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特許7461106貫通扉、軌道輸送システム用の車両、およびその改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】貫通扉、軌道輸送システム用の車両、およびその改造方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/06 20060101AFI20240327BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20240327BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240327BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B61D17/06
B61D19/00 B
B61D37/00 G
B61K13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019006635
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020114720
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】近江 泰志
(72)【発明者】
【氏名】勝田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】大坪 孝一
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-110366(JP,A)
【文献】特開2005-231427(JP,A)
【文献】特開2007-193459(JP,A)
【文献】特開2016-88183(JP,A)
【文献】登録実用新案第3159027(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066459(US,A1)
【文献】特開2018-146487(JP,A)
【文献】特開2014-65404(JP,A)
【文献】中曽根隆太,長峯望,鵜飼正人,向嶋宏記,出口大輔,村瀬洋,“画像処理技術を用いた前方障害物検知装置の開発”,鉄道総研報告,日本,鉄道総合技術研究所,2017年03月,第31巻第3号,pp.11-16,ISSN 0914-2290
【文献】渡辺将旭,林俊寛,“高速走行車両の走行安全保障のための物体の位置追跡と確信度による支障物検知”,第33回日本ロボット学会学術講演会予稿集DVD-ROM,日本,日本ロボット学会,2015年09月03日
【文献】加藤君丸,渡辺裕,“線路脇カメラと鉄道車載カメラによる障害物検出の検討”,第31回 画像符号化シンポジウム 第21回 映像メディア処理シンポジウム The Proceedings of the 31st Picture Coding Symposium of Japan,The Proceedings of the 21st Image Medi,日本,2016年11月16日,pp.132-133
【文献】篠田憲幸,竹内俊裕,山口大助,渡邉翔一郎,水間毅,“LiDARセンサを用いた絶対位置検出手法について”,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.364 [online] IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2018年12月07日,第118巻第364号,pp.47-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/06,19/00,37/00,
B61K 9/08,13/00,
G01C 15/00,
B61L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行する軌道輸送システムの車両の妻面に設置される貫通扉において、
複数の障害物検知センサを固定するセンサ設置枠を有し、
前記センサ設置枠に前記複数の障害物検知センサが固定され、
前記複数の障害物検知センサは遠距離用のセンサと、近距離用のセンサを有し、前記遠距離用のセンサが前記近距離用のセンサよりも前記センサ設置枠の上部に設置されたことを特徴とする貫通扉。
【請求項2】
軌道上を走行する軌道輸送システムの車両の妻面に設置される貫通扉において、
複数の障害物検知センサを固定するセンサ設置枠を有し、
前記センサ設置枠に前記複数の障害物検知センサが固定され、
前記複数の障害物検知センサはミリ波レーダーセンサを含み、前記ミリ波レーダーセンサは前記センサ設置枠の上部に設置されたことを特徴とする貫通扉。
【請求項3】
軌道上を走行する軌道輸送システムの車両の妻面に設置される貫通扉において、
複数の障害物検知センサを固定するセンサ設置枠を有し、
前記複数の障害物検知センサの電源線と前記複数の障害物検知センサで取得したデータを障害物検知ロジックを搭載したコントローラと送受信するデータ通信線の少なくとも一方を車両外から車両内へ引き込むための穴が設けられていることを特徴とする貫通扉。
【請求項4】
妻面に貫通扉を有する軌道輸送システム用の車両において、
前記貫通扉に複数の障害物検知センサを固定するセンサ設置枠を有し、
前記貫通扉が制御部を有し、前記制御部と車両のブレーキ指令制御線とが接続されたことを特徴とする軌道輸送システム用の車両。
【請求項5】
妻面に貫通扉を有する軌道輸送システム用の車両の改造方法において、
前記貫通扉を、複数の障害物検知センサを固定するセンサ設置枠を有する貫通扉にとりかえることを特徴とする軌道輸送システム用の車両の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する軌道輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転士の高齢化に伴う人材不足懸念やオペレーションコスト低減などの理由により既設の軌道輸送システムにおいて運転を自動で行う研究が行われている。軌道上を輸送用車両が走行する軌道輸送システムでは、軌道上に障害物があった場合、操舵による回避が出来ないため、障害物を検知することは輸送システムの安全性や運用性を向上させるために重要である。
【0003】
現状は運転士が軌道上および経路上の障害物を目視によって検知している。一方、自動運転を行うには経路上の障害物を自動で検知する仕組みが必要となる。
障害物検知技術は自動車の自動運転向けに研究が進められており、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、カメラなど複数のセンサを用いる方法が一般的である。複数のセンサを用いることで、さまざまな条件(天候、明るさ、障害物までの距離など)においても障害物を検知できるようになる。
【0004】
また、一つのセンサが故障しても他のセンサでバックアップ可能であり、運用性が向上するメリットもある。複数のセンサを用いて障害物検知を行う場合、各センサの情報を同一座標上に融合することが重要であり、そのために車両に取り付けたセンサの位置関係を把握するためのキャリブレーションが行われる。特許文献1には複数のセンサのキャリブレーションを効率的に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-146487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軌道輸送システムは限られた車両をやり繰りして営業運転を行っており、障害物検知センサ取り付けのために車両を長期間営業運転の運用から外すことは難しい。そのため車両の運用効率を維持したまま既設路線の車両に自動運転向けの障害物検知センサを設置できることが重要となる。
【0007】
特許文献1に記載の技術ではキャリブレーションの作業を効率化することを対象としており、キャリブレーション作業が不要になるわけではない。また障害物検知センサを正確な位置関係となるように取り付けた専用の車両を対象としており、センサの取り付けに時間が掛かるという課題がある。
本発明は上記課題に対応すべく、軌道輸送システムの車両に複数のセンサを容易に設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、軌道輸送システムの車両の妻面に設置される貫通扉において、複数のセンサを固定する設置部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軌道輸送システムの車両に複数のセンサを容易に設置できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】貫通扉を有する軌道輸送システム車両の概観図である。
図2】本発明の実施例における貫通扉の概観図である。
図3】本発明の実施例におけるセンサ枠の概観図である。
図4】本発明の実施例における貫通扉の車内側からの概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、既設の軌道輸送システム車両に複数のセンサを取り付ける場合に、貫通扉を付け替えるだけでよく、取り付け時間を短縮できる実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は貫通扉を有する軌道輸送システム車両の概観図である。貫通扉102は、列車などの軌道輸送システムの車両101の妻面に設けられ、車両同士を連結する場合はその貫通路を仕切るものである。本実施例の貫通扉は、先頭車の前面、すなわち進行方向側の妻面に位置する場合に効果を発揮するものである。
【0013】
図2は本発明の実施例における貫通扉の外観図である。
本実施例の貫通扉は障害物検知センサ201と前記センサを設置するための設置部材であるセンサ設置枠202、貫通扉本体203からなる。センサ枠と貫通扉は固定されている。障害物検知センサは地表に対して垂直の方向に複数並べて設置される。
【0014】
図3はセンサ設置枠202の概観図である。センサ設置枠202は複数のセンサが設置可能な構成となっている。また、センサを汚れから防止するためにセンサ設置枠202の前面にはアクリル板が設置されている。汚れ防止のために設置するものはアクリル板以外のものでもよく、センサに影響を与えない、もしくは影響が小さいものであれば材質は問わない。本実施例では汚れが防止できればよく、その方法は問わない。
【0015】
センサの配置は各センサの性質や仕様用途によって定義する。GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ301は電波が受信しやすいように一番上に設置することが望ましい。遠距離向けのセンサはオクルージョンを避けるためにセンサ設置枠202の上のほうに設置され、近距離用のセンサ(たとえば、LIDAR(Light Detection and Ranging))302は死角を減らすためにセンサ設置枠202の下のほうに設置される。
【0016】
センサ枠の中間部のセンサ設置順序は問わないが、オクルージョンを避けるためにカメラはなるべく上のほうに設置するのが望ましい。また、ミリ波レーダーセンサもレールの干渉を避けるためにセンサ枠の上のほうに設置する。ミリ波レーダーセンサは望ましくは、センサ設置枠202の高さ方向で中間よりも上部に設置する。上述のセンサの配置順序は一例であり、本発明ではセンサの設置順序は状況に応じて適切に設定される。
【0017】
図4は本発明の実施例における貫通扉の車内側からの概観図である。貫通扉にはセンサの電源線やデータ通信用のケーブルを通す穴401が設けられている。このようにすることで車両への穴あけ工事が不要となりセンサの取り付け作業時間を削減できる。
【0018】
次に本実施例の貫通扉の車両への設置方法について述べる。まず、工場において取り付け対象となる車両の貫通扉にセンサ枠と障害物検知センサを取り付ける。この段階で各センサの位置関係が所定の位置関係となるように修正を行う。このようにすることで車両への取り付け段階において各センサの位置関係の調整を行う必要が無くなり、取り付けにかかる作業時間を低減することができる。また、各センサの位置関係が車両によらず一定となるため、取り付け車両ごとにキャリブレーション作業を行う必要が無くなり取り付けにかかる作業時間を低減することができる。
【0019】
工場で組み上げた貫通扉と障害物検知センサを一体化した貫通扉を車両基地において車両に取り付ける。このときの作業は車両に設置されている貫通扉を取り外し、代わりにセンサが取り付けられた貫通扉を車両に取り付けるだけで済む。
【0020】
工場で障害物検知センサを取り付ける代わりに、センサ自体は別の場所で取り付けられるようにしてもよい。この場合でも、少なくとも棚の高さ方向の精度は担保されるため取り付け作業時間の低減効果が得られる。さらに障害物検知センサの取り付け位置が一意に定まる加工をセンサ設置枠202に施していれば、工場で組み上げる場合と同等の精度を達成することも可能である。
【0021】
以上のように、本実施例の貫通扉を用いた改造方法によれば既設の軌道輸送システムの車両への複数の障害物検知センサの取り付け作業時間を削減することができる。また各センサの位置関係が固定されるため取り付け車両ごとにキャリブレーションを実施する必要がなくなり、営業運転の合間の定期検査時などに障害物検知センサの取りつけが可能となる。そのため障害物検知センサ設置のために対象車両を営業運転の運用から外す必要が無くなり、車両の運用効率を維持したまま既設路線の車両に自動運転向けの障害物検知センサを設置することが可能となる。
【0022】
実施例1においてデータ通信用ケーブルを貫通扉の穴401から車両内へ引き込む構成としたが、障害物検知ロジックを搭載したコントローラーをセンサ設置枠に設置するようにしてもよい。このようにすることで車両内にコントローラーの設置スペースがない車両にも障害物検知システムを導入することが可能となる。
【0023】
実施例1において電源線を貫通扉の穴401から車両内へ引き込む構成としたが、センサ用電源をセンサ設置枠に設置するようにしてもよい。このようにすることで車両側の電源工事なしで障害物検知システムを導入することが可能となる。
【0024】
軌道輸送システムの車両は非常時用に空気配管を介した空気の力で動作する空気ブレーキシステムが構築されている。本実施例の貫通扉に制御部として、空気ブレーキの配管を制御する機構(たとえば電磁弁など)を搭載してもよい。貫通扉と空気ブレーキシステムを接続することで、障害物検知センサからの情報に基づき貫通扉に設置されたコントローラーで障害物を認識し、障害物との衝突の可能性がある場合は前記空気ブレーキの配管を制御する機構を動作させ、車両のブレーキを動作させるようにしてもよい。
つまり、貫通扉に設置された制御部と車両のブレーキ指令制御線とが接続された構成としてもよい。
【0025】
このようにすることで本実施例の貫通扉を車両に設置するだけで、障害物の検知および回避動作(ブレーキ)までを車両側の工事なしに実現することが可能となる。なお、ブレーキ指令は空気ブレーキの配管を制御する方法以外でもよく、たとえばブレーキ指令の制御線の加圧、非加圧を電磁弁などを介して制御するようにしてもよい。
【0026】
実施例では設置するセンサの目的を障害物検知として説明したが、設置するセンサの目的は障害物検知以外でもよく、たとえば車両の位置推定に用いてもよい。また設置するセンサの数や種類は上記で述べたもの以外でもよい。
【符号の説明】
【0027】
101 軌道輸送システム車両
102 貫通扉
201 障害物検知センサ
202 センサ設置枠
203 貫通扉本体
301 GNSSセンサ
302 近距離センサー
401 穴
図1
図2
図3
図4