(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】放電制御回路
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240327BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02H3/08 N
(21)【出願番号】P 2023529345
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023856
(87)【国際公開番号】W WO2022269832
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507307651
【氏名又は名称】榊原 和征
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】榊原 和征
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009339(JP,A)
【文献】特開平11-108969(JP,A)
【文献】特開2014-027803(JP,A)
【文献】特開2016-082642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H3/08-3/253
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
B60L1/00-3/12
B60L5/00-5/42
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリチウムイオン二次電池セルが直列接続された電池セル群と前記電池セル群の放電出力を出力または停止する通電遮断素子とを有し
て負荷へ電力を供給する電池モジュール
が複数個接続されて電池モジュール群を構成し、
前記電池モジュール群のうちの少なくとも1個の電池モジュールからの放電電流
が前記電池モジュールの
前記リチウムイオン二次電池セルの電圧または温度に応じて決定される電流閾値を超えた場合に、前記通電遮断素子を用いて前記電池モジュール群の
全ての前記電池モジュールの放電出力を停止
し、
前記電流閾値は、
電流値軸および放電時間軸から成る2軸に対して下に凸の曲線であり、かつ、前記電圧または前記温度に応じて前記電池モジュール群のうちの少なくとも1個の電池モジュールの少なくとも1個の前記リチウムイオン二次電池セルのセル単位あたりの前記電圧が相対的に高い場合または前記温度が相対的に高い場合に前記曲線が前記放電時間軸の相対的に下方向および前記電流値軸の相対的に下方向へシフトする、放電制御回路。
【請求項2】
前記負荷は電気自動車のモータ駆動回路である
、請求項
1に記載の放電制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、内燃機関すなわちエンジンで駆動するエンジン駆動式自動車がモータで駆動する電気自動車に置き換わりつつある。特に、モータを駆動するための電池電源にエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車は重量物を駆動するために大電流を要するモータ駆動システムを有する特性上、電気自動車の駆動中のばらつき等によりリチウムイオン二次電池の放電中にその放電電流が前記発火リスクの原因となる過電流領域に入る可能性が少なからずあるため、適切な放電制御により発火リスクを回避することが重要な課題である。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、適切な放電制御を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、放電制御回路であって、電池セル群と前記電池セル群の放電出力を出力または停止する通電遮断素子とを有し、負荷へ電力を供給する電池モジュールと接続され、前記電池モジュールからの放電電流が、前記電池モジュールの電圧または温度に応じて決定される電流閾値を超えた場合に、前記通電遮断素子を用いて前記電池モジュール群の放電出力を停止する。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な放電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るう電池モジュール2の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るう放電制御回路100の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るう放電制御回路100のリチウムイオン二次電池の過電流放電時の安全特性の概略を示すグラフ図である。
【
図4】本実施形態に係るう放電制御回路充電101の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るう放電制御回路101のメインコントローラ12の制御の概略を示すフローチャート図である。
【
図6】本実施形態に係るう放電制御回路101のリチウムイオン二次電池の過電流放電時の安全特性の概略を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、電池モジュール2は、複数のリチウムイオン二次電池セルが直列接続された高電圧定格の電池セル群1Hを、その放電出力を出力または停止する通電遮断素子としてのFET4を介して端子5に接続する。モジュールコントローラ3は、電池セル群1Hの電圧、または、電池セル群1Hの電流、すなわち、シャント抵抗6の両端に現れる電圧を検知して、その検知結果に応じてFET4をオンまたはオフに操作し端子5からの放電出力の出力または停止を制御する。
【0011】
図2に示すように、放電制御回路100は、複数の電池モジュール2を直列接続して電池モジュール2群を構成し、前記電池モジュール2群の出力電圧をヒューズ8を介して負荷9へ印加する。前記負荷9は、例えば、図示しない電気自動車のモータおよびインバータを備えるモータ駆動回路である。
【0012】
図3に示すように、リチウムイオン二次電池は、過電流放電時に、所定値を超える電流値で所定時間以上放電を継続すると電池セル内部の異常発熱に起因して発火に至ることがある。前記電流値が相対的に小さいほど過電流放電開始から発火に至るまでの時間は相対的に長くなる特性を有し、その過電流の電流値と前記放電開始から発火に至るまでの時間との関係すなわち安全特性は、電流値軸と時間軸で成る2軸に対して概ね下に凸の曲線で描かれる実線1となる。
【0013】
リチウムイオン二次電池の過電流放電による発火を防ぐ目的として放電経路にヒューズを介する例があるが、特に、前記ヒューズのトリップ特性、すなわち、通電電流値と通電開始からヒューズエレメントの溶断に至るまでの時間との関係は点線2で示すような特性の物もあり、前記リチウムイオン二次電池と前記ヒューズとの組み合わせ次第では、例えば、
図3における電流値Ixのような電流値の比較的小さい領域でヒューズエレメントが溶断することなくリチウムイオン二次電池が先に発火することがあり、さらには、過電流放電開始前の充電時のばらつきまたは電池モジュール内の電池セル間の残容量ばらつきに伴う過充電状態すなわち過電圧状態の場合、または、放電時の前記電池モジュールの温度が高い場合は、実線2に示すように前記発火に至るまでの時間が全体的に短くなる方向にシフトする特性をも有し、前記様々な条件に対して変化する安全特性に対して前記発火を回避する安全設計マッチングの課題が重要である。
【0014】
図4に示すように、放電制御回路101は、前記放電回路100のヒューズ8を削除した構成に等しく、メインコントローラ12が、絶縁性通信信号3を用いて電池モジュール2と通信をそれぞれ行い前記電池モジュール2内の情報を取得し、後述のフローチャート図に従い必要に応じて前記電池モジュール2内のFET4をオンまたはオフに操作するように指示する。これにより、ハードウェアを変更せずソフトウェアの改良により安全性の向上とコストアップの抑制の両立を実現する。
【0015】
前記放電回路101のメインコントローラ12の制御について、次に、
図5のフローチャート図を用いて説明する。
【0016】
放電回路101のメインコントローラ12は、Step1にて、負荷9が駆動しているか否かを検知する。前記負荷9の駆動の検知はメインコントローラ12が図示しない通信を用いて負荷9の状態を検知する方法、または、絶縁性通信信号3を用いて電池モジュール2の放電電流を検知する方法を用いても良い。Step1にて、前記負荷9が駆動していない、すなわち、電気自動車が停車中または充電完了後であると判定するとStep2へ移行し、電池モジュール2内の電池セル群1Hの電圧を検知する。電池モジュール2群の内のいずれか1個の電池モジュール2の電池セル群1H少なくとも1個のリチウムイオン二次電池セルの電圧が所定値を超えたと判定するとStep4へ移行し過電流判定閾値としてトリップ特性Bを選択する一方、前記電池モジュール2群のいずれか1個前記リチウムイオ二次電池セルのの電圧が所定値を超えていないと判定するとStep5へ移行し過電流判定閾値としてトリップ特性Aを選択および記憶し、Step1へ帰還する。
【0017】
前記過電流判定閾値としてトリップ特性AまたはBを選択した後のStep1にて、負荷9が駆動しているか否かを検知する。前記負荷9が駆動中すなわち電気自動車が走行中であると判定した場合、Step6へ移行し電池モジュール22の放電電流値を測定しStep7へ移行する。Step7にて、電池モジュール2の電池セル群1Hの温度を検知し、前記電池セル群1Hの温度が所定値を超えたと判定した場合にStep8に移行して前記過電流判定閾値としてトリップ特性Cを選択する一方、前記電池セル群1Hの温度が所定値を超えていないと判定した場合にStep9に移行して前記過電流判定閾値としてトリップ特性Bを選択する。前記トリップ特性BおよびCは、
図6のグラフ図に示す電流値軸と時間軸で成る2軸に対して下に凸の曲線を描く二点鎖線Bおよび二点鎖線Cであり、実線1で示すリチウムイオン二次電池の発火特性が電池セルの温度に応じて発火に至る時間が短縮されることに対応するものとなる。Step10では、電池モジュール2の放電電流および放電時間が、以前のStepで選択されたトリップ特性BまたはCを超えるか否かを検知し、前記トリップ特性BまたはCを超えたと判定するとStep11へ移行し全ての電池モジュール2のFET4をオフに操作して電池モジュール2群の出力を停止する。
【0018】
これらによって、電池セルの電圧および温度に応じて過電流放電時に発火に至る時間が変化する特性も全て含めて発火を未然に防止でき電気自動車の安全性を向上できる。
【0019】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0020】
12 メインコントローラ
100 放電制御回路
101 放電制御回路