(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 64/00 20060101AFI20240327BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20240327BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240327BHJP
D06N 3/14 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08G64/00
C08G63/64
C08G18/44
D06N3/14 101
(21)【出願番号】P 2023515502
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2022018339
(87)【国際公開番号】W WO2022224996
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021072116
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】星野 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】川合 康文
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025038(JP,A)
【文献】特開2020-172565(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069563(WO,A1)
【文献】特開2016-113528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0339746(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102002142(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64
C08G63
C08G18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、下記式(式1)を満た
し、
酸価が0.001mg-KOH/g以上0.8mg-KOH/g以下であり、
過酸化物含有量が10meq/kg以下である、
ポリカーボネートジオール組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であ
る。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化2】
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化3】
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化4】
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
xy≧3.7×α (α=22.4×Mn
-0.41) ・・・(式1)
((式1)中、xは前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量(質量%)に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量(質量%)の割合であり、yはポリカーボネートジオール組成物の濁点滴定方法での滴定量(mL)であり、Mnはポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量である。)
【請求項2】
下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、40質量%以上であり、濁点滴定方法での滴定量が4.0mL以上9.5mL以下であ
り、
酸価が0.001mg-KOH/g以上0.8mg-KOH/g以下であり、
過酸化物含有量が10meq/kg以下である、
ポリカーボネートジオール組成物。
【化5】
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であ
る。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化6】
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化7】
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化8】
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、5質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項4】
前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、40質量%以上90質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項5】
JIS K0071-1(2017)に準拠ハーゼン色数の値(APHA値)が100以下である、請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項6】
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、一般式(II)で表される繰り返し構造単位の繰り返し数n21の平均値が15以上である、請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項7】
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、少なくとも一般式(II)若しくは(IV)で表される繰り返し構造単位を含む、請求項1又は2に記載
のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項8】
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、少なくとも一般式(II)で表される繰り返し構造単位を含む、請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物を用いてなるポリウレタン。
【請求項10】
前記ポリウレタンの引張試験による100%伸長時応力について、下記式(B)で算出されるΔMが1.0以上19.0以下である、請求項
9に記載のポリウレタン。
ΔM=M1-M2 ・・・(B)
(式(B)中のM1は-20℃条件下での引張試験の100%伸長時応力であり、M2は23℃条件下での引張試験の100%伸長時応力を表す。)
【請求項11】
請求項
9に記載のポリウレタンを含む、合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートジオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂は、合成皮革、人工皮革、接着剤、家具用塗料、自動車用塗料等の幅広い領域で使用されている。ポリウレタン樹脂の原料のうち、イソシアネートと反応させるポリオール成分としてポリエーテルやポリエステル、ポリカーボネートが用いられている。しかしながら、近年、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐溶剤性や耐日焼け止め性、耐傷付き性等、ポリウレタン樹脂の耐性への要求が高まっている。
【0003】
非特許文献1によれば、一般的に、ポリオール成分としてポリエーテルポリオールは低粘度である。そのため、ポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンは柔軟性、耐加水分解性に優れるものの、耐熱性や耐候性が劣るとされている。また、ポリエステルポリオールを用いたポリウレタンは耐熱性、耐候性は改善されるものの、耐加水分解性に劣る。これに対し、ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタンは耐熱性や耐薬品性や耐加水分解性などの耐久性において最良の耐久グレードとされているが、高粘度でハンドリング性に改善の余地がある。
【0004】
上記課題を解決するため、ポリカーボネートポリオールにエーテル結合やエステル結合を導入する検討が種々提案されている。例えば、特許文献1には、ポリカーボネートジオールをエステル交換反応させることで共重合ポリカーボネートジオールを合成する製造方法、また、特許文献2には特定の構造を有するポリエステルポリオールが記載されている。また、特許文献3には特定のポリカーボネートジオール組成物を使用した塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-252420号公報
【文献】特開2019-151813号公報
【文献】国際公開第2019/131617号
【非特許文献】
【0006】
【文献】“ポリウレタンの材料選定、構造制御と改質 事例集”51項~62項 (株)技術情報協会出版、2014年12月 第1版発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、共重合ポリカーボネートジオールの色調に改善の余地があり、また、他のポリオールや溶剤との相溶性に課題が残っている。また、特許文献3に記載の技術では、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、反応の進行と完了確認とをGPC測定にて行っているが、品質の安定性については更なる改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、品質の安定性に優れ、着色が少なく、他のポリオールや溶剤等との相溶性に優れたポリカーボネートジオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリカーボネートジオール組成物が、特定の条件を満たすことで上記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1]
下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、下記式(式1)を満たすポリカーボネートジオール組成物。
【化1】
・・・(I)
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化2】
・・・(II)
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化3】
・・・(III)
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化4】
・・・(IV)
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
xy≧3.7×α (α=22.4×Mn
-0.41) ・・・(式1)
((式1)中、xは前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量(質量%)に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量(質量%)の割合であり、yはポリカーボネートジオール組成物の濁点滴定方法での滴定量(mL)であり、Mnはポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量である。)
[2]
下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、40質量%以上であり、濁点滴定方法での滴定量が4.0mL以上9.5mL以下である、ポリカーボネートジオール組成物。
【化5】
・・・(I)
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化6】
・・・(II)
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化7】
・・・(III)
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化8】
・・・(IV)
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
[3]
前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、5質量%以上95質量%以下である、[1]に記載のポリカーボネートジオール組成物。
[4]
前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、40質量%以上90質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[5]
酸価が0.001mg-KOH/g以上0.8mg-KOH/g以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[6]
過酸化物含有量が10meq/kg以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[7]
JIS K0071-1(2017)に準拠ハーゼン色数の値(APHA値)が100以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[8]
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、一般式(II)で表される繰り返し構造単位の繰り返し数n21の平均値が15以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[9]
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、少なくとも一般式(II)若しくは(IV)で表される繰り返し構造単位を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[10]
前記一般式(II)~(IV)で表される繰り返し構造単位のうち、少なくとも一般式(II)で表される繰り返し構造単位を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物を用いてなるポリウレタン。
[12]
前記ポリウレタンの引張試験による100%伸長時応力について、下記式(B)で算出されるΔMが1.0以上19.0以下である、[11]に記載のポリウレタン。
ΔM=M1-M2 ・・・(B)
(式(B)中のM1は-20℃条件下での引張試験の100%伸長時応力であり、M2は23℃条件下での引張試験の100%伸長時応力を表す。)
[13]
[11]又は[12]に記載のポリウレタンを含む、合成皮革。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、品質の安定性に優れ、着色が少なく、溶剤やその他のポリオールとの相溶性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
[ポリカーボネートジオール組成物]
本実施形態の第1のポリカーボネートジオール組成物は、下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(I)」とも記す。)を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(II)」とも記す。)、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(III)」とも記す。)、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(IV)」とも記す。)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、下記式(式1)を満たす。
【化9】
・・・(I)
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化10】
・・・(II)
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化11】
・・・(III)
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化12】
・・・(IV)
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
xy≧3.7×α (α=22.4×Mn
-0.41) ・・・(式1)
((式1)中、xは前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量(質量%)に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量(質量%)の割合であり、yはポリカーボネートジオール組成物の濁点滴定方法での滴定量(mL)であり、Mnはポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量である)
【0014】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、このような特徴を有することにより、品質の安定性に優れ、溶剤やその他のポリオールとの相溶性に優れる。
【0015】
また、本実施形態の第2のポリカーボネートジオール組成物は、下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(I)」とも記す。)を含み、さらに下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(II)」とも記す。)、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(III)」とも記す。)、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位(以下、単に「構造単位(IV)」とも記す。)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量が、40質量%以上であり、濁点滴定方法での滴定量が4.0mL以上9.5mL以下である。
【化13】
・・・(I)
(一般式(I)中、R
11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、ヘテロ原子を有していてもよい。複数ある場合のR
11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化14】
・・・(II)
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化15】
・・・(III)
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化16】
・・・(IV)
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0016】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、このような特徴を有することにより、溶剤やその他のポリオールとの相溶性に優れる。
【0017】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、製造方法が特に限定されるものではなく、構造単位(I)と、構造単位(II)~(IV)のうち少なくとも1種類の構造単位との共重合体であってもよいし、それぞれが独立して存在していてもよい。
【0018】
[構造単位(I)]
本実態形態のポリカーボネートジオール組成物において、構造単位(I)の詳細について、以下に説明する。
【0019】
(R11)
一般式(I)中、R11は、炭素数2以上15以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、ヘテロ原子を有してもよい。複数ある場合のR11は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
R11における2価の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が2以上15以下であり、3以上12以下であることが好ましく、3以上10以下であることがより好ましい。
【0021】
R11における2価の直鎖状脂肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。汎用性の観点から、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デカメチレン基が好ましい。
【0022】
R11における2価の分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が3以上15以下であり、3以上12以下であることが好ましく、3以上10以下であることがより好ましい。
【0023】
R11における2価の分岐鎖状肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、イソヘキシレン基、イソヘプチレン基、イソオクチレン基等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、イソブチレン基、イソペンチレン基又はイソヘキシレン基が好ましい。
【0024】
R11における2価の環状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が3以上15以下であり、6以上15以下であることが好ましく、6以上10以下であることがより好ましい。
【0025】
R11における2価の環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0026】
R11における2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上15以下であり、6以上12以下であることが好ましく、6以上10以下であることがより好ましい。
【0027】
R11における2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0028】
R11におけるヘテロ原子の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、酸素、窒素、リン、硫黄等が挙げられ、オキソランやチオラン、アゾリジン等の五員複素環式構造や、オキサン、ピリジン等の六員複素環式構造等を有してもよい。
【0029】
中でも、R11としては、炭素数3以上10以下の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、炭素数3以上10以下の2価の分岐鎖状肪族炭化水素基が好ましく、炭素数4以上6以下の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基がさらにより好ましい。
【0030】
また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、前記ポリカーボネートジオールの少なくとも一部が、一般式(I)におけるR11が炭素数2以上15以下の2価の直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも2種以上であることが好ましい。この場合、常温で液状のポリカーボネートジオール組成物が得られる傾向にある。
【0031】
また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物中、一般式(I)で表される構造単位を有する分子を含む場合、当該分子の両末端は水酸基であることが好ましい。
【0032】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物に含まれるポリカーボネート構造を有する分子は、その両末端が水酸基であることが好ましい。すなわち、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物に含まれるポリカーボネート構造を有する分子は、ポリカーボネートジオールであることが好ましい。ポリカーボネートジオール組成物の製造に使用する各種原料中の不純物や、ポリカーボネートジオール組成物の製造時に副生する末端構造等に起因して、又は、ポリカーボネートジオール組成物の使用用途におけるウレタン化反応速度や状態コントロールのために、末端の水酸基の一部をイソシアネート基と反応しないアルキル基やアリール基等に変換する場合もある。本実施形態ではこのような場合も考慮し、上記ポリカーボネートジオールの末端基は、厳密に両末端の100モル%が水酸基でない場合も包含する。かかる観点から、末端基の総モル量に対する水酸基の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態において、ポリカーボネートジオール組成物に含まれるポリカーボネートジオールの両末端構造は、例えば、特許第3874664号公報(参考文献1)に記載の1級末端OH比率を測定する方法に準拠して確認することができる。但し、留分を回収する溶剤としてはエタノールの他に、テトラヒドロフランやアセトン、メタノール等の溶剤が使用できる。
【0034】
[構造単位(II)]
次いで、構造単位(II)の詳細について以下に説明する。
【0035】
(R21)
一般式(II)中、R21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
R21における2価の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が2以上20以下であり、2以上12以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましい。
【0037】
R21における2価の直鎖状脂肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0038】
R21における2価の分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が3以上20以下であり、3以上12以下であることが好ましく、3以上6以下であることがより好ましい。
【0039】
R21における2価の分岐鎖状肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、イソヘキシレン基、イソヘプチレン基、イソオクチレン基等が挙げられる。
【0040】
R21における2価の環状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が6以上20以下であり、6以上12以下であることが好ましく、6以上8以下であることがより好ましい。
【0041】
R21における2価の環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。
【0042】
R21における2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上15以下であり、6以上12以下であることが好ましく、6以上10以下であることがより好ましい。
【0043】
R21における2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0044】
中でも、R21としては、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基(すなわち、アルキレン基)が好ましく、炭素数2以上6以下の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基、及び/又は、炭素数3以上6以下の2価の分岐鎖状肪族炭化水素基がより好ましい。
【0045】
(n21)
一般式(II)中、n21は構造(-R21-O-)の繰り返し数を表す。一般式(II)中、n21は任意の整数であるが、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物全体におけるn21の平均値は、好ましくは12以上であり、より好ましくは12以上70以下の範囲であり、12以上60以下の範囲がさらに好ましく、15以上がよりさらに好ましく、15以上50以下の範囲が特に好ましい。
【0046】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物全体におけるn21の平均値が上記下限値以上であることにより、柔軟性及び低温柔軟性により一層優れたポリウレタンが得られる傾向にある。また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物全体におけるn21の平均値が上記上限値以下であることにより、ポリカーボネートジオール組成物の粘度がより低粘度になる傾向になる。
【0047】
上記n21は、ポリカーボネートジオール組成物をアルカリ分解して原料ジオール成分を取り出し、当該成分についてGC-MS測定、LC-MS測定及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行うことで求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0048】
中でも、構造単位(II)としては、ポリオキシアルキレン構造が好ましい。
【0049】
構造単位(II)に含まれる好ましいオキシアルキレン基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、オキシエチレン基、オキシ1-メチルエチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ2,2-ジメチルトリメチレン基等が挙げられる。中でも、オキシ1-メチルエチレン基を含有している構造が好ましく、オキシ1-メチルエチレン基及びオキシエチレン基が特に好ましい。
【0050】
[構造単位(III)]
次いで、構造単位(III)の詳細について以下に説明する。
【0051】
(R31)
一般式(III)中、R31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
一般式(III)中のR31としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、2-メチルテトラメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、イソノナメチレン基、2-メチルノナメチレン基等が挙げられる。また、一般式(III)中のR31としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20の置換又は非置換のシクロアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,2-ジメチレンシクロペンタン基、1,3-ジメチレンシクロペンタン基、1,2-ジメチレンシクロヘキサン基、1,3-ジメチレンシクロヘキサン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン基、2,2-ジシクロヘキシレンプロパン基等が挙げられる。また、一般式(III)中のR31としては、特に限定されないが、例えば、炭素数6~20の置換又は非置換のアリーレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、1,2-ジメチレンベンゼン基、1,3-ジメチレンベンゼン基、1,4-ジメチレンベンゼン基、ナフチレン基、4,4’-メチレンジフェニレン基、2,2-ジフェニレンプロパン基等が挙げられる。
【0053】
中でも、ポリウレタンにした際の耐汚染性、耐溶剤性の向上、及び原料である環状エステル化合物の入手の容易性の観点から、R31はペンタメチレン基が好ましい。
【0054】
[構造単位(IV)]
次いで、構造単位(IV)の詳細について以下に説明する。
【0055】
(R41)
一般式(IV)中、R41は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR41は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
一般式(IV)中のR41としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、2-メチルテトラメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、イソノナメチレン基、2-メチルノナメチレン基等が挙げられる。また、一般式(IV)中のR41としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20の置換又は非置換のシクロアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,2-ジメチレンシクロペンタン基、1,3-ジメチレンシクロペンタン基、1,2-ジメチレンシクロヘキサン基、1,3-ジメチレンシクロヘキサン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン基、2,2-ジシクロヘキシレンプロパン基等が挙げられる。また、一般式(IV)中のR41としては、特に限定されないが、例えば、炭素数6~20の置換又は非置換のアリーレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、1,2-ジメチレンベンゼン基、1,3-ジメチレンベンゼン基、1,4-ジメチレンベンゼン基、ナフチレン基、4,4’-メチレンジフェニレン基、2,2-ジフェニレンプロパン基等が挙げられる。
【0057】
(R42)
一般式(IV)中、R42は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
一般式(IV)中のR42としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、2-メチルテトラメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、イソノナメチレン基、2-メチルノナメチレン基等が挙げられる。また、一般式(IV)中のR42としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~20の置換又は非置換のシクロアルキレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,2-ジメチレンシクロペンタン基、1,3-ジメチレンシクロペンタン基、1,2-ジメチレンシクロヘキサン基、1,3-ジメチレンシクロヘキサン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン基、2,2-ジシクロヘキシレンプロパン基等が挙げられる。また、一般式(IV)中のR42としては、特に限定されないが、例えば、炭素数6~20の置換又は非置換のアリーレン基が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、フェニレン基、1,2-ジメチレンベンゼン基、1,3-ジメチレンベンゼン基、1,4-ジメチレンベンゼン基、ナフチレン基、4,4’-メチレンジフェニレン基、2,2-ジフェニレンプロパン基等が挙げられる。
【0059】
[構造単位(II)~構造単位(IV)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、下記一般式(II)で表される繰り返し構造単位、下記一般式(III)で表される繰り返し構造単位、及び、下記一般式(IV)で表される繰り返し構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含む。
【化17】
・・・(II)
(一般式(II)中、R
21は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
21は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。n21は任意の整数である。)
【化18】
・・・(III)
(一般式(III)中、R
31は、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
31は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化19】
・・・(IV)
(一般式(IV)中、R
41及びR
42は、各々独立して、炭素数2以上20以下の2価の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。複数ある場合のR
41及びR
42は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0060】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、構造単位(II)~(IV)の末端構造は、一方の末端がカーボネート基に結合し、もう一方の末端が水酸基に結合している末端構造であってもよく、又は、両末端がカーボネート基に結合している末端構造であってもよく、又は、両末端が水酸基に結合している末端構造であってもよい。
【0061】
また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、構造単位(II)~(IV)の末端構造は、一方の末端がカーボネート基に結合し、もう一方の末端が水酸基に結合している末端構造と、両末端がカーボネート基に結合している末端構造と、両末端が水酸基に結合している末端構造との混合であってもよい。
【0062】
中でも、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、柔軟性、低温特性と耐湿熱性の観点から、構造単位(II)~(IV)のうち、構造単位(II)若しくは(IV)を含むことが好ましく、構造単位(II)を含むことがより好ましい。
【0063】
[濁点滴定]
本実施形態の第2のポリカーボネートジオール組成物は、濁点滴定方法での滴定量が4.0mL以上9.5mL以下であり、4.0mL以上8.5mL以下であることが好ましい。
【0064】
本実施形態において、濁点滴定方法での滴定量とは、ポリカーボネートジオール組成物を良溶媒である酢酸ブチルに溶解させておき、得られた溶液を貧溶媒であるヘキサンで滴定を行い、白く濁り始めた時点の滴定量である。また、酢酸ブチルに不溶の場合はアセトンに溶解させてもよい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0065】
この濁点滴定では、溶剤への溶解性を評価しており、ポリオールの種類や分子量、構造によって違いが表れる。一般的に、分子量が小さいほど、溶剤への溶解性は高く、また、含有する官能基によっても溶解性は異なる。よって、ポリオールに関しては、2種類以上のポリオールをブレンドした場合と、反応させて構造に変化が生じている場合は、溶解性に差異が生じる。
【0066】
本実施形態の第2のポリカーボネートジオール組成物は、濁点滴定方法での滴定量が4.0mL以上9.5mL以下であり、4.0mL以上8.5mL以下であることが好ましく、4.0mL以上7.6mL以下であることがより好ましく、4.1mL以上7.4mL以下であることがさらに好ましい。
【0067】
濁点滴定方法での滴定量が上記下限値以上であることにより、ポリカーボネートジオール組成物が溶剤やポリウレタンを合成する際の原材料との相溶性が向上し、また、濁点滴定方法での滴定量が上記上限値以下であることにより、低温柔軟性及び耐薬品性や耐湿熱性等の耐久性のバランスに優れるポリウレタンが得られるので好ましい。
【0068】
ポリカーボネートジオール組成物において、濁点滴定方法での滴定量を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、構造単位(I)と構造単位(II)~(IV)の仕込み比率を調整する方法が挙げられ、また、後述の本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの製造方法において、反応時間を調整する方法や混合撹拌時の酸素濃度を適宜調整する方法も挙げられる。
【0069】
また、この濁点滴定法を用いれば、エステル交換反応の進行を評価できるため、濁点滴定方法での滴定量の目標値を設定することで、製造ロットによるエステル交換反応のばらつきを低減し、品質の安定化に優れたポリカーボネートジオール組成物を得られる傾向にある。
【0070】
[関係式(式1)]
本実施形態の第1のポリカーボネートジオール組成物は下記式(式1)を満たす。
xy≧3.7×α (α=22.4×Mn-0.41) ・・・(式1)
((式1)中、xは前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量(質量%)に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量(質量%)であり、yはポリカーボネートジオール組成物の濁点滴定方法での滴定量(mL)であり、Mnはポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量である)
【0071】
ここで、数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法を用いて、ポリカーボネートジオール組成物の水酸基価から算出することができる。
【0072】
濁点滴定は一般的に分子量の小さい化合物のほうが溶剤への溶解性が高いため、貧溶媒の滴定量が高くなる傾向にある。αは分子量による違いを相殺するファクターである。
【0073】
一般的に、ポリカーボネートジオールは溶剤への溶解性が低いため、xが大きくなると、yは小さくなる傾向にある。前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位と、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位がランダムに存在するほど濁点滴定の滴定量が多くなると推察している。また、上記式(式1)を満たすポリカーボネートジオール組成物を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、変性が十分に進むまで反応時間を適宜設定する方法が挙げられる。
【0074】
[構造単位(I)の含有量]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、構造単位(I)~(IV)の合計質量に対して、構造単位(I)の含有量は、5質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上90質量%以下がより好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。構造単位(I)の含有量が上記下限値以上であることにより、耐薬品性や耐湿熱性等の耐久性により優れたポリウレタンが得られるので好ましい。また、構造単位(I)の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリカーボネートジオール組成物の粘度が低くなる傾向がある。なお、構造単位(I)の含有量は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0075】
[数平均分子量]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量は250以上10000以下であることが好ましく、400以上8000以下がより好ましく、500以上5000以下がさらに好ましく、500以上3000以下が特に好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、該数平均分子量が上記上限値以下であることにより、粘度が下がり、ポリウレタン製造時のハンドリング性が向上する傾向にある。また、該数平均分子量が上記下限値以上であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物を使用して製造されたポリウレタンの柔軟性が優れる傾向にある。
【0076】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量が前記範囲に制御された構造単位(I)と、数平均分子量が前記範囲に制御された構造単位(II)~構造単位(IV)の少なくとも1つの構造単位とを用いる方法、数平均分子量が前記範囲よりも大きい構成単位(I)と前記範囲よりも小さい構造単位(II)~構造単位(IV)の少なくとも1つの構造単位とを用いる方法、数平均分子量を確認しながら反応を行い、前記範囲内に到達した時点で反応を停止する方法等が挙げられる。
【0077】
本実施形態において、ポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0078】
[酸価]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の酸価は、0.001mg-KOH/g以上0.8mg-KOH/g以下であることが好ましく、0.005mg-KOH/g以上0.6mg-KOH/g以下であることがより好ましく、0.01mg-KOH/g以上0.6mg-KOH/g以下であることがさらに好ましい。原料、触媒、添加物等由来の酸性化合物をすべて取り除くことは困難であるため、酸価が上記下限値以上であることにより、ポリカーボネートジオール組成物の生産性の面から好ましく、また、酸価が上記上限値以下であることにより、着色の発生を低減できる傾向にある。
【0079】
ポリカーボネートジオール組成物の酸価を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネートジオール組成物の製造時の原料酸価を調整する方法や、触媒を失活させるための触媒毒添加を適切に選択する方法が挙げられる。
【0080】
本実施形態において、ポリカーボネートジオール組成物の酸価は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0081】
[過酸化物価]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の過酸化物含有量(以下「過酸化物価」とも記す)は、10meq/kg以下が好ましく、3meq/kg以下がより好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、過酸化物価が10meq/kg以下であると、着色が抑制される傾向がある。本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の過酸化物価の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01meq/kgである。なお、前記過酸化物価の測定法としては、酸化した油脂に酸性でヨウ化カリウムを作用させ、遊離してくるヨウ素を滴定法で求めるチオ硫酸ナトリウム滴定法などが挙げられるが、例えば、過酸化物価測定用試験紙(商品名:「POV試験紙」、柴田化学株式会社製)を用いて簡便に測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0082】
ポリカーボネートジオール組成物の過酸化物価を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱分解による酸化開裂軽減のため反応温度を200℃以下にする方法や、ポリカーボネートジオール組成物の製造時に酸素濃度を0.5%以下にする方法や、製造時の窒素流量を0.1L/min以上50L/min以下にする方法が挙げられ、上記の方法を組み合わせてもよい。
【0083】
[APHA]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物のハーゼン色数(以下「APHA」とも記す)の値(APHA値:JIS K0071-1(2017)に準拠)は100以下であることが好ましく、60以下がより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。APHA値は低い程、ポリカーボネートジオール組成物自体も、このポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタンの色調も良好となる。APHA値の下限は特に限定されないが、例えば、0である。
【0084】
このようなAPHA値を満たすポリカーボネートジオール組成物は、使用する原料のAPHAを100以下にすることで製造することができ、後述の本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの製造方法において、混合撹拌時の酸素濃度を0.5%以下にすることでより効果的になる。
【0085】
なお、本実施形態において、APHA値は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0086】
<ポリカーボネートジオール組成物の製造方法>
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物を製造する方法については上記特徴を満たさすことができれば特に制限はないが、例えば、下記一般式(I-1)表されるポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール(I-1)」と称する場合がある)と、下記一般式(II-1)で表されるエーテルジオール(以下、「エーテルジオール(II-1)」と称する場合がある)、下記一般式(III-1)で表されるポリカプロラクトンジオール(III-1)(以下、「ラクトンジオール(III-1)」と称する場合がある)及び下記一般式(IV-1)で表されるポリエステルジオール(以下、「エステルジオール(IV-1)」と称する場合がある)からなる群より選ばれる少なくとも1つとを用いて、エステル交換反応を行う方法や、ポリカーボネートジオール(I-1)と環状エステル化合物とを反応させる方法が挙げられる。
【化20】
・・・(I-1)
(一般式(I-1)中、R
111及びR
112はそれぞれ上記R
11と同じである。n11は任意の整数である。)
【化21】
・・・(II-1)
(一般式(II-1)中、R
211は上記R
21と同じである。n211は上記n21と同じである。)
【化22】
・・・(III-1)
(一般式(III-1)中、R
311は上記R
31と同じである。n311は任意の整数である)
【化23】
・・・(IV-1)
(一般式(IV-1)中、R
411及びR
421はそれぞれ上記R
41及びR
42と同じである。n411は任意の整数である。)
【0087】
[ポリカーボネートジオール(I-1)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるポリカーボネートジオール(I-1)としては、上記一般式(I-1)で表される構造を有するものであればよい。ポリカーボネートジオール(I-1)の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。例えば、カーボネート化合物と、ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下で反応させて、ポリカーボネートジオール(I-1)を得ることができる。
【0088】
(カーボネート化合物)
ポリカーボネートジオール(I-1)の製造に用いられるカーボネート化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート等が挙げられる。
【0089】
アルキレンカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
【0090】
ジアルキルカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。
【0091】
ジアリールカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0092】
中でも、ポリカーボネートジオール(I-1)の製造に用いられるカーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートが好ましく、エチレンカーボネートがより好ましい。
【0093】
(ジオール化合物)
ポリカーボネートジオール(I-1)の製造に用いられるジオール化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、直鎖状ジオール、分岐鎖状ジオール、環状ジオール、芳香環を有するジオールが挙げられる。
【0094】
直鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ナノジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0095】
分岐鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0096】
環状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等が挙げられる。
【0097】
芳香環を有するジオールとしては、特に限定されないが、例えば、p-キシレンジオール、p-テトラクロロキシレンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス〔(4-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0098】
中でも、炭素数3以上10以下の直鎖状ジオールもしくは分岐鎖状ジオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール又は1,6-ヘキサンジオール、1,9-ナノジオール、1,10-デカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0099】
[ポリカーボネートジオール組成物及びポリカーボネートジオール(I-1)の製造条件]
原料であるポリカーボネートジオール(I-1)の製造に際しては、エステル交換反応触媒を用いることができる。触媒としては、通常のエステル交換反応触媒から選択することができる。
【0100】
エステル交換反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、並びに、そのアルコラート、その水素化物、そのオキシド、そのアミド、その水酸化物及びその塩等が挙げられる。
【0101】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩としては、特に限定されないが、例えば、炭酸塩、窒素含有ホウ酸塩、有機酸との塩基性塩等が挙げられる。
【0102】
アルカリ金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0103】
アルカリ土類金属としては、特に限定されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0104】
また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属を用いたエステル交換触媒としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属、並びに、その塩、そのアルコラート、及び、該金属を含む有機化合物等が挙げられる。
【0105】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、イッテルビウム等が挙げられる。
【0106】
これらエステル交換触媒を1種単独で、又は、2種以上組み合わせて、使用することができる。
【0107】
中でも、エステル交換反応触媒としては、ポリカーボネートジオールを得るエステル交換反応がより良好に行われ、得られるポリカーボネートジオールを用いた場合にウレタン反応に対する影響もより少ないことから、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛及びイッテルビウムからなる群より選択される1種以上の金属、又は、それらの塩、それらのアルコキシド、若しくはそれら金属を含む有機化合物が好ましい。
【0108】
また、エステル交換反応触媒としては、マグネシウム、チタン、イッテルビウム、スズ及びジルコニウムからなる群より選択される1種以上の金属がより好ましい。
【0109】
好ましいエステル交換触媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、マグネシウムの有機化合物、鉛の有機化合物、チタンの有機化合物等が挙げられる。
【0110】
マグネシウムの有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム四水和物、酢酸マグネシウム無水和物等が挙げられる。
【0111】
鉛の有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸鉛三水和物、テトラフェニル鉛、ステアリン酸鉛等が挙げられる。
【0112】
チタンの有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0113】
エステル交換反応触媒の使用量は、原料の総質量に対して、0.00001質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。
【0114】
エステル交換反応に用いたエステル交換触媒は、ポリカーボネートジオールの製造に引き続き加熱処理を行う場合は、エステル交換反応で消費されていないため、エステル交換反応触媒の使用量を元に算出できる。市販のポリカーボネートジオールを用いる場合等においては、ポリカーボネートジオールに含まれるエステル交換反応触媒の金属量を、ICP(発光分光分析法、Inductively Coupled Plasma)により測定して求められる。
【0115】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるポリカーボネートジオール(I-1)は、その製造時に用いたエステル交換反応触媒を失活させるため、リン酸エステル化合物等の触媒毒を添加したものであってもよい。
【0116】
原料であるポリカーボネートジオール(I-1)中に、その製造時に用いられたエステル交換反応触媒の触媒毒等が含まれている場合、通常、エーテルジオール(II-1)やエステルジオール(IV-1)と、ポリカーボネートジオール(I-1)とのエステル交換反応が進み難くなる傾向にある。そのため、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に際しては、新たに上記したエステル交換反応触媒を必要量添加することができる。
【0117】
一方、原料であるポリカーボネートジオール(I-1)中に、エステル交換反応触媒の触媒毒が含まれていない場合は、通常、本実施形態におけるエステル交換反応は進み易い傾向にある。しかしながら、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造工程における反応温度をより下げたい場合や反応時間をより短くしたい場合等にも、新たにエステル交換反応触媒を必要量添加することができる。その場合、原料であるポリカーボネートジオール(I-1)の製造において用いるエステル交換反応触媒と同様のものを採用することができる。
【0118】
また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるポリカーボネートジオール(I-1)は、1種のジオール化合物から得られるホモポリカーボネートジオールでもよいし、2種以上のジオール化合物から得られる共重合系ポリカーボネートジオールでもよい。
【0119】
上記に例示したポリカーボネートジオール(I-1)のうちいずれのものを用いても、エステル交換反応により、ポリカーボネートジオール組成物を得ることができる。
【0120】
しかしながら、例えば、市場で広く用いられている1,6-ヘキサンジオールを用いて得られたホモ系ポリカーボネートジオールは、通常、常温で固体である。そのため、該ホモ系ポリカーボネートジオールとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオール組成物も常温で固体である傾向にある。
【0121】
一方、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのうちいずれか2種類を用いて得られた共重合系ポリカーボネートジオールは常温で液体である。そのため、該共重合系ポリカーボネートジオールとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオール組成物も常温で液体である傾向にある。
【0122】
(n11)
一般式(I-1)中、n11は、カーボネート構造(-R111-O-CO-O-)の繰り返し数を表す。n11は任意の整数であるが、n11の平均値は、1以上50以下の範囲が好ましく、2以上50以下の範囲がより好ましく、3以上30以下の範囲がさらに好ましく、4以上20以下の範囲が特に好ましい。
【0123】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるポリカーボネートジオール(I-1)の数平均分子量は、特に限定されないが、500以上5000以下が好ましく、1000以上3000以下がより好ましい。
【0124】
ポリカーボネートジオール(I-1)の数平均分子量が上記下限値以上であることにより、ポリカーボネートジオール組成物に期待される性能がより向上する傾向にある。一方、ポリカーボネートジオール(I-1)の数平均分子量が上記上限値以下であることにより、ポリカーボネートジオール組成物製造時のハンドリング性の面で好ましい。
【0125】
[エーテルジオール(II-1)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるエーテルジオール(II-1)としては、上記一般式(II-1)で表される構造を有するものであればよい。中でも、エーテルジオール(II-1)としては、両末端1級の水酸基を有するポリオキシアルキレンジオールが好ましい。エーテルジオール(II-1)は、各種の分子量の製品が市販されており、このような市販品を用いることもできる。エーテルジオール(II-1)の市販品としては、特に限定されないが、例えば、三洋化成工業株式会社製の「ニューポール」シリーズや、「プライムポール」シリーズ、「サンニックス」シリーズ、日油株式会社製の「プロノン」シリーズ、AGC株式会社製の「プレミノール」、「エクセノール」シリーズ、三菱ケミカル株式会社製の「PTMG」シリーズ等のポリオキシアルキレンジオール、旭化成株式会社製のPTXG等のポリエーテルグリコール等が挙げられる。
【0126】
エーテルジオール(II-1)の数平均分子量は、特に限定されないが、400以上3000以下が好ましく、600以上2500以下がより好ましい。製造に用いられるエーテルジオール(II-1)の数平均分子量が上記下限値以上であることにより、ポリウレタンに用いた際に柔軟性がより向上する傾向にあり、エーテルジオール(II-1)の数平均分子量が上記上限値以下であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の結晶性がより抑えられる傾向にある。
【0127】
[ポリカプロラクトンジオール(III-1)及び環状エステル化合物]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるポリカプロラクトンジオール(III-1)としては、上記一般式(III-1)で表される構造を有するものであればよい。中でも、ポリカプロラクトンジオール(III-1)は、各種の分子量の製品が市販されており、このような市販品を用いることもできる。市販品としては、特に限定されないが、例えば、株式会社ダイセル有機合成カンパニー製の「プラクセル」シリーズ、DIC株式会社製の「ポリライト」シリーズ等が挙げられる。
【0128】
(n311)
一般式(III-1)中、n311は構造(-R311-O-CO-)の繰り返し数を表す。一般式(III-1)中、n311は任意の整数であるが、n311の平均値は1以上であり、好ましくは1以上50以下の範囲であり、1以上30以下の範囲がより好ましく、1以上20以下の範囲が特に好ましい。
【0129】
ポリカプロラクトンジオール(III-1)の数平均分子量は、特に限定されないが、400以上3000以下が好ましく、600以上2000以下がより好ましい。製造に用いられるラクトンジオール(III-1)の数平均分子量が上記下限値以上であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物から得られるポリウレタンの柔軟性がより向上する傾向にあり、ラクトンジオール(III-1)の数平均分子量が上記上限値以下であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物がより低粘度になる傾向にある。
【0130】
また、環状エステル化合物を開環重合してもよい。
【0131】
環状エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、γ-メチル-ε-カプロラクトン、β,δ-ジメチル-ε-カプロラクトン、3,3,5-トリメチルε-カプロラクトン、エナントラクトン(7-ヘプタリドン)等の炭素数3~12の環状エステル化合物が挙げられる。特に、前記式(III)におけるR31が炭素数5の直鎖アルキレン基である構造単位(III)を与えるε-カプロラクトンを用いることが好ましい。
【0132】
[エステルジオール(IV-1)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造に用いられるエステルジオール(IV-1)としては、上記一般式(IV-1)で表される構造を有するものであればよい。中でも、エステルジオール(IV-1)は、各種の分子量の製品が市販されており、このような市販品を用いることもできる。エーテルジオール(II-1)の市販品としては、特に限定されないが、例えば、DIC株式会社製の「ポリライト」シリーズ、株式会社クラレ製の「クラレポリオール」シリーズ、東ソー株式会社製の「ニッポラン」シリーズ、株式会社ADEKA製の「アデカニューエース」シリーズ等が挙げられる。
【0133】
(n411)
一般式(IV-1)中、n411は構造(-CO-R411-CO-O-R421-O-)の繰り返し数を表す。一般式(IV-1)中、n411は任意の整数であるが、n411の平均値は1以上であり、好ましくは1以上50以下の範囲であり、2以上30以下の範囲がより好ましく、4以上20以下の範囲が特に好ましい。
【0134】
エステルジオール(IV-1)の数平均分子量は、特に限定されないが、400以上3000以下が好ましく、600以上2000以下がより好ましい。製造に用いられるエステルジオール(IV-1)の数平均分子量が上記下限値以上であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物から得られるポリウレタンの柔軟性がより向上する傾向にあり、エステルジオール(IV-1)の数平均分子量が上記上限値以下であることにより、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物がより低粘度になる傾向にある。
【0135】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の製造方法は特に限定されないが、ポリカーボネートジオール(I-1)と、エーテルジオール(II-1)、エステルジオール(IV-1)及び環状エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種類の化合物とを混合し、加熱しながら撹拌する製造することが好ましい。
【0136】
反応の際の温度は、特に限定されないが、120℃以上200℃以下が好ましく、140℃以上180℃以下より好ましい。
【0137】
反応温度を上記下限値以上とすることで、エステル交換反応をより短時間で行うことができ経済性に優れる傾向にある。反応温度を上記上限値以下とすることで、得られるポリカーボネートジオール組成物の酸価を特定範囲に制御できたり、着色をより効果的に防止することができる傾向にある。
【0138】
また、製造時は酸素濃度を0.5%以下にすることが好ましい。酸素濃度を0.5%以下にする方法としては、特に限定はされないが、例えば、反応装置の1.5倍以上窒素で置換後、窒素フローしながら反応させることや、0.1kPa.s以下に減圧した後、窒素置換をし、微減圧で反応させること等が挙げられる。酸素濃度を0.5%以下にすることで、過酸化物の生成が抑制され、得られるポリカーボネートジオール組成物の着色を防止することができる傾向にある。
【0139】
また、酸素濃度を0.5%以下にするために、窒素流量を0.1L/min以上50L/min以下で窒素フローすることが好ましく、0.2L/min以上30L/min以下で窒素フローすることがより好ましい。窒素流量が上記下限値以上であることにより、酸素の混入を防ぐことができるので好ましく、また、窒素流量が上記上限値以下であることにより、原料ジオールの揮発を防止でき、得られるポリカーボネートジオール組成物の水酸基価を一定化させることができる傾向にある。
【0140】
[用途]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、ポリイソシアネートと反応させるためのポリウレタンの原料として用いることができる。本実施形態のポリカーボネートジオール組成物を用いてなるポリウレタンは、耐薬品性、耐熱性、耐候性に優れることから、フォーム、エラストマー、塗料、コーティング剤、粘着剤、接着剤、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン塗料等に広く用いることができる。さらには、ポリエステルやポリイミドの改質剤などの用途に用いることができる。
【0141】
[ポリウレタン]
本実施形態のポリウレタンは、上述のポリカーボネートジオール組成物を用いてなる。
【0142】
[Δ100%伸長時応力]
本実施形態のポリウレタンは、引張試験による100%伸長時応力について、下記式(B)で算出されるΔMが1.0以上19.0以下であることが好ましく、3.5以上18.5以下であることがより好ましく、5.0以上17.0以下であることがさらに好ましい。
ΔM=M1-M2 ・・・(B)
(式(B)中のM1は-20℃条件下での引張試験の100%伸長時応力であり、M2は23℃条件下での引張試験の100%伸長時応力を表す。)
【0143】
本実施形態のポリウレタンは、ΔMが上記下限値以上であることにより、柔軟性と耐久性のバランスに優れる傾向にある。また、本実施形態のポリウレタンは、ΔMが上記上限値以下であることにより、温度による弾性率の差が小さいため低温での機械物性に優れる傾向にある。
【0144】
本実施形態のポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられ、無溶剤でも溶媒共存下でも実施することができる。
【0145】
その例としては、特に限定されないが、例えば、上述のポリカーボネートジオール組成物、それ以外のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を一括混合して反応させる方法(以下、「ワンショット法」と称する場合ある)や、まず上述のポリカーボネートジオール組成物、それ以外のポリオール及びポリイソシアネートを反応させて両末端イソシアネート基のプレポリマーを調整した後にそのプレポリマーと鎖伸長剤を反応させる方法(以下、「プレポリマー法」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0146】
本実施形態のポリウレタンに含まれるイソシアネート化合物は、硬化剤として働くものであれば特に制限されず、末端にイソシアネート基を2個以上有するものを用いる。
【0147】
このようなイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネート、環状脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及び、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、並びに、これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート化変性品、及び、ビウレット化変性品等が挙げられる。
【0148】
鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0149】
環状脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4‘-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0150】
芳香族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある)、キシリレンジイソシアネート及びナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0151】
3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン-4,4’-4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトエン及び4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等が挙げられる。
【0152】
イソシアネート化合物は市販のものを用いてもよく、公知の方法を用いて合成してもよい。
【0153】
イソシアネート化合物の含有量は、主剤であるポリオールの水酸基のモル量に応じて、適宜に調整すればよい。具体的には、ポリカーボネートジオールの水酸基に対する、イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、例えば0.2以上5.0以下とすることができ、例えば0.4以上3.0とすることができ、例えば0.5以上2.0以下とすることができる。NCO/OHが上記下限値以上であると、より強靱な塗膜が得られる傾向にある。一方、NCO/OHが上記上限値以下であると、塗膜の平滑性がより向上する傾向にある。
【0154】
また、本実施形態のポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、特に限定されないが、例えば、通常ポリオール及びポリアミン等を挙げることができる。
【0155】
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、直鎖状ジオール、分岐鎖状ジオール、環状ジオール、芳香環を有するジオール等が挙げられる。
【0156】
直鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ナノンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0157】
分岐鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0158】
環状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等が挙げられる。
【0159】
芳香環を有するジオールとしては、特に限定されないが、例えば、p-キシレンジオール、p-テトラクロロキシレンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス〔(4-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0160】
ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアミン類、ポリアミン類等が挙げられる。
【0161】
ヒドロキシアミン類としては、特に限定されないが、例えば、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0162】
ポリアミン類としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等が挙げられる。
【0163】
これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
[合成皮革]
本実施形態の合成皮革は、上述のポリウレタンを含む。
【0165】
本実施形態の合成皮革としては、特に限定されないが、例えば、基布、接着層、中間層及び表皮層が順次積層された合成皮革が挙げられる。このような合成皮革において、基布、接着層、中間層及び表皮層からなる群より選ばれる少なくとも1つが、上述のポリウレタンを含むことが好ましい。
【0166】
基布(基材)としては、種々のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、繊維質基材が挙げられる。繊維質基材としては、特に限定されないが、例えば、繊維を、不織布、織布、網布等の形状にした繊維集合体、又は、繊維集合体の各繊維間が弾性重合体で結合されたもの等が挙げられる。この繊維集合体に用いられる繊維としては、特に限定されないが、例えば、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテート等の再生又は半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン等の合成繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独紡糸繊維でも混合紡糸繊維でもよい。その他の基材としては、特に限定されないが、例えば、紙、離型紙、ポリエステルやポリオレフィンのプラスティックフィルム、アルミ等の金属板、ガラス板等が挙げられる。
【0167】
本実施形態の合成皮革において、上述のポリウレタンを接着層、中間層、表皮層に使用することが好ましい。また、各層を形成する際、必要に応じて、架橋剤、その他樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、顔料、染料、着色剤、難燃剤、有機溶剤等を添加することができる。
【0168】
本実施形態の合成皮革の製造方法は、上述のポリウレタンを用いていれば特に限定されず、公知の合成皮革の製造方法を用いることができる。
【0169】
[塗料又はコーティング剤組成物]
本実施形態の塗料又はコーティング剤組成物(塗料)は、上述のポリカーボネートジオール組成物を用いてなる。
【0170】
上述のポリカーボネートジオール組成物を用いた塗料又はコーティング剤組成物(塗料)を製造する方法としては、業界で公知の製造方法が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオール組成物から得られる塗料主剤とポリイソシアネートからなる硬化剤とを塗工直前に混合する2液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーからなる1液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂からなる1液型溶剤系コーティング組成物製造することができる。
【0171】
本実施形態の塗料又はコーティング剤組成物(塗料)には、例えば、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、レベリング剤、充填剤、分散剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、着色剤、溶剤等のその他添加剤を添加することができる。これらその他添加剤を適宜含有することにより、ソフトフィール塗料、及び、クリア塗料等の、性質の異なる塗料組成物を得ることができる。
【0172】
硬化促進剤(触媒)としては、特に限定されないが、例えば、例えば、モノアミン、ジアミン、その他トリアミン、環状アミン、アルコールアミン、エーテルアミン、金属触媒等の一般的に用いられるものが挙げられる。
【0173】
モノアミンとしては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0174】
アルコールアミノンとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0175】
金属触媒としては、特に限定されないが、例えば、酢酸カリウム、2-エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2-エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等が挙げられる。
【0176】
有機溶剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、炭酸エステル溶媒、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0177】
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【実施例】
【0178】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。本実施例中、特に断りがない限り、「部」及び「%」は質量基準に基づくものである。
【0179】
後述する実施例及び比較例における物性及び評価は、以下に示す方法により測定及び評価した。
【0180】
[物性1]水酸基価
ポリカーボネートジオール(組成物)の水酸基価は、以下の方法で測定した。
まず、メスフラスコを用い、無水酢酸12.5gにピリジンを加えて50mLとし、アセチル化試薬を調製した。次いで、100mLのナスフラスコに、サンプルを2.5g精秤した。次いで、前記ナスフラスコに、アセチル化試薬5mLとトルエン10mLとをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間、前記ナスフラスコ中の溶液を撹拌加熱した。次いで、前記ナスフラスコに、蒸留水2.5mLをホールピペットで添加後、さらに10分、前記ナスフラスコ中の溶液を加熱撹拌した。前記ナスフラスコ中の溶液を2~3分冷却後、前記ナスフラスコに、エタノールを12.5mL添加した。次いで、前記ナスフラスコに、指示薬としてフェノールフタレインを2~3滴入れ、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウムで滴定した。次いで、アセチル化試薬5mL、トルエン10mL、及び、蒸留水2.5mLを100mLのナスフラスコに入れ、10分間、前記ナスフラスコ中の溶液を加熱撹拌した後、同様に滴定を行った(空試験)。この結果をもとに、下記式(i)でポリカーボネートジオール(組成物)の水酸基価を計算した。
水酸基価(mg-KOH/g)={(F-E)×28.05×f}/G ・・・(i)
なお、式(i)中、Eはサンプルの滴定量(mL)を表し、Fは空試験の滴定量(mL)を表し、Gはサンプル質量(g)を表し、fは滴定液のファクターを表す。
【0181】
[物性2]数平均分子量(A)
ポリカーボネートジオール(組成物)の数平均分子量(A)は、[物性1]で求められた水酸基価から、下記式(ii)を用いて計算した。
数平均分子量(A)=2/(H×10-3/56.11) ・・・(ii)
なお、式(ii)中、Hはポリカーボネートジオール(組成物)の水酸基価(mg-KOH/g)を表す。
なお、後述の実施例及び比較例において、下記式1に適用されるポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量Mnは、上記式(ii)を用いて計算した数平均分子量(A)とした。
xy≧3.7×α (α=22.4×Mn-0.41) ・・・(式1)
((式1)中、xは前記一般式(I)~(IV)で表される繰り返し構造単位の合計質量(質量%)に対して、前記一般式(I)で表される繰り返し構造単位の含有量(質量%)の割合であり、yはポリカーボネートジオール組成物の濁点滴定方法での滴定量(mL)であり、Mnはポリカーボネートジオール組成物の数平均分子量である。)
【0182】
[物性3]分子量(B)
後述の応用例及び応用比較例で得られたポリウレタンフィルムの一部を切り取り、ポリウレタンの濃度が0.1質量%になるように、N,N-ジメチルホルムアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC-8320」(カラム:Tskgel SuperHM-H・4本)、溶離液にはリチウムブロマイド2.6gをジメチルホルムアミド1Lに溶解させた溶液を使用〕を用い、標準ポリスチレン換算でのポリウレタンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。また、これらの測定結果から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0183】
[物性4]ハーゼン色数(APHA)
JIS K0071-1(2017)に準拠して、比色管に入れた標準液と比較して、後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物のAPHAを測定した。試薬は色度標準液1000度(富士フィルム和光純薬株式会社)を使用した。また、APHA30までは5刻みで溶液を調製し判定した。微濁液体の場合は60℃で加温し、溶解させてから測定した。
【0184】
[物性5]濁点滴定
25℃条件下で、後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物0.5gを酢酸ブチル8.8gに溶解させ、得られた溶液を撹拌しながらヘキサンを少量ずつ滴下し、白く濁り始めた時点の滴定量を求め、下記式(iii)にて濁点滴定を算出した。
濁点滴定=0.5×I×56.1/(J×K)・・・(iii)
なお、下記式(iii)中、Iは上述で求めた滴定量(mL)を表し、Jは秤量したサンプル質量(g)を表し、Kはポリカーボネートジオール組成物の水酸基価(mg-KOH/g)を表す。
【0185】
[物性6]酸価
溶剤をトルエン/エタノール(2/1)に変更する以外はJIS K 0070-1992に準ずる方法にて後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物の酸価を求めた。
【0186】
[物性7]ポリカーボネートジオール組成物における構造単位(I)含有量
100mLのナスフラスコに後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物のサンプルを1g取り、メタノール30g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液8gを投入し、100℃で1時間反応した。反応液を室温まで冷却後、指示薬にフェノールフタレインを2~3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1時間冷却後、フィルターで濾過し、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国、J&W製)を備えたガスクロマトグラフィーGC-14B(日本、島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として、水素炎イオン化型検出基(FID)を検出器として行い、各成分の定量分析を行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
上記分析結果より検出された各アルコール成分及び、二塩基酸由来のメチルエステル成分から、ポリカーボネートジオール組成物の組成を求めた。
二塩基酸由来のメチルエステル成分は検出されない場合、二塩基酸を含むポリエステルポリカーボネートポリオールの組成については、二塩基酸由来のメチルエステルのモル数と同モル数のジオールを減じた値を用いることにより、カーボネート骨格を構成するジオール類のモル数を求めた(複数のジオールを用いた場合は、ガスクロマトグラフィーで求められたジオールの比率により、カーボネート骨格中のジオールの組成とエステル骨格のジオールの組成が同一であるとして計算した)。
【0187】
[物性8]過酸化物価(POV)
後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物のサンプルをPOV試験紙(柴田科学株式会社)の試験部に浸漬させ、3分間放置して純水で洗浄した。当該サンプルのPOV試験紙と標準色見本とを比較し、サンプルにおける過酸化物価(POV)を以下のとおり判定した。
[判定基準]
標準色見本で0と検出される0meq/kg以上3meq/kg以下を〇。
標準色見本の10と同等の3meq/kg超10meq/kg以下を△。
標準色見本の30と同等の10meq/kg超40meq/kg以下を×。
【0188】
[物性9]品質の安定性
後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物を25℃条件下で6カ月保管し、製造直後との外観の変化から、品質の安定性を以下のとおり評価した。
[評価基準]
〇:製造直後から外観変化がない
×:製造直後と比較して外観変化がある(例えば、2層分離、白濁、沈殿等)
【0189】
[評価1]相溶性評価(ポリオール)
後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物の相溶性を以下のとおり評価した。ポリオールの一例として、ポリエステルポリオール(昭和電工マテリアルズ株式会社製、「テスラック2460」(商品名)、数平均分子量:約2000)を用いた。当該ポリエステルポリオールとポリカーボネートジオール組成物とを順に7:3の質量比で混合撹拌し、得られた溶液の外観から相溶性を以下のとおり評価した。
[評価基準]
〇:透明である
△:やや白濁若しくは僅かに2層分離している
×:白濁している
【0190】
[評価2]相溶性評価(溶剤)
後述の実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物の相溶性を以下のとおり評価した。溶剤の一例として、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」とも記す)を用いた。メチルイソブチルケトンに固形分75%となるようポリカーボネートジオール組成物を配合し、25℃下で混合撹拌し、30分静置後、得られた溶液の外観から相溶性を以下のとおり評価した。
[評価基準]
〇:透明である
△:やや白濁している
×:白濁している
【0191】
[評価3]常温引張試験
JIS K6250(2019)に準じ、後述の応用例及び応用比較例で得られたポリウレタンフィルムから幅10mm、長さ100mm、厚み約0.1mmの短冊状の試験片を作成した。作成した試験片について、引張試験機(株式会社オリエンテック社製、製品名「テンシロン、モデルRTE-1210」)を用いて、チャック間距離20mm、引張速度100mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)で引張試験を実施し、試験片が100%伸長した時点での応力(100%モジュラス)を測定した。100%モジュラスが低いほど常温での柔軟性に優れると評価した。
【0192】
[評価4]低温引張試験
JIS K6250(2019)に準じ、後述の応用例及び応用比較例で得られたポリウレタンフィルムから幅10mm、長さ100mm、厚み約0.1mmの短冊状の試験片を作成した。作成した試験片を、恒温槽(株式会社オリエンテック社製、「モデルTLF-R3T-E-W」)付き引張試験機(株式会社オリエンテック社製、製品名「テンシロン、モデルRTE-1210」に、チャック間距離20mmで設置した。続いて、試験片を-20℃で5分間静置した後に引張速度100mm/分にて試験片の引張試験を実施し、試験片が100%伸長した時点での応力(100%モジュラス)を測定した。100%モジュラスが低いほど低温での柔軟性に優れると評価した。
【0193】
[評価5]Δ100%伸長時応力(以下、「ΔM」と称する場合がある)
前述の[評価1]及び[評価2]で求めた100%モジュラス(100%伸長時応力)から、下記式(B)によりΔMを求めた。
ΔM=M1-M2 ・・・(B)
(式(B)中のM1は[評価2]で求めた-20℃条件下の100%伸長時応力であり、M2は[評価1]で求めた23℃条件下の100%伸長時応力である。)
【0194】
[評価6]耐湿熱性の評価
後述の応用例及び応用比較例で得られたポリウレタンフィルムから、幅10mm、長さ100mm、厚さ約100μmの短冊状のサンプルを作成した。作成したサンプルについて、エスペック社製、恒温恒湿器、製品名「PL-1J」にて温度85℃、湿度85%条件下で10日間加熱を行った。加熱後のサンプルを、上記<常温引張試験>と同様に、破断強度を測定し、下記式(C)から破断強度の保持率(%)を求めた。
保持率=加熱後の破断強度/加熱前の破断強度×100・・・(C)
【0195】
[評価7]ポリウレタン溶液のΔAPHA
後述の応用例及び応用比較例で得られたポリウレタン溶液を40℃の小型環境試験機で保管し、ポリウレタン溶液調製直後のAPHAと40℃、3か月保管後のポリウレタン溶液のAPHAとの経時変化(ΔAPHA(3か月保管後-調製直後))を測定した。
【0196】
なお、表中及び本文中の略語は下記の通りである。
A-1:ポリオキシテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製、「PTMG2000」(商品名)、数平均分子量:約2000、一般式(II-1)中、R211:テトラメチレン基、n211:約28)
A-2:ポリオキシテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製、「PTMG1000」(商品名)、数平均分子量:約1000、一般式(II-1)中、R211:テトラメチレン基、n211:約14)
A-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、「ニューポールPE-61」(商品名)、数平均分子量:約2000、一般式(II-1)中、R211:イソプロピレン基及びメチレン基、n211:約35)
A-4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、「ニューポールPE-62」(商品名)、数平均分子量:約2400、一般式(II-1)中、R211:イソプロピレン基及びメチレン基、n211:約44)
A-5:テトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合ポリマー(旭化成株式会社製、「PTXG」(商品名)、数平均分子量:約1800、一般式(II-1)中、R211:2,2-ジメチルトリメチレン基及びテトラメチレン基、n211:約23)
B-1:ポリカプロラクトンポリオール(株式会社ダイセル有機合成カンパニー製、「プラクセル220」(商品名)、数平均分子量:約2000、一般式(III-1)中、R311:ペンタメチレン基、n311:約18)
B-2:ポリエステルポリオール(DIC株式会社製、「OD-X-2692」(商品名)、数平均分子量:約2000、一般式(IV-1)中、R411:テトラメチレン基、R421:イソブチレン基、n411:約10)
B-3:ポリエステルポリオール(株式会社クラレ製、「P-2020」(商品名)、数平均分子量:約2000、一般式(IV-1)中、R411:フェニレン基、R421:3-メチルペンタメチレン基、n411:約8)
【0197】
[合成例1]ポリカーボネートジオールP-1の製造
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に1,5-ペンタンジオール230g、1,6-ヘキサンジオール250g、及び、エチレンカーボネート400gを仕込んだ後、触媒としてチタンテトラ-n-ブトキシドを0.0468g入れた。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、留出液の一部を抜き出しながら、反応温度165℃で12時間反応した。次いで、反応器を直接コンデンサーに接続し、オイルバスの温度を180℃に上げた後、圧力を徐々に下げでさらに3時間反応を行い、常温で液体であるポリカーボネートジオールP-1(466g)を得た。得られたポリカーボネートジオールP-1の水酸基価は、55.2mg-KOH/gであった。また、得られたポリカーボネートジオールP-1の数平均分子量は、2033であった。
【0198】
[合成例2]ポリカーボネートジオールP-2の製造
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に1,6-ヘキサンジオール270g、1,4-ブタンジオール250g、及び、エチレンカーボネート445gを仕込んだ後、触媒としてチタンテトラ-n-ブトキシドを0.0960g入れた。反応器を140~160℃のオイルバスに浸漬し、留出液の一部を抜き出しながら、反応温度90~160℃で20時間反応した。次いで、反応器を直接コンデンサーに接続し、オイルバスの温度を180℃に上げた後、圧力を徐々に下げでさらに8時間反応を行い、常温で液体であるポリカーボネートジオールP-2(462g)を得た。得られたポリカーボネートジオールP-2の水酸基価は、56.1mg-KOH/gであった。また、得られたポリカーボネートジオールP-2の数平均分子量は、2000であった。
【0199】
[合成例3]ポリカーボネートジオールP-3の製造
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に1,5-ペンタンジオール230g、1,6-ヘキサンジオール250g、及び、エチレンカーボネート400gを仕込んだ後、触媒としてチタンテトラ-n-ブトキシドを0.0468g入れた。反応器を180℃のオイルバスに浸漬し、留出液の一部を抜き出しながら、反応温度165℃で12時間反応した。次いで、反応器を直接コンデンサーに接続し、オイルバスの温度を165℃に上げた後、圧力を徐々に下げでさらに3時間反応を行い、常温で液体であるポリカーボネートジオールP-3(478g)を得た。得られたポリカーボネートジオールP-3の水酸基価は、112.0mg-KOH/gであった。また、得られたポリカーボネートジオールP-3の数平均分子量は、1002であった。
【0200】
[実施例1]ポリカーボネートジオール組成物SA-1の製造
攪拌装置を備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に、合成例2で得られたポリカーボネートジオールP-2を90質量部(360g)、及び、ポリオキシテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製、「PTMG2000」(商品名)、数平均分子量:約2000)を10質量部(40g)仕込んだ。次いで、反応器内において、真空ポンプを用いて0.1kPa.s以下の減圧にして120℃で10分間撹拌し、その後窒素置換を行い、酸素濃度が0.5%以下であることを確認した。窒素流量1L/minを維持しながら、反応器内温度を約145℃で12時間に加熱撹拌した。反応液について、経時的に濁点滴定を行い、濁点滴定量に変化がなくなったことを確認したら、ジブチルリン酸をチタンテトラ-n-ブトキシドに対して、質量比で1.3倍量になるよう加えて、反応器内温度として110℃で3時間加熱処理することによりポリカーボネートジオール組成物SA-1を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SA-1の各物性を上記の方法により測定した。結果を表1に示す。得られたポリカーボネートジオール組成物SA-1の水酸基価は、56.6mg-KOH/gであった。また、得られたポリカーボネートジオール組成物SA-1の数平均分子量は、1982であった。
また、得られたポリカーボネートジオール組成物SA-1は、下記式(A1)で表される繰り返し構造単位と、下記式(B1)で表される繰り返し構造単位と、を含有していた。
【化24】
・・・(A2)
(一般式(A1)中、R
11は、炭素数4又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化25】
・・・(B1)
(一般式(B1)中、R
21は、テトラメチレン基であり、n21の平均値は約28である。)
【0201】
[実施例2~13]
各原料の種類、仕込み量をそれぞれ表1及び2に記載のとおりに変更したこと以外はすべて実施例1と同様の条件と方法で反応を行い、実施例2~13のポリカーボネートジオール組成物SA-2~SA-13を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SA-2~SA-13の濁点滴定の際の定期定量及び各物性を上記の方法により測定した。結果を表1及び2に示す。
また、得られたポリカーボネートジオール組成物SA-2~SA-13は、順に下記式(A2)~(A13)で表される繰り返し構造単位と、下記式(B2)~(B13)で表される繰り返し構造単位と、を含有していた。
【化26】
・・・(A2)
(一般式(A2)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化27】
・・・(B2)
(一般式(B2)中、R
21は、テトラメチレン基であり、n21の平均値は約28である。)
【化28】
・・・(A3)
(一般式(A3)中、R
11は、炭素数4又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化29】
・・・(B3)
(一般式(B3)中、R
21は、イソプロピレン基及びメチレン基であり、n21の平均値は約35である。)
【化30】
・・・(A4)
(一般式(A4)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化31】
・・・(B4)
(一般式(B4)中、R
21は、テトラメチレン基あり、n21の平均値は約28である。)
【化32】
・・・(A5)
(一般式(A5)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化33】
・・・(B5)
(一般式(B5)中、R
21は、2,2-ジメチルトリメチレン基及びテトラメチレン基あり、n21の平均値は約23である。)
【化34】
・・・(A6)
(一般式(A6)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化35】
・・・(B6)
(一般式(B6)中、R
21は、2,2-ジメチルトリメチレン基及びテトラメチレン基あり、n21の平均値は約23である。)
【化36】
・・・(A7)
(一般式(A7)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化37】
・・・(B7)
(一般式(B7)中、R
21は、テトラメチレン基あり、n21の平均値は約14である。)
【化38】
・・・(A8)
(一般式(A8)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化39】
・・・(B8)
(一般式(B8)中、R
21は、イソプロピレン基及びメチレン基あり、n21の平均値は約44である。)
【化40】
・・・(A9)
(一般式(A9)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化41】
・・・(B9)
(一般式(B9)中、R
21は、イソプロピレン基及びメチレン基あり、n21の平均値は約35である。)
【化42】
・・・(A10)
(一般式(A10)中、R
11は、炭素数4又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化43】
・・・(B10)
(一般式(B10)中、R
31は、ペンタメチレン基である。)
【化44】
・・・(A11)
(一般式(A11)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化45】
・・・(B11)
(一般式(B11)中、R
41は、テトラメチレン基であり、R
42は、イソブチレン基である。)
【化46】
・・・(A12)
(一般式(A12)中、R
11は、炭素数5又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化47】
・・・(B12)
(一般式(B12)中、R
41は、フェニレン基であり、R
42は、3-メチルペンタメチレン基である。)
【化48】
・・・(A13)
(一般式(A3)中、R
11は、炭素数4又は6の脂肪族炭化水素基である。)
【化49】
・・・(B13)
(一般式(B3)中、R
21は、イソプロピレン基及びメチレン基であり、n21の平均値は約35である。)
【0202】
[比較例1]ポリカーボネートジオール組成物SB-1の製造
攪拌装置を備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に、合成例1で得られたポリカーボネートジオールP-1を25質量部(100g)、及び、ポリオキシテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製、「PTMG2000」(商品名)、数平均分子量:約2000)を75質量部(300g)仕込んだ。エアー雰囲気下、反応器内温度を約145℃に加熱し、撹拌しながら10時間維持した。次いで、ジブチルリン酸をチタンテトラ-n-ブトキシドに対して、質量比で1.3倍量になるよう加えて、反応器内温度として110℃で3時間加熱処理することによりポリカーボネートジオール組成物SB-1を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-1の各物性を上記の方法により測定した。結果を表3に示す。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-1の水酸基価は、56.2mg-KOH/g、数平均分子量は、1996であった。
【0203】
[比較例2]ポリカーボネートジオール組成物SB-2の製造
各原料の種類、仕込み量をそれぞれ表2に記載のとおりに変更したこと以外はすべて比較例1と同様の条件と方法で反応を行い、比較例2のポリカーボネートジオール組成物SB-2を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-2の各物性を上記の方法により測定した。結果を表3に示す。
【0204】
[比較例3]ポリカーボネートジオール組成物SB-3の製造
攪拌装置を備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に、合成例2で得られたポリカーボネートジオールP-2を400g、ジブチルリン酸をチタンテトラ-n-ブトキシドに対して、質量比で1.3倍量になるよう加えて、反応器内温度として110℃で3時間加熱処理することによりポリカーボネートジオール組成物SB-3を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-3の各物性を上記の方法により測定した。結果を表3に示す。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-3の水酸基価は、56.1mg-KOH/g、数平均分子量は、2000であった。
【0205】
[比較例4]ポリカーボネートジオール組成物SB-4の製造
攪拌装置を備えた1Lのガラス製フラスコ(以下「反応器」とも記す)に、合成例2で得られたポリカーボネートジオールP-2を90質量部(360g)、及び、ポリオキシテトラメチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製、「PTMG2000」(商品名)、数平均分子量:約2000)を10質量部(40g)仕込んだ。次いで、反応器内において、真空ポンプを用いて0.1kPa.s以下の減圧にして120℃で10分間撹拌し、その後窒素置換を行い、酸素濃度が0.5%以下であることを確認した。窒素流量1L/minを維持しながら、反応器内温度を約145℃で6時間に加熱撹拌した。反応液について、経時的にGPC測定を行い、原料に由来するピークの消失及び生成物に由来するピークの出願を経時的に確認し、反応の進行を確認した。その後、ジブチルリン酸をチタンテトラ-n-ブトキシドに対して、質量比で1.3倍量になるよう加えて、反応器内温度として110℃で3時間加熱処理することによりポリカーボネートジオール組成物SB-4を得た。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-4の各物性を上記の方法により測定した。結果を表3に示す。得られたポリカーボネートジオール組成物SB-4の水酸基価は、56.2mg-KOH/gであった。また、得られたポリカーボネートジオール組成物SB-4の数平均分子量は、1996であった。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
[応用例1]ポリウレタンフィルムPA-1の合成
熱電対と冷却管とを設置した500mLセパラブルフラスコに、ポリカーボネートジオール組成物SA-1 38g、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある) 224g、1%ジブチル錫ジラウレートトルエン溶液 0.26g(MDIとポリカーボネートジオール組成物との合計質量に対して50ppm)を入れ、40℃のオイルバスで加温した。フラスコ内窒素雰囲気下100rpmでフラスコ内の溶液を攪拌しながら、MDIを14.8g(ポリカーボネートジオール組成物のOH[mol]に対し3.09倍[mol]))を滴下し、さらにフラスコ内の溶液を1.5時間程度攪拌した。イソシアネート基濃度を分析し、理論量消費されたことを確認し、プレポリマーを得た。続いて、残存イソシアネートより算出した必要量の1,4-ブタンジオール(1,4-BD)3.2gをフラスコ内に分割添加した。フラスコ内の溶液を約1時間攪拌後、エタノールを約1g添加し、さらにフラスコ内の溶液を30分攪拌し、数平均分子量74000のポリウレタン溶液を得た。
0.8mm厚アプリケーターを用い、ガラス板(JIS R3202、2mm×100mm×150mm)上に、得られたポリウレタン溶液を板上部に滴下し、乾燥膜厚が50~150μmになるよう塗工し、表面温度60℃のホットプレート上で2時間、続いて80℃のオーブン中で12時間乾燥させた。さらに23℃、55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置しポリウレタンフィルムPA-1を得た。得られたポリウレタンフィルムPA-1について上記の方法により各種物性の評価に供した。評価結果を表4に示す。
【0210】
[応用例2~13]
応用例1のポリウレタンフィルムの製造において、使用するポリカーボネートジオール組成物を実施例2~12で製造したポリカーボネートジオール組成物SA-2~SA-13に変更した以外は応用例1と同様の条件で反応を行い、ポリウレタンフィルムPA-2~PA-13を得た。得られたポリウレタンフィルムPA-2~PA-13について上記の方法により各種物性の評価に供した。評価結果を表4及び5に示す。
【0211】
[応用比較例1~4]
応用例1のポリウレタンフィルムの製造において、使用するポリカーボネートジオール組成物等を比較例1~3で製造したポリカーボネートジオール組成物等SB-1~SB-4に変更した以外は応用例1と同様の条件で反応を行い、ポリウレタンフィルムPB-1~PB-4を得た。得られたポリウレタンフィルムPB-1~PB-4について上記の方法により各種物性の評価に供した。評価結果を表6に示す。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
表1~3に示す結果から、繰り返し構造単位(I)を含み、さらに繰り返し構造単位(II)~(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し構造単位を含み、特定の条件を満たすポリカーボネートジオール組成物は、特定の条件を満たさないポリカーボネートジオール組成物よりも、ポリオールや溶剤との相溶性に優れることがわかった。また、ポリカーボネートジオール組成物の酸価、及び/又は過酸化物価を制御することで、APHAが一層低く、着色が一層低減できることがわかった。
【0216】
また、表4~6に示す結果から、実施例のポリカーボネートジオール組成物から得られたポリウレタンは、柔軟性と低温での機械特性に優れ、耐湿熱性等の耐久性とのバランスにも優れることがわかった。また、実施例のポリカーボネートジオール組成物から得られたポリウレタン溶液のAPHAの経時変化も良好であることが確認された。
【0217】
本出願は、2021年4月21日出願の日本特許出願(特願2021-072116号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、例えば、塗料やポリウレタンの製造時においてハイソリッド化が可能であり、塗料やポリカーボネート系ポリウレタンの原料として有用である。また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物を用いて製造されるポリウレタンは、色調が安定しており、低温柔軟性、耐久性に優れた特長を有しており、弾性繊維、合成又は人工皮革、塗料、高性能エラストマー等幅広い分野で好適に利用できる。