IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヤクルト本社の特許一覧 ▶ よつ葉乳業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】脱脂粉乳の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/14 20060101AFI20240327BHJP
   A23C 1/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A23C9/14
A23C1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019177183
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2020054342
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018185392
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(73)【特許権者】
【識別番号】591181894
【氏名又は名称】よつ葉乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 正理
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 大地
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】盛田 彰太郎
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-062695(JP,A)
【文献】特表2004-520851(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01563741(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/091409(WO,A1)
【文献】特開2014-221033(JP,A)
【文献】特開2016-001999(JP,A)
【文献】特開2002-345402(JP,A)
【文献】特開2008-029278(JP,A)
【文献】特開平01-187049(JP,A)
【文献】KIM, E. H.-J. et al.,Surface composition of industrial spray-dried milk powders. 2.Effects of spray drying conditions on,Journal of Food Engineering,2008年10月25日,Vol.94,p.169-181,第171頁左カラム13-30行
【文献】MERCAN, E. et al.,Determination of powder flow properties of skim milk powder produced from high-pressure homogenizati,LWT- Food Science and Technology,2018年07月04日,Vol.97,p.279-288,Fig.1, Table2
【文献】灰谷剛 ほか著,生乳及び加熱乳における脂肪分解に及ぼすブレンダー型均質機による処理の影響,北海道大学農学部邦文紀要,1989年03月30日,第16巻、第3号,第282-286頁,材料と方法
【文献】佐々木林治郎 ほか著,牛乳の均質化処理によるカゼインの変化に関する研究,農化,1957年02月21日,第32巻、第10号,第752-756,II.供試品及び実験方法
【文献】ZAPICO, P. et al.,The effect of homogenization of whole milk, skim milk and milk fat on nisin activity against Listeri,International Journal of Food Microbiology,1999年,Vol.46,p.151-157,第152頁右カラム7行-第153頁左カラム8行
【文献】DEETH, H. C. & FITZ-GERALD, C.H.,Some factors involved in milk lipase activation by agitation,Journal of Dairy Research,1977年,Vol.44,p.569-583,Fig.1、Fig.3
【文献】BHAVADASAN, M. K. et al.,Influence of Agitation on Milk Lipolysis and Release of Membrane-Bound Xanthine Oxidase,J. Dairy Sci.,1982年,Vol.65,p.1692-1695,Fig.1
【文献】LIU, J. et al.,Modeling the effect on skim milk during ultra-high pressure homogenization using front-face fluoresc,Innovative Food Science and Emerging Technologies,2018年04月13日,Vol.47,p.439-444,Table1,2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/14
A23C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂乳から脱脂粉乳を製造する工程において、脱脂乳を30~55℃の温度条件下でホモゲナイザーを用いて5~50MPaの均質化圧力で均質化処理すること、及び均質化処理後に10℃以下で12~96時間貯乳することを特徴とする、脱脂粉乳中の遊離脂肪酸量の増加方法であって、炭素数14以上の遊離脂肪酸量の増加が炭素数12以下の遊離脂肪酸量の増加に比べて大きい、方法
【請求項2】
均質化処理が、43~53℃で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
均質化処理が、8~30MPaの均質化圧力で行われる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
貯乳時間が、24~48時間である、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量が、均質化処理せずに24時間貯乳した場合と比べて20%以上増加する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量が、炭素数12以下の遊離脂肪酸量の300%以上である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
均質化処理後かつ貯乳前に50~60℃で20~60分加温保持することを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵乳の原料として適する脱脂粉乳の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌を利用した食品の一つである発酵乳には生きた乳酸菌が含まれ、その発酵乳の原料としては、牛乳等の獣乳またはそれらから調製される脱脂粉乳を使用することがある。したがって、脱脂粉乳としては乳酸菌の発酵性がより良好なものが求められる。
【0003】
牛乳中の脂肪分である乳脂肪は、多くの異なる脂肪酸から構成されている。それらの大部分は飽和脂肪酸であるが、短鎖、中鎖、長鎖の脂肪酸が幅広く含まれ、特にパルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数14~18の長鎖脂肪酸が多く含まれることが知られている。生乳中の乳脂肪はリン脂質で構成された脂肪球膜で覆われた大小の球状粒子(脂肪球)となって分散しているが、撹拌等の外的要因により脂肪球膜が損傷を受けると、生乳中のリパーゼが働き、脂肪の一部が加水分解されて構成脂肪酸を遊離する(非特許文献1、2)。
【0004】
斯かる遊離脂肪酸は、しばしば不快な臭いや味を与えることから製品管理上問題となる一方、遊離脂肪酸量の増加により乳酸菌の発酵性が向上することが確認されている。
【0005】
脱脂粉乳は、生乳からクリーム(乳脂肪分)を除去したものからほとんど全ての水分を除去したものであることから、脂肪酸含有量は生乳に比べて遥かに低い。したがって、発酵乳の原料として使用するためには、遊離脂肪酸含量を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】DEETH,H.C. and FITZ-GERALD,C.H.: Some factors involved in milk lipase activation by agitation,J. Dairy Res.,44: 569-583. 1977
【文献】BHAVADASON,M. K.,ABRAHAM,M. j. and GANGUL, N. C.: Influence of agitation on milk lipolysis and release of membrane-bonud xanthine oxidase,J. Dairy Sci.,65: 1692-1695. 1982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
風味劣化を引き起こすことなく、遊離脂肪酸量を高めた脱脂粉乳の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、脱脂粉乳の製造工程において、脱脂乳を特定の温度条件下で均質化処理することにより、遊離脂肪酸量が増加し、且つ風味劣化を起こさないことを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~11)に係るものである。
1)脱脂乳から脱脂粉乳を製造する工程において、30~55℃の温度条件下で、均質化処理する工程を含む、脱脂粉乳の製造方法。
2)均質化処理が、43~53℃で行われる、1)の方法。
3)均質化処理が、ホモゲナイザーを用いて5~50MPaの均質化圧力で処理される、1)又は2)の方法。
4)脱脂粉乳中の遊離脂肪酸量が増加する、1)~3)のいずれかの方法。
5)均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量が、均質化処理せずに24時間貯乳した場合と比べて20%以上増加する、4)の方法。
6)均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数12以下の脂肪酸の増加率が炭素数14以上の脂肪酸の増加率に比べて低い、4)又は5)の方法。
7)均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量が、炭素数12以下の遊離脂肪酸量の300%以上である、4)~6)のいずれかの方法。
8)1)~7)のいずれかの方法により製造された脱脂粉乳。
9)脱脂乳から脱脂粉乳を製造する工程において、30~55℃の温度条件下で、均質化処理することを特徴とする、脱脂粉乳中の遊離脂肪酸量の増加方法。
10)均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量が、均質化処理せずに24時間貯乳した場合と比べて20%以上増加する、9)の方法。
11)炭素数12以下の脂肪酸の増加率が炭素数14以上の脂肪酸の増加率に比べて低い、9)又は10)の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、風味劣化を引き起こすことなく、遊離脂肪酸の含有量を高めた脱脂粉乳を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「脱脂粉乳」とは、生乳からクリーム分を除去して得られる脱脂乳を、殺菌、濃縮及び乾燥処理して粉末状にしたものを指す。
【0012】
原料として用いられる生乳は、牛乳、山羊乳、羊乳、水牛乳、馬乳、ラクダ乳等の何れでもよく、その性状も乳加工業において通常知られているものであれば特に制限はない。
【0013】
脱脂乳を得るための、クリーム分を除去する方法(「クリーム分離」とも称する)は、分離機の種類やその操作条件等は特に制限はなく、また、連続処理であっても、バッチ処理であってもよい。好ましくは、クリームセパレーターを用いて、10~65℃にて行われる分離方法が挙げられる。
【0014】
本発明の脱脂粉乳の製造方法は、脱脂乳から脱脂粉乳を製造する工程において、脱脂乳を30~55℃の温度条件下で、均質化処理する工程を含むものである。
脱脂乳から脱脂粉乳を製造する工程とは、脱脂粉乳の製造として一般的に行われる、脱脂乳に対して、殺菌、濃縮及び乾燥粉末化の各工程をこの順で行うことを指す。
【0015】
均質化処理としては、脱脂乳の全体を混合撹拌できるものであればその手段は限定されないが、好ましくはホモゲナイザーを用いた手段を挙げることができ、その時の均質化圧力は5~50MPa(50.986~509.86kgf/cm)、好ましくは8~30MPa、より好ましくは12~24MPaである。
【0016】
均質化処理は、30~55℃の温度条件下で行われる。斯かる温度条件で均質化することにより遊離脂肪酸量が増大する。
均質化温度は、30~55℃であれば良いが、好ましくは、35~50℃、より好ましくは43~53℃、さらに好ましくは45~51℃である。
温度の調整は、タンク式、チューブラ式、プレート式、直接蒸気式等、いずれの方法でも良い。
【0017】
均質化処理は、少なくとも、リパーゼが失活する殺菌工程前に行われるが、好ましくは、均質化処理後、処理脱脂乳を一定時間貯乳することが遊離脂肪酸含量を高める点で好ましい。ここで、貯乳時間としては、12~96時間が好ましく、より好ましくは24~48時間である。尚、貯乳の際の温度は10℃以下で行うことが好ましい。また、遊離脂肪酸量を制御する点から、脱脂乳中の脂肪含量に応じて、貯乳前に50~60℃で20~60分程度加温保持する工程を設けることも可能である。
【0018】
殺菌処理は、脱脂粉乳の製造に採用される一般的な加熱条件で行うことができ、例えば、殺菌機内において80~130℃で、1~30秒間処理することが挙げられる。
加熱処理のための装置としては、殺菌機として上記加熱条件が採用できるものであれば、特に制限はなく、バッチ式、チューブラ式、プレート式、直接蒸気式などいずれであってもよいが、上記加熱条件の制御が安定して容易に行え、また、製造効率が良く大量生産が可能である、プレート式殺菌機や直接蒸気式殺菌機が好ましく用いられる。
【0019】
濃縮工程では、例えば、MVR蒸気圧縮濃縮装置や真空濃縮装置等を用いて温度50~90℃で、固形分濃度40~50%まで、減圧濃縮される。
【0020】
得られた濃縮液は、50~80℃に予熱後、チャンバー内で噴霧乾燥し、粉末状の脱脂粉乳を得ることができる。
【0021】
斯くして得られた、脱脂粉乳は、所定の均質化処理を行わない通常の脱脂粉乳に比べて遊離脂肪酸の含有量が増加している。この場合に、風味の劣化の原因と考えられる炭素数12以下の脂肪酸よりも、炭素数14以上の長鎖脂肪酸の含有量が増加している。したがって、遊離脂肪酸の含有量が増加した場合でも風味の劣化が殆ど認められず、むしろ脂肪酸によるまろやかさやこくが増強し、風味が向上している。
すなわち、本発明の脱脂粉乳中の総遊離脂肪酸量は、好ましくは0.02~0.15質量%、より好ましくは0.04~0.08質量%である。また、均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、炭素数12以下の遊離脂肪酸量と比べて300%以上の含有量であることが好ましく、400%以上であることがより好ましい。ここで、上限は特に限定されないが、600%以下、または450%以下を例示できる。
さらに、均質化処理後、10℃以下で24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、均質化せずに10℃以下で24時間貯乳した場合と比べて20%以上増加していることが好ましく、40%以上増加していることがより好ましい。ここで、上限は特に限定されないが、110%以下、85%以下、50%以下、または45%以下を例示できる。
【実施例
【0022】
<脱脂乳の品質評価試験>
表1に記載のサンプル3.5gに内部標準品としてトリデカン酸のメタノール溶液(50μg/ml)を1ml及びアセトニトリル15mlを加え、撹拌及び遠心後に上清3.5mlを回収し、遠心エバポレーターにてアセトニトリルを除去し、メタノールで約5mlに定容し、0.45μmのフィルターでろ過した。この溶液5容量に対しADAM(9-Anthryldiazomethane、フナコシ(株)製)のアセトン溶液(1mg/ml)を1容量加え、室温・暗所で90分以上静置し、高速液体クロマトグラフィーで分析した。標準物質には酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸の計9種類を用い、これら9種の遊離脂肪酸の総和を総遊離脂肪酸とした。分析は以下の条件で行った。
分析条件
カラム:Imtakt社製 Unison UK-C8
カラム温度:30℃
流速:1.0ml/分
移動相:A液をアセトニトリル/水=65/35、B液をアセトニトリル/水=85/15とし、0~9分までA液を100%、9~28分までB液を0~100%にリニアグラジエント、28~46分までB液を100%とした。
注入量:10μl
励起波長:365nm
蛍光波長:412nm
【0023】
<風味評価試験>
熟練した官能評価パネル3名でサンプルの風味評価を行い、おいしさの絶対評価及び自由描写を行った。
【0024】
実施例1
生乳を遠心分離クリームセパレーター(elecrem社製)により分離温度45℃で、クリームと脱脂乳に分離した。分離した脱脂乳を冷却後、48℃まで加温し、均質化圧12MPaで均質化した。均質化した脱脂乳を10℃以下で0時間、24時間、及び48時間貯乳を行った後、80℃に加熱して得たサンプルについて、品質を評価した。
【0025】
比較例1
生乳を遠心分離クリームセパレーター(elecrem社製)により分離温度45℃で、クリームと脱脂乳に分離し、分離した脱脂乳を冷却後、脱脂乳を10℃以下で0時間、24時間、及び48時間貯乳を行った後、80℃に加熱して得たサンプルについて、品質を評価した。
【0026】
比較例2
均質化直前の温度を10℃以下とした以外は実施例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
結果を表1に示す。表1より、実施例1の脱脂粉乳中の総遊離脂肪酸量(総FFA)は、0.0303~0.0419質量%であった。また、実施例1において、均質化処理後24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、炭素数12以下の遊離脂肪酸量と比べて495%の含有量であり、均質化せずに24時間貯乳した場合(比較例1)の炭素数14以上の遊離脂肪酸量と比べて43%増加していた。また、比較例2のとおり、10℃以下で均質化処理した場合は、遊離脂肪酸量の増加は見られなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例2
クリーム分離温度を48℃、均質化圧を24MPaとした以外は、実施例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
【0029】
比較例3
クリーム分離温度を48℃とした以外は、比較例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
【0030】
比較例4
クリーム分離温度を48℃、均質化圧を24MPaとした以外は、比較例2と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
結果を表2に示す。表2より、実施例2の脱脂粉乳中の総遊離脂肪酸量(総FFA)は、0.0300~0.0431質量%であった。また、実施例2において、均質化処理後24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、炭素数12以下の遊離脂肪酸量と比べて413%の含有量であり、均質化せずに24時間貯乳した場合(比較例3)の炭素数14以上の遊離脂肪酸量と比べて46%増加していた。また、比較例4のとおり、10℃以下で均質化処理した場合は、遊離脂肪酸量の増加は見られなかった。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例3
クリーム分離温度を15℃とし、均質化後貯乳前に52℃で20分間保持した以外は、実施例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
【0033】
実施例4
クリーム分離温度を15℃とし、均質化後貯乳前に52℃で60分間保持した以外は、実施例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
【0034】
比較例5
クリーム分離温度を15℃とした以外は、比較例1と同様にして得たサンプルについて、品質を評価した。
結果を表3に示す。表3より、実施例3の脱脂粉乳中の総遊離脂肪酸量(総FFA)は、0.102~0.117質量%であった。また、実施例3において、均質化処理後24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、炭素数12以下の遊離脂肪酸量と比べて420%の含有量であり、均質化せずに24時間貯乳した場合(比較例5)の炭素数14以上の遊離脂肪酸量と比べて105%増加していた。
【0035】
また表3より、実施例4の脱脂粉乳中の総遊離脂肪酸量(総FFA)は、0.095~0.104質量%であった。また、実施例4において、均質化処理後24時間貯乳した際の炭素数14以上の遊離脂肪酸量は、炭素数12以下の遊離脂肪酸量と比べて415%の含有量であり、均質化せずに24時間貯乳した場合(比較例5)の炭素数14以上の遊離脂肪酸量と比べて81%増加していた。
【0036】
【表3】
【0037】
風味評価試験
実施例1、比較例1にて得たサンプルについてそれぞれ風味評価を行った。
【0038】
【表4】
【0039】
実施例1、2にて得られたサンプルをUHT殺菌機(MicroThermics社製)により125℃9秒保持の条件で直接加熱殺菌後、10℃以下に冷却した。その殺菌脱脂乳を遠心式薄膜真空蒸発装置エバポールCEP-L型(大川原製作所製)により真空度70cmHg、蒸発温度約40℃の条件で、固形分濃度が約47%に上昇するまで減圧濃縮した。さらに、スプレードライヤーPSD52(APV社製)により熱風温度を180℃とし、排風温度が85℃となるように脱脂濃縮乳の流量を制御しながら噴霧乾燥することによって、粉末状の脱脂粉乳を得た。