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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20240327BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240327BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240327BHJP
   H01M 8/04291 20160101ALI20240327BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240327BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/04291
H01M8/12 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019196064
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021072166
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129115(JP,A)
【文献】特開2019-046675(JP,A)
【文献】特開2017-150738(JP,A)
【文献】特開2019-126132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04701
H01M 8/04
H01M 8/04014
H01M 8/04291
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池から排出される排熱と熱媒とで熱交換を行うための熱交換器と、
該熱交換器に前記熱媒を流すための熱媒ラインと、
該熱媒ラインに設けられ、前記熱交換器に流入する前記熱媒の温度を低下させるための、ファンを備えるラジエータと、
前記ラジエータの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記燃料電池の動作状況に対応する前記ラジエータの動作制御を複数有し、
自立発電運転時において、前記ファンの動作を、停止または最大駆動させる制御が、優先順位の最上位の動作制御として設定されている燃料電池装置。
【請求項2】
前記複数有する前記ラジエータの動作制御の実行において、優先順位が設定されている請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記ファンの動作において、最大駆動を制限する制御が、上位の動作制御として設定されている請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記ファンの動作において、所定の駆動値で駆動させる制御が、下位の動作制御として設定されている請求項3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記ファンの動作において、前記熱媒の温度が所定範囲となるように、前記ファンの動作を段階的に変更する制御が、最下位の動作制御として設定されている請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記最上位の動作制御が、前記燃料電池装置を自立発電運転させる際の制御であり、前記上位の動作制御が、所定時間帯における運転制御であり、前記下位の動作制御が、前記燃料電池に供給する燃料ガスを生成するための水供給ラインを自立させるための制御であり、前記最下位の動作制御が、通常運転時の制御である請求項5に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原燃料ガスを水蒸気改質して生成される燃料ガスと空気とを用いて発電を行なう固体酸化物形の燃料電池装置が知られている。また、熱交換器、蓄熱タンク、ファンを有するラジエータおよびこれらを繋ぐ配管などを含む排熱回収システムを備えた燃料電池装置も知られている(例えば、特許文献1を参照)。そのような燃料電池装置は、ファンの回転数を段階的に変更し、熱媒の温度を一定範囲内に維持するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-96484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池装置は、ラジエータを効率的に駆動することができないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、
該燃料電池から排出される排熱と熱媒とで熱交換を行うための熱交換器と、
該熱交換器に前記熱媒を流すための熱媒ラインと、
該熱媒ラインに設けられ、前記熱交換器に流入する前記熱媒の温度を低下させるための、ファンを備えるラジエータと、
前記ラジエータの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記燃料電池の動作状況に対応する前記ラジエータの動作制御を複数有し、
自立発電運転時において、前記ファンの動作を、停止または最大駆動させる制御が、優先順位の最上位の動作制御として設定されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の燃料電池装置によれば、ラジエータを効率的に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る燃料電池装置の概略的構成を示す図である。
図2A】実施形態に係るラジエータ動作制御の優先順位を示す説明図である。
図2B】実施形態に係るラジエータ動作制御の動作変更判定を示す説明図である。
図3】実施形態に係るラジエータ動作制御の動作変更判定を説明するフローチャートである。
図4】第4の動作制御を説明するフローチャートである。
図5A】第3の動作制御を説明するフローチャートである。
図5B】第3の動作制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本開示の実施形態に係る燃料電池装置について説明する。図1は、実施形態に係る燃料電池装置の概略的構成を示す図である。
【0009】
実施形態の燃料電池装置100は、燃料電池11、熱交換器2、熱媒ラインHC1、ラジエータ5および制御装置30を備える。
【0010】
燃料電池11は、燃料ガスと空気とを用いて発電を行なう。燃料電池11は、複数の燃料電池セルを含むセルスタック構造を有していてもよい。燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルであってもよい。燃料電池装置100は、燃料ガスを水蒸気改質する改質器12を有している。また、燃料電池装置100は、収納容器10内に燃料電池11と改質器12とを収納してなる燃料電池モジュール1を有している。
【0011】
発電に用いられる燃料ガスは、燃料ガス供給装置14を介して、燃料ガスを改質するための改質水と一緒に、改質器12に導入される。発電に用いられる空気は、空気供給装置15を介して、燃料電池11に導入される。
【0012】
熱媒ラインHC1は、熱交換器2、例えば水である熱媒を蓄える蓄熱タンク3、ヒータ4、ラジエータ5、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる熱媒ポンプP1およびこれらを繋ぐ配管などを含んでいる。例えば図1に示すように、熱媒ラインHC1における熱媒の循環方向において、熱交換器2、ヒータ4、蓄熱タンク3およびラジエータ5は、この順に設けられている。
【0013】
熱交換器2では、燃料電池モジュール1の排ガスと熱媒とが熱交換し、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。生じた凝縮水は、凝縮水流路Cを経由して回収され、改質水タンク6に貯水される。水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、外部に排気される。改質水タンク6に貯水された凝縮水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP2を介して、改質器12に供給され、燃料ガスの水蒸気改質に利用される。蓄熱タンク3には、燃料電池モジュール1の排ガスと熱交換した熱媒が貯留される。
【0014】
ラジエータ5は、ファン51を有する。ラジエータ5は、ファン51によって生じた送風によって熱媒を冷却するための冷却ユニットである。
【0015】
改質水タンク6は、第1水位センサWL1および第2水位センサWL2を有する。第1水位センサWL1は、改質水タンク6の水位が上限水位である満水位に達したことを検出する。第2水位センサWL2は、改質水タンク6の水位が下限水位である渇水位に達したことを検出する。第1水位センサWL1および第2水位センサWL2としては、フロートセンサなど公知の水位センサを用いることができる。
【0016】
燃料電池装置100は、第1温度測定部TH1、第2温度測定部TH2および第3温度測定部TH3を備える。
【0017】
第1温度測定部TH1は、熱媒ラインHC1を流れる熱媒の温度を測定する。実施形態では、ラジエータ5と熱交換器2との間における熱媒の温度(熱媒低温度とも言う)HTH1を第1温度測定部TH1で測定している。第1温度測定部TH1としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。
【0018】
第2温度測定部TH2は、蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒の温度を測定する。実施形態では、蓄熱タンク3の底部における熱媒の温度(蓄熱低温度とも言う)HTH2を第2温度測定部TH2で測定している。第2温度測定部TH2としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。
【0019】
また、第3温度測定部TH3は、外気温HTH3を測定する。第3温度測定部TH3としては、サーミスタなどの公知の温度測定装置を用いることができる。
【0020】
燃料電池装置100は、発電および出湯などを行う場合に必要となる各種の構成をさらに備えていてもよい。上記に示した各構成は、一例であって、後述する各種制御に必要な構成以外は、任意の構成である。
【0021】
燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1などの他、その発電運転を補助する補機として、パワーコンディショナ20、制御装置30などを備える。パワーコンディショナ20は、燃料電池11で発生した電力を、商用電源系統(以下、単に、系統とも言う)と連系して外部負荷に供給する。また、使用者宅には、制御装置30と有線または無線により接続されたリモコン(図示せず)が設置されている。リモコンは、表示装置、操作パネルなどを備えており、使用者は、リモコンを操作することによって、制御装置30に各種の指示を送信することができる。
【0022】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサおよび記憶装置などを含む制御装置30を備える。
【0023】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0024】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0025】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0026】
制御装置30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、それに付属する記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0027】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う、本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、本実施形態において、制御装置30は特に、燃料電池装置に繋がる外部装置の指示、指令や、先に述べた各種センサの指示や計測値に基づいて、燃料ガス供給装置14、空気供給装置15などの各種補機を制御する。図では、制御装置30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0028】
図示しない記憶装置は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよく、後述する熱媒高温抑制制御や燃料電池高温抑制制御で使用するフラグなどを記憶している。記憶装置は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体などの任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスクなどの可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)などの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0029】
なお、燃料電池装置の制御装置30および記憶装置は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0030】
制御装置30は、ファン51の単位時間当たりの回転数(以下、単位、回転数とも言う)を制御することができる。ファン51の回転数は、例えば、ファン51を駆動するための制御信号のデューティ比(以下、単に、ファン51のデューティ比とも言う)を変更することによって制御することができる。デューティ比とは、ファン51を駆動するための制御信号の1周期におけるオン期間の割合を指す。デューティ比の変更範囲は、0~100%である。ファン51のデューティ比が0%の場合、ファン51は停止される。ファン51のデューティ比が100%の場合、ファン51は最大回転数で駆動される。
【0031】
制御装置30は、ファン51のデューティ比を変更し、ファン51の回転数を変更することができる。制御装置30は、ファン51のデューティ比を段階的に変更することができる。「段階的に変更」とは、ファン51のデューティ比を所定の割合で増減することを言う。例えば、所定の割合が12.5%のときは、8段階の変更となり、所定の割合が10%のときは、10段階の変更となる。なお、増減の割合は全段階で同じでもよいし、段階によって割合が異なっていてもよい。また、ファン51のデューティ比を変更する際は、一段階ずつ変更してもよく、二段階以上変更してもよい。
【0032】
制御装置30は、ラジエータ5の動作制御を複数有している。複数の動作制御は、燃料電池11の複数の動作状況にそれぞれ対応している。制御装置30は、燃料電池11の動作状況に応じて、複数の動作制御のうちの1つを選択し、選択した動作制御に従って、ラジエータ5を駆動する。これにより、燃料電池装置100は、ラジエータ5を効率的に駆動することができる。
【0033】
図2Aは、実施形態に係るラジエータ動作制御の優先順位を示す説明図であり、図2Bは、実施形態に係るラジエータ動作制御の動作変更判定を示す説明図である。複数の動作制御には、優先順位が予め設定されていてもよい。実施形態において、制御装置30は、通常運転時に熱媒温度に基づいてラジエータ5の駆動値を変更する制御を実行する。通常運転とは、燃料電池11が予め設定されている特定の動作状況ではない場合の運転であるため、熱媒温度に基づいてラジエータ5の駆動値を変更する制御がラジエータ5の基本制御である。制御装置30は、図2A,2Bに示すような情報をテーブルとして記憶しておき、そのテーブルを参照してラジエータの動作制御を実行してもよい。
【0034】
燃料電池11が特定の動作状況に遷移した場合、動作状況に応じたラジエータ5の動作制御の変更が要求される。そこで制御装置30は、ラジエータ5の動作制御の変更が要求された場合、予め設定された優先順位に従って、実行中の動作制御と要求される動作制御の優先順位を比較し、動作変更の判定をおこなう。
【0035】
実行中の動作制御よりも要求される動作制御の優先順位が高い場合、制御装置30は、ラジエータ5の動作制御の変更要求が有効であると判定し、要求された動作制御を実行する。一方、実行中の動作制御よりも要求される動作制御の優先順位が低い場合、制御装置30は、ラジエータ5の動作制御の変更要求が無効であると判定し、実行中の動作制御を継続する。これにより、ラジエータ5を一層効率的に駆動することが可能になる。
【0036】
実施形態では、一例として、制御装置30が、第1乃至第4の動作制御を有しており、第1乃至第4の動作制御は、この順に優先順位が高く設定されている。なお動作制御については、燃料電池装置の機能等に基づき、4つより多い動作制御を有していてもよく、また3つ以下の動作制御を有していてもよい。動作制御の数については、適宜設定することができ、あわせて優先順位についても適宜設定すればよい。
【0037】
実施形態において、第1の動作制御はラジエータ5が停止または最大駆動する動作制御であり、第2の動作制御はラジエータ5の最大駆動を制限する制御である。また、第3動作制御はラジエータ5を所定の駆動値で駆動させる制御であり、第4動作制御は熱媒温度に基づいて駆動値を変更する制御である。第1乃至第4の動作制御の優先順位は、燃料電池装置100の安全性や使用者の利便性を考慮して決定されており、これにより、ラジエータ5を一層効率的に駆動することが可能になる。
【0038】
例えば、制御装置30は、ラジエータ5が第4動作制御を実行中に第1動作制御の要求を受けた場合、第1動作制御が第4動作制御よりも優先順位が高いため、変更要求が有効であると判定し、要求された第1動作制御を実行する。一方、ラジエータ5が第1動作制御を実行中に第2動作制御の要求を受けた場合、第2動作制御が第1動作制よりも優先順位が低いため、変更要求が無効であると判定し、第2動作制御は実行せず、第1動作制御を継続して実行する。
【0039】
また、実施形態では、第1乃至第4の動作制御のいずれか1つの動作制御の要求が継続した場合、制御装置30は変更要求の有効もしくは無効の判定を実行しないことにより該動作制御を継続しているが、変更要求を無効/有効と判定してもよく、結果的に該動作制御を継続させればよい。
【0040】
また、実行している該動作制御の要求がなくなった場合、制御装置30は、要求されている動作制御の優先順位を確認し、要求されている動作制御の中で最も優先順位が高いものを実行する。ここで、要求されている動作制御とは、実行中の動作制御よりも優先順位が低いために、変更要求はあるが実行されない動作制御(図2Bの無効)を指す。
【0041】
要求されていた動作制御の要求が1つの場合は、要求されていた動作制御を実行し、要求されていた動作制御が複数であった場合は、優先順位に基づく判定を行い、動作制御を決定および実行する。要求されていた動作制御がない場合は、第4の動作制御を実行する。
【0042】
以下、第1乃至第4の動作制御と該動作制御が要求される動作状況について説明する。
【0043】
第1の動作制御は、例えば、燃料電池装置100が系統から解列し、燃料電池装置100を自立発電運転させる際に実行される。この第1の動作制御では、ラジエータ5を停止または最大駆動させる。ラジエータ5を停止または最大駆動させる動作制御は、例えば、ファン51のデューティ比を0%もしくは100%で動作させることで実行される。
【0044】
自立発電運転において、制御装置30は、蓄熱低温度HTH2が外気温HTH3以上であることを検知した場合、ファン51のデューティ比を0%から100%に増加させる。また、制御装置30は、蓄熱低温度HTH2が外気温HTH3より低いことを検知した場合、ファン51のデューティ比を100%から0%に減少させる。
【0045】
なお、ファン51が短時間にデューティ比0%と100%を遷移する(ハンチングする)ことを抑制するために、蓄熱低温度HTH2と外気温HTH3の温度比較を一定期間ごとにおこなってもよく、蓄熱低温度HTH2と外気温HTH3の温度比較に温度マージンを含んでもよい。また、蓄熱低温度HTH2が予め設定されている温度まで低下したらラジエータ5を停止させてもよい。
【0046】
制御装置30は、燃料電池装置100の自立発電運転を開始すると、燃料電池モジュール1に供給する燃料ガスの流量を増加させ、熱媒ラインHC1のヒータ4を内部負荷として用いて、定格出力での発電運転を行うように燃料電池11を制御する。このため、自立発電運転の開始時は、通常運転時と比較して熱媒の温度が上昇するため熱交換器2が破損する虞がある。それゆえ、この場合、ラジエータ5を最大駆動させる。一方で、ラジエータ5を最大駆動させることで、熱媒の温度が大幅に低下することとなり、それに伴い、熱媒が凍結し、熱媒ラインHC1が破損する虞がある。それゆえ、この場合、ラジエータ5を停止させる。すなわち、燃料電池装置100の安全性を考慮して、ラジエータ5を停止または最大駆動する動作制御が優先順位の最上位に設定されている。
【0047】
第2の動作制御は、例えば、ファン51のデューティ比に上限を設け、ファン51の回転に伴う騒音の発生を抑制するために燃料電池装置100を静音運転させる際に実行される。静音運転は、例えば、予め設定された時間帯に実行される。
【0048】
静音運転において、ファン51のデューティ比は、第1上限値D1が上限値とされている。第1上限値D1は、100%未満の値に設定されている。第1上限値D1は、例えば、75%であってもよく、62.5%であってもよく、50%であってもよく、その他の値であってもよい。
【0049】
静音運転は、例えば、深夜帯(例えば0時から4時まで)に実行されてもよい。また、使用者は、リモコンを操作して、静音運転を実行する時間帯を自由に設定できるように構成されてもよく、静音運転を実行するか否かを自由に設定できるように構成されてもよい。
【0050】
第2の動作制御においては、直ちに燃料電池装置100が破損する虞があるものではないが、ファン51を高デューティ比、すなわち高回転数で駆動する際に発生する騒音を抑制することで、使用者およびその近隣住民における利便性を向上させることができる。それゆえ、ラジエータ5の最大駆動を制限する制御が優先順位の上位に設定されている。
【0051】
第3の動作制御は、ファン51を所定の駆動値で駆動させる制御であり、例えば、燃料電池装置100を水自立運転させる、すなわち燃料電池11に供給する燃料ガスを生成するための水供給ラインを自立させる際に実行される。
【0052】
水自立運転において、制御装置30は、熱交換器2における凝縮水の回収を優先するために、例えば、燃料電池11の出力を定格出力未満に抑制するとともに、他の補機類も制御して、燃料電池11の発電運転を継続する。制御装置30は、水自立運転を行っても凝縮水の回収量が十分ではなく、例えば、第1水位センサWL1および第2水位センサWL2の両方が水位を検出しない場合、燃料電池11の発電運転を停止させる。
【0053】
発電運転を停止後に再起動させる場合は、制御装置30は、第2温度測定部TH2が測定する蓄熱低温度HTH2が、第4所定温度H4より高い場合には、熱媒ポンプP1を駆動させるとともに、ラジエータ5のファン51を所定の駆動値で駆動させて蓄熱低温度HTH2を低下させる。なお、第4所定温度H4は、例えば、30~50℃とすることができる。
【0054】
ラジエータ5のファン51の駆動は、予め設定されている第6所定時間が経過するまで継続してもよく、蓄熱低温度HTH2が第4所定温度H4以下になるまで継続してもよい。
【0055】
第3の動作制御においては、直ちに燃料電池装置が破損する虞があるものではないが、これにより、再起動前に熱媒の温度を低下させることができるため、再起動後は凝縮水が回収しやすくなる。つまり、凝縮水の不足に伴う燃料電池11の停止の再発を抑制することができるため、使用者の利便性を向上させることができる。それゆえ、ラジエータ5を所定の駆動値で駆動させる制御が優先順位の下位に設定されている。
【0056】
第4の動作制御は、熱媒の温度に基づいてファン51の動作を適宜変更する制御である。第4の動作制御は、例えば、通常運転時、すなわち自立発電運転、静音運転および水自立運転のいずれも行われていない場合に実行される、いわゆる基本制御である。
【0057】
基本制御において、制御装置30は、例えば、熱媒低温度HTH1が所定範囲となるように、ファン51の動作を制御してもよい。所定範囲は、適宜設定できるが、例えば、30~40℃であってもよい。
【0058】
基本制御は、燃料電池11から排出される排熱の排熱回収効率を高めることで燃料電池装置100を効率良く運転させるためにおこなわれる制御である。それゆえ、熱媒の温度に基づいてファン51の動作を変更する制御が優先順位の最下位に設定されている。
【0059】
上記のように、燃料電池装置100は、制御装置30が、ラジエータ5の動作制御を複数有し、燃料電池11の動作状況に応じて選択した動作制御に従って、ラジエータ5を駆動することにより、ラジエータ5を効率的に駆動することができる。
【0060】
以下、図3~5に示すフローチャートを参照して、ラジエータ動作制御の動作変更判定と第3乃至第4の動作制御について説明する。フローチャートでは、「ステップ」を「S」と略称するとともに、チャート内においては、判断制御における「正」(コンピュータフラグ=1)を[Yes]で、「否」(コンピュータフラグ=0ゼロ)を[No]で表している。
【0061】
図3は、ラジエータ動作制御の動作変更判定を説明するフローチャートである。フローチャートは燃料電池11の起動が開始されたらスタートし、燃料電池11が停止するまでループし続ける。なお、初回の〔スタート〕である燃料電池11の起動時では、原則的に第4の動作制御である基本制御が実行される。
【0062】
本フローチャートが〔スタート〕すると、先ず、〔S101〕において、実行中の動作制御の要求が継続しているか否かを判定する。初回の〔スタート〕である燃料電池11の起動時では、第4の動作制御の要求が継続されているため、〔S101〕において、実行中の動作制御の要求が継続している[Yes]となり、〔S102〕に進む。初回以外の〔スタート〕の場合は後述にて説明する。
【0063】
次に、〔S102〕において、ラジエータ動作制御の変更要求があるか否かを判定する。〔S102〕において、ラジエータ動作制御の変更要求がある[Yes]場合、〔S103〕に進む。〔S102〕において、ラジエータ動作制御の変更要求がない[No]場合、〔S107〕において、実行中の動作を継続し、本フローチャートを終了する。
【0064】
〔S103〕において、要求される動作制御を確認し、〔S104〕において、要求される動作制御の優先順位を確認する。次に〔S105〕において、要求される動作制御が実行中の動作制御よりも優先順位が高いか否かを判定する。〔S105〕において、要求される動作制御が実行中の動作制御よりも優先順位が高い[Yes]場合、〔S106〕において、要求される動作制御を実行し、本フローチャートを終了する。〔S105〕において、要求される動作制御が実行中の動作制御よりも優先順位が低い[No]場合、〔S107〕において、実行中の動作を継続し、本フローチャートを終了する。
【0065】
初回以外のスタートの場合は、〔S106〕で要求された動作制御を実行している場合がある。そこで、〔S101〕において、実行中の動作制御の要求が継続しているか否かを判定する。〔S101〕において、実行中の動作制御の要求が継続している[Yes]の場合、〔S102〕~〔S107〕のステップは前述と同様である。〔S101〕において、実行中の動作制御の要求が継続していない[No]の場合、〔S108〕において、要求されている他の動作制御の優先順位を確認し、〔S109〕において、要求されている動作制御の中で最も優先順位が高いものを実行し、本フローチャートを終了する。
【0066】
図4は、基本制御である第4の動作制御を説明するフローチャートである。本フローチャートが〔スタート〕すると、先ず、〔S201〕において、熱媒低温度HTH1が外気温HTH3を超えるか否かを判定する。〔S201〕において、熱媒低温度HTH1が外気温HTH3を超える[Yes]場合、〔S202〕に進む。〔S201〕において、熱媒低温度HTH1が外気温HTH3を超えない[No]場合、待機する。
【0067】
〔S202〕において、熱媒低温度HTH1が第1所定温度H1以上であるか否かを判定する。第1所定温度H1は、適宜設定することができるが、例えば、30~50℃である。〔S202〕において、熱媒低温度HTH1が第1所定温度H1以上である[Yes]場合、〔S203〕でファン51のデューティ比をD%増加させ、〔S204〕の判定に進む。デューティ比を変更する割合(D%)は、例えばデューティ比の段階的な変更における段数に応じて、適宜設定できる。〔S202〕において、熱媒低温度HTH1が第1所定温度H1未満である[No]場合、〔S201〕に戻る。
【0068】
〔S204〕において、ファン51のデューティ比を増加させた後、第1所定時間T1経過したか否かを判定する。第1所定時間T1は、適宜設定することができるが、例えば、1~10分である。〔S204〕において、第1所定時間T1経過した[Yes]場合、〔S205〕に進む。〔S204〕において、第1所定時間T1経過していない[No]場合、待機する。
【0069】
〔S205〕において、熱媒低温度HTH1が第2所定温度H2以上であるか否かを判定する。〔S205〕において、熱媒低温度HTH1が第2所定温度H2以上である[Yes]場合、〔S206〕に進む。第2所定温度H2は、適宜設定することができるが、例えば、35~45℃である。
【0070】
〔S206〕において、ファン51のデューティ比が、第2の動作制御におけるデューティ比の第2上限値D2であるか否かを判定する。〔S206〕において、ファン51のデューティ比が第2上限値D2である[Yes]場合、〔S208〕に進む。〔S206〕において、ファン51のデューティ比が第2上限値D2でない[No]場合、〔S207〕でファン51のデューティ比をD%増加させ、〔S208〕に進む。
【0071】
〔S208〕において、〔S206〕でファン51のデューティ比が第1上限値D2であると判定された後、または〔S207〕でファン51のデューティ比を増加させた後、第2所定時間T2経過したか否かを判定する。〔S208〕において、第2所定時間T2経過した[Yes]場合、〔S209〕に進む。〔S208〕において、第2所定時間T2経過していない[No]場合、待機する。第2所定時間T2は、適宜設定することができるが、例えば、1~10分である。
【0072】
〔S209〕において、外気温HTH3が熱媒低温度HTH1を超えるか否かを判定する。〔S209〕において、外気温HTH3が熱媒低温度HTH1を超える[Yes]場合、〔S210〕でファン51を停止して、すなわちファン51のデューティ比を0%にして、本フローチャートを終了する。〔S209〕において、外気温HTH3が熱媒低温度HTH1を超えない[No]場合、〔S205〕に戻る。
【0073】
〔S205〕において、熱媒低温度HTH1が第2所定温度H2未満である[No]場合、〔S211〕に進む。続いて、〔S211〕において、熱媒低温度HTH1が第3所定温度H3以下であるか否かを判定する。第3所定温度H3は、適宜設定することができるが、例えば、25~35℃である。第3所定温度H3は、第2所定温度H2よりも低い温度で設定される。
【0074】
〔S211〕において、熱媒低温度HTH1が第3所定温度H3以下である[Yes]場合、〔S212〕でファン51のデューティ比をD%減少させ、〔S213〕に進む。〔S213〕において、〔S212〕でファン51のデューティ比を減少させた後、第3所定時間T3経過したか否かを判定する。〔S213〕において、第3所定時間T3経過した[Yes]場合、〔S214〕に進む。〔S213〕において、第3所定時間T3経過していない[No]場合、待機する。第3所定時間T3は、適宜設定することができるが、例えば、1~10分である。
【0075】
〔S214〕において、ファン51のデューティ比が0%であるか否かを判定する。〔S214〕において、ファン51のデューティ比が0%である[Yes]場合、〔S201〕に戻る。〔S214〕において、ファン51のデューティ比が0%でない[No]場合、〔S209〕に進む。
【0076】
〔S211〕において、熱媒低温度HTH1が第3所定温度H3を超える[No]場合、〔S215〕でファン51の現在のデューティ比を維持し、〔S209〕に進む。なお、〔S215〕でファン51の現在のデューティ比を維持し、〔S211〕に進んでもよい。
【0077】
なお、第4の動作制御における、〔S206〕のデューティ比の第2上限値D2を、第2上限値D2よりも小さい第1上限値D1に置き換えることで、第4の動作制御のフローチャートを第2の動作制御のフローチャートとすることができる。このとき、〔S203〕において、ファン51のデューティ比をD%増加させる前に、デューティ比が第1上限値D1であるか否かの判断を加えてもよい。
【0078】
図5A,5Bは、第3の動作制御を説明するフローチャートである。本フローチャートを〔スタート〕すると、先ず、〔S301〕において、第1水位センサWL1が水位を検出しているか否かを判定する。〔S301〕において、第1水位センサWL1が水位を検出している[Yes]場合、待機する。〔S301〕において、第1水位センサWL1が水位を検出していない[No]場合、〔S302〕で燃料電池装置100の水自立運転を開始し、〔S303〕に進む。
【0079】
〔S303〕において、第2水位センサWL2が水位を検出しているか否かを判定する。〔S303〕において、第2水位センサWL2が水位を検出している[Yes]場合、〔S304〕に進む。
【0080】
〔S304〕において、第1水位センサWL1が水位を検出しているか否かを判定する。〔S304〕において、第1水位センサWL1が水位を検出していない[No]場合、〔S305〕に進む。
【0081】
〔S305〕において、水自立運転を開始してから第4所定時間T4経過したか否かを判定する。〔S305〕において、水自立運転を開始してから第4所定時間T4経過した[Yes]場合、〔S306〕で燃料電池装置100の発電運転を停止させ、図5Bのフローチャートの〔S309〕に進む。第4所定時間T4は、適宜設定することができるが、例えば、60~180分である。
【0082】
〔S305〕において、水自立運転を開始してから第4所定時間T4経過していない[No]場合、〔S303〕に戻る。
【0083】
〔S303〕において、第2水位センサWL2が水位を検出していない[No]場合、〔S307〕で燃料電池装置100の発電運転を停止させる。〔S307〕では、改質水が枯渇したことを、例えば、リモコンに表示する等して、使用者に報知してもよい。
【0084】
〔S304〕において、第2水位センサWL2が水位を検出している[Yes]場合、〔S308〕で燃料電池装置100の水自立運転を終了させ、〔S301〕に戻る。
【0085】
図5Bのフローチャートの〔S309〕において、燃料電池装置100の発電運転を停止した状態で第5所定時間T5待機する。第5所定時間T5は、適宜設定することができるが、例えば、12~48時間である。続いて、〔S310〕において、蓄熱低温度HTH2が第4所定温度H4以下であるか否かを判定する。〔S310〕において、蓄熱低温度HTH2が第4所定温度H4以下である[Yes]場合、〔S311〕に進み、燃料電池装置100の発電運転を再開させる。
【0086】
〔S310〕において、蓄熱低温度HTH2が第4所定温度H4を超える[No]場合、熱媒を冷却するためのステップ〔S312〕~〔S316〕を実行する。先ず、〔S312〕で熱媒ポンプP1を駆動し、続いて、〔S313〕でファン51を所定の駆動値で駆動する。
【0087】
〔S314〕において、熱媒ポンプP1およびファン51を駆動させた状態で第6所定時間T6待機する。第6所定時間T6は、適宜設定することができるが、例えば、30~60分である。続いて、〔S315〕でファン51の駆動を停止させ、〔S316〕で熱媒ポンプP1の駆動を停止させ、〔S311〕に進む。
【符号の説明】
【0088】
100 燃料電池装置
2 熱交換器
5 ラジエータ
51 ファン
11 燃料電池
30 制御装置
HC1 熱媒ライン
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B