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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】移動式破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 21/02 20060101AFI20240327BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20240327BHJP
   B60K 25/00 20060101ALI20240327BHJP
   B60K 25/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B02C21/02
B02C25/00 A
B60K25/00 Z
B60K25/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019152406
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021030148
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】石橋 規史
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151268(JP,A)
【文献】特開2004-084470(JP,A)
【文献】特開2001-099103(JP,A)
【文献】特開2010-051848(JP,A)
【文献】特開2003-009308(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 21/00-02、25/00
B60K 6/00-547、25/00-10
E02F 9/02-04
F15B 11/00-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物を破砕する破砕装置と、
前記破砕装置が搭載された走行装置と、
駆動源として用いられるエンジンと、
前記エンジンからの動力を用いて発電し、電力を前記破砕装置に供給する発電機と、
前記エンジンからの動力によって駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンからの動力を前記油圧ポンプに伝達する動力伝達経路と、

前記動力伝達経路を切断する第1状態と、前記動力伝達経路を接続する第2状態と、の間で切換可能なクラッチと、
を備え、
前記破砕装置は、前記発電機で発電した電力によって駆動され、
前記走行装置は、前記油圧ポンプから作動油が供給されることによって駆動され
前記破砕装置の動作時において、前記クラッチは前記第1状態に切り換えられ、
前記走行装置の動作時において、前記クラッチは前記第2状態に切り換えられ、
前記破砕装置の動作時において、前記エンジンは、所定の発電回転数で稼動し、
前記クラッチが前記第1状態から前記第2状態に切り換えることが実行可能となる条件は、前記エンジンの回転数が閾値回転数以下であることを含み、
前記閾値回転数が前記発電回転数以下であることを特徴とする移動式破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を備える移動式破砕機に関する。詳細には、移動式破砕機の駆動構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、岩石採掘現場等で用いられる破砕機において、自走可能な構成が知られている。特許文献1は、この種の自走式作業機(移動式破砕機)を開示する。
【0003】
特許文献1の自走式作業機は、エンジン発電機により駆動される電動油圧ユニットからの油圧によって走行用油圧モータを駆動させて、クローラ走行装置を走行させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-151268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成は、エンジン発電機及び油圧ユニットを用いて走行用クローラを駆動する場合、エンジンからの動力を電力に変換してから電動モータを経由して油圧ユニットに伝達することになるので、駆動効率が低下してしまう。また、エンジンの回転数は、走行負荷にかかわらず、発電機の周波数に応じた一定の回転数となるように制御されるので、燃費の向上が困難であり、この点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、作業時及び走行時の何れにおいても高い駆動効率を有する移動式破砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の移動式破砕機が提供される。即ち、この移動式破砕機は、破砕対象物を破砕する。移動式破砕機は、破砕装置と、走行装置と、エンジンと、発電機と、油圧ポンプと、動力伝達経路と、クラッチと、を備える。前記破砕装置は、前記破砕対象物を破砕する。前記走行装置には、前記破砕装置が搭載されている。前記エンジンは、駆動源として用いられる。前記発電機は、前記エンジンからの動力を用いて発電する。前記油圧ポンプは、前記エンジンからの動力によって直接駆動される。前記動力伝達経路は、前記エンジンからの動力を前記油圧ポンプに伝達する。前記クラッチは、前記動力伝達経路を切断する第1状態と、前記動力伝達経路を接続する第2状態と、の間で切換可能である。前記破砕装置は、前記発電機で発電した電力によって駆動される。前記走行装置は、前記油圧ポンプから作動油が供給されることによって駆動される。前記破砕装置の動作時において、前記クラッチは前記第1状態に切り換えられる。前記走行装置の動作時において、前記クラッチは前記第2状態に切り換えられる。前記破砕装置の動作時において、前記エンジンは、所定の発電回転数で稼動する。前記クラッチが前記第1状態から前記第2状態に切り換えることが実行可能となる条件は、前記エンジンの回転数が閾値回転数以下であることを含む。前記閾値回転数が前記発電回転数以下である。
【0009】
このように、破砕装置及び走行装置のそれぞれの特性に応じた異なる駆動構成で駆動することで、移動式破砕機の作業時及び走行時の何れにおいても、高い駆動効率を得ることができる。走行時における油圧駆動への切換えを簡単な構成で実現することができる。クラッチの摩耗を低減することができ、使用寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業時及び走行時の何れにおいても高い駆動効率を有する移動式破砕機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る移動式破砕機の構成を示す側面図。
図2】移動式破砕機において動力を伝達する構成を示す模式図。
図3】走行装置を駆動するための油圧回路の例を示す図。
図4】エンジンの運転特性の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る移動式破砕機100の構成を示す側面図である。図2は、移動式破砕機100において動力を伝達する構成を示す模式図である。図3は、走行装置2を駆動するための油圧回路6の例を示す図である。
【0013】
図1に示す移動式破砕機100は、例えば、骨材、石灰石等の原石を1次破砕するために用いられる。移動式破砕機100は、破砕装置1が走行装置2の上に搭載された自走型破砕機として構成されている。移動式破砕機100は、図2に示すように、主駆動源としてのエンジン3と、破砕装置1に電力を供給するための発電機4と、走行装置2に作動油を供給して油圧駆動するための油圧ポンプ5と、備える。
【0014】
図1に示す破砕装置1は、例えば、岩石採掘現場で採掘された原石等の破砕対象物を粗砕きする1次破砕装置として構成される。この破砕装置1は、破砕対象物供給装置11と、破砕装置本体12と、破砕物排出コンベア13と、を備える。破砕装置1は、図2に示すように、前述の各装置を駆動するための電動モータ14を備える。図2では電動モータ14が1つだけ示されているが、実際は、電動モータ14は、破砕対象物供給装置11、破砕装置本体12及び破砕物排出コンベア13等に応じて多数配置されている。
【0015】
破砕対象物供給装置11は、バックホー等によって投入された破砕対象物を破砕装置本体12に自動供給するために用いられる。破砕対象物供給装置11は、供給ホッパ11aと、振動フィーダ11bと、を備える。
【0016】
供給ホッパ11aは、外部から破砕対象物を投入するために用いられる。供給ホッパ11aは、振動フィーダ11bの上方に配置されている。供給ホッパ11aは、上方に向かって開放する漏斗状に形成されている。供給ホッパ11aから投入された破砕対象物は、自重により、振動フィーダ11bへ落下する。
【0017】
振動フィーダ11bは、供給ホッパ11aを介して投入された破砕対象物を破砕装置本体12に自動的に供給する。振動フィーダ11bは、例えば、グリズリ付振動フィーダとして構成される。振動フィーダ11bは、図略の振動発生装置が発生した振動を利用して、破砕対象物を大塊と細粒に選別しながら、大塊破砕対象物を破砕装置本体12に供給する。なお、振動フィーダ11bは、選別機能を有しない振動フィーダとして構成されても良い。
【0018】
破砕装置本体12は、例えば、図1に示す固定歯12aと、可動歯12bと、を備えるシングルトグル型ジョークラッシャ(いわゆる揺動式破砕機)として構成される。固定歯12aは、破砕装置1に対して固定的に設けられている。可動歯12bは、固定歯12aに対してスライド可能に設けられる。破砕装置本体12は、可動歯12bをスライドすることで、固定歯12aと可動歯12bの間に投入された破砕対象物を噛み砕く。
【0019】
なお、これに限定されず、破砕装置本体12は、例えばインパクトクラッシャ(いわゆる衝突式破砕機)、コーンクラッシャ(旋動式破砕機)として構成されても良い。
【0020】
破砕物排出コンベア13は、破砕装置本体12で破砕された破砕物を外部に排出する。破砕物排出コンベア13は、破砕装置本体12を挟んで、破砕対象物供給装置11とは反対側に設けられる。なお、破砕物排出コンベア13は破砕対象物供給装置11と同じ側に設けられても良い。
【0021】
走行装置2は、移動式破砕機100を走行させることができる。走行装置2は、移動式破砕機100の機体幅方向両側のそれぞれに1セットずつ設けられ、下方から破砕装置1を支持している。それぞれの走行装置2は、クローラ21と、スプロケット22と、油圧モータ23と、を備える。
【0022】
クローラ21は、例えば鋼板からなる無端状に形成され、スプロケット22に巻き掛けられている。スプロケット22は、油圧モータ23の出力軸と連結され、油圧モータ23の出力軸の回転に伴って回転する。
【0023】
油圧ポンプ5は、走行装置2に作動油を供給するために用いられる。油圧ポンプ5は、エンジン3からの動力によって直接駆動される。
【0024】
油圧ポンプ5は、例えば、作動油の流量を調整可能な斜板式油圧ポンプから構成される。油圧ポンプ5において作動油の流量を調整することで、油圧モータ23の出力軸の回転速度を制御することができる。本実施形態では、図2に示すように、エンジン3の動力を油圧ポンプ5の入力軸に直接伝達して駆動することができる。
【0025】
油圧ポンプ5は、例えば、図3に示すような油圧回路6を介して、油圧モータ23と接続されている。油圧ポンプ5、油圧モータ23及び油圧回路6は、左右のクローラ21に対応して、2つずつ設けられている。
【0026】
一側の走行装置2の構成について説明すると、油圧ポンプ5は、油圧回路6を構成するコントロール弁61を介して、第1経路62及び第2経路63に接続される。第1経路62及び第2経路63は、油圧モータ23が備える後述の2つのポートのそれぞれに接続される。他側の走行装置2に関する構成は上記と実質的に同様であるので、説明を省略する。
【0027】
コントロール弁61は、油圧ポンプ5からの作動油の供給先を、第1経路62と第2経路63との間で切り換えることができる。即ち、コントロール弁61を介して、油圧ポンプ5からの作動油の供給先である油圧モータ23のポートを切り換えることができる。第1経路62及び第2経路63のうち何れかに供給された作動油は、油圧モータ23の斜板を傾斜させるためにも用いられる。
【0028】
油圧ポンプ5は、入力軸に駆動力が伝達されて回転すると、作動油を作動油タンク60から吸入して、第1経路62及び第2経路63の何れかに吐出する。油圧モータ23は、油圧ポンプ5から吐出された作動油によって駆動され、出力軸を回転させる。油圧モータ23の出力軸は、スプロケット22に連結されている。
【0029】
油圧モータ23は、例えば、作動油の流量を調整可能な斜板式油圧モータから構成される。油圧モータ23は、2つのポートを備える。2つのうち一方のポートは第1経路62に接続され、残りのポートは第2経路63に接続される。第1経路62と第2経路63の何れに圧油を供給するかを切り換えることで、油圧モータ23の出力軸の回転方向を切り換えることができる。
【0030】
エンジン3は、例えば、ディーゼルエンジンから構成され、発電機4及び走行装置2に動力を提供するために用いられる。なお、エンジン3は、ディーゼルエンジンに限定されず、例えば、ガソリンエンジン等から構成されても良い。また、エンジン3の代わりに、エンジンと電動機とを組み合わせたハイブリッド駆動ユニットとして構成されても良い。
【0031】
発電機4は、エンジン3からの動力を電力に変換する。発電機4で発電した電力は、複数の電動モータ14のそれぞれに供給される。電動モータ14の出力軸が回転することで、振動フィーダ11b、可動歯12b、及び破砕物排出コンベア13等が駆動される。
【0032】
続いて、本実施形態の移動式破砕機100の作業時及び走行時における動力の供給について、図2等を参照して詳細に説明する。
【0033】
本実施形態においては、図2に示すように、エンジン3は、走行装置2に連結された油圧ポンプ5を直接駆動可能に設けられている。具体的には、エンジン3は、図2に示す動力伝達経路7を介して、油圧ポンプ5に連結されている。エンジン3で発生した動力が、動力伝達経路7を介して、油圧ポンプ5に伝達される。
【0034】
動力伝達経路7は、図2に示すように、第1伝達軸71と、第2伝達軸72と、走行用クラッチ(クラッチ)73と、を備える。第1伝達軸71は、エンジン3の出力軸として構成されても良いし、エンジン3の出力軸に固定された軸として構成されても良い。第2伝達軸72は、例えば、油圧ポンプ5に接続され、油圧ポンプ5を駆動する駆動軸として構成されている。
【0035】
第1伝達軸71の中途部には、発電機4が設けられている。第1伝達軸71は、エンジン3からの動力を発電機4に伝達する。発電機4の入力軸は、第1伝達軸71に直結されても良いし、図略のクラッチ等を介して第1伝達軸71に接続されても良い。
【0036】
走行用クラッチ73は、例えば公知の油圧式クラッチとして構成され、第1伝達軸71及び第2伝達軸72の間に設けられている。走行用クラッチ73は、第1伝達軸71からの動力を第2伝達軸72に対して切断する遮断状態(第1状態)と、第1伝達軸71からの動力を第2伝達軸72に伝達する伝達状態(第2状態)と、の間で切換可能に構成されている。なお、走行用クラッチ73としては、摩擦クラッチの代わりに、流体を介して回転運動の伝達を行うクラッチ(例えば流体継手)を用いることもできる。
【0037】
走行用クラッチ73は、例えば、エンジン3の稼動を制御する図略の制御装置により制御される。制御装置は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD等を備えるコンピュータから構成される。走行用クラッチ73は、制御装置からの制御指令に応じて、遮断状態と伝達状態との間で切り換わる。
【0038】
上記の構成で、移動式破砕機100が破砕装置1を稼動させて破砕作業を行う場合を考える。以下、この状態を作業時と呼ぶことがある。破砕作業は、走行装置2を停止させた状態で行われる。
【0039】
移動式破砕機100の作業時においては、走行用クラッチ73は図2(a)に示すように、制御装置からの制御指令に従って遮断状態に切り換えられる。この状態では、エンジン3は、発電機4のみを駆動する。
【0040】
作業時では、発電機4が生成する電力の交流周波数を所定の周波数(例えば50Hz又は60Hz)に維持するために、エンジン3は、回転数が一定となるように制御される。以下では、このときの回転数を発電回転数と呼ぶことがある。
【0041】
発電機4で発電した電力は、移動式破砕機100の破砕作業のために、振動フィーダ11b、可動歯12b、破砕物排出コンベア13等を駆動するそれぞれの電動モータ14等に供給される。
【0042】
次に、移動式破砕機100が走行装置2によって移動する場合を考える。以下、この状態を走行時と呼ぶことがある。移動式破砕機100の走行は、破砕装置1を停止させた状態で行われる。
【0043】
移動式破砕機100の走行時においては、走行用クラッチ73は図2(b)に示すように、制御装置からの制御指令に従って伝達状態に切り換えられる。この状態では、エンジン3は、走行装置2の駆動源としての油圧ポンプ5を直接駆動する。
【0044】
走行時では、エンジン3は、油圧ポンプ5(ひいては走行装置2)の動力源として用いられる。発電機4を駆動する必要がないため、エンジン3は、移動式破砕機100の走行速度、路面の傾斜等に応じて、回転数を適切に調整して運転することができる。
【0045】
本実施形態の移動式破砕機100においては、上記走行用クラッチ73が遮断状態から伝達状態へ切り換えられる条件として、エンジン3の回転数に関する条件を含む。具体的には、エンジン3の回転数が所定回転数以下である場合にのみ、走行用クラッチ73が、遮断状態から伝達状態へ切り換えられる。以下では、クラッチの接続条件となる回転数を、閾値回転数と呼ぶことがある。
【0046】
これにより、エンジン3の回転数が高い状況において走行用クラッチ73が遮断状態から伝達状態に切り換わることを回避でき、走行用クラッチ73の使用寿命を延ばすことができる。上記の閾値回転数は、例えば、移動式破砕機100の作業時におけるエンジン3の回転数(上述の発電回転数)と等しいか、それよりも小さい値とすることができる。
【0047】
具体的には、本実施形態の移動式破砕機100において、走行用クラッチ73を遮断状態から伝達状態に切り換える必要がある場合(例えば、オペレータが破砕装置1を停止させ、走行を開始させる場合)であって、エンジン3が既に停止されているときは、制御装置は、エンジン3の始動前に、走行用クラッチ73を伝達状態に切り換えさせる。
【0048】
一方、エンジン3が稼動している場合、制御装置は、先ず、エンジン3の回転数を所定回転数以下まで下げるように、エンジン3を減速制御し、エンジン3の回転数が所定回転数以下となった場合に、走行用クラッチ73を伝達状態に切り換えさせる。これにより、走行用クラッチ73の摩耗を低減することができ、使用寿命を延長することができる。
【0049】
ところで、従来の移動式破砕機には、作業時及び走行時の何れにおいても、エンジン及び油圧駆動装置の組合せを駆動源とする構成となっているものがある。ここで、油圧駆動装置とは、油圧ポンプと油圧モータを組み合わせたものを意味する。この油圧式駆動構成では、破砕作業時にも油圧ポンプを使用するため、油圧ポンプとして大容量のものを用いる必要がある。一方で、走行時においては、作業時に比べて大幅に小さい容量でしか油圧ポンプが使用されないため、油圧ポンプの容積効率が低下してしまう。
【0050】
一方、上記先行技術で述べたように、従来の移動式破砕機には、作業時及び走行時の何れにおいても、エンジン、発電機、作業用電動モータ、及び走行用油圧駆動装置の組合せを駆動源とする構成となっているものもある。この電動式駆動構成では、走行時において走行用油圧駆動装置が発電機からの電力で駆動されているため、全体の駆動効率が、発電機の効率と、電動機の駆動効率と、走行用油圧駆動装置の駆動効率と、を乗じた値となり、大幅に低下してしまう。また、走行時の負荷にかかわらず、発電周波数に応じた所定の回転数にエンジンの回転数が拘束されるので、燃費が良い条件でエンジンを運転することが困難である。
【0051】
この点、本実施形態の移動式破砕機100は、従来の油圧式駆動構成及び電動式駆動構成とは異なり、上述のように、作業時における電動駆動と、走行時における油圧駆動と、を使い分ける駆動構成を有している。
【0052】
具体的には、本実施形態の移動式破砕機100においては、作業時には、エンジン3、発電機4、及び電動モータ14の組合せを駆動源として用いて破砕装置1が駆動される。仮に油圧ポンプを用いて破砕装置1を駆動する場合は低負荷時に効率が低くなってしまうが、本実施形態ではそれを回避して、低負荷から高負荷までの広い負荷領域にわたって高効率を達成することができる。本実施形態では、特に低負荷時において、従来の油圧式駆動構成に比べて駆動効率を大幅に向上し、例えば約70%程度の駆動効率を実現することができる。
【0053】
また、本実施形態の移動式破砕機100では、油圧ポンプ5は、作業時には駆動されず、走行時にのみ駆動される。従って、油圧ポンプ5の容積は、走行時のために必要となる分を確保できれば十分である。油圧ポンプ5として小さな容積のものを採用することで、コストを低減することができる。また、油圧ポンプ5の容積と、走行のために必要な容積と、の差を小さくすることで、高効率の運転を実現することができる。更には、一般に、油圧ポンプ5は電動モータ14と比較してメンテナンスを頻繁に行う必要があるが、油圧ポンプ5は走行時だけ駆動されるので、メンテナンスの負担を減らすことができる。
【0054】
本実施形態の移動式破砕機100では、走行時において、エンジン3は発電機4を駆動しない。従って、エンジン3の回転数の自由度が高くなるので、燃費の向上が容易である。図4にはエンジン3の運転特性の例がグラフで示され、下側のグラフは燃料消費率を示している。このグラフによれば、作業時におけるエンジン回転数よりも燃費が良好な回転数が存在することがわかる。作業時は高出力が必要となるため、エンジン3が高回転領域で運転する必要がある。一方、走行時では、必要な出力が比較的に小さいため、図4に示す燃費が良好な回転数でエンジン3を運転することが可能となる。従って、走行時において例えば当該回転数でエンジン3を運転するように制御することで、燃費の向上を実現することができる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の移動式破砕機100は、破砕装置1と、走行装置2と、エンジン3と、発電機4と、油圧ポンプ5と、を備える。破砕装置1は、破砕対象物を破砕する。走行装置2には、破砕装置1が搭載される。エンジン3は、駆動源として用いられる。発電機4は、エンジン3からの動力を用いて発電し、電力を破砕装置1に供給する。油圧ポンプ5は、エンジン3からの動力によって駆動される。破砕装置1は、発電機4で発電した電力によって駆動される。走行装置2は、油圧ポンプ5から作動油が供給されることによって駆動される。
【0056】
このように、破砕装置1及び走行装置2のそれぞれの特性に応じた異なる駆動構成で駆動することで、移動式破砕機100の作業時及び走行時の何れにおいても、高い駆動効率を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態の移動式破砕機100は、動力伝達経路7と、走行用クラッチ73と、を備える。動力伝達経路7は、エンジン3からの動力を油圧ポンプ5に伝達する。走行用クラッチ73は、動力伝達経路7を切断する遮断状態と、動力伝達経路7を接続する接続状態と、の間で切換可能である。破砕装置1の動作時において、走行用クラッチ73は遮断状態に切り換えられる。走行装置2の動作時において、走行用クラッチ73は接続状態に切り換えられる。
【0058】
これにより、走行時における油圧駆動への切換えを簡単な構成で実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の移動式破砕機100においては、破砕装置1の動作時において、エンジン3は、所定の発電回転数で稼動する。走行用クラッチ73が遮断状態から接続状態に切り換えることが実行可能となる条件は、エンジン3の回転数が閾値回転数以下であることを含む。閾値回転数は、発電回転数以下である。
【0060】
これにより、走行用クラッチ73の摩耗を低減することができ、使用寿命を延ばすことができる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0062】
走行装置2は、クローラの代わりに、タイヤ等を備えても良い。
【0063】
破砕対象物供給装置11は、移動式破砕機100の本体とは別途に設けられても良い。この場合、破砕対象物供給装置11は、タイヤ等を備え、例えば、移動式破砕機100により牽引されることで移動することが好ましい。
【0064】
移動式破砕機100には、例えば、上述の破砕装置1のような1次破砕装置の代わりに、2次破砕装置、3次破砕装置、又は旋回コンベアが搭載されても良い。
【0065】
破砕装置1は、振動フィーダ11bの代わりに、コンベア等を備えても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 破砕装置
2 走行装置
3 エンジン
4 発電機
5 油圧ポンプ
100 移動式破砕機
図1
図2
図3
図4