(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電動車のドライブトレインおよび電動車
(51)【国際特許分類】
F16D 13/24 20060101AFI20240327BHJP
F16D 13/62 20060101ALI20240327BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F16D13/24
F16D13/62 A
B60L15/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019144540
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 119 199.5
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515314177
【氏名又は名称】ヘルビガー・アントリーブシュテクニク・ホールディング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HOERBIGER Antriebstechnik Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・エヒトラー
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特公平04-059171(JP,B2)
【文献】特開平11-051080(JP,A)
【文献】特開2001-049467(JP,A)
【文献】特開2017-089856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14
B60L 1/00-3/12,7/00-13/00,
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦係合クラッチを有する電動車のドライブトレインであって、
クラッチは
、複数の円錐摩擦要素を有するノーマルクローズクラッチであり、
前記
複数の円錐摩擦要素は
、第一のシャフトに接続された第一の円錐摩擦要素と、第二のシャフトに接続された第二の円錐摩擦要素および第三の円錐摩擦要素とを含み、
前記第一の円錐摩擦要素は、前記第二の円錐摩擦要素と前記第三の円錐摩擦要素との間に配置されており、
前記クラッチがクローズ位置に
あるとき、
前記第一の円錐摩擦要素が、前記第二の円錐摩擦要素および前記第三の円錐摩擦要素の両方に対して、ペアで、互いに寄りかかりあい、
前記複数の円錐摩擦要素がトルクを伝達する、
ことを特徴とするドライブトレイン。
【請求項2】
前記クラッチは、
ノーマルクローズ位置において当該クラッチを保持する、少なくとも一つのスプリング要素を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記
複数の円錐摩擦要素の円錐角は、
30°未満であり、好ましくは、3°から15°までの範囲である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記
複数の円錐摩擦要素の少なくとも一つ、または全ては、有機または金属摩擦ライニングを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記クラッチは、
湿式クラッチである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
変速機を、さらに備え、
前記クラッチは、
前記変速機内
に組み込まれている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記変速機は、
多速変速機であり、
前記クラッチは、
少なくとも一つの駆動ギアの作動のために、設けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
摩擦係合クラッチおよび変速機を有する電動車のドライブトレインであって、
クラッチは、複数の円錐摩擦要素を有するノーマルクローズクラッチであり、
前記複数の円錐摩擦要素は、クローズ位置において、ペアで、互いに寄りかかりあい、トルクを伝達し、
前記クラッチは、前記変速機内に組み込まれており、
前記変速機は、多速変速機であり、
前記クラッチは、少なくとも一つの駆動ギアの作動のために、設けられており、
前記変速機は
、メイン駆動ギアと、少なくとも一つの補助駆動ギアとを有し、
前記ノーマルクローズクラッチは
、前記メイン駆動ギアの作動のために、設けられ、
少なくとも一つのノーマルオープンクラッチは
、前記少なくとも一つの補助駆動ギアの作動のために、設けられる、
ことを特徴とす
るドライブトレイン。
【請求項9】
摩擦係合クラッチおよび変速機を有する電動車のドライブトレインであって、
クラッチは、複数の円錐摩擦要素を有するノーマルクローズクラッチであり、
前記複数の円錐摩擦要素は、クローズ位置において、ペアで、互いに寄りかかりあい、トルクを伝達し、
前記クラッチは、前記変速機内に組み込まれており、
前記変速機は、
単一の駆動ギアを有する単速変速機であ
り、
前記クラッチは、前記ドライブトレインへのダメージに対する保護のためのセーフティクラッチとして提供される、
ことを特徴とす
るドライブトレイン。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のドライブトレインを有する、電動車。
【請求項11】
請求項8に記載のドライブトレインを有する電動車であって、
電動制御システムと、
電動モータとを、備え、
前記電動モータおよび前記変速機は、
前記メイン駆動ギアが、90km/h、好ましくは100km/h、特に110km/hまでの駆動速度のために設けられ、前記変速機が、当該駆動速度を超えて、前記補助駆動ギアにシフトされる、ように設計されている、
ことを特徴とする電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦係合クラッチを有する電動車のドライブトレイン、および当該ドライブトレインを有する電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準から、電動車は知られている。電動車は、車の駆動のために備えられた電動原動機または電動モータ、および、通常、駆動のためのエネルギーを供給する走行用バッテリーを有する。
【0003】
さらに、技術水準から、当該車に対するドライブトレインは知られている。
【0004】
コストおよび設置スペースの観点により、車内で利用される走行用バッテリーの容量は限られているので、電動車が長距離を移動することができるためには、システム効率が、電気移動において最も重要である。ここで、これらの車のドライブトレインは、内燃エンジンおよび従来のドライブトレインを有する車の場合よりも、さらにいっそう重要である。
【0005】
使用可能容量をできる限り効率よく利用するために、多速変速機を有するドライブトレインが使われている。多速変速機により、できるだけ効率のよい動作点で、電動車を動作させることができる。不利な影響としは、ギア内におけるシフトおよび摩擦係合ホールドに要求される、必要なエネルギーがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、特にエネルギー効率のよい、電動車に対して最適化されたドライブトレインを提供することである。さらに、本発明の目的は、長い走行距離を有する電動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該目的を達成するために、少なくとも一つのクラッチを有する、電動車のドライブトレインが提供される。ここで、当該クラッチは、閉位置で対となって互いに寄りかかり合い、トルクを伝達する複数の円錐摩擦要素を有する、ノーマルクローズクラッチである。ノーマルクローズクラッチは、基本状態では閉じており、開くために作動されなければならない、クラッチである。閉じた状態でクラッチをホールドするために、ほんの小さな力、より具体的にはゼロ、が印加される必要があり、このことは、ドライブトレインが特にエネルギー効率が良い、ということを意味する。円錐摩擦要素は、機械的負荷増幅を形成し、これを介して、摩擦表面の数およびサイズを減らすことができる。たとえば、この態様では、総摩擦面を、円錐摩擦要素を有さない比較クラッチと比較して、80%を超えて減らすことができる。同様に、クラッチのドラックトルクだけでなく、クラッチを作動するのに必要なクローズ力またはホールド力も、減少する。たとえば、円錐摩擦要素を有さない比較クラッチと比較して、作動力を60%減少することができる。電動車は、少数のドライブギアのみを通常有するので、当該ドライブトレインは、電動車に特に適する。このため、ギア間のシフトは、走行中、比較的まれに実行されるのみであり、その結果、クラッチの閉じられた期間は、比較的長くなり、予測可能である。よって、ノーマルクローズクラッチの使用は、特にエネルギー効率の良いドライブトレインにつながり、これにより、電動車の走行距離を増加することができる。
【0008】
好ましくは、クラッチは、ノーマルクローズ位置でクラッチをホールドする、少なくとも一つのスプリング要素を備える。クラッチの閉状態がスプリング要素により達成されるので、当該機械的負荷増幅を通して、ホールド力は、低くおよび一定に維持されることが可能である。特に、閉じた状態のために、外部エネルギーは必ずしも必要でない、つまり、クラッチの閉を保持するために、エネルギーが消費される必要はない。よって、より多くのエネルギーを移動のために利用することができ、その結果、車の走行距離が増大する。
【0009】
摩擦トルクは、次式により定義される。
ここで、
M
R:摩擦トルク
F
S:シフト力
μ:摩擦係数
d
m:平均摩擦径
i:摩擦面の数
α:円錐角
である。
【0010】
よって、機械的負荷増幅の伝達率は、摩擦要素の円錐角を介して、変化させることができる。
【0011】
したがって、必要なホールド力を特に低く維持するために、摩擦要素の円錐角が30°未満、好ましくは3°~15°の範囲内であるなら、有利である。
【0012】
円錐摩擦要素の少なくとも一つ、具体的には全てが、特に高い摩擦係数を有する、有機系摩擦ライニングを有する、としてもよい。
【0013】
追加的に又は選択的に、円錐摩擦要素の少なくとも一つ、具体的には全てが、特に頑丈な金属摩擦ライニングを有する、としてもよい。
【0014】
実施の形態によれば、クラッチは、特に低摩耗性であり、また対応してオイルにより冷却され得る、湿式クラッチである。
【0015】
更なる実施の形態によれば、ドライブトレインは変速機を含む。当該変速機において、異なる動作状態間での切り替えのために、クラッチは、機械的に組み込まれている。
【0016】
変速機は、多速変速機であってもよい。ここで、少なくとも一つの駆動ギアの作動のために、クラッチが設けられている。特定の運転状況の異なる要求に適合した、異なる駆動ギアを、提供することができるという利点を、多速変速機は有する。この場合において、駆動ダイナミックと共に乗心地を向上することができる。
【0017】
実施の形態において、変速機は、メイン駆動ギアと少なくとも一つの補助駆動ギアとを有する。ここで、メイン駆動ギアの作動のために、ノーマルクローズクラッチが設けられ、少なくとも一つの補助駆動ギアの作動のために、少なくとも一つのノーマルオープンクラッチが設けられる。ノーマルオープンクラッチは、基本状態でオープンであり、クローズのために作動されるクラッチである。メイン駆動ギアは、普通または通常の駆動モードにおいて大抵の時間(好ましくは動作時間の50%より大きく、特に動作時間の80%より大きい)係合される、ギアである。これは、対応する車のクラスの駆動プロファイルに応じて変わり得る。シティカーの場合には、たとえば、メイン駆動ギアは、低速度範囲(たとえば、0~60km/hの間)での駆動速度のために設けられるギアである。都市間および/または高速道路ドライブが主要な割合を占めている駆動プロファイルを有する車の場合には、メイン駆動ギアは、たとえば、高速範囲(たとえば、60km/hを超える)での駆動速度のために設けられるギアである。メイン駆動ギアのノーマルクローズクラッチは、クローズ状態で係合されるので、車は、動作モードにおいて、かなりエネルギー効率良く、駆動される。当該動作モードは、車の駆動のために主に使用されるので、このようにして、車の走行範囲の特に大きな増加を、得ることができる。
【0018】
別の実施の形態において、変速機は、単速変速機である。ここで、ノーマルクローズ位置において、クラッチの手段により、駆動ギアは、係合位置で保持される。当該ドライブトレインは、とても単純でコンパクトな態様で構成することができる、という利点を有する。このことは、費用効率がよく、軽量なドライブトレインを製造することができる、ということを意味する。
【0019】
ここで、ノーマルクローズクラッチは、ドライブトレインへのダメージに対する保護のためのセーフティクラッチとして、提供される。
【0020】
追加的に又は選択的に、セイリングモード中のPSM(永久磁石同期電動機)のドラックトルクを避けるために、電動車は、分離される。
【0021】
本発明によれば、本発明に係るドライブトレインを有する電動車も、上記目的を達成するために提供される。高エネルギー効率なドライブトレインのために、当該車は、大きな走行距離を有する。
【0022】
本発明に係るドライブトレインを有する電動車により、上記目的は、さらに達成される。ここで、当該車は、電気制御システムと電動モータとを有する。90km/hに達する駆動速度、好ましくは100km/h、特には110km/hに達する駆動速度のために、メイン駆動ギアが設けられ、変速機が、より速い駆動速度で補助駆動ギアにシフトされるように、電動車および変速機は設計されている。この結果として、メイン駆動ギアが係合される高エネルギー効率動作モードは、道路におけるシティおよび都市間の両方(通常、車の主要な使用を構成する)の移動を含む。このようにして、特に非常に広走行範囲を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
さらなる利点および特徴は、添付図面と共に、後述の記載により明らかにされる。
図1~3に示されているものである。
【0024】
【
図1】ノーマルクローズクラッチを有する変速機を含む、本発明に係るドライブトレインを有する、本発明に係る電動車を示す、概略図である。
【
図2】クローズ位置にある
図1に示すノーマルクローズクラッチを示す、断面図である。
【
図3】オープン位置にある
図1に示すノーマルクローズクラッチを示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ドライブトレイン12、電動制御システム14、およびけん引用バッテリー16を有する電動車10を示す。けん引用バッテリー16は、車10を駆動するための電気エネルギーを提供する。
【0026】
ドライブトレイン12は、電動モータ18および変速機20を含む。電動モータ18は、車10の駆動を形成し、変速機(ギアボックス)20は、電動モータ18に接続されている。
【0027】
変速機20は、ノーマルクローズクラッチ22およびノーマルオープンクラッチ24を有する、2速変速機である。ノーマルクローズクラッチ22は、メイン駆動ギアのために設けられ、ノーマルオープンクラッチ24は、補助駆動ギアのために設けられる。
【0028】
当然に、変速機20は、1つののみギアを持っていいてもよく、また2つより多くのギアを持っていてもよい。すべての実施の形態において、単速変速機の場合において単一ギアを示す、メイン駆動ギアは、ノーマルクローズクラッチ22により、設けられる。多速変速機の場合において、すべてのさらなるギアは、対応するノーマルオープンクラッチ24を介して実現され、また各補助駆動ギアを形成する。
【0029】
全ての場合において、一般的にバックギアとしても言及されるバック走行モードは、電動モータ18の回転方向を反対にすることにより、提供され、この結果、如何なる個別のクラッチも、当該目的のために必要とされない。
【0030】
当該バック走行モードは、メイン駆動ギアおよび補助駆動ギアに加えて、提供される。このことは、「単速」または「多速」は、特に駆動ギアのみに言及する、ということを意味する。当該駆動ギアは、前進方向Vで車10を駆動するために、配設される。
【0031】
図2,3を参照して、ノーマルクローズクラッチ22の構成および機能を、下記において詳述する。ノーマルクローズクラッチ22は、第二のシャフト(図示せず)への第一のシャフトのトルク伝達接続のために設けられ、さらに共通回転軸Rに関して同心状に構成される。
【0032】
電動モータ18の駆動方向に応じて、第一のシャフトは駆動シャフトであり、第二のシャフトは出力シャフトであり、逆もまた同様である。
【0033】
ノーマルクローズクラッチ22は、湿式クラッチであり、第一の円錐摩擦要素28を有する外側キャリア26と、カウンタ支持部32、軸停止部34および圧力要素36を有する内部キャリア30とを含む。圧力要素36は、軸方向Aに移動可能に、載置されている。
【0034】
他の実施の形態において、ノーマルクローズクラッチ22は、非湿式であるように設計されてもよい。
【0035】
カウンタ支持部32は、第二の円錐摩擦要素38を有し、圧力要素36は、第三の円錐摩擦要素40を有する。
【0036】
内側における第一の円錐摩擦要素28は、外側キャリア26を介して、トルク伝達の態様で、第一のシャフトに接続され、外側における第二、三の円錐摩擦要素38,40は、内側キャリア30を介して、トルク伝達の態様で、第二のシャフトに接続されている。
【0037】
さらに、第一の円錐摩擦要素28は、外側において第一の円錐摩擦面42を有し、内側において第二の円錐摩擦面44を有する。第二の円錐摩擦面44は、第一の円錐摩擦面42に対向して配置されており、いずれの場合にも、両円錐摩擦面42,44は、有機摩擦ライニング(裏地)46により形成される。
【0038】
追加的に又は選択的に、円錐摩擦面42,44は、少なくとも部分的に異なる材料(特に、金属摩擦ライニング)により形成されてもよい。
【0039】
第二の円錐摩擦要素38は、内部円錐摩擦面48を有し、第三の円錐摩擦要素40は、外部円錐摩擦面50を有する。いずれの場合にも、両円錐摩擦面48,50は、金属摩擦ライニング52により形成される。
【0040】
追加的に又は選択的に、円錐摩擦面48,50は、少なくとも部分的に異なる材料(特に、有機摩擦ライニング)により形成されてもよい。
【0041】
円錐摩擦面42,44,48,50と同様に、円錐摩擦要素28,38,40は、同じ円錐角α(
図2参照)を有し、互いに対して同心状に配置されており、結果として、円錐摩擦面42,44,48,50は、ペアでの各場合において、全ての点で、互いから等距離の位置にある。このことは、
図2,3で表されているように、円錐摩擦面42,44,48,50の交差部分は、軸方向断面の場合において、互いに平行に走っている、ということを意味する。
【0042】
さらに、第二の円錐摩擦要素38と第三の円錐摩擦要素40との間に、第一の円錐摩擦要素28が配置されており、これにより、内部円錐摩擦面48は、第一の円錐摩擦面42と対向して配置され、外部円錐摩擦面50は、第二の円錐摩擦面44と対向して配置される。
【0043】
原則として、クラッチ22は、所望の数の円錐摩擦要素28,38,40を有することができ、円錐摩擦要素28,38,40の円錐摩擦面42,44,48,50は、ペアでの各場合において、互いに対向して配置される。
【0044】
円錐角αは、30°よりも小さい。また、円錐角αは、0°~90°間の所望の値をとることができるが、好ましくは、3°~15°の範囲にあり、これは、特に好ましい機械負荷増幅が当該範囲で達成されるからである。
【0045】
ノーマルクローズクラッチ22は、さらに、スプリング要素54を有する。スプリング要素54は、軸方向Aにおいて、軸停止部34と圧力要素36との間に配置され、軸方向Aにおいて、スプリング要素54は、圧力要素36にスプリング力を発揮する。
【0046】
スプリング力Fはとても大きいので、圧力要素36は、軸方向Aにおいて、互いに対向して、円錐摩擦要素28,38,40を押し、ペアでの各場合において互いに対向する円錐摩擦面42,44,48,50は、トルク伝達の態様で、相互に寄りかかる。
【0047】
このようにして、第一のシャフトは、トルク伝達の態様で、第二のシャフトに接続され、ノーマルクローズクラッチ22は、閉じられる(
図2参照)
【0048】
ノーマルクローズクラッチ22をオープン位置に動かすために(
図3参照)、スプリング力Fよりも大きな作用力Bが、軸方向Aに反して、圧力要素36に発揮される。
【0049】
これにより、圧力要素36は押圧され、軸方向Aに反して、カウンタ支持部32から離される。この結果として、互いに対向して、円錐摩擦要素28,38,40は、もはや圧圧されず、ペアでの各場合において互いに対向する円錐摩擦面42,44,48,50は、トルク伝達の態様で、もはや相互に寄りかからない。
【0050】
よって、トルク伝達の態様で、第一のシャフトは、第二のシャフトにもはや接続されず、ノーマルクローズクラッチ22はオープンとなる。
【0051】
ノーマルオープンクラッチ24は、ノーマルクローズクラッチ22に類似して設計される。ここで、ノーマルオープンクラッチ24は、対応するスプリング要素により、オープン位置で保持され、対応する作用力を介してクローズされる。
【0052】
当然、所望のノーマルオープンクラッチ24を、特に円錐摩擦要素なしで、選択的に設けてもよい。
【0053】
ドライブトレイン12は、次のように設計される。つまり、車10は、メイン駆動ギアで(すなわち、ノーマルクローズクラッチ22のクローズとノーマルオープンクラッチ24のオープンとにより)、走行速度100km/hまで駆動し、さらに、より速い走行速度で、制御システム14が補助駆動ギアと係合し、この場合において、ノーマルオープンクラッチ24はクローズとなり、ノーマルクローズクラッチ22はオープンとなる。
【0054】
他の実施の形態において、メイン駆動ギアは、他の走行速度(たとえば、90km/hまでの走行速度または110km/hまでの走行速度)のために設けられてもよい。
【0055】
クローズ位置において、ノーマルクローズクラッチ22を保持できるほど、スプリング力Fは十分に大きいので、外力はメイン駆動ギアに対して印加される必要がない。結果、後者は、高エネルギー効率となる。
【0056】
さらに、円錐摩擦要素28,38,40は、機械負荷増幅をもたらし、結果、比較的小さい力のみが、シフトのために必要となる。スプリング力Fと作用力Bとは、これにより、低く維持でき、この結果として、エネルギー効率をさらに向上される。
【0057】
ノーマルクローズクラッチ22の場合において、スプリング要素54を介して、クローズ状態が作り出されるため、当該スプリング要素54のプリテンションは、同時に、伝達される最高トルクを規定する。このようにして、ノーマルクローズクラッチ22は、セーフティクラッチとして設計される。当該セーフティクラッチは、非常に高い負荷からおよびダメージから、ノーマルクローズクラッチ22を保護することができる。
【0058】
加えて、セイリング機能が設けられてもよい。当該セイリング機能において、制御システム14は、駆動が必要でない走行状態で、クラッチ22,24をオープンにする。結果、電動モータ18は、分離される。当該分離は、車10が、電動モータ18のけん引トルクにより、不必要にブレーキがかけられることを、防止する。
【0059】
このようにして、ドライブトレイン12は、高エネルギー効率となり、電動車10は、特に広範囲の走行距離を有する。
【0060】
本発明は、示された実施の形態に限定されない。特に、示されてなく、対応する実施の形態の他の特徴に関係なく、一つの実施の形態の個別の特徴は、本発明に係る他の実施の形態に、含まれてもよい。すなわち、記載された特徴を、必要に応じて、組み合わせることができる。