(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ラクトバチルス属細菌由来小胞を含む代謝疾患又は筋肉疾患の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240327BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240327BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240327BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P3/04
A61P3/10
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2022573692
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2021007369
(87)【国際公開番号】W WO2021256793
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0072685
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0073948
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2098069(KR,B1)
【文献】国際公開第2019/050287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)又はラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)細菌由来の小胞を有効成分として含む
、肥満又はインスリン抵抗性の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記小胞は、平均直径が10~1000nmである
、請求項1に記載
の薬学組成物。
【請求項3】
ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)又はラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)細菌由来の小胞を有効成分として含む
、肥満又はインスリン抵抗性の予防又は改善用食品組成物。
【請求項4】
ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)又はラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)細菌由来小胞の
肥満又はインスリン抵抗性の予防又は治療薬剤の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス属細菌由来小胞を有効成分として含む代謝疾患又は筋肉疾患の予防、改善、又は治療用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2020年6月16日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0072685号及び2021年6月8日に出願された大韓民国特許出願第10-2021-0073948号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
代謝疾患は、生体内での物質代謝障害により発生する疾患を総称する。一般的に、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、電解質及び水分などの不均衡により発生するが、その例としては、肥満、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症、脂肪肝、高血圧などがある。その中でも肥満と関連した第2型糖尿病の場合には、成人期に主に現われる糖尿病であって、インスリンに対する抵抗性を特徴とする。インスリン受容体自体の減少、あるいはその敏感度が下がるか細胞内グリコーゲン合成を起こす2次伝達子に問題が発生すると、インスリンに対する敏感度が下がることになる。したがって、第2型糖尿病をインスリン非依存性糖尿病と言い、糖尿の85~90%を占める。
【0004】
ラクトバチルス属細菌は、乳酸を分泌する代表的な有益菌として知られている。そのうち、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)は、グラム陽性桿菌として嫌気性環境だけではなく好気性環境でもよく増殖し、女性の膣などに共生する細菌として知られている。細菌は、細胞間タンパク質、脂質、遺伝子などの交換のために細胞外環境に二重膜構造のタンパク質脂質としてよくナノ小胞(nanovesicles)とも呼ばれる細胞外小胞(extracellular vesicle;EV)を分泌する。ラクトバチルス・パラカセイのようなグラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来の小胞は、細菌由来タンパク質と核酸の他にも細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)も有している。
【0005】
しかし、ラクトバチルス属細菌又はラクトバチルス・パラカセイから分泌される小胞が肥満、代謝症侯群、高インスリン血症、高脂血症、高脂質血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、異常脂質血症、糖尿病、糖尿病性腎症、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎及び動脈硬化症などの代謝疾患の予防又は治療のために用いられた場合はないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ラクトバチルス・パラカセイ、ラクトバチルス・ラムノーサスのようなラクトバチルス属細菌由来の小胞が代謝疾患に治療効果があるか否かを評価するために、鋭意研究した結果、高脂肪食餌による肥満及び糖尿病動物モデルでラクトバチルス属細菌由来小胞の投与が肥満と糖尿病を効率的に抑制することを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0007】
これより、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、代謝疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、筋肉疾患の予防、改善又は治療用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、筋機能改善用食品組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、運動遂行能力向上用食品組成物を提供することを目的とする。
【0011】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、上記で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は、下の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、代謝疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、代謝疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0014】
本発明の一具現例として、前記ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・パラカセイ又はラクトバチルス・ラムノーサスであってもよいが、これに制限されない。
【0015】
本発明の他の具現例として、前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であってもよいが、これに制限されない。
【0016】
本発明のまた他の具現例として、前記代謝疾患は、肥満、代謝症侯群、高インスリン血症、高脂質血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、異常脂質血症、糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎及び動脈硬化症からなる群より選択される一つ以上の疾患であってもよい。
【0017】
本発明のまた他の具現例として、前記小胞は、平均直径が10~1000nmであってもよい。
【0018】
本発明のまた他の具現例として、前記小胞は、ラクトバチルス属細菌培養液で分離されるものであってもよい。
【0019】
本発明のまた他の具現例として、前記小胞は、ラクトバチルス属細菌を添加して製造した食品から分離した小胞を用いたものであってもよい。
【0020】
本発明のまた他の具現例として、前記小胞は、ラクトバチルス属細菌から自然的に又は人工的に分泌されるものであってもよい。
【0021】
また、本発明は、前記組成物を個体に投与する段階を含む、代謝疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む組成物の代謝疾患の予防又は治療用途を提供する。
【0023】
また、本発明は、代謝疾患の予防又は治療薬剤の製造のためのラクトバチルス属細菌由来小胞の用途を提供する。
【0024】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、筋肉疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、筋機能改善用食品組成物を提供する。
【0026】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、運動遂行能力の向上用食品組成物を提供する。
【0027】
本発明の一具現例として、前記ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・パラカセイ又はラクトバチルス・ラムノーサスであってもよい。
【0028】
本発明の他の具現例として、前記筋肉疾患は、緊張減退症(atony)、筋委縮症(muscular artrophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)、筋無力症、悪液質(cachexia)及び筋肉減少症(sarcopenia)からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0029】
また、本発明は、前記組成物を個体に投与する段階を含む、筋肉疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む組成物の筋肉疾患の予防又は治療用途を提供する。
【0031】
また、本発明は、筋肉疾患の予防又は治療薬剤の製造のためのラクトバチルス属細菌由来小胞の用途を提供する。
【0032】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、筋機能の改善又は運動遂行能力の向上方法を提供する。
【0033】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む組成物の筋機能の改善又は運動遂行能力の向上用途を提供する。
【0034】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来小胞の筋機能の改善又は運動遂行能力の向上のための薬剤の製造のための用途を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明者らは、高脂肪西洋式食餌(high fat western diet)による代謝疾患動物モデルにラクトバチルス属細菌由来の小胞を投与したとき、体重及び食事量を減少させるだけでなく、西洋式食餌による代謝障害を効率的に抑制し、筋肉細胞ではAMPKシグナルを活性化して代謝ストレスに対する恒常性を増加させることを確認したところ、本発明によるラクトバチルス属細菌由来の小胞は、肥満、代謝症侯群、高インスリン血症、高脂質血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、異常脂質血症、糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎及び動脈硬化症などの代謝疾患及び筋肉疾患を予防、症状改善又は治療するための医薬品又は健康機能食品などの開発に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、ラクトバチルス・パラカセイ培養液で分離した小胞に含有されたタンパク質パターンをSDS-PAGE及び銀染色法で分析した図である。
【0037】
【
図2】
図2は、ラクトバチルス・パラカセイ小胞に蛍光を標識し、これを経口で投与した後小胞の分布様相を評価した図である。
【0038】
【
図3】
図3は、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルでラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞を経口で投与した後に代謝疾患の治療効果を確認するための実験プロトコルである。
【0039】
【
図4】
図4は、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルでラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞を経口で直接投与した後に体重変化を観察した結果である。
【0040】
【
図5】
図5は、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルで多様な濃度のラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞(MDH-001)を経口で投与した後に代謝疾患の治療効果に対する濃度依存性を評価するための実験プロトコルである。
【0041】
【
図6】
図6は、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルで多様な濃度のラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞を経口で直接投与した後に体重変化及び飲食摂取量を評価した結果である。
【0042】
【
図7】
図7は、筋肉細胞(myocyte)にメトホルミン(metformin)、大腸菌由来小胞(EcEV)、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L-EV)を投与した後、ブドウ糖受容体であるGLUT4 transporterの発現程度を評価した結果である。
【0043】
【
図8】
図8は、筋肉細胞(myocyte)にインスリン、メトホルミン(metformin)、大腸菌由来小胞(EcEV)、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L-EV)を投与した後、筋肉細胞でブドウ糖の吸収程度を評価した結果である。
【0044】
【
図9】
図9は、筋肉細胞(myocyte)にインスリン、メトホルミン、多様な濃度のラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L paracasei EV)を処理した後1時間目にAMPKの活性化を評価した結果である。
【0045】
【
図10】
図10は、筋肉細胞(myocyte)にインスリン、メトホルミン、多様な濃度のラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞(L rhamnosus EV)を処理した後1時間目にAMPKの活性化を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明者らは、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルで、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を経口で投与したとき、飲食摂取量が減少して体重増加が用量依存的に抑制されることを確認した。
【0047】
本発明のまた他の実施例では、高脂肪食餌により誘導された代謝疾患マウスモデルで、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を経口で投与したとき、空腹時の血糖が抑制されることを確認した。
【0048】
本発明のまた他の実施例では、筋肉細胞にラクトバチルス属細菌由来の小胞を投与したとき、インスリン抵抗性の指標であるGLUT4の発現及び筋肉細胞でのブドウ糖の吸収が小胞により増加することを確認した。
【0049】
本発明のまた他の実施例では、筋肉細胞にラクトバチルス属細菌由来の小胞を投与したとき、小胞によるインスリン抵抗性が増加する機構がAMPK活性化と関係があることを確認した。
【0050】
これにより、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む代謝疾患又は筋肉疾患の予防、改善又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0051】
本発明で、前記ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)又はラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0052】
本発明で用いられる用語「小胞(extracellular vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの脂質膜からなる構造物を意味し、本発明では、ラクトバチルス属細菌から自然的に分泌されるか、人工的に生産された膜からなる全ての構造物を総称する。前記小胞は、ラクトバチルス属細菌の菌体を含む培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動及びキャピラリー電気泳動からなる群より選択された一つ以上の方法を用いて分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含むことができる。
【0053】
本発明の前記小胞は、ラクトバチルス属細菌の培養液又はラクトバチルス属細菌を添加して製造した食品から分離され得、ラクトバチルス属細菌から自然的に又は人工的に分泌されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明の前記小胞は、ラクトバチルス属細菌の培養液又はラクトバチルス属細菌を添加して製造した食品から分離され得、ラクトバチルス属細菌から自然的に又は人工的に分泌されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明の前記ラクトバチルス属細菌の培養液又は発酵食品から小胞を分離する方法は、小胞を含めば特に制限されない。例えば、遠心分離、超高速遠心分離、フィルターによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動又はキャピラリー電気泳動などの方法、及びこれらの組み合わせを用いて小胞を分離することができ、また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含むことができる。
【0056】
本発明で前記方法により分離した小胞は、平均直径が10~1000nm、10~900nm、10~800nm、10~700nm、10~600nm、10~500nm、10~400nm、10~300nm、10~200nm、20~1000nm、20~900nm、20~800nm、20~700nm、20~600nm、20~500nm、20~400nm、20~300nm、20~200nm、30~1000nm、30~900nm、30~800nm、30~700nm、30~600nm、30~500nm、30~400nm、30~300nm、30~200nm、40~1000nm、40~900nm、40~800nm、40~700nm、40~600nm、40~500nm、40~400nm、40~300nm、40~200nm、20~180nm、30~180nm、40~180nm、20~170nm、20~160nm、40~160nm、45~155nm又は50~150nmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明で用いられる用語「代謝疾患(metabolic disease)」とは、生体内での物質代謝障害により発生する疾患を総称する。一般的に、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、電解質及び水分などの不均衡により発生するが、代表的な例としては、肥満、代謝症侯群、高インスリン血症、高脂質血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、異常脂質血症、糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎及び動脈硬化症などがある。
【0058】
本発明で用いられる用語「筋肉疾患」とは、筋肉の消耗又は退化による疾患を意味することができるが、これに制限されるものではない。本発明で前記筋肉疾患は、緊張減退症(atony)、筋委縮症(muscular artrophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)、筋無力症、悪液質(cachexia)及び筋肉減少症(sarcopenia)からなる群より選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。筋肉の消耗及び退化は、遺伝的要因、後天的要因、老化などを原因として発生する。本発明の組成物は、筋肉増加の促進効果を有し、筋肉はその種類を制限しない。筋肉増加は、身体成分の中でも特に筋肉の性能を向上させるものであって、肉体的運動及びスタミナ向上を通じて筋肉量を増加させ得、筋肉増加効果を有する物質を体内に投与する方式で筋肉量を増加させ得る。
【0059】
本発明の組成物内の前記小胞の含量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などによって適切に調節可能であり、例えば、全体組成物の重量を基準として0.0001~99.9重量%又は0.001~50重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記含量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とした値である。
【0060】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常的に用いる適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質及び制御放出添加剤からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0061】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶顆粒剤、液剤、点眼剤、エルシリック剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟稠エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液又はエアロゾルなどの外用剤などの形態で剤形化して用いられ得、前記外用剤は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤又はカタプラズマ剤などの剤形を有することができる。
【0062】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギナート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0063】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。
【0064】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤として、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、ジ-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、尿素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモーゼルなどの賦形剤;ゼラチン、アラビアゴム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、澱粉糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が用いられ得、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシ澱粉、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、ポリ酢酸ビニル、ホルムアルデヒド処理カゼイン及びゼラチン、アルギン酸、アミロース、グァーガム、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化澱粉、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジ-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸などの崩壊剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG6000、流動パラフィン、水添大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、澱粉、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、dl-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤;が用いられ得る。
【0065】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロルアミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが用いられ得る。
【0066】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類や甘味剤などが用いられ得、必要に応じて、芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが用いられ得る。
【0067】
本発明による乳剤には、精製水が用いられ得、必要に応じて、乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが用いられ得る。
【0068】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が用いられ得、必要に応じて、界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が用いられ得る。
【0069】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、PEG、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、不揮発性油ごま油、綿実油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸及びその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基及びその塩(アンモニア及び酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張化剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミン四酢酸のような安定剤;ソジウムビスルファイド0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;シーエムシーナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含むことができる。
【0070】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツイン又はスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブーテュールムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コートマ(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロホスタール(Idropostal)、マサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタール-エン、パラマウンド-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スフォスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゼスタトリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が用いられ得る。
【0071】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムスチレートタルクのような潤滑剤なども使用される。
【0072】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが用いられ得る。
【0073】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定され得る。
【0074】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。前記要素を全て考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは本発明が属する技術分野において通常の技術者により容易に決定され得る。
【0075】
本発明の薬学的組成物は、個体に様々な経路で投与され得る。投与の全ての方式は、予想できるが、例えば、経口服用、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、脊髄周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口又は鼻を通じた噴霧、皮膚投与、経皮投与などによって投与され得る。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子と共に活性成分である薬物の種類によって決定される。具体的に、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わることができ、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは、0.01~100mgを毎日又は隔日投与するか、1日1~3回に分けて投与することができる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減され得るので、前記投与量がどのような方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
本発明で「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非-ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0078】
本発明で「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0079】
本発明で「予防」とは、目的とする疾患の発症を抑制するか、遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常の症状が好転するか、有益に変更される全ての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメータ、例えば、症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0080】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、代謝疾患又は筋肉疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0081】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、筋機能改善用食品組成物を提供する。
【0082】
また、本発明は、ラクトバチルス属細菌由来の小胞を有効成分として含む、運動遂行能力向上用食品組成物を提供する。
【0083】
筋機能改善は、筋肉量の増加、筋力強化、筋疲労回復能など筋肉の根本的性質又は機能を強化することを意味する。
【0084】
本明細書で「筋」は、すじ、筋肉、腱を包括的に指称し、「筋機能」は、筋肉の収縮により力を発揮する能力を意味し、筋肉が抵抗に打ち勝つために最大限に収縮力を発揮し得る能力である筋力、筋肉が与えられた重量にどれだけの間又は何回収縮と弛緩を繰り返すことができるかを示す能力である筋持久力、短時間内に強い力を発揮する能力である瞬発力を含む。このような筋機能は、肝臓が主管し、筋肉量に比例する。用語「筋機能改善」は、筋機能を一層よく向上させることを言う。
【0085】
本明細書で用語「運動遂行能力の向上」とは、筋力、筋持久力のような筋機能の向上効果を意味するものであり、好ましくは、筋力又は筋持久力が増加されることである。したがって、前記組成物は、運動遂行可能時間(exercise endurance)増加、筋力強化、均衡感覚増進及び/又は運動適応能力(exercise adaptation)増進の効果がある。エネルギー消費を促進して運動遂行能力の向上のための代表的な方法のうち一つとしては、ミトコンドリアによる脂肪酸酸化(fatty acid oxidation)を増加させてATPエネルギーを生成させる方法がある。AMPK、pAMPK、PPARδ、ERRα及びTfamなどが運動遂行能力の向上と関連がある因子として知られている。
【0086】
前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0087】
本発明の前記小胞を食品添加物として用いる場合、そのまま添加したり他の食品又は食品成分と共に用いることができ、通常の方法により適切に用いることができる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって適切に決定され得る。一般的に、食品又は飲料の製造時に本発明の小胞は、原料に対して15重量%以下又は10重量%以下の量で添加され得る。しかし、健康及び衛生を目的としたり又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性面で何らの問題がないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも用いられ得る。
【0088】
前記食品の種類には、特に制限はない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常的な意味での健康機能食品を全て含む。
【0089】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖及び果糖のようなモノサッカライド、マルトース及びスクロースのようなジサッカライド、デキストリン及びシクロデキストリンのようなポリサッカライド、及びキシリトール、ソルビトール及びエリスリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを用いることができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01~0.20g又は約0.04~0.10gである。
【0090】
前記以外に本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立的に又は組み合わせて用いることができる。このような添加剤の割合は、大きく重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0091】
<発明の実施のための形態>
【0092】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解させるために提供するものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
実施例1.ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の分離
【0094】
代表的なラクトバチルス属細菌であるラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)及びラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)由来小胞(extracellular vesicle;EV)を分離するために、前記ラクトバチルス菌株をMRS(de Man-Rogosa and Sharpe)培地に接種し、37℃で200rpmで吸光度(OD600nm)が1.0~1.5となるまで培養した後、LB(Luria Bertani)培地に再接種して培養した。そして、菌体が含まれている培養液を回収し、10,000gで4℃で20分間遠心分離して菌体が除去された上層液を獲得した。獲得された上層液は、再び0.22μmのフィルターを用いて濾過し、濾過した上層液は、100kDa Pellicon 2 Cassetteフィルターメンブレン(Merck Millipore)とMasterFlex pump system(Cole-Parmer)を用いて50mL以下の体積で濃縮した。濃縮させた上層液は、再び0.22μmのフィルターを用いて濾過し、ラクトバチルス細菌由来小胞を分離した。以下の実施例では、分離された前記小胞を用いて実験を進行した。
【0095】
実施例2.ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の特性分析
【0096】
前記実施例1の方法で獲得したラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)由来小胞(extracellular vesicle;EV)の特性を確認するために、タンパク質の定量、粒子のサイズ及び分布測定とタンパク質パターン分析を実施した。
【0097】
BCA方法を利用したタンパク質定量の結果、平均タンパク質濃度は、3~5mg/mlであると確認された。また、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞のサイズと分布を確認するために、Malvern Panalytical社のNS300器機を利用してNTA(Nanoparticle Tracking Analysis)分析を進行した。タンパク質の濃度基準として試料の濃度を1mg/mlに希釈した後、particles/frame値を20~100に調節するために試料を100~2000倍に希釈した。
【0098】
その結果、細胞外小胞のサイズは、50~150nmであり、1ml当たり1.0E+11 Particles/ml以上の粒子を含量していることが確認された。
【0099】
また、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞のタンパク質パターンを確認するために、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)及び銀染色を進行した。
【0100】
図1に示したように、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞が主要な五つのバンド(130、95、85、70、45kDa付近)で観察されることを確認した。
【0101】
実施例3.ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の薬動学的特性
【0102】
ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞を経口投与するときの全身吸収及び分布様相などの薬動学的特性を確認するために、次のような方法で体内分布を確認した。
【0103】
蛍光体Cy7で標識したラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞をマウスに口腔投与し、0、1、3、6、24、32、48、56、72時間後に多様な臓器に浸潤された様相を確認するために、血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、胃腸管、脳を採取した。採取した組織で光学映像装備(Davinch-Invivo Fluoro Chemi(western);Davinch-K)を用いて蛍光シグナルを観察した。
【0104】
図2に示したように、ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞を投与した後1時間程度で胃に吸収され、3時間目には、胃、小腸、大腸、肺に分布し、3時間以後からは、肝臓との脳にも分布することを確認した。すなわち、多数の組織で32時間から48時間まで細胞外小胞の蛍光シグナルが持続的に観察される結果を通じて、細胞外小胞を経口投与する場合、48時間まで胃、腸、肺、肝臓、脳など全身にわたって分布することを確認した。
【0105】
実施例4.高脂肪食餌で誘導された代謝疾患マウスでのラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の肥満治療効果
【0106】
前記実施例1で得られたラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞が高脂肪食餌により誘導された代謝疾患を抑制するか否かを確認するために、次のような方法で実験を遂行した。
【0107】
具体的に、
図3に示した実験プロトコルによって、正常食餌(Regular diet;RD)を与えた正常マウスと、高脂肪食餌(High fat diet;HFD)を四ヶ月の間与えて代謝疾患を発生させた。代謝疾患モデルに実施例1で得られたラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞をマウス当たり10μgずつ3週間二日間隔で投与した。このとき、陰性対照群(negative control、NC)には正常食餌を投与し、陽性対照群(Obese)には高脂肪食餌を投与した。対照薬物として、ラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞(L.rhamnosus)、ラクトコッカス・ラクティス由来小胞(L.lactis)、プロテウス・ミラビリス由来小胞(P.mirabilis)をラクトバチルス・パラカセイ由来小胞と同一の量で経口投与した。また、二日間隔で小胞を投与すると同時に体重を測定した。
【0108】
図4に示したように、薬物を投与しない高脂肪食餌摂取の陽性対照群(Obese)に比べてラクトバチルス・パラカセイ由来小胞を投与したグループ(L.paracasei)とラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞を投与したグループ(L.rhamnosus)で体重が減少し、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞を摂取したグループが体重の減少が一層著しかった。
【0109】
一方、プロテウス・ミラビリス由来の小胞を投与したグループ(P.mirabilis)は、高脂肪食餌の陽性対照群と類似する体重を示し、高脂肪食餌のみ与えたものと比較してむしろ体重を増加させる傾向を示した。ラクトコッカス・ラクティス由来小胞を投与したグループ(L.lactis)は、弱い体重減少效果を示した。
【0110】
実施例5.高脂肪食餌で誘導された代謝疾患マウスでのラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の治療効果に対する用量依存性
【0111】
ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞の投与用量による高脂肪食餌により誘導された代謝疾患の治療効能を評価するために、次のような方法で実験を実行した。
【0112】
図5のように、高脂肪食餌(60% High fat diet;HFD)を2週間与えて肥満及び糖尿病を誘導したマウスモデルを製造し、実施例1で得られたラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(MDH-001)をマウスの重さ(g)当たり3、10、30mg/kgの用量で8週間投与した。このとき、陽性対照群(positive control)としては、高脂肪食餌(60% High fat diet;HFD)を2週間与えて肥満及び糖尿病を誘導したマウスモデルにPBSを投与したマウスグループを用いた。二日間隔で小胞を投与すると同時に体重を測定した。
【0113】
図6に示したように、8週間投与した小胞の用量が多いほど体重が減少する効果が明らかに現われることを確認し、30mg/kgの小胞を投与したマウスグループでは、PBSを投与したマウスグループに比べて体重が約5~7%減少したことを確認した。また、飲食摂取量も投与した小胞の用量依存的に減少する効果を確認した。
【0114】
前記結果から、ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞は、用量依存的に肥満を抑制し、これは飲食摂取量の減少と関係があることを確認した。
【0115】
実施例6.ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞が筋肉細胞でブドウ糖代謝に及ぼす影響
【0116】
ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞が筋肉細胞でブドウ糖運送タンパク質(GLUT4)の発現に及ぼす影響を評価するために、体外で筋肉細胞に10μg/mlのラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L-EV)を1時間の間処理した。その後、GLUT4の細胞膜に発現程度をo-フェニレンジアミン(OPD)アッセイで測定した。対照群として大腸菌由来小胞(EcEV)及びメトホルミンを用いた。
【0117】
その結果、
図7に示したように、GLUT4の発現が大腸菌由来小胞(EcEV)によっては増加しなかったが、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞とメトホルミン(metformin)によっては増加したことを確認した。
【0118】
また、ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞が筋肉細胞でブドウ糖代謝に及ぼす影響を評価するために、体外で筋肉細胞に10μg/mlのラクトバチルス・パラカセイ由来小胞を1時間の間処理した。その後、ブドウ糖吸収量を放射線同位元素で確認した。
【0119】
その結果、
図8に示したように、大腸菌由来小胞(EcEV)によってはブドウ糖吸収量が増加しなかったが、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L-EV)とメトホルミン(metformin)によっては増加した。
【0120】
前記の結果から、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞は、筋肉細胞のようなインスリン作用臓器でインスリン抵抗性を抑制してインスリン反応性を増加させることが分かった。
【0121】
実施例7.ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞が筋肉細胞でAMPKの活性化に及ぼす影響
【0122】
空腹や運動時に筋肉細胞でエネルギーが枯渇してATP生成は減り、AMP生成は増加するようになる。このとき、細胞ではAMPKシグナルを活性化して代謝ストレスに対する恒常性を増加させるという事実はよく知られている。ラクトバチルス・パラカセイ由来の小胞による肥満及びインスリン抵抗性の抑制効果がAMPKシグナルと関係があるか否かを評価するために、次のような方法で実験を行った。すなわち、体外で筋肉細胞にラクトバチルス・パラカセイ由来小胞(L-EV)を0、0.1、1、10μg/mlの濃度で1時間の間処理した。その後、AMPKシグナル伝逹指標であるAMPKのリン酸化(pAMPK)程度をウェスタンブロットで測定した。対照薬物としてインスリン(insulin)とメトホルミン(metformin)を用いた。
【0123】
その結果、
図9に示したように、pAMPKの発現が対照薬物であるインスリンによっては抑制され、メトホルミンによっては増加した。また、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞を処理した場合には、pAMPKの発現が小胞の濃度に依存的に増加した。これは、ラクトバチルス・パラカセイ由来小胞の肥満及びインスリン抵抗性の抑制効果が代謝ストレスにより細胞の恒常性を維持するAMPKシグナルと密接な関係があることを意味する。
【0124】
実施例8.ラクトバチルス・ラムノーサス由来の小胞が筋肉細胞でAMPKの活性化に及ぼす影響
【0125】
ラクトバチルス・ラムノーサス由来の小胞による肥満及びインスリン抵抗性の抑制効果がAMPKシグナルと関係があるか否かを評価するために、次のような方法で実験を行った。すなわち、体外で筋肉細胞にラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞(L-EV)を0、0.1、1、10μg/mlの濃度で1時間の間処理した。その後、AMPKシグナル伝逹指標であるAMPKのリン酸化(pAMPK)程度をウェスタンブロットで測定した。対照薬物としてインスリン(insulin)とメトホルミン(metformin)を用いた。
【0126】
その結果、
図10に示したように、pAMPKの発現が対照薬物であるインスリンによっては抑制され、メトホルミンによっては増加した。また、ラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞を処理した場合には、pAMPKの発現が小胞の濃度に依存的に増加した。これは、ラクトバチルス・ラムノーサス由来小胞の肥満及びインスリン抵抗性の抑制効果が代謝ストレスにより細胞の恒常性を維持するAMPKシグナルと密接な関係があることを意味する。
【0127】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明者らは、高脂肪西洋式食餌(high fat western diet)による代謝疾患動物モデルにラクトバチルス属細菌由来の小胞を投与したとき、体重及び食事量を減少させるだけでなく、西洋式食餌による代謝障害を効率的に抑制し、筋肉細胞では、AMPKシグナルを活性化して代謝ストレスに対する恒常性を増加させることを確認したところ、本発明によるラクトバチルス属細菌由来小胞は、代謝疾患及び筋肉疾患を予防、症状改善又は治療するための医薬品又は健康機能食品などの開発に有用に利用され得るので、産業上利用可能性がある。