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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】表装材、表装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240327BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240327BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20240327BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/20 Z
B32B27/20 A
E04F13/18 A
E04F15/10 104A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019068657
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163791
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 速人
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 洋平
(72)【発明者】
【氏名】則竹 慎也
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155643(WO,A1)
【文献】特開2016-190465(JP,A)
【文献】特開昭54-158487(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053164(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079596(WO,A1)
【文献】特開2007-098849(JP,A)
【文献】特開平06-039969(JP,A)
【文献】特開2017-170732(JP,A)
【文献】特公昭54-003704(JP,B1)
【文献】特開2013-173808(JP,A)
【文献】実開平03-052141(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、
前記ベース基材に積層され、且つインクにより形成された絵柄層と、
前記絵柄層に積層されたトップコート層と、を備え、
前記ベース基材は、合成樹脂類と、骨材と、吸熱性物質と、を含有し、
前記ベース基材と、前記絵柄層と、前記トップコート層と、の積層体は、JIS K6911に規定の耐燃性評価方法(A法)に沿って評価した、前記積層体の燃焼距離が25mm以下であることを要件とする自己消火性を有し、
前記絵柄層は、有機樹脂硬化物と、無機顔料と、を含有し、
前記絵柄層のうち前記有機樹脂硬化物の最大厚さは、10.3μm以上27.9μm以下の範囲内であり、
前記合成樹脂類の含有量は、20質量%以上30質量%以下の範囲内であり、
前記骨材は、着色細骨材であり、
前記骨材及び前記吸熱性物質の含有量は、70質量%以上80質量%以下の範囲内であり、
前記骨材の含有量は、60質量%以上であり、
前記吸熱性物質の含有量は、10質量%以上であることを特徴とする表装材。
【請求項2】
前記吸熱性物質は、少なくとも一つの金属水酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載した表装材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した表装材を製造する表装材の製造方法であって、
前記絵柄層を、インクジェット印刷法により形成することを特徴とする表装材の製造方法。
【請求項4】
前記絵柄層を、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いて形成することを特徴とする請求項3に記載した表装材の製造方法。
【請求項5】
前記カチオン硬化性UVインクジェットインキは、顔料主成分として無機顔料を含むことを特徴とする請求項4に記載した表装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物の内外壁表面や、床面等として好適な表装材と、表装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外壁表面や床面として好適な表装材としては、例えば、特許文献1に開示されている構成のものがある。特許文献1に開示されている構成は、合成樹脂と、天然石と、着色骨材と、吸熱性物質を含む化粧材部と、基材部を備える構成である。合成樹脂の成分は、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリクロロプレン、塩素化ポリエチレンから選択される成分を20質量%以上含有しており、合成樹脂の固形分が化粧材部の質量に占める割合(x%)が4%を超えて13%未満である。また、吸熱性物質が化粧材部の質量に占める割合(y%)が60%以下である。さらに、x及びyがy≧7x-56を満足させる範囲内にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2542992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、基材部の自己消火性が低いため、建築物等の表装材として耐火性能が低いという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐火性能を向上させることが可能な表装材と、表装材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ベース基材と、ベース基材に積層された絵柄層と、絵柄層に積層されたトップコート層と、を備える表装材である。また、ベース基材は、JIS K6911に規定の耐燃性評価方法(A法)に沿ってベース基材を評価した場合に燃焼距離が25[mm]以下であることを要件とする自己消火性を有する。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ベース基材と、絵柄層と、トップコート層を備える表装材の製造方法であり、絵柄層を、インクジェット印刷法により形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、耐火性能を向上させることが可能な表装材と、表装材の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態における表装材の構成を示す断面図である。
図2】本発明の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
(第1実施形態)
以下、図1を参照して、表装材10の構成について説明する。
表装材10は、図1に示すように、ベース基材1と、絵柄層2と、トップコート層4を備える。
【0010】
(ベース基材)
ベース基材1は、自己消火性を有する材料を用いて形成されている。これにより、ベース基材1は、自己消火性を有している。
自己消火性は、ベース基材1を、JIS K6911に規定されている耐燃性評価方法(A法)に沿って評価した場合に、燃焼距離が25[mm]以下であることを要件とする。
自己消火性を有する材料としては、例えば、ポリカーボネートや塩化ビニル等の自己消火性を有する樹脂フィルムや、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムに、公知の難燃剤や吸熱性物質を添加したもの等を用いることが可能である。また、天然石や天然石の砕石、着色骨材、寒水砂、セラミック砕粒から選択した骨材や充填材に加えて、水酸化アルミニウム等の吸熱性物質を、骨材又は充填材として使用し、合成樹脂成分を結合材とするものをシート状に形成したものを用いることも可能である。
【0011】
第1実施形態では、一例として、ベース基材1の構成を、合成樹脂類と、骨材と、吸熱性物質と、を含有する構成とした場合について説明する。
吸熱性物質は、熱分解する際に吸熱する物質である。吸熱性物質としては、例えば、金属水酸化物、フッ化アルミニウム、第二リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ほう砂、炭酸水素ナトリウム、塩化コバルトアンモニア錯体等を用いることが可能であり、少なくとも一つの金属水酸化物を含むことが好ましい。
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化コバルト、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等を用いることが可能である。
【0012】
第1実施形態では、一例として、吸熱性物質が含む金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのうち少なくとも一つである場合について説明する。すなわち、第1実施形態では、一例として、吸熱性物質が、金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのうち少なくとも一つを含む場合について説明する。
水酸化アルミニウムとしては、天然鉱物、ベーマイト、ギブサイト、ダイアスボアがある。
第1実施形態では、一例として、ベース基材1の構成を、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムのうち少なくとも一つを含む構成とした場合について説明する。
【0013】
ベース基材1の風合いや加工性、ハンドリング性等を考慮すると、結合材としての合成樹脂成分の含有量は、20質量%以上30質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、骨材、充填材、吸熱性物質の含有量は、70質量%以上80質量%以下の範囲内とすることが好ましい。特に、吸熱性物質は、ベース基材1の自己消火性が発現する量を添加する必要がある。
第1実施形態では、一例として、ベース基材1の構成を、合成樹脂類の含有量が20質量%以上30質量%以下の範囲内であり、骨材及び吸熱性物質の含有量が、70質量%以上80質量%以下の範囲内である構成とした場合について説明する。
【0014】
(絵柄層)
絵柄層2は、ベース基材1に積層されている。具体的に、絵柄層2は、図1において、ベース基材1の表面に積層されており、ベース基材1の表面全体を覆うように形成されている。なお、形成する絵柄に応じて、ベース基材1が露出した部分が存在していても構わない。
絵柄層2は、印刷対象となるベース基材1の種類に応じて、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等、公知の印刷方式を用いて形成することが可能である。特に、ベース基材1の表面が凹凸形状を有している場合は、非接触の印刷方式であるインクジェット印刷法を用いることが望ましい。
【0015】
絵柄層2を形成するインクとしては、公知の材料を用いることが可能である。特に、インクジェット印刷法を用いる場合は、水系、溶剤系、UV系等各種従来公知のインクを用いることが可能であり、印刷対象となるベース基材1の種類等に応じて、適宜選択することが可能である。ここで、インクの成分としては、着色剤としての顔料又は染料を含んでおり、用いるインクの色に合わせて従来公知の顔料(無機顔料、有機顔料、ブラック顔料等)、染料を用いることが可能である。
【0016】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄等を用いることが可能である。また、例えば、カドミウムレッド、ベンガラ、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム等を用いることが可能である。さらに、例えば、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン等を用いることが可能である。これに加え、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、及びコバルトバイオレット等を用いることが可能である。
【0017】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等を用いることが可能である。
ブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラック等を用いることが可能である。また、カーボンブラックの他にも、本発明で用いることが可能であるブラック顔料としては、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラック等がある。また、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料や、ブラウン顔料、オレンジ顔料等の有彩色顔料を複数使用して、ブラック顔料とすることも可能である。
【0018】
染料としては、特に制限はなく、油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等を用いることが可能である。色相としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ブルー、グリーン、レッドが好ましく用いられ、特に好ましくは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各染料が好ましく用いられる。油溶性染料の中には、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより、油溶性を示す染料も含まれる。また、C.I.ディスパーズイエロー、C.I.ディスパーズレッド、C.I.ディスパーズブルー等の分散染料を用いることも可能である。特に、長期の耐候性を付与したい場合には、無機顔料を使用したインクを用いて形成することが望ましい。
【0019】
また、絵柄層2は、少なくとも有機樹脂硬化物及び無機顔料を含み、絵柄層2における有機樹脂硬化物の最大厚さを、3[μm]以上30[μm]以下の範囲内とすることが望ましい。
第1実施形態では、一例として、絵柄層2における有機樹脂硬化物の最大厚さを、3[μm]以上30[μm]以下の範囲内とした場合について説明する。
これは、絵柄層2における有機樹脂硬化物の最大厚さが3[μm]未満である場合、絵柄層2を形成するインクとして無機顔料を使用すると、発色が悪く意匠が乏しくなるためである。また、絵柄層2における有機樹脂硬化物の最大厚さが30[μm]を超える場合、絵柄層2を形成するインクが過剰な塗布となり、印刷時間が長くなるためである。
【0020】
(トップコート層)
トップコート層4は、絵柄層2に積層されており、絵柄層2を間に挟んで、ベース基材1の表面と対向している。
トップコート層4は、光沢等の意匠性や、耐傷性、耐候性等の表面物性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。トップコート層4の硬化方式は、1液、2液、活性エネルギー線照射等、公知の方式を用いることが可能である。トップコート層4に用いる樹脂材料は、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等、公知の材料を用いることが可能である。
【0021】
(表装材10の製造方法)
以下、図1を参照して、第1実施形態の表装材10を製造するための製造方法(表装材10の製造方法)を説明する。
まず、ベース基材1の表面に、絵柄層2を形成するためのインクを、インクジェット印刷法により塗布する。これにより、絵柄層2を形成する。すなわち、絵柄層2を、インクジェット印刷法により形成する。
ここで、インクジェット印刷法により塗布するインクとしては、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いる。すなわち、絵柄層2は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いて形成する。
【0022】
また、カチオン硬化性UVインクジェットインキの構成は、顔料主成分として無機顔料を含む構成とする。
絵柄層2を形成した後、紫外線を照射することで、絵柄層2を硬化させる。
次に、硬化させた絵柄層2のベース基材1と対向する面と反対側の面に、トップコート層4を積層する。これにより、表装材10を製造する。
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0023】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の表装材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)ベース基材1と、ベース基材1に積層された絵柄層2と、絵柄層2に積層されたトップコート層4と、を備え、ベース基材1が、自己消火性を有する。
その結果、表装材10に対して自己消火性を付与することが可能となり、耐火性能を向上させることが可能な表装材10を提供することが可能となる。これに加え、絵柄層2を設けることで、様々な石材等を表現することが可能なり、意匠性を向上させることが可能となる。また、絵柄層2の構成により、耐火性能を向上させるとともに、貴重な石材を模した表装材10を提供することが可能となる。
【0024】
(2)ベース基材1が、合成樹脂類と、骨材と、吸熱性物質を含有する。これに加え、合成樹脂類の含有量が、20質量%以上30質量%以下の範囲内であり、骨材及び吸熱性物質の含有量が、70質量%以上80質量%以下の範囲内である。
その結果、ベース基材1が含有する成分の配合を規定することで、ベース基材1の構成が、可撓性と自己消火性を両立することが可能な構成となる。
(3)吸熱性物質が、少なくとも一つの金属水酸化物を含む。
その結果、ベース基材1の自己消火性を向上させることが可能となる。
【0025】
(4)絵柄層2が、有機樹脂硬化物と、無機顔料と、を含有する。これに加え、有機樹脂硬化物の最大厚さが、3[μm]以上30[μm]以下の範囲内である。
その結果、絵柄層2に無機顔料を含有させることで、絵柄の形成に加え、耐候性に優れた絵柄層2を形成することが可能となる。
これに加え、意匠性の低下と、絵柄層2を形成する時間の長期化を抑制することが可能となる。
また、第1実施形態の表装材の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(5)絵柄層2を、インクジェット印刷法により形成する。
その結果、絵柄層2をインクジェット印刷法により形成することで、ベース基材1の素材や表面形状等に因らず、所望の絵柄を確実に印刷することが可能である。また、表装材10の耐火性能を向上させることが可能な表装材の製造方法を提供することが可能となる。
【0026】
(6)絵柄層2を、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いて形成する。
その結果、絵柄層2をカチオン硬化性UVインクジェットインキにて形成することで、酸素阻害による硬化不具合を低減させることが可能となり、ベース基材1との密着性に優れた絵柄層2を形成することが可能となる。
(7)絵柄層2を形成するカチオン硬化性UVインクジェットインキが、顔料主成分として無機顔料を含む。
その結果、カチオン硬化性UVインクジェットインキが含む顔料成分を、無機顔料のみとすることで、耐候性に優れた絵柄層2を形成することが可能となる。これにより、耐候性に優れた表装材10を提供することが可能となる。
【0027】
(変形例)
(1)第1実施形態では、表装材10の構成を、ベース基材1と、絵柄層2と、トップコート層4を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、表装材10の構成を、ベース基材1と、絵柄層2と、トップコート層4に加え、例えば、図2に示すように、機能層6を備える構成としてもよい。
機能層6は、ベース基材1の印刷面となる表面(図2では、上側の面)の反対側の面(裏面)に、例えば、剥離シート等で表面を保護した粘着層等により形成する。
また、例えば、ベース基材1の裏面に、織布や不織布等を積層してもよい。
また、例えば、ベース基材1と絵柄層2との間に、インク密着性を向上させるためのプライマー層を形成してもよい。
【実施例
【0028】
第1実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から6の表装材と、比較例1から4の表装材について説明する。
【0029】
(実施例1)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化アルミニウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、10.3[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例1の表装材を製造した。
【0030】
(実施例2)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化アルミニウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、色が濃いチャコールグレー柄の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、27.9[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例2の表装材を製造した。
【0031】
(実施例3)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化マグネシウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、11.6[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例3の表装材を製造した。
【0032】
(実施例4)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化アルミニウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、ラジカル重合型UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
ラジカル重合型UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、9.4[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートに対する室温保管は、ラジカル重合型UVインクジェットインキが有する硬化反応の特性から行なわず、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例4の表装材を製造した。
【0033】
(実施例5)
・ベース基材
ベース基材は、厚さ150[μm]の塩化ビニルフィルムを用いて形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、8.8[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例5の表装材を製造した。
【0034】
(実施例6)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化アルミニウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、4.9[μm]とした。
・トップコート層
トップコート層は、アクリル系の樹脂材料を用いて形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、実施例6の表装材を製造した。
【0035】
(比較例1)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を70質量%とした構成を除き、実施例1と同様に形成した。
・絵柄層、トップコート層
絵柄層及びトップコート層は、実施例1と同様に形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、比較例1の表装材を製造した。
【0036】
(比較例2)
・ベース基材
ベース基材は、厚さ125[μm]の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて形成した。
・絵柄層、トップコート層
絵柄層及びトップコート層は、実施例1と同様に形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、トップコート層を絵柄層に積層して、比較例2の表装材を製造した。
【0037】
(比較例3)
・ベース基材
ベース基材は、比較例1と同様に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、水性の染料インクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
水性の染料インクジェットインキには、着色剤として染料のみを使用した。
絵柄層としては、ベース基材に染料インクジェットインキが染み込む形で形成した。
・トップコート層
トップコート層は、実施例1と同様に形成した。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートは、十分に乾燥を行なった後、トップコート層を絵柄層に積層して、比較例3の表装材を製造した。
【0038】
(比較例4)
・ベース基材
ベース基材は、結合材としての合成樹脂成分(アクリル系樹脂エマルション)を30質量%、着色細骨材を60質量%、水酸化アルミニウムを10質量%含有するシート状に形成した。
・絵柄層
絵柄層は、カチオン硬化性UVインクジェットインキを用いたインクジェット印刷法により、御影石調の意匠を印刷することで形成した。
カチオン硬化性UVインクジェットインキには、着色剤として無機顔料のみを使用した。
絵柄層における有機樹脂硬化物の最大厚さは、11.7[μm]とした。
・表装材
絵柄層を積層した基材シートを、反応を進行させるために室温の環境下で24時間以上保管した後、実施例1から6及び比較例1から3とは異なり、トップコート層を形成せずに、比較例4の表装材を製造した。
【0039】
(性能評価、評価結果)
実施例1から6の表装材と、比較例1から4の表装材に対し、それぞれ、自己消火性、意匠性、インク密着性、耐溶剤性、耐候性を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0040】
<自己消火性>
JIS K6911に規定されている耐燃性評価方法(A法)にて評価した。
耐燃性評価方法において、燃焼距離が25[mm]以下である場合を自己消火性が「合格:○」とし、燃焼距離が25[mm]を超えて100[mm]以下の範囲内である場合を自己消火性が「不合格:×」とした。
<意匠性>
表装材の表面を擦った状態における意匠の保持性(柄落ちのし難さ)を、目視にて評価することで、印刷意匠を評価した。
【0041】
<インク密着性>
トップコート層を形成する前の絵柄層に対して、粘着テープを用いた密着試験を行うことで、印刷塗膜の密着性を評価した。
<耐溶剤性>
トップコート層を形成する前の絵柄層に対して、純水で50%希釈したエタノールにてラビングを行うことで、耐溶剤性を評価した。
【0042】
<耐候性>
メタルウェザー試験を行うことで、耐候性を評価した。
(評価基準)
〇:各項目に対し、表装材の作製時・表装材の加工時に何ら不具合を生じない。
△:各項目に対し、条件によっては表装材の作製又は表装材の加工に不具合を生じるが、使用する上での問題は無い。
×:各項目に対し、不具合を生じる。
なお、「×」の評価がある表装材は、表装材全体として不合格とした。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、実施例1から6の表装材は、いずれの評価試験においても優れた性能を示し、表装材として問題の無い結果を示した。一方、比較例1から4の表装材は、少なくとも一つの評価試験において、不合格の要素を持ち、表装材として不適格な結果を示した。
【符号の説明】
【0045】
1…ベース基材、2…絵柄層、4…トップコート層、6…機能層、10…表装材
図1
図2