法が開発されてきた。たとえば温度、pH、および/または他の化学成分の存在に依存するタンパク質の3次元のフォールディングの安定性を調査することは、たとえばタンパク質ベースの生物薬剤の貯蔵条件を最適化するのに非常に有利となりうる。タンパク質の安定性を判定するために、たとえばナノDSFを含む示差走査蛍光定量法(DSF)を適用することができる。望ましくないタンパク質凝集体などのより大きい粒子の存在は、たとえば後方反射を含む定性的な方法を使用して分析することができ、溶液中のタンパク質のサイズ分布は、たとえば動的光散乱(DLS)に基づく分析を使用して調査することができる。
【0009】
多くの場合、凝集のみまたは変性のみを別個に分析したのでは、粒子の包括的な特徴付けにとって十分でない。しかし、既存のシステムでは、タンパク質の凝集および(アン)フォールディングを高い感度で同時に測定することは、両パラメータの相互作用がほとんどの場合に同様に重要であるのにかかわらず、可能でない。たとえば、Prometheus(商標)デバイス(Nanotemper)は、溶液中のタンパク質の凝集および(アン)フォールディングの両方を測定することができるが、凝集の場合、感度が制限され、したがって一部の小さい凝集体の存在を、いくつかのより大きい凝集体の存在から区別することができない。後者はたとえば、そのデバイスをDynaPro(登録商標)プレートリーダー(Wyatt Technology)などの別のデバイスと組み合わせることによって実現することもできる。しかし、後者を使用するときはさらに、より低い加熱速度を含む技術的制限の結果、粒子を熱に曝露させたときに最初にアンフォールディングが生じたのか、それとも凝集が生じたのかについて情報の損失が生じる。
【0010】
したがって、少量の粒子が存在する場合でも、溶液中のタンパク質のような粒子を高い処理量で包括的かつ効率的に特徴付けて、再現可能で定量的な結果を確実にするための代替の解決策を手元に有することが、それでもなお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明はとりわけ、小さいサンプル体積の場合でも、短い時間で、溶液中の前記粒子を含む同じサンプルに基づいて、DLS測定を、好ましくはナノDSF測定と組み合わせて実行することによって、溶液中の粒子の3次元構造を高い感度および再現性で、高い処理量で分析することができるという発見に基づいている。前記測定に基づいて、タンパク質の凝集およびフォールディングの自由エネルギーを高速かつ正確に、好ましくは単一のデバイス内で判定することができる。さらに、本発明の方法およびシステムを使用すると、溶液中の粒子凝集体の有無および/または予期される粒径分布の偏差に関する情報を、たとえば約48個のサンプルに対して2秒以下で取得することができるため、品質制御を大幅に加速させることができる。比較として、DLSを使用する既存の手法は、1つのサンプルに対して少なくとも約12秒を必要とする。したがって、本発明の方法およびデバイスを使用すると、溶液中の粒子を特徴付けるために、リアルタイム測定、たとえば液流測定でさえも実行することができる。
【0012】
特に、本発明によるシステムおよび方法によって、「粒子内」プロセスおよび「粒子間」プロセスの両方を測定することができ、たとえば溶液中の粒子の変性および凝集を、さらに準同時(すなわち、実質的に同時)または同時に測定することができる。
【0013】
たとえば、「粒子内」プロセスは、好ましくは、粒子のフォールディング/アンフォールディング、一般には3D構造(1次、2次、3次、4次構造)に関係する。粒子の変性も「粒子内」プロセスであり、本発明による手順およびシステムにおいて、固有粒子蛍光(たとえば、トリプトファン蛍光、チロシン蛍光)を測定することによって測定することができる。同時に、非吸収光を散乱させることによって、粒径を変化させる「粒子間」プロセスである粒子の凝集を測定することができる。
【0014】
粒子/分子の熱的に誘起された変性および凝集を同時に測定すること、たとえば粒子の変性が凝集によって誘起されたのか、それとも粒子の凝集が変性によって誘起されたのかを判定することが有益である。言い換えれば、粒子が天然の立体構造で凝集するのか、それとも折り畳まれていないまたは部分的に折り畳まれていない立体構造で凝集するのかを理解することが有益である。この知識により、凝集機構のさらなる理解が可能になり、したがって調査対象の粒子の安定した製剤(たとえば、安定化成分を有する緩衝液を含む)の開発プロセスが改善される。上述したプロセスは、異なる時間スケール(たとえば、約1秒から数時間)および異なる順序で生じることがあるが、これらの相互依存プロセスの動態を監視するために、ナノDSFおよびDLSを同時に経時的に測定することが特に有益である。
【0015】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって定義される。
本発明は、溶液中の粒子の特徴を測定する方法に関し、前記方法は、溶液中の前記粒子のサンプルを含む容器を提供するステップを含む。サンプルは、好ましくは、たとえば0.1μL~15μLの小さい体積を有する。この方法は、好ましくは、実質的に単色の光を放出する光源を提供するステップと、光検出器を提供するステップと、単色光源からの光を、サンプルを含む容器へ伝送するステップとを含む。言い換えれば、容器内の粒子は、光源からの光で照射され、粒子からの散乱光が、光検出器によって検出される。さらに言い換えれば、容器からくる光、すなわち容器から擬似放出された光が、光検出器によって検出され、動的光散乱(DLS)測定に基づいて、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の特徴を判定することができる。本明細書に、容器から放出される/来る光は、「放出光」とも呼ばれ、サンプルと相互作用した後のサンプルからの「散乱光」または「後方散乱光」という用語と交換可能に使用される。
【0016】
好ましくは、サンプルは、0.1μL~15μL、より好ましくは1μl~15μl、さらに好ましくは8μL~12μLの体積を有する。サンプルは、好ましくは、小さい体積を有する容器、たとえばマルチウェルプレートのウェルまたは毛細管内に提供され、これは、毛細管力によって毛細管を容易に充填することができるというさらなる利点を提供する。たとえば、アレイ(ホルダ)上に取り付けられた単一の毛細管またはさらには複数の毛細管を、サンプルを含む溶液中に浸漬させることができ、したがって各毛細管は、毛細管力によって数秒以内に完全に浸ることができる。
【0017】
好ましくは、単色光源からの光はコヒーレントであり、好ましくは350nm~500nm、好ましくは405nm、445nm、または488nmの波長を有する。当然ながら、現実の光源が厳密に単色になることはなく、すなわちゼロの光学帯域幅を有することはないことが、当業者には理解されよう。したがって、単色光源という用語は、上述したように、非常に制限的な波長範囲または帯域幅を有する光源を指す。言い換えれば、単色および準単色という用語は、本出願では交換可能に使用される。たとえば、多くの場合、レーザ源は単色または準単色であり、すなわち光学帯域幅は、光の特定の挙動を本当に単色の光の挙動から区別することはほぼできないほどに小さい。
【0018】
好ましくは、(準)単色光源は、コヒーレント光源、たとえばレーザ、好ましくはダイオードレーザであり、好ましくは、周波数安定化ダイオードレーザ、DPSSレーザ、PPLN周波数2重ダイオードレーザ、周波数多重DPSSレーザ、ダイオード励起ファイバレーザ、周波数多重ダイオード励起ファイバレーザ、およびダイオード励起アップコンバージョンファイバレーザからなる群から選択されるダイオードレーザである。好ましくは、レーザは、少なくとも0.1mmのコヒーレンス長を有する。レーザは、好ましくは、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも1mmのコヒーレンス長を有する。
【0019】
好ましくは、レーザは、1mW~200mW、好ましくは10mW~100mW、より好ましくは45mW~80mW、さらに好ましくは50mW~70mWの電力を有する。レーザはまた、1mW~200mW、好ましくは10mW~180mW、より好ましくは50mW~150mW、さらに好ましくは70mW~120mW、たとえば100mWの電力を有することができる。好ましくは、電子的/デジタル的に変更可能/制御可能な出力を有するDLSレーザを使用することができる。
【0020】
好ましくは、単色光は、レーザ波長単一モードファイバを介して単色光源から容器/サンプルへ送達される。好ましくは、偏光維持(PM)ファイバ、たとえばレーザ波長偏光維持単一モードファイバが使用される。さらなる実施形態によれば、偏光を維持しないファイバを使用することが有利となりうる。次に、たとえば対物レンズによって、容器内の焦点へ光を集束させることがさらに好ましい。
【0021】
好ましくは、単色光源からの光は、容器の長手方向軸に対して角度φで、容器へ伝送され、φは、好ましくは容器内の焦点に対して、好ましくは0度~45度である。好ましくは、光検出器によって検出される光は、容器の長手方向軸に対して角度φで、容器から放出(または散乱、後方散乱)され、φは0度~45度であり、φの値は、好ましくはφの値と同一である。好ましくは、単色光源から容器へ伝送される光と、容器から放出されて光検出器によって検出される光との間の角度φは、0度~150度、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である。放出または散乱される光の上述した角度は、好ましくは、デバイス内の容器の位置を判定することができるため、容器に関して測定される。しかし、容器内の粒子から散乱または放出される光は、その特徴付けのために使用することができる粒子の情報を含む光であることが、当業者には理解されよう。たとえば、本発明の方法は、溶液中の粒子から散乱される光に基づくDLS測定を実行するために使用することができる。さらに、本発明の方法はまた、粒子から放出される蛍光に基づくDSF測定を実行するために使用することができる。巨視的には、散乱光および蛍光は、容器から来る/放出される。
【0022】
好ましくは、伝送単色光は、対物レンズを使用して、サンプルを含む容器内で集束させられ、容器から放出される光はまた、好ましくは、前記対物レンズによって集束させられる。対物レンズは、好ましくは10mm~200mmの焦点距離を有する。好ましくは、伝送単色光は、3μm~30μmの半値全幅(FWHM)を有する焦点によって、容器内で集束させられ、好ましくはその結果、0.01nl~0.1nl、好ましくは0.01nl~0.02nl、より好ましくは約0.016nlの測定体積が得られる。
【0023】
好ましくは、光検出器は、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPM)、またはアバランシェフォトダイオード(APD)光子計数検出器、より好ましくはPMTまたはSiPMである。
【0024】
好ましくは、DLS測定は、5秒未満、好ましくは1秒未満、好ましくは200ミリ秒~800ミリ秒、より好ましくは約500ミリ秒で取得される。
好ましくは、DLS測定は、たとえば測定の速度を向上させるために、1つのサンプルにつき1度だけ特有の温度で実行される。しかし、DLS測定は、たとえば測定の手段(たとえば、同じ温度)を計算するために、かつ/または粒子の異なる条件(たとえば、異なる温度)を考慮に入れるために、1つのサンプル/容器につき複数回、同じ温度および/または異なる温度で実行することができる。
【0025】
好ましくは、DLS測定は、少なくとも1つの相関演算、好ましくは少なくとも1つの自己相関演算を実行するステップを含む。
好ましくは、DLS測定は、光検出器から取得されたアナログ出力信号を取得するステップと、取得されたアナログ出力信号を処理するステップとを含む。好ましくは、取得されたアナログ出力信号を処理するステップは、取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化するステップを含む。検出器からのアナログ出力信号(全体)をデジタル化することで、以下でさらに詳細に論じるように、従来技術に対して特定の利点を提供する。特に、結果として得られるデジタル化された出力データは、デジタル化された生信号であると見なすことができるが、デジタル化された生信号は、検出器によって検出される光の強度に応じて、後により容易に取り扱うことができる。要約すると、デジタル化された出力データは、たとえば個々の光子に対する個々のピークを区別するために、後にアナログ処理手段によって処理することができ、またはデジタル処理手段によるように処理することができる。
【0026】
したがって、出力信号を処理するステップは、i)好ましくは容器から放出された検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を下回る場合、デジタル化された出力信号を、デジタル化された単一光子パルス信号として処理するステップ、および/またはii)好ましくは検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を上回る場合、デジタル化された出力信号を、アナログ信号の離散値として処理するステップをさらに含む。好ましくは、取得された出力信号を処理するステップは、ステップi)またはステップii)のいずれかを含み、ステップi)に従って、デジタル化された出力信号を、デジタル化された信号として処理するべきかどうかを決定するための時間は、好ましくはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用することによって、1秒未満、好ましくは最大0.05秒である。さらに、両方の信号、すなわち光子計数信号および離散値信号を同時に処理することができる。このように、ステップi)に従って処理するべきか、それともii)に従って処理するべきかの決定は、測定後に行うことができる。
【0027】
好ましくは、取得された出力信号を処理するステップは、ステップi)もしくはステップii)から取得される処理されたデジタル化出力信号を記憶するステップ、またはステップi)およびステップii)から取得される処理されたデジタル化出力信号を記憶するステップと、記憶された出力信号のうちの1つをさらに処理するステップとをさらに含む。
【0028】
一例として、光子計数信号および/またはアナログ信号として処理される場合、信号がどのように処理されるかは、たとえば専用の光子計数検出器を使用するときのように、光子を検出する検出器によって事前決定されるのではなく、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、または他のプログラマブル手段内のアルゴリズムによって、後の段階で決定される。好ましくは、これらのアルゴリズムは、ハードウェアを変更することなく、変更、たとえば改善することができる。たとえば、その信号を光子計数信号としてフラグを立てることから、その信号をアナログ信号としてフラグを立てることへアルゴリズムが変化する、2百万個の光子という限度を、ファームウェアおよび/またはソフトウェア手段によって更新かつ/または変更することができる。たとえば、この限度は、1秒当たり2百万個の検出光子から、たとえば1秒当たり百万個の検出光子または1秒当たり4百万個の検出光子へ切り換えることができる。これは、上述した限度を変更するためにハードウェア、たとえば光子カウンタを交換しなければならない既存の解決策に比べて好ましい。
【0029】
好ましくは、この方法は、蛍光を測定するステップをさらに含む。測定される蛍光は、好ましくは、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光、および/または容器自体の材料の蛍光であり、前記蛍光は、好ましくは前記粒子/容器材料の自家蛍光である。好ましくは、この方法は、測定された蛍光に基づいて、容器の位置を判定するステップと、任意選択で、測定された蛍光および判定された容器位置に基づいて、光源に対して容器を移動させる、すなわち容器および/または光源を移動させるステップとをさらに含む。容器の位置を判定するステップはまた、好ましくは、それ自体が十分な自家蛍光を示す容器を使用することによって、(自家)蛍光粒子を含まないサンプルにも機能する。言い換えれば、本発明の方法は、好ましくは、蛍光測定によって、容器、たとえば毛細管の位置を判定し、検出された蛍光は、粒子および/または容器の材料に基づくものとすることができる。たとえば、ガラスまたは石英ガラスから形成された容器は、容器内にサンプルが存在しない場合、または(自家)蛍光粒子を含まないサンプルが容器内に存在する場合でも、上述した蛍光測定に基づいて、容器の位置を判定するのに十分な自家蛍光放射をすでに生じさせる。
【0030】
別法または追加として、本発明による方法は、好ましくは、サンプルを含む容器の後方反射を測定するさらなるステップを含み、この後方反射は、サンプルの粒子の特徴付けおよび/または容器の位置の判定に使用することができる。
【0031】
好ましくは、この方法は、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の異なる温度で、容器を時間とともに調温するステップをさらに含む。したがって、粒子の特徴が2つの異なる温度で判定される場合、特徴の変化を測定することが可能である。それに応じて、本発明の方法は、本発明の方法を第1の温度T1で実行し、次いでこの方法を第2の異なる温度T2または多数の異なる温度Txyで実行することによって、溶液中の粒子の特徴の変化を測定することができ、T1をT2または多数の温度Txyと比較することによって、粒子の特徴の変化を判定することができる。
【0032】
好ましくは、本発明は、溶液中の粒子の特徴を測定する方法に関し、この方法は、
(a)溶液中の粒子を含むサンプルを提供するステップと、
(b)接触加熱および/または冷却によって、前記サンプルプローブの画定された温度を生じさせるための温度制御システムを提供するステップと、
(c)粒子を第1の温度で測定するステップと、
(d)温度制御システムによってサンプル内に第2の温度を生じさせるステップと、
(e)この第2の温度でサンプル中の粒子を測定するステップと、
(f)前記2つの測定に基づいて、粒子を特徴付けるステップとを含む。
【0033】
本発明によれば、測定ステップc)およびe)は、本開示のDLS測定ステップおよび/または本開示のナノDSF測定ステップである。好ましい実施形態によれば、測定ステップc)およびe)はどちらも、DLS測定ステップ、追加の第1の蛍光読出し、および第2の蛍光読出しを含む。
【0034】
好ましくは、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するステップは、1分当たり0.01℃~1分当たり30℃、好ましくは1分当たり0.1℃~1分当たり10℃の焼戻し速度で、容器を調温することを含み、ならびに/または、第1の温度および第2の温度は、-20℃~160℃である。
【0035】
好ましくは、特有の温度が、好ましくは上述した範囲内であり、特有の時間、たとえば10秒より大きい、1分より大きい、またはさらにそれ以上の時間にわたって、好ましくは±0.01℃~±1.5℃、好ましくは±0.01℃~±0.5℃の特有の精度で、前記温度を維持する特有の温度、たとえば等温モードは、同質性、再現性、および精度に関する測定の特定の利点を提供する。
【0036】
好ましくは、この方法は、ナノ示差走査蛍光定量法(ナノDSF)測定を実行するステップ、および/またはサンプルを含む容器の後方反射を測定するステップをさらに含む。
好ましくは、この方法は、さらなる光検出器を提供するステップと、さらなる光検出器を使用して、好ましくは容器の長手方向軸に対して角度φで、サンプルを含む容器の静的散乱光を測定するステップとをさらに含み、φは、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である。
【0037】
好ましくは、小さいサンプル体積を収容するための容器は、毛細管および/またはマルチウェルプレートなどの小さい容器である。好ましくは、毛細管は、毛細管サンプル容器または単なる毛細管(capillary tube)もしくは毛細管(capillary)である。本発明の毛細管は、好ましくは、毛細管の長さ全にわたって、実質的に一定の内径および/または実質的に一定の外径を含む。好ましくは、毛細管は、ガラス、好ましくは自家蛍光特徴のないまたはわずかな自家蛍光特徴しかないガラス、たとえばホウケイ酸ガラスおよび/または石英ガラスおよび/または合成溶融シリカから作られる。
【0038】
前記毛細管は、好ましくは円形の断面、好ましくは0.1mm~1mm、好ましくは0.15mm~0.5mmの内径、好ましくは0.2mm~1.2mm、好ましくは0.65mm~1mmの外径、5mm~70mm、好ましくは32mm~50mm、より好ましくは約50mmの長さを有する。前記直径に基づいて、毛細管の壁の厚さが、手動で取り扱うのに十分に厚く、したがって安定しているが、所望の範囲内の光屈折を最小にするのに十分に薄くなるように、妥協点を選ぶことがさらに好ましい。したがって、個々の要件、たとえば手動の取扱い、自動の取扱いなどに応じて、毛細管壁の好ましい厚さを選択することができる。
【0039】
さらに、応用例に応じて、より短いまたはより長い毛細管が有利となりうる。好ましくは、所望の応用例に応じて、毛細管の長さに基づく効果が選択される。非常に短い毛細管には、たとえば非常に小さい体積しかないという利点があり、これは少量の材料が必要とされるという点(効率)で有利である。非常に短い毛細管は、毛細管力によって完全に充填させることができることが有利である(対応して適合された直径を有するとき)。毛細管は、十分に短い場合、重力(g)に対して傾斜させる必要すらなく、これは、毛細管力自体がgに対して逆平行に毛細管を完全に充填するからである。短い毛細管には、空間に関する利点もあり、したがって制限された表面内に、より多くの毛細管を配置することができる。
【0040】
より長い毛細管は、一方または両方の端部の封止が必要ないという利点を提供し、たとえば本発明によれば、溶液の蒸発の影響が、測定時間に対して小さくなる。たとえば、32mmより長い長さを有する毛細管は、本発明の測定の好ましい継続時間内で、低い蒸発率を提供する。
【0041】
好ましくは、複数の容器が提供され、各容器は、溶液中の粒子のサンプルを含み、本発明の方法によって、溶液中の粒子の特徴が各容器に対して測定される。好ましくは、各容器に対する蛍光測定に続いて、各容器に対するDLS測定が行われ、または各容器に対するDLS測定に続いて、各容器に対する蛍光測定が行われ、または複数の容器のうちの1つの容器に対して蛍光測定およびDLS測定が実行されるのに続いて、複数の容器のうちの別の容器に対して蛍光測定およびDLS測定が実行される。より好ましくは、複数の容器のうちの各容器に対して、蛍光測定がDLS測定と同時に実行される。
【0042】
好ましくは、これらの特徴は、粒径分布、凝集温度、融解温度、転移温度、アンフォールディング開始温度、液-液相分離温度(TLLPS)、アンフォールディングの自由エネルギーの変化、第2ビリアル係数(B22/A)、粒子の自己相互作用、コロイド安定性、流体力学半径、粒子間の斥力または引力相互作用(kD)、可溶性、長期のタンパク質安定性、および臨界変性剤濃度からなる群から選択される。
【0043】
たとえば、凝集の開始とは対照的に、サイズ増大の開始(温度測定によって半径から)を判定することによって、アンフォールディング/オリゴマー化/凝集に関する特徴が導出可能である。
【0044】
アンフォールディングの活性化エネルギーは、たとえば異なる加熱速度による後の実験から導出可能であり、コロイド安定性を評価するための応用例とすることができる。
本発明はさらに、好ましくは本発明の方法によって、溶液中の粒子の特徴を測定するためのデバイスに関し、前記デバイスは、溶液中の前記粒子のサンプルを含む少なくとも1つの容器、好ましくは0.1~15μLの前記粒子を収容する手段と、単色光源および光検出器と、DLS測定を実行する手段と、制御手段とを備え、制御手段は、少なくとも1つの容器を収容する手段を制御し、単色光源からの光を少なくとも1つの容器へ伝送するように単色光源を制御し、少なくとも1つの容器からの信号を検出するように光検出器を制御し、DLS測定を実行する前記手段を制御するように適合される。
【0045】
好ましくは、前記デバイスは、相関演算、好ましくは自己相関演算を実行する手段をさらに備え、前記自己相関演算は、好ましくはハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施される自己相関論理である。
【0046】
好ましくは、前記デバイスは、光検出器から取得された信号をデジタル化する手段をさらに備え、前記手段は、好ましくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備え、制御手段は、好ましくは、光検出器から取得された信号をデジタル化する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0047】
好ましくは、前記デバイスは、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する手段をさらに備え、制御手段は、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0048】
好ましくは、前記デバイスは、溶液中の前記粒子のサンプルを収容する手段を位置決めする位置決め手段をさらに備え、制御手段は、サンプルを収容する位置決め手段を制御するようにさらに適合される。
【0049】
好ましくは、前記デバイスは、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための温度制御システムをさらに備え、制御手段は、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための前記温度制御システムを制御するようにさらに適合される。
【0050】
好ましくは、前記デバイスは、ナノDSF測定を実行する手段および/または後方反射を測定する手段をさらに備え、制御手段は、ナノDSF測定を実行する前記手段および/または後方反射を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0051】
好ましくは、前記デバイスは、さらなる光検出器と、静的散乱光測定を実行する手段とをさらに備え、制御手段は、静的散乱光測定を実行する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0052】
好ましくは、前記デバイスは、単一モードファイバと、前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を送達する手段とをさらに備え、制御手段は、前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を送達する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0053】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図に関して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1Aは、毛細管軸に対する主光ビームの角度の図である。図1Bは、反射の検出を回避するために、DLS光学系が毛細管軸に対して斜めに位置決めされている図である。
図2】パルス弁別器の機能の図である。
図3】アナログ信号の信号強度に対する光子計数信号の信号強度の図である(破線は、線形範囲の外挿適合を示す)。
図4図4Aは、光子計数データとアナログデータとの間で入力が切り換えられる相関器を含む信号図である。図4Bは、2つの並列に実行される相関器を含み、一方はアナログモードにあり、他方は光子計数モードにある信号図である。
図5】本発明による測定システムのスキームの図である。
図6図6Aは、DLS光学系のスキームの図である。図6Bは、2つのコリメータレンズを有するDLS光学系のCADモデルの一部の図(断面図)である。
図7A】1つの励起および2つの検出器、たとえばマルチモードファイバを有するフォトダイオードおよび単一モードファイバを有するPMTを含むDLS光学系のスキームの図である。
図7B】共焦点版のDLS光学系の図である。
図7C】複合型の蛍光光学系および共焦点のDLS光学系(x距離=0)の図である。
図7D】自由空間結合光源を有するDLS光学系の設計の図である。
図7E】レンズフード、非点収差補正、蛍光阻止フィルタ、および偏光フィルタを有するDLS光学系の設計の図である。
図7F】1つの点における同時測定のための2つのDLSアームおよび1つの共焦点の蛍光光学系を有するDLS光学系の設計の図である。
図7G】対物レンズのない、2つのアームを有するDLS光学系の設計の図である。
図8A】酢酸ナトリウム緩衝液中のIgGの温度に対する蛍光シフトおよび粒径分布の複合型の測定の図である。
図8B】酢酸ナトリウム緩衝液中のIgGからの温度に対する蛍光シフトおよび平均粒径の複合型の測定の図である。
図8C】HEPES緩衝液中のIgGの温度に対する蛍光シフトおよび粒径分布の複合型の測定の図である。
図8D】HEPES緩衝液中のIgGの温度に対する蛍光シフトおよび平均粒径の複合型の測定を示す図である。
図9】異なるサンプルのDLS品質パラメータの概要を例示的に示す図である。
図10】減衰率(粒子半径に反比例)を測定位置の関数として示す図である。白色の円は、分析された測定位置を表す記号である。
図11】本発明の好ましい実施形態のスキームの図である。
図12】タンパク質分子量分布を例示的に示す図である(UniProt,human;https://smith.chem.wisc.edu/content/proteomics-technologies)。
図13】本発明による方法およびデバイスを使用して特徴付けることができるタンパク質のスキームを例示的に示す図である(http://book.bionumbers.org/how-big-is-the-average-protein/)。
図14】容器内の最適の測定スポットを判定するために、容器内の異なる位置におけるDLS測定の信号品質を示す図である。
図15】抗体緩衝液の選別および抗体候補の選択の測定の図である。
図16】抗体緩衝液の分別および抗体候補の選択のさらなる測定の図である。
図17】抗体緩衝液の分別および抗体候補の選択のさらなる測定の図である。
図18】ランダムな凝集体を含む一例に基づいて凝集経路を理解するための測定の図である。
図19】構造化された凝集体を含む一例に基づいて凝集経路を理解するためのさらなる測定の図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の一般原理について、本発明の説明的な例または好ましい実施形態に基づいて、さらに詳細に論じる。
特に、本発明は、第1の態様において、溶液中の粒子の特徴を測定する方法に関し、前記方法は、溶液中の前記粒子のサンプルを含む容器を提供するステップであり、サンプルが、好ましくは0.1μL~15μLの体積を有する、容器を提供するステップと、単色光源および光検出器を提供するステップと、単色光源からの光を、サンプルを含む容器へ伝送するステップと、光検出器によって、容器から放出された光を検出するステップと、動的光散乱(DLS)測定に基づいて、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の特徴を判定するステップとを含む。本発明により、知られているDLS測定はここで、非常に小さいサンプル体積で実行され、たとえば従来技術によって開示も提案もされなかった毛細管内のサンプルのDLS測定が実行されるという利点を提供する。逆に、従来技術は、DLS測定が、好ましくは上述したサンプルプローブより大きい体積を必要とすることを教示する。さらに、本発明の方法には、精密な測定結果を高い処理量で取得することができるという利点がある。
【0056】
好ましくは、この方法は、ナノDSF測定を実行するステップをさらに含み、これには、前記方法によって取得されるDLSおよびナノDSF測定に基づいて、好ましくは単一のデバイス内で、粒径分布および潜在的な粒子凝集を高速かつ正確に評価することができるという利点がある。DLS測定および好ましくはナノDSF測定など、本発明の方法によって実行される測定の精度を増大させるために、前記方法は、好ましくは、蛍光を測定して容器の位置を判定するステップをさらに含む。たとえば、溶液中の粒子の(自家)蛍光および/または容器自体の自家蛍光を使用することができ、それにより取得された蛍光信号を使用することによって、容器の位置を判定することができる。したがって、調査対象の溶液中の粒子を有するサンプルを含む容器の位置を厳密に判定することができ、任意選択で、それぞれの測定の精度を最適化するための容器の位置決め(移動)が可能である。
【0057】
したがって、本発明の方法は、小さいサンプル体積の場合でも、DLS測定のために、放出された単色光、したがって散乱光を使用して、高い感度で、溶液中の粒子の特徴を測定するのに非常に有利である。好ましくは、本発明による方法は自動で実行される。
【0058】
DLSは、粒子の拡散係数を分析するために使用される方法であり、拡散係数は、溶液中の粒子の移動度の尺度である。DLS測定では、溶液中の粒子を含む容器内のサンプルが単色光によって照射され、散乱光の強度が所定の角度で検出される。粒子までの単色光の経路長および検出器までの散乱光の経路長は、容器内のそれぞれの粒子の位置に応じて異なる。サンプルに含まれる異なる粒子散乱光の光波を重ね合わせることによって、検出された光に基づいて、サンプル特有の干渉パターンを取得することができる。その結果、検出された信号の強度は、容器内の粒子の位置に依存し、粒子の動き、すなわちブラウン分子運動が、光路の長さ、したがって取得される干渉パターンを変化させる。たとえば、粒子が速く動けば動くほど、信号の強度も速く変化し、その結果、拡散係数がより高くなる。DLS測定に基づいて、サンプルに含まれる溶液中の粒子の拡散係数を判定することは、たとえば水和殻を含む粒子の流体力学半径を判定するために使用することができるため、有利である。したがって、本発明による方法を適用することによって、0.1nm~3000nmの範囲内、好ましくは0.5nm~1000nm、2~3000nmの範囲内の流体力学半径を有する粒子などの小さい粒子でも、高い感度および精度で検出して特徴付けることができる。
【0059】
本発明による方法を使用してその特徴を測定することができる粒子は、天然に存在する粒子、生化学的および/もしくは合成的に修正された粒子、ならびに合成粒子、またはこれらの組合せとすることができる。好ましくは、粒子は、1000nm以下、好ましくは0.1nm~700nm、より好ましくは約1nm~500nmの平均直径を有する。粒子は、少なくとも部分的または完全に生物学的粒子(生体粒子とも呼ばれる)とすることができ、したがって、本明細書で使用される「粒子」という用語は、好ましくは、たとえばすす、金粒子などを指さない。金粒子を含む後者の例は、好ましくは、たとえば本発明による方法に先行するサンプル処理および/または準備ステップにおいて、調査対象のサンプル自体に含まれず、またはサンプルに加えられない。金粒子は、生体粒子と比較すると比較的強く光を散乱させ、したがって調査対象の(生体)粒子からの散乱光信号を遮断する可能性があるため、サンプル内の金粒子の存在は有利でないはずである。サンプルは好ましくは、その天然組成に関して調査されるため、いわゆる「プローブ粒子」がサンプルに加えられないことが好ましい。
【0060】
本発明、特に特許請求の範囲の文脈で、「粒子」という用語はまた、ビーズ、特にマイクロビーズ、ベシクル、ミセル、ナノ粒子、または分子、特に生体分子、たとえば核酸(DNA、RNA、LNA、PNAなど)、タンパク質、および他の生体高分子、ならびにこれらの組合せ、ならびに生体細胞(たとえば、細菌細胞、原核細胞、または真核細胞)、または細胞成分分画、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、もしくはウイルスおよび細胞器官などに関することに留意されたい。分子の例としては、それだけに限定されるものではないが、蛍光染料、ペプチド、特にポリペプチド、サッカリド、特にポリサッカリド、化合物、小分子、断片、または界面活性剤が挙げられる。
【0061】
「修正粒子」または「修正ビーズ」という用語は特に、分子、好ましくは生体分子、もしくは蛍光染料を含み、これらに連結したビーズまたは粒子に関する。これはまた、これらの(生体)分子によるそのようなビーズまたは粒子の被覆を含む。
【0062】
本発明による粒子のさらなる例としては、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、細胞(特に、20000nm未満の直径を有する細胞)、DNA分子、RNA分子、DNA-Origami、900ダルトン未満の分子量を有する分子などの小分子、リポソーム、タンパク質、たとえばオリゴタンパク質の場合のタンパク質複合体、および/またはタンパク質凝集体が挙げられ、調査されるべき溶液中に含まれる粒子、たとえばタンパク質のタイプは、同一であっても異なってもよい。好ましくは、溶液中の粒子は、たとえば同一のタイプのタンパク質、またはそこから形成される複合体および/もしくは凝集体である。
【0063】
好ましくは、調査対象のサンプルは、たとえば生成物作製プロセス中またはその後に、直接取得される。したがって、サンプルは、好ましくは、本発明による方法を適用する前に修正および/または改正されない。たとえば金粒子がサンプルに加えられた場合、実行されたDLSの取得された結果、好ましくは追加の蛍光測定を処理かつ/または解釈するとき、その結果生じる影響を考慮しなければならないはずである。したがって、直接取得され、さらに改正されていないサンプル内の調査対象の粒子を調査することは、潜在的に時間および/またはコストのかかる前処理および/または後処理なしに、溶液中の前記粒子の特徴に関する情報を取得することができるため、有利である。
【0064】
本明細書では、「タンパク質」および「オリゴタンパク質」とう用語は、具体的に指定されない場合、交換可能に使用される。特に、本明細書では、「タンパク質」という用語は、任意の種類のアミノ酸配列、すなわちペプチド結合を介して各々連結した2つ以上のアミノ酸鎖を包含する。より具体的には、本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、目的の任意のアミノ酸配列を指す。好ましくは、アミノ酸配列は、少なくとも5つのアミノ酸、より好ましくは少なくとも10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも50個、100個、200個、または500個のアミノ酸の長さである。したがって、「タンパク質」という用語は、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質断片などの短鎖ペプチド、すなわちエピトープを含む生物活性または抗原部分などの周知のタンパク質の部分を含む。タンパク質の機能については、制限はない。
【0065】
粒子の濃度範囲は、好ましくは金のナノ粒子に対する単一の粒子、たとえばナノ粒子から、たとえば小分子の場合の500mMの間である。
溶液中の粒子は、好ましくは溶液中のタンパク質である。以下の表1(異なる質量のタンパク質に対するRmin;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3055910/)および図12に示すように、ほとんどのタンパク質は、たとえば500kDaの分子量より小さく、したがって5nm未満の半径および/または10nm未満の直径を有する。したがって、好ましいタンパク質は、5nm未満の半径および/または10nm未満の直径を有する。さらに、いくつかの好ましい例が、図13に示されている。
【0066】
【表1】
【0067】
タンパク質のより低い濃度に対する例としては、リゾチームに対する0.5mg/ml、インスリンに対する0.4mg/ml、およびIgGに対する0.06mg/mlが挙げられる。タンパク質に対する好ましい濃度範囲は、0.001mg/ml~250mg/ml、より好ましくは0.01mg/ml~200mg/mlである。
【0068】
タンパク質などの粒子は、たとえば生体外のタンパク質生産で使用される細胞培養など、生体材料から分離された粒子、および/または合成的に生産された粒子とすることができる。後者には、時間および/またはコスト効率がよく、目的のタンパク質の高い純度を確実にするため、いくつかの利点がある。好ましくは、溶液中の粒子は、同一のタンパク質、またはそこから構築された複合体および/もしくは凝集体であり、タンパク質は合成的に生産される。したがって、溶液中の粒子を特徴付けるために、非常に正確かつ高感度の測定結果を取得することができる。
【0069】
溶液中の粒子のいくつかの特徴は、商業的かつ学問的に重要である。たとえば、溶液中の粒子のサイズ分布は、特有の条件下でのタンパク質の不安定性による劣化かつ/または凝集したタンパク質など、望ましくない粒子の存在および/または量を含む溶液中の粒子の組成を評価するのに有利である。異なる粒子は異なる条件下で凝集しうるため、所与の粒子に対して、前記粒子を特徴付ける凝集条件、たとえば所与の割合、たとえば2分の1の粒子が凝集した状態で粒子が曝露されうる温度を評価することができる。したがって、この凝集温度を使用して、凝集の開始(Tagg)を画定することができる。同じ論理は、粒子の温度に依存するフォールディングおよびアンフォールディングを考慮して、粒子特有のアンフォールディング開始温度を介して適用することができる。融解温度/点(T)もさらに重要であり、融解温度/点は、タンパク質などの粒子の潜在的なフォールディング状態がいずれも別の状態ほど熱力学的に好ましくない温度を画定する。したがって、前記粒子は、同等の量で、いずれかの立体構造、すなわち天然に折り畳まれた立体構造、および折り畳まれていない、したがって変性した立体構造で存在する。したがって、融解温度を粒子の熱的安定性の指標として使用することができる。さらに、タンパク質の安定性に直接関係し、タンパク質のアミノ酸組成に依存する自由フォールディングエネルギーを調査することができる。第2ビリアル係数(B22、Aとも呼ばれる)は、粒子のコロイド安定性の指標を指し、これをさらに使用して、タンパク質の凝集を予測することができ、正の値は、大部分は負のタンパク質-タンパク質間コロイド相互作用を指し、負の値は、正味のタンパク質-タンパク質間引力相互作用(kD;拡散相互作用パラメータ)を示す。
【0070】
したがって、本発明による方法を使用して測定することができる溶液中の粒子の特徴は、好ましくは、粒径分布、凝集温度、融解温度、アンフォールディング開始温度、自由フォールディングエネルギー、第2ビリアル係数(B22/A)、粒子の自己相互作用、コロイド安定性、流体力学半径、粒子間の斥力または引力相互作用(kD)、および臨界変性剤濃度からなる群から選択される。
【0071】
さらに、凝集の開始とは対照的に、サイズ増大の開始(たとえば、温度測定によって半径から導出可能)を判定することによって、アンフォールディング/オリゴマー化/凝集に関する特徴が導出可能である。加えて、たとえば異なる加熱速度による後の実験から、アンフォールディングの活性化エネルギーも導出可能であり、これはたとえば、コロイド安定性を評価するのに有用な応用例である。
【0072】
本発明による方法は、溶液中の前記粒子のサンプルを含む容器を提供することによって、溶液、好ましくは水溶液中の粒子の特徴を測定するために適用することができ、サンプルは、好ましくは0.1μL~15μLの体積を有する。
【0073】
したがって、調査されるべき溶液中の粒子の一部またはすべてを含むサンプルが分析され、前記サンプルは容器内に含まれる。容器がたとえば毛細管である場合、前記サンプルは、好ましくは、0.1μL~15μL、好ましくは1μl~15μl、より好ましくは8μL~12μLの体積を有する。容器がたとえばマルチウェルプレートである場合、前記サンプルは、容器が384ウェルプレートである場合は好ましくは5μL~40μL、容器が96ウェルプレートである場合は好ましくは50μl~200μl、容器が1536ウェルプレートである場合は好ましくは1μL~15μLの体積を有する。そのような小さいサンプル体積は、利用可能な粒子の数が制限されているとき、かつ/または調査対象の粒子が高価であるときに有利である。さらに、本発明による方法を使用して小さいサンプル体積を分析することには、少なくとも次の追加の利点がある。i)容器壁での散乱をより良好に遮断し、すなわち毛細管壁などの容器壁での光散乱が測定に与える影響を最小にすることができ、ii)調査対象の溶液中の粒子を含むサンプルからの散乱信号がより強くなり、したがって測定時間が削減され、iii)サンプルに含まれる溶液中の粒子の数に依存する高濃度での多重散乱の確率が減少し、iv)高品質の測定結果、したがって調査対象の粒子の正確な特徴付けを取得するために、より安価な単色光源、たとえばより短いコヒーレンス長を有するレーザを使用することができる。
【0074】
調査対象の溶液中の粒子を含むサンプルは、容器、好ましくは毛細管またはマルチウェルプレートのウェルに含まれる。毛細管の場合、前記毛細管は、たとえば樹脂、プラスチック、セラミック、ポリマー、またはガラスから作ることができる。好ましくは、毛細管は、毛細管の長手方向の両端に開端を有する。好ましくは、毛細管はガラスの毛細管である。この方法の精度および再現性のために、本発明によれば、溶液中の粒子のサンプルを含む容器から放出される光信号に基づくDLS測定に影響しうるアーチファクトおよび信号ノイズを低減させることが有利である。したがって、ガラスは、樹脂などの他の材料ほど光の伝送および散乱に影響せず、高温で極度な溶液条件、たとえば酸性条件の場合でも安定しており不活性であるため、ガラスから作られた容器が有利である。したがって、毛細管は、好ましくは、円形の断面、0.1mm~1mm、好ましくは0.15mm~0.5mmの内径、好ましくは0.2mm~1.2mm、好ましくは0.65mm~1mmの外径、および5mm~70mm、好ましくは32mm~50mm、より好ましくは約50mmの長さを有するガラスの毛細管である。好ましくは、内径および/または外径、好ましくは両方は、毛細管の長さ全体にわたって一定である。そのような毛細管は、毛細管の形態をさらに強調するために、チューブキャピラリと呼ばれることが多い。毛細管壁は、レンズのように作用し、したがって光学効果を有する。したがって、毛細管壁の厚さは、測定の精度および感度に影響することができる。0.1mm~1mm、好ましくは0.15mm~0.5mmの内径、および0.2mm~2mm、好ましくは0.3mm~0.7mmの外径を有する毛細管を使用することが、精密かつ好感度の測定を取得するのに好ましいことが分かっている。特に、上記に定義した内径は、調査対象のサンプル内の光ビームの短い経路長を確実にするのに有利であり、加えて、小さい直径の場合、容器材料(したがって、サンプル)と好ましくはシリコンから作られる加熱要素との間の熱伝導がより良好になる。しかし、DLS測定の場合、より大きい直径がより良好であると考えられる。
【0075】
本発明の方法によれば、単色光源、好ましくはレーザなどのコヒーレント光源が提供される。単色光は、単一の光周波数を含む光放射を表す。当技術分野で知られているように、現実のレーザは本当の単色ではなく、すべてのレーザは、レーザ遷移の線幅として知られているある程度の範囲の周波数の光を放出しうる。ほとんどのレーザでは、線幅はかなり狭い。したがって、本発明では、話を簡単にするために単色光を指す。単色光は、その使用により定義された一定の測定条件、したがって精密で非常に正確な分析が確実になるため、溶液中の粒子を特徴付けるのに特に有利である。
【0076】
好ましくは、単色光源からの光は、500nm未満、より好ましくは350nm~500nm、さらに好ましくは405nm、445nm、または488nmの波長を有する。445nm、405nm、または488nmなどの500nm未満の波長で測定することは、より安価なレーザおよびあまり複雑でないレーザを使用することができるため、結果の高い品質を維持しながらコストを低減させるのに特に有利である。さらに、445nm、405nm、または488nmなどの500nm未満の波長を有する単色光源からの光を使用することには、500nm以上の波長を有する単色光源からの光の使用と比較して、ほとんどのタンパク質を含むほとんどの粒子の散乱光信号がより強くなり、吸収がより低くなるという利点がある。
【0077】
単色光は、レーザによって提供することができ、レーザは、好ましくはダイオードレーザであり、さらに好ましくは周波数安定化ダイオードレーザ、DPSSレーザ、PPLN周波数2重ダイオードレーザ、周波数多重DPSSレーザ、ダイオード励起ファイバレーザ、周波数多重ダイオード励起ファイバレーザ、およびダイオード励起アップコンバージョンファイバレーザからなる群から選択されるダイオードレーザである。好ましくは、レーザは、1mW~200mW、好ましくは10mW~100mW、より好ましくは45mW~80mW、さらに好ましくは50mW~70mWの電力を有する。
【0078】
単色光源は、そのコヒーレンス長によって特徴付けることができる。コヒーレンス長は、同じ単色光源からの2つの光ビームが重ね合わされたときに安定した干渉パターンが生じるように有しうる経路長または走行時間の最大差である。干渉パターンは、光の経路長および/または走行時間が異なることにより、検出器に到達する光波の位相差によって引き起こされることのある干渉作用に起因しうる。単色光源、好ましくはレーザは、好ましくは、少なくとも0.1mmのコヒーレンス長を有する。
【0079】
本発明の方法によれば、単色光源、好ましくはレーザからの光は、調査対象の溶液中の粒子を含むサンプルを含む容器へ伝送される。したがって、光は、好ましくは、前記サンプルに含まれる溶液中の粒子を特徴付けるために、レーザから調査対象のサンプルを含む容器へ光ビームとして伝送される。本明細書では、「光」、「光ビーム」、および「ビーム」という用語は交換可能に使用される。
【0080】
光は、いくつかの手段によって送達することができる。好ましくは、単色光は、単一モードファイバを介して単色光源から送達される。より好ましくは、単色光は、レーザ波長単一モードファイバを介して、たとえばレーザ波長偏光維持ファイバを介して、レーザから送達される。
【0081】
単色光源から容器へ伝送された単色光、すなわち伝送単色光は、好ましくは、対物レンズを使用して、サンプルを含む容器内で集束させられる。さらに、容器から放出された光はまた、好ましくは、前記対物レンズによって収集される。前記対物レンズは、好ましくは10mm~200mmの焦点距離を有する。別法または追加として、伝送単色光は、好ましくは3μm~30μmの半値全幅(FWHM)を有する焦点によって、容器内で集束させられ、好ましくはその結果、サンプル体積より小さい測定体積が得られる。特に、本発明による方法を使用して調査することができる測定体積は、好ましくは0.01nl~0.1nl、より好ましくは0.01nl~0.02nl、さらに好ましくは約0.016nlである。
【0082】
したがって、単色光は、広いアパーチャ、たとえば0.5mm~10mm、好ましくは1mm~5mmの幅を有するアパーチャを介して、強力なレーザから提供され、前記光は、405nm、445nm、または488nmの波長を有し、対物レンズを使用して、サンプルを含む容器内で集束させられることが特に好ましい。したがって、たとえば1秒当たり約百万個の検出光子が、容器へ伝送される。そのような場合、溶液中の粒子の特徴を測定する方法は、当技術分野で知られている。正確な結果を確実にするために、前記方法では、たとえば、容器へ伝送される光の量を低減させるように光源と容器との間に位置決めされた光学フィルタを使用し、かつ/または前記方法は、放出光の量を低減させるために、サンプルを希釈して溶液中の粒子の濃度を低減させるステップを含む。反対に、本発明による方法は、以下に説明する少なくとも2つの異なる分析モード(出力信号の取得および処理の詳細な説明を参照)を提供することによって、サンプルを希釈したりそのようなフィルタを使用したりすることなく適用することができる。
【0083】
溶液中の粒子を高品質で特徴付けるために、光がサンプルを含む容器へどのように厳密に伝送されるかがさらに重要である。より具体的には、容器からの反射の検出を回避するために、光学系を毛細管軸に対して斜めに位置決めすることが有利である。したがって、単色光源からの光は、好ましくは、所定の角度で容器、たとえば毛細管へ伝送される。特に、単色光源からの光は、好ましくは、容器の長手方向軸、たとえば毛細管の長手方向軸に対して角度φで、容器へ伝送され、φは、好ましくは0度~45度である。
【0084】
本発明の方法によれば、容器から放出された光を検出するために、光検出器がさらに提供および使用され、容器からの放出光は、容器、たとえば毛細管からの散乱光を指す。さらに、放出光は、好ましくは所定の角度で検出される。したがって、光検出器によって検出される光は、好ましくは、容器、たとえば毛細管の長手方向軸に対して角度φで、容器、たとえば毛細管から放出され、φは、好ましくは0度~45度である。好ましくは、φの値はφの値と同一である。さらに、単色光源から容器、たとえば毛細管へ伝送される光と、容器、たとえば毛細管から放出または散乱され、光検出器によって検出される光との間の角度φは、好ましくは0度~150度、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である。
【0085】
図1A)に例示的に示すように、レーザなどの単色光源からの光は、調査対象の溶液中の粒子を含むサンプル12を含む容器11、たとえば毛細管11へ、励起ビーム50として、容器11の長手方向軸10に対して角度φ53で伝送することができる。励起ビーム50の光は、サンプル12に含まれる調査対象の溶液中の粒子によって散乱させられ、したがって容器11から放出される。放出光または散乱光は、検出ビーム51として、容器11の長手方向軸10に対して角度φ20で検出することができる。励起(光)ビーム50と検出(光)ビーム51との間の角度は、φ54と呼ばれており、単色光源から容器11へ伝送される光と、容器から放出されて光検出器によって検出される光との間の角度として説明することもできる。
【0086】
図1B)に例示的に示すように、毛細管11の壁から反射された反射光ビーム19の検出を回避するために、励起ビーム50が容器11の長手方向軸10に対して角度φ53で、たとえば毛細管軸に対して斜めに伝送されるように、DLS光学系15を位置決めすることが有利である。図1B)は、90°-φの角度53’を示す。本発明は、適当なDLS光学系15を使用することによって、励起ビーム50が容器内に位置する焦点17に集束させられるという利点を提供する。したがって、適当な集束光学系を使用し、毛細管の長手方向軸10に対して適当な角度で光を放出することによって、毛細管壁からの反射を妨害することを回避することができる。好ましくは、光学系15と毛細管11との間に光ファイバは必要でなく、したがって光学系15と毛細管との間のわずかな距離の空気が、光学系15と毛細管11との間のより容易な相対的な動きを可能にし、これは複数の毛細管を短い時間で測定するべきである場合に有利である。毛細管内に焦点17を配置することは、小さい焦点距離による強い集束によって実現することができる。
【0087】
特に、焦点17が小さい毛細管内に位置することを確実にするために、本発明は、毛細管の場所の強化された測定、ならびに任意選択で毛細管および/またはその測定および/もしくは後の測定のための位置を移動させるためのフィードバック制御のための方法を提供する。さらに、本発明によれば、測定が容器内の(どこか)で行われることを確実にすることが可能になるだけでなく、容器内の最善のスポットで測定することがさらに好ましい。
【0088】
たとえば、容器が毛細管である場合、そのような毛細管は典型的に、500μmの内径を有するが、好ましいスポットのサイズ、たとえば直径は、ほんの約50μmである。上述した集束手段を用いると、10μmの精度が実現可能である。前記高い精度に基づいて、容器/毛細管の位置だけでなく、容器壁からある程度の距離をあけて位置する容器内の測定体積、たとえば容器の「中間」のどこかに位置する体積も精密に判定することができる。
【0089】
この場所またはスポットは、たとえば、弱く散乱するサンプルを使用して、複数のDLS測定を容器/毛細管内の異なる位置で実行することによって見出すことができる。好ましいスポットは、自己相関関数(SNR=(acfの振幅)/(2乗適合残差の和))の最も高いSNRを有するスポットである。たとえば、図14は、SNRの異なる値を有する毛細管の走査を異なる色で示し、それによりたとえば周辺領域を測定のためのスポットとして識別することを可能にする。例として、濃度2mg/mlのリゾチームのサンプルおよび200ミリ秒の測定継続時間を使用するとき、SNRの典型的な値は50である。
【0090】
提供される光検出器は、好ましくは、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPM)、またはアバランシェフォトダイオード(APD)光子計数検出器である。そのような検出器の生の出力信号は、典型的にアナログ出力信号、たとえば可変の電流または電圧であり、これはそれぞれ可変の電圧または電流に変換することができる。本発明によれば、前記可変出力信号は、好ましくは、以下でさらに詳細に論じるようにさらに処理される。対照的に、従来、DLS測定は、APD光子計数検出器のみを使用することによって制限される。しかし、APD光子計数検出器には、検出を可能にするには検出光の強度を弱くしなければならないという欠点がある。いくつかの現況技術のデバイスは、たとえば光の強度を低減させるために追加のフィルタを使用することによって、この欠点を克服しようとしているが、これには時間がかかり、したがって処理量が低下する。したがって、これらの欠点を克服するために、本発明の光検出器は、好ましくは、以下でさらに詳細に論じるようにさらなる利点を提供するPMTまたはSiPMである。
【0091】
本発明の方法によれば、光検出器によって検出された光は、動的光散乱の測定に使用することができ、したがってDLS測定に基づいて、サンプルに含まれる溶液中の粒子の特徴を判定することができる。所与のサンプルに対して、DLS測定は、好ましくは、5秒未満、より好ましくは1秒未満、好ましくは200ミリ秒~800ミリ秒、より好ましくは約500ミリ秒で取得される。したがって、調査対象の小さいサンプル体積の場合でも、高い処理量を確実にしながら、分析の高い精度および感度を確実にすることができる。
【0092】
DLS測定は、好ましくは、少なくとも1つの相関演算、好ましくは少なくとも1つの自己相関演算を実行するステップを含む。自己相関演算(または関数)は、所与の時間の信号と、特定の遅延時間後の信号との類似性を評価し、小さい粒子より大きい粒子の場合、強度の変動がよりゆっくりになる。したがって、自己相関器が、特定の遅延時間後の信号の類似性を表す正規化された自己相関関数を計算し、したがって散乱光の強度変動を時間に対して相関させて、強度がどれだけ急速に変動するかを判定し、これは粒子の拡散挙動に関係する。したがって、少なくとも1つの相関演算、好ましくは少なくとも1つの自己相関演算を実行するステップは、検出器に到達する光強度の変動に基づいて、溶液中の粒子の拡散係数を判定するのに有利である。好ましくは、それぞれの相関関数、好ましくは自己相関関数は、さらなる分析のためにPCへ伝達され、かつ/またはハードディスクなどの記憶媒体に記憶される。
【0093】
DLS測定は、好ましくは、光検出器から取得されたアナログ出力信号を取得するステップと、取得されたアナログ出力信号を処理するステップとを含む。好ましくは、取得されたアナログ出力信号を処理するステップは、取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化するステップを含む。特に、取得されたアナログ出力信号は、異なるデータ速度で、好ましくは少なくとも40MS/秒の高いデータ速度で、デジタル化された出力信号にデジタル化することができる。これは、提供された光検出器がPMTまたはSiPMである場合に特に有利であり、したがって本発明の方法によれば、連続動作でも使用することができる。
【0094】
好ましくは、取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号に処理するステップは、i)好ましくは容器から放出された検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を下回る場合、デジタル化された出力信号を、デジタル化された単一光子パルス信号として処理するステップ、および/またはii)好ましくは検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を上回る場合、デジタル化された出力信号を、アナログ信号の離散値として処理するステップをさらに含む。これには、サンプルの信号強度および/または信号強度変動に応じて、取得されたアナログ出力信号を処理することができ、したがって取得されたアナログ出力信号の最適の処理、および調査対象のサンプルに含まれる溶液中の粒子の最適化された特徴付けを確実にすることができるという利点がある。
【0095】
特に、調査対象のサンプルを含む容器から放出された光子は、PMTなどの光検出器によって検出することができ、取得されたアナログ出力信号は、好ましくはデジタル化される。
【0096】
したがって、容器から放出された検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を下回る場合、前記低散乱サンプルのデジタル化された信号は、好ましくは、離散化された信号として、したがってデジタル化された信号として処理される。したがって、容器から放出された個々の光子を、高い精度で検出することができる。低輝度範囲内で単一光子を計数する利点は、すべての光子が同じエネルギー含量を有し、したがって(すべての)他の信号部分は、ノイズである、またはオフセットドリフトおよび/もしくは利得変動などの他のランダム因子によって引き起こされたと推測することができるという知識に基づく。
【0097】
たとえばパルス弁別器を使用することによって、単一光子を計数することができる。図4Aおよび図4Bに関してさらに詳細に論じるように、検出器30から(直接)くるアナログ出力信号が、好ましくはADCによってデジタル化されることが好ましい。その結果得られるデジタル化された出力信号39の一例が、図2の左側に示されている。特に、示されている信号39は、PMTのデジタル化された出力信号である。同じく図2に例示的に示すように、パルス弁別器32を使用して、光子計数閾値36などの閾値を適用することによって、たとえばデジタル化後に光検出器から取得されたデジタル化された出力信号39を離散化することができる。したがって、デジタル化された出力信号が閾値36を超過する場合、たとえば光子の存在を示す離散化信号が作られる。言い換えれば、デジタル化された出力信号39は、デジタル(単一)光子パルス信号として処理される。信号39が閾値を超過しない場合、それぞれの離散化信号は、たとえば光子の不在を示す。
【0098】
しかし、取得された信号が明るくなりすぎ、したがってあまりに多くの光子信号が重複するとき、たとえば単一光子計数はほとんどまたはまったく可能でない。この場合、デジタル化された出力信号は、好ましくは、「アナログ信号」として、たとえばアナログ信号の離散値として処理される。さらに言い換えれば、前記デジタル化された信号は、元のアナログ信号と同様に処理することができる連続信号を提供する。本出願では、デジタル化された出力信号を、離散値を有するアナログ信号離散値として処理するステップも参照される。後者の選択肢は、好ましくは、たとえばデジタル化後の量子化の深さに従って、検出光の強度が特定の閾値を上回る場合、たとえば1秒当たりの検出光子2百万個、またはそれぞれの輝度値を上回る場合に使用される。光検出器がSiPMである場合、中間の輝度レベル、たとえば1秒当たり2百万個の検出光子から1秒当たり6百万個の検出光子の検出光の強度の場合、光子ピーク面積の離散化によって、デジタル化された出力信号を、デジタル化された信号としてさらに処理することができ、したがって実際に検出された光子の量を推定することができる。
【0099】
取得されたアナログ出力信号、および後に作られたデジタル化された出力信号を処理するステップは、好ましくは、ステップi)またはステップii)を含む。したがって、デジタル化された出力信号は、好ましくは、デジタル化された単一光子パルス信号として、またはアナログ信号の離散値として処理される。デジタル化された出力信号をi)に従って処理するか、それともii)に従って処理するかを決定するために、好ましくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が使用される。たとえばFPGAを使用して、光子計数とアナログ動作との間の切換えをマイクロ秒単位で行うことができる。したがって、ステップi)に従って、デジタル化された出力信号を、デジタル化された信号として処理するべきかどうかを決定するための時間は、たとえばFPGAを使用して、好ましくは1秒未満、より好ましくは最大0.05秒である。FPGAのアルゴリズムは、好ましくは、ある種の「ソフトウェア」としてFPGA上で実行される。データを処理するための前記アルゴリズム(ソフトウェア)は、たとえば更新によって変更することができる。言い換えれば、ソフトウェア更新を介して信号処理の仕様/アルゴリズムの変更は、容易に可能である。したがって、ハードウェア/検出器の変更は必要なく、これは大きい利点を提供する。
【0100】
本発明によれば、i)およびii)に従って、デジタル化された出力信号を同時に処理することも可能である。このように、ステップi)に従って処理するべきか、それともii)に従って処理するべきかの決定は、測定後に行うことができる。
【0101】
デジタル化された出力信号を、i)に従って処理するべきか、それともii)に従って処理するべきかを決定する利点は、図3に例示的に示されており、図3は、アナログ信号の信号強度に対する光子計数信号の信号強度を示し、破線は線形範囲の外挿適合を示す。簡潔に言えば、PMTは、非常に低い電力のLEDを使用して照射され、数ミリ秒以内に信号が測定された。図3に示す「アナログ信号」は、前記信号の平均値を表し、示される「検出光子/秒」信号は、それぞれの測定間隔内の光子ピークの数を計数し、それを1秒にスケーリングすることによって取得された。次いで、LED電力が増大され、測定が繰り返された。
【0102】
したがって、図3に示すように、特定の放射電力で、ますます多くの光子ピークが重複し、別個のピークとして認識されなくなった。より具体的には、ある点で、光子信号はLED電力に比例して増大しなくなった。従来のDLS機器は、光子計数範囲内で測定し、したがって信号が強すぎる場合、すなわち検出光子計数の数が大きすぎる場合に光ビーム経路に入るフィルタを備える。反対に、本発明によるDLS測定は、線形性誤差がたとえば5%を下回る場合、デジタル化された出力信号を「光子計数信号」として分析することを含み、すなわち上記の図3に示す例で、1秒当たり約3*10個の光子、または20計数は、アナログ信号を意味し、より高い電力で、デジタル化された出力信号は、アナログ信号として分析される。したがって、本発明による方法およびデバイスを使用することには、上述したように強度依存信号の処理によって、DLS測定時間が低減され、したがって処理量が増大するという利点がある。
【0103】
別法として、どちらの処理選択肢も並行して適用され得、「並行」という用語は、「1ナノ秒未満の時間オフセットで」として理解されることが意図される。これは、好ましくは、たとえば2つのプロセッサを並行して(好ましくは、同じFPGA内で合成されて)使用することによって実現される。したがって、デジタル化された出力信号はまた、デジタル化された信号およびアナログ信号として処理することができ、取得されたデータは記憶されることができる。これには、処理されたデジタル化出力信号の両方を後の段階で記憶および処理することができるという利点がある。したがって、取得されたアナログ出力信号を処理するステップは、ステップi)およびステップii)から取得された処理されたデジタル化出力信号を記憶するステップと、記憶された出力信号のうちの1つをさらに処理するステップとをさらに含むことができる。
【0104】
放出光から処理信号までのステップは、次のように簡潔に要約することができる。ファイバから放出されたレーザ光は、コリメータレンズを介して平行に誘導し、対物レンズを介して容器、たとえば毛細管内へ集束させることができる。容器からの散乱光、したがって放出光のビームは、同じまたはさらなる対物レンズ、好ましくは同じ対物レンズを介して、さらなるコリメータレンズを通って、光検出器であるDLS検出器のファイバへ集束させることができ、次いでPMTによって検出することができる。PMTは、ほとんどの場合、電流出力を有するのに対して、アナログデジタル変換器(ADC)の場合、通常は電圧信号が必要とされることから、PMTからの電流を電圧信号に変換して増幅することができるように、PMTとADCとの間に増幅器が配置されることがある。ADCは、たとえば40MS/秒(1秒当たり4千万個のサンプル)のサンプリング速度で、増幅された電圧信号を、たとえば16ビット分解能のデジタル信号にさらに変換することができる。好ましくはFPGAによってプログラムされる自己相関器を実時間で使用して、強度信号の自己相関関数を計算することができ、次いでたとえばコンピュータを使用して、これを評価することができる。
【0105】
より詳細には、取得されたアナログ出力信号を処理するステップについて、図4A)および図4B)を参照して例示的に説明する。したがって、DLS測定に使用される光検出器、すなわちDLS検出器30は、調査対象のサンプルを含む容器から放出または散乱される光を検出することができる。DLS検出器によって取得されたアナログ信号は、好ましくは、たとえばアナログデジタル変換器(ADC31)を使用して、デジタル信号に変換され、すなわちデジタル化された出力信号にデジタル化され、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA34)へさらに伝送される。FPGA34は、少なくとも1つの相関演算、好ましくは少なくとも1つの自己相関演算を実行する1つまたは複数の相関器を含むことができる。FPGA34は、図4A)に例示的に示すように、1つの相関器33を含むことができる。この場合、FPGAは、好ましくは、パルス弁別器32をさらに含み、相関器33に対する入力信号は、パルス弁別器32から取得される光子計数データと、アナログデータとして処理されるデジタル化データとの間で切り換えることができる。別法として、FPGAは、並行して実行される2つの相関器33を含むことができ、図4B)に例示的に示すように、パルス弁別器32によって変換される信号に基づいて、一方はアナログモードで、他方は光子計数モードで実行される。すべての場合、FPGA34に含まれる1つまたは複数の相関器33の出力は、好ましくは、さらなる分析のためにPC35へ伝達され、かつ/またはハードディスクなどの記憶媒体に記憶される。
【0106】
したがって、取得されたアナログ出力信号を処理するステップは、好ましくは、アナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化するステップと、ステップi)またはステップii)から取得された処理されたデジタル化出力信号を、好ましくはハードディスクなどの記憶媒体に記憶するステップとをさらに含む。
【0107】
本発明による方法は、好ましくは、蛍光を測定するさらなるステップを含む。サンプルに含まれる溶液中の粒子の好ましい蛍光は、蛍光測定に使用され、前記蛍光は、好ましくは前記粒子の自家蛍光である。溶液中の粒子の蛍光、好ましくは自家蛍光を測定することが有利となりうる。自家蛍光の不在は、欠けた容器または蛍光もしくは自家蛍光のない空の容器を示す。これが当てはまる場合、(さらなる)測定、すなわちDLS測定、好ましくはナノDSF測定などのさらなる蛍光測定を省略することができる。したがって、自家蛍光の有無に関する情報を使用することは、本発明による方法を使用して溶液中の粒子を特徴付けるのに必要とされる時間を削減するのに有利となりうる。さらに、検出された自家蛍光信号の信号強度および/または信号強度パターンに関する情報を取得することができる。このタイプの情報は、たとえばこうして取得された情報を使用して、光による励起および/もしくはナノDSF測定時に蛍光を放出することができる溶液中の粒子を有するサンプルを含む容器の位置を判定し、かつ/または金粒子などの自家蛍光のない汚染物質を含むサンプルを検出することができるため、特に有利である。蛍光は、好ましくは、LEDなどのさらなる光源を提供し、前記さらなる光源からの光を、サンプルを含む容器へ伝送し、したがって粒子の自家蛍光を励起し、容器からの放出光を検出することによって測定される。好ましくは、さらなる光源は、溶液中の粒子、好ましくは溶液中のタンパク質の自家蛍光の励起のために、約280nmの波長を有する光を提供する。
【0108】
本明細書では、「蛍光」という用語は、たとえば光子の吸収によって粒子が励起される場合、電磁放射の放出という形態のエネルギーの解放を含む電磁放射を指す。より具体的には、タンパク質などの粒子は、たとえば3つの特有の芳香族アミノ酸、すなわちフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンのうちの少なくとも1つを含む場合、固有蛍光とも呼ばれる自家蛍光を呈することができる。タンパク質の自家蛍光は、チロシンおよびフェニルアラニンと比較するとより高い消散係数を有するトリプトファンによって支配され得る。モル吸光係数とも呼ばれる消散係数は、媒体による電磁放射の減衰、すなわち消散の尺度を指し、媒体を通る経路長および溶液中の粒子の濃度によって影響され、散乱および吸収によって脆弱化が引き起こされることがある。チロシンおよびトリプトファンの吸収最大値は、約280nmの波長であり、チロシンは、トリプトファンと比較すると、タンパク質などの粒子内のその位置に対して放出波長のより低い依存性を呈する。したがって、タンパク質などの粒子の自家蛍光の励起は、好ましくは光によって、好ましくは約280nmまたは278nmの波長を有するさらなる光源から行われる。たとえば、約270nm~290nmで最大強度を有するLEDは、有効性を強化するために、たとえば278nm、280nm、または285nmが好ましい。
【0109】
溶液中の粒子の蛍光を測定するステップについて、図5の上部パネルを参照してより詳細に例示的に説明する。図5の前記上部パネルに例示的に示すように、毛細管11などの容器内のサンプル12に含まれる溶液中の粒子の蛍光は、たとえば所定の蛍光焦点16を有する蛍光光学系14を使用して測定することができる。容器および/または光学系14は、溶液中の粒子を含むサンプル12の蛍光を測定するために、蛍光焦点16が容器内に位置するように位置決めすることができる。蛍光を測定すると、DLS測定を実行するために、DLS光学系15のDLS焦点17が容器内に位置するように、容器を別の位置へ移動することができ、蛍光焦点およびDLS焦点は、互いに所定のx距離18をあけて位置する。別法として、サンプルを含む容器の位置は、蛍光およびDLS測定中に同じままとすることができ、したがって蛍光光学系14およびDLS光学系15は、それぞれ容器に関連して位置決めされる。したがって、容器、たとえば毛細管は、好ましくは、光学系14および15に対して動く。さらなる代替として、両方の測定を同時に実行することもできる。
【0110】
容器は、正確かつ再現可能な測定のために、DLS光学系などの光学系に対して明確に位置決めされるべきであるため、測定間に容器を動かすときにも、精密な位置決めを確実にすることが有利である。したがって、本発明による方法は、好ましくは、測定された蛍光に基づいて、容器の位置を判定するステップと、任意選択で、測定された蛍光および判定された容器位置に基づいて、容器を位置決めするステップとをさらに含む。したがって、測定された蛍光に基づいて、たとえば容器および/または調査対象のサンプルに含まれる溶液中の粒子の蛍光に基づいて、サンプルの位置を正確に判定することができる。これは、いくつかのサンプルが高い処理量で測定されるべきである場合に特に有利である。この場合、毛細管ホルダ内に配置されることの多い毛細管をデバイスに手動で充填するのは可能でない。さらに、測定の再現可能な結果を高い品質で取得するために、それぞれの毛細管内の測定位置を迅速に配置しなければならない。これは、蛍光走査に基づいて、毛細管の位置を判定することによって実現することができ、蛍光走査は、好ましくはDLS測定の前に、またはDLS測定に並行して、好ましくはDLS測定に並行して実行される。したがって、本発明による方法を使用すると、たとえば48個の毛細管を約2秒で測定することができる。従来の解決策は、毛細管ホルダなどのサンプルコンテナの散乱光信号の検出に基づく。しかし、蛍光測定から取得される信号は、散乱光より概ね強い。したがって、そのような蛍光走査を使用することは、前記従来の解決策と比較して、毛細管のより正確な配置および任意選択で位置決め(移動)を可能にすることから、さらに有利である。
【0111】
タンパク質などの粒子の熱的安定性は、蛍光の変化を温度の関数として表す融解曲線を使用して分析することができる。より具体的には、融解曲線の第1の導関数を形成することによって、融点T、すなわち粒子の2分の1が変性させられる温度を判定することができる。したがって、0.1℃/分~7℃/分の加熱速度で、たとえば15℃~95℃、好ましくは20℃~90℃の温度勾配を適用することによって、サンプルを加熱することができる。
【0112】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するさらなるステップを含む。好ましくは、容器を時間とともに調温する前記ステップは、1分当たり0.01℃~1分当たり30℃、好ましくは1分当たり0.1℃~1分当たり10℃の焼戻し速度で、容器を調温することを含み、ならびに/または、第1の温度および第2の温度は、-20℃~160℃である。
【0113】
本発明による方法は、好ましくは、ナノ示差走査蛍光定量法(ナノDSF)測定を実行するステップをさらに含む。ナノDSF測定を実行することは、粒子、好ましくはタンパク質の立体構造変化を分析するのに有利である。ナノDSFは、好ましくは、LEDなどのさらなる光源を提供し、前記さらなる光源からの光を、サンプルを含む容器へ伝送し、容器からの放出光を検出することによって測定される。好ましくは、さらなる光源は、溶液中の粒子、好ましくは溶液中のタンパク質の励起のために、約280nmの波長を有する光を提供する。蛍光測定を実行するために光を容器へ伝送するためのさらなる光源は、たとえば容器の位置決めの判定をするためおよびナノDSF測定を実行するためにそれぞれ使用されるように、同じさらなる光源であっても異なるさらなる光源であってもよい。
【0114】
ナノDSF測定は、タンパク質の放出スペクトルの依存性および前記タンパク質内のトリプトファンの位置に基づく。トリプトファンは芳香族アミノ酸であり、大部分はその天然の立体構造でタンパク質の内側部分に位置する。しかし、タンパク質がたとえば変性によってその天然の立体構造を失った場合、タンパク質の内側部分が、より極性の環境に曝露される。トリプトファンの放出スペクトルは、その環境に依存するため、タンパク質の天然の立体構造の損失の結果、トリプトファンがより極性の環境に曝露され、その結果、非極性の環境で約325nmという放出最大値が、約350nmというより長い波長範囲へシフトしうる。したがって、トリプトファンの環境特有の放出スペクトルに関する情報を使用して、タンパク質の立体構造変化を分析することができる。したがって、タンパク質の蛍光は、約280nmの波長で励起させることができ、その結果、約350nmおよび330nmで放出が検出され、通常は変性によって増大する約350nmおよび330nmでの蛍光の強度に基づいて、商が形成される。タンパク質の変性は、温度の上昇を含む化学的および/または熱的変性条件によって生じる可能性がある。
【0115】
ナノDSF測定は、好ましくは、たとえば温度勾配を使用して、溶液中の粒子を変動する温度に曝露させたときに実行され、したがって、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、調査対象の溶液中の粒子を含む容器を時間とともに調温するときに実行される。これは、前記粒子が曝露される温度に応じて、調査対象の溶液中の粒子の立体構造変化に関する情報を取得するのに特に有利である。
【0116】
ナノDSF測定を本発明の方法に組み込むことについて、図5を参照してより詳細に例示的に説明する。図5の上部パネルに例示的に示すように、毛細管11などの容器内のサンプル12に含まれる溶液中の粒子の蛍光は、たとえば所定の蛍光焦点16を有するナノDSF光学系などの蛍光光学系14を使用して測定することができる。容器は、容器、たとえば毛細管を加熱および/または冷却することができる調温要素、たとえば加熱パッド/ベッドを使用して調温することができ、溶液中の粒子の放出される蛍光は、DLSおよびナノDSFなどの蛍光測定を使用して所与の温度で測定される。したがって、第1の温度で調温された容器は、溶液中の粒子を含むサンプル12の蛍光を測定するように蛍光焦点16が容器内に位置するように位置決めされる。蛍光を測定するとき、DLS測定を実行するようにDLS光学系15のDLS焦点17が容器内に位置するように、容器を別の位置へ移送することができ、蛍光焦点およびDLS焦点は、好ましくは、互いに対して所定のx距離18をあけて位置する。別法として、サンプルを含む容器の位置は、蛍光およびDLS測定中に同じままとすることができ、したがって蛍光光学系14およびDLS光学系15は、それぞれ容器に対して位置決めされる。さらなる代替として、両方の測定を同時に実行することができる。DLSおよび蛍光測定が所与の温度(図5の中央および下部パネルに示す)で実行された後、サンプルの温度はたとえば、容器に近接して位置する調温要素13の温度を増大させることによって増大させられる。サンプルが第2の温度に調温された後、別の回のDLSおよび/または蛍光測定を上述したように実行することができる。したがって、容器に含まれる溶液中の粒子は、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、サンプルを含む容器を時間とともに調温し、少なくともDLSおよび蛍光、好ましくはナノDSF測定を時点ごとに実行することによって、温度に応じて特徴付けることができる。
【0117】
別法または追加として、本発明による方法は、好ましくは、サンプルを含む容器の後方反射を測定するさらなるステップを含む。後方反射は、好ましくは、LEDなどのさらなる光源を提供し、サンプルを含む容器を通って前記さらなる光源からの光を伝送し、たとえば容器の下の鏡によって反射された光を検出することによって測定される(たとえば、図11参照)。したがって、測定された後方反射光の強度に応じて、容器および/もしくはサンプルが存在するかどうかを推論することができ、ならびに/または前記容器および/もしくはサンプルの位置で情報を取得することができる。より具体的には、容器が提供されている場合より、容器が提供されていない場合に、たとえば意図される容器位置の下の鏡によって後方散乱された測定光の強度がより強くなる。さらに、容器が提供された後、後方反射光の強度は、空の容器と、調査対象の粒子を含まない流体および/または汚染物質を含む容器と、本発明によるサンプルを含む容器との間で、それぞれ異なる。したがって、後方反射を測定することは、容器および/もしくはサンプルを検出すること、ならびに/またはそれぞれの厳密な位置に関する情報を取得することにとって有利となりうる。さらに、サンプルが提供され、少なくとも部分的に凝集させられた場合、サンプルに含まれる凝集粒子は、光検出器の受取り円錐の外側の方向に光の一部を散乱させ、凝集が強ければ強いほど、検出される信号はより弱くなる。したがって、後方反射を測定することによって、粒子凝集の存在および/または強度に関する情報を取得することができ、これは、本発明による方法を実行するために必要とされる時間を低減させ、その精度を増大させるのに有利である。
【0118】
好ましくは、さらなる光源は、溶液中の粒子、好ましくは溶液中のタンパク質の励起のために、約385nmの波長を有する光を提供する。好ましくは、約385nmの波長の光は、後方反射測定のためにさらに検出される。所望の波長を有する光を放出するLED、たとえば約385nmの最大強度を有するLEDが好ましい。蛍光測定、ナノDSF測定、および/または後方反射測定を実行するために容器へ光を伝送するさらなる光源はそれぞれ、同じさらなる光源であっても異なるさらなる光源であってもよい。後方反射を測定することは、タンパク質などの溶液中の粒子のコロイド安定性を調査するのに有利である。
【0119】
後方反射を使用した分析のために、溶液中の粒子を含み、サンプルホルダによって保持されたサンプルが、たとえば385nmの波長を有する光ビームによって照射され、したがって光源が容器の上に位置決めされ、別の時点にサンプルを横切った場合、光ビームは、容器の下の調温要素の材料によって反射される。たとえば、シリコンから作られた調温要素を使用して、反射面を調温して提供することができる。粒子凝集体を含むより大きい粒子は、より小さい粒子より強い光を散乱させるため、より大きい粒子の場合、反射光はより強く減衰させられる。したがって、反射光の強度は、調査対象のサンプルに粒子凝集体を含むより大きい粒子の存在に関する定性的な情報を提供する。
【0120】
好ましい実施形態によれば、調温要素は、特定の利点を提供するシリコン(Si)から作られ、たとえばSiは、平滑な表面、良好な熱伝導率、良好な機械的および化学的安定性、ならびに良好な反射率を提供する。好ましくは、調温されるべき容器は、前記調温要素に直接接触する。シリコンはまた、好ましくは本発明によって行われる蛍光による容器の位置決め判定を妨害する可能性のある自家蛍光を生じない。シリコン調温要素は、たとえばシリコンウエハの一部分から形成することができる。さらなる実施形態によれば、たとえば干渉被覆によって、後方反射および/または蛍光測定に使用される光の波長を反射し、DLS測定に使用される光を反射しない(たとえば、代わりに吸収かつ/または伝送する)ように、容器に接触する表面が修正された調温要素を使用することができる。たとえば、約405nm、好ましくは400nm±10nmで反射率を低減させることが好ましい。
【0121】
さらに、たとえば温度勾配中に、反射光の強度の変化を測定することによって、凝集の開始(Tagg)を判定することができ、これは凝集の開始によって溶液中の粒子のサイズが増大する温度を示す。したがって、後方反射は、好ましくは、上述したように、溶液中の粒子のコロイド安定性および温度誘起凝集に関する情報を取得するために、容器を時間とともに調温しながら測定される。
【0122】
さらに、以下の節でより詳細に説明するように、後方反射技術およびDLSの組合せから有利な効果が生じる。DLSおよび後方反射は、互いをうまく補完し、本発明によるデバイスおよび方法の測定範囲を大幅に延ばすことができる。特に、「汚れた」サンプル、たとえば濁ったサンプルの場合、DLSの有用性が制限されるが、後方反射技術は、そのようなサンプルに対してうまく機能する。他方では、後方反射技法は、小さい粒子を高い品質で検出するのに十分なほど感度が高くないが、そのようなサンプルの場合、DLSから高品質測定を取得することができる。さらに、時として、医薬製剤には、実際の活性物質を安定させるために使用される多くのPEG分子が含まれているが、これらの分子は、DLSが飽和し、したがって「ブラインド」状態になり得るほどの強い散乱信号を引き起こす可能性がある。したがって、後方反射測定は、「混濁度」測定と比較することができ、非常に頑強であり、凝集粒子が大きいかつ/または頻繁である(たとえば、サンプルが役に立たない、かつ/または「白濁」して見える)場合、DLS光学系は飽和し、したがってあまり役に立たない可能性があるが、後方反射光学系はそれでもなお、高い品質で測定することができる。これは、他のデバイスでは可能ではなく、さらに極めて大きい測定範囲を可能にする。
【0123】
一例として、毛細管を使用して抗体が調査され、20℃で開始する場合、特定の抗体ドメインの「変曲温度」(すなわち、「融解温度」)まで1分当たり1℃でサンプルを加熱するときでも、DLS、ナノDSF、および後方反射を高い品質で測定することができる。融解温度に到達した後、抗体は凝集し始める。しかし、「変曲温度」+5℃までは、DLS、ナノDSF、および後方反射をそれでもなお高い品質で測定することができる。しかし、「変曲温度」+5℃から、抗体は、強く凝集して沈澱し始めDLS光学系は飽和/ブラインド状態になり得るが、ナノDSFおよび後方反射は、解釈可能なデータを生成する。しかし、後方反射光学系は、それほど感度が高くないため、散乱光信号を与える可能性があるが、それでもなおサンプルの混濁度を高い品質で測定することができる。その結果、同じサンプルで実質的に同じ時間にこれらの測定を組み合わせることは、サンプルの特徴の強化された判定を提供する。
【0124】
さらに、たとえば静的散乱光測定を使用して、タンパク質などの溶液中の粒子のサイズを判定することができ、これには広い測定範囲が得られるという利点がある。静的散乱光測定の場合、レーザなどの単色光源からの光が、調査対象のサンプルを含む容器へ伝送され、サンプルに含まれる溶液中の粒子によって散乱させられる光が、異なる角度の少なくとも2つの光検出器によって測定される。したがって、本発明による方法は、好ましくは、さらなる光検出器を提供するステップと、さらなる光検出器を使用して、好ましくは容器の長手方向軸に対して角度φで、サンプルを含む容器の静的散乱光を測定するステップとをさらに含み、φは、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である。
【0125】
本発明による方法は、好ましくは、溶液中の粒子の特徴を高い処理量で測定するために、調査対象の溶液中の粒子を含む2つ以上のサンプルに適用される。したがって、本明細書に記載するように、複数の容器が提供されることが好ましく、各容器は、溶液中の粒子のサンプルを含み、溶液中の粒子の特徴が各容器に対して測定される。したがって、本発明による方法を使用すると、2つ以上の容器を使用して溶液中の粒子を高い処理量で特徴付けることができ、異なる洗剤濃度などの別の実験条件下であるが、溶液中の同じ粒子が各容器に含まれる。別法または追加として、本発明による方法を使用すると、複数の容器を提供し、前記容器が各々溶液中の異なる粒子のサンプルを含むことによって、溶液中の異なる粒子を高い処理量で特徴付けることができる。
【0126】
さらに、上述したように、本発明による方法が複数の容器適用される場合、i)各容器に対する蛍光測定に続いて、各容器に対するDLS測定が行われること、またはii)各容器に対するDLS測定に続いて、各容器に対する蛍光測定が行われること、またはiii)蛍光測定およびDLS測定が複数の容器のうちの1つの容器に対して実行されるのに続いて、蛍光測定およびDLS測定が複数の容器のうちの別の容器に対して行われることが好ましい。好ましくは、蛍光測定が実行され、それに続いてDLS測定が行われる。これは、蛍光測定からの情報をさらに使用して、DLS測定に対してそれぞれの容器を正確に配置し、任意選択で位置決め(移動)し、したがってDLS測定の再現可能な高品質の結果を確実にすることができることから特に有利である。より好ましくは、複数の容器のうちの各容器に対して、蛍光測定がDLS測定と同時に実行される。
好ましい実施形態の例
好ましくは、本発明による方法は、容器の蛍光信号を検出するステップ、容器の厳密な位置を判定するステップ、任意選択で光源および/または光学系に対して容器を位置決め(移動)するステップ、DLS測定、好ましくはさらにナノDSF測定を第1の温度で実行するステップ、容器を調温するステップ、容器の蛍光信号を検出するステップ、容器の厳密な位置を判定するステップ、任意選択で容器を相対的に位置決め(移動)するステップ、DLS測定、好ましくはさらにナノDSF測定を第2の温度で実行するステップなど、少なくとも詳細に上述したステップを含む。したがって、粒子の3次元構造、粒径分布、および凝集、ならびに温度などのパラメータに対する依存性を、比較的安く、速く、ならびに高い再現性および精度で評価することができる。さらに、少なくとも前記ステップを含む本発明による方法は、好ましくは、2つ以上の容器を使用して実行される。これには、精密な測定結果を高い処理量で取得するという利点がある。
【0127】
本発明による測定サイクルの好ましい例について、図11を以下で参照してより詳細に説明する。特に、毛細管を容器として使用する測定が例示され、調査対象の粒子を含むサンプルが、毛細管力によって容器内へ吸い込まれる。毛細管は次いで、サンプルキャリア/ホルダに配置することができる。別の実施形態によれば、複数の毛細管がホルダに取り付けられており、各毛細管の一方の端部を異なるサンプルに挿入すること、たとえば複数の毛細管をマルチウェルプレートのそれぞれのウェル同時に挿入することによって、複数の毛細管を同時に充填することができる。好ましい実施形態によれば、サンプルキャリア/ホルダに1~48個の毛細管が提供される。これらの複数の毛細管/容器(図11参照)の温度は、特有の温度に非常に精密に制御することができることがさらに好ましい。たとえば75℃の温度のすべての毛細管が75℃±0.2℃の「同質性」の温度範囲内に入るように、たとえば調温手段を提供することができる。これは、すべてのあらゆる単一毛細管が、実際的に同じ温度を有し、したがってこれらの毛細管が互いに同等であることを意味する。こうして複数の毛細管/容器に対する温度が精密に制御されることで、たとえば等温測定または温度勾配測定が可能になる。たとえば、等温モードでは、すべてのサンプルが、±0.5℃の精度の範囲内で単一の温度に維持される[特有の時間、たとえば1分超、2分超、1時間超、1日超、7日超にわたって、±0.2℃の精度を指定されたい]。また、温度が精密に制御されることで、温度勾配モードも可能になり、たとえば複数の毛細管内のサンプルを20℃から95℃へ1分当たり1℃の加熱速度で調温することが可能になる。周囲温度において、すべての毛細管は実質的に同じ温度を有する。しかし本発明によって、温度勾配のすべての温度で、すべての毛細管にわたる温度で、指定の精度を維持することが可能になる。
【0128】
測定は、好ましくは、サンプルキャリアがx方向に動かされるように実行され、したがって、たとえばDLSおよび/またはナノDSF測定のために、すべての容器の信号をそれぞれの光学系によって連続して検出することができる。別法として、光源、検出器、および/またはそれぞれの光学系を、サンプルキャリアに対して動かすこともできる。さらなる実施形態によれば、キャリア、ならびに光源、検出器、およびそれぞれの光学系を動かすことができる。言い換えれば、容器と検出システムとの間に相対的な動きが生じることが好ましい。サンプルキャリアが正のx方向に動かされたとき、ナノDSFおよび後方反射測定を実行することができ、サンプルキャリアを停止させることなく、すべての毛細管が走査される。サンプルキャリアが後退させられたとき、すなわち負のx方向に動かされたとき、それぞれのDLS測定を実行することができ、その際、サンプルキャリアはそれぞれの測定のために停止する。サンプルホルダに配置されたすべての毛細管が測定されるわけではない場合、毛細管のサブセットを選択することができ、これは光学系が毛細管に含まれるそれぞれのサンプルの散乱強度を検出することができるためと考えられる。
【0129】
それぞれの測定のために、容器の位置決めは、高品質の結果を取得するのに非常に重要である。さらに、容器内の測定スポットの判定もまた、測定の品質および感度を強化することができる。上述したように、容器の位置を測定することは、異なる方法によって実現することができ、粒子および/または容器からの自家蛍光信号を使用することが好ましい。好ましい方法について、図10を参照してさらに詳細に説明する。溶液中のタンパク質などの粒子の熱的安定性を判定するために、たとえば溶液中のタンパク質を含むサンプルを20℃から95℃まで加熱することができる(「温度勾配」)。特にサンプルを含む2つ以上の容器が分析されるべきである場合、前記サンプルは、たとえば測定サイクルごとに、すなわち温度勾配の少なくとも1つの所定の温度の各々の測定ごとに動かすことができるサンプルデッキ上のサンプルホルダに位置決めすることができ、したがってすべてのサンプルを測定することができる。そのような温度勾配中に温度によって誘起されるサンプルホルダの膨張により、サンプルを含む容器の位置はわずかにシフトし得る。したがって好ましくは、測定および/または各測定サイクル(DSLおよび/またはナノDSF測定など)のために、蛍光信号、たとえば検出された蛍光信号および/または以前の蛍光測定の最大値に基づいて、x方向における容器の中心が判定され、任意選択で位置決め(移動)される。しかし、測定の不正確さおよび/または蛍光性の弱いサンプルのため、容器、好ましくは毛細管の測定位置が測定ごとに異なる可能性もある。他方では、z位置が、好ましくは測定前に設定され、典型的には20℃から90℃への温度勾配中に、サンプルホルダの膨張により、約±20μmだけ変化する。x方向における測定位置が容器の中心から所定の値より大きく逸脱した場合、測定は容器壁の散乱信号によって影響されることがある。加えて、光は、測定位置に応じて、容器壁の湾曲によって異なる形で屈折させられることがあり、したがって測定位置を逸脱すると、測定角度、したがって判定されるべき粒子の特徴、たとえば粒子の減衰率に影響する可能性がある。したがって、サンプルの減衰率は、容器内の特定の測定点、いわゆる「容器の測定可能区域」(図10に緑色の区域として示し、白色の円は分析された測定位置を示す)で正確に判定することができる。この区域は、サンプルの正しい集束に依存する。検出器が照明区域を検出することができなくなるほど強く容器壁の湾曲によって光が屈折させられる場合、同じサンプルに対して異なる減衰率が観察される可能性がある。そのような場合に記録される自己相関関数は、主に干渉信号(たとえば、周囲光または電子ノイズ)を含むはずである。加えて、毛細管の頂部の毛細管壁は、散乱信号に強い影響(低いz値における紫色のスポット)を与える可能性があり、これはアーチファクトを招き、無意味のデータを生じさせることがある。したがって、図10に示すように、容器の上部におけるz位置(低いz値)が、正確な結果を取得するのに最善である。したがって、蛍光走査を使用することは、再現可能で正確な測定結果を取得するように容器を精密に配置し、任意選択で位置決め(移動)するのに有利である。
【0130】
この判定に加えて、容器内の最善のスポット、すなわち最善の信号対雑音比を取得することができる容器内のスポットを見出すことがさらに好ましい。たとえば、容器の壁に隣接している測定スポットは、ノイズを強化することがある。
【0131】
たとえば、好ましい毛細管は500μmの内径を有するが、測定に最善のスポットのサイズ(たとえば、直径)は、好ましくはほんの約50μmである。自家蛍光測定および強い集束レンズの使用により、10μmの精度が実現される。
【0132】
最善の信号対雑音比(SNR)を有する好ましいスポットは、たとえば、弱く散乱するサンプルを使用して、複数のDLS測定を毛細管内の異なる位置で実行することによって見出すことができる。最も好ましいスポットは、好ましくは、自己相関関数(SNR=(acfの振幅)/(2乗適合残差の和))の最も高いSNRを有するスポットである。たとえば、2mg/mlのリゾチームを含む溶液の場合、200ミリ秒の測定継続時間によって、SNR=50に対する典型的な値が取得可能である。例として、リゾチームを使用するとき、SNRの典型的な値は50である。
【0133】
好ましい実施形態では、本発明による方法は、i)調査対象の溶液中の粒子のサンプルを含む容器を提供するステップと、ii)提供された第1の光源からの光を容器へ伝送し、容器および/または容器に含まれるサンプルから放出された蛍光を測定し、検出された放出光に基づいて、第1の光源を含む第1の光学系に対する容器の位置を判定し、検出された放出光に基づいて、前記第1の光学系に対する前記容器の測定可能区域の位置を判定し、任意選択で第1の光学系に対して容器を位置決め(移動)し、検出された放出光から取得された情報、たとえば信号強度が調査対象の粒子の存在を示す場合、蛍光測定を実行するステップと、iii)提供された第2の光源からの光を容器へ伝送し、検出された放出光からステップii)で取得された情報、たとえば信号強度が調査対象の粒子の存在を示す場合、DLS測定を実行するステップと、iv)ステップii)およびiii)で実行された蛍光およびDLS測定から取得された情報に基づいて、粒径分布ならびに/または凝集の存在および/もしくは量などの調査対象の溶液中の粒子の特徴を判定するステップとを含む。この方法は、たとえばステップii)の前に、容器を調温するステップiv)をさらに含むことができる。さらに、蛍光を測定するステップは、好ましくは、ナノDSF測定を実行することによって自家蛍光を測定するステップを指す。さらに、この方法は、ステップii)およびiii)、ならびに/またはステップiv)、ii)、およびiii)を反復的に実行することによって、繰返し実行することができる。別法または追加として、たとえば第1の光学系を使用して、後方反射および/または静的光散乱を測定するステップを、本発明による方法にさらに含むことができる。第1および第2の光学系は、同じ光学系であっても異なる光学系であってもよいことに留意されたい。
【0134】
本発明は、第2の態様において、溶液中の粒子の特徴を測定するデバイスに関し、溶液中の粒子の前記特徴は、好ましくは、上述した本発明による方法によって測定される。したがって、本発明によるデバイスは、好ましくは、本発明による方法を実行するために使用され、かつ/または本発明による方法は、好ましくは、本発明のデバイスを使用して実行される。
【0135】
本発明によるデバイスは、溶液中の前記粒子のサンプルを含む少なくとも1つの容器、好ましくは0.1~15μL、より好ましくは1μl~15μl、さらに好ましくは8μL~12μLの前記粒子を収容する手段を備える。前記手段は、たとえば、毛細管ホルダまたはマイクロウェルプレートホルダなどのサンプルホルダを備えることができる。
【0136】
本発明によるデバイスは、単色光源、好ましくはレーザと、光検出器、好ましくはPMT、SiPM、またはAPD光子計数検出器とをさらに備える。
本発明によるデバイスは、DLS測定を実行する手段をさらに備える。前記手段は、たとえば、FPGA、パルス弁別器、相関器、ADC、ならびに平行化レンズおよび/または対物レンズ(または対物鏡)などのレンズを備えることができる。
【0137】
DLS測定を実行する手段など、本発明によるデバイスの手段を、DLS光学系に含むことができる。前記DLS光学系は、単色光源、光検出器、および/または制御手段の一部もしくはすべてをさらに備えることができる。したがって、デバイスは、図6に例示的に示すように、DLS光学系を備えることができる。DLS光学系15は、図6A)に示すように、単色光源55、たとえばレーザと、DLS検出器30と、好ましくは対物レンズまたは対物鏡52とを備える。したがって、単色光源55によって励起ビーム50を提供することができ、励起ビーム50は、対物レンズ52によって、好ましくはその結果得られる蛍光焦点17が調査対象のサンプル内に位置するように集束させることができる。本発明によるデバイスおよび方法を使用してサンプルが分析される場合、サンプルに含まれる溶液中の粒子は、DLS光学系15から伝送された光を散乱させる。こうして取得される放出光/散乱光は、DLS検出器50によって検出することができる(51)。特に、検出光ビーム51は、PMTまたはSiPMなどのDLS検出器30によって検出することができるように、DLS光学系15に含まれる同じまたは別の対物レンズ(または対物鏡)52によって集束および局所化することができる。DLS光学系15のCADモデルの一部(断面図)が、図6B)に例示的に示されており、DLS光学系15は、2つのコリメータレンズ56および1つの対物レンズ52を備える。コリメータレンズ56は、調査対象のサンプルからの散乱または放出光など、発散光源からほぼ平行なビーム経路を有する光を生成するために使用することができる。コリメータレンズはまた、対物レンズ52によって集束させられる単色光源55(図示せず)からの励起光ビーム、および/またはDLS検出器30(図示せず)によって検出される検出光ビームにも有利である。
【0138】
本発明によるデバイスは、少なくとも1つの容器を収容する手段を制御し、単色光源からの光を少なくとも1つの容器へ伝送するように単色光源を制御し、少なくとも1つの容器からの信号を検出するように光検出器を制御し、DLS測定を実行する前記手段を制御するように適合された制御手段をさらに備える。
【0139】
好ましくは、本発明によるデバイスは、相関演算、好ましくは自己相関演算を実行する手段をさらに備える。さらに、前記自己相関演算は、好ましくは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施される自己相関論理である。
【0140】
好ましくは、本発明によるデバイスは、データ処理動作を実行する手段をさらに備える。前記データ処理動作は、好ましくは、少なくとも上述したように、本発明による方法の取得されたアナログ出力信号を処理するステップを実行するためのデータ処理論理を含む。さらに、前記データ処理動作は、好ましくは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施されるデータ処理論理である。
【0141】
好ましくは、本発明によるデバイスは、光検出器から取得された信号をデジタル化する手段をさらに備え、制御手段は、光検出器から取得された信号をデジタル化する前記手段を制御するように適合される。光検出器から取得された信号をデジタル化する前記手段は、好ましくは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備える。
【0142】
好ましくは、本発明によるデバイスは、単一モードファイバと、前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を伝送する手段とをさらに備え、制御手段は、前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を送達する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0143】
したがって、デバイスは、DLS光学系と、光ファイバ、好ましくは単一モードファイバ、偏光維持またはマルチモードファイバ、より好ましくは単一モードファイバを備えることができる。図7A)に例示的に示すように、単色光源55、たとえばレーザは、上述した図6A)に例示的に示すDLS光学系とは対照的に、示されているDLS光学系15内に直接位置するのではなく、単色光源55からの単色光をDLS光学系15に位置する平行化レンズ56へ送達する光ファイバ57を介して、DLS光学系15に接続される。DLS光学系15は、1つまたは複数、ここでは2つのさらなる平行化レンズ56を備え、平行化レンズ56は各々、さらなる光ファイバ57を介して光検出器(この例ではDLS光学系に直接位置しない、30)へ伝達される検出光ビーム51を集束させる。したがって、図7A)は、1つの励起および2つの光検出器、たとえばマルチモードファイバを有するフォトダイオード、および単一モードファイバを有するPMTを含むDLS光学系の例示的なスキームを示す。
【0144】
デバイスの別の例が、共焦点版のDLS光学系を示す図7B)に例示的に示されている。上述した図7A)と比較すると、DLS光学系15は、たとえばコリメータレンズ56によって各々集束させることができる2つの光ビームに対して等しい比で光ビームを分割するビームスプリッタ58をさらに備える。これには、必要とされる空間がより小さいという利点がある。
【0145】
好ましくは、本発明によるデバイスは、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する手段をさらに備え、制御手段は、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0146】
したがって、デバイスのさらなる例が、共焦点の複合型の蛍光光学系およびDLS光学系(x距離=0)を示す図7C)に例示的に示されている。上述した図7B)と比較すると、DLS光学系は、蛍光光学系14を備え、ビームスプリッタ58は所定のビームスプリッタ波長59、たとえば低域通過620nmを有する。したがって、検出光ビーム51は、2つの光ビームに分割され、620nm以下の波長を有する光のみが、蛍光光学系14へ通される。そのような設定には、必要とされる空間がより小さく、同じサンプルを使用して蛍光および散乱を同時に測定することができるという利点がある。
【0147】
好ましくは、本発明によるデバイスは、溶液中の前記粒子のサンプルを収容する手段を位置決めする位置決め手段をさらに備え、制御手段は、サンプルを収容する位置決め手段を制御するようにさらに適合される。
【0148】
好ましくは、本発明によるデバイスは、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための温度制御システムをさらに備え、制御手段は、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための前記温度制御システムを制御するようにさらに適合される。
【0149】
好ましくは、本発明によるデバイスは、ナノDSF測定を実行する手段および/または後方反射を測定する手段をさらに備え、制御手段は、ナノDSF測定を実行する前記手段および/または後方反射を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0150】
好ましくは、本発明によるデバイスは、さらなる光検出器と、静的散乱光測定を実行する手段とをさらに備え、制御手段は、静的散乱光測定を実行する前記手段を制御するようにさらに適合される。
【0151】
本発明によるデバイスは、レーザのビーム品質を改善する手段をさらに備えることができる。したがって、本発明によるデバイスは、レーザのビーム品質を改善するために、たとえばDLS光学系に含まれる光学系を備えることができる。
【0152】
本発明によるデバイスの別の例として、デバイスは、図7D)に例示的に示されており、図7D)では、上述した図7A)に示すデバイスとは対照的に、レーザは単一モードファイバなしに結合される。これには、ファイバに結合するとき、コストおよび電力損失を低減させるという利点がある。図7D)に示す例では、単色光源は、たとえば、DLS光学系15に位置する。したがって、自由空間結合光源を有するDLS光学系の設計において例示的に示されているものが示されている。
【0153】
本発明によるデバイスは、ダイクロイックフィルタ、偏光フィルタ、迷光を低減させるためのアパーチャ、および/または毛細管の非点収差を補正するための円柱レンズなど、測定の品質を改善するのに有利なさらなる手段を備えることができる。したがって、デバイスの別の例は、図7E)に例示的に示されており、図7E)で、毛細管の非点収差を補正するための円柱レンズ64が、迷光を低減させるためのアパーチャ63と対物レンズ52との間に位置決めされる。したがって、単色光源55から伝送された光ビームは、平行化レンズ56、次いで対物レンズ52、円柱レンズ64、次いでアパーチャ63を通過してから、たとえばサンプルによって散乱させることができる。散乱光は次いで、DLS光学系15、特にアパーチャ63、円柱レンズ64、対物レンズ52、次いで少なくとも1つのさらなる、たとえば2つの平行化レンズ56を通過するとき、光検出器30によって検出することができる。図7E)にさらに例示的に示すように、DLS検出器などの光検出器30は、たとえば蛍光を阻止するために405/5nmの帯域通過を有するダイクロイックフィルタ60、および/または偏光フィルタ61を備えることができる。これは、高いアスペクト比(偏光フィルタ)で自家蛍光(帯域通過)または粒子を示す弱く散乱するサンプルに特に有利である。
【0154】
デバイスのさらなる例は、図7F)に示されており、図7F)は、1つの時点における同時測定のために2つのDLSアーム(検出および励起)および1つの共焦点の蛍光光学系を有するDLS光学系の設計を示す。この設計では、DLS光学系15は、蛍光光学系14ならびに平行化レンズ56、たとえば単色光源55からの光をサンプルへ伝送し、サンプルからの放出光をそれぞれ光検出器(3)へ伝送する対物レンズのない直列の2つの平行化レンズ56を備える。この設計では、それぞれの光ビームが直列の前記2つの平行化レンズ56を通過する方向において、第2の平行化レンズ56が励起を集束させる。DLS光学系のそのような設計は、より大きい散乱角度の場合と同様に有利であり、すなわちレーザと検出器との間の角度をこのようにして実現することができ、光散乱の低減を可能にすることもできる。
【0155】
デバイスのさらに好ましい例は、図7G)に示されており、図7G)は、図5F)の場合のように対物レンズがなく2つのアーム(検出および励起)を有するが、蛍光光学系14のない、DLS光学系の設計を示す。これは、したがって、蛍光および散乱測定を、同じサンプルに対して同時に取得することができるので特に有利である。
【0156】
本発明による方法に関連して上述したように、容器、サンプル、粒子、およびこれらの特徴、サンプル、容器、単色光源、光検出器、調温時間、(自己)相関演算、FPGA、光の送達、伝送、放出、および検出、ならびにDLS測定、蛍光測定、ナノDSF測定、後方反射測定、および静的散乱光測定を含む測定に関して、同じことが当てはまる。さらに、そのような測定の他の特徴も、上述のようにすることができる。したがって、本発明の第1の態様の有利な特徴および特性は、本発明の第2の態様の有利な特徴と見なされ、逆も同様である。
【0157】
本発明の他の態様および利点について、限定ではなく例示の目的で与えられる以下の例に説明する。本出願で引用する各公開、特許、特許出願、または他の文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例
【0158】
本明細書では、本開示で使用するための方法および材料について説明するが、当技術分野で知られている他の好適な方法および材料を使用することもできる。材料、方法、および例は、例示のみを目的とし、限定的であることを意図したものではない。
【0159】
免疫システムは、体液性および/または細胞媒介性の免疫応答によって、病原体(たとえば、細菌、ウイルス、毒素)を認識および回避することができる。体液性免疫応答は、病原体特有の抗原に対する病原体特有の抗体を含む特有のタンパク質の産生を含む。抗体は、血漿およびリンパ液中の可溶性タンパク質として循環することができ、病原性抗原の認識、中和、凝集、および沈澱にとって重要である。病原性抗原に対する特定性、ならびに免疫全般の文脈での根本的な役割のため、疾患の診断および治療の分野において、抗体は非常に重要である。
【0160】
しかし、抗体を調査し、抗体ベースの療法および医薬組成を開発することは、抗体の機能および安定性の点から複雑なタスクである。たとえば、抗体の不安定性は、化学的変性、立体構造の熱的安定性の変化、特に減少、およびコロイド安定性の変化、特に減少によって引き起こされる可能性がある。これらの態様のいずれもが、治療および/または診断抗体の効率および/または安全に影響する可能性がある。したがって、抗体の安定性を包括的に特徴付けて最適化することを目的として、広範な分析が実行される。
【0161】
この文脈では、溶液中のタンパク質、たとえばIgGおよび緩衝液を含む(医薬または診断)抗体組成、の安定性を分析および最適化するために、典型的な実験をシミュレートするための実験が実行された。
【0162】
開始材料は、免疫グロブリンクラスG(略してIgG)の治療用抗体の市販の製剤(HyQvia、Baxalta Innovations GmbH、Vienna、Austria)であった。IgG抗体は、異なる緩衝液(酢酸ナトリウムおよびHEPES)を使用して希釈された。HyQvia製品の最初の質量濃度は、1mlの注射溶液当たり100mgのタンパク質であった。抗体組成物は、酢酸ナトリウムまたはHEPES緩衝液を使用して、1mlの緩衝液当たり2mgのタンパク質の最終質量濃度まで、50倍に希釈された。希釈された製剤は、不溶性の巨視的および微小粒子を除去するため、重力により14000倍の加速度で15分間にわたって遠心分離にかけられた。1つの各毛細管をタンパク質溶液中で保持することによって、希釈されて遠心分離にかけられた抗体溶液が毛細管に投入され、毛細管自体が、毛細管力によりタンパク質溶液で充填される。蛍光シフトおよび粒径のほぼ同時の測定からなる複合型の熱的解析実験が実行された。熱的解析を誘起するための加熱速度は、1℃/分であった。DLS測定時間は、1つの毛細管につき500ミリ秒であった。
【0163】
図8は、IgGがどの温度で蛍光シフトを示すか(常に上部のサブプロット)、および検出粒子またはそのサイズの分布(常に下部のサブプロット)が温度の関数としてどのように変化するかを判定することを目的とした実験の結果を示す。タンパク質の立体構造の安定性(常に上部のサブプロット)、およびタンパク質溶液中のサイズまたはサイズ分布を測定することによるタンパク質粒子のコロイド安定性(常に下部のサブプロット)の組合せ判定により、これら2つの重要なパラメータの精密な分析が可能になる。組合せ判定は、最大48個のサンプルまで並行して実行することもできるため、調査対象のタンパク質が溶解される異なる緩衝液などの多くの異なる条件を試験し、効率的に評価することができる。したがって、DLSおよびナノDSF測定の組合せには、タンパク質の立体構造およびコロイド安定性を考慮して、タンパク質の複合型の特性評価によって、診断または治療用のタンパク質の開発を加速させるという利点がある。
【0164】
図9は、平均累積半径、平均累積の多分散性指数、および粒子パラメータの基礎になる自己相関関数の数学的パラメータを含むDLS判定可能な粒子パラメータの概要を示す。図8に記載する緩衝液からの総サンプル、ウシグロブリン(BGG)、およびIgGのデータが示されている。温度は、測定中に25℃で一定に維持された。5つの測定が、各々5000ミリ秒のDLS測定時間で、毛細管ごとに記録された。グラフ内の点は、蓄積方法によって判定された平均半径を表す。灰色の区域は、それぞれの毛細管内の検出粒子のサイズ分布を表す。見ることができるように、BGGおよびIgGの特定の粒子パラメータ間の差を識別することができる。そのような実験設定は、所与のサンプルの同質性を評価するのに有利であり、たとえばサイズ分布がより狭く、平均累積多分散性指数がより小さいほど、調査対象のサンプルがより均質になる。
【0165】
図15は、モノクローナル抗体の物理化学および生物物理学的な属性を判定するために方法の性能を評価する際に使用することが意図されるNISTmAb標準物質RM8671を使用することによる抗体緩衝液の分別および抗体候補の選択に対する応用例を示す。図15はまた、治療用タンパク質の特徴付けのための新規な技術の開発のための代表的な試験分子を提供する。
【0166】
試験サンプルは、食塩水中に1mg/mlのNISTmAbを含む。水平軸は、ほぼ周囲温度から100℃超までの温度範囲内の温度を表す。第1のプロット(上から)は、温度に対する350nmの第1の導関数を示す。60~75℃のピークは第1の遷移を示し、75~90℃のピークは第2の遷移を示し、90~100℃のピークは第3の遷移を示す(この抗体の場合、このチャネルでよりよく見える)。各遷移は、個々のタンパク質ドメインのアンフォールディングに対応する。第2のプロットは、後方散乱からの混濁度を示し、開始は、まっすぐな垂直線として示されている。第3のプロットは、DLSからの散乱を示し(平均散乱強度)、この場合も開始は、まっすぐな線として示されている。第4のプロット(最も下のプロット)は、キュムラント半径をnm単位で示し、開始はまた、まっすぐな線として示されている。
【0167】
IgG/抗体(NISTmAbが代表的である)は、CH2、Fab断片、CH3という3つのタンパク質ドメインを含む。特に、Y字形のIgG分子の「腕部」は、可変の抗原結合部位を含み、したがって一般にFab領域(断片、抗原結合)と呼ばれる。Yの「脚部」は抗体の免疫学的特性を表し、Fc領域(断片、結晶化可能)と呼ばれる。Fc領域は、CH2およびCH3ドメイン(それぞれ重鎖の一定部分のドメイン2および3)に細分することができる。熱的アンフォールディング実験では、アンフォールディングプロファイルにおいて、CH2領域、Fab領域、およびCH3領域の3つのアンフォールディング事象を表す3つの別個のアンフォールディング事象が見られることが多い。特に、CH2領域が最初に展開され(最も低い温度)、それに続いてFabおよびCH3が展開される。IgGの厳密な分子構造に応じて、3つすべての領域が、別個のアンフォールディング事象を示すとは限らない。いくつかの場合、2つのアンフォールディング事象が重複し、またはさらには同時に発生し、明白な分離を妨げる可能性がある。第2の遷移に対応する大きいFabのアンフォールディングは、典型的に、サイズの増大を招き、これは凝集ではなく協調的なアンフォールディング(キュムラント半径開始、最も低いプロット)であると解釈される。第3の遷移に対応するCH3のアンフォールディングは、散乱(DLSからの平均強度)および混濁度(後方反射から)の開始から、さらなるサイズの増大で見える凝集を引き起こす。
【0168】
図16は、図15に類似しているが、サンプルは、25mMの酢酸ナトリウムpH4中に1mg/mlのNISTmAbを含む。第1のプロット(上から)は、温度に対する350nmの第1の導関数を示す。50~60℃のピークは第1の遷移を示し、70~80℃のピークは第2の遷移を示す(この抗体に対してこのチャネルでよりよく見える)。各遷移は、個々のタンパク質ドメインのアンフォールディングに対応する。第2のプロットは、後方散乱からの混濁度を示す。第3のプロットは、DLSからの散乱を示す(平均散乱強度)。第4のプロット(最も低いプロット)は、キュムラント半径をnmで示し、開始は、まっすぐな線として示されている。Fabのアンフォールディングは、サイズの増大を招き、これは協調的なアンフォールディングであると解釈される。凝集は発生しない。特に、これは、DLSの開始が凝集の開始ではない良好な例である。凝集が観察されない場合、この開始は、Tonset(変性開始温度)に整合するはずである(単一ドメインタンパク質の場合)が、マルチドメインタンパク質の場合はより高くなり、ドメインのアンフォールディングに対応し、Rhの最大の変化をもたらす可能性がある。この例では、DLSをnDSFと組み合わせて監視することによって、タンパク質のアンフォールディング機構に関するさらなる詳細を取得した。
【0169】
図17は、図15に類似しているが、サンプルは、25mMの酢酸ナトリウムpH4+130mMのNaCl中に1mg/mlのNISTmAbを含む。第1のプロット(上から)は、温度に対する350nmの第1の導関数を示す。45~60℃のピークは第1の遷移を示し、60~75℃のピークは第2の遷移を示し、75~90℃のピークは第3の遷移を示す(この抗体に対してこのチャネルでよりよく見える)。各遷移は、個々のタンパク質ドメインのアンフォールディングに対応する。第2のプロットは、後方散乱からの混濁度を示す。第3のプロットは、DLSからの散乱を示し(平均散乱強度)、開始はまっすぐな線として示されている。第4のプロット(最も低いプロット)はキュムラント半径を示す。
【0170】
第2の遷移に対応するFabのアンフォールディングは、サイズの増大を招き、これは協調的なアンフォールディングであると解釈される。第3の遷移に対応するCH3のアンフォールディングは、穏やかな凝集を引き起こし、これは散乱の開始および混濁度の欠落開始として見ることができる。
【0171】
これら3つの例は、対応する結果を使用して、候補分子の問題のあるドメインを識別し、構造体のさらなる最適化から開始するべき場所に関する案内を提供することができることを示す。別法として、これらの結果を使用して、有望な緩衝液条件を識別することができる。
【0172】
図18は、凝集経路を理解するための一例である。サンプルは、図15の例と同じであり、試験サンプルは、食塩水中に1mg/mlのNISTmAbを含む。図15の上限温度は100℃を上回るが、図19の上限温度は約110℃であることに留意されたい。それに応じて、温度に対する350nmの第1の導関数を示す第1のプロット(上から)は、図15の第1のプロットに対するものである。図18の第2のプロットもまた、キュムラント半径を示す図15の最後のプロットと同様のものである。図18の第3のプロットは、温度に対するサイズ分布を示す。この第3のプロットでは、CH3ドメインのアンフォールディングの際、ランダムな凝集がスペックルパターンとして見られる。Fabのアンフォールディングは、サイズの増大のみをもたらす(キュムラント半径の開始が、ナノDSFの第2の遷移に整合する)。
【0173】
図18は、凝集経路を理解するためのさらなる例である。試験サンプルは、2mg/mlのBSA(Pierce(商標)アンプル(ウシ血清アルブミン標準アンプル、Thermo Fisher Scientific、Rockford、United States))を含む。ここに示すプロットから、凝集を順序どおり導出可能である。特に、キュムラント半径を示す第2のプロット(中間のプロット)では、アンフォールディングの際にサイズ分布の安定した増大が見られ、これは比信号を示す第1(上部)のプロットから導出可能である。第2のプロットは、すべての粒子の平均サイズ(キュムラント半径)のみを示し、第3のプロットは、サイズ分布(半径の分布)を示す。第3のプロットでは、アンフォールディングの際にサイズの安定した増大が見られる。図18のサイズ分布のスペックルパターンとは対照的に、サイズ分布の安定した増大は、凝集を順序どおり示す。
【0174】
したがって、蛍光読出しとDLSを組み合わせることで、凝集経路(ランダムなまたは構造化された凝集)を理解するのに役立つ。同様に、蛍光信号内のアンフォールディング遷移と温度に対するサイズ分布とを比較することによって、天然と非天然の凝集を区別することが可能である。遷移中間点の前のスペックルパターンは、天然の状態からの凝集を示すはずである。
【0175】
本発明のさらに好ましい実施形態が、以下の態様でさらに明示される。
1.溶液中の粒子の特徴を測定する方法であって、
- 溶液中の前記粒子のサンプルを含む容器を提供するステップであり、サンプルが好ましくは0.1μL~15μLの体積を有する、ステップと、
- 単色光源および光検出器を提供するステップと、
- 単色光源からの光をサンプルを含む容器へ伝送するステップと、
- 容器から放出された光を光検出器によって検出するステップと、
- 動的光散乱(DLS)測定に基づいて、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の特徴を判定するステップとを含む。
【0176】
たとえば、DLS測定のための単色光源を提供することが好ましい。DLS測定にはレーザを使用することが好ましい。蛍光測定のために追加の光源を提供することがさらに好ましい。たとえば、約280nmの光を放出するLEDを提供することが好ましい。後方反射測定のために追加の光源を提供することがさらに好ましい。たとえば、385nmの波長の光を放出するLEDを使用することができる。
【0177】
提供される光源および実行される測定に応じて、DLS測定のために光検出器が使用されることが好ましい。後方反射測定のための追加の光検出器、好ましくは後方反射測定に使用される光源の波長を検出し、たとえば約385nmの光を検出するための検出器を提供することがさらに好ましい。少なくとも1つのさらなる光検出器、好ましくは2つのさらなる光検出器を蛍光測定のために提供することがさらに好ましい。好ましくは、蛍光測定のための検出光は、蛍光を励起するために使用される光より長い波長を含む。たとえば、330nmおよび/または350nmの光を検出するための1つまたは2つの光検出器を使用することができる。光源および光検出器のための好ましい例が、たとえば図11に示されている。
【0178】
2.サンプルが、0.1μL~15μL、好ましくは1μl~15μl、より好ましくは8μL~12μLの体積を有する、請求項1に記載の方法。
3.単色光源からの光がコヒーレントであり、好ましくは350nm~500nm、好ましくは405nm、445nm、または488nmの波長を有する、態様1または2に記載の方法。
【0179】
4.単色光源がレーザ、好ましくはダイオードレーザであり、
好ましくは周波数安定化ダイオードレーザ、DPSSレーザ、PPLN2重ダイオードレーザ、周波数多重DPSSレーザ、ダイオード励起ファイバレーザ、多重ダイオード励起ファイバレーザ、およびダイオード励起アップコンバージョンファイバレーザからなる群から選択されるダイオードレーザである、態様1から3のいずれかに記載の方法。
【0180】
5.レーザが、少なくとも0.1mmのコヒーレンス長を有する、態様4に記載の方法。
6.レーザが、1mW~200mW、好ましくは10mW~180mW、より好ましくは50mW~150mW、さらに好ましくは70mW~120mW、たとえば100mWの電力を有し、レーザが、好ましくは、連続波(CW)レーザであり、好ましくはパルスレーザでない、態様4または5に記載の方法。
【0181】
7.単色光が、レーザ波長単一モードファイバを介して、好ましくはレーザ波長偏光維持単一モードファイバを介して、単色光源から送達される、態様4から6のいずれかに記載の方法。
【0182】
8.単色光源からの光が、容器の長手方向軸に対して角度φLで、容器へ伝送され、φLが0度~45度である、態様1から7のいずれかに記載の方法。
9.光検出器によって検出される光が、容器の長手方向軸に対して角度φDで、容器から放出され、φDが0度~45度であり、φLの値が、好ましくはφDの値と同一である、態様8に記載の方法。
【0183】
10.単色光源から容器へ伝送される光と、容器から放出されて光検出器によって検出される光との間の角度φSが、0度~150度、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である、態様9に記載の方法。
【0184】
11.伝送単色光が、対物レンズを使用して、サンプルを含む容器内で集束させられ、容器から放出される光がまた、好ましくは、前記対物レンズによって集束させられ、好ましくは対物レンズが、10mm~200mmの焦点距離を有し、かつ/または伝送単色光が、3μm~30μmの半値全幅(FWHM)を有する焦点によって、容器内で集束させられ、好ましくはその結果、0.01nl~0.1nl、好ましくは0.01nl~0.02nl、より好ましくは約0.016nlの測定体積が得られる、態様1から10のいずれかに記載の方法。
【0185】
12.光検出器が、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPM)、またはアバランシェフォトダイオード(APD)光子計数検出器、好ましくはPMTまたはSiPMである、態様1から11のいずれかに記載の方法。
【0186】
13.DLS測定が、5秒未満、好ましくは1秒未満で取得される、態様1から12のいずれかに記載の方法。
14.DLS測定が、1つのサンプルにつき1度だけ実行される、態様1から13のいずれかに記載の方法。
【0187】
15.DLS測定が、少なくとも1つの相関演算、好ましくは少なくとも1つの自己相関演算を実行するステップを含む、態様1から14のいずれかに記載の方法。
16.DLS測定が、
- 光検出器から取得されたアナログ出力信号を取得するステップと、
- 取得されたアナログ出力信号を処理するステップとを含む、
態様1から15のいずれかに記載の方法。
【0188】
17.取得されたアナログ出力信号を処理するステップが、好ましくはADCによって、取得されたアナログ出力信号を、デジタル化された出力信号にデジタル化するステップを含む、態様16に記載の方法。
【0189】
18.デジタル化された出力信号が、
i)好ましくは容器から放出された検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を下回る場合、デジタル化された出力信号を、デジタル化された単一光子パルス信号として処理するステップ、
および/または
ii)好ましくは検出光の強度が、1秒当たりの検出光子2百万個を上回る場合、デジタル化された出力信号を、アナログ信号の離散値として処理するステップによってさらに処理される、態様17に記載の方法。
【0190】
19.
- 出力信号を処理するステップが、ステップi)もしくはステップii)を含み、ステップi)もしくはii)に従って、デジタル化された出力信号を、デジタル化された信号として処理するべきかどうかを決定するための時間が、好ましくはFPGAを使用することによって、1秒未満、好ましくは最大0.05秒であり、または
- 光子計数および離散値出力信号を同時に処理することができ、したがってステップi)もしくはステップii)に従って処理するべきかどうかの決定を、測定後に行うことができる、
態様18に記載の方法。
【0191】
20.取得された出力信号を処理するステップが、
- ステップi)もしくはステップii)から取得される処理されたデジタル化出力信号を記憶するステップ、または
- ステップi)およびステップii)から取得される処理されたデジタル化出力信号を記憶するステップと、
- 記憶された出力信号のうちの1つをさらに処理するステップとをさらに含む、態様18または19に記載の方法。
【0192】
21.
- 好ましくはサンプルに含まれる溶液中の前記粒子および/もしくは容器の材料の蛍光を測定するステップであり、前記蛍光が、好ましくは前記粒子および/もしくは容器の材料の自家蛍光である、ステップ、ならびに/または
サンプルを含む容器の後方反射を測定するステップ
をさらに含む、態様1から20のいずれかに記載の方法。
【0193】
上述したように、前記蛍光および/または後方反射測定のために、追加の光源および/または追加の光検出器を使用することができる。
22.
- 測定された蛍光および/または測定された後方反射に基づいて、容器の位置を判定するステップと、
- 任意選択で、測定された蛍光/後方反射および判定された容器位置に基づいて、容器を位置決めするステップと
をさらに含む、態様21に記載の方法。
【0194】
23.
- 少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するステップ
をさらに含む、態様1または22のいずれかに記載の方法。
【0195】
24.少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するステップが、1分当たり0.01℃~1分当たり30℃、好ましくは1分当たり0.1℃~1分当たり10℃の焼戻し速度で、容器を調温するステップを含み、ならびに/または、第1の温度および第2の温度が-20℃~160℃である、態様23に記載の方法。
【0196】
25.
- ナノ示差走査蛍光定量法(ナノDSF)測定を実行するステップ、および/または
- サンプルを含む容器の後方反射を測定するステップ
をさらに含む、態様1から24のいずれかに記載の方法。
【0197】
26.
- さらなる光検出器を提供するステップと、
- さらなる光検出器を使用して、好ましくは容器の長手方向軸に対して角度φで、サンプルを含む容器の静的散乱光を測定するステップとをさらに含み、φが、好ましくは10度~150度、より好ましくは10度~60度である、
態様1から25のいずれかに記載の方法。
【0198】
27.容器が、毛細管および/またはマルチウェルプレートであり、好ましくはガラスの毛細管であり、毛細管が、円形の断面、ならびに0.1mm~1mm、好ましくは0.15mm~0.5mmの内径、好ましくは0.2mm~1.2mm、好ましくは0.65mm~1mmの外径、および5mm~70mm、好ましくは32mm~50mm、より好ましくは約50mmの長さを有する、態様1から26のいずれかに記載の方法。
【0199】
28.複数の容器が提供され、各容器が、溶液中の粒子のサンプルを含み、態様1から27のいずれかに記載のように、溶液中の粒子の特徴が各容器に対して測定される、態様1から27のいずれかに記載の方法。
【0200】
29.
各容器に対する蛍光測定に続いて、各容器に対するDLS測定が行われ、
各容器に対するDLS測定に続いて、各容器に対する蛍光測定が行われ、または
複数の容器のうちの1つの容器に対して蛍光測定およびDLS測定が実行されるのに続いて、複数の容器のうちの別の容器に対して蛍光測定およびDLS測定が実行される、
態様28に記載の方法。
【0201】
30.特徴が、粒径分布、凝集温度、融解温度、転移温度、アンフォールディング開始温度、液-液相分離温度(TLLPS)、自由フォールディングエネルギー、第2ビリアル係数(B22)、粒子の自己相互作用、コロイド安定性、流体力学半径、粒子間の斥力または引力相互作用(K)、可溶性、長期のタンパク質安定性、および臨界変性剤濃度からなる群から選択される、態様1から29のいずれかに記載の方法。
【0202】
31.好ましくは態様1から30のいずれかに記載の、溶液中の粒子の特徴を検出するためのデバイスであって、
- 溶液中の前記粒子のサンプルを含む少なくとも1つの容器を収容する、好ましくは0.1~15μLの前記粒子を収容する手段と、
- 単色光源および光検出器と、
- DSL測定を実行する手段と、
- 制御手段とを備え、制御手段が、
少なくとも1つの容器を収容する手段を制御し、
単色光源からの光を少なくとも1つの容器へ伝送するように単色光源を制御し、
少なくとも1つの容器からの信号を検出するように光検出器を制御し、
DSL測定を実行する前記手段を制御するように適合される、デバイス。
【0203】
32.
- 相関演算、好ましくは自己相関演算を実行する手段をさらに備え、前記自己相関演算が、好ましくは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実施される自己相関論理である、
態様31に記載のデバイス
33.
- 光検出器から取得された信号をデジタル化する手段をさらに備え、前記手段が、好ましくは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備え、制御手段が、光検出器から取得された信号をデジタル化する前記手段を制御するようにさらに適合される、
態様31または32に記載のデバイス。
【0204】
34.
- サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する手段をさらに備え、制御手段が、サンプルに含まれる溶液中の前記粒子の蛍光を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される、
態様31から33のいずれかに記載のデバイス。
【0205】
上述したように、蛍光測定のための追加の光源を提供すること、たとえば280nmの(短いまたはより短い)励起波長を有するLEDを提供することが好ましい。蛍光測定の場合、蛍光測定のため、たとえば長いまたはより長い波長(励起波長に対して)の光を検出するための追加の光検出器、好ましくは2つの追加の光検出器、たとえば約330nmおよび350nmの光を検出するための1つまたは2つの検出器を提供することがさらに好ましい。
【0206】
35.
- 溶液中の前記粒子のサンプルを収容する手段を位置決めする位置決め手段をさらに備え、制御手段が、サンプルを収容する位置決め手段を制御するようにさらに適合される、
態様31から34のいずれかに記載のデバイス。
【0207】
36.
- 少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための温度制御システムをさらに備え、制御手段が、少なくとも第1の時点の第1の温度および第2の時点の第2の温度で、容器を時間とともに調温するための前記温度制御システムを制御するようにさらに適合される、
態様31から35のいずれかに記載のデバイス。
【0208】
37.
- ナノDSF測定を実行する手段および/または後方反射を測定する手段をさらに備え、制御手段が、ナノDSF測定を実行する前記手段および/または後方反射を測定する前記手段を制御するようにさらに適合される、
態様31から36のいずれかに記載のデバイス。
【0209】
上述したように、後方反射測定のための追加の光源を提供すること、たとえば385nmの励起波長を有するLEDを提供することが好ましい。後方反射測定の場合、たとえば385nmの後方反射光を検出するための追加の光検出器を提供することがさらに好ましい。
【0210】
38.
- さらなる光検出器と、
- 静的散乱光測定を実行する手段とをさらに備え、制御手段が、静的散乱光測定を実行する前記手段を制御するようにさらに適合される、
態様31から37のいずれかに記載のデバイス。
【0211】
39.
- 単一モードファイバと、
- 前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を送達する手段とをさらに備え、制御手段が、前記単一モードファイバを介して単色光源からの単色光を送達する前記手段を制御するようにさらに適合される、
態様31から38のいずれかに記載のデバイス。
【符号の説明】
【0212】
10 容器の長手方向軸、たとえば毛細管の長手方向軸
11 容器、たとえば毛細管
12 調査対象の溶液中の粒子を含むサンプル
13 調温要素、たとえば加熱パッド/ベッド
14 蛍光光学系
15 DLS光学系
16 蛍光焦点
17 DLS焦点
18 蛍光焦点とDLS焦点との間のx距離
19 反射ビーム
20 毛細管軸と検出光ビームとの間の角度(φ
30 光検出器、たとえばDLS検出器
31 ADC(アナログデジタル変換器)
32 パルス弁別器
33 相関器
34 FPGA
35 PC
36 光子計数閾値
38 デジタル光子パルス信号としてデジタル化された出力信号
39 PMTのデジタル化された出力信号
50 励起ビーム
51 検出ビーム
52 対物レンズ(または対物鏡)
53 毛細管軸と励起光ビームとの間の角度(φ
53’ φ-90度として示されている毛細管軸と励起光ビームとの間の角度(φ
54 励起光ビームと検出光ビームとの間の角度(φ
55 単色光源、たとえばレーザ
56 平行化レンズ
57 光ファイバ(単一モード、別法として偏光維持、またはマルチモード)
58 ビームスプリッタ電力、たとえば50:50
59 ビームスプリッタ波長、たとえば低域通過620nm
60 ダイクロイックフィルタ、たとえば蛍光を阻止するために帯域通過405/5nm
61 偏光フィルタ
62 レーザのビーム品質を改善するための光学系
63 迷光を低減させるためのアパーチャ
64 毛細管の非点収差を補正するための円柱レンズ
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19