(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】窒化インジウムガリウム構造およびデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20240327BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240327BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L33/32
H01S5/343 610
(21)【出願番号】P 2022528586
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2020061377
(87)【国際公開番号】W WO2021102198
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522192492
【氏名又は名称】オプノヴィックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラメス,マイケル アール.
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0277713(US,A1)
【文献】国際公開第2019/068919(WO,A1)
【文献】特開2000-012976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 33/32
H01S 5/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)In
xGa
1-xN(0≦x<1)とウルツ鉱型III族窒化物結晶構造とを含む
複数のシード領域と;
(b)このシード領域の上に重なっている、In
y
Ga
1-y
Nとウルツ鉱型III族窒化物結晶構造とを含む緩和領域(但し、0<y≦1であり、y>xである。)と;
(
c)前記ウルツ鉱型III族窒化物
結晶構造の(0001)面に平行で、前記シード領域と交差する第1の平面であって;
前記第1の平面とシード領域の第1の
ファセットとの交差が、
前記緩和領域と前記シード領域との間の第1のIn
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合に沿った第1の位置とな
り;
前記
第1のIn
xGa
1-xN/In
yGa
1-yNヘテロ接合が、前記シード領域の第1の結晶学的平面と共平面である、第1の平面と;
(
d)前記ウルツ鉱型III族窒化物結晶構造の(0001)面に平行で、前記シード領域の第2の
ファセットに交差するいずれかの第2の平面であって、
前記緩和領域と前記シード領域との間の第2のIn
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合に沿った第2の位置となり、前記
第2のIn
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合が
、第2の結晶学的平面と共平面である、第2の平面と;
(
e)前記シード領域の上に重なる
、合体し、緩和された(0001)InGaN領域であって、3.19Åより大きい面内a格子定数を特徴とする
、合体し、緩和された(0001)InGaN領域と、
を含み
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面のそれぞれが結晶学的に等価である、
III族窒化物半導体構造。
【請求項2】
前記第1の
ファセットおよび前記第2の
ファセットが、異なる
ファセットである、請求項1に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項3】
前記第1の
ファセットおよび前記第2の
ファセットが、同一の
ファセットである、請求項1記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項4】
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面が、異なる結晶学的平面である、請求項1から3のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項5】
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面が、同一の結晶学的平面である、請求項1から3のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項6】
前記シード領域のそれぞれが、3つから6つの平面的なシードファセットを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項7】
前記シード領域のそれぞれが、三角形の基部または六角形の基部を特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項8】
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{10-11}面である、請求項1から6のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項9】
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{1-100}面である、請求項1から6のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項10】
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{11-20}面である、請求項1から6のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項11】
前記結晶学的平面のそれぞれが、(1-100)面および(11-20)面である、請求項1から6のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項12】
シード領域間の中点での領域がInGaN領域である、請求項1から11のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項13】
前記InGaN領域が、少なくとも部分的に緩和された
InGaN領域である、請求項12に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項14】
前記InGaN領域が、複数のInGaN層を含み、各InGaN層が、異なる元素含有量を有する、請求項12から13のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項15】
前記シード領域のそれぞれが、GaNを含み
、3.189Åの
面内a格子定数を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項16】
前記の合体し、緩和された(0001)InGaN領域が、3.20Åから3.50Å
の面内a格子定数を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項17】
各シード領域が、GaNを含み、
前記In
xGa
1-xN/In
yGa
1-yNヘテロ接合および前記III族窒化物ヘテロ接合のそれぞれが、GaN-InGaNヘテロ接合である、請求項1から16のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項18】
複数のシード領域を含むアレイを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項19】
基板とマスク領域とをさらに含み、前記シード領域が、前記基板の第1の部分の上に重なり、前記マスク領域が、前記基板の第2の部分の上に重なる、請求項1から17のいずれか一項に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項20】
前記基板が、サファイア、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、または窒化アルミニウムを含む、請求項19に記載の
III族窒化物半導体構造。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体構造を含む半導体デバイス。
【請求項22】
前記半導体デバイスは:
前記(0001)InGaN領域の上
に重なるn型III族窒化物層と;
前記(0001)InGaN領域の上
に重なるp型III族窒化物層と;
前記n型III
族窒化物層と前記p型III
族窒化物層との間のInGaN含有活性領域と;
前記p型III族窒化物層との電気的コンタクトを形成する第1の電気的コンタクトメタライゼーションと;
前記n型III族窒化物層との電気的コンタクトを形成する第2の電気的コンタクトメタライゼーションと、
を含む、請求項21に記載の半導体デバイス。
【請求項23】
請求項21から22のいずれか一項に記載の半導体デバイスを含む照明システムまたはディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月19日に出願された米国特許出願第16/689,064号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、実質的に緩和された領域を有する窒化インジウムガリウム(InGaN)層と、InGaN層上に作製されたデバイスとに関する。実質的に緩和されたウルツ鉱型(0001)InGaN領域は、3.19Å以上の面内、すなわち「a」格子定数を有する。実質的に緩和されたInGaN領域は、GaN、InGaN、AlGaN、またはAlNのシード領域などの複数のIII族窒化物シード領域上に成長させる。成長中、シード領域上に成長したInGaNは緩和し合体して、他の半導体材料用の成長表面として使用することができる実質的に緩和されたInGaN領域を提供する。このInGaN層は、照明およびディスプレイ用途のシステムにおける光源として使用するための光学デバイスおよび電子デバイスを作製するのに使用することができる。
【背景技術】
【0003】
化合物半導体材料は典型的には、成長基板に堆積または成長させ、原子レベルで格子整合させて、転位などの成長欠陥の発生を回避するようにする。場合によっては、化合物半導体材料の格子定数を変更して、特定の特性を有する材料および/またはデバイスおよび/またはシステムを提供するのが望ましい。
【0004】
InGaNは現在、GaNを用いた光電子デバイスの活性層に好ましい材料であり、こうしたデバイスには例えば、LEDを用いて現在商品化されているほとんどの照明システムおよびディスプレイシステムの現状基盤技術となっている青色または紫色の発光ダイオード(LED)、またはBlu-Ray(登録商標)産業の基盤技術となっている紫色の発光レーザダイオード(LD)などが挙げられる。現在、このようなデバイスは、窒化ガリウム(GaN)エピタキシャル層上に擬似格子不整合に成長させたInGaN活性層を用いて製造されている。しかし、InGaNの結晶原子格子定数はGaNのそれよりも大きい結果、GaN上に成長させたInGaN(InGaN/GaN)の場合には深刻な歪みが生じ、InNモル分率が増加するにつれ、または厚さが増加するにつれ、材料品質の低下が大きくなる。これにより、例えばLEDおよびLDなどの、InGaN/GaNを用いた光電子デバイスの性能が制限される。
【0005】
デバイス用途の高品質、平面的で緩和されたInGaNを成長させる試みは、いまのところ商業化まで至っていない。ある種のIII-V族材料系で用いられている傾斜層の手法が、低温分子線エピタキシー(MBE)を用いてInGaNでも試みられている。しかし、この緩和機構は、高密度の不整合転位、積層欠陥、および貫通転位の出現を伴うので、材料品質が貧弱なものとなってしまう。商業的に好ましい有機金属化学気相成長法(MOCVD)をc面InGaNに用いる同様の手法は、(極性の)c面成長のためのすべり系がないことが難点であり、非極性および半極性成長面を利用しようとすると、欠陥密度の高い材料が得られてしまう。水素化物気相エピタキシー(HVPE)は、結晶欠陥を減らす目的で厚いInGaN層を成長させるのに使用されているが、この手法は、実現可能なInNモル分率の点で限界があり、N極性表面にしか適用できないので、低コストの製造には理想的でない。緩和を容易にするために、リフトオフを行って対応担体に結合させることのできる歪みInGaN層を成長させる試みがあるが、この方法による結果、格子膨張が制限され、非平面的でトレンチ状の表面が生じる。従来のヘテロエピタキシーの歪み制限を回避するために設計されたナノコラムまたはナノロッドのデバイス構造を使用する結果、製造にそれほど好適でない非平面的なデバイス形状となり、低い光学品質を示す可能性がある。
【0006】
パターニングと再成長の使用は、単一元素(例えばSi上のGe)半導体、および二元III-V族(例えばSi上のGaAs)閃亜鉛鉱型半導体用に、高品質の格子不整合ヘテロエピタキシーを成長させるのに使用されている。しかし、ウルツ鉱型半導体、および/またはInGaNなどの三元合金への同様の手法は成功していない。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、III族窒化物半導体構造が、(a)InxGa1-xN(0≦x<1)とウルツ鉱型III族窒化物結晶構造とを含むシード領域と;(b)ウルツ鉱型III族窒化物構造の(0001)面に平行で、シード領域に交差する第1の平面であって;第1の平面とシード領域の第1の縁との交差が、InxGa1-xN/InyGa1-yNヘテロ接合の位置となり、0<y≦1かつy>xであり;InxGa1-xN/InyGa1-yNヘテロ接合が、シード領域の第1の結晶学的平面との共平面である、第1の平面と;(c)ウルツ鉱型III族窒化物結晶構造の(0001)面に平行で、シード領域の第2の縁と交差するいずれかの第2の平面であって、III族窒化物ヘテロ接合の位置となり、III族窒化物ヘテロ接合が、シード領域の第2の結晶学的平面との共平面である、第2の面と;(d)シード領域の上に重なる(0001)InGaN領域であって、3.19Åより大きい面内a格子定数を特徴とし、第1の結晶学的平面および第2の結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価である、(0001)InGaN領域と、を含む。
【0008】
本発明によれば、半導体デバイスが、本発明によるIII-V族半導体構造を含む。
【0009】
本発明によれば、照明システムが、本発明による半導体デバイスを含む。
【0010】
本発明によれば、ディスプレイシステムが、本発明による半導体デバイスを含む。
【0011】
当業者であれば、本明細書に記載された図面が例示目的のものでしかないことは理解されよう。図面は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A-1E】
図1A~1Eは、本開示によって提供される緩和されたInGaN領域を有するInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0013】
【
図2A-2E】
図2A~2Eは、本開示によって提供される緩和されたInGaN領域を有するInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0014】
【
図3A-3E】
図3A~3Eは、本開示によって提供される緩和されたInGaN領域を有するInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0015】
【
図4A-4E】
図4A~4Eは、本開示によって提供される緩和されたInGaN領域を有するInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0016】
【
図5】
図5は、III族窒化物ウルツ鉱型材料の(1-100)および(11-20)の結晶学的方向に関して様々な形状、寸法、および配向を有するポジ型エッチマスクの一例を示す。
【0017】
【
図6】
図6は、GaNのIII族窒化物ウルツ鉱型材料の(1-100)および(11-20)の結晶学的方向に関して様々な形状、寸法、および配向を有するネガ型エッチマスクの一例を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、GaNの格子定数と同様の格子定数「a」を特徴とするInGaN格子(中実円)から、格子定数「a’」を特徴とするさらに大きな緩和されたInGaN格子定数(ハッチングされた円)への遷移を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、本開示によって提供されるIII族窒化物半導体構造を組み込んだLEDの一例を示す。
【0020】
【
図9A-9D】
図9A~9Dは、本開示によって提供されるIII族窒化物半導体構造を組み込んだLEDの例を示す。
【0021】
【
図10】
図10は、本開示によって提供されるIII族窒化物半導体構造を組み込んだレーザダイオード(LD)の一例を示す。
【0022】
【
図11】
図11は、本開示によって提供されるLEDを内部に組み込むことのできる照明デバイスおよび照明システムの例を示す。
【0023】
【
図12】
図12は、本開示によって提供されるLEDを内部に組み込むことのできるディスプレイデバイスおよびディスプレイシステムの例を示す。
【0024】
【
図13】
図13は、本開示によって提供されるIII族窒化物半導体構造の一例の断面図を示す。
【0025】
【
図14A-14B】
図14A~14Bは、ピーク発光波長に応じた、(0001)の緩和されたInGaN領域のInNモル分率とa格子定数の範囲をそれぞれ示す。
【0026】
【
図15A-15F】
図15A~15Fは、本開示によって提供されるInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0027】
【
図16A-16F】
図16A~16Fは、本開示によって提供されるInGaN層を作製するための工程フローの一例を示す。
【0028】
【
図17A-17B】
図17Aおよび17Bは、本開示によって提供されるIII族窒化物半導体構造の例の断面図を示す。
【0029】
【
図18A-18C】
図18A~18Cは、III族窒化物半導体の(10-11)ファセット上にInGaNを徐々に成長させて「vピット」構造を埋める例を示す。
【0030】
【
図19】
図19は、(10-11)GaNシードファセット上にInGaNを徐々に成長させることによる、緩和されたInGaN領域の提供を示す。
【0031】
【
図20】
図20は、(10-11)GaNシードファセット上にInGaNを徐々に成長させて、緩和されたInGaN領域を提供する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「実質的に均一な格子定数」とは、例えば、平均格子定数に対して0.5%未満、または平均格子定数に対して0.1%未満など、平均格子定数に対して1%未満の変動を示す半導体層の局所格子定数を特徴とする半導体層を指す。
【0033】
「欠陥密度」とは、半導体層における拡張欠陥、例えば転位の平面図上での密度を指す。欠陥密度は、例えば、エッチング(およびエッチピット密度EPDの計数)、暗点の観察と計数を行うカソードルミネッセンス、小さなピットの観察と計数を行う原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて決定することができる。
【0034】
格子定数は、X線回折(XRD)および逆格子空間マップ(RSM)分析によって決定することができる。高角度、すなわちグレージング入射に近いXRD法を使用して、深さの関数として格子定数が変化する場合のある構造中の上層の格子定数を決定することができる。
【0035】
「III-V族材料」とは、周期律表の少なくとも1種のIII族元素と少なくとも1種のV族元素とを含む化合物半導体材料を指す。
【0036】
「成長面」とは、平面的な表面上への材料の堆積面、例えば従来の基板成長表面の堆積面に平行な平面を指す。
【0037】
また、「成長面に実質的に垂直」とは、成長面に対して88度から92度など近似的に90度の、成長面に対する角度をなす表面を指す。
【0038】
ウルツ鉱型GaNは、室温でそれぞれ、3.189Åおよび5.185Åのaおよびc格子定数を有するウルツ鉱型結晶構造を特徴とする。c格子定数方向の法線方向の結晶面(「c方向」)が、c面であり、これはGa面(0001)とN面(000-1)を有する。c方向を含み、a格子定数方向(「a方向」)に垂直な平面が、(11-20)面、すなわち「a面」である。c方向を含み、a方向に対して30度回転した平面が、(1-100)面、すなわち「m面」である。
【0039】
InxGa1-xNは、ウルツ鉱型GaNと同一の結晶構造を有するが、非ゼロのInNモル分率xを含み、III族カラム原子の特定の分率をIn、残りをGaとする三元化合物を形成する。InNは、それぞれ3.545Åおよび5.703Åという、室温でのaおよびc格子定数を有し、InxGa1-xNは、室温でのGaNのaおよびc格子定数とInNのものとの間の、そしてモル分率に応じた、aおよびc格子定数を有する。
【0040】
本明細書は、GaNシード表面上への(0001)InGaNの成長に焦点を当てているものの、この方法は、他のウルツ鉱型材料、例えばAlN上のInGaN、AlN上のAlGaN、およびGaN上のAlGaNに適用可能である。さらに、本発明は、非基底面ウルツ鉱構造、例えばいわゆる非極性および半極性GaNおよび関連材料に適用可能である。最後に、本発明は、GaAs上のInGaAs、GaSb上のInGaSbなどの閃亜鉛鉱材料、およびII-VI族化合物半導体系を含め、他の化合物半導体系にも適用可能である。
【0041】
「緩和されたInGaN」とは、完全に緩和されたInGaN材料のものと等しいか、ほぼ等しい面内格子定数を示すInGaN材料を指す。例えば、ウルツ鉱型の緩和されたInGaNは、3.189Å(0%のInN)より大きく最高3.545Å(100%のInN)までの、室温でのa面格子定数を有する。これは、歪みInGaN材料、例えばGaNに擬似格子不整合に成長させた、よって、InNモル分率に関係なく、GaNの面内格子定数と等しいかほぼ等しい面内格子定数(すなわち、~3.189Å)を示すInGaNとは対照的である。このような歪みInGaN材料は、InGaN/GaNと称される。
【0042】
「面内格子定数」とは、成長面内の結晶格子間隔を指す。(0001)材料の場合には、面内格子定数はa格子定数である。
【0043】
「横方向成長」とは、成長面に平行な方向を含め、成長面の法線以外の方向への成長を指す。
【0044】
以下、材料、半導体構造、光電子デバイス、および方法の特定の実施形態について詳細に言及する。開示された実施形態は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲は、すべての代替例、修正例、および均等物を対象範囲とすることを意図するものである。
【0045】
本発明は、光および/または電子デバイスに使用するための、大面積の、平面的でコヒーレントな、少なくとも部分的にしかし実質的に均一に緩和された化合物半導体材料層の形成を教示するものである。大面積とは、1cm2より大きい範囲などの1mm2より大きい面積を指す。平面的とは、実質的に平坦であって大面積内で有意な厚さ変動がほとんどない少なくとも一つの表面を示す、半導体層を指す。例えば、平面的な半導体層は、原子間力顕微鏡法を用いて決定されるとおり、1nm未満のRMS粗さを有し得る。平面的な半導体層は、例えば、平均厚さの±10%以内の厚さを有し得る。コヒーレントとは、材料が非晶質ではなく、実質的に結晶質であることを指す。緩和されたとは、材料の面内格子定数が近似的に、自立した、コヒーレントな、100%緩和されたその材料のものであることを指す。実質的に緩和されたとは、材料の面内格子定数が、自立した、コヒーレントな、100%緩和したその材料のものの30%以内であることを指す。均一にとは、光学デバイス構造および/または電子デバイス構造をその上に構築することができる大面積内の面内格子定数が実質的に変動していないことを指す。加えて、本発明は、ウルツ鉱型結晶構造を含め、広範囲の半導体結晶系に、そして三元合金や四元合金を含む高次合金に、適用可能である。最後に、本発明は、複数の成長方法、しかし具体的には有機金属化学気相成長法(MOCVD)により成長させた構造体に好適である。
【0046】
具体的には、本発明は、光学および/または電子デバイスの基層として使用するための、大面積の、平面的でコヒーレントな、少なくとも部分的にしかし実質的に均一に緩和された窒化インジウムガリウム(InGaN)材料層の形成を教示する。様々な組成(すなわち、InNモル分率)が実現可能である。コヒーレントとは、InGaN材料が非晶質ではなく、実質的に結晶質であることを指す。緩和されたとは、InGaN材料の格子定数が近似的に、同一組成の自立した、コヒーレントな、100%緩和されたInGaN材料のものであることを指す。均一に緩和されたとは、成長面を含む平面内の大面積の大部分にわたって、面内格子定数が概ね変動していない層を指す。このような緩和されたInGaN材料は、本発明では、緩和されたInGaN、例えばネイティブInGaN(Native InGaN(登録商標))と称される。
【0047】
本発明はさらに、緩和されたInGaNに擬似格子不整合に成長させた他のInGaN層(すなわち、InGaN/InGaN)、例えばネイティブInGaN(登録商標)を含んでもよい、前記緩和されたInGaNを用いた光学デバイスおよび/または電気デバイス、ならびに光学システムおよび/または電気システムの形成を教示する。
【0048】
本発明の他の特徴および態様は、以下の説明および添付の図面から明らかとなろう。具体的には、本発明における教示は、他の化合物半導体デバイス材料、例えば窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムガリウムインジウム、III族As、III族P、III族Sb等に適用可能である。
【0049】
本発明は、化合物半導体材料の結晶成長を見当合わせするために、基板上に堆積された半導体シード材料を使用することを開示する。このシード材料は、平面的なシード表面部分である、縁のある複数のシード領域を有し、これらの平面的なシード表面部分に対する各法線は、基板の大面積の法線に平行でない結晶学的に等価な方向を有する。限定された数(好ましくは、一つ)の露出した平面的なシード表面の結晶学的に等価な方位によって、その上に成長させたInGaN材料の均一な緩和および組成制御が保証される結果、InGaN成長がシード表面方位の変動を同時に呈する場合には、競合する成長モードと、不均一なInN取り込みや粗な表面等の、組成制御を制御しきれないことに関連する問題とが回避される。シード表面部分の寸法は、追加の化合物半導体材料をシードとすることができような、そして成長中に、その緩和された格子定数に向けて容易に緩和できるような程度に、制限されている。得られた「緩和された」化合物半導体材料は、その後成長し合体して、大面積(すなわち、1×1mm2より大きい、好ましくは1×1cm2より大きい面積)の膜を形成する。この大面積の緩和された化合物半導体材料膜は、改良された光学デバイス構造および/または電子デバイス構造を成長させるためのテンプレートとなる。
【0050】
具体的には、本発明は、InGaNの結晶成長を見当合わせするために、シード表面部分を有するGaNシード領域を使用することを開示している。GaNシード表面の寸法、およびそれに関連する幾何学的形状は、InGaN材料をシードとすることができるような、そして成長中に、その緩和された格子定数に向けて容易に緩和できるような程度に、制限されている。平面的なシード表面部分に対する法線を特徴とする結晶学的方向は、非極性方向、例えば(11-20)もしくは(1-100)、またはそれらの間で回転した平面、または半極性方向、例えば(1-101)であってもよい。次いで、(緩和された)InGaN層を成長させ合体させて、平面的で大面積の膜にする。この大面積の緩和されたInGaN膜は、InGaNを用いた改良された光学デバイス構造および/または電子デバイス構造の成長のためのテンプレートとなる。
【0051】
緩和されたInGaN領域を成長させる方法の一例を、
図1A~1Eに示す。
【0052】
図1Aに示されるとおり、主として(0001)、すなわちc面、GaN(またはAlN)層102は、いずれかの好適な半導体成長方法を用いて、基板101上に成長させることができる。好適な基板の例には、サファイア、炭化ケイ素、ケイ素、窒化アルミニウム、および窒化ガリウムなどが挙げられる。他の有用な基板材料には、シリコン・オン・インシュレータ(silicon-on-insulator(SOI))などの、エンジニアリング基板などが挙げられる。GaN層は、例えば、厚さ3μm未満、厚さ0.3μm未満、または厚さ0.03μm未満とすることができる。GaN層102は、III族窒化物材料の核形成をゆっくりと促進させる材料のマスキング層103で被覆することができる。好適なマスキング材料には、例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムなどの誘電体などが挙げられる。マスキング層103および下にある層のGaN層102は、
図1Bに示されるとおり、所望のパターンを提供するために、ナノリソグラフィと、ウェットおよび/またはドライエッチング技術とを用いるなど、フォトリソグラフィを用いて、パターニングしエッチングすることができる。マスクおよびGaN材料が除去されたエッチング領域104は、GaNシード表面102aを露出させる。シード表面は、GaN(0001)c面に実質的に垂直とすることができる。
図1Cに示されるとおり、GaNシード表面102aは、InGaN105の少なくとも横方向の成長に使用することができて、基板101と共平面ではないInGaN/GaNヘテロ接合を形成する。それぞれ露出したGaNシード表面は、等価な結晶学的方位を有することができる。例えば、GaNシード表面は、主に(1-100)、すなわちm面、または主に(11-20)、すなわちa面、またはm面とa面との間で回転したいずれかの平面を有することができる。さらに、シード表面102aは、例えば有利で均一な成長特性を促進するために、GaN主結晶面に対して意図的にその方位をずらすことができる。
図1Eは、緩和されたInGaN領域を通り表面107と共平面である平面108aと、シード領域102を二分する平面108bと、シード領域102どうしの間のInGaN領域とを示している。シード領域の中心が108cとして示され、シード領域102どうしの間のInGaN領域の中心が108dとして示されている。
【0053】
GaNシード表面の方位は、パターニングによって、そしてGaN層の成長配向時に決定することができる。シード表面の方位は、エッチングされたGaN層の表面の角度にさらに依存する。例えば、(0001)GaN層のほぼ垂直なエッチングの場合、GaNシード表面の方位は、近似的に(1-100)から(11-20)まで、そしてそれらの間で回転したいずれかの方位まで変動し得る。この方位を選択して、InGaN成長条件とInGaN材料品質を最適化することができる。
【0054】
特定のGaNシード表面、特に基板の主表面に実質的に垂直な表面でのInGaN成長の場合では、合体を容易にするために、成長条件を最適化することによって、および/または速やかな成長速度を促進するGaNシード表面方位を選択することによって、垂直方向に対する横の成長を高めることが望ましい場合がある。
【0055】
GaNシード表面の寸法が小さいと、その上に堆積させたInGaN材料の緩和が促進され、コヒーレントなInGaN成長を容易にするための平面的な結晶学的方位が得られる。成長中、InGaNはコヒーレントに成長し、その緩和された格子定数に向かって緩和し、最終的に、隣接するInGaN成長フロントと合体する。
図1Cを参照すると、InGaN105は、GaNシード表面から成長し、
図1DではInGaN106は、エッチング空洞を埋めて、マスク層103より上に成長する。InGaN成長が続くことによって、隣接する空洞内のGaNシード表面に成長したInGaNが合体する。次いで、緩和されたInGaNがマスキング層の上で成長し、上部InGaN成長表面107のところで、連続した平面的な、緩和されたInGaN領域、またはInGaNテンプレートが形成される。
【0056】
本InGaN成長方法では、緩和は、GaN(0001)表面上で直接InGaNの緩和を試みた場合に生じるチルト(tilt)によってではなく、概ね横方向に、すなわちツイスト(twist)によって、生じる。後者の方法は、垂直方向のInGaN歪み勾配を招き、これは、引き続くInGaNの成長および合体時に問題となる。その代わりに、本発明は、チルトを低減させることで、最終的な合体した膜に歪みおよび/または組成の不均一性が実質的に無いようにすることが可能になり、よって、半導体成長用の高品質で平面的な緩和されたInGaN大面積表面を提供する。さらに、緩和は、GaNシード表面のところで均一に生じるので、歪み層をまず擬似格子不整合に成長させ(その後、エッチングして緩和させ)る場合に生じ得る垂直方向の歪み勾配は、概ね回避される。
【0057】
本開示によって提供されるInGaN成長方法では、InGaN成長は、主にGaNシード材料の表面のところで生じることになり、他の露出表面上のInGaNの成長は、最小限に抑える、または完全に回避されるはずである。この理由から、GaNシード材料を貫通してその下にある基板の中までエッチングして、基板の成長表面をInGaNの核形成領域から遠ざけることが有益であり得る。加えて、InGaN層の成長条件は、競合成長モードを呈する可能性のある、基板上のInGaNの核形成および成長とは対照的に、一つまたは複数のGaNシード表面での成長を促進するように選択することができる。この手法は、
図2A~2Eに例示されており、ここでは、GaN層と基板の一部分との両方がエッチングされる。基板上に成長させるInGaNを非競合的にする目的で、(基板表面のところでの)競合成長と、GaNシード材料の一つまたは複数の表面のところでの望ましい成長との間の距離を、基板をエッチングすることにより増大させる。さらに、基板のエッチングが、InGaNの核形成と成長を妨げる役割をすることができ、これにより競合成長モードの干渉の可能性がさらに低減する。
【0058】
図2Aは、基板201と、その上にあるGaN層202と、その上にあるマスク層203とを示している。
図2Bでは、マスク層203と、GaN層202と、基板201の一部分とがエッチングされて、露出したGaNシード表面202aが空洞204に設けられている。
図2Cに示されるとおり、InGaN205は、GaNシード表面202a上に、横方向にそれぞれの空洞204の中に、そして基板201の上で成長する。
図2Dに示されるとおり、InGaN成長206が続くことにより、横方向の成長領域が合体し、空洞から外に、そしてマスク層203より上に成長する。空所である、空洞204の一部分208が、空洞の範囲内で、基板201と、合体したInGaN206との間に生じ得る。
図2Eに示されるとおり、InGaN成長が続くと、隣接する空洞から成長したInGaNが合体し、緩和されたInGaN表面207を形成し、これを半導体層の成長に使用することができる。
図2Eは、緩和されたInGaN領域を通り表面207と共平面である平面208aと、シード領域202を二分する平面208bと、シード領域202どうしの間のInGaN領域とを示している。シード領域の中心が208cとして示され、シード領域202どうしの間のInGaN領域の中心が208dとして示されている。
【0059】
図13は、
図2A~2Eに例示される工程フローから得られる構造の詳細断面図である。基板1301、例えば(0001)サファイアが、基板1301内に延在する随意にエッチングされた領域1306を含む。面内a格子定数a1を特徴とするGaN(またはAlN)シード層材料1302が、非エッチング領域において、そしてマスキング層1303の下で、基板1301の上に重なっている。InGaN1305が、GaNシード表面1307上のシード層材料1302の縁のところで核形成し、InGaN/GaNヘテロ接合1307を形成しており(すなわち、ヘテロ接合が、InGaN領域とGaNシード領域との界面に位置しており)、その法線は、基板1301の主表面に平行ではない等価な結晶学的方向を共有している。InGaN材料1305は、GaNシード表面どうしの間のInGaN領域において、緩和されたInGaNの面内a格子定数a2に向かって緩和するように、少なくとも部分的に横方向に成長している。基板1301の主表面に平行で、GaNシード表面1307を二分する平面1308bは、断面内の異なる位置で異なる面内a格子定数を特徴としている。例えば、GaNシード領域内の中心点では、平面1308bに沿った格子定数は、GaNのa格子定数のそれとコメンシュレート(commensurate)なa1を特徴とし、GaNシード表面1307どうしの間の中心点1305では、平面1308bに沿った格子定数は、少なくとも部分的に緩和されたInGaNのそれとコメンシュレートな近似的にa2であって、これは、そのInGaN層におけるInNの平均モル分率に従って、特に、温度、およびMOCVDにおけるトリメチルガリウム(TMG)と比較したトリメチルインジウム(TMI)など有機金属前駆体の相対流量などの、エピタキシャル成長条件によって決まる。これらの2つの中心点の間の領域では、平面1308bに沿った格子定数は、a1より大きくa2より小さい面内a格子定数を特徴としており、これはa2>a1であるからである。平面図(図示せず)において、平面1308a内の面内a格子定数の変動は、GaNシード層に適用される二次元マスクパターンによって特徴付けられる(
図5および
図6を見られたい)。
【0060】
InGaN材料は、マスキング層1303の上で合体して、平面的なInGaN表面1305cを有する緩和されたInGaN領域1304を形成する。元の成長基板の主表面に平行で、緩和されたInGaN領域1304内に位置する平面1308aは、面内a格子定数a2を主に特徴とする。具体的には、GaNシード表面どうしの間の中心点1305では、平面1308aに沿ったInGaN格子定数はa2を特徴とし、GaNシード表面の上の中心点では、面1308aに沿ったInGaNのa格子定数は、a2よりわずかに小さい。平面図(図示せず)において、平面1308a内の面内a格子定数の変動は、GaNシード層に適用される二次元マスクパターンによって特徴付けられる(
図5および
図6を見られたい)。InGaNの場合の面内a格子定数の変動は、例えば、XRDおよびRSMを用いて検出することができ、サブマイクロメートルのスケールで、そしてグレージング入射角技術を使用して上面において解像することができる。なお、シード領域内の平面1308bの中点は1308cとして示され、シード領域どうしの間の平面1308bの中点は1308dとして表示されている。
【0061】
GaNシード領域1302は、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満である面内寸法を有する。GaNシード領域1302の高さは、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満とすることができる。隣接するGaNシード領域1302どうしの間の距離、例えば、GaNシード領域1302の幅は、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満とすることができる。マスク層1303の厚さは、例えば、0.01μmから1μm、0.02μmから0.8μm、0.05μmから0.5μm、または0.1μmから0.4μmとすることができる。
【0062】
図3A~3Eは、SOI基板を使用して、緩和されたInGaNを作製する工程フローの一例を示している。この実施形態では、Si上のGaNの成長の場合に周知であるとおり、半導体構造(図示せず)の範囲内に歪み制御中間層、例えばGaN、AlGaN、またはAlInGaNを含むことでウエーハの反りを管理するのが望ましい可能性がある。
【0063】
図3Aは、基板301と、酸化物層301aおよびシリコン層301bと、シード層302と、マスク層303とを示している。
図3Bは、シリコン層301bまで下にエッチングした後の空洞304を示しており、これがシード層302からシード領域を形成する。
図3Cは、空洞304内でシード層302から、シード領域の縁表面上にInGaNが横方向成長するのを示している。このInGaN成長は、歪み緩和を誘起させるには充分高いInNのモル分率を有する。
図3Dでは、シード層302からのInGaN成長306は、成長し合体して空洞を満たし、さらにマスク303より上に延在している。
図3Eに示されるとおり、InGaN成長が続くことで、平面的な緩和されたInGaN層307が提供される。
図3Eは、緩和されたInGaN領域を通り、表面307と共平面である平面308aと、シード領域302を二分する平面308bと、シード領域302どうしの間のInGaN領域とを示している。シード領域の中心が308cとして示され、シード領域302どうしの間のInGaN領域の中心が308dとして示されている。
【0064】
図4A~4Eは、SOI基板を使用して、緩和されたInGaN層を作製する工程フローの別の例を示している。この例は、
図3A~3Eと同様であり、追加されているのは、シリコン基板上でのInGaNの競合成長を最小限に抑え、シード表面上でのInGaN成長を促進するために、SOI基板の最上部シリコン層401bと埋め込み酸化物層401aとが、エッチングによって(領域404において)除去されていることである。
【0065】
図4Aは、SOI基板401と、酸化物層401aおよびシリコン層401bと、シード層402と、上に重なったマスク層403とを示している。
図4Bは、基板401まで下にエッチングした結果得られる空洞404を示しており、これがシード層402からシード領域を形成する。
図4Cでは、横方向のInGaN成長405は、シード層402の縁表面から空洞404の中に延在している。このInGaN成長は、歪み緩和を誘起させるには充分高いモル分率のInNを有する。
図4Dに示されるとおり、InGaN成長406が続くことで、反対側のシード表面から成長したInGaNが合体し、垂直方向に成長して空洞の上部を満たし、マスク層403より上に延在するようになる。基板上での成長と比較してシード表面からの優先的な成長により、基板401とInGaN層406との間に空間408、すなわち空所が生じる。
図4Eに示されるとおり、InGaN成長が続くことで、平面的な緩和されたInGaN層407が提供される。
図4Eは、緩和されたInGaN領域を通り表面407と共平面である平面408aと、シード領域402を二分する平面408bと、シード領域402どうしの間のInGaN領域とを示している。シード領域の中心が408cとして示され、シード領域402どうしの間のInGaN領域の中心が408dとして示されている。
【0066】
図5は、ストライプ、矩形、三角形、および六角形を含む、シード材料をエッチングするためのマスクパターンの例を示している。InGaNを含め、III族窒化物材料のようなウルツ鉱材料の場合には、好ましいパターンの特徴は、等価な結晶学的方位を共有する縁を有するもの、例えば六角形または三角形である。他の形状や他の相対的な寸法を使用することができる。マスクパターンの最も狭い寸法は、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満とすることができる。マスクパターンの縁は、特定の結晶面に揃えることができる。例えば、(0001)主成長面を有するウルツ鉱材料の場合には、マスク縁を(1-100)面、または(11-20)面、またはそれらの間のいずれかの方位に揃えることで、高品質で緩和されたInGaN層の成長を容易にすることができる。
【0067】
図6は、マスクパターンの代替の組を示しており、これは、
図5に示されたもののネガ型であるが、他の点では同様である。
【0068】
図7は、格子定数aを有するパターニングされたGaNシード材料の概念的な平面図断面を示しており、その材料の側表面上では、緩和された格子定数a’にまでツイストを介して緩和することが可能なInGaN層を成長させるために、横方向ヘテロエピタキシーが実行される。充分に小さい寸法の場合では、変形は完全に弾性であり、欠陥は形成されない。寸法が大きい場合では、多少の塑性変形が生じる場合があるが、引き続き堆積されて上に重なった半導体層の最終的な欠陥密度が充分に低ければ、許容される場合がある。例えば、引き続き堆積される半導体層における拡張欠陥密度は、5E9cm
2未満、例えば5E8cm
2未満、又は5E7cm
2未満であるのが望ましい。本開示によって提供される横方向のInGaN成長および合体の方法は、III族窒化物材料における貫通転位の消滅を容易にする。
【0069】
緩和されたInGaN成長の厚さおよび組成均一性のさらなる制御は、バルクInGaN層を使用することによってではなく、多層構造を成長させることによって得られる場合がある。例えば、25%のバルクInGaN層を、例えば3nmのGaNと1nmのInNとの、または2nmのGaNと2nmのIn0.5Ga0.5Nとの、交互層に置換してもよい。個々の層の層厚は、例えば、0.5nmから100nm、例えば、1nmから30nmの範囲とすることができる。多層構造は基層に限定されるものではなく、緩和されたInGaN層の上に重なるn型、p型、および活性層などの半導体デバイス層を含めエピタキシャル積層全体を通じて、または緩和されたInGaN基層とデバイス層との間の層において、使用してもよい。
【0070】
InGaN/GaNのものと比較して、緩和されたInGaN層の格子定数が増加していることで、InGaN/GaNの場合よりもはるかに高い温度で、引き続き堆積される半導体層を成長させることが可能になる。例えば、3.205Åのa格子定数を有するInGaNは、InGaN/GaNの場合の約4%に比較して、約7%のInNを取り込むことが示されている。GaNへのInNモル分率の取り込みはMOCVDにおける成長温度に反比例するので、このことは、InGaNのa格子定数を約0.015から0.020に増加させることで、有用な成長温度を約50°C上げることができることを示唆している。InGaNのa格子定数をさらに増加させると、同一InNモル分率でさらに高い温度さえ可能になる。この効果は、さらに高い温度での点欠陥形成の低減によって達成される緩和されたInGaN上に成長させたさらに高品質の半導体層の実現においてのみならず、InGaN膜の表面における貫通転位の位置で発生するピットの低減または除去によっても、活用することができる。理想的には、InGaN層の成長温度を充分に高く保って、ピットをなくすか、またはこれを少なくとも1μmよりはるかに小さい、例えば、200nm未満、または50nm未満の直径に制限する。小さなピットは、ピットのあるInGaN膜より上に成長させた薄い、高温のGaNまたはAlGaN層を用いて「埋める」ことができる。
【0071】
本開示によって提供される方法は、反復を含むことができ、これは大きな格子定数変化を得るのに有用である場合がある。例えば、緩和されたInGaN層をシード層として使用して、さらに高いInNモル分率の層を成長させるためのシード表面を提供してもよい。得られた新しい緩和されたInGaN層は次いで、もう一巡の工程等でシード層として使用することができる可能性がある。この手法は、非常に高いInNモル分率を有する緩和されたInGaN層を得るさいに有用である場合があり、この層は、長波長、例えば、赤を超えて、深赤、さらには赤外発光まで、例えば700nmから1.6μmの範囲内の波長で発光する活性半導体層を成長させるための基層として好適である場合がある。
【0072】
本開示によって提供される緩和されたInGaN層は、光学デバイスおよび/または電気デバイスを成長させるためのテンプレートおよび/または支持構造の役割をすることができる。150mm、200mmまたはそれ以上の直径のウエーハを含め、非常に大面積のウエーハが可能であり、それによって、これらのデバイスの大量かつ低コストの製造が容易になる。
【0073】
例として、
図8は、InGaN層804の緩和されたInGaN表面の上で、n型層806(例えばSiまたはGeでドープされたもの)、そしてその後、InGaN含有活性領域807、随意のp型電子ブロッキング層808であって例えばGaN、AlGaN、またはInGaNを含む層(またはこれらの合金を含む多層)、次いでp型GaNまたはInGaN層などのp型層809を成長させることによって形成された、LED構造を示している。例えばGaNまたはInGaNを含む、高ドープされた、例えばMgドープされたp型コンタクト層810が、p型層809の上に重なっており、p側のデバイスへのオーミックコンタクトを提供する。
図8に示されるとおり、InGaN層804の下にある半導体構造は、基板801と、GaNシード領域802と、マスク領域803とを含む。これらの様々な特徴どうしの間に存在する屈折率コントラストの範囲で、それらの特徴の存在が、デバイスからの光抽出を向上させるのに役立つ可能性がある。得られる半導体ウエーハは、リソグラフィ、エッチング、および半導体堆積などの一連の工程ステップを経て、n型およびp型層への好適な電気的コンタクト材料を有する分離されたLED領域を形成することができる。そのようなコンタクト材料には、高い光反射性およびまたは透明性などの好適な光学特性を有するものを挙げることができる。電極メタライゼーション812a(例えば、NiAg、NiAu、TiAlCrNiAu等)および812b(例えば、TiAl、TiAlCrNiAu等)を堆積しパターニングし、例えばワイヤボンドを用いて、電気的接続を得ることができる。酸化インジウムスズ(ITO)などの様々な透明導電性酸化物(TCO)材料(図示せず)を使用して、特に抵抗性p型層の場合に電流広がり層811を促進することができる。半導体構造の作製後、ウエーハをダイシングして個々のデバイスを提供することができ、このデバイスは、とりわけエポキシ系ダイ・アタッチまたははんだ付けを含む様々な手段によって、好適なパッケージに搭載できるものである。p型層とn型層に、例えばワイヤボンドを用いて電気的コンタクトを形成して、機能するデバイスを形成し、これに最終的に電力を供給することができる。デバイスは、照明用途の白色光を含む所望の光出力特性を提供するために、発光性ダウンコンバージョン材料、および/またはシリコーンなどの封止材料をさらに含むことができる。このデバイスは、照明用システムに、および/またはディスプレイ用途に採用してもよい。
【0074】
図9A~9Dに示されるとおり、(a)標準的なもの、(b)初期成長基板が除去されているがマスクとシード層部分が保持されている薄膜フリップチップ(TFFC)、(c)マスクとシード層部分が除去されているTFFC、および(d)マスクとシード層部分が除去されていて、露出したInGaN層にフォトリソグラフィおよび/または化学系のエッチング技術などによって(光抽出目的で)テクスチャ形成されているTFFCを含め、様々なフリップチップ(FC)LEDアーキテクチャが可能である。
【0075】
図9A~9Dに示される半導体構造は、基板901と、シード領域902と、マスク領域903と、緩和されたInGaN層904および初期InGaN成長領域905と、n型層906と、InGaN含有活性領域907と、随意のp型電子ブロッキング層構造908と、p型層909と、p型コンタクト層910と、p側電極メタラゼーション911と、n側電極メタライゼーション912とを含む。
図9Bでは、基板が除去されており、
図9Cでは、成長領域とマスク領域が除去されており、
図9Dでは、緩和されたInGaN領域904の一部分が、例えばデバイスの特定の光学特性を高めるために、除去および/または粗化904aされている。
【0076】
図10は、緩和されたInGaN層より上に成長させたレーザダイオード構造を示している。
図10に示されるとおり、初期InGaN領域1005を含む緩和されたInGaN層1004は、マスク領域1003と、シード領域1002と、基板1001との上に重なっている。レーザダイオードは、緩和されたInGaN材料1004およびn型コンタクト層1006より上にn型光閉じ込め(「クラッド」)層1007を成長させ、次いで、InGaN含有活性層1009)の両側に導波層1008および1010を含む導波領域を含むInGaN系活性領域を成長させ、その後、p型光閉じ込め(「クラッド」)層1011を成長させることにより、形成することができる。層1012および層1013は、pクラッド層1011の上に重なっている。レーザダイオード用のウエーハ作製は、デバイスがストライプ状に形成されてレーザキャビティを形成することを除いて、LEDのウエーハ作製と同様である。ダイシングと、エッチングまたは劈開されたミラーファセットの形成との後、高反射誘電体コーティングおよび反射防止誘電体コーティングを、それぞれ後部および前部ファセット上に堆積させることができる(図示せず)。レーザダイオードは、材料の選択と用途の詳細に応じて、エピ側を下、または基板側を下にして、好適なパッケージに搭載することができる。高濃度のp型コンタクト層1014およびn型コンタクト層1006に、それぞれ電極メタライゼーション1015aおよび1015bを介して電気的コンタクトを形成して、機能するデバイスを形成し、これに電力を供給することができる。このレーザダイオードは、照明用システムに、および/またはディスプレイ用途に採用される。
【0077】
本開示によって提供される緩和されたInGaN層は、照明デバイスおよび照明システム(
図11)ならびにディスプレイデバイスおよびディスプレイシステム(
図12)を含め、様々な用途向けの広範囲のシステムソリューションの性能に影響を与える広範囲の化合物半導体デバイスに適用可能である。
【0078】
緩和されたInGaN層の目標組成は、意図されるデバイス、用途、および性能要件に応じて選択することができる。GaNに格子整合した従来のInGaN発光ダイオードの場合では、最も性能の良いデバイスは、紫の波長範囲で発光するものである。これらの波長では、GaN基層に対するInGaN量子井戸の歪み状態は約1%から2%である。対応する組成の違いは充分高くて、バンドギャップ設計によって非常に高い量子効率のデバイスが得られる一方、歪み状態は充分低くて、比較的厚いInGaN量子井戸(QW)層の役割によってキャリア密度を下げて非発光性オージェ再結合(別名「ドループ」)を緩和することが可能になる。歪み状態のこの許容範囲を他の発光波長に当てはめると、本開示によって提供される緩和されたInGaN基層の好ましい組成範囲を、様々な発光素子について計算することができて、青(約450nm)から赤外(約1.3μm)波長までとなる。好ましい範囲を表1および表2に列挙する。
【0079】
図14Aおよび14Bは、ピーク発光波長に応じた、InNモル分率、およびa格子定数の好ましい範囲をグラフで例示しており、これは、発光ダイオードおよびレーザダイオードを作製するためのテンプレートとして使用するための(0001)の緩和されたInGaN層についてのものであって、表1および2に示されたパラメータと一致する。例えば、ピーク発光波長λの関数として、緩和されたIn
xGa
1-xN基層についてのInNモル分率、xは、条件x
min≦x≦x
maxを満たすのが望ましく、ここでX
minおよびX
maxはそれぞれ、EQN.1とEQN.2:
x
min = -6.046E-07λ
2+ 1.837E-03λ - 6.917E-01, (λ ≧ 440 nm) EQN.1
x
max = -6.152E-07λ
2+ 1.847E-03λ - 6.142E-01, (λ ≧ 440 nm) EQN.2
で定義される。
【0080】
同様に、ピーク発光波長λの関数として、緩和されたInxGa1-xN基層の面内(「a」)格子定数aは、amin≦a≦amaxの条件を満たすのが望ましく、ここでaminおよびamaxはそれぞれ、EQN.3とEQN.4:
amin = -2.067E-07λ2 + 6.366E-04λ - 2.951, (λ ≧ 440 nm) EQN.3
amax = -2.190E-07λ2 + 6.575E-04λ - 2.970, (λ ≧ 440 nm) EQN.4
で定義される。
【0081】
本開示によって提供される方法および半導体構造は、垂直共振器面発光層(VCSEL)の作製に適合させることができる。LDまたはVCSEL用の緩和されたInGaN基層の組成の選択は、LED用のものと同様であり、表1および表2に示されるとおりである。
【0082】
図15A~15Fは、緩和されたInGaN層をファセット状GaNシード領域縁表面上に作製する方法を示している。この方法では、基板1501上の(0001)GaNまたはAlNシード層1502が提供される。
図15Aは、基板1501と、その上に重なるシード層1502と、その上に重なるマスク層1503とを示している。GaNシード層は、例えば、3μm未満の厚さ、0.3μm未満の厚さ、または0.03μm未満の厚さとすることができる。
図15A~
図15Fに例示される工程フローを参照すると、シード層1502は、GaN核形成をゆっくりと促進する材料を含むマスキング層1503で被覆することができる。マスキング層1503は、ナノリソグラフィおよびエッチング技術(ウェット、またはドライ、またはそれらの組み合わせ)などのいずれかの好適なフォトリソグラフィを用いてパターニングおよびエッチングして、上記の様々なパターンにすることができる。エッチングによって作り出されたマスク1504内の開口部内の露出したGaNは次いで、GaNシード材料1506を核形成するのに使用することができ、このシード材料は、
図15Cおよび15Dに示されるとおり、マスク内の開口部から、そして成長条件の適切な選択によって、成長させることができて、例えば、六角形の基部を有する三角形のファセットである縁を有するシード領域を形成することが可能である。例えば、その構造は、六角形の基部を有する6つの側面のものである場合があり、{1-101}の等価な平面である三角形のファセットを有する場合がある。
図15Dに示されるとおりファセットが完全に形成されると、三角形のファセットの表面1507は、InGaNの少なくとも横方向成長のためのシード表面として使用することができ、基板表面と共平面でないヘテロ接合を形成する。GaNシード表面(ファセット)の小さな寸法とInGaN目標組成の選択によって、InGaN厚さが増加するにつれて過成長InGaNの緩和が促進されると同時に、平坦で結晶学的に等価な方位が提供されてコヒーレンシーが保証される。InGaN1508は、コヒーレントに成長し、その緩和された格子定数に向かって緩和されて、
図15Eに示されるとおり、緩和されたInGaNである三角形のファセットを有する六角形の構造を形成する。これらのInGaNファセットは、さらに成長させることができ、最終的に他の平面的なシードファセットの隣接するInGaN成長フロントと合体させることができる。
図15Fに示されるとおり、合体したInGaNは次いで、マスキング層およびシード領域の上で成長し、成長条件(例えば、成長温度およびTMIフロー)が選択されて、構造の上部領域として、連続した平面的で緩和されたInGaN層またはテンプレート1509を形成する。この方法は、GaN(またはInGaN、AlGaN、もしくはAlN)シード材料をエッチングしてInGaNの核形成用のシード表面部分を提供する必要がないという利点を有する。さらに、この方法は、成長基板が、III族窒化物材料、例えばGaNまたはAlN基板である場合に非常に好適である。このように、この方法により、長寿命動作(>10,000時間)にとって低転位密度(例えば、GaN基板では5E7cm
-2未満)が好ましいLDデバイスの作製が容易になる。
【0083】
図16A~16Fは、緩和されたInGaN層をファセット状GaN表面上に作製する別の方法を示している。この方法は、GaNシード材料が基板上で核形成されることを除いて、
図15A~15Fに例示された方法と同様である。この手法では、サファイア、SiC、サファイア、AlN、またはGaNなど、GaN核形成に好適な基板1601を提供することができる。
図16Aを参照すると、基板1601は、GaN核形成をゆっくりと促進する材料のマスキング層1602で被覆することができる。
図16Bに示されるとおり、マスキング層1602は、ナノリソグラフィおよびエッチング技術(ウェット、またはドライ、またはそれらの組み合わせ)などのフォトリソグラフィを用いてパターニングおよびエッチングして、様々なパターン1604にする。次いで、エッチングによって作り出されたマスクの開口部内に露出した基板1603は、
図16Cに示されるとおり、GaNシード材料1605を核形成させるのに使用することができ、この材料は、マスク内の開口部から成長し、成長条件を適切に選択することによって、三角形のファセットであり六角形の基部を有する縁を有するGaNシード領域を形成することが可能である。例えば、シード領域は、6面のものであって、{1-101}の結晶学的に等価な平面である三角形のファセットを有していてもよい。
図16Dに示されるとおり、シード領域が完全に形成された後、三角形のファセットの表面1607は、InGaNの少なくとも横方向成長のためのシード表面として使用され、基板と共平面ではない結晶学的に等価な平面内で6つのヘテロ接合を形成する。GaNシード表面の小さい寸法と、成長したInGaN材料の目標組成の選択によって、シード表面上に成長したInGaNの緩和が促進される。さらに、それぞれのシード表面は、成長したInGaN材料全体のコヒーレンシーを保証する平坦で結晶学的に等価な方位を提供する。InGaNはコヒーレントに成長し、その緩和された格子定数に向かって緩和されて、
図16Eに示されるとおり、緩和されたInGaNであるファセット1608を形成する。これらのファセットはさらに成長して、他のシード領域から成長した隣接するInGaN成長前線と最終的に合体する。
図16Fに示されるとおり、合体したInGaNは次いでマスキング層の上で成長し、成長条件(例えば、成長温度およびTMIフロー)が選択されて、基板全体に連続した、平面的な、緩和されたInGaN領域1609またはテンプレートを形成する。この方法は、GaN(またはAlN)材料をエッチングしてInGaNの核形成用のシード表面を提供する必要がないという利点を有する。また、この方法は、工程全体を単一のエピタキシャル成長工程の中で提供することができるという利点がある。さらに、この方法は、成長基板が、III族窒化物材料、例えばGaNまたはAlN基板である場合に非常に好適である。
【0084】
図17Aは、
図15A~15Fの工程フローから得られる構造の詳細な断面図を提供している。基板1701、例えば(0001)サファイアは、面内a格子定数a1を特徴とする、GaN(またはInGaN、AlGaN、もしくはAlN)シード層1702用の主成長基板としての役割をする。GaNシード層1702は、マスクされた領域1703どうしの間に成長しており、結晶学的に等価な平面的なGaNシード表面の露出した縁を有するGaNシード領域1702aを形成している。GaNシード領域の三角形のGaNシード表面にInGaN材料が核形成されており、元の成長基板1701の主表面に対して平行でないヘテロ接合1707が形成されている。ヘテロ接合1707は、GaNシード領域の安定した結晶学的に等価なファセット上に、例えば、{1-101}に結晶学的に等価なファセット上に、形成されてもよい。InGaN材料は、GaNシード表面どうしの間の領域1705において、緩和されたInGaNの面内a格子定数a2に向かって緩和されるように、少なくとも部分的に横方向に成長している。元の成長基板の主表面に平行で、GaNシード材料を二分する平面1708bは、平面に沿った異なる位置で異なる面内a格子定数を特徴としている。具体的には、GaNシード領域1702a内の中心点では、この平面は、格子定数a1を特徴とし、GaNシード領域1702aどうしの間の中心点1705では、格子定数は近似的にa2である。これらの2つの中心点の間のGaN領域では、面内a格子定数はa1より大きくてa2より小さく、これは、a2>a1であるからである。平面図(図示せず)において、平面1708b内のGaN面内a格子定数の変動は、GaNシード層材料に適用された二次元マスクパターンによって特徴付けられる(
図5および
図6を見られたい)。
【0085】
図17Aおよび
図17Bに示されるとおり、平面1708bは、シード領域1702aの縁と交差して、InGaN領域1704とシード領域との間の界面のところをヘテロ接合1709bの位置とする。ヘテロ接合は、シード領域の第1の結晶学的平面と共平面である。主成長表面に平行であってInGaN領域(1708cなど)とシード領域1702aの両方に交差する平面1708bなどのいずれの平面も、シード領域1702aの縁と交差して、InGaN領域と、シード領域の第2の結晶学的平面と共平面であるシード領域との間の界面のところをヘテロ接合1709cの位置とする。
図17Aおよび
図17Bに示されるとおり、第1および第2の結晶学的平面は同一である。第1および第2の結晶学的平面は、結晶学的に等価な結晶学的平面とすることができる。
【0086】
InGaN材料は、マスキング層1703の上で合体して、平面的な表面1705cを有する緩和されたInGaN層1704を形成する。元の成長基板の主表面に平行で、表面1705cの近くのInGaN層1704内に位置する平面1708aは、InGaN面内a格子定数a2を主に特徴とする。GaNシード領域どうしの間の中心点1705では、InGaN格子定数はa2であり、GaNシード領域内の中心点では、面内a格子定数はa2よりわずかに小さい。平面図(図示せず)において、平面1708b内の面内a格子定数の変動は、シード層材料に適用された二次元マスクパターンによって特徴付けられる(
図5および
図6を見られたい)。面内a格子定数の変動は、XRDやRSMなどの測定技術によって検出可能であり、サブマイクロメートルのスケールで解像することができる。シード領域1702a内の平面1708bに沿った中点が1708cとして示され、シード領域1702aどうしの間の中点が1708dと示されている。
【0087】
GaNシード領域1702aは、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満の面内寸法を有するものとすることができる。GaNシード領域1702aの高さは、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満とすることができる。隣接するGaNシード領域1702aどうしの間の距離は、例えば、3μm未満、0.3μm未満、または0.03μm未満とすることができる。マスク材料1703の厚さは、例えば、0.01μmから1μmとすることができる。
図17Bは、
図16A~
図15Fの工程フローから得られる構造の詳細な断面図を提供している。この構造は、
図17Aの構造と同様であり、同様の構成要素が、番号が同一になるようにして特定されている。しかし、
図17Bの構造では、平面的な出発GaN(またはAlN)シード層1702は存在しない。その代わりに、GaN(またはAlN)シード材料は、マスク領域1703どうしの間の開口部内の基板1701上に直接核生成される。基板は、とりわけ、サファイア、GaN、AlN、またはシリコンであってもよい。
【0088】
III族窒化物半導体構造は、(a)InxGa1-xN(0≦x<1)とウルツ鉱型III族窒化物結晶構造とを含むシード領域と;(b)ウルツ鉱型III族窒化物構造の(0001)面に平行で、シード領域と交差する第1の平面であって;第1の平面とシード領域の第1の縁との交差が、InxGa1-xN/InyGa1-yNヘテロ接合の位置となり、0<y≦1かつy>xであり;InxGa1-xN/InyGa1-yNヘテロ接合がシード領域の第1の結晶学的平面と共平面である、第1の平面と;(c)ウルツ鉱型III族窒化物結晶構造の(0001)面に平行で、シード領域の第2の縁と交差するいずれかの第2の平面であって、III族窒化物ヘテロ接合の位置となり、III族窒化物ヘテロ接合が、シード領域の第2の結晶学的平面と共平面である、第2の平面と;(d)シード領域の上に重なる(0001)InGaN領域であって、(0001)InGaN領域が、3.19Åより大きい面内a格子定数を特徴とする、領域と、を含むことができる。ここで、第1および第2の結晶学的平面のそれぞれは、結晶学的に等価である。
【0089】
第1の平行平面は、シード領域の2つのファセットと交差するものとすることができる。シード領域のファセットは、シード領域の結晶学的平面、例えばウルツ鉱型結晶構造の結晶学的平面に平行である。シード領域のファセットは、結晶学的に等価なファセットとすることができる。第1の平行平面とシード領域のファセットとの交差が、InxGa1-xN/InyGa1-yNなどのヘテロ接合の位置となり、ここで0≦x<1、0<y≦1、かつy>xである。
【0090】
ウルツ鉱型III窒化物結晶構造の0001)面に平行で、シード領域と交差するいずれかの第2の平面が、III族窒化物ヘテロ接合の位置となる。第2の平面は、第1の平面と同一のファセットと交差するものとすることができる。第2の平面は、シード領域の結晶学的平面と共平面であるシード領域のファセットと交差するものとすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、結晶学的に等価な平面とすることができる。シード領域のそれぞれは、ウルツ鉱型結晶構造の結晶学的平面などのシード領域の結晶学的平面に平行なファセットを特徴とすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、結晶学的に等価な平面とすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、{10-11}面と結晶学的に等価とすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、{1-100}面と結晶学的に等価とすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、{11-20}面と結晶学的に等価とすることができる。結晶学的平面のそれぞれは、(1-100)面または(11-20)面とすることができる。
【0091】
InGaN領域は、シード領域どうしの間に位置する。InGaN領域、またはシード領域どうしの間のInGaN領域の少なくとも一部分は、部分的に緩和されたInGaN領域とすることができる。InGaN領域は、異なる元素組成をそれぞれ有する複数のInGaN層を含むことができる。(0001)のInGaN領域を、シード領域の上に重ねることができる。(0001)のInGaN領域は、完全に緩和されたInGaN領域とすることができ、3.19Åより大きい、例えば3.20Åから3.50Åの範囲である面内a格子定数を有することができる。
【0092】
シード領域は、2つ以上のファセット、例えば2、3、4、5、または6つのファセットを有することができる。シード領域は、3または6つのファセットを有することができる。シード領域は、例えば、矩形の基部、三角形の基部、正方形の基部、五角形の基部、または六角形の基部を有することができる。シード領域は、三角形の基部または六角形の基部を有することができる。
【0093】
各シード領域は、例えば、GaNを含むことができ、例えば、約3.189Åの格子定数を有することができる。各シード領域はGaNを含むことができ、InxGa1-xN/InyGa1-yNヘテロ接合およびIII族窒化物ヘテロ接合のそれぞれは、GaN-InGaNヘテロ接合である。
【0094】
図18~
図20に、本発明の態様を例示する。
図18A、18B、および18Cは、基底面のIII族窒化物成長において形成され得る、いわゆる「vピット」構造の平面概略図を示している。具体的には、低温で成長させたIII族窒化物材料、例えば800℃未満の温度でMOCVDを使用して成長させたGaNの場合では、吸着原子の動力学は、転位芯付近を埋める傾向を半導体材料が示さないようなものであって、中心のところに転位芯を伴う安定な(10-11)面からピットを形成させる。低温条件下で成長が続くと、ピットはさらに大きくなり(
図18B)、衝突する(
図18C)。ピットが大きくなると、露出した(10-11)ファセットの全表面積は、露出した(0001)表面の全表面積と同等か、それ以上となる。この大きな表面積の(10-11)ファセットが存在し、各ファセットが結晶学的に等価であることから、本発明で考案されたとおり、高品質で緩和されたInGaNを(10-11)シード表面、例えば、GaN上に形成する機会が提供される。
【0095】
例えば、
図19に示されるとおり、好適な基板、例えばGaN、サファイア、Si、SiC、AlN等の上に、低温でGaNを核形成させることができる。いったん、適度に高品質のGaNエピタキシャル膜が、例えば(例えば、900℃より)高温でGaNエピタキシャル膜を成長させることによって実現されると、成長条件を再び変更することができて、例えば800℃以下の温度でGaNを成長させることによって、vピットを形成するようにすることができる。その後、成長を中止し、GaN構造をMOCVD反応器から取り出し、SiO
2またはSiN
xの誘電体層などの好適な成長マスク層を、(0001)表面に選択的に堆積させるように、そして(10-11)面には堆積させないようにすることができる。これは、高角度スパッタリングもしくは堆積による、またはフォトレジストをvピット内に選択的に堆積させた後の、例えば堆積とリフトオフによるなど、様々な手段で実現することができる。その後、GaN構造をMOCVDまたはMBE反応器などの反応器に戻すことができる。次いで、GaNの薄層の堆積に随意に先立つInGaNを、(10-11)ファセット上の露出したGaNシード領域材料上に選択的に成長させることができる。InGaN層の厚さが増すと大きな歪みが誘起するように、そしてその結果、緩和が誘起するように、InNモル分率の目標値を定めることができる。InGaN成長は、マスク領域より上に成長し続けて合体することができ、平面的な、高品質の、緩和されたInGaN(0001)領域を提供し、この領域に、本開示に記載されるとおり、デバイス作製用のテンプレートとしての役割をさせることができる。InGaN層は、900℃より高い温度など、InGaN/GaN成長に典型的な温度よりも高い温度で成長させることができ、これが可能なのは、緩和されたInGaN材料が、GaNに疑似格子整合するInGaNよりもはるかに容易にInを取り込むからである。成長温度を上昇させることで、vピット欠陥を埋めて、合体した、平面的な膜を得ることが可能になる。緩和されたInGaN成長の形態および組成均一性の制御は、バルクInGaN層を使用することによってではなく、多層構造を成長させることによって容易にすることができる。例えば、25%のバルクInGaN層を、3nmのGaNと1nmのInN、または2nmのGaNと2nmのIn
0.5Ga
0.5Nの交互層に置換することができる。個々の層の層厚は、例えば、0.5nmから100nm、例えば1nmから30nmの範囲とすることができる。多周期のそうした多層構造、例えば、2から10層、2から100層、または100層より多い層を使用してもよい。
【0096】
別の例では、マスキングのステップをなくし、工程全体を成長チャンバ内でインサイチュに完了させることができる。例えば、
図20に示されるとおり、好適な基板、例えばGaN、サファイア、Si、AlN等の上にGaNを核形成させることができる。適度に高品質のGaNエピタキシャル膜を、例えば(例えば、900℃より)高温で成長させることによって実現した後、成長条件を再び変更することができて、例えば800℃以下の温度でGaNを成長させることによって、vピットを形成するようにすることができる。vピットは、{10-11}の等価なファセットの露出した表面積が(0001)GaNの露出表面積より大きくなるように成長させることができる。好ましくは、(10-11)ファセットの露出表面積は、(0001)GaNの露出表面積の2倍より大きく、より好ましくは、(0001)GaNの露出表面積の10倍である。ついで、シード領域である(10-11)ファセット上に、選択的にInGaNを成長させることができる。InGaN層の厚さが増すと大きな歪みが誘起するように、そしてその結果、緩和が誘起するように、InN組成の目標値を定めることができる。InGaNは、成長し続け合体することができ、平面的な、高品質の、緩和されたInGaN(0001)領域を提供し、この領域に、本開示に記載されるとおり、デバイス作製のテンプレートとしての役割をさせることができる。
【0097】
(0001)成長表面積は(10-11)成長表面積よりも小さいので、後者の成長モードが支配的であり、InGaNが緩和されて、膜厚の増加とともに支配的な成長表面となることが可能になる。InGaN/GaN成長に一般的な温度よりも高い温度でInGaN層を成長させることが有用であり得るが、これが可能なのは、緩和されたInGaN材料が、GaNと擬似格子整合するInGaNよりも容易にInを取り込むことができるからである。成長温度を上昇させることで、vピット欠陥を埋めて、合体した、平面的な膜を得ることが可能になる。緩和されたInGaN成長の形態および組成均一性の制御は、バルクInGaN層を使用することによってではなく、多層構造を成長させることによって容易にすることができる。例えば、25%のバルクInGaN層を、3nmのGaNと1nmのInN、または2nmのGaNと2nmのIn0.5Ga0.5Nの交互層に置換させてもよい。個々の層の層厚は、例えば、0.5nmから100nm、例えば1nmから30nmの範囲とすることができる。多周期のそうした多層構造、2から10層、2から100層、または100層より多い層を使用することができる。
【0098】
一例として、c面(0001)サファイア基板を、少なくともトリメチルガリウム、トリメチルインジウム、およびアンモニアを供給できるMOCVD反応器に装填することができる。低温GaN核形成層を得ることができ、その後、三次元アイランドの形成に次いで二次元の(0001)GaN膜への合体を含むことのできる高温GaN成長を行うことができる。この三次元から二次元への遷移は、貫通転位を横方向に方向転換させるのに役立ち、また成長表面での全体的な貫通転位密度を低減さるのに役立って、これを1E9cm
-2未満にまで低減させることができる。最終的には、平面的なGaN層において1E8cm
-2の転位密度を実現することができる。次に、成長温度を(例えば、800℃未満に)下げて、転位芯のところでvピット構造を形成することができ、これは、傾斜した(10-11)面を特徴とするものである。これらの平面は、約63度という、(0001)成長表面に対する角度をなすことができる。低温層の厚さによって、vピットの高さが制御されるが、この厚さは、この具体例について表3に示されるとおり、露出した{10-11}ファセットの全表面積が(0001)の表面積よりも大きくなるような成長によって増加する。
【0099】
例えば、転位密度が1E8cm-2の場合には、目標vピット高さは0.14μm以上とすることができる。
【0100】
(10-11)材料と(0001)材料との間の目標とする表面積比を実現できた後、TMIをチャンバ内に流し、(10-11)シード領域上に1層または複数層のInGaN層を成長させて歪み緩和を誘起させる。InGaN層は、GaN層との周期的な交互層とすることができる。例えば、各InGaN層は、0.5nmから100nmの厚さ、例えば1nmから30nmの厚さとすることができ、同様の厚さを有するGaN層どうしの間に挟むことができる。歪み緩和を誘起させるためには、歪み緩和層の平均組成は適度に高いことが望ましく、例えば、平均InN含有量は5%より大きくすることができる。歪み緩和を開始した後、または開始する前に、成長温度を上昇させることで、成長を平面化し、デバイス作製のための平面的で均一な、緩和された(0001)InGaN層を実現するのに役立てることができる。
【0101】
前述の考察はGaNシード領域を対象としているものの、InGaN(またはAlGaN)シード領域を利用することも可能であり、その条件は、この材料が、下にあるいずれかのGaN層、例えばGaN核形成層および/またはバッファ層に擬似格子整合していることである。シード領域は、最終的に緩和を誘起させる、InGaN-GaN(またはInGaN-InGaN)ヘテロ接合近傍の領域である。これらの領域より下のシード材料は、シード領域ではなくシード材料と称される。
【0102】
本開示によって提供される、緩和されたInGaN層および緩和されたInGaN層を含む半導体構造は、LEDおよびLD(およびVCSEL)などの、InGaNを用いた光電子デバイスを含む、電子デバイスおよび光電子デバイスを作製するのに使用することができる。本開示によって提供される緩和されたInGaN層を含むLEDおよびLDは、照明システムおよびディスプレイシステムに使用することができる。具体的には、LEDの場合には、デバイスは、基板上の緩和されたInGaN基層上に形成してもよい。基板は、研削、ラッピング、またはエッチングなどの技術によって薄くすることができ、ソーイング、スクライブ・アンド・ブレイク、またはレーザースクライブ・アンド・ブレイクなどの当技術分野で公知の手段によってダイシングすることができて、個々のLEDチップまたはダイを提供することができる。LEDチップまたはダイの寸法は、例えば、250μm2から10mm2のものとすることができる。ついで、個々のLEDチップを好適なパッケージ構成要素に取り付けることができ、この構成要素が、デバイスとの電気的コンタクトをなしてヒートシンクを行うためのリード線を提供する。ダイ・アタッチには、エポキシもしくはシリコンによる取り付け、またははんだを用いた取り付けなど、いずれかの好適な方法を使用することによって実行することができる。チップとパッケージの電気的接続は、AuまたはAgのワイヤなどのボンドワイヤを使用して、パッケージ内のアノードおよびカソードのリード線をLEDチップ上のそれぞれのコンタクトメタライゼーション、すなわち電極に接続することによって完成させることができる。フリップチップデバイスの場合、LEDチップとパッケージの間に位置する中間サブマウントを通じて電気的コンタクトを形成することができる。チップ電極は、はんだ付けや金バンプ付けなどの手段によりサブマウント・キャリアに取り付けることができる。サブマウント・キャリアは、ダイシングされた後、いずれかの好適な方法によりパッケージに実装することができる。
【0103】
パッケージされたLEDデバイスから生じる所望の発光色は、所望のピーク発光波長を有する緩和されたInGaNを用いたLEDを作製し提供することによって、得られる。随意に異なるピーク発光波長を有する複数のそのようなLEDチップを、別個のパッケージに含めることができるし、またはマルチチップパッケージ内に一緒に組み合わせることができる。例えば、単一のパッケージが、赤色発光、緑色発光、および青色発光のLEDチップを含むことができ、これらのチップは、回路内に配置されてもよく、そしてLEDを動作させるための、パッケージ内またはパッケージ外のいずれかのドライバ回路に電気的に結合されてもよい。回路の詳細およびドライバを選択することで、異なる色のLEDを別々にまたは一緒に動作させて、照明用途に使用するための白色発光、または液晶ディスプレイ(LCD)デバイス、例えばテレビディスプレイ、コンピュータモニタ、携帯電話ディスプレイ、ウェアラブルディスプレイデバイス等のバックライトとして使用するための発光を含め、広範囲の全発光特性を提供することができる。
【0104】
一つまたは複数のLEDチップを発光性ダウンコンバージョン材料と組み合わせて、所望の発光スペクトルを提供することができる。そのような発光性ダウンコンバージョン材料は、蛍光体、量子ドットなどの半導体ナノ粒子、またはペロブスカイト材料を含んでいてもよい。また、複数の発光性ダウンコンバージョン材料を単一のパッケージ内で組み合わせることもできる。LEDチップの発光波長を、発光性ダウンコンバージョン材料を励起するように選択することで、パッケージからの発光が、LEDチップの直接発光と発光性ダウンコンバージョン材料の発光の組み合わせとなるようにすることができ、または、発光を主に発光性ダウンコンバージョン材料のものだけにして、LEDチップ光が、発光性ダウンコンバージョン材料によって完全に吸収されるか、さもなければパッケージから脱出するのをブロックまたはフィルタリングされるようにしてもよい。発光性ダウンコンバージョン材料を使用した、パッケージされたLEDは、照明用途に有用な白色光を生成するのに使用することができる。そのようなデバイスは、ドライバ回路に電気的に結合され、主電源またはバッテリ電源などの外部電源から給電され、ヒートシンクに熱的に結合され、様々な光学部品またはレンズに光学的に結合されて、LEDランプまたはLED照明設備などの照明デバイスを提供することができる。
【0105】
さらに小さい寸法のLEDチップを、本発明を使用して作製してもよい。具体的には、1μm2から50μm2の寸法を有するデバイス、いわゆる「マイクロLED」を作製することができる。マイクロLEDの場合、従来のダイシング技術はそれほど好適ではないので、デバイスを単体にする他の手段が採用されることが多い。例えば、基板上に所望の寸法のLEDを形成し、次いでLEDの最上面をキャリア、例えば青色テープまたはサブマウント・キャリアに結合し、次いで基板を除去することによって、ダイシングが可能になる場合がある。ついで、個々のデバイスを選び出して、マイクロLEDを用いたディスプレイ用のパッケージ構成要素内に、またはバックプレーン上に、配置してもよい。マイクロLEDデバイスの取り扱いには、当技術分野で知られているとおり、高度なダイハンドリング技術を使用することができる。具体的には、本発明に基づく赤色発光、緑色発光、および青色発光のLEDを、マイクロLEDに形成し並べて、マイクロLEDディスプレイを提供し、テレビ、コンピュータモニタ、タブレット、携帯電話、ウェアラブルデバイス等のシステムに組み込んでもよい。
【0106】
本開示によって提供される緩和されたInGaN層を組み込んだLDもまた、様々なシステムに組み込むことができる。LDパッケージは、熱的観点からLDデバイスにおけるさらに高いパワー密度を管理する手段が提供されること、そしてレーザーファセットを光学的に利用する手段が提供されることを除いて、本明細書に記載されるLEDパッケージと同様である。複数の発光色のLDを、別個のパッケージで提供してもよいし、または組み合わせて単一のパッケージにしてもよい。また、LDを、発光性ダウンコンバージョン材料と結合させて、所望の発光スペクトルを提供してもよい。LDは、非常に高い光密度が要求される用途、例えば自動車前方照明システム、または投影ディスプレイに有用であり、投影ディスプレイには、ラスタリング光学系、マイクロミラーデバイス、またはLCD変調器などの光変調手段を含む場合がある。
【0107】
照明システムおよびディスプレイシステムの例を、
図11および
図12に示す。
【0108】
発明の態様
本発明は、以下の態様によってさらに定められる。
【0109】
態様1. 緩和された(0001)InGaN領域を含むInGaN領域を含むIII族窒化物半導体構造であって;前記緩和された(0001)InGaN領域が、少なくとも一方向の周期性を特徴とする面内a格子定数を有する、III族窒化物半導体構造。
【0110】
態様2. 前記緩和されたInGaN領域が、c面成長方位を特徴とする、態様1に記載の半導体構造。
【0111】
態様3. 前記緩和されたInGaN領域が、3.19Åより大きい平均面内a格子定数を特徴とする、態様1から2のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0112】
態様4. 前記緩和されたInGaN領域が、3μm未満の厚さを有する、態様1から3のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0113】
態様5. 前記緩和されたInGaN領域が、20nmから1μmの厚さを有する、態様1から4のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0114】
態様6. 前記緩和されたInGaN領域が、5E9cm2未満の欠陥密度を有する、態様1から5のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0115】
態様7. 前記緩和されたInGaN領域が、InGaN-GaN超格子を含む、態様1から6のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0116】
態様8. 前記緩和されたInGaN領域の第1の部分の下にある複数のマスク領域と;前記緩和されたInGaN領域の第2の部分の下にある複数の非マスク領域と、をさらに含む、態様1から7のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0117】
態様9. 前記複数のマスク領域のそれぞれが誘電体材料を含む、態様8に記載の半導体構造。
【0118】
態様10. 前記誘電体材料が、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または酸化アルミニウムを含む、態様9に記載の半導体構造。
【0119】
態様11. 前記複数のマスク領域のそれぞれが、20nmから2μmの厚さを有する、態様8から10のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0120】
態様12. 前記複数のマスク領域のそれぞれが、2μm未満の厚さを有する、態様8から10のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0121】
態様13. 前記複数の非マスク領域のそれぞれの最大面内寸法が1μm未満である、態様8から12のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0122】
態様14. 前記複数のマスク領域のそれぞれの下にあるシード領域をさらに含む、態様8から13のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0123】
態様15. 前記シード領域が、GaN、AlN、またはAlGaNを含む、態様14に記載の半導体構造。
【0124】
態様16. 前記シード領域が20nmから2μmの厚さを有する、態様14から15のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0125】
態様17. 前記シード領域が2μm未満の厚さを有する、態様14から16のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0126】
態様18. 前記シード領域が、水平界面とシード界面とを含み、前記水平界面が(0001)InGaN結晶学的平面と実質的に共平面であり、前記シード界面が、水平界面に平行ではない平面的なシード部分を含む、態様14から17のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0127】
態様19. 前記平面的なシード部分が、a面、m面、またはa面とm面の間の平面を含む、態様18に記載の半導体構造。
【0128】
態様20. 前記水平の界面が、c面方位を特徴とし;前記平面的なシード部分が、前記水平界面と共平面でない、態様19に記載の半導体構造。
【0129】
態様21. 前記平面的なシード部分がヘテロ接合を含む、態様19から20のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0130】
態様22. 前記ヘテロ接合がGaN-InGaNヘテロ接合である、態様21に記載の半導体構造。
【0131】
態様23. 前記シード領域がGaNを含み;前記平面的なシード部分がGaN/InGaNヘテロ接合を含み;前記GaN/InGaNヘテロ接合が、GaN(1-100)結晶面、GaN(11-20)結晶学的平面、またはGaN(1-100)結晶学的平面とGaN(11-20)結晶学的平面との間の結晶学的平面と、実質的に平行である、態様22に記載の半導体構造。
【0132】
態様24. 前記複数の非マスク領域がInGaNを含む、態様8から23のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0133】
態様25. 前記複数の非マスク領域がパターンによって特徴付けられる、態様8から24のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0134】
態様26. 前記複数の非マスク領域が、少なくとも一次元の非マスク領域周期性を特徴とする、態様8から25のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0135】
態様27. 前記緩和されたInGaN領域の面内a格子定数の周期性が、前記非マスク領域周期性に対応する、態様26に記載の半導体構造。
【0136】
態様28. 前記複数の非マスク領域が、アレイの形状を特徴とする、態様8から27のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0137】
態様29. 形状が、InGaNの結晶学的平面に対して配向している縁を含む、態様28に記載の半導体構造。
【0138】
態様30. 前記縁が、InGaNのa面またはInGaNのm面に対して±1°ずれて配向している、態様29に記載の半導体構造。
【0139】
態様31. 前記縁が、(1-100)InGaN結晶学的平面に平行に配向している、態様29から30のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0140】
態様32. 前記縁が、(11-20)InGaN結晶学的平面に平行に配向している、態様29から31のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0141】
態様33. 前記縁が、(1-100)InGaN結晶学的平面に平行ではない、かつ(11-20)InGaN結晶学的平面に平行ではない方向に配向している、態様29から31のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0142】
態様34. 前記複数の非マスク領域のそれぞれの、および前記複数のマスク領域のそれぞれの下にある基板をさらに含む、態様8から33のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0143】
態様35. 前記基板が、サファイア、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、または窒化アルミニウムを含む、態様34に記載の半導体構造。
【0144】
態様36. 前記複数の非マスク領域のそれぞれの下にある基板と、前記非マスク領域内にあって前記基板の一部分の上にある空洞と、をさらに含む、態様8から35のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0145】
態様37. 前記III-V族半導体構造が、幅と長さとによって画定される面積を有し、前記面積が0.1mm2より大きい、態様1から36のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0146】
態様38. 前記幅の少なくとも10倍未満、および/または前記長さの少なくとも10倍未満である周期を、前記周期性が特徴とする、態様37に記載の半導体構造。
【0147】
態様39. 前記面積内の非マスク領域の数が10より多いことを特徴とする、態様37から38のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0148】
態様40. 前記周期性に関連する一周期の範囲内で、前記面内a格子定数が、およそ1%未満という平均面内a格子定数まわりの最小値と最大値との間で変動する、態様1から39のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0149】
態様41. 前記緩和されたInGaN領域の第1の部分の下にある複数のシード領域をさら含む、態様1から40のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記複数のシード領域のそれぞれが、複数の平面的なシード部分を含み;前記複数の平面的なシード部分のそれぞれが、共平面の(0001)InGaN結晶学的平面ではない、半導体構造。
【0150】
態様42. 前記平面的なシード部分が、六角形の基部を有するピラミッド形状の少なくとも一部分を形成する、態様41に記載の半導体構造。
【0151】
態様43. 前記複数の平面的なシード部分のそれぞれが、(1-101)結晶学的平面を特徴とする、態様41から42のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0152】
態様44. 前記緩和されたInGaN領域の第2の部分の下にある複数のマスク領域をさらに含む、態様41から43のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記複数のシード部分のそれぞれが、前記複数のマスク領域の上に延在する、半導体構造。
【0153】
態様45. 前記複数のマスク領域のそれぞれの下にあり、かつ前記複数のシード領域のそれぞれの下にあるシード層をさらに含む、態様44に記載の半導体構造。
【0154】
態様46. 前記シード層と、前記複数のシード領域のそれぞれとが連続している、態様45に記載の半導体構造。
【0155】
態様47. 前記シード層の下にある基板をさらに含む、態様46に記載の半導体構造。
【0156】
態様48. 前記複数のシード領域のそれぞれの下にあり、かつ前記複数のマスク領域のそれぞれの下にある基板をさらに含む、態様44から47のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0157】
態様49. 前記InGaNのc面に平行であって前記緩和されたInGaN領域を通る平面において、前記面内a面格子定数が3.19Åより大きい、態様1から48のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0158】
態様50. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数の非マスク領域をさらに含む、態様1から49のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記緩和されたInGaN領域の格子定数の周期性が、前記複数の非マスク領域の周期性に対応する、半導体構造。
【0159】
態様51. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数のシード領域をさらに含む、態様1から50のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記複数のシード領域のそれぞれが、面内a格子定数a1を特徴とし;前記緩和されたInGaN領域が、面内a格子定数a2を特徴とし;a2がa1よりも大きい、半導体構造。
【0160】
態様52. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数のシード領域をさらに含む、態様1から51のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記緩和されたInGaN領域および前記複数のシード領域が、複数のヘテロ接合を形成し;前記複数のヘテロ接合のそれぞれが、前記シード領域および前記緩和されたInGaN領域の成長面に平行でない、半導体構造。
【0161】
態様53. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数のシード領域をさらに含む、態様1から52のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記緩和されたInGaN領域および前記複数のシード領域が、複数のヘテロ接合を形成し;前記複数のヘテロ接合のそれぞれが、前記緩和されたInGaN領域のc面に垂直である、半導体構造。
【0162】
態様54. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数のシード領域をさらに含む、態様1から53のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記緩和されたInGaN領域および前記複数のシード領域が、複数のヘテロ接合を形成し;前記複数のヘテロ接合のそれぞれが、InGaNのa面に平行であるか、InGaNのm面に平行であるか、またはInGaNのa面とInGaNのm面との間の角度をなす、半導体構造。
【0163】
態様55. 前記緩和されたInGaN領域の一部分の下にある複数のシード領域をさらに含む、態様1から54のいずれか一つに記載の半導体構造であって、前記複数のシード領域が、少なくとも一方向の周期性を特徴とし;前記緩和されたInGaN領域の面内a格子定数の周期性が、前記複数のシード領域の周期性に対応する、半導体構造。
【0164】
態様56. 前記緩和されたInGaN領域の面内a格子定数の周期性が、前記複数のシード領域の周期性と同一である、態様55に記載の半導体構造。
【0165】
態様57. 前記緩和されたInGaN領域の上にある、nドープ半導体層、活性半導体層、およびpドープ半導体層をさらに含む、態様1から56のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0166】
態様58. 前記緩和されたInGaN領域の上にある複数の半導体エピタキシャル層をさらに含む、態様1から57のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0167】
態様59. 緩和された(0001)InGaN領域を含むInGaN領域と;前記緩和されたInGaN領域の第1の部分の下にある複数のマスク領域と;前記緩和されたInGaN領域の第2の部分の下にある複数の非マスク領域と;前記マスク領域のそれぞれの下にあるシード領域とを含む、III族窒化物半導体構造。
【0168】
態様60. 前記シード領域がGaNを含み;前記シード領域どうしの間、かつ前記InGaN領域の第2の部分の下にある非マスク領域がInGaNを含む、態様59に記載の半導体構造。
【0169】
態様61. 前記緩和されたInGaN領域のc面に平行であってシード領域を二分する平面において、前記シード領域内の面内a格子定数が、シード領域どうしの間、かつ前記InGaN領域の第2の部分の下にある面内a格子定数より小さい、態様59から60のいずれか一つに記載の半導体構造。
【0170】
態様62. 態様1から61のいずれか一つに記載のIII-V族半導体構造を含む半導体デバイス。
【0171】
態様63. 光電子デバイスを含む、態様62に記載の半導体デバイス。
【0172】
態様64. 発光ダイオードまたはレーザダイオードを含む、態様62に記載の半導体デバイス。
【0173】
態様65.ピーク発光波長をさらに含む、態様64に記載の半導体デバイス。
【0174】
態様66. 前記ピーク発光波長が440nmと460nmの間であり、前記面内a格子定数が3.196Åと3.214Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0175】
態様67. 前記ピーク発光波長が520nmと540nmの間であり、前記面内a格子定数が3.235Åと3.253Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0176】
態様68. 前記ピーク発光波長が580nmと600nmの間であり、前記面内a格子定数が3.260Åと3.282Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0177】
態様69. 前記ピーク発光波長が620と640nmの間であり、前記面内a格子定数が3.282Åと3.296Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0178】
態様70. 前記ピーク発光波長が690と710nmの間であり、前記面内a格子定数が3.303Åと3.324Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0179】
態様71. 前記ピーク発光波長が840nmと870nmの間であり、前記面内a格子定数が3.346Åと3.367Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0180】
態様72. 前記ピーク発光波長が940nmと980nmの間であり、前記面内a格子定数が3.374Åと3.392Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0181】
態様73. 前記ピーク発光波長が1300nmと1350nmの間であり、前記面内a格子定数が3.435Åと3.456Åの間である、態様65に記載の半導体デバイス。
【0182】
態様74. 態様62から73のいずれか一つに記載の半導体デバイスを含む照明システム。
【0183】
態様75. 態様62から73のいずれか一つに記載の半導体デバイスを含むディスプレイシステム。
【0184】
なお、本発明に包含される諸態様または諸実施形態は、以下のように要約することもできる。
[1].
(a)In
x
Ga
1-x
N(0≦x<1)とウルツ鉱型III族窒化物結晶構造とを含むシード領域と;
(b)前記ウルツ鉱型III族窒化物構造の(0001)面に平行で、前記シード領域と交差する第1の平面であって;
前記第1の平面とシード領域の第1の縁との交差が、In
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合の位置となり、0<y≦1かつy>xであり;
前記In
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合が、前記シード領域の第1の結晶学的平面と共平面である、第1の平面と;
(c)前記ウルツ鉱型III族窒化物結晶構造の(0001)面に平行で、前記シード領域の第2の縁に交差するいずれかの第2の平面であって、III族窒化物ヘテロ接合の位置となり、前記III族窒化物ヘテロ接合が、前記シード領域の第2の結晶学的平面と共平面である、第2の平面と;
(d)前記シード領域の上に重なる(0001)InGaN領域であって、3.19Åより大きい面内a格子定数を特徴とする(0001)InGaN領域と、
を含み
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面のそれぞれが結晶学的に等価である、
III族窒化物半導体構造。
[2].
前記第1の縁および前記第2の縁が、異なる縁である、上記項目1に記載の半導体構造。
[3].
前記第1の縁および前記第2の縁が、同一の縁である、上記項目1記載の半導体構造。
[4].
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面が、異なる結晶学的平面である、上記項目1から3のいずれか一項に記載の半導体構造。
[5].
前記第1の結晶学的平面および前記第2の結晶学的平面が、同一の結晶学的平面である、上記項目1から3のいずれか一項に記載の半導体構造。
[6].
前記シード領域のそれぞれが、3つから6つの平面的なシードファセットを特徴とする、上記項目1から5のいずれか一項に記載の半導体構造。
[7].
前記シード領域のそれぞれが、三角形の基部または六角形の基部を特徴とする、上記項目1から6のいずれか一項に記載の半導体構造。
[8].
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{10-11}面である、上記項目1から6のいずれか一項に記載の半導体構造。
[9].
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{1-100}面である、上記項目1から6のいずれか一項に記載の半導体構造。
[10].
前記結晶学的平面のそれぞれが、結晶学的に等価な{11-20}面である、上記項目1から6のいずれか一項に記載の半導体構造。
[11].
前記結晶学的平面のそれぞれが、(1-100)面および(11-20)面である、上記項目1から6のいずれか一項に記載の半導体構造。
[12].
シード領域間の中点での領域がInGaN領域である、上記項目1から11のいずれか一項に記載の半導体構造。
[13].
前記InGaN領域が、少なくとも部分的に緩和されたシード領域である、上記項目12に記載の半導体構造。
[14].
前記InGaN領域が、複数のInGaN層を含み、各InGaN層が、異なる元素含有量を有する、上記項目12から13のいずれか一項に記載の半導体構造。
[15].
前記シード領域のそれぞれが、GaNを含み、約3.189Åの格子定数を有する、上記項目1から14のいずれか一項に記載の半導体構造。
[16].
前記面内a格子定数が3.20Åから3.50Åである、上記項目1から15のいずれか一項に記載の半導体構造。
[17].
各シード領域が、GaNを含み、
前記In
x
Ga
1-x
N/In
y
Ga
1-y
Nヘテロ接合および前記III族窒化物ヘテロ接合のそれぞれが、GaN-InGaNヘテロ接合である、上記項目1から16のいずれか一項に記載の半導体構造。
[18].
複数のシード領域を含むアレイを含む、上記項目1から17のいずれか一項に記載の半導体構造。
[19].
基板とマスク領域とをさらに含み、前記シード領域が、前記基板の第1の部分の上に重なり、前記マスク領域が、前記基板の第2の部分の上に重なる、上記項目1から17のいずれか一項に記載の半導体構造。
[20].
前記基板が、サファイア、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、または窒化アルミニウムを含む、上記項目19に記載の半導体構造。
[21].
上記項目1から20のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体構造を含む半導体デバイス。
[22].
前記半導体デバイスは:
前記(0001)InGaN領域の上のn型III族窒化物層と;
前記(0001)InGaN領域の上のp型III族窒化物層と;
前記n型III窒化物層と前記p型III窒化物層との間のInGaN含有活性領域と;
前記p型III族窒化物層との電気的コンタクトを形成する第1の電気的コンタクトメタライゼーションと;
前記n型III族窒化物層との電気的コンタクトを形成する第2の電気的コンタクトメタライゼーションと、
を含む、上記項目21に記載の半導体デバイス。
[23].
上記項目21から22のいずれか一項に記載の半導体デバイスを含む照明システムまたはディスプレイシステム。
最後に、本明細書に開示された実施形態を実装する代替的なやり方が存在することに留意するのが望ましい。したがって、本実施形態は、例示的なものであって制限的なものではないと見なされるものとし、特許請求の範囲は、本明細書に与えられた詳細に限定されるものではないものとして、その範囲および均等物の範囲内で修正してもよい。