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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】パネルと留め具のセット
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20240327BHJP
   E04B 1/02 20060101ALI20240327BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240327BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04B1/02 D
E04B2/56 642C
F16B2/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019186385
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059956
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・2018年10月22日~2018年10月26日 日鉄鋼板株式会社西日本製造所(湖南地区)内 施工実験棟にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 極
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-137907(JP,U)
【文献】特開平04-238933(JP,A)
【文献】特開2017-043954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14ー21/22
E04B 1/02
E04B 2/56-2/70
F16B 2/12
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体の横架材に対して係止部材を介して前記横架材の長手方向にスライド可能に係止されるパネルと、
前記パネルの前記長手方向の位置ずれを規制するための留め具と、を備え、
前記留め具は、
前記横架材に係止される係止部と、
前記係止部を前記横架材に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部と、
前記パネルに当たることで、前記パネルの前記長手方向への移動を規制する規制部と、
を備える、
パネルと留め具のセット
【請求項2】
前記規制部は、前記パネルに固定された固定板の前記長手方向を向く側面に当たるように構成されている、
請求項1に記載のパネルと留め具のセット
【請求項3】
前記規制部は、前記係止部から前記長手方向に突出した突出片である、
請求項2に記載のパネルと留め具のセット
【請求項4】
前記固定操作部は、
前記横架材に対して接離するように、前記係止部に取り付けられた固定用ボルトと、
前記固定用ボルトに連結された操作レバーと、を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパネルと留め具のセット
【請求項5】
前記固定操作部は、
前記操作レバーの動作範囲に位置し、前記固定用ボルトが前記係止部から外れる位置にまで前記操作レバーが動作することを規制する動作規制部を更に有する、
請求項4に記載のパネルと留め具のセット
【請求項6】
前記固定操作部は、
前記横架材に対して接離するように、前記係止部に取り付けられた固定用ボルトを有し、
前記固定用ボルトは、工具によって回転操作可能な頭部を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のパネルと留め具のセット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネルと留め具のセットに関し、詳しくは、構造躯体の横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルの位置ずれを規制するためのパネルと留め具のセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、壁下地を構成する水平方向に長い取付枠材に、複数の建築用パネルを固定した固定構造が、記載されている。
【0003】
複数の建築用パネルのそれぞれには、係止金具が取り付けられている。複数の建築用パネルのそれぞれは、係止金具を取付枠材に引っ掛けた状態で、ねじ具や溶接によって取付枠材に固定されることで、設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-043742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の建築用パネルのように、取付枠材に対して引っ掛けられた後に固定されるものでは、固定されるまでの間に、建築用パネルが取付枠材の長手方向に位置ずれを起こす場合がある。このように位置ずれを起こすと、建築用パネルの位置の調整を再度行う必要がある。
【0006】
上記事情に鑑みて、本開示は、構造躯体の横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルの位置ずれを規制することができるパネルと留め具のセットを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るパネルと留め具のセットは、構造躯体の横架材に対して係止部材を介して前記横架材の長手方向にスライド可能に係止されるパネルと、前記パネルの前記長手方向の位置ずれを規制するための留め具と、を備える。前記留め具は、前記横架材に係止される係止部と、前記係止部を前記横架材に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部と、前記パネルに当たることで、前記パネルの前記長手方向への移動を規制する規制部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るパネルと留め具のセットでは、構造躯体の横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルの位置ずれを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態の留め具を用いてパネルの移動を規制する様子を示す斜視図である。
図2図2Aは、同上の留め具を示す側面図であり、図2Bは、同上の留め具を示す後面図であり、図2Cは、同上の留め具を示す平面図である。
図3図3は、同上のパネルの一例を示す斜視図である。
図4図4は、同上のパネルが横架材に複数枚固定されて形成される壁構造の一例を示す斜視図である。
図5図5は、同上の留め具の変形例1を示す斜視図である。
図6図6は、同上の留め具の変形例2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
図1に示す一実施形態の留め具1は、構造躯体の横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネル3の位置ずれを規制するための留め具である。留め具1は、横架材2に係止される係止部4と、係止部4を横架材2に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部5と、パネル3に当たることで、パネル3の前記長手方向への移動を規制する規制部6と、を備える。
【0011】
上記構成を備える一実施形態の留め具1では、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3に対して、規制部6がパネル3に当たるように、係止部4を横架材2に係止させ、この状態で、固定操作部5を操作して、係止部4を横架材2に固定することができる。これにより、一実施形態の留め具1では、横架材2の長手方向へのパネル3の移動を規制部6によって規制することができて、パネル3の位置ずれを規制することができる。
【0012】
2.詳細
続いて、本実施形態の留め具1について更に詳しく説明する。
【0013】
以下では、横架材2の長手方向を左右方向とし、横架材2に対してパネル3が位置する側を前方とし、その反対側を後方とし、この左右方向及び前後方向に対して直交する方向を上下方向として、各構成について詳しく説明する。
【0014】
2-1.留め具
留め具1は、図2A図2B及び図2Cに示すように、係止部4、固定操作部5、及び規制部6を備える。留め具1は、本実施形態では、金属製である。
【0015】
2-1-1.係止部
係止部4は、横架材2が有する縦板部20が差し込まれる差込溝40が設けられたブロック状の部材である。係止部4は、上下方向を長手方向とする直方体状の第一縦片41と、第一縦片41の上端部から前方に延びた横片42と、横片42の前端部から下方に延びた直方体状の第二縦片43と、を有する。
【0016】
第二縦片43は、第一縦片41に対して平行であり、第一縦片41から横架材2の縦板部20の厚みと同程度の距離だけ離れて位置する。第一縦片41と横片42と第二縦片43で囲まれた空間が、縦板部20が差し込まれる差込溝40である。第一縦片41には、第一縦片41の一部を前後方向に貫通するねじ孔410が設けられている。ねじ孔410は、差込溝40に繋がっている。第一縦片41には、ねじ孔410よりも下側の部分に取付穴411が更に設けられている。
【0017】
係止部4には、ねじ穴412が設けられている。本実施形態では、ねじ穴412は、第一縦片41の上面に設けられている。ねじ穴412には、例えば、施工者と留め具1とを連結する落下防止用ベルトを着脱するためのボルトが、着脱可能である。なお、落下防止用ベルトの連結先は、施工者に限らず、パネル3、構造躯体(横架材2等)、仮設足場等の、留め具1の周囲にある他の構造であってもよい。
【0018】
2-1-2.固定操作部
固定操作部5は、横架材2の縦板部20に対して接離するように、係止部4に取り付けられた固定用ボルト50と、固定用ボルト50に連結された操作レバー51と、を有する。
【0019】
詳しくは、固定用ボルト50は、係止部4の第一縦片41のねじ孔410に挿入された軸部52と、軸部52の後端部に設けられた頭部53と、を有する。頭部53に、操作レバー51が連結されている。操作レバー51は、施工者によって把持可能な帯板状のハンドル部510と、ハンドル部510の一端部に設けられた連結孔511とを有する。操作レバー51は、連結孔511に固定用ボルト50の頭部53を嵌め込むことで、固定用ボルト50に連結され、固定用ボルト50と一体に動作する。
【0020】
固定操作部5は、操作レバー51を掴んで、固定用ボルト50をその軸周りに回転させることで、固定用ボルト50の軸部52の第一縦片41から前側への突出量を調整することができる。
【0021】
操作レバー51を後方から見て時計回りに回転操作して、固定用ボルト50の軸部52の先端(前端)を縦板部20に対して押し当てることで、係止部4は横架材2に固定される。また、操作レバー51を反時計回りに回転操作して、固定用ボルト50の軸部52の先端(前端)を、縦板部20から離すことで、係止部4の横架材2に対する固定が解除される。本実施形態では、操作レバー51が左下がりに傾いた状態(図1の二点鎖線で示す状態)が、固定解除状態であり、上下方向と平行な起立状態(図1の実線で示す状態)が、固定状態である。
【0022】
なお、固定解除状態と固定状態とは、上記の各状態に限定されず、適宜変更可能である。例えば、固定解除状態が前記の起立状態であり、固定状態が、操作レバー51が右下がりに傾いて横板部21に隣接した状態であってもよい。
【0023】
また、操作レバー51は、後方から見て反時計回りに回転操作されることによって、固定解除状態から固定状態へと切り替わるように構成されてもよく、すなわち、固定用ボルト50の軸部52は、後方から見て反時計回りに回すとネジが閉まる逆ネジであってもよい。
【0024】
固定操作部5は、操作レバー51の動作範囲に位置し、固定用ボルト50が係止部4から外れる位置にまで操作レバー51が動作することを規制する動作規制部54を更に有する。動作規制部54は、本実施形態では、係止部4の第一縦片41の取付穴411に取り付けられ、第一縦片41から操作レバー51と同じ前後位置まで突出したボルトである。
【0025】
操作レバー51は、動作規制部54に当たることでそれ以上ねじが緩む方向に回転することが防がれ、これにより、固定用ボルト50が係止部4のねじ孔410から外れ落ちることを防ぐことができる。
【0026】
2-1-3.規制部
規制部6は、図1に示すように、パネル3に固定された固定板7の側面(横架材2の長手方向を向く側面)に当たるように構成されている。図2A図2B及び図2Cに示すように、規制部6は、係止部4から横架材2の長手方向に突出した突出片60である。
【0027】
本実施形態では、突出片60は、係止部4の第二縦片43の前端部から左右方向外側にそれぞれ突出している。つまり、規制部6は、二つの突出片60である。二つの突出片60のそれぞれは、矩形板状であり、第二縦片43の上下方向の全長から左右方向外側に突出している。
【0028】
2-2.パネル
パネル3は、図4に示すように、横架材2に複数枚取り付けられて建物の壁を形成するパネルである。図3に示すように、パネル3は、一対の金属外皮30,31と、一対の金属外皮30,31の間に位置する芯材32と、を有するサンドイッチパネルである。
【0029】
パネル3は、矩形板状である。パネル3は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向とを有する。パネル3は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.3~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、30~150mmである。
【0030】
芯材32は、断熱性を有する本体部と、本体部の左右の端部に配置され、本体部よりも耐火性の高い耐火部とを含む。本体部は、例えば、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材をバインダー等で固めた複数のブロック体を1枚の矩形板状に並べたものである。耐火部は、例えば、石膏ボードや、珪酸カルシウムボードであり、本体部の左右の端部に設けた凹部内に配置される。なお、本体部は、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。
【0031】
一対の金属外皮30,31のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.25~2.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0032】
一対の金属外皮30,31のうち、前側に位置する金属外皮30は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。金属外皮30は、芯材32の前面を覆う矩形板状の本体部300と、芯材32の上面の前側の部分を覆う上壁部301と、芯材32の下面の前側の部分を覆う下壁部と、芯材32の左右の側面の前側の部分を覆う左右の側壁部302と、を有する。
【0033】
一対の金属外皮30,31のうち、後側に位置する金属外皮31は、芯材32の後面を覆う矩形板状の本体部310と、芯材32の左右の側面の後側の部分を覆う左右の側壁部311と、を有する。なお、金属外皮31は、芯材32の上面や下面を覆う部分を有さない。
【0034】
金属外皮30,31のそれぞれは、本体部300,310が芯材32の前後の面に接着されて、芯材32と一体化している。
【0035】
パネル3は、パネル3の下端部に固定された固定板7と、固定板7にボルト8で結合される係止部材9と、パネル3の上端部に固定された第二固定板10と、第二固定板10にボルト11で結合される取付部材12とを更に有する。ボルト8,11のそれぞれは、本実施形態では、片面側(後側)から締結することができるワンサイドボルトである。
【0036】
本実施形態では、パネル3は、左右方向に距離をおいて位置する三つの固定板7と、三つの固定板7のうち左右の端に位置する二つの固定板7にボルト接合された二つの係止部材9と、を有する。
【0037】
三つの固定板7のそれぞれは、側面視L字状の部材である。固定板7は、例えば、金属外皮30,31よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。固定板7は、パネル3の後面の下端部に沿う第一片部7aと、第一片部7aの下端部から前方に延長され、パネル3の下面に沿う第二片部(図示せず)と、を有する。第一片部7aと第二片部のそれぞれは、矩形板状である。第一片部7aは、パネル3の金属外皮31の本体部310の下端部にビス等の固定具で固定されている。第二片部は、その前端部がパネル3の金属外皮30の下壁部にビス等の固定具で固定されている。第一片部7aには、ボルト8が結合される固定孔(図示せず)が設けられている。
【0038】
二つの係止部材9のそれぞれは、側面視Z字状の板状の部材である。係止部材9は、例えば、金属外皮30,31よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。係止部材9は、矩形板状のパネル固定部90と、パネル固定部90の下端部に連続し、パネル固定部90に対して傾いた矩形板状の連結部91と、連結部91の下端部に連続する矩形板状の引っ掛け部92と、を有する。パネル固定部90には、ボルト8が挿入される挿入孔が設けられている。
【0039】
パネル固定部90は、ボルト8によって、固定板7の第一片部7aに仮止め又は固定される部分である。ボルト8は、パネル固定部90を固定板7の第一片部7aに固定した状態で、パネル3の金属外皮31の本体部310を貫通して、その先端部が芯材32に埋め込まれる。引っ掛け部92は、固定板7の第一片部7aから後方に離れて位置する。固定板7の第一片部7aと連結部91と引っ掛け部92とは、下方に向けて開口した挿入溝93を囲んで形成する。
【0040】
二つの第二固定板10のそれぞれは、側面視L字状の部材である。第二固定板10は、例えば、金属外皮30,31よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。第二固定板10は、パネル3の後面の上端部に沿う第一片部10aと、第一片部10aの上端部から前方に延長され、パネル3の上面に沿う第二片部10bと、を有する。第一片部10aと第二片部10bのそれぞれは、矩形板状である。第一片部10aは、パネル3の金属外皮31の本体部310の上端部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。第二片部10bは、その前端部がパネル3の金属外皮30の上壁部301にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。第一片部10aには、ボルト11が結合される固定孔(図示せず)が設けられている。
【0041】
取付部材12は、矩形板状である。取付部材12は、例えば、金属外皮30,31よりも厚みの大きい鋼板で形成される。取付部材12は、その下部にボルト11が挿入される挿入孔が設けられている。取付部材12は、取付部材12の下部が第二固定板10の第一片部10aにボルト11で固定され、取付部材12の上部がパネル3の上面よりも上方に突出している。取付部材12のうち、パネル3の上面よりも上方に突出する突出部分120は、横架材2に固定される部分である。ボルト11は、パネル3の金属外皮31の本体部310を貫通して、その先端部が芯材32に埋め込まれる。
【0042】
2-3.横架材
図4に示すように、横架材2は、構造躯体の一部を構成するものであり、本実施形態では、側面視L字状のアングル材である。横架材2は、鋼製である。横架材2は、縦板部20と、縦板部20の下端部から後側に延びた横板部21と、を有する。なお、縦板部20の厚み(前後方向の長さ)は、例えば、10mm未満であって、好ましくは、6~9mm程度である。
【0043】
構造躯体は、上下に並ぶ複数の横架材2を備える。複数の横架材2のそれぞれは、建物の床や天井を構成する土台13に取り付けられている。なお、複数の横架材2のそれぞれは、梁に固定されてもよいし、複数の柱に架け渡して固定されてもよい。
【0044】
上下に並ぶ複数の横架材2は、パネル3に取り付けられた係止部材9と取付部材12の間隔と同程度、上下方向に離れて位置する。上下に並ぶ二つの横架材2のうち、上側に位置する横架材2には、パネル3の取付部材12が取り付けられ、下側に位置する横架材2には、パネル3の係止部材9が取り付けられる。
【0045】
各横架材2の縦板部20のうち、パネル3の下端部の左右方向の中央に位置する固定板7に対応する部分の前面には、固定板7を下から支持する側面視L字状の受け部材22が溶接等で固定されている。
【0046】
3.留め具の使用方法
続いて、上述した留め具1の使用方法の一例について説明する。
【0047】
以下では、横架材2に固定されたパネル3と、その右方において、横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止された他のパネル3に対して、留め具1を使用する方法について説明する。横架材2に固定されたパネル3を、第一パネル3と記載し、横架材2にスライド可能に係止された他のパネル3を、第二パネル3と記載する。第一パネル3は、二つの取付部材12が上側の横架材2に溶接等で固定され、二つの係止部材9が下側の横架材2に対して引っ掛かった状態で押し当てられ、下側の横架材2の受け部材22によって自重が支えられた状態で、上下二つの横架材2に対して固定されている。第二パネル3は、二つの係止部材9が、ボルト8によって固定板7に対して仮止めされた状態で、下側の横架材2の縦板部20に引っ掛けられており、これにより、下側の横架材2の長手方向にスライド可能である。なお、第二パネル3の二つの取付部材12は、上側の横架材2に対して固定されていない。
【0048】
まず、第二パネル3を左方にスライド移動させて、第二パネル3を第一パネル3に押し当て、第二パネル3と第一パネル3の間の目地幅を所定の長さとする。なお、第一パネル3と第二パネル3の間の目地幅の調整は、目地幅調整用の治具を用いて行ってもよい。
【0049】
次いで、図1に示すように、第二パネル3の左右方向中央の固定板7の第一片部7aの側方(右方)において、留め具1の係止部4の差込溝40に横架材2の縦板部20を差し込んで、係止部4を縦板部20に係止させる。このとき、留め具1の左側の突出片60(つまり規制部6)の先端面(左面)を、固定板7の右の側面に当てる。
【0050】
次いで、固定操作部5の操作レバー51を、固定用ボルト50を中心に後方から見て時計回りに回転させて、固定操作部5の固定用ボルト50の先端を縦板部20に押し当て、係止部4を縦板部20に固定する。このとき、本実施形態では、操作レバー51は、上下方向に対して平行な起立姿勢となる。
【0051】
これにより、留め具1が横架材2に固定され、留め具1の規制部6が第二パネル3の左右方向中央の固定板7の側面に当たって、第二パネル3の右方への移動が規制され、第二パネル3の位置ずれが規制される。
【0052】
第二パネル3が留め具1によって位置ずれが規制された後、第二パネル3の二つの取付部材12を上側の横架材2の縦板部20に対して、溶接等の適宜手段で固定し、第二パネル3の二つのボルト8を最後までねじ締めして、二つの係止部材9を下側の横架材2の縦板部20に押し当てる。このとき、第二パネル3の下端部の左右方向中央の固定板7は、下側の横架材2の縦板部20に固定された受け部材22の上に載置され、パネル3の自重は受け部材22によって支持される。これにより、第二パネル3は、上下二つの横架材2に対して固定される。
【0053】
なお、受け部材22に対して固定板7は、溶接等で固定しない。第二パネル3の下側に他のパネル3が既に設置されている場合には、この他のパネル3の二つの取付部材12の突出部分120は、第二パネル3の二つの係止部材9と二つの固定板7との間に下側の横架材2の縦板部20と共に挟み込まれる。
【0054】
第二パネル3の上下二つの横架材2への固定が終わったら、留め具1の固定操作部5の操作レバー51を回転操作して、係止部4の縦板部20への固定を解除し、縦板部20から係止部4を取り外して、留め具1を横架材2から取り外す。
【0055】
以上のように施工することで、第二パネル3は、第一パネル3との間に所定の目地幅を形成した状態で、横架材2に固定される。上述の施工方法により複数のパネル3を横架材2に対して固定することで、例えば、図4に示す壁構造を形成することができる。左右方向に隣接する二つのパネル3の間、及び上下方向に隣接する二つのパネル3の間にはそれぞれ、耐火材14が挟み込まれている。
【0056】
4.作用効果
以上説明した本実施形態の留め具1は、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3に対して、規制部6がパネル3の固定板7の側面に当たるように、係止部4を横架材2に係止させ、この状態で、固定操作部5を操作して、係止部4を横架材2に固定することができる。これにより、本実施形態の留め具1では、横架材2の長手方向へのパネル3の移動を規制することができて、パネル3の位置ずれを規制することができる。
【0057】
また、本実施形態の留め具1では、パネル3に固定された固定板7の側面に規制部6の突出片60が当たるため、パネル3の表面に規制部6が当たってパネル3の表面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態の留め具1では、規制部6が係止部4から左右方向(横架材2の長手方向)に突出した突出片60であるため、横架材2の受け部材22に対して、パネル3の左右方向中央の固定板7が、左方にずれて載せられた場合でも、突出片60を固定板7の側面に当てやすい。
【0059】
また、本実施形態の留め具1では、固定操作部5が操作レバー51を有するため、固定操作部5を操作するにあたって、工具が不要であり、横架材2への固定及び固定解除が簡単に行える。
【0060】
また、本実施形態の留め具1では、係止部4のねじ穴412に、落下防止用コードに取り付けられたボルトを接続し、この落下防止用コードを介して留め具1と施工者とを繋いでおくことで、留め具1の落下を防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態の留め具1は、パネル3が係止される横架材2に固定して用いるため、パネル3の固定板7の側面に規制部6を当てやすい。
【0062】
5.変形例
以上説明した本実施形態の留め具1の変形例について説明する。
【0063】
固定操作部5は、係止部4を横架材2に固定することができるように構成されたものであればよく、図1等に示す構造のものに限定されない。
【0064】
例えば、図5に示す変形例1の留め具1のように、固定操作部5は、操作レバー51及び動作規制部54を有さなくてよく、固定用ボルト50のみで構成されてもよい。係止部4の第一縦片41と第二縦片43とは、上下方向の長さが同程度である。この場合、固定用ボルト50の頭部53を、電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作することで、係止部4を横架材2に対して固定及び固定解除することができる。
【0065】
また、図6に示す変形例2の留め具1のように、固定操作部5は、係止部4に対して、左右方向に平行な軸55周りに回転するように設けられた側面視L字状の操作レバー51で構成されてもよい。係止部4には、操作レバー51が回転するための溝44が前後方向及び上下方向に開口するように設けられている。操作レバー51は、その一部が横架材2の縦板部20に押し当たる固定状態(図6の実線部分で示す状態)と、縦板部20から離れる固定解除状態(図6の二点鎖線で示す状態)との間で、動作可能(回転可能)である。
【0066】
また、規制部6は、パネル3に当たることで、パネル3の左右方向(横架材2の長手方向)への移動を規制するように構成されたものであればよく、例えば、パネル3の左右の側面に当たることで、パネル3の移動を規制するものであってもよい。
【0067】
また、規制部6は、係止部4から左右方向(横架材2の長手方向)に突出した突出片60限らず、係止部4の平坦な左右の側面の一部で構成されてもよい。
【0068】
横架材2は、側面視L字状のアングル材に限らず、縦板部20のみで構成されるものであってよい。
【0069】
パネル3は、係止部材9(横架材2の縦板部20に引っ掛かる部分)を、パネル3の下端部に限らず、パネル3の上端部に備えてもよい。
【0070】
また、留め具1は、図1に示す使用方法に限らず、他の使用方法で用いてもよい。例えば、留め具1は、規制部6の右側の突出片60が、固定板7の左の側面に当たるように横架材2に固定することで、パネル3の左方への移動を規制してもよい。また、複数個の留め具1を用いて、パネル3の移動を規制してもよい。
【0071】
パネル3は、図3に示す構造のサンドイッチパネルに限定されない。パネル3は、窯業系のパネルであってもよいし、金属サイディング材であってもよいし、木製のパネルであってもよく、特に限定されない。
【0072】
6.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の留め具(1)は、下記の構成を備える。
【0073】
すなわち、第一態様の留め具(1)は、構造躯体の横架材(2)に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネル(3)の位置ずれを規制するための留め具である。留め具(1)は、横架材(2)に係止される係止部(4)と、係止部(4)を横架材(2)に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部(5)と、パネル(3)に当たることで、パネル(3)の前記長手方向への移動を規制する規制部(6)と、を備える。
【0074】
上記構成を備える第一態様の留め具(1)では、横架材(2)にスライド可能に係止されたパネル(3)に対して、規制部(6)がパネル(3)に当たるように、係止部(4)を横架材(2)に係止させ、この状態で、固定操作部(5)を操作して、係止部(4)を横架材(2)に固定することができる。これにより、第一態様の留め具(1)では、横架材(2)の長手方向へのパネル(3)の移動を規制することができて、パネル(3)の位置ずれを規制することができる。
【0075】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の留め具(1)は、第一態様の留め具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0076】
すなわち、第二態様の留め具(1)では、規制部(6)は、パネル(3)に固定された固定板(7)の前記長手方向を向く側面に当たるように構成されている。
【0077】
上記構成を備えることで、第二態様の留め具(1)では、規制部(6)を固定板(7)の側面に当てることができるため、留め具(1)がパネル(3)の表面に接触して、パネル(3)の表面に傷が付くことを抑制することができる。
【0078】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の留め具(1)は、第二態様の留め具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0079】
すなわち、第三態様の留め具(1)では、規制部(6)は、係止部(4)から前記長手方向に突出した突出片(60)である。
【0080】
上記構成を備えることで、第三態様の留め具(1)では、規制部(6)が係止部(4)から突出しないものである場合に比べて、規制部(6)を固定板(7)の側面に当てやすい。
【0081】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様の留め具(1)は、第一から第三のいずれか一つの態様の留め具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0082】
すなわち、第四態様の留め具(1)では、固定操作部(5)は、横架材(2)に対して接離するように、係止部(4)に取り付けられた固定用ボルト(50)と、固定用ボルト(50)に連結された操作レバー(51)と、を有する。
【0083】
上記構成を備えることで、第四態様の留め具(1)では、操作レバー(51)を操作することで、係止部(4)を横架材(2)に対して固定及び固定解除でき、工具が不要なため、固定及び固定解除の操作が簡単に行える。
【0084】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の留め具(1)は、第四態様の留め具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0085】
すなわち、第五態様の留め具(1)では、固定操作部(5)は、操作レバー(51)の動作範囲に位置し、固定用ボルト(50)が係止部(4)から外れる位置にまで操作レバー(51)が動作することを規制する動作規制部(54)を更に有する。
【0086】
上記構成を備えることで、第五態様の留め具(1)では、操作レバー(51)を操作するときに、固定用ボルト(50)が係止部(4)から外れる位置にまで操作レバー(51)が動作することを動作規制部(54)によって規制できる。これにより、第五態様の留め具(1)では、操作レバー(51)を操作するときに、係止部(4)から固定用ボルト(50)及び操作レバー(51)が落下することを防ぐことができる。
【0087】
また、上述した一実施形態の変形例のように、第六態様の留め具(1)は、第一から第三のいずれか一つの態様の留め具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0088】
すなわち、第六態様の留め具(1)では、固定操作部(5)は、横架材(2)に対して接離するように、係止部(4)に取り付けられた固定用ボルト(50)を有し、固定用ボルト(50)は、工具によって回転操作可能な頭部(53)を有する。
【0089】
上記構成を備える第六態様の留め具(1)では、操作レバー(51)を備える場合のような、固定用ボルト(50)の周囲に操作レバー(51)を回転操作するためのスペースの確保が不要であり、上記スペースの確保が難しい狭小スペースでも、工具を用いて固定用ボルト(50)を回転操作することができる。また、第六態様の留め具(1)では、固定用ボルト(50)の回転量(ねじ込み量)の調整がしやすく、横架材(2)の厚みの大小に関わらず、係止部(4)を横架材(2)に固定しやすい。
【0090】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 留め具
2 横架材
3 パネル
4 係止部
5 固定操作部
50 固定用ボルト
51 操作レバー
54 動作規制部
6 規制部
60 突出片
7 固定板
図1
図2
図3
図4
図5
図6