(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】製造時のフラットパネルディスプレイのマスタパネルにおけるムラ不良の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240327BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01N21/956 Z
G01N21/88 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019094316
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・メルテルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】浦 智則
(72)【発明者】
【氏名】今間 陽介
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デュドネ
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-189293(JP,A)
【文献】特開2008-281580(JP,A)
【文献】特開2014-206547(JP,A)
【文献】特開2011-008482(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0064435(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 5/50
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造時にマスタパネル(105)におけるムラ不良を検出する方法であって、前記マスタパネル(105)は、複数のフラットスクリーンディスプレイを含み、該方法は、
前記マスタパネル(105)の画像データから合成画像を準備することと、
前記合成画像の品質を向上させることであって、前記合成画像からアーティファクトを除去することを含むことと、
前記品質向上した合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することであって、前記局所ムラ不良は、規定の幾何形状のうちの少なくとも1つの構造パターンを含むことと、
フィルタリング済み合成画像に複数の異なる候補パターンを適用することと、
前記複数の候補パターンのうちの1つを不良検出パターンとして選択することであって、前記検出された局所ムラ不良の規定の幾何形状の前記構造パターンに最も近い前記不良検出パターンが前記複数の候補パターンの中から選択されることと、
前記不良検出パターンのうちの少なくとも一部分を、前記
フィルタリング済み合成画像とともにディスプレイ(130)上で表示して、規定の幾何形状の前記構造パターンにおける前記検出された局所ムラ不良の位置を示すことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記品質向上した合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することは、
前記検出された局所ムラ不良の長さスケールに対応する関連した空間周波数をフィルタリング除去して第1のフィルタリング済み画像を提供することと、
前記第1のフィルタリング済み画像を、それぞれ前記規定の幾何形状に対応するテンプレートのセットと重畳することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記規定の幾何形状は、スポット及び/又は複数のリングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
製造プロセス時にマスタパネル(105)からの分離前に、フラットスクリーンディスプレイにおけるムラ不良を検出する方法であって、
マスタパネル(105)の複数の画像を得て、該複数の画像のうちの少なくともいくつかに対応する画像データを記憶することであって、該画像データは、前記マスタパネル(105)上のピクセルの行列から受け取られたピクセル信号を含むことと、
前記複数の画像の前記記憶された画像データを合成して、合成画像を提供することと、
ムラ不良に対応する規定の幾何形状の構造パターンを検出するために少なくとも1つの不良パターン固有テンプレートを用いて、合成画像をフィルタリングしてムラ不良を検出することと、
前記検出された局所ムラ不良のポジショニングを示すことを試みる、それぞれ異なるように寸法決めされた2次元座標系を有する候補パターンを作成することと、
前記作成された候補パターンの中からの不良検出パターン、及び、前記検出されたムラ不良の前記ポジショニングに最も密に対応するスキャンオフセットを選択することであって、該選択された不良検出パターンは、前記フィルタリング済み合成画像からの総フィルタ(505)応答のうちの最も高強度の信号を提供することと、
前記選択された不良検出パターンを微調整することと、
前記微調整された不良検出パターンを用いて前記検出されたムラ不良を定量化することと
を含む、方法。
【請求項5】
前記候補パターンの各々は、前記検出された局所ムラ不良の水平及び垂直周期性、並びに、水平及び垂直スキャンオフセットを含み、それにより、矩形パターンが作成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記候補パターンのうちの少なくとも1つは、回転角パラメータの導入によって回転される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マスタパネル(105)の前記複数の画像を得ることは、スキャンヘッド(120)を用いて前記マスタパネル(105)をスキャンすることを含み、前記スキャンヘッド(120)からの電気信号又は光学信号は、所定のシーケンスにおいて前記マスタパネル(105)上の前記ピクセルにそれぞれ結び付くことで、前記ピクセル信号を提供する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記マスタパネル(105)は、ガラス基板を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の画像の前記記憶された画像データを合成して前記合成画像を提供することは、
前記複数の画像をダウンサンプリングして、前記画像データを記憶するためのストレージ要件を低下させることと、
前記ダウンサンプリング済みの複数の画像を2次元パターンに構成することと、該2次元パターンを単一のより大きな画像に合成することと、
前記単一のより大きな画像の前記ダウンサンプリング済みの複数の画像を、コントラスト及び背景レベルについて補正して、均質であるものとして現れる前記合成画像を提供することと、
画像データが取得されなかった領域に対して対照的な領域としての、実データからなる前記合成画像の領域を別個の2値行列においてマーキングすることであって、前記2値行列領域は、前記合成画像をフィルタリングした結果のフィルタ(505)応答に重み付けするのに用いられることと
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記合成画像をフィルタリングして前記ムラ不良を検出する前に、前記合成画像をクリーニングアップすることを更に含み、前記合成画像をクリーニングアップすることは、
前記2次元パターンを前記単一のより大きな画像に合成する前に前記記憶された画像データから測定アーティファクトを除去することと、
コントラスト及び背景レベルについて補正する前に前記単一のより大きな画像の個々のフレームにおいてアーティファクトを抑制することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネルディスプレイは、携帯電話、テレビ、及びコンピュータモニタ等の多くの電子デバイスにおいて用いられている。フラットパネルディスプレイは、通常、マスタパネル(又は基板)上に薄膜トランジスタ(TFT)アレイを形成し(TFTアレイは、複数のフラットパネルディスプレイに対応する)、最終的には、マスタパネルを個々のフラットパネルディスプレイに分離させることによって製造される。製造ラインにおいて、多数のマスタパネルが日々加工されている。
【0002】
フラットパネルディスプレイは、複数のプロセスステップにおいて製造される。各ステップにおいて、化学的及び機械的な表面改変が生じ、これらの改変のうちのいくつかは、ムラ不良を含む不良とみなされる。製品品質(パネルの歩留まり)を保証するために、マスタパネルの表面は、例えばピクセル単位で、プロセスステップ同士の間で繰り返し検査しなければならない。検査は、Keysight Technologies, Inc.社から販売されている、Keysight 88000 HS-100シリーズアレイテストシステム等の検査システムを用いて実行することができる。検査は、マスタパネル上のピクセルに対応する行列の形式のデータを生成する。データ行列は、通常、環境及び検査ハードウェアの双方内の複数のソースからのノイズを含む。このノイズは、測定データのクリアな像をユーザに与えるとともに、パネル不良の自動検出を可能にするために、抑制されるべきである。
【0003】
特に、ムラ不良(mura defects)は、個々のフラットパネルディスプレイへの分離の前のマスタパネルにおいて現れる場合がある。例えばLCDの場合、ムラタイプの不良は、一般に、セル組み立てに関連するプロセス上の不備によって引き起こされ、これらの不良は、フラットパネルディスプレイを通過する光の透過に影響を及ぼすとともに、一般に鑑賞者にとって不快なものである。検査システムを適所に設置して、不良に関する情報をもたらすフラットパネルディスプレイの測定を提供することができ、これらの測定は、個々の製造ステップにおいて導入することができる。例えば、Keysight 88000 HS-100シリーズアレイテストシステムは、不良を識別するのに用いることができる、フラットパネルディスプレイの単ピクセル(single-pixel)分解能電荷マップを生成する。大規模のデータセットが与えられると、或る特定の不良パターンを、特定の生産装置に由来するものと特定することができる。しかしながら、結果としてもたらされるギガピクセルデータセットは、視認検査及びアノテーション(annotation)に対して困難を課す。したがって、ムラ不良を含む或る特定の不良のタイプを、例えばフーリエ変換に基づいて、検出、分類及び定量化する効率的な自動化システム及び方法が必要とされている。自動化された検出及び品質管理により、労働コストが削減されるとともに、より一層の標準化がもたらされる。
【0004】
例示的な実施形態は、以下の詳細な説明を添付図面の図とともに読むことによって最もよく理解される。種々の特徴は必ずしも一律の縮尺で描かれていないことを強調しておく。実際には、寸法は、議論を明瞭にするために任意に増減させることができる。適用可能な箇所及び実際に役立つ箇所であればどの箇所でも、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】代表的な実施形態による、製造時に複数のフラットパネルディスプレイを含むマスタパネルにおいてムラ不良を検出する不良検出システムの簡略ブロック図である。
【
図2A】代表的な実施形態による、製造時にマスタパネルにおけるムラ不良を検出する自動化方法を示すフロー図である。
【
図2B】代表的な実施形態による、製造時にマスタパネルにおけるムラ不良を検出するために、マスタパネル画像をフィルタリングする自動化方法を示すフロー図である。
【
図3】代表的な実施形態に従って得られる、例示的な合成画像のスクリーンショットである。
【
図4】代表的な実施形態による、画像データをダウンサンプリングし、クリーニングし(cleaning)、構成する前後の、例示的な合成画像のスクリーンショットである。
【
図5】代表的な実施形態による、カーネルを用いたフィルタリングの前後の例示的な合成画像のスクリーンショットである。
【
図6】代表的な実施形態による、カーネルを用いたフィルタリングの前後の、
図5における例示的な合成画像のスクリーンショットの拡大部分である。
【
図7】代表的な実施形態による、カーネルフィルタリング済み合成画像を再正規化する前後の、例示的な合成画像のスクリーンショットである。
【
図8】代表的な実施形態による、不良パターン固有テンプレートと重畳された、例示的な再正規化済み合成画像のスクリーンショットである。
【
図9】代表的な実施形態による、ムラ不良テンプレートを示す、例示的な平滑化されたフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットである。
【
図10】代表的な実施形態による、複数の異なる候補パターンとともに、リング状ムラ不良テンプレートを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットである。
【
図11】代表的な実施形態による、許容範囲領域を有する候補パターンとともに、リング状ムラ不良テンプレートを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットである。
【
図12】代表的な実施形態による、選択された不良検出パターンを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明の目的で、本教示による一実施形態の十分な理解を提供するために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が明らかにされる。しかしながら、本教示による他の実施形態は、本明細書に開示される具体的な詳細から逸脱しても、添付の特許請求の範囲の範囲内に依然として含まれることが、本開示の利益を有する当業者には明らかであろう。その上、よく知られた装置及び方法の説明は、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないために省略される場合がある。そのような方法及び装置は、明らかに本教示の範囲内にある。
【0007】
本明細書に用いられる術語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではない。定義された用語は、本教示の技術分野において一般に理解されかつ受け入れられているようなこれらの定義された用語の技術的な意味及び科学的な意味に加えられるものである。
【0008】
「1つの(a, an)」及び「その(the)」という語は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、文脈が明らかにそうでないことを規定している場合を除き、単数の指示対象及び複数の指示対象の双方を含む。したがって、例えば、「デバイス」は、1つのデバイス及び複数のデバイスを含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、「実質的」又は「実質的に」という語は、その通常の意味に加えて、受け入れ可能な限界又は度合いの範囲内にあることを指す。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるとき、「概ね」という語は、その通常の意味に加えて、当業者に受け入れ可能な限界又は量の範囲内にあることを指す。例えば、「概ね同じ」は、当業者であれば、比較される複数のアイテムを同じであるとみなすことを意味する。
【0009】
添付の図面において示されるような、種々の要素の互いの関係を説明するために、「上方」、「下方」、「最上部」、「最下部」等の相対語を用いることができる。これらの相対語は、図面に示す方位に加えて、要素の様々な方位を包含するように意図されている。例えば、図面に示される装置(例えば、半導体パッケージ又は同軸ケーブル)が図面内の表示に対して反転されたなら、例えば、別の要素の「上方にある」と説明される要素が、ここでは、その要素の「下方にある」ことになる。同様に、装置が図面内の表示に対して90度だけ回転したなら、別の要素の「上方」又は「下方」にあると説明される要素は、ここでは、その別の要素に対して「隣接する」ことになり、ただし、「隣接する」は、その別の要素と当接しているか、又は要素間に1つ以上の層、材料、構造等を有することを意味する。
【0010】
包括的には、代表的な実施形態によれば、製造時にマスタパネルにおけるムラ不良を検出する方法であって、マスタパネルは、複数のフラットスクリーンディスプレイを含む、方法が提供される。本方法は、マスタパネルの画像データから合成画像を準備することと、合成画像の品質を向上することであって、合成画像からアーティファクトを除去することを含むことと、向上した品質の合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することであって、局所ムラ不良は、規定の幾何形状のうちの少なくとも1つの構造パターンを含むことと、フィルタリング済み合成画像に複数の異なる候補パターンを適用することと、複数の候補パターンのうちの1つを不良検出パターンとして選択することであって、この不良検出パターンは、検出された局所ムラ不良の規定の幾何形状の構造パターンに最も近い不良検出パターンであることと、不良検出パターンのうちの少なくとも一部分を、品質向上した合成画像とともにディスプレイ上で表示して、規定の幾何形状の構造パターンにおける検出された局所ムラ不良の位置を示すこととを含む。向上した品質の合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することは、検出された局所ムラ不良の長さスケールに対応する関連した空間周波数をフィルタリング除去して第1のフィルタリング済み画像を提供することと、第1のフィルタリング済み画像を、それぞれ規定の幾何形状に対応するテンプレートのセットと重畳することとを含むことができる。
【0011】
図1は、代表的な実施形態による、製造時に複数のフラットパネルディスプレイを含むマスタパネルにおいてムラ不良を検出する不良検出システムの簡略ブロック図である。
【0012】
図1を参照すると、不良検出システム100は、スキャンヘッド120の動作を制御し、スキャンヘッド120によって提供される画像データを処理するコントローラ110を備える。画像処理は、例えば、
図2A及び
図2Bにおいて言及される方法によるムラ不良の検出を含む。コントローラ110は、プロセッサ112、メモリ114及びインタフェース(I/F)116を備える。不良検出システム100は、プロセッサ112によってI/F116(ディスプレイインタフェースを含む)を介して提供される画像及びデータ/画像処理の結果を表示するディスプレイ130を更に備える。ディスプレイ130は、キーボード、マウス、タッチパッド及び/又はタッチセンシティブスクリーン等のユーザ入力デバイス(図示せず)とともにディスプレイ130上に表示される情報を用いて、ユーザがコントローラ110とインタラクトすることができるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を組み込むことができる。本教示の範囲から逸脱することなく、入力を提供するとともに出力情報を受け取る、他の任意の互換性のある手段を不良検出システム100に組み込むことができる。
【0013】
スキャンヘッド120は、本教示の範囲から逸脱することなく、対応する画像データを提供するためにスキャンされているマスタパネル105からデータを収集する種々のタイプの走査デバイスを含むことができる。例えば、スキャンヘッド120は、マスタパネル105と電気接触を行うことによってデータを収集する電気接触スキャナとすることができる。マスタパネル105の最上面を示すアドレス信号及びデータ信号が、ヘッドの金属プローブを通して搬送される。より詳細には、スキャンヘッド120からの電気信号は、所定のシーケンスにおいてマスタパネル105上のピクセルにそれぞれ結び付くことで、ピクセル信号(画像データ)を提供する。スキャンヘッド120は、電気光学スキャナと同様に機能する光接触スキャナとすることもできる。代替的な構成では、スキャンヘッド120は、スキャンされているマスタパネル105を示すデータを提供する、例えば、カメラ(複数の場合もある)、走査センサ(電荷結合素子(CCD)等)、又はレーザ励起の使用を含む、非接触走査方法を通じてデータを提供することができる。また、代替的な構成では、スキャンヘッド120は、レーザ源と、レンズと、スキャンヘッド120の一部とすることができる電気接触端子を通して解析されるマスタパネル105のTFTセルにおける光導電電流を励起するプローブニードルを通した電気コンタクトとを備えることができる。
【0014】
マスタパネル105は、フラットパネルディスプレイに対応する、アレイにおいて配置されたピクセルを備える。上記で言及したように、スキャンヘッド120は、画像データを得るためにマスタパネル105上のピクセルに電気的に接続することができる。一実施形態では、スキャンヘッド120は、可動式であり、矢印122によって示されるようにマスタパネル105に対して実質的に平行に移動させることができる。これにより、スキャンヘッド120がマスタパネル105の異なる部分からの画像データを得ることが可能になり、すなわち、マスタパネル105がスキャンヘッド120のスキャンエリアよりも大きいという程度であっても、画像データを得ることが可能になる。スキャンヘッド120の移動は、手動で実行することができるか、又はコントローラ110の制御下で自動化することができる。スキャンヘッド120を用いて、マスタパネル105全体、又はマスタパネル105の任意の部分(複数の場合もある)をスキャンすることができる。例えば、スキャンヘッド120による走査及びコントローラ110によるムラ検出を、マスタパネル105の選択された部分及び/又はランダムに識別された部分に対して実行して、マスタパネル105全体をスキャンすることなくムラ不良の存在及び性質をサンプリングすることができる。
【0015】
コントローラ110のプロセッサ112は、以下の
図2A及び
図2Bを参照して記載される方法ステップ等の種々の実施形態に従って、不良検出プロセスを実行するようにプログラミングされる。プロセッサ112は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードワイヤード論理回路、又はこれらの組み合わせを用いて、1つ以上のコンピュータプロセッサ、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又はこれらの組み合わせによって実装することができる。一実施形態では、プロセッサ112は、例えばデジタル信号プロセッサ(DSP)とすることができる。コンピュータプロセッサは、特に、ハードウェアアーキテクチャ、ファームウェアアーキテクチャ又はソフトウェアアーキテクチャの任意の組み合わせから構築することができるとともに、コンピュータプロセッサが種々の機能を実行することを可能にする実行可能ソフトウェア/ファームウェア実行可能コードを記憶する、コンピュータプロセッサ専用のメモリ(例えば、不揮発性メモリ)を備えることができる。一実施形態では、コンピュータプロセッサは、システムの動作を実行する、例えば中央処理装置(CPU)を含むことができる。
【0016】
メモリ114は、スキャンヘッド120を用いて得られた画像データ、及びプロセッサ112からの処理結果の少なくとも一部分を記憶する。メモリ114は、以下で述べるように、画像データを処理してムラ不良を識別する際にプロセッサ112によって適用される、種々のタイプのテンプレート、規定の幾何形状の構造パターン、及び、潜在的不良検出パターンの候補パターンを記憶するデータベースとすることもできる。メモリ114は、例えば、任意の数、タイプ及び組み合わせのランダムアクセスメモリ(RAM)及びリードオンリメモリ(ROM)を実装することができるとともに、例えば、プロセッサ112(及び/又は他のコンポーネント)によって実行可能なコンピュータプログラム及びソフトウェアアルゴリズム、並びに、画像データ及び/又はテスト及び測定データストレージ、並びに(上記で述べた)テンプレート及びパターン等の種々のタイプの情報を記憶することができる。種々のタイプのROM及びRAMは、ディスクドライブ、ディスクストレージ、電気的プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、CD、DVD、ユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ等の任意の数、タイプ及び組み合わせのコンピュータ可読記憶媒体を含むことができ、これらは、(例えば、一時的伝播信号と比較されるものとして)有形でありかつ非一時的な記憶媒体である。
【0017】
図2Aは、代表的な実施形態による、製造時にマスタパネルにおけるムラ不良を検出する自動化方法を示すフロー図である。
【0018】
図2Aを参照すると、ブロックS211において、マスタパネル(例えば、マスタパネル105)の合成画像が得られ、ここで、マスタパネルは、例えば複数のフラットパネルディスプレイを含むガラス基板(例えば、マザーガラス基板(MGS))とすることができるものの、マスタパネルは、本教示の範囲から逸脱することなく、他の材料(複数の場合もある)を含む基板とすることができる。合成画像を得ることは、例えば、スキャンヘッド(例えば、スキャンヘッド120)を用いてマスタパネルをスキャンして、それぞれマスタパネルの複数の部分画像を得ることを含むことができる。スキャンヘッドは、マスタパネルが製造プロセス時に不良検出システムを通過する際にマスタパネルの画像データを得る1つ以上の撮像デバイスを備える。一実施形態では、画像は、走査に応答してマスタパネル上のピクセルの行列から受け取られたピクセル信号を含む。すなわち、スキャンヘッドからの走査信号は、所定のシーケンスにおいてマスタパネル上のピクセルにそれぞれ結び付くことで、複数の画像を得るためのピクセル信号を提供することができる。複数の画像は、対応する画像データを含み、少なくともその一部分をメモリ(例えば、メモリ114)に記憶することができる。
【0019】
図3は、代表的な実施形態に従って得られる、例示的な合成画像のスクリーンショットである。
図3を参照すると、マスタパネルの合成画像300は、例えば10000ピクセル×10000ピクセルよりも大きいものとすることができる。図示するように、合成画像300は、製造プロセスの過程でマスタパネルからまだ分離されていない複数のフラットパネルディスプレイの画像を含む。マスタパネルの合成画像は、以下で述べるように、アーティファクトを除去又は抑制しており、かつ平坦化されている。フラットパネルディスプレイの画像は、長方形の8×6アレイによって示されているものの、1合成画像当たりのフラットパネルディスプレイ画像の数は、本教示の範囲から逸脱することなく変更することができる。便宜的に、合成画像の第1行と第2行の一部分とのみがラベル付けされている。すなわち、第1行は、フラットパネルディスプレイ画像311~318を含み、第2行は、フラットパネルディスプレイ画像321~323を含む。合成画像300は、フラットパネルディスプレイ画像312、313及び316、317において部分的に示されているリングアレイのリング状ムラ不良331及び332等のムラ不良の例も示している(ただし、リングアレイのリングは他のフラットパネルディスプレイ画像においても同様に現れている)。リングは、製造プロセス時にマスタパネルを固定するのに用いられた吸引カップの痕跡である場合がある。ムラ不良の別の例は、フラットパネルディスプレイ画像321、322、及び323にそれぞれ対応する、代表的なスポット状ムラ不良341、342及び343を含むスポットアレイである(ただし、ラベル付けはされていないものの、スポットアレイの更なるスポット状ムラ不良が他のフラットパネルディスプレイ画像においても同様に現れている)。スポット状ムラ不良は、例えばマスタパネルを操作及び/又は移動させるのに用いられたハンドリング装置の結果である場合がある。
【0020】
複数の画像の画像データ(例えば、メモリ114に記憶されたもの)を合成して合成画像を提供することは、複数の画像をダウンサンプリングして、画像データを記憶するためのストレージ要件を低下させることと、測定アーティファクトを除去することと、ダウンサンプリング済み画像を2次元パターンに構成することと、2次元パターンを単一のより大きな画像に合成することと、処理アーティファクトを抑制することと、単一のより大きな画像のダウンサンプリング済み画像を、コントラスト及び背景レベルについて補正して、マスタパネルの合成画像を提供することとを含むことができる。したがって、合成画像は、均質であるものとして現れる。(未知の領域と対照的な領域としての)実データからなる合成画像の領域は、別個の2値行列においてマーキングすることができる。2値行列領域は、例えば、以下のブロックS213に関して述べる、合成画像をフィルタリングした結果のフィルタ応答に重み付けするのに用いられる。
【0021】
アーティファクトの除去及び抑制により、画像データを単一のより大きな画像に合成する前後に画像データのクリーニングアップ処理を行う(cleaning up)ことによって合成画像の品質が向上する。例えば、上記で論じたように、スキャンヘッド120が電気接触スキャナであることを想定すると、2次元パターンを単一のより大きな画像に合成する前に、個々のフレーム(フラットパネルディスプレイ画像)における画像データから測定アーティファクトを除去することは、電子増幅器コンポーネントから由来するノイズを除去することと、ローパスフィルタを用いて白色ノイズを除去することと、画像を局所的に平坦化することと、完全に垂直な空間周波数及び完全に水平な空間周波数を抑制することとを含むことができる。電子増幅器コンポーネントから由来するノイズを除去することは、移動平均(gliding average)の減算によってドリフトを除去することと、信号強度を正規化することによってゲインの変化を除去することと、増幅器チャネル同士の間のクロストークを除去することと、狭帯域空間周波数フィルタを適用することによって狭帯域ノイズを除去することとを含むことができる。測定アーティファクトを除去することは、例えば、レーザアニーリング、及び他の製造プロセスによって引き起こされるラインを除去することを更に含むことができる。2次元パターンを単一のより大きな画像に合成した後に、アーティファクトを抑制することは、例えば個々のフレームの記憶された画像データのコーナーにおいて、例えば画像信号の局所平坦化によって、信号のオーバシュート及びアンダシュートを除去することを含むことができ、これは、コントラスト及び背景レベルについて補正する前に実行される。
【0022】
図4は、代表的な実施形態による、画像データをダウンサンプリングし、クリーニングし、構成する前後の、例示的な合成画像のスクリーンショットを示している。マザー基板画像401と合成画像402とを比較すると、合成画像402が平坦化されていることが明らかである。また、マザー基板画像401内の個々のフラットパネルディスプレイ画像のコーナーのうちのいくつかにおいて鮮明なスポット(例えば、代表的な鮮明なスポット411及び421)として現れている信号のオーバシュート及びアンダシュートも、向上した品質の合成画像402においては現れていない。
【0023】
ブロックS212において、局所ムラ不良が、向上した品質の合成画像をフィルタリングすることによって検出される。
図2Bは、代表的な実施形態による、ブロックS212によって示されるように局所ムラ不良を検出するために、向上した品質の合成画像をフィルタリングする自動化方法を示すフロー図である。向上した品質の合成画像をフィルタリングする方法の様々な変形を、本教示の範囲から逸脱することなく組み込むことができる。
【0024】
検出された局所ムラ不良は、対応する規定の幾何形状のうちの少なくとも1つの構造パターンを含む。例えば、規定の幾何形状の構造パターンは、
図3における代表的なリング状ムラ不良331及び332並びに代表的なスポット状ムラ不良341、342及び343等の、向上した品質の合成画像上のリング及び/又はスポットの構造パターンを含むことができる。したがって、向上した品質の合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することは、規定の幾何形状の構造パターンを検出するために不良パターン固有テンプレートを用いることを含むことができる。一般に、向上した品質の合成画像をフィルタリングすることは、局所ムラ不良の長さスケール(例えば、特徴長さ)に対応する関連した空間周波数を抽出して第1のフィルタリング済み画像を提供することと、その後、この第1のフィルタリング済み画像を、それぞれ規定の幾何形状(例えば、リング状ムラ不良及びスポット状ムラ不良)に対応する不良パターン固有テンプレートのセットと重畳することを含むことができる。
【0025】
図2Bは、向上した品質の合成画像をフィルタリングする、
図2AのブロックS212によって示される例示的なプロセスを示している。
図2Bを参照すると、一実施形態によれば、ブロックS211からの向上した品質の合成画像は、ブロックS221において関連した空間周波数を選択(又は抽出)するカーネルを用いてフィルタリングされることで、カーネルフィルタリング済み合成画像のヒストグラムをコンパイルし、このフィルタリング済み合成画像は、ブロックS222において、このフィルタリング済み合成画像のピクセル信号を、少なくとも部分的にヒストグラムと比較することによって、ランダムノイズではない確率としてピクセル信号単位で再正規化される。ヒストグラムは、ガウス分布にフィッティングされた経験的ヒストグラムを含むことができ、ここで、経験的ヒストグラムとガウスフィッティングとの間の差異は、強度の高い信号の場合大きい。ピクセルが背景(ランダムノイズ)である確率は、対応するピクセル信号を、経験的ヒストグラム及びガウスフィッティングの双方と比較することによって計算される。関連した空間周波数の抽出のためのカーネルは、所定の特徴長さスケールの目視検査に基づく幅を有する単純なガウス関数を含むことができる。例えば時間が制限因子である場合、選択された関連した空間周波数をダウンサンプリングして処理時間を削減することができる。無関連の空間周波数(例えば、過度に高い周波数、過度に低い周波数)は、破棄することができる。
【0026】
図5は、代表的な実施形態による、カーネルを用いたフィルタリングの前後の例示的な合成画像のスクリーンショットを示している。向上した品質の合成画像501とカーネルフィルタリング済み合成画像502とを比較すると、関心信号の周波数特性が強調されていることが明らかである。これは、カーネルフィルタリング済み合成画像502の背景に対するムラ不良及び同様の信号の向上したコントラストによって示されている。また、高空間周波数は、上述したようにカーネルを用いてフィルタリングすることによって破棄されており、このことは、合成画像501及び502の垂直軸及び水平軸のスケールによって示されている。すなわち、これらの垂直軸及び水平軸は、画像解像度が低下しているので、相対的に短くなっている。高周波数が退けられたので、残りの低周波数は、より大きく、それゆえより少ないピクセルによって均等に良好に表現することができる。効率性の理由で、画像は、このようにダウンスケーリングされる。合成画像501は、上記で論じた
図4における平坦化された合成画像402に対応することができる。
【0027】
図6は、代表的な実施形態による、カーネルを用いたフィルタリングの前後の、
図5における例示的な合成画像のスクリーンショットの拡大部分を示している。拡大部分501’及び502’の各々は、それぞれ、向上した品質の合成画像501及びカーネルフィルタリング済み合成画像502のリング状ムラ不良530のロケーションに対応する。リング状ムラ不良530は、説明のために、
図3におけるリング状ムラ不良331又は332のうちの一方に対応することができる。合成画像501上で実行されるカーネルフィルタリングを示しているガウスフィルタ505も示されている。図示の例における関心の構造は、約10ピクセル~20ピクセルの「ライン幅」を有する。したがって、ガウスフィルタ505のフィルタ幅は、重畳のために同様のサイズ(例えば、20ピクセル×20ピクセル)を有するように選択されるものの、他の同様のフィルタ幅を、本教示の範囲から逸脱することなく組み込むことができる。向上した品質の合成画像501の拡大部分501’とカーネルフィルタリング済み合成画像502の拡大部分502’とを比較すると、近傍ピクセルからの信号が合成及び平均化されていることを見て取ることができる。これにより、個々のピクセルが、ムラ不良検出プロセスにおける後続のステップに対して必要以上の影響を有することが防止される。特徴検出からの著しいランダム背景応答が存在すること、及び、実信号が存在する領域が小さいことが想定される。信号の絶対強度は、信号が、とりわけ大きな背景変動に由来するような信号とは対照的な、真正のものであるか否か、ということほど重要ではない。
【0028】
図7は、代表的な実施形態による、ブロックS222においてカーネルフィルタリング済み合成画像を再正規化する前後の、例示的な合成画像のスクリーンショットを示している。カーネルフィルタリング済み合成画像701は、信号において著しい量の変動を示しており、このことは、合成画像の到る所にあるスポットによって示されている。図示されるように、背景変動の信号強度は、実信号強度を近似しており、このことが、実信号の検出をより困難にしている。一方で、対照的に、再正規化済み合成画像702は、背景信号を切除しているとともに、実信号を均一な信号強度に設定している。これは、再正規化済み合成画像702の実質的に均一かつ均質な背景とは明確に対照的である潜在的ムラ不良(鮮明エリア)によって示されている。とりわけ、
図7におけるカーネルフィルタリング済み合成画像701は、上記で論じた
図5におけるカーネルフィルタリング済み合成画像502に対応することができる。また、再正規化済み合成画像702は、上述した、第1のフィルタリング済み画像とすることができる。
【0029】
次に、ブロックS223において、向上した品質の合成画像をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することは、再正規化済み合成画像(第1のフィルタリング済み画像)を、それぞれ規定の幾何形状(例えば、リング及びスポット)に対応する不良パターン固有テンプレートのセットと重畳することで、再正規化されたフィルタリング済み合成画像における不良パターンを識別することを含む。不良パターンは、テンプレートの形状及び/又はサイズに厳密に一致する必要はなく、必要であれば複数の反復を実行することができる。ブロックS224において、再正規化済み合成画像を不良パターン固有テンプレートのセットと重畳した結果物は、画像データが取得されなかった領域におけるピクセルに対応する0のピクセル信号とは対照的な、実データであるピクセル信号の数によって重み付けされる。ブロックS225において、重み付けされた結果物がカーネルを用いて平滑化されることで、フィルタリング済み合成画像が提供される。平滑化することは、孤立した信号にペナルティを課すことと、所定の特徴長さスケールに一致する信号を強制すること、例えばより長い特徴長さ及びより短い特徴長さにペナルティを課すこととを含む。
【0030】
図8は、代表的な実施形態による、不良パターン固有テンプレートと重畳された、例示的な再正規化済み合成画像のスクリーンショットを示している。
図8を参照すると、重畳画像801は、例示的なリングテンプレート811等の、リング状ムラ不良に対応するテンプレートを用いた重畳を示している。重畳画像802は、例示的なスポットテンプレート812等の、スポット状ムラ不良に対応するテンプレートを用いた重畳を示している。リングテンプレート811及びスポットテンプレート812は、例えば、ソフトウェアアルゴリズム又はアプレットとして実装することができる。図示の実施形態では、例えば、リング状ムラ不良は、スポット状ムラ不良よりも著しく大きく、例えば、リングテンプレート811は、200ピクセル×200ピクセルとすることができ、スポットテンプレートは、20ピクセル×20ピクセルのみとすることができるものの、他のサイズ及び相対サイズを、本教示の範囲から逸脱することなく組み込むことができる。当然ながら、リング状ムラ不良及び/又はスポット状ムラ不良のサイズ及びアスペクト比に関して不確実性が存在する場合、複数のリングテンプレート及び/又はスポットテンプレートを用いることができる。また、種々の実施形態は、リング状ムラ不良及びスポット状ムラ不良に限定されない。すなわち、必要に応じて、再正規化済み合成画像においてムラ不良として現れることが予想される任意の多様な形状についてのテンプレートを作成することができる。
【0031】
ブロックS223において実行される重畳は、
図7の再正規化済み合成画像702において、リングテンプレート811と潜在的ムラ不良の各々との間の相互相関、及び、スポットテンプレート812と潜在的ムラ不良の各々との間の相互相関を検出する。相互相関が形状において十分な類似性を示す場合、ムラ不良の初期パターンが検出される。上述したように、重畳の結果物は、実データであるピクセル信号の数によって重み付けされ、この重み付けされた結果物は、カーネルを用いて平滑化されることで、リング状ムラ不良及びスポット状ムラ不良の検出されたパターンを含むフィルタリング済み合成画像が提供される。効果的に平滑化することは、孤立した信号(例えば、スプリアス応答)にペナルティを課すとともに、関連した長さスケールに一致する信号を強制する。
【0032】
図9は、代表的な実施形態による、ムラ不良テンプレートを示す、例示的な平滑化されたフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットを示している。特に、合成画像901は、リング状ムラ不良に対応するテンプレートを示しており、合成画像902は、スポット状ムラ不良に対応するテンプレートを示している。
図2BにおけるブロックS225に関して上記で論じたように、平滑化することは、孤立した信号にペナルティを課すことと、
図9に示す例示的な特徴長さスケール915等の所定の特徴長さスケールに一致する信号を強制する(又は向上させる)こととを含む。特徴長さスケール915は、例えば、スポットテンプレート812よりも僅かに小さく、それにより、スポット状ムラ不良がリング状ムラ不良とともに向上され、一方異なる特徴長さを有する信号は、(少なくとも同程度には)向上されないようになっている。
【0033】
図2Aを再度参照すると、ブロックS213において、異なる候補パターンが作成されて、フィルタリング済み合成画像に適用される。候補パターンは、検出された局所ムラ不良のポジショニングを示すことを試みる、それぞれ異なるように寸法決めされた2次元座標系を有する。候補パターンの各々は、検出された局所ムラ不良の水平及び垂直周期性、並びに、水平及び垂直ポジショニングを含むことができ、それにより、矩形パターンが作成される。当然ながら、例えば基板の形状及び/又はスキャンヘッドの形状に依拠して、矩形以外の形状を有するパターンを、本教示の範囲から逸脱することなく組み込むことができる。例えば、候補パターンは、円形又は六角形とすることができる。候補パターンの各々の水平及び垂直ポジショニングは、例えば探索アルゴリズムによって変更され、これは、スキャンオフセットと称される場合がある。すなわち、スキャンオフセットは、候補パターンの、ガラスパネル上の個々のディスプレイの位置に対するポジショニングに対応する。また、候補パターンのうちの少なくとも1つは、検出された局所ムラ不良のうちの1つ以上のムラ不良の配向に良好にフィットするために、回転角パラメータの導入によって回転させることができる。
【0034】
候補パターンを作成するために、もっともらしい水平及び垂直周期性の範囲をユーザが推定することができる。代替的に、上記で論じたように、テンプレート及び潜在的ムラ不良の相互相関は、もっともらしい水平及び垂直周期性を求めるために適用される最大値について解析することができる。また、全ての可能な水平及び垂直周期性値の網羅的スキャンを実行することができ、結果物を用いて、複数の反復される後続の検出試行においてもっともらしい水平及び垂直周期性の範囲を制約することができる。
【0035】
候補パターンは、ムラ不良テンプレートを示すフィルタリング済み合成画像に対応するデータ行列(アレイ)にわたってスキャンされる。候補パターンの交差部における局所データが切除され、切除された局所データに対応するピクセルにおける信号強度が測定される。幾分かの誤差マージンを許容するために、誤差の許容範囲マージンに対応する幾分かの有限サイズの領域が、候補パターンの交差部の周囲で切除され、その領域内の合成信号の(平均とは対照的な)最大値が測定される。多くの行及び/又は列を有するデータ行列の場合、データが記憶されない位置に偶然存在するが故に信号に寄与する機会を有しない、データ行列内の点は、ペナルティを課されるべきではない。一方で、2×2の位置のみがデータ行列内に存在する場合、全ての位置は、少なくとも部分的に可視でなければならず、さもなければ、位置特定問題に対する規定の解は存在しない。
【0036】
図10は、代表的な実施形態による、複数の異なる候補パターンとともに、リング状ムラ不良テンプレートを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットを示している。特に、異なるサイズ及び寸法の第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050が、リング状ムラ不良に対応するテンプレートを有する合成画像901上に示されている。(異なるサイズ及び寸法の候補パターンは、スポット状ムラ不良に対応するテンプレートを有する
図9における合成画像902に同様に適用され、したがって、この論述は、合成画像902に同様に当てはまることが理解される。)また、両方向矢印1041及び1042は、第2の候補パターン1040の水平及び垂直スキャンオフセットを示し、両方向矢印1051及び1052は、第3の候補パターン1050の水平及び垂直スキャンオフセットを示す。第1の候補パターン1030も同様に水平及び垂直スキャンオフセットを有するであろうが、
図10において明示的には示されていない。第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050は、水平及び垂直方向において配置される(すなわち、回転されない)ものの、第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050のうちの1つ以上は、リング状ムラ不良に対応するテンプレートのパターンに良好に収まるように回転させることができる。第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050のコーナーにおいて信号が検出され、これらの信号は、合成画像901からの総フィルタ応答の一部である。上記で論じたように、誤差の許容範囲マージンに対応する幾分かの有限サイズの領域が、第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050の交差部(例えば、コーナー)の周囲で切除され、第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050の残りの部分の領域内で、(平均合成信号とは対照的な)最大合成信号が測定される。この信号は、ピクセル値に符号化される。
【0037】
一実施形態では、第1の候補パターン1030、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050のコーナーにおいて検出される信号は、許容範囲領域内で得られる最大信号である。例えば、
図11は、代表的な実施形態による、許容範囲領域を有する候補パターンとともに、リング状ムラ不良テンプレートを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットを示している。
図11を参照すると、許容範囲領域は、便宜的に第1の候補パターン1030のコーナー上に示されているものの、他の候補パターン(例えば、第2の候補パターン1040及び第3の候補パターン1050)も許容範囲領域を含むことができることが理解される。特に、第1の候補パターン1030の4つのコーナーの各々は、信号が検出される許容範囲領域1031、1032、1033及び1034である。許容範囲領域1031、1032、1033及び1034は、縮尺どおりではない。なぜならば、実際の許容範囲は、水平及び/又は垂直周期性の不確実性を反映し、したがって、縮尺された描写においてより小さい可能性が高いためである。一実施形態では、許容範囲領域1031、1032、1033及び1034の各々は、第1の候補パターン1030の対応するコーナー(交差部)において中心を置かれる。許容範囲領域1031、1032、1033及び1034により、候補パターン1030を回転させる必要なく、僅かに回転したデータ行列のフィッティングが可能になる。このことは、候補パターンを作成及び選択するプロセスを高速化し、最終的にはムラ不良を検出することに役立つ。
【0038】
ブロックS214において、候補パターンのうちの1つは、不良検出パターンとして選択され、ここで、不良検出パターンは、検出された局所ムラ不良の規定の幾何形状の構造パターンに最も密に類似した候補パターンである。不良検出パターンは、いずれの候補パターンがフィルタリング済み合成画像からの総フィルタ応答の最も高強度の信号を提供するのかを求めることによって、自動的に選択することができる。例えば、不良検出パターンを選択することは、候補パターンのうちの1つごとに規則的に離間した格子点におけるフィルタ応答を合算することを含むことができる。その場合、最も高い合算フィルタ応答を有する候補パターンが、最良の候補パターンとして選択される。候補パターンごとの格子点は、強度の高いフィルタ信号のロケーションをマーキングし、したがって、検出されたムラ不良のポジショニングを取り込む。
【0039】
選択された不良検出パターンは、例えば外れ値に対する頑健性を提供するために、フィルタリング済み合成画像におけるピクセルの各行及び各列について水平及び垂直(X,Y)座標における中央値信号を測定することによって微調整することができる。任意選択で、選択された不良検出パターンのポジショニングを提供するために、回転を求めることができる。例えば、回転は、極座標における線形フィッティングによって推測することができる。これもまた任意選択で、フィルタ合成画像において可視でない行及び列を推測することができるように、線形フィッティングを用いて束周期性を推測することができる。加えて、ブロックS214においてスキャンオフセットを選択することができ、ここで、選択されたスキャンオフセットは、検出された局所ムラ不良のポジショニングに最も密に対応する。
【0040】
図12は、代表的な実施形態による、選択された不良検出パターンを示す、例示的なフィルタリング済み合成画像のスクリーンショットを示している。特に、合成画像1201は、スポット状ムラ不良についての選択された不良検出パターンを示しており、合成画像1202は、リング状ムラ不良についての選択された不良検出パターンを示している。合成画像1201において、ハッシュ記号は、ムラスポットについての選択された不良検出パターンを示しており、円は、スポット状ムラ不良の検出を示している。当然ながら、これらの検出は、幾分かの誤差のマージンを含むので、これらの検出は、規則的パターンにおいて配置される、すなわち、ハッシュ記号が実際の位置であることが想定される。
図12に示すように、ハッシュ記号は、実際のスポット状ムラ不良と実質的に整列する。合成画像1202において、ハッシュ記号の4つのセットが存在し、これらのセットの各々は、対応するリング状ムラ不良についての選択された不良検出パターンを示している。各リング状ムラ不良の部分は、選択された不良検出パターンによって取り囲まれた合成画像1202において可視である。
【0041】
ブロックS215において、検出された局所ムラ不良は、(微調整された)不良検出パターンを用いて定量化される。直径及び偏心率等のパラメータ、並びに、平均、中央値、最大及び最小信号強度等の統計的パラメータ、並びにノイズレベル、並びに他のパラメータを、ムラ不良としてマーキングされた領域から抽出することができる。
【0042】
ブロックS216において、不良検出パターンの少なくとも一部分が、フィルタリング済み合成画像とともにディスプレイ(例えば、ディスプレイ130)上で表示される。不良検出パターンの表示された部分は、規定の幾何形状の構造パターンにおける検出された局所ムラ不良の位置を示している。検出された局所ムラ不良は、複数の目的のために役立ち得る。例えば、マスタパネルは、局所ムラ不良が検出された程度に基づいて受理又は拒絶することができる。また、検出された局所ムラ不良を用いて、ムラ不良を引き起こしている製造装置を識別することができ、それによって、その製造装置は、調節若しくは調整又は交換することができるようになっている。
【0043】
種々の実施形態によれば、マスタパネル及び/又はマスタパネルに含まれるフラットパネルディスプレイ上のムラ不良は、自動的に検出、分類及び/又は定量化することができる。手作業による検査と比較して、種々の実施形態による自動ムラ不良検出プロセスの結果、スループットが高められ、労働コストが低減され、結果物が標準化される。このプロセスは、融通性も与え、ユーザが必要に応じて検出する目標検出パターンを追加することが可能になる。さらに、検出パターンの位置特定及び定量化により、単純な合格/不合格評価に優る、パネル品質の段階的スコアリングが可能になる。パネル品質の段階的スコアリングは、例えば、パネルをムラ不良の存在及び程度に部分的に基づいて受理及び拒絶することができる基準となる品質保証判断に組み込むことができる。また、検出されたパターンタイプ及び位置特定により、製造ラインにおけるいずれの処理装置が或る特定のムラ不良を引き起こした原因となっているのかの判断が可能になる。したがって、上述したように、ムラ不良を引き起こした原因となっている装置を調節、調整又は交換することによって作製ラインに改善をもたらすことができ、それにより、歩留まりが高められる。
【0044】
本発明は、図面及び上述の記載で詳細に説明及び記載されているが、かかる説明及び記載は、説明的なもの又は例示的なものであり、限定的なものではないとみなされる。本発明は、開示される実施形態に限定されるものではない。
【0045】
当業者であれば、請求項に係る発明を実施する際に、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討により、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、それを行うことができる。特許請求の範囲において、「を含む」という単語は他の要素又は工程を排除せず、数量を特定していないもの(the indefinite article "a" or "an")は複数存在することを排除しない。或る特定の手段が互いに異なる複数の従属請求項に列挙されているだけであれば、それらの手段を組み合わせて有利に使用することができないことは示されていないものとする。
【0046】
代表的な実施形態が本明細書で開示されたが、本教示による多くの変形形態が可能であり、また、添付の特許請求の範囲の範囲内に留まることを当業者は認識する。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲を除いて制限されない。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
製造時にマスタパネル(105)におけるムラ不良を検出する方法であって、前記マスタパネル(105)は、複数のフラットスクリーンディスプレイを含み、該方法は、
前記マスタパネル(105)の画像データから合成画像(1201)を準備することと、
前記合成画像(1201)の品質を向上することであって、前記合成画像(1201)からアーティファクトを除去することを含むことと、
前記向上した品質の合成画像(402)をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することであって、前記局所ムラ不良は、規定の幾何形状のうちの少なくとも1つの構造パターンを含むことと、
前記フィルタリング済み合成画像(1201)に複数の異なる候補パターンを適用することと、
前記複数の候補パターンのうちの1つを不良検出パターンとして選択することであって、前記検出された局所ムラ不良の規定の幾何形状の前記構造パターンに最も近い前記不良検出パターンが前記複数の候補パターンの中から選択されることと、
前記不良検出パターンのうちの少なくとも一部分を、前記品質向上した合成画像(1201)とともにディスプレイ(130)上で表示して、規定の幾何形状の前記構造パターンにおける前記検出された局所ムラ不良の位置を示すことと、
を含む、方法。
請求項2:
前記向上した品質の合成画像(402)をフィルタリングして局所ムラ不良を検出することは、
前記検出された局所ムラ不良の長さスケールに対応する関連した空間周波数をフィルタリング除去して第1のフィルタリング済み画像を提供することと、
前記第1のフィルタリング済み画像を、それぞれ前記規定の幾何形状に対応するテンプレートのセットと重畳することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
請求項3:
前記規定の幾何形状は、スポット及び/又は複数のリングを含む、請求項1に記載の方法。
請求項4:
製造プロセス時にマスタパネル(105)からの分離前に、フラットスクリーンディスプレイにおけるムラ不良を検出する方法であって、
マスタパネル(105)の複数の画像を得て、該複数の画像のうちの少なくともいくつかに対応する画像データを記憶することであって、該画像データは、前記マスタパネル(105)上のピクセルの行列から受け取られたピクセル信号を含むことと、
前記複数の画像の前記記憶された画像データを合成して、合成画像(1201)を提供することと、
ムラ不良に対応する規定の幾何形状の構造パターンを検出するために少なくとも1つの不良パターン固有テンプレートを用いて、合成画像(1201)をフィルタリングしてムラ不良を検出することと、
前記検出された局所ムラ不良のポジショニングを示すことを試みる、それぞれ異なるように寸法決めされた2次元座標系を有する候補パターンを作成することと、
前記作成された候補パターンの中からの不良検出パターン、及び、前記検出されたムラ不良の前記ポジショニングに最も密に対応するスキャンオフセットを選択することであって、該選択された不良検出パターンは、前記フィルタリング済み合成画像(1201)からの総フィルタ(505)応答のうちの最も高強度の信号を提供することと、
前記選択された不良検出パターンを微調整することと、
前記微調整された不良検出パターンを用いて前記検出されたムラ不良を定量化することと、
を含む、方法。
請求項5:
前記候補パターンの各々は、前記検出された局所ムラ不良の水平及び垂直周期性、並びに、水平及び垂直スキャンオフセットを含み、それにより、矩形パターンが作成される、請求項4に記載の方法。
請求項6:
前記候補パターンのうちの少なくとも1つは、回転角パラメータの導入によって回転される、請求項5に記載の方法。
請求項7:
前記マスタパネル(105)の前記複数の画像を得ることは、スキャンヘッド(120)を用いて前記マスタパネル(105)をスキャンすることを含み、前記スキャンヘッド(120)からの電気信号又は光学信号は、所定のシーケンスにおいて前記マスタパネル(105)上の前記ピクセルにそれぞれ結び付くことで、前記ピクセル信号を提供する、請求項4に記載の方法。
請求項8:
前記マスタパネル(105)は、ガラス基板を含む、請求項4に記載の方法。
請求項9:
前記複数の画像の前記記憶された画像データを合成して前記合成画像(1201)を提供することは、
前記複数の画像をダウンサンプリングして、前記画像データを記憶するためのストレージ要件を低下させることと、
前記ダウンサンプリング済みの複数の画像を2次元パターンに構成することと、該2次元パターンを単一のより大きな画像に合成することと、
前記単一のより大きな画像の前記ダウンサンプリング済みの複数の画像を、コントラスト及び背景レベルについて補正して、均質であるものとして現れる前記合成画像(1201)を提供することと、
未知の領域と対照的な領域としての、実データからなる前記合成画像の領域(1201)を別個の2値行列においてマーキングすることであって、前記2値行列領域は、前記合成画像(1201)をフィルタリングした結果のフィルタ(505)応答に重み付けするのに用いられることと、
を含む、請求項4に記載の方法。
請求項10:
前記合成画像(1201)をフィルタリングして前記ムラ不良を検出する前に、前記合成画像(1201)をクリーニングアップすることを更に含み、前記合成画像(1201)をクリーニングアップすることは、
前記2次元パターンを前記単一のより大きな画像に合成する前に前記記憶された画像データから測定アーティファクトを除去することと、
コントラスト及び背景レベルについて補正する前に前記単一のより大きな画像の個々のフレームにおいてアーティファクトを抑制することと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【符号の説明】
【0047】
100 不良検出システム
105 マスタパネル
110 コントローラ
112 プロセッサ
114 メモリ
116 インタフェース(I/F)
120 スキャンヘッド
130 ディスプレイ